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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107605
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240802BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240802BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240802BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240802BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240802BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240802BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0567
H01M4/13
H01M10/0585
H01M10/0587
H01M10/0568
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011622
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮地 良和
(72)【発明者】
【氏名】藤田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】西出 太祐
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ12
5H029BJ14
5H029DJ08
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ03
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ07
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA09
5H050EA24
5H050EA25
5H050FA02
5H050FA05
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA03
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】体積容量を維持するとともに電極体の中応部の反応抵抗の上昇を抑制することができる非水電解質二次電池を提供すること。
【解決手段】電解液は、溶媒と、リチウム塩と、添加剤とを含み、添加剤は、オキサレート基を有するホウ素化合物及びフルオロスルホニル基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含み、負極活物質層のBET比表面積が1.8m/g以上3.0m/g以下であり、負極活物質層は負極活物質粒子からなる粒子群を含み、粒子群の平均球形化度は、0.87以上であり、電極体が捲回型電極体である場合、電極体の巻回軸方向に平行な方向における負極活物質層の長さが180mm以上であり、電極体が積層型電極体である場合、負極活物質層は、積層方向からみたときの少なくとも一方の対向する端部同士の最短距離が180mm以上である、非水電解質二次電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、電解液とを含む非水電解質二次電池であって、
前記電極体は、正極板と、負極板と、セパレータとを備え、
前記電解液は、溶媒と、リチウム塩と、添加剤とを含み、
前記添加剤は、オキサレート基を有するホウ素化合物及びフルオロスルホニル基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記負極板は、負極芯材と、負極活物質粒子を含む負極活物質層とを備え、
前記負極活物質層のBET比表面積は、1.8m/g以上3.0m/g以下であり、
前記負極活物質層は前記負極活物質粒子からなる粒子群を含み、前記粒子群の平均球形化度は、0.87以上であり、
前記電極体は、捲回型電極体又は積層型電極体であり、
前記電極体が捲回型電極体である場合、前記電極体の巻回軸方向に平行な方向における前記負極活物質層の長さが180mm以上であり、
