(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010760
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】制振ダンパー
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240118BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
E04H9/02 351
F16F15/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112237
(22)【出願日】2022-07-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】522281132
【氏名又は名称】佐藤 悦志
(74)【代理人】
【識別番号】100122725
【弁理士】
【氏名又は名称】竹口 美穂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悦志
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB03
2E139AC19
2E139BA24
2E139BA32
2E139BD02
2E139BD36
3J048AA01
3J048BC02
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】施工現場において、取り付け容易に制振ダンパーを構造部材間に設置可能な制振ダンパーを提供する。
【解決手段】上記課題解決のため、制振ダンパー1は、第1基板11A、第1支柱12A、第1膨頭部13A及び第1弾性部材14Aを備えた第1のダンパー部材10Aと、第2基板11B、第2支柱12B、第2膨頭部13B及び第2弾性部材を備えた第2のダンパー部材10Bと、ロック部材15とを備える。第1膨頭部13Aが、引きばねを有する複数の第2支柱12Bを撓ませながらこの間に嵌り込んで、第1膨頭部13Aと第2膨頭部13Bとが係合し、第1膨頭部13Aが第2弾性部材14Bと当接し、第2膨頭部13Bが第1弾性部材14Aと当接する。ロック部材15で、第1膨頭部13Aと第2膨頭部13Bとを係合状態でロックするため、第1膨頭部13Aと複数の第2膨頭部13Bとが取り囲まれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する構造部材間に設置される制振ダンパーであって、
一方の前記構造部材に取り付けられる第1のダンパー部材と、他方の前記構造部材に取り付けられ、前記第1のダンパー部材と係合される第2のダンパー部材とを備え、
前記第1のダンパー部材は、
第1基板と、
前記第1基板の一面において、一方側に突出するように形成された、引きばねを有する第1支柱と、
前記第1支柱の先端に形成された第1膨頭部と、
前記第1基板の一面における前記第1支柱の周囲に、前記第1支柱と同方向に突出するように形成された、複数の第1弾性部材と、を備え、
前記第2のダンパー部材は、
前記第1基板と対向配置される第2基板と、
前記第2基板の前記第1基板側の一面において、前記第1基板側に突出するように形成され、前記第1弾性部材に対応する位置に形成された、引きばねを有する複数の第2支柱と、
前記第2支柱夫々の先端に形成された第2膨頭部と、
前記第2基板の前記第1基板側の一面において、前記複数の第2支柱の間であって前記第1支柱に対応する位置に形成されるとともに、前記第2支柱と同方向に突出するように形成された第2弾性部材と、を備え、
前記第1膨頭部が、前記複数の第2支柱の間に嵌り込んで、前記第1膨頭部と前記第2膨頭部とが係合するとともに、前記第1膨頭部が前記第2弾性部材と当接し、前記第2膨頭部が前記第1弾性部材と当接し、
前記第1膨頭部と前記第2膨頭部とを係合状態でロックするため、前記第1膨頭部と前記複数の第2支柱の前記第2膨頭部とを取り囲むロック部材を備えた、
ことを特徴とする制振ダンパー。
【請求項2】
前記第1弾性部材は、前記第2膨頭部を前記第2基板方向に付勢する押しばねであり、前記第2弾性部材は、前記第1膨頭部を前記第1基板方向に付勢する押しばねである、
ことを特徴とする請求項1に記載の制振ダンパー。
【請求項3】
前記第1膨頭部は、前記第1支柱における前記第1支柱の突出方向と直交する方向の寸法よりも径が大きい球状体であり、前記第2膨頭部は、前記第2支柱における前記第2支柱の突出方向と直交する方向の寸法よりも径が大きい球状体であり、
前記第1弾性部材の径寸法は、前記第2膨頭部の先端から前記第2支柱の突出方向と反対方向において略1/4の位置に沿った切断面の径寸法以上であるとともに、前記第2膨頭部の先端から前記第2支柱の突出方向と反対方向において略1/2の位置に沿った切断面の径寸法以下であり、
前記第2弾性部材の径寸法は、前記第1膨頭部の先端から前記第1支柱の突出方向と反対方向において略1/4の位置に沿った切断面の径寸法以上であるとともに、前記第1膨頭部の先端から前記第1支柱の突出方向と反対方向において略1/2の位置に沿った切断面の径寸法以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の制振ダンパー。
【請求項4】
前記第1支柱は、複数形成され、
前記複数の第1支柱及び前記複数の第2支柱は、複数行及び複数列のマトリクス状又はn角格子(nは3以上の自然数)の頂点に配置された、
