(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107593
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、モニタリング方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
G05B23/02 302R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011600
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 佳介
(72)【発明者】
【氏名】森 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】安藤 嘉之
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB07
3C223FF02
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF24
3C223FF32
3C223FF35
3C223FF42
3C223FF45
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH29
(57)【要約】
【課題】プラントの運転状態を示す複数のパラメータのモニタリングを支援する。
【解決手段】情報処理装置10は、複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得する取得部20と、複数の閾値条件を設定する設定部14と、複数のパラメータのそれぞれについて、正常、新規異常または継続異常のいずれかを示すステータスを記憶する記憶部16と、複数のパラメータのそれぞれについて、a)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足する場合に正常と判定し、b)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足しない場合であって、前回判定されたステータスが正常である場合に新規異常と判定し、c)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足しない場合であって、前回判定されたステータスが正常ではない場合に継続異常と判定する判定部22と、新規異常と判定されたパラメータが存在する場合、ユーザに通知する通知部26と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの運転状態を示す複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得する取得部と、
複数の前記パラメータに対応する複数の閾値条件を設定する設定部と、
複数の前記パラメータのそれぞれについて、正常、新規異常または継続異常のいずれかを示すステータスを記憶する記憶部と、
複数の前記パラメータのそれぞれについて、a)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足する場合に正常と判定し、b)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常である場合に新規異常と判定し、c)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常ではない場合に継続異常と判定する判定部と、
新規異常と判定された前記パラメータが存在する場合、ユーザに通知する通知部と、を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記通知部は、新規異常と判定された前記パラメータが存在しない場合、前記ユーザに通知しない、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記通知部は、新規異常と判定された前記パラメータの個数と、継続異常と判定された前記パラメータの個数とを表示するための情報を前記ユーザに通知する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記記憶部は、複数の前記パラメータのうちの少なくとも一つのパラメータの時系列値を含む時系列データをさらに記憶し、
前記時系列データと、前記少なくとも一つのパラメータに対応する前記閾値条件との関係性を示すグラフを生成するグラフ生成部をさらに備え、
前記通知部は、新規異常と判定された前記少なくとも一つのパラメータに関する前記グラフを表示するための情報を前記ユーザに通知する、請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記記憶部は、複数の前記パラメータのうちの二以上のパラメータの時系列値を含む時系列データをさらに記憶し、
前記二以上のパラメータのそれぞれに対応する前記時系列値の関係性を示すグラフを生成するグラフ生成部をさらに備え、
前記通知部は、新規異常と判定された前記二以上のパラメータに関する前記グラフを表示するための情報を前記ユーザに通知する、請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記時系列データは、現在から所定期間内の時系列値を含む直近データと、前記所定期間外の時系列値を含む過去データとを含み、
前記グラフ生成部は、前記直近データが前記過去データとは異なる表示態様で表示される前記グラフを生成する、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記通知部は、新規異常と判定された前記少なくとも一つのパラメータに関する前記グラフと、継続異常と判定された前記少なくとも一つのパラメータに関する前記グラフとを一覧表示するための情報を前記ユーザに通知する、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記取得部は、複数の前記パラメータのうちの少なくとも一つのパラメータについて、基準期間内の複数の時点で取得される取得値で構成される短期データと、前記基準期間における代表値で構成される長期データとを取得し、
前記判定部は、前記少なくとも一つのパラメータについて、前記短期データおよび前記長期データのそれぞれが正常、新規異常または継続異常のいずれであるかを判定し、
前記通知部は、前記短期データおよび前記長期データの少なくとも一方が新規異常と判定された場合、ユーザに通知する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記通知部は、新規異常と判定された前記短期データの個数と、継続異常と判定された前記短期データの個数と、新規異常と判定された前記長期データの個数と、継続異常と判定された前記長期データの個数とを表示するための情報を前記ユーザに通知する、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記短期データと前記短期データに対応する前記閾値条件との関係性を示す短期グラフ、および、前記長期データと前記長期データに対応する前記閾値条件との関係性を示す長期グラフの少なくとも一方を生成するグラフ生成部をさらに備え、