前記電極体が積層型電極体である場合、前記負極活物質層は、積層方向からみたときの少なくとも一方の対向する端部同士の最短距離が180mm以上である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記電極体の幅方向における寸法は300mm以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記電解液中の添加剤の含有量は0.001質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記粒子群の平均粒子径D50は10μm以上30μm以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記平均球形化度が0.9以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池(以下、電池ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007-179883号公報(特許文献1)及び国際公開第2014/157591号(特許文献2)には、非水電解質二次電池の反応抵抗の上昇を抑制するために電解液中に用いる添加剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-179883号公報
【特許文献2】国際公開第2014/157591号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非水電解質二次電池の電解液において、特許文献1及び2に記載の添加剤を用いる場合であっても、体積当たりの電池容量(以下、体積容量ともいう)の向上を目的として電極体の幅を広げると、電極体の中央部では反応抵抗が高くなり、電池特性の低下が生じる場合がある。これは、添加剤の電極体の中央部への浸透が電解液の溶媒やリチウム塩に比べ遅いため、電極体の中央部において添加剤により形成される保護被膜が電極体の端部に比べ少なくなり、その結果、電極体の中央部の抵抗が上昇し易くなるためであると推測される。
【0005】
本開示の目的は、体積容量を維持するとともに電極体の中応部の反応抵抗の上昇を抑制することができる非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の非水電解質二次電池を提供する。
[1] 電極体と、電解液とを含む非水電解質二次電池であって、
前記電極体は、正極板と、負極板と、セパレータとを備え、
前記電解液は、溶媒と、リチウム塩と、添加剤とを含み、
前記添加剤は、オキサレート基を有するホウ素化合物及びフルオロスルホニル基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記負極板は、負極芯材と、負極活物質粒子を含む負極活物質層とを備え、
前記負極活物質層のBET比表面積は、1.8m/g以上3.0m/g以下であり、
前記負極活物質層は前記負極活物質粒子からなる粒子群を含み、前記粒子群の平均球形化度は、0.87以上であり、
前記電極体は、捲回型電極体又は積層型電極体であり、
前記電極体が捲回型電極体である場合、前記電極体の巻回軸方向に平行な方向における前記負極活物質層の長さが180mm以上であり、
前記電極体が積層型電極体である場合、前記負極活物質層は、積層方向からみたときの少なくとも一方の対向する端部同士の最短距離が180mm以上である、非水電解質二次電池。
[2] 前記電極体の幅方向における寸法は300mm以下である、[1]に記載の非水電解質二次電池。
[3] 前記電解液中の添加剤の含有量は0.001質量%以上10質量%以下である、[1]又は[2]に記載の非水電解質二次電池。
[4] 前記粒子群の平均粒子径D50は10μm以上30μm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
[5] 前記平均球形化度が0.9以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、体積容量を維持するとともに電極体の中応部の反応抵抗の上昇を抑制することができる非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
図3図3は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略断面図である。
図4図4は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
図5図5は、実施例において作製した積層体の層構成を示す概略図である。
図6図6は、実施例において反応抵抗評価に用いた試料を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0010】
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば電動車両等において、主電源又は動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100が連結されることにより、電池モジュール又は組電池が形成されてもよい。電池100は、例えば1~200Ahの定格容量を有していてもよい。
【0011】
電池100は外装体90を含む。外装体90は角形(扁平直方体状)である。外装体90は、例えばアルミニウム(Al)合金製であってもよい。外装体90は電極体50と電解液(不図示)とを収納している。すなわち電池100は電極体50と電解液とを含む。
【0012】