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の制振ダンパー。
【請求項5】
複数階建ての制振建築物であって、
各階を構成する柱の少なくとも一部は、前記柱の下方と上方の両方に、請求項1から3の何れかに記載の制御ダンパーを備えた
ことを特徴とする制振建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振ダンパーに関し、特に対向する構造部材間への取り付けのための構造に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1及び特許文献2に示すような、対向する構造部材間に跨って設置され、地震時等、これらの構造部材の位置が相対的に移動するときに、建物の振動エネルギーを吸収して、制振機能を発揮する制振ダンパーは広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-324399号公報
【特許文献2】特許第2666652号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の制振ダンパーでは、対向する構造部材間に設置するために、施工現場においてボルト等で構造部材間に取り付ける作業が必要となるため、施工者に制振ダンパーの取り付けの負担がかかっていた。
【0005】
そこで、本発明の課題は、施工現場において、取り付け容易に制振ダンパーを構造部材間に設置可能な制振ダンパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る制振ダンパーは、対向する構造部材間に設置される制振ダンパーであって、一方の前記構造部材に取り付けられる第1のダンパー部材と、他方の前記構造部材に取り付けられ、前記第1のダンパー部材と係合される第2のダンパー部材とを備える。前記第1のダンパー部材は、第1基板と、前記第1基板の一面において、一方側に突出するように形成された、引きばねを有する第1支柱と、前記第1支柱の先端に形成された第1膨頭部と、前記第1基板の一面における前記第1支柱の周囲に、前記第1支柱と同方向に突出するように形成された、引きばねを有する複数の第1弾性部材と、を備える。第2のダンパー部材は、前記第1基板と対向配置される第2基板と、前記第2基板の前記第1基板側の一面において、前記第1基板側に突出するように形成され、前記第1弾性部材に対応する位置に形成された可撓性のある複数の第2支柱と、前記第2支柱夫々の先端に形成された第2膨頭部と、前記第2基板の前記第1基板側の一面において、前記複数の第2支柱の間であって前記第1支柱に対応する位置に形成されるとともに、前記第2支柱と同方向に突出するように形成された第2弾性部材と、を備える。前記第1膨頭部が、前記複数の第2支柱の間に嵌り込んで、前記第1膨頭部と前記第2膨頭部とが係合するとともに、前記第1膨頭部が前記第2弾性部材と当接し、前記第2膨頭部が前記第1弾性部材と当接する。制振ダンパーは、前記第1膨頭部と前記第2膨頭部とを係合状態でロックするため、前記第1膨頭部と前記複数の第2支柱の前記第2膨頭部とを取り囲むロック部材を備える。
【0007】
上記(1)に記載の構成によれば、第1のダンパー部材が一方の構造部材に取り付けられ、第2のダンパー部材が他方の構造部材に取り付けられる。この状態で、施工現場(建築現場等)に運びこみ、施工現場で、第1のダンパー部材と第2のダンパー部材とを係合させることが可能になる。具体的には、第1基板と第2基板とを対向させて、複数の第2支柱の引きばねを撓ませながら、第1膨頭部を複数の第2支柱の間に嵌め入れ、この嵌め入れ後に複数の第2支柱が復帰することで、第1膨頭部の根元(第1基板近傍の箇所)と複数の第2膨頭部の根元(第2基板近傍の箇所)とが係合される。また、第1膨頭部と第2膨頭部とが係合した状態では、第1膨頭部が第2弾性部材と当接し、第2膨頭部が第1弾性部材と当接することで、第1膨頭部と第2膨頭部との係合が外れ難くなる。更に、ロック部材によって、第1膨頭部と複数の第2膨頭部とを取り囲むことで、複数の第2支柱が異なった方向に傾いて、第1の膨頭部と複数膨頭部との係合が外れることを防止する。これによって、第1の膨頭部と複数膨頭部とが係合状態でロックされる。この様に、施工現場において、第1膨頭部を複数の第2支柱の間に嵌め入れて、ロック部材でロックするだけで、第1ダンパー部材と第2ダンパー部材とを係合させることができる。このため、施工現場での施工時の制振ダンパーの設置が容易になる。また、第1支柱及び第2支柱は、引きばねを有するため、地震時には構造部材の振動を吸収して、制振機能を発揮することが可能になる。
【0008】
(2)前記第1弾性部材は、前記第2膨頭部を前記第2基板方向に付勢する押しばねであり、前記第2弾性部材は、前記第1膨頭部を前記第1基板方向に付勢する押しばねであってもよい。
【0009】