前記通知部は、新規異常と判定された前記短期データに関する前記短期グラフ、および、新規異常と判定された前記長期データに関する前記長期グラフの少なくとも一方を表示するための情報を前記ユーザに通知する、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記短期データと前記短期データに対応する前記閾値条件との関係性を示す短期グラフ、および、前記長期データと前記長期データに対応する前記閾値条件との関係性を示す長期グラフの少なくとも一方を生成するグラフ生成部をさらに備え、
前記グラフ生成部は、前記短期グラフとして、新規異常と判定された前記短期データに関する第1短期グラフと、継続異常と判定された前記短期データに関する第2短期グラフとを生成し、
前記グラフ生成部は、前記長期グラフとして、新規異常と判定された前記長期データに関する第1長期グラフと、継続異常と判定された前記長期データに関する第2長期グラフとを生成し、
前記通知部は、前記第1短期グラフ、前記第2短期グラフ、前記第1長期グラフおよび前記第2長期グラフの少なくともいずれかを一覧表示するための情報を前記ユーザに通知する、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項12】
プラントの運転状態を示す複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得するステップと、
複数の前記パラメータに対応する複数の閾値条件を設定するステップと、
複数の前記パラメータのそれぞれについて、正常、新規異常または継続異常のいずれかを示す前回判定されたステータスを取得するステップと、
複数の前記パラメータのそれぞれについて、a)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足する場合に正常と判定し、b)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常である場合に新規異常と判定し、c)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常ではない場合に継続異常と判定するステップと、
新規異常と判定された前記パラメータが存在する場合、ユーザに通知するステップと、を備えるモニタリング方法。
【請求項13】
プラントの運転状態を示す複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得する機能と、
複数の前記パラメータに対応する複数の閾値条件を設定する機能と、
複数の前記パラメータのそれぞれについて、正常、新規異常または継続異常のいずれかを示す前回判定されたステータスを取得する機能と、
複数の前記パラメータのそれぞれについて、a)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足する場合に正常と判定し、b)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常である場合に新規異常と判定し、c)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常ではない場合に継続異常と判定する機能と、
新規異常と判定された前記パラメータが存在する場合、ユーザに通知する機能と、をコンピュータに実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、モニタリング方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製工場等のプラントでは、プラントの操業に関するプラントデータが取得され、取得したプラントデータを用いてプラントの異常の有無やメンテナンス要否などが判断される。例えば、取得したプラントデータと、プラントの劣化に関するパラメータ値に応じたプラントデータの目標値とをグラフ上に表示する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラントを適切に運転させるためには、多数のパラメータについて異常の有無を逐次確認し、異常が検知された場合には異常の解消に向けて対処する必要がある。異常の解消に時間を要する場合、対処中の異常が継続的に検知されることによってアラートが継続する場合がある。アラートが継続する場合、ユーザは、アラートを煩わしく感じ、アラートを適切に確認しなくなるおそれがある。また、アラートの継続中に別の新たな異常が検知される場合であっても、ユーザがアラートを重要視しなくなることで、新たな異常を見落としてしまうおそれがある。このような多数のパラメータの状況をユーザが適切に把握するための手法を提供できることが好ましい。
【0005】
本開示のある態様の例示的な目的の一つは、プラントの運転状態を示す複数のパラメータの状況を適切にモニタリングする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様の情報処理装置は、プラントの運転状態を示す複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得する取得部と、複数のパラメータに対応する複数の閾値条件を設定する設定部と、複数のパラメータのそれぞれについて、正常、新規異常または継続異常のいずれかを示すステータスを記憶する記憶部と、複数のパラメータのそれぞれについて、a)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足する場合に正常と判定し、b)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足しない場合であって、前回判定されたステータスが正常である場合に新規異常と判定し、c)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足しない場合であって、前回判定されたステータスが正常ではない場合に継続異常と判定する判定部と、新規異常と判定されたパラメータが存在する場合、ユーザに通知する通知部と、を備える。
【0007】
本開示の別の態様は、モニタリング方法である。この方法は、プラントの運転状態を示す複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得するステップと、複数のパラメータに対応する複数の閾値条件を設定するステップと、複数のパラメータのそれぞれについて、正常、新規異常または継続異常のいずれかを示す前回判定されたステータスを取得するステップと、複数のパラメータのそれぞれについて、a)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足する場合に正常と判定し、b)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足しない場合であって、前回判定されたステータスが正常である場合に新規異常と判定し、c)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足しない場合であって、前回判定されたステータスが正常ではない場合に継続異常と判定するステップと、新規異常と判定されたパラメータが存在する場合、ユーザに通知するステップと、を備える。
