(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107603
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ドア装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/70 20150101AFI20240802BHJP
E05F 15/611 20150101ALI20240802BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
E05F15/70
E05F15/611
B60J5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011616
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 淳
(72)【発明者】
【氏名】西野 光典
(72)【発明者】
【氏名】金田 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】上倉 明
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 凜樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 誠
(72)【発明者】
【氏名】益田 晃次
(72)【発明者】
【氏名】片山 洋一
(72)【発明者】
【氏名】岸田 司
(72)【発明者】
【氏名】野村 晃司
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA01
2E052DB01
2E052EA03
2E052EB01
2E052EC01
2E052GA05
2E052GB11
2E052GB15
2E052GD07
(57)【要約】
【課題】ユーザの好みに応じてオート動作のドア開閉速度を変更できるドア装置を提供する。
【解決手段】車体に対してスイング動作するドア3と、ドア3を開閉駆動するアクチュエータ4と、アクチュエータ4の駆動制御を行う制御部10と、ドア3の開閉速度を検出するドア開閉検出部20と、を備える。制御部10は、ドア3の開閉動作がユーザの手動によって開閉が行われるマニュアル動作であるかまたは、アクチュエータ4によって自動で開閉するオート動作であるかを判定する動作判定部30と、マニュアル動作が行われている際、ドア開閉検出部20によって検出された開閉速度を学習して、オート動作が行われる際、アクチュエータ4の駆動制御に反映させる学習手段40と、を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対してスイング動作するドアと、
前記ドアを開閉駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動制御を行う制御部と、
前記ドアの開閉速度を検出するドア開閉検出部と、を備え、
前記制御部は、
前記ドアの開閉動作がユーザの手動によって開閉が行われるマニュアル動作であるかまたは、前記アクチュエータによって自動で開閉するオート動作であるかを判定する動作判定部と、
前記マニュアル動作が行われている際、前記ドア開閉検出部によって検出された開閉速度を学習して、前記オート動作が行われる際、前記アクチュエータの駆動制御に反映させる学習手段と、を有することを特徴とするドア装置。
【請求項2】
前記学習手段は、前記ドアの開度に応じて前記開閉速度を学習するドア開度別学習部を有する、ことを特徴とする請求項1記載のドア装置。
【請求項3】
前記学習手段は、前記マニュアル動作が開始された前記ドアの動作開始位置別に位置別学習値を学習する動作開始位置別学習部を有して、前記オート動作を開始する際、前記ドアの動作開始位置に対応する前記位置別学習値を用いて駆動制御に反映させる、ことを特徴とする請求項2記載のドア装置。
【請求項4】
前記学習手段は、前記ユーザが室内にいる際の学習値と、前記ユーザが室外にいる際の学習値とを個別に学習するユーザ位置別学習部を有する、ことを特徴とする請求項1記載のドア装置。
【請求項5】
前記学習手段は、前記動作判定部がマニュアル動作であると判定する場合は、開閉速度を複数回検出し、検出された値の平均値を学習値とする、ことを特徴とする請求項1記載のドア装置。
