(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107602
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】積層フィルム、包装材及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240802BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240802BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240802BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011613
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA15
3E086BA24
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3E086BA33
3E086BA35
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3E086BB62
3E086BB71
3E086CA01
3E086CA03
3E086CA28
4F100AB10D
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK51G
4F100AK63C
4F100AR00C
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4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】TD方向の直線カット性に優れる積層フィルムを提供すること。
【解決手段】第一のポリプロピレンフィルムからなる層と、第二のポリプロピレンフィルムからなる層と、シーラント層と、をこの順に備え、第一のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折が0.02000以下であり、第二のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折が、0.01520以下である、積層フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のポリプロピレンフィルムからなる層と、第二のポリプロピレンフィルムからなる層と、シーラント層と、をこの順に備え、
前記第一のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折が0.02000以下であり、
前記第二のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折が、0.01520以下である、積層フィルム。
【請求項2】
前記第一のポリプロピレンフィルムが二軸延伸ポリプロピレンフィルムである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記第二のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折が、0.01300以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
ガスバリア層をさらに備える、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
ポリオレフィンの含有量が、前記積層フィルムの全質量を基準として、80質量%以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項6】
JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠し、引裂速度200mm/minの条件で測定される、前記積層フィルムのTD方向の引裂強度が、2.0N以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項7】
JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠し、引裂速度200mm/minの条件で測定される、前記積層フィルムのMD方向の引裂強度が、2.0N以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の積層フィルムを含む、包装材。
【請求項9】
請求項8に記載の包装材を製袋してなる、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層フィルム、包装材及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、詰め替え用パウチや食品用包装袋等を構成する包装材として、基材層と、バリア層等を含む中間層と、シーラント層とを備える積層フィルムが使用されている。
【0003】
包装袋を開封する場面では、利用者がはさみ等の道具を用いずに該包装袋を引裂くことが想定される。そのため、包装材である積層フィルムには、開封時に内容物が飛散するといったことが生じないように、直線状に引裂くことができること、すなわち、直線カット性に優れることが求められる。