上記(2)の構成によれば、第2膨頭部が第1弾性部材によって第2基板方向に付勢され、第1膨頭部が第2弾性部材によって第1基板方向に付勢されるため、第1膨頭部と第2膨頭部との係合が一層外れ難くなる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)の制振ダンパーにおいて、前記第1膨頭部は、前記第1支柱における前記第1支柱の突出方向と直交する方向の寸法よりも径が大きい球状体であり、前記第2膨頭部は、前記第2支柱における前記第2支柱の突出方向と直交する方向の寸法よりも径が大きい球状体であってもよい。前記第1弾性部材の径寸法は、前記第2膨頭部の先端から前記第2支柱の突出方向と反対方向において略1/4の位置に沿った切断面の径寸法以上であるとともに、前記第2膨頭部の先端から前記第2支柱の突出方向と反対方向において略1/2の位置に沿った切断面の径寸法以下であってもよい。前記第2弾性部材の径寸法は、前記第1膨頭部の先端から前記第1支柱の突出方向と反対方向において略1/4の位置に沿った切断面の径寸法以上であるとともに、前記第1膨頭部の先端から前記第1支柱の突出方向と反対方向において略1/2の位置に沿った切断面の径寸法以下であってもよい。
【0011】
上記(3)の構成によれば、第1膨頭部及び第2膨頭部が球体であるため、第1膨頭部が複数の第2膨頭部を通過させる際に、滑らかに通過させることができる。また、第1弾性部材の径寸法は、第2膨頭部の先端から第2支柱の突出方向と反対方向において略1/4の位置に沿った切断面の径寸法以上であるため、第1弾性部材の内部に、第2膨頭部の先端から第2支柱の突出方向と反対方向において少なくとも略1/4の位置が嵌り込む。また、第1弾性部材の径寸法は、第2膨頭部の先端から第2支柱の突出方向と反対方向において略1/2の位置に沿った切断面の径寸法以下であるため、第1弾性部材の内部とこの内部に嵌り込んだ第2膨頭部との間に隙間が空かない。第2弾性部材の径寸法は、第1膨頭部の先端から第1支柱の突出方向と反対方向において略1/4の位置に沿った切断面の径寸法以上であるため、第2弾性部材の内部に、第1膨頭部の先端から第1支柱の突出方向と反対方向において少なくとも略1/4の位置が嵌り込む。また、第2弾性部材の径寸法は、第1膨頭部の先端から第1支柱の突出方向と反対方向において略1/2の位置に沿った切断面の径寸法以下であるため、第2弾性部材の内部とこの内部に嵌り込んだ第1膨頭部との間に隙間が空かない。このため、第1膨頭部と第2膨頭部との係合が一層外れ難くなる。
【0012】
(4)上記(1)又は(2)の制振ダンパーにおいて、前記第1支柱は、複数形成されてもよい。前記複数の第1支柱及び前記複数の第2支柱は、複数行及び複数列のマトリクス状又はn角格子(nは3以上の自然数)の頂点に配置されてもよい。
【0013】
上記(4)の構成によれば、第1支柱も複数形成されているため、第2支柱の膨頭部の下部も複数の第1支柱の膨頭部の下部で係合させることができ、より安定的に第1のダンパー部材と第2のダンパー部材とを係合させることができる。また、第1支柱及び第2支柱は基板において複数行及び複数列のマトリクス状又はn角格子(nは3以上の自然数)の頂点に配置されているため、特定の方向への弱点が生じ難い。
【0014】
(5)上記課題を解決するために、本発明に係る制振建築物は、複数階建ての制振建築物であって、各階を構成する柱の少なくとも一部は、前記柱の下方と上方の両方に、請求項1から3の何れかに記載の制御ダンパーを備えてもよい。
【0015】
上記(5)の構成によれば、地震時等では、制御ダンパーにおける第1支柱及び第2支柱が傾くが、柱の下方の制振ダンパーの第1支柱及び第2支柱が傾く方向と、柱の上方の制振ダンパーの第1支柱及び第2支柱が傾く方向とがずれる(一致しない、例えば反対方向に傾倒する)ため、これによって、上方の制振ダンパーと下方の制振ダンパーとで振動エネルギーを相殺して、制振建築物の振動を効果的に吸収することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、施工現場において、取り付け容易に制振ダンパーを構造部材間に設置可能な制振ダンパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る制振ダンパーを構造部材間に設置した状態を示す正面図である。
【
図2】
図1においてロック部材を外した状態を示す図である。
【
図3】第1実施形態における第1ダンパー部材と第2ダンパー部材の係合前の状態を示す図である。
【
図4】構造部材を除いた
図2のC―C矢視断面図である。
【
図5】第1実施形態の変形例における膨頭部同士の係合を説明するための図である。
【
図6】(A)は、ロック部材の平面図であり、(B)は、ロック部材を開けた状態の図である。
【
図7】第2実施形態に係る制振ダンパーを構造部材間に設置した状態を示す正面図である。
【
図8】ロック部材を外した状態を示す第2実施形態に係る制振ダンパーの正面図である。
【
図9】(B)は、
図8と同様の図面であり、(A)は、(B)のA-A矢視断面図である。
【
図11】
図7で示す第1ダンパー部材と第2ダンパー部材の係合前の状態を示す図である。
【
図12】
図7で示す第1ダンパー部材の斜視図である。
【
図13】
図7で示す第2ダンパー部材の斜視図である。
【
図14】
図9(B)の矢視と反対方向のA-A断面図である。
【
図15】第2実施形態の変形例に係る、ロック部材を外した状態の制振ダンパーの斜視図である。
【
図16】(B)は、
図15で示す制振ダンパーの背面図であり、(A)は(B)のB-B矢視断面図である。
【
図17】制振ダンパーが設置された制振建築物の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下に
図1から
図4、及び
図6を用いて、本発明を適用した一実施形態(第1実施形態)に係る制振ダンパーを説明する。
図1は、第1実施形態に係る制振ダンパーを構造部材間に設置した状態を示す正面図である。