【請求項6】
前記学習手段は、前記車体の傾斜角が所定値以下の際に学習する、ことを特徴とする請求項1記載のドア装置。
【請求項7】
前記学習手段は、前記ドアの開閉速度が所定値以下の際に学習する、ことを特徴とする請求項1記載のドア装置。
【請求項8】
複数人のユーザを個別に認識できるユーザ識別手段をさらに備え、
前記学習手段は、前記ユーザ識別手段が異なるユーザを認識すると、ユーザ毎に個別の学習値を学習するユーザ別学習部を有する、ことを特徴とする請求項1~7のうち何れか一項記載のドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも高齢者や障がい者や子供といった脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて車両の乗降性に関する開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。従来、ドア装置としては、ドア旋回軸を介して取り付けられたスイング式ドアをアクチュエータによって開閉アシストすることが開示されている(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の乗降性においては、アクチュエータによって開閉アシストするスイング式ドアを、ユーザの操作によらずオート動作により開閉させることが考えられる。しかしながら、ユーザの好みにあったスイング式ドアの開閉速度を設定して持続可能な開発を行うという観点では、更なる改良が課題である。
本願は上記課題の解決のため、ユーザの好みに応じてオート動作のドア開閉速度を変更できるドア装置の提供を目的としたものである。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明のドア装置は、車体に対してスイング動作するドアと、ドアを開閉駆動するアクチュエータと、アクチュエータの駆動制御を行う制御部と、ドアの開閉速度を検出するドア開閉検出部と、を備える。制御部は、ドアの開閉動作がユーザの手動によって開閉が行われるマニュアル動作であるかまたは、アクチュエータによって自動で開閉するオート動作であるかを判定する動作判定部と、マニュアル動作が行われている際、ドア開閉検出部によって検出された開閉速度を学習して、オート動作が行われる際、アクチュエータの駆動制御に反映させる学習手段と、を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ユーザの好みに応じてオート動作のドア開閉速度を変更できるドア装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態のドア装置で、車体の右側に設けられたドアを半開状態として後方から見た斜視図である。
【
図2】実施形態のドア装置で、全体の構成を説明するブロック図である。
【
図3】ドア装置の基本的な制御を説明するフローチャートである。
【
図4】ドア装置の基本的なオート動作で開放する際のドア開度と開閉速度との関係を示すグラフである。
【
図5】ドア装置の基本的なオート動作で閉止する際のドア開度と開閉速度との関係を示すグラフである。
【
図6】半開状態からオート動作で開放する際のドア開度と開閉速度との関係を示すグラフである。
【
図7】半閉状態からオート動作で閉止する際のドア開度と開閉速度との関係を示すグラフである。
【
図8】ユーザが室外にいる場合のオート動作で閉止する際のドア開度と開閉速度との関係を示すグラフである。
【
図9】ドア装置がマニュアル動作を複数回学習する制御を説明したフローチャートである。
【
図10】ドア装置が車体の傾斜角に応じて学習する制御を説明したフローチャートである。
【
図11】ドア装置がドアの開閉速度に応じて学習する制御を説明したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。また、方向を説明する場合は、車両の運転者から見た前後左右上下に基づいて説明する。なお、車幅方向と左右方向は同義である。
【0009】
図1は、本発明が適用される車両を示し、車体2の右側に設けられたドア3を半開状態として車室内後方から見た斜視図である。実施形態のドア装置1は、車体2に対してヒンジ部を回動中心にスイング動作するドア3と、ドア3を開閉駆動するアクチュエータ4と、を備えている。