【0004】
積層フィルム自体の直線カット性を高める方法としては、例えば、基材層に延伸フィルムを用いる方法が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
包装袋がスティックタイプやピロータイプの包装袋である場合、包装材がTD方向(流れ方向に垂直な方向)に引き裂かれることがあるため、TD方向の直線カット性を高めることが重要である。一方、本開示者らの検討の結果明らかになったことであるが、基材層に延伸フィルムを用いる場合に、上記従来技術のように積層フィルムが中間層を更に備える構成であると、TD方向(流れ方向に垂直な方向)の直線カット性が顕著に低下する。
【0007】
そこで、本開示は、TD方向の直線カット性に優れる積層フィルムを提供することを目的とする。本開示はまた、上記積層フィルムを含む包装材及び該包装材を製袋してなる包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、いくつかの側面において、下記[1]~[9]を提供する。
【0009】
[1]
第一のポリプロピレンフィルムからなる層と、第二のポリプロピレンフィルムからなる層と、シーラント層と、をこの順に備え、
前記第一のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折が0.02000以下であり、
前記第二のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折が、0.01520以下である、積層フィルム。
【0010】
[2]
前記第一のポリプロピレンフィルムが二軸延伸ポリプロピレンフィルムである、上記[1]に記載の積層フィルム。
【0011】
[3]
前記第二のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折が、0.01300以上である、上記[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
【0012】
[4]
ガスバリア層をさらに備える、上記[1]~[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0013】
[5]
ポリオレフィンの含有量が、前記積層フィルムの全質量を基準として、80質量%以上である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0014】
[6]
JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠し、引裂速度200mm/minの条件で測定される、前記積層フィルムのTD方向の引裂強度が、2.0N以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0015】
[7]
JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠し、引裂速度200mm/minの条件で測定される、前記積層フィルムのMD方向の引裂強度が、2.0N以下である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0016】
[8]
上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層フィルムを含む、包装材。
【0017】
[9]
上記[8]に記載の包装材を製袋してなる、包装袋。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、TD方向の直線カット性に優れる積層フィルムを提供することができる。本開示によれば、上記積層フィルムを含む包装材及び該包装材を製袋してなる包装袋を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る積層フィルムを示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、実施例で使用した切り込み入り試験片を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、具体的に明示する場合を除き、「~」の前後に記載される数値の単位は同じである。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0021】
以下、場合により図面を参照しつつ本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
<積層フィルム>
図1は、一実施形態の積層フィルムを示す模式断面図である。
図1に示される積層フィルム10は、基材層11と、中間層12と、シーラント層13と、をこの順に備える。積層フィルム10において、基材層11及び中間層12はポリプロピレンフィルムからなる層である。基材層11と中間層12とは、第一の接着層S1によって互いに接着されており、中間層12とシーラント層13とは、第二の接着層S2によって互いに接着されている。なお、本明細書において、「ポリプロピレンフィルム」とは、ポリプロピレンをフィルム全量の80質量%以上含む樹脂フィルムを意味する。
【0023】
