(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107604
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】戸車及び引戸装置
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
E05D15/06 106
E05D15/06 111
E05D15/06 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011621
(22)【出願日】2023-01-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】金森 英晃
(72)【発明者】
【氏名】七山 貴志
(72)【発明者】
【氏名】内山 肇
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034BA02
2E034BA13
2E034BD01
2E034BD03
2E034BD04
2E034BD05
(57)【要約】
【課題】 車輪の径を小さくすることのできる戸車の提供。
【解決手段】 ケース1と車輪2と軸3とを備え、ケース1は、軸3を保持するものであり、車輪2は、樹脂製のタイヤ4と、タイヤ4の中心部に密嵌した金属製のリング5を有し、軸3は、リング5に通してあり、リング5の内周面5a又は軸3の外周面に滑り性を向上させる表面処理が施してある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと車輪と軸とを備え、ケースは、軸を保持するものであり、車輪は、樹脂製のタイヤと、タイヤの中心部に密嵌した金属製のリングを有し、軸は、リングに通してあり、リングの内周面又は軸の外周面に滑り性を向上させる表面処理が施してあることを特徴とする戸車。
【請求項2】
上框と下框と左右の縦框とを組んだ框体と、框体に保持したガラスと、下框に取付けた請求項1記載の戸車とを備えることを特徴とする引戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸車及び引戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、引違いサッシ等のサッシの障子の下框には、樹脂製の車輪を有する戸車が設けられており、障子を軽く開閉できるようにするために、車輪と軸の間にベアリングを設けていた(例えば、特許文献1参照。)。従来の戸車は、車輪と軸の間にベアリングを設けているために、車輪の径を小さくすることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、車輪の径を小さくすることのできる戸車と、その戸車を備えた引戸装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による戸車は、ケースと車輪と軸とを備え、ケースは、軸を保持するものであり、車輪は、樹脂製のタイヤと、タイヤの中心部に密嵌した金属製のリングを有し、軸は、リングに通してあり、リングの内周面又は軸の外周面に滑り性を向上させる表面処理が施してあることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明による引戸装置は、上框と下框と左右の縦框とを組んだ框体と、框体に保持したガラスと、下框に取付けた請求項1記載の戸車とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明による戸車は、ケースと車輪と軸とを備え、ケースは、軸を保持するものであり、車輪は、樹脂製のタイヤと、タイヤの中心部に密嵌した金属製のリングを有し、軸は、リングに通してあり、リングの内周面又は軸の外周面に滑り性を向上させる表面処理が施してあることで、車輪の径を小さくすることができ、且つ車輪と軸の間の摩擦を小さくすることができる。
【0008】
請求項2記載の発明による引戸装置は、上框と下框と左右の縦框とを組んだ框体と、框体に保持したガラスと、下框に取付けた請求項1記載の戸車とを備えるので、戸車の車輪の径が小さくなることで下框の見付寸法を小さくすることができ、これに伴いガラスの面積が大きくなるため、断熱性、眺望性及び採光性が向上する。框の見付寸法が小さくなることで、コストダウンにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は
図2に示す戸車の車輪の正面図、(b)は同車輪の縦断面図、(c)は比較例であって従来の戸車の車輪の縦断面図である。
【
図2】(a)は本発明の戸車の一実施形態を示す正面図、(b)は同側面図である。
【
図3】本発明の引戸装置の一実施形態を示す室内側から見た正面図である。
【
図6】同引戸装置の下部を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図3~6は、本発明の引戸装置の一実施形態を示している。本引戸装置は、住宅用の引違いサッシに適用したものであって、
図4,5に示すように、躯体開口部に取付けられる枠13と、枠13内に引違い状に開閉自在に設けた外障子14a及び内障子14bと、外障子14aよりも室外側に上下枠16,17に沿って摺動可能に設けた網戸15を備えている。
【0011】
枠13は、
図4,5に示すように、上枠16と下枠17と左右の縦枠18,18を四周枠組みして構成してある。枠13は、室内に露出する部分を樹脂部材19で覆うことで、室内側の結露を防止するとともに、断熱性能を向上させている。
【0012】
外障子14aと内障子14bは、