また、ドア装置1は、
図2に示すようにアクチュエータ4の駆動制御を行う制御信号をアクチュエータ4に出力する制御部(ドアECU)10と、ドア3の開閉速度を検出するドア開閉検出部20と、複数人のユーザを個別に認識できるユーザ識別手段50と、車体2の傾斜角を検出して制御部10に検出信号を出力する傾斜角センサ60と、を備えている。
【0010】
このうち、アクチュエータ4は、入力する制御信号に基づいて回転軸を回転駆動させるモータアクチュエータと、モータアクチュエータの回転軸の回転駆動力を減速または変換してドア3をスイング動作させる回動力とする減速機構(図示せず)と、を有している。
そして、アクチュエータ4は、制御信号に応じてモータアクチュエータの回転軸の回転速度を可変させる。これによりドア3を開放動作または閉止動作させる際、所望のドア開閉速度Vdrに変更することができる。
【0011】
ドア開閉検出部20は、モータアクチュエータの回転軸の状態を検出するホールセンサを有して構成されている。ホールセンサは、回転軸の回転による磁界の変動を検出して電気信号とする。ドア開閉検出部20は、電気信号を回転軸の回転速度または回転位置の情報を含む検出信号に増幅して制御部10に出力する。
【0012】
制御部10は、動作判定部30と、学習手段40と、演算部70と、を有している。学習手段40は、例えば、動作判定部30がマニュアル動作であると判定する場合は、ドア3の開閉速度を複数回検出し、検出された値の平均値を学習値とする。
ここで、マニュアル動作とは、ドア3の開閉動作がユーザの手動によって開閉が行われることを示している。マニュアル動作は、アクチュエータ4がドア3の開閉をアシストするアシスト動作(アクチュエータ4だけではドア3が動かないが開閉荷重を低減できる動作)を含む。
演算部70は、ドア開閉検出部20が検出した検出信号を用いておよびドア開度Odrの値に変換する。また、実施形態の傾斜角センサ60は、加速度センサにより構成されている。傾斜角センサ60は、検出した検出信号を前後傾斜角度Afbおよび左右傾斜角度Alrの値に変換する。
これらのドア開閉速度Vdr,ドア開度Odr,前後傾斜角度Afb,左右傾斜角度Alrの値は、学習手段40によって学習されて学習値となる。
【0013】
学習値は、ドア3をオート動作で開放またはオート動作で閉止する制御信号に反映される。ここで、オート動作とは、アクチュエータ4によってドア3が自動で開閉することを示している。この際、制御部10は、ドア開閉検出部20による検出信号から検出時の回転軸の状態をフィードバックして制御信号とする。そして、学習手段40は、この制御信号をアクチュエータ4に出力する。これにより、アクチュエータ4は、各ドア開度Odrにおける所望のドア開閉速度Vdrでドア3をスイング動作させることができる。
【0014】
動作判定部30は、マニュアル動作であるかまたは、アクチュエータ4によって自動で開閉するオート動作であるかを判定する。
詳しくは、ドア3の車内側には、車内側スイッチ5が設けられ、ドア3の車外側には、車外側スイッチ6が設けられていて、それぞれ動作判定部30に接続されている。
そして、動作判定部30は、車内側スイッチ5がユーザにより操作されるとユーザが室内にいると判定する。また、動作判定部30は、車外側スイッチ6がユーザにより操作されるとユーザが室外にいると判定する。
【0015】
さらに車内側スイッチ5は、マニュアル動作スイッチ5aとオート動作スイッチ5bとを有している。また、車外側スイッチ6は、マニュアル動作スイッチ6aとオート動作スイッチ6bとを有している。
そして、動作判定部30は、マニュアル動作スイッチ5a,6aの何れかがユーザにより操作されると、ドア3の開閉動作がユーザの手動によって開閉されるマニュアル動作が行われると判定する。 また、オート動作スイッチ5b,6bが押されないでドア3が開閉した場合もマニュアル動作とする。さらに、オート動作スイッチ5b,6bがユーザにより操作されると、動作判定部30は、ドア3がアクチュエータ4によって自動で開閉するオート動作であると判定する。
【0016】
学習手段40は、マニュアル動作が行われている際、ドア開閉検出部20によって検出されたドア開閉速度Vdrを用いて学習する。学習手段40は、オート動作を行う際、アクチュエータ4の駆動制御に反映させる。実施形態の学習手段40は、ドア開閉速度Vdrが所定値以下の際に学習する。また、学習手段40は、傾斜角センサ60から出力された検出値に基づいて車体2の傾斜角が所定値以下の際に学習する。