積層フィルム10は、リサイクル性の観点から、ポリオレフィンを主構成材料とする積層フィルムであってよい。具体的には、積層フィルム10におけるポリオレフィン含有量(積層フィルムの全質量基準)は、80質量%以上であってよく、90質量%以上又は95質量%以上であってもよい。ポリオレフィンを主構成材料とする積層フィルム10は、環境負荷の小さなモノマテリアル包装材に使用可能である。
【0024】
積層フィルム10の厚さ(すなわち総厚)は、特に限定されないが、例えば、50~200μmであり、70μm以上又は90μm以上であってもよく、150μm以下又は120μm以下であってもよい。
【0025】
以下、積層フィルム10を構成する各層について説明する。
【0026】
(基材層)
基材層11は、支持体の一つとなる層であり、積層フィルムの一方の最表面を構成する層であり得る。
【0027】
基材層11は、ポリプロピレンフィルム(以下、「第一のポリプロピレンフィルム」という。)で構成されている。第一のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)あってよく、プロピレンと他の共重合モノマーとの共重合体(コポリマー)であってもよい。本明細書では、プロピレンと他の共重合モノマーの合計に占めるプロピレンの割合が50質量%以上であれば、プロピレンと他の共重合モノマーとの共重合体(コポリマー)であってもポリプロピレンとみなす。コポリマーとしては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。ポリプロピレンは、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等を用いてグラフト変性された酸変性ポリプロピレンであってもよい。
【0028】
第一のポリプロピレンフィルムにおけるポリプロピレンの含有量は、フィルム全量の80質量%以上であり、90質量%以上又は95質量%以上であってもよい。ただし、ポリプロピレンがコポリマーである場合、フィルム全量の50質量%以上がプロピレン由来である。
【0029】
第一のポリプロピレンフィルムは、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、静電防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0030】
第一のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折は、積層フィルムのTD方向の直線カット性を高める観点から、0.02000以下であり、0.01900以下であってもよい。第一のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折は、積層フィルムのMD方向の直線カット性を高める観点から、0.01400以上であってよく、0.01600以上又は0.01700以上であってもよい。
【0031】
ここで、「フィルムの面内方向の複屈折」とは、フィルムの面内方向、すなわち、フィルムの厚さ方向に垂直な方向において最も高い屈折率を示す方向をx方向とし、x方向に垂直な方向をy方向としたとき、x方向の屈折率nxとy方向の屈折率nxの差Δn(=nx-ny)を意味する。一般に、フィルム内のポリマーの配向が強いほど複屈折が大きくなり、配向方向に垂直な方向の直線カット性が低下する。原則、フィルム内のポリマーはMD方向(流れ方向)に配向することから、複屈折が大きいほど(すなわち、配向が強いほど)MD方向の直線カット性が上昇し、TD方向(MD方向に垂直な方向)の直線カット性が低下する傾向がある。逆に、複屈折が小さいほど(すなわち、配向が弱いほど)TD方向の直線カット性が上昇し、MD方向の直線カット性が低下する傾向がある。
【0032】
「フィルムの面内方向の複屈折」は、王子計測機器(株)製の位相差測定装置(型番KOBRA-WR)を用い、波長586.4nmの光を測定光とし、平行ニコル回転法に準拠して測定することができる(王子計測機器(株)KOBRA 技術資料 第7頁等参照)。測定は、無作為に選択した3箇所で行い、これらの測定値の平均値を用いる。
【0033】
なお、一般にフィルムのMD方向とは、フィルムの製造における流れ方向を意味するが、本明細書においては、上記x方向(面内方向において最も高い屈折率を示す方向)をフィルムのMD方向とみなしてよく、上記y方向(x方向に垂直な方向)をフィルムのTD方向とみなしてよい。
【0034】
第一のポリプロピレンフィルムは、上記特定のレターデーション値が得られやすい観点から、好ましくは延伸ポリプロピレンフィルムであり、より好ましくは二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。第一のポリプロピレンフィルムは、一軸延伸ポリプロピレンフィルムであってもよい。延伸が強いほどフィルムを構成する樹脂(例えばポリプロピレン)の配向が強くなる傾向があるため、延伸の程度を調整することによって、上述したフィルムの複屈折を調整可能である。
【0035】
第一のポリプロピレンフィルムは、単層フィルムであってよく、多層フィルム(例えば共押出多層フィルム)であってもよい。
【0036】
第一のポリプロピレンフィルムの表面には、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の各種前処理が施されていてもよい。
【0037】