外装体90は、例えば封口板91と外装缶92とを含んでいてもよい。封口板91は、外装缶92の開口部を塞いでいる。例えばレーザ加工等により、封口板91と外装缶92とが接合されていてもよい。なお、外装体90は任意の形態を有し得る。外装体90は、例えばパウチ形等であってもよい。すなわち外装体90は、Alラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
【0013】
封口板91には、正極端子81と負極端子82とが設けられている。封口板91に、注入口(不図示)、ガス排出弁(不図示)等がさらに設けられていてもよい。注入口から外装体90の内部に電解液が注入され得る。注入口は、例えば封止栓等によって閉塞され得る。正極集電部材71は、正極端子81と電極体50とを接続している。正極集電部材71は、例えばAl板等であってもよい。負極集電部材72は、負極端子82と電極体50とを接続している。負極集電部材72は、例えば銅(Cu)板等であってもよい。
【0014】
電極体50は、正極板と、セパレータと、負極板とを備える。電極体50は、例えば巻回型であってもよいし、積層型であってもよい。電極体50が巻回型である時、正極板、負極板及びセパレータの各々は、例えば帯状の平面形状を有する積層体であってよい。帯状の積層体が渦巻き状に巻回されることにより、巻回体が形成され得る。巻回体は、例えば筒状であってもよい。筒状の巻回体が径方向に圧縮されることにより、扁平状の電極体50が形成され得る。電極体50の幅方向(図1中、W軸方向)における寸法は例えば300mm以下であってよく、180mm以上300mm以下であってもよい。
【0015】
図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。図2の電極体50はW軸方向に平行な巻回軸を有する巻回型電極体である。電極体50は積層体40を含む。電極体50は、実質的に積層体40からなっていてもよい。積層体40は、正極板10と負極板20とセパレータ30とを含む。セパレータ30の少なくとも一部は、正極板10と負極板20との間に介在している。セパレータ30は、正極板10と負極板20とを分離している。積層体40は、1枚のセパレータ30を単独で含んでいてもよい。積層体40は、2枚のセパレータ30を含んでいてもよい。例えば正極板10が2枚のセパレータ30に挟まれていてもよい。例えば負極板20が2枚のセパレータ30に挟まれていてもよい。積層体40は、例えば、セパレータ30(第1セパレータ)と、負極板20と、セパレータ30(第2セパレータ)と、正極板10とがこの順序で積層されることにより形成されていてもよい。
【0016】
図3は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略断面図である。図3の電極体50は巻回型電極体である。図3には巻回軸と直交する断面が示されている。電極体50は、湾曲部51と平坦部52とを含む。湾曲部51においては、積層体40が湾曲している。湾曲部51において、積層体40は弧を描いていてもよい。平坦部52においては、積層体40が平坦である。平坦部52は、2つの湾曲部51に挟まれている。平坦部52は、2つの湾曲部51を接続している。積層体40の厚さは、積層体40に含まれる正極板10、負極板20及びセパレータ30の厚さの合計を示す。積層体40は、例えば100~200μmの厚さを有していてもよいし、1~100mmの厚さを有していてもよい。
【0017】
図4は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略断面図である。図4の電極体50は積層型電極体である。電極体50が積層型である時、正極板、負極板及びセパレータの各々は、例えば矩形状の平面形状を有する積層体であってよい。図4に示すように、複数個の積層体が所定の一方向(D軸方向)に積み上げられることにより、電極体50が形成され得る。積層型の電極体50は、実質的に上述の積層体40の平坦部からなる。積層型電極体は、例えば100~200μmの厚さを有していてもよいし、1~100mmの厚さを有していてもよい。
【0018】
電極体50において、正極板10は任意の積層数を有し得る。正極板10の積層数は、電極体50を積層方向に横断する直線が、正極板10と交差する回数を示す。積層方向は、電極体50において、正極板10、負極板20及びセパレータ30が積層される方向を示す。巻回型の電極体50における積層方向は、平坦部52における正極板10、負極板20及びセパレータ30の厚さ方向(図3のD軸方向)と平行である。積層型の電極体50における積層方向は、正極板10、負極板20及びセパレータ30の厚さ方向(図4のD軸方向)と平行である。
【0019】
正極板10は、例えば2~100の積層数を有していてもよい。負極板20は、例えば2~100の積層数を有していてもよい。セパレータ30は、例えば4~200の積層数を有していてもよい。負極板20及びセパレータ30の積層数も、正極板10の積層数と同様に計数され得る。なお、電極体50が積層型である場合、正極板10、負極板20及びセパレータ30の積層数はそれぞれ、正極板10、負極板20及びセパレータ30の枚数を示す。
【0020】