学習手段40は、ドア開度別学習部42と、動作開始位置別学習部44と、ユーザ位置別学習部46と、ユーザ別学習部48と、を有している。
【0017】
このうち、ドア開度別学習部42は、ドア開閉検出部20によって検出されたドア3のドア開度Odrの値にドア開閉速度Vdrの値を結び付けて学習して開度別学習値とする。そして、オート動作の際、制御部10は、ドア3のドア開度Odrに対応する開度別学習値を用いてドア3の駆動制御に反映させる。
【0018】
また、動作開始位置別学習部44は、マニュアル動作が開始されたドア3の動作開始位置別にドア3のドア開度Odrの値にドア開閉速度Vdrの値を結び付けて学習して位置別学習値とする。そして、オート動作を開始する際、制御部10は、ドア3の動作開始位置に対応する位置別学習値を用いてドア3の駆動制御に反映させる。
【0019】
さらに、ユーザ位置別学習部46は、動作判定部30によるユーザの位置の判定に基づいてユーザが室内にいる際の学習値と、ユーザが室外にいる際の学習値とを個別に学習してユーザ位置別学習値とする。そして、オート動作の際、制御部10は、ユーザの位置に対応するユーザ位置別学習値を用いてドア3の駆動制御に反映させる。
【0020】
また、ユーザ別学習部48は、ユーザ識別手段50が異なるユーザを認識すると、ユーザ毎に個別にドア3のドア開度Odrの値にドア開閉速度Vdrの値を結び付けて学習してユーザ別学習値とする。
そして、オート動作の際、制御部10は、異なるユーザに対応するユーザ別学習値を用いてドア3の駆動制御に反映させる。
【0021】
次に、実施形態のドア装置1を用いた制御について
図2を参照しつつ説明する。
図3は、ドア3の基本的な制御を示すものである。
ステップS1で、制御部10の動作判定部30は、ドア3の開閉がマニュアル動作で行われるか否かを判定する。ドア3の何れかのマニュアル動作スイッチ5a,6aがユーザにより操作されるとドア3の開閉がマニュアル動作で行われると判定(ステップS1でYes)して、ステップS2に進む。
【0022】
ステップS2では、学習手段40が演算部70により変換されたドア開閉速度Vdrの値を複数回学習する。そして、学習手段40は、例えば学習した値の平均値を学習値として、図示しない記憶部に記憶し、必要に応じて読出して制御信号とする。
また、ステップS1で、ドア3の何れかのオート動作スイッチ5b,6bがユーザにより操作されると、動作判定部30は、ドア3の開閉をオート動作で行うと判定(ステップS1でNo)して、ステップS3に進む。
【0023】
ステップS3では、学習手段40により学習された学習値を、ドア3をオート動作させる制御信号とする。そして、制御部10は、制御信号をアクチュエータ4に出力する。これにより、ユーザがオート動作スイッチ5b,6bを操作すると、アクチュエータ4は、ドア3に回動力を与えてスイング動作させることができる。
例えば、ドア3が閉じている状態からオート動作スイッチ5b,6bが操作されるとドア3は、開放方向にスイング動作する。また、ドア3が開いている状態からオート動作スイッチ5b,6bが操作されるとドア3は、閉止方向にスイング動作する。
【0024】
図4は、オート動作によりドア3が閉じている全閉状態から、全開状態となる開放方向にスイング動作される制御の一例を示している。学習手段40により学習された結果として、このようなグラフのようなドア開度Odr1に対応するドア開閉速度Vdrの学習値が得られる。このグラフの横軸は、ドア開度Odr[度]を示し、縦軸は、ドア開閉速度Vdr[m/s]をそれぞれ示している。また、ドア開度Odrは、図中左側から右側に向かう全閉状態から全開状態まで、第1区間から第3区間まで三つの区間に分けられている。このうち、第1区間と第2区間との境をドア開度Odr1[度]と、また、第2区間と第3区間との境をドア開度Odr2[度]としている。
【0025】
全閉状態から制御部10の制御信号がアクチュエータ4に入力すると、ドア3は、全閉状態から開放方向にスイング動作を開始する。第1区間では、ドア開度Odr1に向かうに従ってドア開閉速度Vdrを増加させる。さらに開き始めには、一定の低速度による緩衝域が形成されている。これにより、スイング動作の初期段階では、ドア3の急激な回動が抑制される。