ところで、基材層11は製袋時(ヒートシール時)にヒートシールバーに直接接する又は近接する部分であり、積層フィルムを構成する層の中でも特に熱がかかる部分である。そのため、第一のポリプロピレンフィルムを150℃で熱処理した際の該フィルムのMD方向の熱収縮率及びTD方向の熱収縮率は、それぞれ20.0%未満であることが好ましい。また、上記熱による溶融を防止する観点から、第一のポリプロピレンフィルムの融点は、155℃以上であることが好ましい。
【0038】
基材層11の厚さ(第一のポリプロピレンフィルムからなる層の厚さ)は、積層フィルムの直線カット性を高める観点から、5~50μmであってよく、15μm以上又は25μm以上であってもよく、35μm以下又は25μm以下であってもよい。
【0039】
(中間層)
中間層12は、積層フィルムの中間(基材層11とシーラント層13との間)に位置する層であり、例えば、積層フィルムに更なる機能を付与する目的で設けられる。
【0040】
中間層12は、ポリプロピレンフィルム(以下、「第二のポリプロピレンフィルム」という。)で構成されている。第二のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンの例(種類及び含有量)は、第一のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンの例と同じである。第二のポリプロピレンフィルムは、第一のポリプロピレンフィルムと同様の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0041】
第二のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折は、積層フィルムがTD方向の直線カット性に優れたものとなる観点から、0.01520以下であり、0.01500以下又は0.01490以下であってもよい。第二のポリプロピレンフィルムの、波長586.4nmの光に対する面内方向の複屈折は、積層フィルムのMD方向の直線カット性を高める観点から、0.01300以上であってよく、0.01400以上又は0.01450以上であってもよい。
【0042】
第二のポリプロピレンフィルムは、上記特定の複屈折が得られやすい観点から、好ましくは延伸ポリプロピレンフィルムであり、より好ましくは二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。第二のポリプロピレンフィルムは、一軸延伸ポリプロピレンフィルムであってもよい。
【0043】
第二のポリプロピレンフィルムは、単層フィルムであってよく、多層フィルム(例えば共押出多層フィルム)であってもよい。
【0044】
第二のポリプロピレンフィルムの表面には、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の各種前処理が施されていてもよい。
【0045】
中間層12の厚さ(第二のポリプロピレンフィルムからなる層の厚さ)は、積層フィルムの直線カット性を高める観点から、5~50μmであってよく、15μm以上又は25μm以上であってもよく、35μm以下又は25μm以下であってもよい。
【0046】
(シーラント層)
シーラント層13は、積層フィルムにヒートシールによる封止性を付与する層であり、積層フィルムの一方(基材層11とは反対側)の最表面を構成する層であり得る。
【0047】
シーラント層13は、例えば、ポリオレフィンを含む。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンが好ましく用いられる。
【0048】
ポリエチレンには、エチレンの単独重合体だけではなく、エチレンと5mol%以下のα-オレフィン単量体との共重合体及びエチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけを有する1mol%以下の非オレフィン単量体との共重合体もポリエチレンに包含される。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0049】
ポリオレフィンの含有量は、シーラント層13の全質量を基準として、80質量%以上であってよく、90質量%以上又は95質量%以上であってもよい。
【0050】
シーラント層13は、樹脂フィルムからなる層であってもよい。樹脂フィルムは、ポリオレフィンを含むフィルムであってよい。樹脂フィルムは、ポリオレフィンをフィルム全量の80質量%以上含んでいてよい。すなわち、樹脂フィルムはポリオレフィンフィルムであってもよい。
【0051】
樹脂フィルムは、延伸フィルム(例えば延伸ポリオレフィンフィルム)であってもよいが、ヒートシールによる封止性を高める観点から、好ましくは無延伸フィルム(例えば無延伸ポリオレフィンフィルム)である。
【0052】
樹脂フィルムは、単層フィルムであってよく、多層フィルム(例えば共押出多層フィルム)であってもよい。
【0053】
シーラント層13(例えば樹脂フィルム)の融点は、基材層11(第一のポリプロピレンフィルム)の融点よりも低く、例えば、90~160℃である。
【0054】
シーラント層13の厚さ(例えば樹脂フィルムからなる層の厚さ)は、充分なヒートシール性が得られる観点及びTD方向の直線カット性を高める観点から、30~150μmであってよく、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上又は50μm以上であってもよく、100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下又は40μm以下であってもよい。