図1において、電極体50が捲回型電極体である場合、電極体50の巻回軸方向(W軸方向)に平行な方向における負極活物質層の長さは180mm以上であり、例えば200mm以上又は220mm以上であってよく、300mm以下であってよい。図1において、電極体50が積層型電極体である場合、負極活物質層は、積層方向(D軸方向)からみたときの少なくとも一方の対向する端部同士の最短距離は180mm以上であり、例えば200mm以上又は220mm以上であってよく、300mm以下であってよい。積層型電極体において積層方向からみたときの形状が長方形である場合、上記最短距離は、一方の対向する端部同士のうち短い方の距離である。図4において、上記最短距離はW軸方向の距離である。
【0021】
正極板10は、正極芯材11と正極活物質層12とを含む(図2参照)。正極芯材11は導電性シートである。正極芯材11は、例えば純Al箔、Al合金箔等を含んでいてもよい。正極芯材11は、例えば10~30μmの厚さを有していてもよい。電極体50が捲回型電極体である場合、電極体50の幅方向(図2のW軸方向)において、一方の端部に正極芯材11が露出していてもよい。電極体50が積層型電極体である場合、電極体50の幅方向に垂直な方向(図4のH軸方向)において、一方の端部に正極芯材11が露出していてもよい。正極芯材11が露出した部分には、正極集電部材71が接合され得る(図1参照)。
【0022】
正極活物質層12は、正極芯材11の片面のみに配置されていてもよい。正極活物質層12は、正極芯材11の表裏両面に配置されていてもよい。電極体50が巻回型である場合、正極活物質層12の厚さは、積層体40に含まれる正極活物質層12の厚さの合計を示す。電極体50が積層型である場合、正極活物質層12の厚さは、電極体50に含まれる正極活物質層12の厚さの合計を示す。例えば、正極板10の両面に正極活物質層12が形成されている場合、正極活物質層12の厚さは、両面(2つ)の正極活物質層12の厚さの合計を示す。正極活物質層12は、例えば100μm以上260μm以下の厚さを有していてもよいし、20~60μmの厚さを有していてもよいし、30~50μmの厚さを有していてもよい。なお、片面(1つ)の正極活物質層12の厚さは、例えば10~30μmであってもよいし、15~25μmであってもよい。
【0023】
正極活物質層12は正極活物質粒子を含む。正極活物質粒子は任意の成分を含み得る。正極活物質粒子は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、及びLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば「Li(NiCoMn)O2」等の組成式においては、括弧内の組成比の合計が1である。すなわち「CNi+CCo+CMn=1」の関係が満たされている。例えば「CNi」はNiの組成比を示す。組成比の合計が1である限り、各成分の組成比は任意である。
【0024】
正極活物質層12は正極活物質粒子に加えて、例えば、導電材、バインダ、添加剤等をさらに含んでいてもよい。例えば正極活物質層12は、実質的に、質量分率で0.1~10%の導電材と、0.1~10%のバインダと、残部の正極活物質粒子とからなっていてもよい。導電材は、例えばアセチレンブラック等を含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を含んでいてもよい。添加剤の詳細は後述される。
【0025】
セパレータ30は多孔質樹脂層を含む。セパレータ30は、実質的に多孔質樹脂層からなっていてもよい。多孔質樹脂層は、負極活物質層22と直接接触している。多孔質樹脂層と負極活物質層22との間に介在物がないことにより、例えば出力の向上等が期待される。なおセパレータ30は、正極活物質層12と接触する面に、保護層を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0026】
多孔質樹脂層は、例えば10~50μmの厚さを有していてもよいし、10~30μmの厚さを有していてもよいし、14~20μmの厚さを有していてもよい。
【0027】
多孔質樹脂層は電気絶縁性を有する。多孔質樹脂層はポリオレフィン系材料を含む。多孔質樹脂層は、例えば、実質的にポリオレフィン系材料からなっていてもよい。ポリオレフィン系材料は、例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0028】
負極板20は負極芯材21と、負極活物質層22とを含む(図2参照)。負極活物質層22は負極芯材21の表面に配置されていてもよい。負極芯材21の片面のみに負極活物質層22が配置されていてもよい。負極芯材21の表裏両面に負極活物質層22が配置されていてもよい。負極芯材21は導電性のシートである。負極芯材21は、例えば純Cu箔、Cu合金箔等を含んでいてもよい。負極芯材21は、例えば5~30μmの厚さを有していてもよい。電極体50が捲回型電極体である場合、負極板20の幅方向(図2のW軸方向)において、一方の端部に負極芯材21が露出していてもよい。電極体50が積層型電極体である場合、電極体50の幅方向に垂直な方向(図4のH軸方向)において、一方の端部に負極芯材21が露出していてもよい。負極芯材21が露出した部分には、負極集電部材72が接合され得る(図1参照)。
