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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107616
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
B41J2/175 141
B41J2/175 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011635
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古畑 誠
(72)【発明者】
【氏名】細川 泰弘
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA29
2C056EB20
2C056EB51
2C056KC09
(57)【要約】
【課題】物体の貯蔵量の誤検出を抑制する。
【解決手段】液体吐出装置は、複数の壁を含み、前記複数の壁に囲まれた空間に液体を貯蔵する貯蔵部と、前記貯蔵部から供給された液体を吐出する吐出部と、前記複数の壁のうちの第1の壁の第1面に設けられ、前記貯蔵部内の液体の残量を検出するための第1電極及び第2電極と、前記第1の壁の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた突起部と、を備え、前記突起部は、前記貯蔵部において液体が減少する方向である第1方向において、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の壁を含み、前記複数の壁に囲まれた空間に液体を貯蔵する貯蔵部と、
前記貯蔵部から供給された液体を吐出する吐出部と、
前記複数の壁のうちの第1の壁の第1面に設けられ、前記貯蔵部内の液体の残量を検出するための第1電極及び第2電極と、
前記第1の壁の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた突起部と、
を備え、
前記突起部は、
前記貯蔵部において液体が減少する方向である第1方向において、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記突起部には、撥水処理が施されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第2面のうち前記突起部の周りの所定範囲内には、撥水処理が施されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第2面のうち前記突起部の周りの所定範囲内には、親水処理が施されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極の一方は、入力信号が供給される入力電極であり、前記第1電極及び前記第2電極の他方は、前記貯蔵部内の液体の残量と前記入力信号とに基づく検出信号を出力する検出電極である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記複数の壁のうち、前記第1の壁と向かい合う第2の壁に設けられ、入力信号が供給される入力電極をさらに備え、
前記第1電極及び前記第2電極は、前記貯蔵部内の液体の残量と前記入力信号とに基づく検出信号を出力する検出電極である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
複数の壁を含み、前記複数の壁に囲まれた空間に物体を貯蔵する貯蔵部と、
前記複数の壁のうちの第1の壁の第1面に設けられ、前記貯蔵部内の物体の残量を検出するための第1電極及び第2電極と、
前記第1の壁の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた突起部と、
を備え、
前記突起部は、
前記貯蔵部において物体が減少する方向である第1方向において、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する、
ことを特徴とする貯蔵装置。
【請求項8】
前記貯蔵部に貯蔵される物体は、液体であり、
前記突起部には、撥水処理が施されている、
ことを特徴とする請求項7に記載の貯蔵装置。
【請求項9】
前記貯蔵部に貯蔵される物体は、液体であり、
前記第2面のうち前記突起部の周りの所定範囲内には、撥水処理が施されている、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の貯蔵装置。
【請求項10】
前記貯蔵部に貯蔵される物体は、液体であり、
前記第2面のうち前記突起部の周りの所定範囲内には、親水処理が施されている、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の貯蔵装置。
【請求項11】