図2は、
図1においてロック部材を外した状態を示す図である。
図3は、第1実施形態における第1ダンパー部材と第2ダンパー部材の係合前の状態を示す図である。
図4は、構造部材を除いた
図2のC―C矢視断面図である。
図6の(A)は、ロック部材の平面図であり、(B)は、ロック部材を開けた状態の図である。
【0019】
(制振ダンパーの構成)
第1実施形態に係る制振ダンパー1は、対向する構造部材Sの間に跨って設置され、地震時等これらの構造部材Sの位置が相対的に移動するときに、この振動エネルギーを吸収して、制振機能を発揮するものである。対向する構造部材Sは、第1実施形態では、上下方向に並べて配置され、上方に配置される構造部材Sを「上方構造部材S1」と記載し、下方に配置される構造部材Sを「下方構造部材S2」と記載する場合がある。上方に配置される構造部材Sと下方に配置される構造部材Sを区別しない場合には、単に「構造部材S」と記載する。なお、第1実施形態では、上方構造部材S1は上面に柱200が取り付けられた梁であり、下方構造部材S2は梁であるが、上方構造部材S1や下方構造部材S2が柱等の他の構造部材であってもよい。例えば、構造部材Sは、ブレースであってもよく、上階側に接続したブレースが上方構造部材S1、下階側に接続したブレースが下方構造部材S2であってもよい。
【0020】
制振ダンパー1は、一方の構造部材S(上方構造部材S1)に取り付けられる第1のダンパー部材10Aと、他方の構造部材S(下方構造部材S2)に取り付けられ、第1のダンパー部材10Aと係合される第2のダンパー部材10Bとを備える。なお、第1のダンパー部材10Aと第2のダンパー部材10Bとを区別しない場合には、単に「ダンパー部材10と記載する。
【0021】
第1のダンパー部材10Aは、第1基板11Aと、第1基板11Aの一面(下面)において、一方側(下方側)に突出するように形成された引きばねを有する第1支柱12Aと、第1支柱12Aの先端(下端)に形成された第1膨頭部13Aと、第1基板11Aの一面(下面)における第1支柱12Aの周囲に、第1支柱12Aと同方向(下方向)に突出するように形成された、複数の第1弾性部材14Aと、を備える。
【0022】
第1基板11Aは、平面視で略長方形の平板状部材であるが、他の形状であってもよい。第1基板11Aは、四隅に貫通孔が形成され、この貫通孔を介して板面を上下方向に向けた状態でねじ止めされること等によって、上方構造部材S1の下面に固定される。第1支柱12Aは、その上端が第1基板11Aの下面における略中央の位置に接続されており、第1基板11Aと一体的に形成されている。第1支柱12Aは、構造部材Sの振動エネルギーを吸収して制振機能を発揮するために、引きばね状に形成されている。これによって、第1支柱12Aは、可撓性を有する。第1支柱12Aの下端には、第1膨頭部13Aが一体的に形成されている。第1膨頭部13Aは、第1支柱12Aにおける第1支柱12Aの突出方向(下方向)と直交する方向(左右方向)の寸法よりも径が大きい球状体である。なお、第1膨頭部13Aは必ずしも球状に形成されなくてもよく、マッシュルーム状や多面体等の他の形状であってもよい。
【0023】
第1弾性部材14Aは、第1実施形態では、押しばねであり、その上端が第1基板12Aの下面に接続されており、第1基板12Aと一体的に形成されている。第1実施形態では、第1弾性部材14Aは、第1支柱12Aよりも上下方向の寸法が短く形成されているが、同寸法や長くてもよい。第1実施形態では、4個の第1弾性部材14Aが、平面視において正方形の四隅(頂点)に配置されるように形成され、この4個の第1弾性部材14Aの中心に第1支柱12Aが配置されるようになっている。なお、第1支柱12Aと各第1弾性部材14Aとの距離は略等間隔であることが好ましい。第1弾性部材14Aの径寸法は、第2膨頭部13Bの先端(上端)から第2支柱12Bの突出方向と反対方向(下方向)において略1/4の位置に沿った切断面(水平方向の切断面)の径寸法以上であるとともに、第2膨頭部13Bの先端(上端)から第2支柱12Bの突出方向と反対方向(上方向)において略1/2の位置に沿った切断面(水平方向の切断面)の径寸法以下であることが好ましい。これによって、第1弾性部材の内部に、第2膨頭部の先端から第2支柱の突出方向と反対方向において少なくとも略1/4の位置を嵌め込むことが可能になる。更に、第1弾性部材14Aの内部とこの内部に嵌り込んだ第2膨頭部13Bとの間に隙間が空かない。
【0024】
第2のダンパー部材10Bは、第1基板11Aと対向配置される第2基板11Bと、第2基板11Bの第1基板11A側の一面(上面)において、第1基板11A側(上方)に突出するように形成され、第1弾性部材11Aに対応する位置に形成された引きばねを有する複数の第2支柱12Bと、第2支柱11B夫々の先端(上端)に形成された第2膨頭部13Bと、第2基板11Bの第1基板11A側の一面(上面)において、複数の第2支柱12Bの間であって第1支柱11Aに対応する位置に形成されるとともに、第2支柱12Bと同方向(上方)に突出するように形成された第2弾性部材14Bと、を備える。
【0025】