図4,5に示すように、上框6と下框7と戸先框8と召合せ框9とを矩形に組んで形成した框体10と、框体10の内側にグレージングチャンネル20を介して嵌め込んだガラス11を備えている。外障子14aと内障子14bは、各框6,7,8,9を室外側に配置したアルミ形材22と室内側に配置した樹脂形材23とで構成し、ガラス11を複層ガラスとすることで、室内側の結露を防止するとともに、断熱性能を向上させている。
外障子14aと内障子14bは、上枠16に設けられたレール24と下枠17に設けられたレール25とに案内されて上下枠16,17の長手方向に沿ってスライドする。
【0013】
図3,4に示すように、下框7の長手方向の両端部には、下枠17のレール25と係合する戸車12が設けてある。戸車12は、
図2に示すように、ケース1と、ケース1に保持された軸3と、軸3に回転自在に取付けた車輪2とを備えている。
ケース1は、軸3を保持するものであって、従前の戸車と同様に、障子14a,14bの外周側から工具で調整ネジ26を回すことで、軸3の高さを調整する機能を備えている。
【0014】
車輪2は、
図1(a),(b)に示すように、硬質樹脂で形成されたタイヤ4と、タイヤ4の中心部に設けた孔27に密嵌した金属製のリング5とで構成されている。リング5は、軸3と接する内周面5aに滑り性を向上させる表面処理、具体的にはテフロン加工が施してある。
リング5は、板厚0.75mmの板を長方形に切断し、その片面にテフロン加工を施し、テフロン加工を施した面が内側になるように円形に曲げて形成してある。そのためリング5には一箇所に幅方向に連続したスリット28が形成されている。
リング5は、タイヤ4の中心部に形成された孔27にプラスチックハンマー等で叩いて密着した状態で嵌め込まれる。リング5は、両側の端面5b,5bがタイヤ4の側面4a,4aと同面になっている。
【0015】
滑り性を向上させる表面処理としては、テフロン加工以外にも、例えばテフロン以外のフッ素樹脂をコーティングしたもの、モリブデンやグラファイト等の個体潤滑剤を用いたもの、あるいは単に表面を研磨することで摩擦抵抗を小さくしたもの等であってもよい。
【0016】
このように本戸車12は、ベアリングの代わりに内周面5aにテフロン加工を施した薄肉のリング5を用いたことで、車輪2の径(外径)を従来のものより大幅に小さくすることができ、具体的には、車輪2の径は約20mmとなっている。
図1(c)は、実施形態の引戸装置の障子14a,14bと同じサイズ・重量の障子に用いられていた従来の戸車の車輪101(ベアリング100を内蔵したもの)を示しており、この車輪101の径は45mmである。すなわち、本実施形態の戸車12は、車輪2の径が従来の半分以下になっている。
しかも本戸車12は、リング5の内周面5aにテフロン加工が施されていることで、リング5と軸3の間の摩擦が小さいため、障子14a,14bの開閉が軽く行える。
また、ベアリングを内蔵した従来の戸車では、障子を勢いよく動かしたときに、障子から手が離れても障子が慣性でスライドし、障子と枠の間に指を挟んだりすることがあったが、本実施形態の戸車12では、障子14a,14bを軽く動かせるものの、障子14a,14bから手が離れると障子14a,14bがすぐに停止するため、障子14a,14bと枠13の間に指を挟んだりしにくい。
【0017】
本引戸装置は、戸車12の車輪2の径が小さくなり、戸車12がコンパクトになったことで、
図6に示すように、戸車12が小さくなった分だけ下框7の見付寸法Aが小さくなっている。上框6と戸先框8及び召合せ框9の見付寸法も、下框7と同様に小さくなっている。これにより、従来と比べてガラス11の面積が大きくなっており、これに伴い断熱性、眺望性及び採光性が向上する。框6,7,8,9の見付寸法が小さくなることで、コストダウンにもなる。
【0018】
以上に述べたように本戸車12は、ケース1と車輪2と軸3とを備え、ケース1は、軸3を保持するものであり、車輪2は、樹脂製のタイヤ4と、タイヤ4の中心部に密嵌した金属製のリング5を有し、軸3は、リング5に通してあり、リング5の内周面5a又は軸3の外周面に滑り性を向上させる表面処理が施してあることで、車輪2の径を小さくすることができ、且つ車輪2と軸3の間の摩擦を小さくすることができる。
本戸車12は、リング5の内周面5aに滑り性を向上させる表面処理が施してあるので、軸3の外周面に滑り性を向上させる表面処理を施すよりも当該表面処理層を厚く、均一に付着させるのが容易であり、性能や耐久性が向上する。
本戸車12は、リング5の両端の端面5b,5bとタイヤ4の側面4a,4aが同面であるため、リング5をタイヤ4の孔27に密嵌させるのが容易であり、組立性が良い。
【0019】
本引戸装置は、上框6と下框7と左右の縦框8,9とを組んだ框体10と、框体10に保持したガラス11と、下框7に取付けた請求項1記載の戸車12とを備えるので、戸車12の車輪2の径が小さくなることで下框7の見付寸法Aを小さくすることができ、これに伴いガラス11の面積が大きくなるため、断熱性、眺望性及び採光性が向上する。框7の見付寸法が小さくなることで、コストダウンにもなる。
【0020】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。車輪の形状、ケースの構造等は、適宜変更することができる。リングの内周面ではなく、軸の外周面に滑り性を向上させる表面処理が施されていてもよい。滑り性を向上させる表面処理に用いる材料や処理方法は、適宜変更することができる。戸車は、一つのケースに車輪が複数横に並べて設けてあってもよい。本発明の引戸装置は、引違いサッシに限らず、片引きサッシ、玄関引戸や室内引戸など、あらゆる引戸に適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ケース
2 車輪
3 軸
4 タイヤ
5 リング
6 上框
7 下框
8 戸先框(縦框)
9 召合せ框(縦框)
10 框体
11 ガラス
12 戸車