【0029】
負極活物質層22のBET比表面積(以下、極板BETともいう)は、1.8m/g以上3.0m/g以下である。極板BETを小さくするとリチウムの出入りする表面が減ることにより反応抵抗が上昇するが、特定の添加剤を電解液中に含む場合は、極板BETが上昇すると逆に電極体の中央部の反応抵抗が周辺部と比較して上昇する傾向にあり、特定の添加剤を含む場合、極板の表面と添加剤の相互作用により、添加剤の中央部への輸送が溶媒や塩と比較して遅くなるためと考えられる。極板BETが上記範囲内である場合、電極体の中央部の反応抵抗の上昇が抑制され易くなる傾向にある。極板BETは好ましくは2.0m/g以上3.0m/g以下である。極板BETは、後述の実施例の欄において説明する方法に従って測定される。電極体の中央部は、例えば電極体の積層方向(図1中、D軸方向)からみたときの平面の幾何中心を中心とした直径10mmの円形領域であってよい。
【0030】
電極体50が巻回型である場合、負極活物質層22の厚さは、積層体40に含まれる負極活物質層22の厚さの合計を示す。電極体50が積層型である場合、負極活物質層22の厚さは、電極体50に含まれる負極活物質層22の厚さの合計を示す。例えば、負極板20の両面に負極活物質層22が形成されている場合、負極活物質層22の厚さは、両面(2つ)の負極活物質層22の厚さの合計を示す。負極活物質層22は、例えば100μm以上260μm以下の厚さを有していてもよいし、40~80μmの厚さを有していてもよいし、50~70μmの厚さを有していてもよい。なお、片面(1つ)の負極活物質層22の厚さは、例えば20~40μmであってもよいし、25~35μmであってもよい。
【0031】
負極活物質層22は負極活物質粒子を含む。負極活物質層22は、実質的に負極活物質粒子からなっていてもよい。負極活物質粒子は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、珪素、酸化珪素、錫、酸化錫、及びLi4Ti512からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。負極活物質粒子は、例えば複合粒子であってもよい。負極活物質粒子は、例えば基材粒子と皮膜とを含んでいてもよい。皮膜は基材粒子の表面を被覆し得る。基材粒子は、例えば天然黒鉛等を含んでいてもよい。皮膜は、例えば非晶質炭素等を含んでいてもよい。
【0032】
負極活物質層は負極活物質粒子からなる粒子群を含むことができる。粒子群の平均球形化度は0.87以上である。粒子群の平均球形化度が上記範囲である場合、圧縮による粒子の潰れが起こりにくく、電解液が負極板中を浸透する流路が太くなり易い傾向にある。これにより特定の添加剤が極板中央に向かって浸透するにあたり負極活物質層の表面の影響を受けにくくなり、電極体の中央部の反応抵抗が下がり易くなる傾向にある。粒子群の球形化度は好ましくは0.90以上であり、通常1.00以下である。粒子群の平均球形化度は後述の実施例の欄において説明する方法に従って測定される。
【0033】
負極活物質粒子からなる粒子群の平均粒子径D50(以下、D50ともいう)は例えば10μm以上30μm以下であってよい。平均粒子径D50は、体積基準の粒度分布において小粒径側からの累積粒子体積が全粒子体積の50%になる粒子径を表す。平均粒子径D50は、レーザ回折・散乱法により測定され得る。
【0034】
負極活物質層22は、負極活物質粒子に加えて、導電材、バインダ等をさらに含んでいてもよい。例えば負極活物質層22は、実質的に、質量分率で0~10%の導電材と、0.1~10%のバインダと、残部の負極活物質粒子とからなっていてもよい。導電材は任意の成分を含み得る。導電材は、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ等を含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0035】
電解液は液体電解質である。電解液は溶媒とリチウム塩(以下、Li塩ともいう)と添加剤とを含む。溶媒は非プロトン性である。溶媒は任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、メチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピオネート(MP)、及びγ-ブチロラクトン(GBL)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0036】
Li塩は溶媒に溶解している。Li塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、及びLiN(FSO22からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。Li塩は、例えば0.2~2.0M(mоl/L)のモル濃度を有していてもよい。