【0008】
本開示のさらに別の態様は、プログラムである。このプログラムは、プラントの運転状態を示す複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得する機能と、複数のパラメータに対応する複数の閾値条件を設定する機能と、複数のパラメータのそれぞれについて、正常、新規異常または継続異常のいずれかを示す前回判定されたステータスを取得する機能と、複数のパラメータのそれぞれについて、a)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足する場合に正常と判定し、b)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足しない場合であって、前回判定されたステータスが正常である場合に新規異常と判定し、c)取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足しない場合であって、前回判定されたステータスが正常ではない場合に継続異常と判定する機能と、新規異常と判定されたパラメータが存在する場合、ユーザに通知する機能と、をコンピュータに実現させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、複数のパラメータのモニタリングを支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る情報処理装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2(a),(b)は、時系列データの一例を示す図である。
【
図3】
図3(a),(b)は、ステータスデータの一例を示す図である。
【
図9】実施の形態に係るモニタリング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の概要を説明する。本開示は、石油精製工場等のプラントの運転状態を示す複数のパラメータをモニタリングする技術に関する。本開示では、複数のパラメータのそれぞれのステータスを正常、新規異常および継続異常の三つに分けて管理する。本開示によれば、新規異常と継続異常を区別することにより、既知の異常のみが継続する状況と、新規の異常が発生する状況とを容易に区別できる。これにより、対処すべき新規の異常が既知の異常に埋もれてしまうことを防ぎ、新規の異常に迅速に対処することが可能となる。
【0012】
以下、本開示の技術を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0013】
本開示における装置または方法の主体は、コンピュータを備える。このコンピュータがコンピュータプログラムを実行することによって、本開示における装置または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、コンピュータプログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、コンピュータプログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC、LSI等)を含む一つまたは複数の電子回路で構成される。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的な記録媒体に記録される。コンピュータプログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0014】
図1は、実施の形態に係る情報処理装置10の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置10は、ネットワーク50を介してデータ管理装置52、プラント管理装置54およびユーザ端末56と接続する。
【0015】
情報処理装置10、データ管理装置52、プラント管理装置54およびユーザ端末56のそれぞれは、サーバ、ワークステーションまたはパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータ、もしくは、スマートフォンまたはタブレット型コンピュータ等の携帯端末である。一例として、情報処理装置10、データ管理装置52およびプラント管理装置54は、サーバであり、ユーザ端末56は、パーソナルコンピュータである。
【0016】
本開示のブロック図で示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサやROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現される。ここでは、ハードウェアおよびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックを描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって、いろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0017】
図1に示す複数の機能ブロックのうち少なくとも一部の機能ブロックの機能を実装したコンピュータプログラムが、1台または複数台のコンピュータのストレージにインストールされてもよい。1台または複数台のコンピュータのCPUは、自機にインストールされたコンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより、
図1に示す複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0018】
また、
図1に示す複数の機能ブロックの機能は、1台のコンピュータにより実行されてもよく、複数台のコンピュータにより分散して実行されてもよい。
図1に示す複数の機能ブロックの機能が複数台のコンピュータにより分散して実行される場合、それら複数台のコンピュータは、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットを含む通信網を介してデータを送受信してもよい。
【0019】
ネットワーク50は、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、無線基地局によって構築される各種移動通信システム含む通信網で構成される。移動通信システムとしては、例えば、3G、4Gまたは5Gなどの移動通信システム、LTE(Long Term Evolution)および所定のアクセスポイントによってインターネットに接続可能な無線ネットワーク(例えば、Wi-Fi(登録商標))が挙げられる。
【0020】
データ管理装置52は、情報処理装置10にて使用するデータを取得して管理する。データ管理装置52は、例えば、監視対象となるプラントに関連する様々なデータを収集して蓄積するデータサーバである。データ管理装置52は、例えば、プラント管理装置54またはユーザ端末56から必要なデータを取得する。