【0055】
(接着層)
接着層S1,S2は、隣接する2つの層を互いに接着する層である。接着層S1,S2の材料としては、ドライラミネート用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤、バリア性接着剤等の接着剤を使用可能である。具体的には、例えば、ポリエステル-イソシアネート系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル系樹脂等が挙げられる。積層フィルムをレトルトパウチ用途に使用する場合、接着層の材料として、レトルト耐性のある2液硬化型のウレタン系接着剤を用いることが好ましい。すなわち、接着層は、2液硬化型のウレタン系接着剤の硬化物からなる層であることが好ましい。環境配慮の点からは、接着層の材料は、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)を含まなくてもよい。なお、接着層S1の材料と接着層S2の材料とは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
接着層S1,S2の厚さは、積層フィルム中のポリオレフィンの含有量を80質量%以上としつつ十分な接着性を確保する観点から、それぞれ、0.5~4μmであってよい。
【0057】
上記のとおり、積層フィルム10は、第一のポリプロピレンフィルム及び第二のポリプロピレンフィルムが所定の複屈折を有することから、TD方向の直線カット性に優れるものである。また、積層フィルム10は、MD方向の直線カット性にも優れるものであり得る。
【0058】
また、積層フィルム10は、MD方向及びTD方向の引裂強度が小さい傾向がある。具体的には、JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠し、引裂速度200mm/minの条件で測定される、積層フィルムのMD方向の引裂強度(MD引裂強度)及びTD方向の引裂強度(TD引裂強度)は、それぞれ、2.0N以下であり得る。
【0059】
MD引裂強度は、シーラント層の厚さや材質等により上記範囲に調整可能であり、これらの方法により、MD引裂強度を1.5N以下、1.0N以下、0.8N以下、0.6N以下又は0.4N以下とすることもできる。
【0060】
TD引裂強度は、第一のポリプロピレンフィルム及び第二のポリプロピレンフィルムの複屈折の他、シーラント層の厚さや材質等により上記範囲に調整可能であり、これらの方法により、TD引裂強度を1.5N以下、1.0N以下、0.8N以下、0.6N以下又は0.4N以下とすることもできる。
【0061】
上記積層フィルム10は、例えば、各層を構成するフィルムを貼り合わせることにより作製することができる。貼り合わせの方法は特に限定されず、公知の方法(例えばドライラミネート法)を使用できる。
【0062】
以上、積層フィルム10を例に挙げて本開示の積層フィルムについて説明したが、本開示の積層フィルムは上記に限定されない。
【0063】
例えば、積層フィルムは、ガスバリア層をさらに備えてよい。ガスバリア層は、例えば、金属又は無機酸化物を含む層である。金属としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム等が挙げられる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。ガスバリア層の厚さは、例えば、10~50nmである。
【0064】
ガスバリア層は、基材層11とシーラント層13との間に設けられてよい。例えば、第一のポリプロピレンフィルムからなる層と接するように、該第一のポリプロピレンフィルムのシーラント層側の面上にガスバリア層が設けられてよい。ガスバリア層は、第二のポリプロピレンフィルムからなる層とともに中間層12を構成してもよい。この場合、第二のポリプロピレンフィルムからなる層と接するように、該第二のポリプロピレンフィルムの基材層11側の面上及び/又はシーラント層13側の面上にガスバリア層が設けられてよい。
【0065】
ガスバリア層は、上記金属又は無機酸化物を上記層上に蒸着することにより形成することができる。蒸着方法は特に限定されず、物理気相成長法であっても化学気相成長法であってもよい。
【0066】
また、例えば、積層フィルムが、易接着層等のコート層、印刷層などを備えていてもよい。コート層は、有機系コート剤(例えばPVAコート剤)等で形成されるバリアコート層であってもよい。これらの層は、ガスバリア層と同様に、基材層11とシーラント層13との間に設けられてよい。
【0067】
また、例えば、積層フィルムが、接着層を備えなくてもよく、各層が互いに密着していてもよい。
【0068】
<包装材>
本開示の包装材は、上述した本開示の積層フィルムを含む。本開示の包装材は、本開示の積層フィルムのみからなっていてよく、本開示の積層フィルムと他の材料とを組み合わせて構成されていてもよい。
【0069】
<包装袋>