【0037】
電解液中の添加剤の含有量は、例えば0.001質量%以上10質量%以下であってよい。添加剤は、オキサレート基を有するホウ素化合物及び-SOF基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。オキサレート基を有するホウ素化合物としては、例えばリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)等が挙げられる。フルオロスルホニル基(-SOF基)を有する化合物としては、例えばフルオロスルホン酸リチウム(FSOLi)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、下記式:
【化1】

[式中、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子1~10のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基であるか、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子6~20の芳香族炭化水素基であり、nは0~1の整数を示す]
で示される化合物等が挙げられる。
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【実施例0039】
<実施例1>
[負極板の作製]
負極活物質として、平均球形化度が0.9であり、平均粒子径D50が17μmである黒鉛を用いた。所定厚みに圧縮したときに負極板の極板BETが2.5m/gとなるように活物質を選定した。合剤組成が黒鉛:SBR:CMC=100:1:1wt%である合剤と水とを混合し、負極合剤スラリーを作製し、負極集電体の銅箔上に、負極合剤スラリーを塗布し、乾燥後、所定の厚みに圧縮し、所定の幅に切り出すことで、銅箔上に負極活物質層が形成された部分と、活物質層が形成されていない部分とで構成された負極板を作製した。電極体の巻回軸方向に平行な方向における負極活物質層の長さ(以下、負極活物質層の幅ともいう)を180mmとした。
[正極板の作製]
合剤組成がLiNiCoMnO:AB:PVdF=100:1:1wt%である合剤とNMPとを混合し、正極合剤スラリーを作製し、正極集電体のアルミ箔上に塗布、乾燥後、所定の厚みに圧縮し、所定の幅に切り出すことで、幅方向において、アルミ箔上に正極活物質層が形成された部分と、活物質層が形成されていない部分とで構成された正極板を作製した。電極体の巻回軸方向に平行な方向における正極活物質層の長さ(以下、正極活物質層の幅ともいう)を176mmとした。
[電極体の作製]
図5に示すように、正極板10と負極板20とを、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三層からなるセパレータ30を介し、両端部のそれぞれに正極板のアルミ箔及び負極板の銅箔が露出するように積層して積層体を作製し、積層体の一端を巻回軸Rとして積層体を巻回することにより巻回型の電極体50を作製した。
[非水電解質二次電池の作製]
正板集電部材のアルミ箔と電極体の外部集電用アルミ板とを溶接し、負極板集電部材の銅箔と電極体の外部集電用銅板とを溶接し、アルミニウムラミネートフィルムの外挿体内に挿入し、下記電解液の注液方法に従って電解液を注液し、ラミネートフィルムを封止することで非水電解質二次電池を作製した。結果を表1に示す。
[電解液の注液方法]
第1電解液[1.2M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:LiBOB_0.5wt%]を調製し、注液後3時間放置した。その後25℃環境下にて0.05Cの電流値で2.5Vまで充電を実施し、1時間放置した。次に活性化処理を行った。
【0040】
<実施例2>
実施例1において第1電解液を用いたことに代えて第2電解液[1.2M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤:LiSOF_1.0wt%]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。結果を表1に示す。
【0041】
<実施例3>
負極活物質層の幅を300mm、正極活物質層の幅を296mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。結果を表1に示す。
【0042】
<実施例4>
負極活物質として、平均粒子径D50が15μm及び平均球形化度が0.93である黒鉛を用いたこと及び所定厚みに圧縮したときに負極板の極板BETが2.0m/gとなるように活物質を選定したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。結果を表1に示す。
【0043】
<実施例5>
負極活物質として、平均粒子径D50が15μm及び平均球形化度が0.92である黒鉛を用いたこと、及び所定厚みに圧縮したときに負極板の極板BETが3.0m/gとなるように活物質を選定したこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。結果を表1に示す。