前記第1電極及び前記第2電極の一方は、入力信号が供給される入力電極であり、前記第1電極及び前記第2電極の他方は、前記貯蔵部内の物体の残量と前記入力信号とに基づく検出信号を出力する検出電極である、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の貯蔵装置。
【請求項12】
前記複数の壁のうち、前記第1の壁と向かい合う第2の壁に設けられ、入力信号が供給される入力電極をさらに備え、
前記第1電極及び前記第2電極は、前記貯蔵部内の物体の残量と前記入力信号とに基づく検出信号を出力する検出電極である、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に貯蔵された物体の残量を検出する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、物体を貯蔵する容器と、容器の側壁の外側の面に設けられた複数の検出電極と、容器に貯蔵された物体の残量を複数の検出電極から出力される信号に基づいて検出する検出部と、を備える検出装置に関する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-056079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、複数の検出電極が設けられた壁の内面に液滴等の非検出物が付着した場合、壁の内面に付着した非検出物が複数の検出電極による検出に影響を与えること等により誤検出等の不具合が生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の問題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、複数の壁を含み、前記複数の壁に囲まれた空間に液体を貯蔵する貯蔵部と、前記貯蔵部から供給された液体を吐出する吐出部と、前記複数の壁のうちの第1の壁の第1面に設けられ、前記貯蔵部内の液体の残量を検出するための第1電極及び第2電極と、前記第1の壁の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた突起部と、を備え、前記突起部は、前記貯蔵部において液体が減少する方向である第1方向において、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する、ことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る貯蔵装置は、複数の壁を含み、前記複数の壁に囲まれた空間に物体を貯蔵する貯蔵部と、前記複数の壁のうちの第1の壁の第1面に設けられ、前記貯蔵部内の物体の残量を検出するための第1電極及び第2電極と、前記第1の壁の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた突起部と、を備え、前記突起部は、前記貯蔵部において物体が減少する方向である第1方向において、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの一例を説明するための説明図である。
図2】インク供給装置の構成の一例を示す斜視図である。
図3】インク供給装置の構成の一例を示す平面図である。
図4】インク管理装置の構成の一例を示す平面図である。
図5】インク管理装置の構成の一例を示す平面図である。
図6】インク管理装置の構成の一例を示す断面図である。
図7】フレキシブルプリント基板の構成の一例を示す平面図である。
図8】貯蔵装置の構成の一例を示すブロック図である。
図9】液面高さと検出信号の振幅の関係の一例を示す説明図である。
図10】インク残量判定処理の一例を示すフローチャートである。
図11】突起部による効果を説明するための説明図である。
図12】第3変形例に係るインク管理装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。但し、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
<<A.実施形態>>
以下、実施形態に係るインクジェットプリンター100について説明する。
【0010】
<<A.1.インクジェットプリンターの概要>>
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンター100の一例を説明するための説明図である。
【0011】
インクジェットプリンター100は、インクIKを媒体PPに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体PPは、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルム又は布帛等の任意の印刷対象が媒体PPとして利用され得る。なお、本実施形態において、インクジェットプリンター100は「液体吐出装置」の一例であり、インクIKは「液体」及び「物体」の一例である。