第2基板11Bは、平面視で略長方形の平板状部材であるが、他の形状であってもよい。第2基板11Bは、四隅に貫通孔が形成され、この貫通孔を介して板面を上下方向に向けた状態でねじ止めされること等によって、下方構造部材S2の上面に固定される。第2支柱12Bは、構造部材Sの振動エネルギーを吸収して制振機能を発揮するために、引きばね状に形成されている。これによって、第2支柱12Bは、可撓性を有する。第1実施形態では、第2支柱12Bが4個形成されており、4個の第2支柱12Bの下端が第2基板11Bの上面に接続されており、第2基板11Bと一体的に形成されている。4個の第2支柱12Bは、平面視において正方形の四隅(頂点)に配置されるように形成されており、第1のダンパー部材10Aにおける4個の第1弾性部材14Aと対向する位置に形成されている。
【0026】
第2支柱12Bの上端には、第2膨頭部13Bが一体的に形成されている。第2膨頭部13Bは、第2支柱12Bにおける第2支柱12Bの突出方向(上方向)と直交する方向(左右方向)の寸法よりも径が大きい球状体である。なお、第2膨頭部13Bは必ずしも球状に形成されなくてもよく、マッシュルーム状や多面体等の他の形状であってもよい。
【0027】
第2弾性部材14Bは、第1実施形態では、押しばねであり、その下端が第2基板12Bの上面に接続されており、第2支柱12Bと一体的に形成されている。第1実施形態では、第2弾性部材14Bは、第2支柱12Bよりも上下方向の寸法が短く形成されているが、同寸法や長くてもよい。また、第1実施形態では、単一の第2弾性部材14Bが、4個の第2支柱12Bにおける中央部に配置されるように形成され、第1のダンパー部材10Aにおける第1支柱12Aと対向する位置に形成されている。なお、第2弾性部材14Bと各第2支柱12Bとの間の距離は略等間隔であることが好ましい。第2弾性部材14Bの径寸法は、第1膨頭部13Aの先端(下端)から第1支柱12Aの突出方向と反対方向(上方向)において略1/4の位置に沿った切断面(水平方向の切断面)の径寸法以上であるとともに、第1膨頭部13Aの先端(下端)から第1支柱12Aの突出方向と反対方向(上方向)において略1/2の位置に沿った切断面(水平方向の切断面)の径寸法以下であることが好ましい。これによって、第2弾性部材14Bの内部に、第1膨頭部13Aの先端から第1支柱12Aの突出方向と反対方向(上方向)において少なくとも略1/4の位置が嵌り込む。更に、第2弾性部材14Bの内部とこの内部に嵌り込んだ第1膨頭部13Aとの間に隙間が空かない。
【0028】
第1実施形態において、第1のダンパー部材10Aの部材には、名称に「第1」の文言を付すとともに符号に「A」の添え字を付し、第2のダンパー部材10Bの部材には、名称に「第2」の文言を付すとともに符号に「B」の添え字を付す。もっとも、第1のダンパー部材10Aの部材と第2のダンパー部材10Bの部材とを区別しない場合には、「第1」「第2」の文言及び「A」「B」の添え字の何れも付さない。単に、基板11、支柱12、膨頭部13、弾性部材14というように記載する。
【0029】
第1実施形態では、第1膨頭部13Aと第2膨頭部13Bとが上下方向において係合することで、第1のダンパー部材10Aと第2のダンパー部材10Bとが係合される。以下に、第1膨頭部13Aと第2膨頭部13Bとの係合について説明する。
【0030】
図3で示すように、第1膨頭部13Aが、4個の第2膨頭部13Bの間に上方から挿入される。4個の第2支柱12Bは可撓性を有するため、4個の第2支柱12Bを撓ませて、この4個の第2支柱12Bの第2膨頭部13Bを押し分けながら、4個の第2膨頭部13Bの間から4個の第2支柱12Bの間に第1膨頭部13Aを嵌め込むことが可能になっている。ここで、第1膨頭部13Aが、第2弾性部材14Bの上端に当接するまで嵌め込まれると、第2膨頭部13Bも、第1弾性部材14Aの下端に当接するようになっている。第1膨頭部13Aが、第2弾性部材14Bの上端に当接するまで嵌め込まれると、第1膨頭部13Aと第2膨頭部13Bとが係合される。
図4で示すように、4個の第2膨頭部13Bが、下部内側の位置で単一の第1膨頭部13Aの上部を係止するようになる。ここで、第1膨頭部13Aは、第2弾性部材14Bによって、第1基板11A方向(上方向)に付勢され、第2膨頭部13Bは、第1弾性部材14Aによって第2基板11B方向(下方向)に付勢される。これによって、第1膨頭部13Aと第2膨頭部13Bの係合が外れ難くなる。
【0031】
図1を参照して、第1実施形態に係る制振ダンパー1は第1膨頭部13Aと複数(四個)の第2支柱12Bの第2膨頭部13Bの外側にこれらの部材を取り囲むロック部材15を備え、第1膨頭部13Aと第2膨頭部13Bとを係合状態でロックすることが可能になっている。
図6(A)(B)を参照して、ロック部材15の構成を説明する。なお、
図6(A)は、
図1の奥方を手前にした状態で視認した平面図である。また、
図6(B)は、
図6(A)の背面図である。ロック部材15は、2つの略コ字状の枠片151の先端を互いに組み合わせて成る、略四角形状の枠体である。2つの枠片151の一端は外側への張り出し部151Aを有する。張り出し部151Aは、上下方向に板面を向けた平板状の部材であり、これらの張り出し部151Aを上下方向に重ねた状態で、上下方向に伸びるビス153が上方から貫通され、このビス153の下部がナット153Aで固定される。これによって、2つの枠片151は、互いに取り付けられるとともに、このビス153を回転軸として2つの枠片151が回動可能になっている。2つの枠片151の他端も張り出し部151Bを有する。この2つの張り出し部151Bは、板面を左右方向に向けた板状部材であり、左右方向に並べて配置され、左右方向の貫通孔が形成されている。この貫通孔にビス152が挿入され、ナット152Aで固定されることによって、2つの略コ字状の枠片151の他端の張り出し部151B同士が離間しないように固定される。この固定を解除して、2つの枠片151が軸153を中心に回動することで、ロック部材15を開けることが出来るようになっている。ロック部材15を開けて、第1膨頭部13Aと4個の第2支柱12Bを嵌め入れてから、ロック部材15を閉じて、ビス153とナット153Aを締めることで、ロック部材15を閉状態で固定する。この様にして、第1膨頭部13Aと4個の第2支柱12Bをロック部材15によって外側から取り囲むことで、複数の第2支柱12Bが異なった方向に倒れて、第1膨頭部13Aと第2膨頭部13Bとの係合が解除されることを防止することが可能になっている。これによって、第1のダンパー部材10Aと第2のダンパー部材10Bとを係合状態で固定することができるようになっている。なお、