【0044】
<比較例1>
負極活物質層の幅を78mm、正極活物質層の幅を74mmとしたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。結果を表1に示す。
【0045】
<比較例2>
実施例1において、第1電解液を用いたことに代えて第3電解液[1.2M_LiPF EC/EMC(体積比1:3)、添加剤なし]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。結果を表1に示す。
【0046】
<比較例3>
負極活物質として、平均粒子径D50が14μm及び平均球形化度が0.86である黒鉛を用いたこと、及び所定厚みに圧縮すると負極板の極板BETが3.0m/gとなるように活物質を選定したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。結果を表1に示す。
【0047】
<比較例4>
負極活物質として、平均粒子径D50が25μm及び平均球形化度が0.92である黒鉛を用いたこと、及び所定厚みに圧縮したときに負極板の極板BETが1.7m/gとなるように活物質を選定したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。結果を表1に示す。
【0048】
<比較例5>
負極活物質として、平均粒子径D50が14μm及び平均球形化度が0.90である黒鉛を用いたこと、及び所定厚みに圧縮したときに負極板の極板BETが3.5m/gとなるような活物質を選定したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。結果を表1に示す。
【0049】
<極板BETの測定方法>
所定重量の負極板を打ち抜き、細かく切り刻んでBET測定用のセルに入れた。BET測定用のセルを加温して吸着ガスを追い出した後、液体窒素に浸して冷却し、セル内にNガスを通じて圧力損失からP/Pを測定し、下記のBET式:
P/{V(P-P)}=1/VC+(C-1)/VC×P/P
[式中、V、P、P、V及びCはそれぞれ、気体分子(吸着質)が固体表面に吸着するときのガス吸着量、圧力、飽和蒸気圧、単分子層吸着量(単分子層吸着のガス量)及び吸着分子の凝縮係数を表す]
に従い比表面積を求めた。
【0050】
<平均球形化度の測定方法>
複数粒子の画像解析より、下式にて各粒子の球形化度を求め、それを平均化することで平均球形化度を得た。
球形化度=(粒子面積相当の円の周長)/粒子の全周長
【0051】
<体積容量評価方法>
1/3Cで4.2Vまで定電流で充電し、その後0.05Cまで定電圧充電を行い、次に1/3Cで2.5Vまで定電流で放電した。作製した電池の体積で放電容量を割ることで体積当たりの容量を算出した。表1において実施例1の数値を100としたときの相対値を示す。
【0052】
<反応抵抗評価方法>
図6に示すように、初期活性化後の各実施例の非水電解質二次電池を解体し、電極体の巻き始めの正極1ターン目の内周側に対向している負極板を切り出し、ジメチルカーボネート(DMC)で洗浄した後、減圧乾燥を実施し、切り出した負極板の中央を、φ10mm(図中、CRの長さ)で打ち抜き、反応抵抗評価用試料23をサンプリングした。負極の片面を剥離し、PP/PE/PPセパレータφ13mmを介してLi金属φ11mmを対向させ、コインセルを作成した。コインセルの負極をSOC50%に充電したのち、温度25℃及び振幅10mVで1M~0.1Hzの範囲で交流インピーダンスを測定した。データのうち、1khz~1Hzの範囲を反応抵抗とした。表1において実施例1の数値を100としたときの相対値を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示されるとおり、実施例1~5では、体積容量を維持するとともに電極体の中応部の反応抵抗の上昇を抑制することができた。オキサレート基を含むホウ素化合物(LiBOB)やSOFを含む化合物(FSOLi)を用いることにより反応抵抗の低減効果が確認された。また、負極活物質層の幅が広くなると、体積容量は増加傾向にあるものの、電極体の中央部の反応抵抗が上昇する傾向にあることが確認された。これは負極活物質層表面と添加剤との間に相互作用が起こることで、溶媒や塩に比べて添加剤の浸透が遅いためであると推測される。その結果、負極活物質層において添加剤により形成される保護被膜が偏在化し、電極体の中央部における保護被膜が少なくなり、反応が不均一になって反応抵抗が上昇したことが推定される。
【符号の説明】
【0055】
10 正極板、11 正極芯材、12 正極活物質層、20 負極板、21 負極芯材、22 負極活物質層、23 反応抵抗評価用試料、30 セパレータ、40 積層体、50 電極体、51 湾曲部、52 平坦部、71 正極集電部材、72 負極集電部材、81 正極端子、82 負極端子、90 外装体、91 封口板、92 外装缶、100 電池、W 幅方向、R 巻回軸、S 巻き始め、E 巻き終わり、CR 直径。
図1
図2
図3
図4
図5
図6