【0012】
インクジェットプリンター100は、例えば、インク供給装置1及びインク量検出装置2を含む貯蔵装置3と、制御装置7と、複数の液体吐出ヘッドHUと、移動機構91と、搬送機構92とを有する。
【0013】
制御装置7は、例えば、CPU又はFPGA等の処理回路と、半導体メモリ等の記憶回路とを含み、インクジェットプリンター100の各要素を制御する。ここで、CPUとは、Central Processing Unitの略称であり、FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0014】
移動機構91は、制御装置7による制御に基づいて、媒体PPを、副走査方向MP1に搬送する。搬送機構92は、制御装置7による制御に基づいて、複数の液体吐出ヘッドHUを、副走査方向MP1に交差する主走査方向MH1に沿って往復動させる。搬送機構92は、複数の液体吐出ヘッドHUを収容する収納ケース921と、収納ケース921が固定された無端ベルト922とを有する。なお、貯蔵装置3は、液体吐出ヘッドHUとともに収納ケース921に収納されてもよい。
【0015】
制御装置7は、液体吐出ヘッドHUを駆動するための駆動信号COMと、液体吐出ヘッドHUを制御するための制御信号SIとを、液体吐出ヘッドHUに供給する。そして、液体吐出ヘッドHUは、制御信号SI及び駆動信号COMに基づいて、液体吐出ヘッドHUに設けられた複数のノズルの一部又は全部から、インクIKを吐出させる。すなわち、液体吐出ヘッドHUは、移動機構91による媒体PPの搬送と、搬送機構92による液体吐出ヘッドHUの往復動とに連動して、複数のノズルの一部又は全部からインクIKを吐出させて、当該吐出されたインクを媒体PPの表面に着弾させる。これにより、媒体PPの表面に所望の画像が形成される。なお、本実施形態において、液体吐出ヘッドHUは「吐出部」の一例である。
【0016】
貯蔵装置3に含まれるインク供給装置1は、インクIKを貯蔵する。また、インク供給装置1は、インク供給装置1が貯蔵しているインクIKを、制御装置7による制御に基づいて、液体吐出ヘッドHUに供給する。本実施形態では、インク供給装置1が、M種類のインクIKを貯蔵する場合を想定する。ここで、値Mは、1≦Mを満たす自然数である。より具体的には、本実施形態では、一例として、インク供給装置1が、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックに対応する4種類のインクIKを貯蔵する場合を想定する。すなわち、本実施形態では、一例として、「M=4」の場合を想定する。また、本実施形態では、一例として、インクジェットプリンター100が、4種類のインクIKに対応する、4個の液体吐出ヘッドHUを有する場合を想定する。
【0017】
貯蔵装置3に含まれるインク量検出装置2は、インク供給装置1から検出される検出信号Voutに基づいて、インク供給装置1に貯蔵されているインクIKの残量を検出する。そして、インク量検出装置2は、インクIKの残量の検出結果を示すインク量情報DRを制御装置7に出力する。なお、検出信号Vout及びインク量情報DRについては、図8において後述する。
【0018】
次に、図2及び図3を参照しつつ、インク供給装置1の概要を説明する。
【0019】
<<A.2.インク供給装置の概要>>
図2は、インク供給装置1の構成の一例を示す斜視図である。
【0020】
インク供給装置1は、インク供給装置1が貯蔵しているM種類のインクIKと1対1に対応するM個のインクタンクTK[1]~TK[M]と、M個のインクタンクTK[1]~TK[M]と1対1に対応するM個のフレキシブルプリント基板FP[1]~FP[M]とを有する。さらに、インク供給装置1は、M個のインクタンクTK[1]~TK[M]及びM個のフレキシブルプリント基板FP[1]~FP[M]を収納する収納ケース21を有する。すなわち、本実施形態では、インク供給装置1は、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックの4種類のインクIKと1対1に対応する4個のインクタンクTK[1]~TK[4]と、4個のインクタンクTK[1]~TK[4]と1対1に対応する4個のフレキシブルプリント基板FP[1]~FP[4]とを有する。
【0021】
インクタンクTK[m]には、インクタンクTK[m]の内部空間にインクIKを供給するための供給口19が設けられる。また、インクタンクTK[m]には、フレキシブルプリント基板FP[m]が固定される。ここで、変数mは、1≦m≦Mを満たす自然数である。以下では、インクタンクTK[m]及びフレキシブルプリント基板FP[m]を含む構成要素を、インク管理装置FF[m]と称する場合がある。すなわち、インク供給装置1は、インク供給装置1が貯蔵しているM種類のインクIKと1対1に対応するM個のインク管理装置FF[m]を有する。また、以下では、インク管理装置FF[m]に設けられたインクタンクTK[m]から供給されるインクIKを吐出する液体吐出ヘッドHUを、液体吐出ヘッドHU[m]と称する場合がある。