【0021】
プラント管理装置54は、プラント装置58からデータを取得して管理する。プラント装置58は、監視対象となるプラントを構成する装置群であり、所望の組成物を製造するための様々な処理を実行する。プラント装置58は、プラントの運転状態を示すパラメータの値を取得するためのセンサを備える。プラント装置58が備えるセンサの種類は特に限られないが、例えば、圧力センサ、温度センサ、流量センサ、濃度センサなどである。プラント管理装置54は、プラント装置58が備えるセンサにて計測される計測値を取得する。
【0022】
ユーザ端末56は、プラントを管理するユーザまたはオペレータが使用する。ユーザ端末56は、情報処理装置10にて使用するデータを入力するための入力画面を表示する。ユーザ端末56に入力されたデータは、例えば、データ管理装置52に送信され、データ管理装置52にて管理される。ユーザ端末56は、情報処理装置10の動作を設定するための設定画面を表示する。ユーザは、ユーザ端末56に表示される設定画面を通じて、情報処理装置10の動作設定を確認したり、変更したりすることができる。ユーザ端末56は、情報処理装置10から通知される情報を表示する。
【0023】
情報処理装置10は、処理部12と、設定部14と、記憶部16とを備える。
【0024】
処理部12は、監視対象となるプラントの運転状態の分析に必要な一連の処理を実行する。処理部12は、必要な処理を定期的に実行するよう構成され、例えば、所定時間ごとまたは1日ごとにバッチ処理を実行するよう構成される。処理部12は、バッチ処理に代えて、または、バッチ処理に加えて、必要な処理を逐次実行してもよい。処理部12は、取得部20と、判定部22と、グラフ生成部24と、通知部26とを備える。
【0025】
設定部14は、処理部12の動作を定める設定ファイルを管理する。設定部14にて管理される設定ファイルは、例えば、ユーザ端末56を通じて閲覧および更新される。設定部14は、取得設定部30と、条件設定部32と、グラフ設定部34とを備える。
【0026】
記憶部16は、処理部12の処理に必要なデータを記憶する。記憶部16は、時系列データ40と、ステータスデータ42と、グラフデータ44と、知見データ46とを記憶する。
【0027】
取得部20は、監視対象となるプラントの運転状態を示す複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得する。複数のパラメータは、プラント装置58が備えるセンサによって計測されるパラメータを含む。センサによって計測可能なパラメータの種類は特に限られないが、例えば、圧力、温度、流量、濃度、効率、生成量などである。
【0028】
取得部20は、取得設定部30にて管理される取得設定にしたがって複数のパラメータ値を取得する。取得設定部30は、プラントID、パラメータID、パラメータ名称、取得先、取得タイミングなどを取得設定として管理する。プラントIDは、監視対象となるプラントの識別子であり、プラントの場所や装置群ごとに設定される。パラメータIDは、監視対象となるパラメータの識別子であり、パラメータごとに設定される。取得先は、パラメータ値の格納場所を示し、例えば、データ管理装置52やプラント管理装置54などのサーバのアドレスを示す。取得タイミングは、パラメータ値を取得する日時などを示す。
【0029】
取得部20が取得するパラメータ値は、センサの計測値自体であってもよいし、一以上のセンサによる計測値から演算される演算値であってもよい。取得部20は、一以上のセンサによる計測値を取得し、取得した計測値を用いて、少なくとも一つのパラメータ値を演算してもよい。取得部20は、例えば、プラント装置58が備える第1センサによる第1計測値と、プラント装置58に設けられる第2センサによる第2計測値とを取得し、第1計測値と第2計測値の比率をパラメータ値として演算してもよい。取得部20は、パラメータ値を取得日時と対応付けて取得する。取得日時は、プラント装置58が備えるセンサにて計測された日時であってもよいし、データ管理装置52やプラント管理装置54がパラメータ値を取得した日時であってもよい。
【0030】
取得部20は、取得したパラメータ値を時系列データ40として記憶部16に記憶させる。時系列データ40は、パラメータの時系列値を含む。パラメータの時系列値は、プラントIDおよびパラメータIDをキーとして、パラメータ値と、パラメータの取得日時とを含む。取得部20は、取得したパラメータ値を記憶部16に蓄積することにより、過去から現在までのパラメータの時系列値で構成される時系列データ40を生成する。取得部20は、何らかの不具合等の理由によってパラメータ値を一時的に取得できなかった場合、パラメータごとに予め定められたパラメータ値(例えば0)を記憶部16に記憶させてもよい。
【0031】
時系列データ40は、短期データ40aと、長期データ40bとを含んでもよい。短期データ40aは、基準期間(例えば1日)内の複数の時点で取得される取得値で構成され、比較的短い時間周期で(例えば1分ごと、6分ごと、30分ごとに)パラメータ値が取得される。長期データ40bは、基準期間(例えば1日)における代表値で構成され、比較的長い時間周期で(例えば1日ごとに)パラメータ値が取得される。
【0032】
図2(a),(b)は、時系列データ40の一例を示す図である。
図2(a)は、短期データ40aの一例を示す。
図2(a)の例では、複数のパラメータA,C,Dのそれぞれのパラメータ値が6分ごとに取得される。短期データ40aは、6分間隔で取得される複数のパラメータA,C,Dのそれぞれの時系列値を含む。
図2(b)は、長期データ40bの一例を示す。
図2(b)の例では、複数のパラメータA、B,Cのそれぞれのパラメータ値が1日ごとに取得される。長期データ40bは、1日ごとに取得される複数のパラメータA、B,Cの時系列値を含む。
【0033】
取得部20は、少なくとも一つのパラメータ(例えばパラメータA)のパラメータ値として、短期データ40aおよび長期データ40bを別個に取得してもよい。この場合、取得部20は、取得したパラメータAの短期データ40aと、取得したパラメータAの長期データ40bとを区別して記憶部16に記憶させる。
【0034】
取得部20は、少なくとも一つのパラメータ(例えばパラメータB)のパラメータ値として、長期データのみを取得してもよい。この場合、取得部20は、取得したパラメータBの長期データ40bのみを時系列データ40として記憶部16に記憶させる。この場合、記憶部16は、パラメータBについて、長期データ40bのみを記憶し、短期データ40aを記憶しない。
【0035】
取得部20は、少なくとも一つのパラメータ(例えばパラメータC)のパラメータ値として、短期データ40aのみを取得してもよい。この場合、取得部20は、取得したパラメータCの短期データ40aからパラメータCの長期データ40bを生成してもよい。取得部20は、例えば、基準期間内に取得されるパラメータCの複数の取得値から中央値、平均値または最頻値を算出し、算出した値を基準期間におけるパラメータCの代表値としてもよい。この場合、取得部20は、取得したパラメータCの短期データ40aと、生成したパラメータCの長期データ40bとを区別して記憶部16に記憶させる。
【0036】