第2区間では、ドア開度Odr1からドア開度Odr2に至るまで同じドア開閉速度Vdrでドア3をスイング動作させる。第2区間のドア開閉速度Vdrは、第1区間から第3区間までの間で最も早くなるように学習される。このため、ドア3が全開となるまでの時間が短縮される。
第3区間では、ドア開度Odr2から全開状態に向かうに従ってドア開閉速度Vdrを減少させる。これにより、全開状態となる手前のスイング動作が遅くなりドア3に与える衝撃を緩和することができる。
【0026】
図5は、オート動作によりドア3が全開状態から、全閉状態まで閉止方向にスイング動作される制御の一例を示している。ドア開度Odrは、図中左側から右側に向かう全開状態から全閉状態まで、第4区間から第6区間まで三つの区間に分けられている。このうち、第4区間と第5区間との境をドア開度Odr3[度]と、また、第5区間と第6区間との境をドア開度Odr4[度]としている。
【0027】
全開状態から制御部10の制御信号がアクチュエータ4に入力すると、ドア3は、全開状態から閉止方向にスイング動作を開始する。第4区間では、ドア開度Odr3に向かうに従ってドア開閉速度Vdrを増加させる。これにより、スイング動作の初期段階では、ドア3の急激な回動が抑制される。
第5区間では、ドア開度Odr3からドア開度Odr4に至るまで同じドア開閉速度Vdrでドア3をスイング動作させる。第5区間のドア開閉速度Vdrは、第4区間から第6区間までの間で最も早くなるように設定される。このため、ドア3が全閉となるまでの時間が短縮される。
第6区間では、ドア開度Odr4から全閉状態に向かうに従ってドア開閉速度Vdrが減少する。これにより、全閉状態となる手前のスイング動作が遅くなりドア3の急激な閉止が抑制されてドア3および車体2に与える衝撃を緩和することができる。
【0028】
上述してきたように、実施形態のドア装置1は、車体2に対してスイング動作するドア3と、ドア3を開閉駆動するアクチュエータ4と、アクチュエータ4の駆動制御を行う制御部10と、ドア3の開閉速度を検出するドア開閉検出部20と、を備える。制御部10は、ドア3の開閉動作がユーザの手動によって開閉が行われるマニュアル動作であるかまたは、アクチュエータ4によって自動で開閉するオート動作であるかを判定する動作判定部30と、マニュアル動作が行われている際、ドア開閉検出部20によって検出された開閉速度を学習して、オート動作が行われる際、アクチュエータ4の駆動制御に反映させる学習手段40と、を有している。
【0029】
このように構成された実施形態のドア装置1は、ユーザの好みに応じてオート動作の際のドア3の開閉速度を変更できる。
詳しくは、学習手段40は、マニュアル動作が行われている際のドア3の開閉速度を学習する。そして、制御部10は、ドア3をオート動作させる際、学習した開閉速度を反映させてアクチュエータ4を駆動制御する。このため、ユーザが手動で開閉する速度に近い速度でドア3は、オート動作してユーザの好みの速度で開閉することができる。
【0030】
また、学習手段40は、ドア3の開度に応じて開閉速度を学習するドア開度別学習部42を有してる。
実施形態のドア開度別学習部42は、マニュアル動作の際に学習された開度別学習値を用いて制御部10は、オート動作の際に制御信号を出力してアクチュエータ4によるドア3の駆動制御に反映させる。
開度別学習値は、ドア3のドア開度Odrに対応するドア開閉速度Vdrが学習されている。このため、ドア3の開け始めからドア3が閉じるまで一定の速度で開閉するのではなく、開度に応じた速度で開閉することができる。したがって、さらにユーザの好みに応じた速度でドア3をオート動作させて開閉できる。
【0031】
さらに、学習手段40は、マニュアル動作が開始されたドア3の動作開始位置別に位置別学習値を学習する動作開始位置別学習部44を有している。学習手段40はオート動作を開始する際、ドア3の動作開始位置に対応する位置別学習値を用いてドア3の駆動制御に反映させる。
たとえば、
図6は、ドア3の動作開始位置が第2区間内に位置する中間開度、いわゆる半開きの状態からオート動作により全開状態となる開放方向にオート動作される制御を一点鎖線で示している。なお、比較のため実線にてドア3が閉じている全閉状態から、全開状態となるオート動作(
図4参照)を示す。
【0032】