【0022】
本実施形態では、インク供給装置1において、M個のインクタンクTK[1]~TK[M]が、X軸に沿って配置される場合を想定する。以下では、図2に示すように、X軸に沿う一方向はX1方向とも称され、X1方向の反対方向はX2方向とも称される。同様に、X軸に直交するY軸に沿う一方向はY1方向とも称され、Y1方向の反対方向はY2方向とも称される。また、X軸及びY軸に直交するZ軸に沿う一方向はZ1方向とも称され、Z1方向の反対方向はZ2方向とも称される。さらに、以下では、X1方向及びX2方向をX軸方向と総称し、Y1方向及びY2方向をY軸方向と総称し、Z1方向及びZ2方向をZ軸方向と総称する場合がある。なお、本実施形態では、X軸、Y軸、及び、Z軸が互いに直交する場合を想定しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、X軸、Y軸、及び、Z軸は、互いに交差していればよい。
【0023】
また、本実施形態では、インクタンクTK[m]から液体吐出ヘッドHU[m]にインクIKが供給されて、インクタンクTK[m]の内部に貯蔵されたインクIKが減少する場合に、当該インクIKが減少する方向がZ1方向である場合を想定する。なお、本実施形態において、X1方向は「第1方向」の一例である。
【0024】
図3は、インク供給装置1の構成の一例を示す平面図である。なお、図3では、Z2方向からZ1方向に向かってインク供給装置1を見た場合のインク供給装置1の平面図が示されている。
【0025】
図3に示すように、本実施形態では、インク供給装置1において、インクタンクTK[1]から見てX1方向にインクタンクTK[2]が設けられ、インクタンクTK[2]から見てX1方向にインクタンクTK[3]が設けられ、インクタンクTK[3]から見てX1方向にインクタンクTK[4]が設けられる場合を想定する。
【0026】
例えば、インクタンクTK[m]は、複数の壁10を有し、複数の壁10に囲まれた空間にインクIKを貯蔵する。なお、図3及び後述する図6では、複数の壁10を互いに区別するために、壁10の符号の末尾には、アルファベット“A”、“B”、“C”、“D”、“E”又は“F”が付されている。すなわち、本実施形態では、複数の壁10が壁10A、10B、10C、10D、10E及び10Fを含む場合を想定する。以下では、壁10A及び10BがX1方向を法線方向とする面に沿って設けられた壁10であり、壁10C及び10DがY1方向を法線方向とする面に沿って設けられた壁10である場合を想定する。また、以下では、後述する図6に示す壁10E及び10FがZ1方向を法線方向とする面に沿って設けられた壁10である場合を想定する。
【0027】
また、本実施形態では、上述のとおり、インクタンクTK[m]に対して、フレキシブルプリント基板FP[m]が取り付けられている場合を想定する。具体的には、本実施形態では、フレキシブルプリント基板FP[m]が、インクタンクTK[m]の有する複数の壁10のうち、壁10A、壁10C、及び、壁10Bに固定されている場合を想定する。例えば、フレキシブルプリント基板FP[m]は、折曲部分EPaにおいて、壁10Aの外面OFa及び壁10Cの外面OFcに沿って折り曲げられるとともに、折曲部分EPbにおいて、壁10Bの外面OFb及び壁10Cの外面OFcに沿って折り曲げられる。これにより、フレキシブルプリント基板FP[m]は、壁10Aの外面OFaと壁10Bの外面OFbと壁10Cの外面OFcとに接するように、設けらる。なお、壁10Aの外面OFaは、壁10AのうちインクタンクTK[m]の外側の壁面であり、壁10Bの外面OFbは、壁10BのうちインクタンクTK[m]の外側の壁面である。同様に、壁10Cの外面OFbは、壁10CのうちインクタンクTK[m]の外側の壁面である。
【0028】
以下では、フレキシブルプリント基板FP[m]のうち壁10Aに設けられた部分は配線部分FA[m]とも称され、フレキシブルプリント基板FP[m]のうち壁10Bに設けられた部分は配線部分FB[m]とも称され、フレキシブルプリント基板FP[m]のうち壁10Cに設けられた部分は配線部分FC[m]とも称される。
【0029】
詳細は、図4以降において後述されるが、例えば、配線部分FA[m]は、入力電極EA等を含み、配線部分FB[m]は、Z1方向に沿って配置された複数の検出電極EB等を含む。図3では、複数の検出電極EBのうち、最もZ2方向に位置する検出電極EBが図示されている。なお、フレキシブルプリント基板FP[m]に含まれる要素の詳細は、図6において後述される。