判定部22は、取得部20が取得したパラメータ値が正常、新規異常または継続異常のいずれであるかを判定する。判定部22は、監視対象となる複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を個別に判定する。判定部22は、判定結果をステータスデータ42として記憶部16に記憶させる。判定部22は、特定のパラメータ(例えばパラメータAまたはパラメータC)について、短期データ40aと長期データ40bの双方が取得される場合、短期データ40aおよび長期データ40bのそれぞれのパラメータ値が正常、新規異常または継続異常のいずれであるかを判定してもよい。判定部22は、短期データ40aの判定結果を短期ステータス42aとして記憶部16に記憶させてもよい。判定部22は、長期データ40bの判定結果を長期ステータス42bとして記憶部16に記憶させてもよい。
【0037】
図3(a),(b)は、ステータスデータ42の一例を示す図である。
図3(a)は、短期ステータス42aの一例を示し、
図3(b)は、長期ステータス42bの一例を示す。
図3(a),(b)の例では、複数のパラメータA~Gのそれぞれについて、正常、新規異常または継続異常のステータスが設定されている。パラメータBについては、短期データ40aが存在しないため、短期ステータス42aが設定されていない。
【0038】
判定部22は、条件設定部32にて管理される閾値条件を用いて判定する。判定部22は、取得したパラメータ値が閾値条件を充足する場合、そのパラメータを正常と判定する。判定部22は、取得したパラメータ値が閾値条件を充足しない場合、そのパラメータを新規異常または継続異常と判定する。判定部22は、閾値条件を充足しない場合、ステータスデータ42に記憶される前回判定されたステータスを用いて、新規異常または継続異常と判定する。判定部22は、閾値条件を充足しない場合であって、前回判定されたステータスが正常である場合、新規異常と判定する。判定部22は、閾値条件を充足しない場合であって、前回判定されたステータスが正常ではない場合、継続異常と判定する。
【0039】
図4は、判定部22による判定処理を模式的に示し、閾値条件の充足性と、前回判定されたステータスと、今回の判定結果との対応関係を示す。判定部22は、閾値条件を充足する場合、前回判定されたステータスが正常、新規異常または継続異常のいずれであっても、正常と判定する。判定部22は、閾値条件を充足しない場合、前回判定されたステータスが正常であれば、新規異常と判定する。判定部22は、閾値条件を充足しない場合、前回判定されたステータスが新規異常または継続異常のいずれかであれば、継続異常と判定する。
【0040】
条件設定部32は、監視対象となる複数のパラメータに対応する複数の閾値条件を設定する。閾値条件は、例えば、パラメータ値が正常と判定される範囲の上限値および下限値の少なくとも一方を含む。閾値条件は、例えば、パラメータごとに設定することができる。なお、複数のパラメータのうちの任意の二以上のパラメータについて、共通の閾値条件が設定されてもよい。特定のパラメータ(例えばパラメータA)について、短期データと長期データの双方が取得される場合、短期データと長期データの双方に共通の閾値条件が設定されてもよいし、短期データと長期データのそれぞれに別個の閾値条件が設定されてもよい。
【0041】
グラフ生成部24は、グラフ設定部34にて管理されるグラフ設定にしたがってグラフを生成する。グラフ生成部24は、生成したグラフをグラフデータ44として記憶部16に記憶させる。グラフ生成部24が生成するグラフは、時系列グラフと、相関グラフとを含む。時系列グラフは、少なくとも一つのパラメータの時系列値をそのまま表示するグラフであり、横軸が時間軸であり、縦軸がパラメータ値である。時系列グラフは、二以上のパラメータの時系列値を表示してもよい。相関グラフは、二以上のパラメータのそれぞれに対応する時系列値の相関を示すグラフであり、例えば、横軸が第1パラメータ値であり、縦軸が第2パラメータ値である。この場合、相関グラフに示されるプロットは、例えば、同じ日時に取得された第1パラメータ値と第2パラメータ値を座標値とする点の集合である。
【0042】
グラフ設定部34は、グラフID、グラフ名称、グラフ種類、パラメータID、閾値条件などをグラフ設定として管理する。グラフ種類は、例えば、時系列グラフまたは相関グラフである。パラメータIDは、グラフに使用するパラメータを指定する。閾値条件は、グラフに正常範囲を表示するための上限値および下限値の少なくとも一方を含む。
【0043】
図5は、時系列グラフの一例を示す図である。
図5の縦軸のパラメータは、ガス温度(℃)である。
図5の時系列グラフ60は、約2年間の長期データの時系列値62を示す。時系列グラフ60は、ガス温度の閾値条件に相当する上限値64と下限値66をさらに表示する。時系列グラフ60を使用するユーザは、パラメータの時系列値62のトレンドを確認するとともに、パラメータの時系列値62が上限値64から下限値66までの正常範囲内に収まっているか否かを確認できる。ユーザは、時系列グラフ60を確認することにより、時系列グラフ60に示されるパラメータの閾値条件の設定を必要に応じて変更することができる。
【0044】
図5の時系列グラフ60では、一つのパラメータの時系列値のみが示されているが、二以上のパラメータの時系列値が一つのグラフに表示されてもよい。二以上のパラメータの時系列値は、縦軸(つまり、単位および数値範囲)が共通であってもよいし、異なってもよい。一つのグラフに二以上のパラメータの時系列値が表示される場合、二以上のパラメータに対応する二以上の閾値条件(つまり、二以上の上限値および二以上の下限値の少なくとも一方)が表示されてもよい。
【0045】
図6は、相関グラフの一例を示す図である。
図6の横軸に設定される第1パラメータは、プラントで処理される組成物の1日あたりの処理量(トン/日)である。
図6の縦軸に設定される第2パラメータは、組成物を処理する処理温度(℃)である。
図6の相関グラフ70は、処理量および処理温度の約2年間の長期データの時系列値から生成される。
図6の相関グラフ70は、直近データを示すプロット72aと、過去データを示すプロット72bとを含む。直近データを示すプロット72aは、過去データを示すプロット72bとは異なる表示態様で表示される。直近データは、現在から所定期間内に取得されたパラメータの時系列値で構成される。過去データは、直近データを除いた残りのデータであり、所定期間外に取得されたパラメータの時系列値で構成される。直近データとされる所定期間の長さは特に限られないが、長期データにおける所定期間は、例えば1ヶ月から2ヶ月程度であり、短期データにおける所定期間は、例えば1日から1週間程度である。
図6の相関グラフ70では、横軸の第1パラメータと縦軸の第2パラメータの相関の上限を示す直線74がさらに表示されている。なお、横軸の第1パラメータと縦軸の第2パラメータの相関の下限を示す直線を設定することも可能である。閾値条件として、直線の他に、第1パラメータと第2パラメータを用いた任意の関数を設定すること可能である。
【0046】
図7は、相関グラフの別の一例を示す図である。