図6(B)では、図面の視認し易さを考慮して、ナット152Aの図示をしていない。
【0032】
(制振ダンパーの材料)
制振ダンパー1は、例えば、金属製部材や、炭素繊維強化プラスチック等の樹脂製部材である。
【0033】
(制振ダンパーの製造方法)
第1実施形態に係る制振ダンパー1の製造方法を以下に記載する。制振ダンパー1を構成する2個のダンパー部材10夫々は、基板11、支柱12、膨頭部13、及び弾性部材14で構成されるが、夫々の部材が金型成型等によって形成される。その後、支柱12の先端に膨頭部13を溶接する。そして、支柱12の他端及び弾性部材14の一端を基板11の一面に対して溶接する。これによって、ダンパー部材10を製造することができる。また、ロック部材15については、ロック部材15を構成する2個の枠片151を金型成型してから、2個の枠片151の張り出し部151Aをビス153及びボルト153Aで固定する。その後、2個の枠片151の張り出し部151Bをビス152及びボルト152Aで固定する。もっとも、制振ダンパー1の製造方法は、上述した製造方法に限定されず、三次元プリンタでの印刷等の方法で、制振ダンパー1を製造してもよい。
【0034】
(制振ダンパーの設置方法)
第1のダンパー部材10Aを、第1基板12Aの貫通孔を介してねじ止めすることで、上方構造部材S1に固定し、第2ダンパー部材10Bを、第2基板12Bの貫通孔を介してねじ止めすることで、下方構造部材S2に固定する。この状態で、上方構造部材S1及び下方構造部材S2を施工現場に運搬する。そして、施工現場において、上述したように、第1のダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bとを係合させる。その後、ロック部材15を第1膨頭部材13Aと複数の第2膨頭部材13Bを囲むように取り付けて、第1のダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bとを係合状態でロックする。
【0035】
(制振の原理)
第1実施形態に係る制振ダンパー1の制振の原理について説明する。制振ダンバー1が設置された制振建築物のある地域に地震等が発生した場合に、制振建築物は、垂直方向に縦揺れをしたり、水平方向の横揺れをする。制振ダンバー1は、第1支柱12Aと第2支柱12Bとが引きばねであるため、縦揺れの振動を吸収することも、横揺れを吸収することも出来る。また、制振建築物が、複数階建ての制振建築物である場合、各階を構成する柱の少なくとも一部について、柱の下方だけでなく、柱の下方と上方の両方に、制御ダンパー1を備えると、制振ダンパー1の制振効果をより高めることが出来る。
図17は、制振ダンパー1が設置された制振建築物の説明図である。なお、
図17は、後述する第2実施形態に係る制振ダンパー1´が取り付けられているが、第1実施形態に係る制振ダンパー1等の本発明の特徴と備えた他の制振ダンパーが取り付けられていてもよい。
【0036】
図17で示す制振建築物100では、各階を構成する柱200の上方と下方の両方に制御ダンパー1´が取り付けられている。具体的には、柱200の下部に固定された梁(構造部材S)の下面に制振ダンパー1´が取り付けられることで、柱200の下方に制振ダンパー1´が取り付けられている。すなわち、柱200の下部に固定された梁を上部構造部材S1とし、その下方に上部構造部材S1と対向するように配置された梁を下部構造部材S2として、上部構造部材S1と下部構造部材S2の間に、制御ダンパー1´が取り付けられる。また、柱200の上部に固定された梁(構造部材S)の上面に制振ダンパー1´が取り付けられることで、柱200の上方に制振ダンパー1´が取り付けられている。すなわち、柱200の上部に固定された梁を下部構造部材S2とし、その上方にこの下部構造部材S2と対向するように配置された梁を上部構造部材S1として、上部構造部材S1と下部構造部材S2の間に、制御ダンパー1´が取り付けられる。
【0037】
地震時等では、制御ダンパー1や制御ダンパー1´における第1支柱12A、12A´及び第2支柱12B、12B´が傾くが、柱200の下方の制振ダンパー1、1´の第1支柱12A、12A´及び第2支柱12B、12B´が傾くと、この傾き方向の反対方向に、柱200の上方の制振ダンパー1、1´の第1支柱12A、12A´及び第2支柱12B、12B´が傾くことになる。この様に、柱200の下方の制振ダンパー1、1´の第1支柱12A、12A´及び第2支柱12B、12B´が傾く方向と、柱200の上方の制振ダンパー1、1´の第1支柱12A、12A´及び第2支柱12B、12B´が傾く方向とがずれる(一致しない)。これによって、上方の制振ダンパー1、1´と下方の上方の制振ダンパー1、1´とで、振動エネルギーを相殺し合い、より一層、制振建築物の振動を効果的に吸収することが可能になる。