【0030】
また、本実施形態では、複数の突起部PTが、壁10Bの外面OFbとは反対側の内面IFbに設けられている。例えば、突起部PTは、Z1方向において、複数の検出電極EB間に位置する。また、突起部PTは、例えば、Y1方向に沿って延在し、壁10Bの内面IFbからX2方向に突出している。なお、突起部PTのY方向に沿う幅WPは、検出電極EBのY方向に沿う幅WE以上であることが好ましく、突起部PTのX方向に沿う長さD1は、突起部PTと壁10BとのX方向の間隔D2よりも小さいことが好ましい。
【0031】
なお、インクタンクTK[m]は「貯蔵部」の一例である。また、壁10Bは、「第1の壁」の一例であり、壁10Bの外面OFbは「第1面」の一例であり、壁10Bの内面IFbは「第2面」の一例である。また、壁10Aは、「第2の壁」の一例である。
【0032】
次に、図4乃至図7を参照しつつ、フレキシブルプリント基板FP[m]の概要を中心にインク供給装置1の概要を説明する。
【0033】
<<A.3.フレキシブルプリント基板の概要>>
図4は、インク供給装置1の構成の一例を示す平面図である。なお、図4では、X2方向からX1方向に向かってインク管理装置FF[m]を見た場合に観察される配線部分FA[m]の平面図が示されている。また、図4では、配線部分FA[m]のうち、主要な部分のみが透過的に示されている。
【0034】
配線部分FA[m]は、電極形成領域RAに設けられた導電性の入力電極EAを含む。さらに、配線部分FA[m]は、電極形成領域RAのうち、入力電極EAから見てZ2方向の位置に設けられた導電性のシールド電極SA1と、電極形成領域RAのうち、入力電極EAから見てZ1方向の位置に設けられた導電性のシールド電極SA2とを含む。
【0035】
また、配線部分FA[m]は、入力電極EAに接続された導電性の接続配線HEAと、シールド電極SA1に接続された導電性の接続配線HSA1と、シールド電極SA2に接続された導電性の接続配線HSA2とを含む。接続配線HEAは、電極形成領域RA及び折曲部分EPaの間に設けられる。また、接続配線HSA1は、電極形成領域RA及び折曲部分EPaの間であって、接続配線HEAから見てZ2方向の位置に設けられ、接続配線HSA2は、電極形成領域RA及び折曲部分EPaの間であって、接続配線HEAから見てZ1方向の位置に設けられる。
【0036】
図5は、インク供給装置1の構成の一例を示す平面図である。なお、図5では、X1方向からX2方向に向かってインク管理装置FF[m]を見た場合に観察される配線部分FB[m]の平面図が示されている。また、図5では、配線部分FB[m]のうち、主要な部分のみが透過的に示されている。また、図5では、複数の検出電極EBを互いに区別するために、検出電極EBの符号の末尾には、数字の“1”、“2”又は“3”が付されている。
【0037】
配線部分FB[m]は、電極形成領域RBに設けられた導電性の複数の検出電極EB1、EB2及びEB3と、電極形成領域RBに設けられた導電性の複数のシールド電極SB1、SB2、SB3及びSB4とを含む。検出電極EB2は、電極形成領域RBのうち、検出電極EB1から見てZ1方向の位置に設けられ、検出電極EB3は、電極形成領域RBのうち、検出電極EB2から見てZ1方向の位置に設けられる。シールド電極SB1は、検出電極EB1から見てZ2方向の位置に設けられ、シールド電極SB2は、検出電極EB1及びEB2間に設けられる。また、シールド電極SB3は、検出電極EB2及びEB3間に設けられ、シールド電極SB4は、検出電極EB3から見てZ1方向の位置に設けられる。
【0038】
なお、検出電極EB1及びEB2の一方は、「第1電極」の一例であり、検出電極EB1及びEB2の他方は、「第2電極」の一例である。また、検出電極EB2及びEB3の一方は、「第1電極」の一例であり、検出電極EB2及びEB3の他方は、「第2電極」の一例である。
【0039】
また、配線部分FB[m]は、検出電極EB1に接続された導電性の接続配線HEB1と、検出電極EB2に接続された導電性の接続配線HEB2と、検出電極EB3に接続された導電性の接続配線HEB3とを含む。接続配線HEB1は、電極形成領域RB及び折曲部分EPbの間に設けられる。接続配線HEB2は、電極形成領域RB及び折曲部分EPbの間であって、接続配線HEB1から見てZ1方向の位置に設けられ、接続配線HEB3は、電極形成領域RB及び折曲部分EPbの間であって、接続配線HEB2から見てZ1方向の位置に設けられる。
【0040】