図7の相関グラフ80では、縦軸のパラメータが二以上であり、具体的には4個のパラメータが用いられている。第1プロット82は、プラントの第1装置の処理温度と処理量の相関を示し、第2プロット84は、プラントの第2装置の処理温度と処理量の相関を示し、第3プロット86は、プラントの第3装置の処理温度と処理量の相関を示し、第4プロット88は、プラントの第4装置の処理温度と処理量の相関を示す。第1装置、第2装置、第3装置および第4装置は、例えば、対象物を連続的に処理するために順に接続される処理装置である。各プロット82~88は、直近データを示すプロット82a,84a,86a,88aと、過去データを示すプロット82b,84b,86b,88bとを含む。互いに関連する複数の装置のパラメータを一つの相関グラフ80にまとめて表示することにより、複数の処理装置全体の状況の把握が容易となる。
【0047】
図5~
図7に示すグラフ60,70,80では、長期データの時系列値を用いているが、グラフ生成部24は、短期データの時系列値を用いて時系列グラフを生成してもよい。グラフ生成部24は、短期データの時系列値を示す短期グラフおよび長期データの時系列値を示す長期グラフの双方を生成してもよい。短期グラフは、短期データと短期データに対応する閾値条件(例えば上限値または下限値)との関係性を示してもよい。長期グラフは、長期データと長期データに対応する閾値条件(例えば上限値または下限値)との関係性を示してもよい。
【0048】
通知部26は、監視対象となる複数のパラメータに関する情報をユーザに通知する。通知部26は、判定部22によって判定されたステータスに基づいて、ユーザに通知するか否かを決定する。通知部26は、新規異常と判定されたパラメータが存在する場合、ユーザに通知する。通知部26は、新規異常と判定されたパラメータが存在しない場合、ユーザに通知しない。これにより、既知の異常のみが継続される場合にはユーザに通知されなくなるため、ユーザは新たに対処すべき新規の異常をより迅速に認識できる。通知部26は、例えば、電子メールをユーザに送信することにより、ユーザに通知する。なお、ユーザへの通知手段は電子メールに限られず、任意の通知機能(例えばプッシュ通知機能)を利用してユーザに通知してもよい。
【0049】
通知部26は、ユーザに通知する場合、新規異常と判定されたパラメータの個数と、継続異常と判定されたパラメータの個数とをユーザに通知してもよい。通知部26は、新規異常と判定された短期データの個数と、新規異常と判定された長期データの個数とを区別してユーザに通知してもよい。通知部26は、継続異常と判定された短期データの個数と、継続異常と判定された長期データの個数とを区別してユーザに通知してもよい。例えば、
図3(a),(b)に示されるパラメータA~Gが監視対象となる場合、新規異常である短期データの個数は1個であり、継続異常である短期データの個数は2個であり、新規異常である長期データの個数は0個であり、継続異常である長期データの個数は2個である。通知部26は、新規異常と判定されたパラメータのIDや名称をユーザに通知してもよい。
【0050】
通知部26は、ユーザに通知する場合、新規異常と判定されたパラメータに関するグラフを表示するための情報をユーザに通知してもよい。新規異常と判定されたパラメータに関するグラフとは、新規異常と判定されたパラメータの時系列値を用いる時系列グラフまたは相関グラフである。また、グラフを表示するための情報とは、グラフを表示するための画像データであってもよいし、グラフデータの取得先を示すアドレス情報であってもよい。前者の場合、ユーザに通知される電子メールにグラフの画像データが添付されてもよい。後者の場合、ユーザに通知される電子メールにグラフを表示するためのアドレス情報が記載されてもよい。
【0051】
通知部26は、ユーザに通知する場合、新規異常と判定された短期データに関する第1短期グラフを表示するための情報を通知してもよい。通知部26は、ユーザに通知する場合、継続異常と判定された短期データに関する第2短期グラフを表示するための情報を通知してもよい。通知部26は、ユーザに通知する場合、新規異常と判定された長期データに関する第1長期グラフを表示するための情報を通知してもよい。通知部26は、ユーザに通知する場合、継続異常と判定された長期データに関する第2長期グラフを表示するための情報を通知してもよい。第1短期グラフおよび第2短期グラフは、短期データに対応する閾値条件を含んでもよく、例えば正常範囲を示すための上限値や下限値を含んでもよい。第1長期グラフおよび第2長期グラフは、長期データに対応する閾値条件を含んでもよく、例えば正常範囲を示すための上限値や下限値を含んでもよい。
【0052】
通知部26は、ユーザに通知する場合、新規異常または継続異常と判定されたパラメータに関する知見データ46を表示するための情報をユーザに通知してもよい。知見データ46は、パラメータ値が異常となった場合に検討すべき事項や実施すべき事項などのノウハウ情報を含む。知見データ46は、パラメータごとのノウハウ情報を含む。知見データ46を表示するための情報は、知見データ46に含まれる文字データや画像データであってもよいし、知見データ46に含まれる文字や画像を表示するためのアドレス情報であってもよい。知見データ46は、プラントを管理するオペレータによって過去から現在までに蓄積されたノウハウなどに基づいて予め用意される。
【0053】
通知部26は、ユーザに通知するためのレポート画面を生成してもよい。通知部26は、例えば、レポート画面をユーザ端末56に表示させるためのアドレス情報をユーザに通知してもよい。
【0054】
図8は、レポート画面の一例を示す図である。
図8のレポート画面90の上部には、新規異常または継続異常と判定された短期データの個数92aと、新規異常または継続異常と判定された長期データの個数92bとが表示される。レポート画面90の中央には、新規異常と判定されたパラメータの詳細情報94と、新規異常と判定されたパラメータに関するグラフ95と、新規異常と判定されたパラメータに関する知見情報96とが表示される。詳細情報94として、パラメータのIDおよび名称である「ID12:第2反応炉ガス温度」と、異常と判定された理由である「下限値抵触」と、閾値条件として設定される下限値である「135℃」と、前日の正常なパラメータ値である「139℃」と、当日の異常なパラメータ値である「133℃」とが表示されている。グラフ95は、新規異常と判定された短期データの時系列値を示す時系列グラフであり、例えば、1ヶ月間に取得された時系列値を示す。知見情報96として、パラメータを監視対象に選定した理由、異常が発生した場合に推定される要因、異常を放置した場合に生じうるリスク、異常を解消するための取りうるアクションなどが表示される。また、レポート画面90の下部には、対応を検討したユーザの見解などを自由記述するコメント欄97が設けられる。コメント欄97に入力された内容は、例えば、知見データ46として記憶部16に記憶される。
【0055】
レポート画面90は、継続異常であるパラメータに関するグラフ、知見情報およびコメント欄を表示してもよい。この場合、レポート画面90は、新規異常であるパラメータに関するグラフと、継続異常であるパラメータに関するグラフとを一覧表示する。
【0056】