中間開度から制御部10の制御信号がアクチュエータ4に入力すると、ドア3は、開放方向にスイング動作を開始する。第2区間では、ドア開度Odr2に向かうに従ってドア開閉速度Vdrを増加させる。さらに開き始めには、一定の低速度による緩衝域を設けてもよい。また、
図4と同様に第2区間にて最も早いドア開閉速度Vdrに到達した場合、この最も早いドア開閉速度Vdrを維持する。これにより、ドア3が全開となるまでの時間が短縮される。
第3区間では、ドア開度Odr2からドア3が全開状態に向かうに従ってドア開閉速度Vdrを減少させる。これにより、全開状態となる手前のスイング動作を遅くしてドア3に与える衝撃を緩和することができる。
【0033】
図7は、ドア3の動作開始位置が第5区間内に位置する中間開度、いわゆる半開きの状態からオート動作により全閉状態となる方向にオート動作される制御を破線で示している。なお、比較のため実線にてドア3が開いている全開状態から全閉状態となるオート動作(
図5参照)を示す。
【0034】
中間開度から制御部10の制御信号がアクチュエータ4に入力すると、ドア3は、全閉方向にスイング動作を開始する。第5区間では、ドア開度Odr4に向かうに従ってドア開閉速度Vdrを増加させる。さらに開き始めには、一定の低速度による緩衝域が形成されていてもよい。また、
図5と同様に第5区間にて最も早いドア開閉速度Vdrに到達した場合、この最も早いドア開閉速度Vdrを維持する。これにより、ドア3が全閉となるまでの時間が短縮される。
【0035】
第6区間では、ドア開度Odr4からドア3が全開状態に向かうに従ってドア開閉速度Vdrを減少させる。これにより、全閉状態となる手前のスイング動作を遅くしてドア3に与える衝撃を緩和することができる。
このようにドア3の開度が中間開度である際、オート動作を開始しても違和感のないドア開閉速度Vdrで開閉できる。なお、過去に対応する学習値(その半開きの位置から全開した学習値)がない場合は、第1区間と第3区間との合成値、または、平均値を学習値としてもよい。
【0036】
そして、学習手段40は、ユーザが室外にいる際の学習値と、ユーザが室内にいる際の学習値とを個別に学習してユーザ位置別学習値とするユーザ位置別学習部46を有している。
図8では、動作判定部30が室内側にユーザがいると判定した場合の制御を破線で示している。なお、比較のため実線にて車外側にユーザがいると判定した場合の制御(
図5参照)を示す。
【0037】
例えば、動作判定部30は、車内側に設けられたオート動作スイッチ5bが操作されると、室内側にユーザがいると判定する。室内側にユーザがいると判定した場合、制御部10の制御信号がアクチュエータ4に入力すると、ドア3は、全開状態から全閉方向にスイング動作を開始する。第4区間では、ドア開度Odr3に向かうに従ってドア開閉速度Vdrを増加させる(破線参照)。ドア開閉速度Vdrの増加比率は、車外側にユーザがいると判定した場合(実線参照)の制御より小さく設定されている。
第5区間では、車外側にユーザがいると判定した場合のドア開閉速度Vdrより低いドア開閉速度Vdrに到達すると、一定のドア開閉速度Vdrでドア3をスイング動作させる。
また、第5区間では、第6区間の制御に先行してドア開度Odr4の手前から全閉状態に向かうに従ってドア開閉速度Vdrを減少させる。ドア開閉速度Vdrの減少比率は、車外側にユーザがいると判定した場合(実線参照)の制御より小さくなるように学習されている。これにより、比較的長い区間でドア3が急激なスイング動作とならないようには、ドア開閉速度Vdrを抑制することができる。
第6区間では、第5区間と同じドア開閉速度Vdrの減少比率を維持したまま、ドア開度Odr4から全閉状態に向かって、ドア3をスイング動作させる。これにより、全閉状態となる手前のスイング動作は、車外側にユーザがいると判定した場合(実線参照)の制御と比べて長い時間で緩慢となる。したがって、さらにドア3および車体2に与える衝撃を緩和することができる。
【0038】
このように、ユーザが室内にいる時と室外にいる際、快適なドア開度速度が異なる為、個別に学習値を持つことにより、さらにユーザの好みにあったドア開閉速度Vdrでドア3を閉止できる。
たとえば、マニュアル動作で室外からドア3を勢いよく閉めても、室内からドア3を閉める際の速度と異ならせてユーザ位置別学習値として学習されている。そして、オート動作では、ユーザが室内側にいる際に学習されたドア開閉速度Vdr、すなわち、室外側からドア3を閉める際のドア開閉速度Vdrとは異なる速度で室内側からドア3を閉止することができる。このようにユーザ位置別学習値を制御信号に反映させて、室内側のユーザにとって快適なドア開閉速度Vdrでドア3を閉止できる。