【0038】
なお、制振ダンパー1、1´の取り付け位置は、
図17で示す位置に限定されず、柱200の上方及び下方に取り付けられていればよい。例えば、
図17で示す位置に代えて、又は加えて、柱200の下面や上面と梁との間に制振ダンパー1、1´を取り付けてもよい。
【0039】
なお、第1実施形態における第1支柱12A、第2支柱12B、第1弾性部材14A、第2弾性部材14Bのレイアウトや個数に必ずしも限定されず、適宜レイアウトを変更することができる。
図5を用いて、このレイアウトや個数を変更した変形例を説明する。
図5は、第1実施形態の変形例における膨頭部同士の係合を説明するための図である。なお、
図5は、変形例の正面図において
図2のC-Cの位置の断面を矢視した図面である。変形例では、第2支柱12Bの個数は3個である。3個の第2支柱12Bが、第2弾性部材14Bを囲むように平面視で三角形の頂点に配置される。なお、第2弾性部材14Bと各第2支柱12Bとの間の距離は略等間隔であることが好ましい。第1弾性部材14Aの個数についても、第2支柱12Bに合わせて3個であり、第2支柱12Bに対向する位置に形成されている。この変形例では、第1膨頭部13Aを、3個の第2膨頭部13Bの間から3個の第2支柱12Bの間に嵌め入れて、3個の第2膨頭部13Bで係止することが出来るようになっている。
【0040】
上述したように、第1実施形態に係る制振ダンパー1の構成によれば、第1のダンパー部材10Aが一方の構造部材S(上方構造部材S1)に取り付けられ、第2のダンパー部材10Bが他方の構造部材S(下方構造部材S2)に取り付けられる。この状態で、施工現場(建築現場)に運びこみ、施工現場で、第1のダンパー部材10Aと第2のダンパー部材10Bとを係合させて、ロック部材15でロックするだけで、第1ダンパー部材10Aと第2ダンパー部材10Bとを係合させることができる。このため、施工現場での施工時の制振ダンパーの設置が容易になる。
【0041】
〔第2実施形態〕
以下に
図7から
図16を用いて、本発明を適用した第2実施形態に係る制振ダンパーを詳細に説明する。
図7は、第2実施形態に係る制振ダンパーを構造部材間に設置した状態を示す正面図である。
図8は、ロック部材を外した状態を示す第2実施形態に係る制振ダンパーの正面図である。
図9(B)は、
図8と同様の図面であり、
図9(A)は、
図9(B)のA-A矢視断面図である。
図10は、
図7で示す制振ダンパーの斜視図である。
図11は、
図7で示す第1ダンパー部材と第2ダンパー部材の係合前の状態を示す図である。
図12は、
図7で示す第1ダンパー部材の斜視図である。
図13は、
図7で示す第2ダンパー部材の斜視図である。
図14は、
図9(B)の矢視と反対方向のA-A断面図である。
【0042】
第2実施形態に係る制振ダンパー1´は、第1実施形態に係る制振ダンパー1とは次の点で異なっている。制振ダンパー1´では、第1支柱12A´は、複数形成されている。本実施形態では、複数の第1支柱12A´及び複数の第2支柱12B´は、複数行及び複数列のマトリクス状に配置されている。また、第1弾性部材14A´は第2膨頭部13B´と同数、第2弾性部材14B´は第1膨頭部13A´と同数形成されるため、第1実施形態では単数であったが、第2実施形態では、第2弾性部材14B´も複数形成される。第2実施形態に係る制振ダンパー1´のその他の構成については、第1実施形態に係る制振ダンパー1と同様である。
【0043】
具体的には、第1支柱12A´は、4個形成されており、2行及び2列のマトリクス状に配置されている。また、第1のダンパー部材10A´には9個の第1弾性部材14A´が形成されている。具体的には、3行×3列のマトリクス状に形成された第1弾性部材14A´の間に、第1支柱12A´が形成されている。より具体的に説明すると、4個の第1弾性部材14A´の間に(真ん中に)1個の第1支柱12Aが形成されるようになっている。なお、この4個の第1弾性部材14A´夫々と1個の第1支柱12Aとの間の距離は、略同一であることが好ましい。
【0044】
第2支柱12B´は9個形成されており、3行及び3列のマトリクス状に配置されている。9個の第2支柱12B´は、第1のダンパー部材10A´の9個の第1弾性部材14A´に対向する位置に設けられ、これによって、第1弾性部材14A´によって第2膨頭部13B´が付勢出来るようになっている。また、第2のダンパー部材10B´には、4個の第2弾性部材14B´が4個の第1支柱12A´(第1膨頭部13A´)に対向する位置に設けられ、第1膨頭部13A´が第2弾性部材14B´によって付勢出来るようになっている。具体的に説明すると、4個の第1支柱12A´は、2行×2列のマトリクス状に形成されている。より具体的には、3行×3列のマトリクス状に形成された第2支柱12A´の間に、第2弾性部材14B´が形成されている。より具体的に説明すると、4個の第2支柱12A´の間に(真ん中に)1個の第2弾性部材14B´が形成されるようになっている。なお、この4個の第2支柱12A´夫々と1個の第2弾性部材14B´との間の距離は、略同一であることが好ましい。
【0045】
上記構成によって、