レポート画面90は、新規異常である短期データに関する第1短期グラフ、継続異常である短期データに関する第2短期グラフ、新規異常である長期データに関する第1長期グラフ、および、継続異常である長期データに関する第2長期グラフの少なくともいずれかを表示してもよい。レポート画面90は、新規異常である短期データに関する第1短期グラフ、継続異常である短期データに関する第2短期グラフ、新規異常である長期データに関する第1長期グラフ、および、継続異常である長期データに関する第2長期グラフを一覧表示してもよい。レポート画面90は、新規異常または継続異常である全てのパラメータの知見情報96を一覧表示してもよい。レポート画面90は、新規異常または継続異常である全てのパラメータに対するコメント欄97を表示してもよい。
【0057】
図9は、実施の形態に係るモニタリング方法を示すフローチャートである。取得部20は、監視対象となるプラントの運転状態を示す複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得する(S10)。判定部22は、複数のパラメータのそれぞれについて、取得したパラメータ値が対応する閾値条件を充足するかを判定する(S12)。判定部22は、閾値条件を充足する場合(S12のY)、正常と判定する(S14)。判定部22は、閾値条件を充足しない場合(S12のN)、判定対象となるパラメータの前回判定されたステータスを取得し、前回判定されたステータスが正常であれば(S16のY)、新規異常と判定する(S18)。判定部22は、前回判定されたステータスが正常でなければ(S16のN)、継続異常と判定する(S20)。判定部22は、判定結果に基づいて記憶部16に記憶されるパラメータのステータスを更新する(S22)。判定部22は、取得した複数のパラメータの全てが判定されていない場合(S24のN)、S12~S22の処理を繰り返す。取得した複数のパラメータの全てが判定された場合(S24のY)、通知部26は、新規異常と判定されたパラメータが存在するか否かを確認する(S26)。通知部26は、新規異常と判定されたパラメータが存在する場合(S26のY)、ユーザに通知する(S28)。通知部26は、新規異常と判定されたパラメータが存在しない場合(S26のN)、S28の処理をスキップし、ユーザに通知しない。
【0058】
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
実施の形態は、上述の方法を実現するための機能をコンピュータに実現させるためのプログラムであってもよいし、プログラムを格納する記録媒体であってもよい。このようなプログラムを格納する記録媒体は、非一時的(non-transitory)かつ有形(tangible)なコンピュータ読み取り可能(computer readable)である記録媒体(storage medium)であってもよく、不揮発性メモリ、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、または、光学ディスクなどの光学記録媒体であってもよい。
【0060】
以下、本開示のいくつかの態様について説明する。
【0061】
第1の態様は、プラントの運転状態を示す複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得する取得部と、複数の前記パラメータに対応する複数の閾値条件を設定する設定部と、複数の前記パラメータのそれぞれについて、正常、新規異常または継続異常のいずれかを示すステータスを記憶する記憶部と、複数の前記パラメータのそれぞれについて、a)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足する場合に正常と判定し、b)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常である場合に新規異常と判定し、c)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常ではない場合に継続異常と判定する判定部と、新規異常と判定された前記パラメータが存在する場合、ユーザに通知する通知部と、を備える情報処理装置である。第1の態様によれば、新規異常と継続異常を区別することにより、既知の異常のみが継続する状況と、新規の異常が発生する状況とを容易に区別できる。これにより、ユーザは、新たに対処すべき新規の異常をより迅速に認識でき、新規異常に対してより迅速に対処可能となる。
【0062】
第2の態様は、前記通知部は、新規異常と判定された前記パラメータが存在しない場合、前記ユーザに通知しない、第1の態様に記載の情報処理装置である。第2の態様によれば、新規異常が存在しない場合にユーザに通知しないことで、既知の異常のみが継続する状況においてユーザに通知が継続されないようにする。これにより、ユーザは、新たに対処すべき新規の異常をより迅速に認識でき、新規異常に対してより迅速に対処可能となる。
【0063】
第3の態様は、前記通知部は、新規異常と判定された前記パラメータの個数と、継続異常と判定された前記パラメータの個数とを表示するための情報を前記ユーザに通知する、第1または第2の態様に記載の情報処理装置である。第3の態様によれば、新規異常と継続異常のパラメータの個数が区別して通知されるため、異常の発生数をまとめて通知する場合に比べて、異常の発生状況をより適切に把握することが容易となる。
【0064】
第4の態様は、前記記憶部は、複数の前記パラメータのうちの少なくとも一つのパラメータの時系列値を含む時系列データをさらに記憶し、前記時系列データと、前記少なくとも一つのパラメータに対応する前記閾値条件との関係性を示すグラフを生成するグラフ生成部をさらに備え、前記通知部は、新規異常と判定された前記少なくとも一つのパラメータに関する前記グラフを表示するための情報を前記ユーザに通知する、第1から第3のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第4の態様によれば、新規異常であるパラメータの時系列値と閾値条件の関係性を示すグラフを確認できるため、新規異常により迅速に対処できる。
【0065】
第5の態様は、前記記憶部は、複数の前記パラメータのうちの二以上のパラメータの時系列値を含む時系列データをさらに記憶し、前記二以上のパラメータのそれぞれに対応する前記時系列値の関係性を示すグラフを生成するグラフ生成部をさらに備え、前記通知部は、新規異常と判定された前記二以上のパラメータに関する前記グラフを表示するための情報を前記ユーザに通知する、第1から第3のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第5の態様によれば、新規異常に関連する二以上のパラメータの時系列値の相関を示すグラフを確認できるため、新規異常により迅速に対処できる。
【0066】
第6の態様は、前記時系列データは、現在から所定期間内の時系列値を含む直近データと、前記所定期間外の時系列値を含む過去データとを含み、前記グラフ生成部は、前記直近データが前記過去データとは異なる表示態様で表示される前記グラフを生成する、第5の態様に記載の情報処理装置である。第6の態様によれば、新規異常に関連するパラメータのグラフ上において直近のトレンドを過去のトレンドと比較できるため、新規異常により迅速に対処できる。