【0039】
また、学習手段40は、動作判定部30がマニュアル動作であると判定する場合は、ドア開閉速度Vdrを複数回検出し、検出された値の平均値を学習して学習値としている。
図9は、検出された値の平均値を学習値とする制御を示すものである。
ステップS11で、制御部10の動作判定部30は、ドア3の開閉がマニュアル動作で行われるか否かを判定する。ドア3の何れかのマニュアル動作スイッチ5a,6aがユーザにより操作されるとドア3の開閉がマニュアル動作で行われると判定(ステップS11でYes)して、ステップS12に進む。
【0040】
ステップS12では、学習手段40が演算部70により変換されたドア開閉速度Vdrの値を複数回学習する。ここでは、図示しない記憶部にN回目のドア開閉速度Vdrの値として記憶する。
ステップS13に進むと記憶部に記憶されたドア開閉速度Vdrの平均値が演算されて学習値として学習される。
そして、学習手段40は、学習した値の平均値を学習値としてステップS11に戻る。
また、ステップS11で、ドア3の何れかのオート動作スイッチ5b,6bがユーザにより操作されると、動作判定部30は、ドア3の開閉をオート動作で行うと判定(ステップS11でNo)して、ステップS14に進む。
ステップS14で、学習手段40は、記憶部からN回学習されて平均値として演算される。そして平均値を学習した学習値が必要に応じて読出されて制御信号となる。
このため、たとえば、車体2の傾きなどによって個々のドア開閉速度Vdrは多少のばらつきが生じている場合であっても平均値を学習値とすることでユーザの好みに近い学習値にすることができる。
【0041】
さらに、学習手段40は、車体2の傾斜角が所定値以下の際に学習して学習値としてもよい。
たとえば車体2が傾いている際には、ドア開閉速度Vdrがユーザの好みと相違する。このため、車体2の傾斜角が所定値以下の際には、学習しない。
図10は、傾斜角センサ60(
図1参照)が車体2の傾斜角を検出して学習するドア開閉速度を選択する制御を示すものである。
ステップS21では、制御部10の動作判定部30がドア3の開閉をマニュアル動作で行なうか否かを判定する。ドア3の何れかのマニュアル動作スイッチ5a,6aがユーザにより操作されるとドア3の開閉がマニュアル動作で行われると判定(ステップS21でYes)して、ステップS22に進む。
【0042】
ステップS22では、車体2の傾斜角が予め設定される所定値以下であるか否かが判定される。ステップS22で傾斜角が予め設定される所定値以下であると判定される(ステップS21でYes)と、ステップS23に進み、学習手段40は、ドア開閉検出部20で検出されたドア開閉速度Vdrの値として学習する。
また、ステップS22で傾斜角が予め設定される所定値以下ではないと判定される(ステップS22でNo)と、制御部10は、ドア開閉検出部20で検出されたドア開閉速度Vdrを学習値として学習しない。
そして、ステップS21で、制御部10の動作判定部30は、マニュアル動作が行われないと判定(ステップS21でNo)すると、ステップS24に進み、制御部10は、学習された学習値を用いて制御信号をアクチュエータ4に出力してオート動作を行う。
これにより、車体2の傾斜により生じるイレギュラーなドア開閉速度Vdr、例えば早すぎたり遅すぎたりする場合、このドア開閉速度Vdrは学習値に含まれない。したがって、ユーザの好みに近い学習値を用いてドア3をオート動作させることができる。
【0043】
また、学習手段40は、ドア開閉速度Vdrが所定値以下の際に学習して学習値としてもよい。
図11に示すように、ステップS31で、制御部10の動作判定部30は、ドア3の開閉がマニュアル動作で行われるか否かを判定する。ドア3の何れかのマニュアル動作スイッチ5a,6aの操作によりマニュアル動作で行なうと判定(ステップS21でYes)すると、ステップS32に進む。
【0044】