本開示の包装袋は、上述した本開示の包装材を製袋してなる。包装袋の形状に特に制限はないが、包装袋は、例えば、1枚の包装材をシーラント層が対向するように二つ折りにした後、3方をヒートシールすることによって袋形状としたものであってよく、2枚の包装材をシーラント層が対向するように重ねた後、4方をヒートシールすることによって袋形状としたものであってもよく、2枚の包装材をシーラント層が対向するように重ねるとともに、底材も挟んでシールする自立可能なスタンディングパウチであってもよい。包装袋は、内容物として食品、医薬品等の内容物を収容し、レトルト処理、ボイル処理等の加熱殺菌処理を施すことができる。なお、レトルト処理は、食品、医薬品等を保存するために、カビ、酵母、細菌等の微生物を加圧殺菌する方法として公知の方法である。
【実施例0070】
以下、本開示の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
<フィルムの準備>
下記表1に示すフィルムを用意し、実施例及び比較例で使用した。
【0072】
【0073】
表1中、「OPP」は二軸延伸ポリプロピレンフィルムを示し、「VM-OPP」は表面にアルミニウム蒸着膜(ガスバリア層)を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルム(アルミニウム蒸着層と二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる層とで構成される積層フィルム)を示し、「LLDPE」は低密度ポリエチレンフィルムを示す。また、「複屈折」は、王子計測機器(株)製の位相差測定装置(型番KOBRA-WR)を用い、波長586.4nmの光を測定光とし、平行ニコル回転法に準拠して測定したフィルムの面内方向の複屈折であり、無作為に選択した3箇所における測定値の平均値である。なお、VM-OPPについて記載した複屈折はVM-OPPを構成する二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる層の複屈折であり、VM-OPPのアルミニウム蒸着層を溶融除去してから測定した値である。
【0074】
<実施例1~8及び比較例1~4>
表2及び表3に示す各フィルムを用いて、基材層、中間層及びシーラント層をこの順で備える実施例1の積層フィルム(ポリオレフィン含有量:80質量%以上)を得た。具体的には、まず、接着剤としてDIC株式会社製のウレタン接着剤(LX-500/KW-75)を用意し、該接着剤と溶剤(酢酸エチル)を混合して接着剤溶液を調製した。次いで、得られた接着剤溶液を、バーコーター(バーNo.5)を用いて、ウェット膜厚11.43g/m2、塗工速度100mm/sの条件で、基材層となるOPPの主面上に塗工した。次いで、形成された塗膜を60℃で1分間加熱することにより乾燥させた後、ハンドラミネーターを用いて、ニップ圧:0.3MPa、ニップ温度:60℃、速度:1m/minの条件で、アルミニウム蒸着層側の面がOPP側を向くように、中間層となるVM-OPPを上記塗膜上にラミネートした。ハンドラミネーターのニップロールには、上側(中間層側)が金属であり、下側(基材層側)がゴムロールのものを使用した。次いで、上記と同様にして、中間層上に接着剤溶液を塗工して塗膜を形成し、該塗膜上にLLDPEをラミネートした。次いで、得られたラミネート品を40℃で72時間エージングすることにより、実施例1~8及び比較例1~4の積層フィルムをそれぞれ得た。なお、ラミネートの際は、各フィルムのMD方向が互いに一致するようにした。
【0075】
<評価>
上記で得られた実施例1~8及び比較例1~4の積層フィルムのMD方向及びTD方向の引裂強度を、JIS K 7128-1:1998に記載されるトラウザー引裂法に準拠して測定した。また、測定後の試験片の引裂ズレ量より直線カット性を評価した。
【0076】
具体的には、まず、積層フィルムから、該積層フィルムのMD方向を長さ方向とする幅50mm及び長さ150mmの大きさの試験片、及び、該積層フィルムのTD方向を長さ方向とする幅50mm及び長さ150mmの大きさの試験片をそれぞれ切り出し、切り出された試験片の一方の短辺の中央から他方の短辺の中央に向かって長さ75mmの切り込みを入れて、
図2に示す切り込み入り試験片(MD試験片及びTD試験片)を得た。なお、積層フィルムのMD方向及びTD方向は、積層フィルムを構成する各フィルムのMD方向及びTD方向に一致する。
【0077】
次いで、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ(AND)社製、商品名:TENSILON RTF-1250)を用い、引裂速度200mm/minの条件で、上記切り込み入り試験片(MD試験片及びTD試験片)を引裂き、積層フィルムのMD方向及びTD方向の引裂強度をそれぞれ測定した。また、試験後の試験片における上記他方の短辺の中央から、該短辺上に位置する裂け目の終点までの距離を測定することにより、引裂ズレ量を求めた。
【0078】
上記引裂強度及び引裂ズレ量の測定を5回行い、5回の平均値により評価した。結果を表2及び表3に示す。なお、引裂強度は引裂き開始の20mmと引裂き終了前の5mmを除外し、残り50mmの引裂強度の近似の平均値を求めることにより得られるが、比較例3では、シーラント層の伸びにより引裂強度が安定しなかったため、上記50mmの中での最大値を引裂強度とした。また、引裂ズレ量が25mm以上の場合、引裂強度は測定不可(N/A)とした。また、未評価の例は「-」で示した。
【0079】
【0080】