【0067】
第7の態様は、前記通知部は、新規異常と判定された前記少なくとも一つのパラメータに関する前記グラフと、継続異常と判定された前記少なくとも一つのパラメータに関する前記グラフとを一覧表示するための情報を前記ユーザに通知する、第4から第6のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第7の態様によれば、新規異常だけでなく、継続異常のグラフも同時に確認できるため、全ての異常の発生状況をより適切に把握できる。
【0068】
第8の態様は、前記取得部は、複数の前記パラメータのうちの少なくとも一つのパラメータについて、基準期間内の複数の時点で取得される取得値で構成される短期データと、前記基準期間における代表値で構成される長期データとを取得し、前記判定部は、前記少なくとも一つのパラメータについて、前記短期データおよび前記長期データのそれぞれが正常、新規異常または継続異常のいずれであるかを判定し、前記通知部は、前記短期データおよび前記長期データの少なくとも一方が新規異常と判定された場合、ユーザに通知する、第1から第7のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第8の態様によれば、少なくとも一つのパラメータについて、短期と長期のそれぞれの視点で異常の有無を確認できる。例えば、基準期間内において瞬時的に発生するような軽微な異常と、基準期間にわたって継続するような重大な異常とを区別して検知することができ、異常の発生状況をより適切に把握することが容易となる。
【0069】
第9の態様は、前記通知部は、新規異常と判定された前記短期データの個数と、継続異常と判定された前記短期データの個数と、新規異常と判定された前記長期データの個数と、継続異常と判定された前記長期データの個数とを表示するための情報を前記ユーザに通知する、第8の態様に記載の情報処理装置である。第9の態様によれば、短期と長期のそれぞれの観点で、新規異常と継続異常のパラメータの個数が区別して通知されるため、異常の発生数をまとめて通知する場合に比べて、異常の発生状況をより適切に把握することが容易となる。
【0070】
第10の態様は、前記短期データと前記短期データに対応する前記閾値条件との関係性を示す短期グラフ、および、前記長期データと前記長期データに対応する前記閾値条件との関係性を示す長期グラフの少なくとも一方を生成するグラフ生成部をさらに備え、前記通知部は、新規異常と判定された前記短期データに関する短期グラフ、および、新規異常と判定された前記長期データに関する長期グラフの少なくとも一方を表示するための情報を前記ユーザに通知する、第8または第9の態様に記載の情報処理装置である。第10の態様によれば、短期と長期のそれぞれの視点で生成されたグラフを確認できるため、異常の発生状況をより適切に把握することが容易となる。
【0071】
第11の態様は、前記短期データと前記短期データに対応する前記閾値条件との関係性を示す短期グラフ、および、前記長期データと前記長期データに対応する前記閾値条件との関係性を示す長期グラフの少なくとも一方を生成するグラフ生成部をさらに備え、前記グラフ生成部は、前記短期グラフとして、新規異常と判定された前記短期データに関する第1短期グラフと、継続異常と判定された前記短期データに関する第2短期グラフとを生成し、前記グラフ生成部は、前記長期グラフとして、新規異常と判定された前記長期データに関する第1長期グラフと、継続異常と判定された前記長期データに関する第2長期グラフとを生成し、前記通知部は、前記第1短期グラフと、前記第2短期グラフと、前記第1長期グラフと、前記第2長期グラフとを一覧表示するための情報を前記ユーザに通知する、第8から第10のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第11の態様によれば、新規異常と継続異常の双方について、短期と長期のそれぞれの視点で生成されたグラフを同時に確認できるため、全ての異常の発生状況をより適切に把握できる。
【0072】
第12の態様は、プラントの運転状態を示す複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得するステップと、複数の前記パラメータに対応する複数の閾値条件を設定するステップと、複数の前記パラメータのそれぞれについて、正常、新規異常または継続異常のいずれかを示す前回のステータスを取得するステップと、複数の前記パラメータのそれぞれについて、a)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足する場合に正常と判定し、b)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常である場合に新規異常と判定し、c)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常ではない場合に継続異常と判定するステップと、新規異常と判定された前記パラメータが存在する場合、ユーザに通知するステップと、を備えるモニタリング方法である。第12の態様によれば、新規異常と継続異常を区別することにより、既知の異常のみが継続する状況と、新規の異常が発生する状況とを容易に区別できる。これにより、ユーザは、新たに対処すべき新規の異常をより迅速に認識でき、新規異常に対してより迅速に対処可能となる。
【0073】
第13の態様は、プラントの運転状態を示す複数のパラメータに対応する複数のパラメータ値を取得する機能と、複数の前記パラメータに対応する複数の閾値条件を設定する機能と、複数の前記パラメータのそれぞれについて、正常、新規異常または継続異常のいずれかを示す前回判定されたステータスを取得する機能と、複数の前記パラメータのそれぞれについて、a)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足する場合に正常と判定し、b)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常である場合に新規異常と判定し、c)取得した前記パラメータ値が対応する前記閾値条件を充足しない場合であって、前回判定された前記ステータスが正常ではない場合に継続異常と判定する機能と、新規異常と判定された前記パラメータが存在する場合、ユーザに通知する機能と、をコンピュータに実現させるプログラムである。第13の態様によれば、新規異常と継続異常を区別することにより、既知の異常のみが継続する状況と、新規の異常が発生する状況とを容易に区別できる。これにより、ユーザは、新たに対処すべき新規の異常をより迅速に認識でき、新規異常に対してより迅速に対処可能となる。
【0074】
上述した実施の形態または態様に係る構成の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0075】
10…情報処理装置、12…処理部、14…設定部、16…記憶部、20…取得部、22…判定部、24…グラフ生成部、26…通知部、40…時系列データ、40a…短期データ、40b…長期データ、42…ステータスデータ、42a…短期ステータス、42b…長期ステータス、44…グラフデータ、46…知見データ。