ステップS32では、検出信号から変換されたドア開閉速度Vdrの値が予め設定された所定値以下であるか否かが判定される。ドア開閉速度Vdrの値が予め設定された所定値以下であると判定された場合(ステップS32でYes)には、ステップS33に進み、ドア開閉速度Vdrの値を学習して学習値とする。また、ドア開閉速度Vdrの値が予め設定された所定値以下でないと判定された場合(ステップS32でNo)、学習手段40は、ドア開閉検出部20で検出されたドア開閉速度Vdrの値を学習値として学習しない。
そして、ステップS31で、制御部10の動作判定部30は、マニュアル動作が行われないと判定(ステップS31でNo)すると、ステップS34に進み、制御部10は、学習された学習値を用いて制御信号をアクチュエータ4に出力してオート動作を行う。
このため、予め設定された所定値以下のドア開閉速度Vdrのみ学習した学習値による制御信号が制御部10からアクチュエータ4に出力される。
したがって、極端なドア3のドア開閉速度Vdrは、ドア3のオート動作に反映されない。よって、ユーザが不本意にドア3を早くマニュアル動作で開閉した場合であっても、ドア3がオート動作する際には、ユーザの好みにあうドア開閉速度Vdrでスイング動作する。
【0045】
さらに、ドア装置1は、複数人のユーザを個別に認識できるユーザ識別手段50を備えている。
学習手段40は、ユーザ識別手段50が異なるユーザを認識すると、ユーザ毎に個別のユーザ別学習値として学習するユーザ別学習部48を有している。
このように、個別のユーザ毎にユーザ別学習値を備えることで、さらに各ユーザの好みにあうドア開閉速度Vdrで開閉することができる、といった実用上有益な作用効果を発揮する。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば、以下のようなものである。
【0047】
実施形態では、ドア開閉検出部20は、モータアクチュエータの回転軸の状態を検出するホールセンサにより構成されている。しかしながら、ドア3のドア開閉速度Vdrを検出するドア開閉検出部20は、ホールセンサに限定されるものではない。例えば、回転角度センサを用いてドア3の開閉角度を時系列で検出しドア開閉速度Vdrの値を演算する等、他の速度センサ、角度センサや回転速度センサを用いて演算により、ドア開閉速度Vdrおよびドア開閉の値を求めてもよい。すなわち、ドア3のドア開閉速度Vdrの値を学習手段40による学習値とすることができれば、検出するデバイスの種類や検出方法および演算手段が特に限定されるものではない。
【0048】
また、実施形態では、アクチュエータ4として、モータアクチュエータに減速機構を組み合わせた機構を例示して説明したがこれに限定されるものではない。
たとえば、駆動力を発生させる動力機構は、電動に限らず油圧や空気圧を使用してもよい。また、伝達機構についても、例えばボールねじ機構やリンク機構等、動力機構の発生させた駆動力を、車体2に対してドア3のスイング動作に変換して伝達させるものであればよい。すなわち、アクチュエータ4は、制御部10が出力する制御信号に基づいてドア3を開閉駆動するものであればよくアクチュエータ4に用いられる動力機構、形状、数量および伝達機構が特に限定されるものではない。
【0049】
また、傾斜角センサ60は、加速度センサに限らず、たとえはジャイロセンサや他の種類の慣性センサ等であってもよい。すなわち、車体2の傾斜角を検出できるものであれば、傾斜角センサ60の検出方法や構造、数量、材料あるいは、車体2に対する設置場所が特に限定されるものではない。
【0050】
さらに、車内側スイッチ5または車外側スイッチ6についても実施形態の構成に限定されない。車内側スイッチ5または車外側スイッチ6構成するマニュアル動作スイッチ5a,6aやオート動作スイッチ5b,5bが個別あるいは組み合わせられて構成されていてもよい。
また、押しボタンスイッチや、接触検出スイッチ、あるいは非接触スイッチ等、ユーザの操作を検知できるものであればよい。例えば、ユーザ識別手段50としては、IDキーまたはリモコンスイッチ等を利用して通信により室内外のユーザを識別するものであってよい。
すなわち、車内側スイッチ5または車外側スイッチ6は、少なくともマニュアル動作をユーザが行うか否かを認識および判定できればよく、その形状、数量、配置位置およびユーザによる操作の検出方法が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 ドア装置
2 車体
3 ドア
4 アクチュエータ
10 制御部
20 ドア開閉検出部
30 動作判定部
40 学習手段