図14で示すように、真ん中に位置する第2膨頭部13B´について、4個の第1膨頭部13A´と係合させることが出来る。また、真ん中に位置する第2膨頭部13B´の前後左右の4個の第2膨頭部13B´について、2個の第1膨頭部13A´と係合させることが出来る。なお、第1膨頭部13A´は、第1実施形態と同様に、4個の第2膨頭部13B´と係合する。この様に、第2実施形態では、第2支柱12B´についても複数の第1支柱12A´で係合することが出来るため、より安定的に第1のダンパー部材10´と第2のダンパー部材10´とを係合させることができる。また、第1支柱12A´及び第2支柱12B´は基板11において複数行及び複数列のマトリクス状に配置されているため、特定の方向への弱点が生じ難い。
【0046】
第2実施形態において、第1支柱12A´は、2行及び2列のマトリクス状に配置されて4個形成されているが、4個以上の個数が形成されていてもよい。例えば、3行×3列のマトリクス状に配置されて9個形成されていてもよい。また、第2支柱12B´は3行及び3列のマトリクス状に配置されて9個形成されているが9個以上形成されていてもよい。例えば、4行×4列のマトリクス状に配置されて16個形成されていてもよい。また、第1支柱12A´や、第2支柱12B´は、行と列の数が同数ではないマトリクス状に配置されていてもよく、例えば、2行×3列や3行×4列のマトリクス状に配置されてもよい。
【0047】
また、
図15及び
図16で示すように、複数行×複数列のマトリクス状ではなく、n角格子(nは3以上の自然数)の頂点に第1支柱12A´´と第2支柱12B´´が配置されていてもよい。
図15は、第2実施形態の変形例に係る、ロック部材を外した状態の制振ダンパー1´´の斜視図である。
図16(B)は、
図15で示す制振ダンパーの背面図であり、(A)は(B)のB-B矢視断面図である。ダンパー部材10は、
図15の上方が手前、下方が奥方、右が右方、左が左方に配置される。第2ダンパー部材10B´´において、複数の第2支柱12B´´は、三角格子の頂点に位置するように配置され、左右方向に4個、左右方向に3個、左右方向に2個、左右方向に1個、奥方から手前に向かって並んで配置されている。また、第1ダンパー部材10A´´において、複数の第1支柱12A´´は、三角格子の頂点に位置するように配置され、左右方向に3個、左右方向に2個、左右方向に1個、奥方から手前に向かって並んで配置されている。本変形例では、奥方から2番目に配置された3個の第2支柱12B´´のうち、真ん中の第2支柱12B´´の第2膨頭部13B´´については、3個の第1膨頭部13A´´で係合できるようになっており、この第2膨頭部13B´´に隣接する第2膨頭部13B´´については、2個の第1膨頭部13A´´で係合できるようになっている。なお、第1支柱12A´´の第1膨頭部13A´´は、
図5で示す第1実施形態の変形例と同様に、3個の第2支柱12B´´の第2膨頭部13B´´で係合できるようになっている。この様に、本変形例においても、第2実施形態と同様に、第2支柱12B´´を複数の第1支柱12A´´で係合することが出来るため、より安定的に第1のダンパー部材10A´´と第2のダンパー部材10B´´とを係合させることができる。
【0048】
なお、第1膨頭部A´´と対向する位置に第2弾性部材14B´´が設けられ、第2膨頭部B´´と対向する位置に第1弾性部材14A´´が設けられている点は、本変形例に係る制振ダンパー1´´は、第1実施形態及び第2実施形態に係る制振ダンパー1、1´と同様である。
図15及び
図16で示す変形例では、第1支柱12A´´及び第2弾性部材14B´´の個数は、6個、第2支柱12B及び第1弾性部材14A´´の個数は、10個であるが、この個数に限定されない。また、三角格子の頂点に1支柱12A´´と第2支柱12B´´が配置されているが、四角以上の多角格子の頂点に配置されていてもよい。
【0049】
上述した本実施形態は、本発明を適用した実施形態の一例であり、適宜材料、個数、配置等の構成を変更することが出来る。
【0050】
第1及び第2実施形態、及びこれらの変形例では、弾性部材14、14´、14´´が、押しばねであるが、ゴム等の他の弾性部材であってもよい。この場合、第1膨頭部13A、13A´、13A´´と第2膨頭部13B、13B´、13B´´とが係合するときに、第1膨頭部13A、13A´、13A´´がゴム製の第2弾性部材と当接し、第2膨頭部13B、13B´、13B´´がゴム製の第1弾性部材と当接することで、ゴムの弾性によって第1膨頭部13A、13A´、13A´´、と第2膨頭部13B、13B´、13B´´との係合が外れ難くなる。
【0051】
第1及び第2実施形態、及びこれらの変形例では、支柱12、12´、12´´は、全長に亘って引きばねで形成されているが、その一部が引きばねで形成される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1、1´、1´´ 制振ダンパー
10、10´、10´´ ダンパー部材
10A、10A´、10A´´ 第1ダンパー部材
10B、10B´、10B´´ 第2ダンパー部材
11、11´、11´´ 基板
11A、11A´、11A´´ 第1基板
11B、11B´、11B´´ 第2基板
12、12´、12´´ 支柱
12A、12A´、12A´´ 第1支柱
12B、12B´、12B´´ 第2支柱
13、13´、13´´ 膨頭部
13A、13A´、13A´´ 第1膨頭部
13B、13B´、13B´´ 第2膨頭部
14、14´、14´´ 弾性部材
14A、14A´、14A´´ 第1弾性部材
14B、14B´、14B´´ 第2弾性部材
S 構造部材
S1 上方構造部材
S2 下方構造部材