さらに、配線部分FB[m]は、シールド電極SB1に接続された導電性の接続配線HSB1と、シールド電極SB2に接続された導電性の接続配線HSB2と、シールド電極SB3に接続された導電性の接続配線HSB3と、シールド電極SB4に接続された導電性の接続配線HSB4とを含む。接続配線HSB1は、電極形成領域RB及び折曲部分EPbの間であって、接続配線HEB1から見てZ2方向の位置に設けられ、接続配線HSB2は、電極形成領域RB及び折曲部分EPbの間であって、接続配線HEB1及びHEB2間に設けられる。接続配線HSB3は、電極形成領域RB及び折曲部分EPbの間であって、接続配線HEB2及びHEB3間に設けられ、接続配線HSB4は、電極形成領域RB及び折曲部分EPbの間であって、接続配線HEB3から見てZ1方向の位置に設けられる。
【0041】
なお、本実施形態において、X1方向及びX2方向の一方から他方に向かってインク管理装置FF[m]を見た場合、配線部分FB[m]のうち電極形成領域RAと重なる領域は、電極形成領域RBと略同じ領域である。すなわち、本実施形態において、X1方向及びX2方向の一方から他方に向かってインク管理装置FF[m]を見た場合、電極形成領域RA及び電極形成領域RBは略一致する。ここで、「略同じ」とは、完全に同一である場合の他に、誤差を考慮すれば同一であると看做せる場合を含む概念である。本実施形態では、「略同じ」とは、10%程度の誤差を考慮すれば同一であると看做せる場合を含む概念であることとする。「略一致」も「略同じ」と同様である。
【0042】
また、本実施形態では、Z1方向における検出電極EB1の幅、Z1方向における検出電極EB2の幅、及び、Z1方向における検出電極EB3の幅が略同じである場合を想定する。但し、Z1方向における検出電極EB1の幅、Z1方向における検出電極EB2の幅、及び、Z1方向における検出電極EB3の幅は、略同じでなくてもよい。例えば、Z1方向における検出電極EB2の幅は、Z1方向における検出電極EB1の幅よりも大きく、かつ、Z1方向における検出電極EB3の幅よりも大きくてもよい。
【0043】
図6は、インク管理装置FF[m]の構成の一例を示す断面図である。
【0044】
フレキシブルプリント基板FP[m]は、両面接着テープDTにより、壁10A、10B及び10Cに固定される。フレキシブルプリント基板FP[m]は、両面接着テープDTに接着する非導電性のカバーフィルム層LF1と、非導電性のカバーフィルム層LF2と、カバーフィルム層LF1及びLF2間に設けられた非導電性の基材層LKとを有する。
【0045】
さらに、フレキシブルプリント基板FP[m]は、基材層LK及びカバーフィルム層LF1の間に設けられた導電性の配線層LEと、基材層LK及びカバーフィルム層LF2の間に設けられた導電性のシールド層LSとを含む。配線層LEには、入力電極EAと、シールド電極SA1及びSA2と、検出電極EB1、EB2及びEB3と、シールド電極SB1、SB2、SB3及びSB4とが配置され、シールド層LSには、シールド電極SSA及びSSBが配置される。
【0046】
なお、配線層LEにおいて、入力電極EA及びシールド電極SA1の間、及び、入力電極EA及びシールド電極SA2の間には、非導電性の隔壁が設けられる。また、配線層LEにおいて、検出電極EB1及びシールド電極SB1の間、検出電極EB1及びシールド電極SB2の間、検出電極EB2及びシールド電極SB2の間、検出電極EB2及びシールド電極SB3の間、検出電極EB3及びシールド電極SB3の間、及び、検出電極EB3及びシールド電極SB4の間には、非導電性の隔壁が設けられる。
【0047】
また、シールド電極SSAは、X2方向からX1方向に向かって配線部分FA[m]を見た場合に、シールド電極SSAが入力電極EAの全部を覆うように設けられる。また、シールド電極SSBは、X1方向からX2方向に向かって配線部分FB[m]を見た場合に、シールド電極SSBが検出電極EB1、EB2及びEB3の全部を覆うように設けられる。
【0048】
なお、本実施形態では、シールド電極SSAのX1方向における厚さとシールド電極SSBのX1方向における厚さとが略同じとなるように、シールド電極SSA及びSSBが設けられる。また、本実施形態では、配線部分FA[m]のX1方向における厚さと配線部分FB[m]のX1方向における厚さとが略同じとなるように、配線部分FA[m]及び配線部分FB[m]が設けられる。
【0049】
ここで、入力電極EA及び検出電極EB1の間には、キャパシターCC1が形成され、入力電極EA及び検出電極EB2の間には、キャパシターCC2が形成され、入力電極EA及び検出電極EB3の間には、キャパシターCC3が形成される。キャパシターCC1、CC2及びCC3の容量値は、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量に応じて定められる。以下では、インクタンクTK[m]の底面である壁10Eから、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの液面までの距離は、液面高さLVとも称される。また、以下では、キャパシターCC1、CC2及びCC3をキャパシターCCと総称する場合がある。
【0050】
また、本実施形態では、検出電極EB1、EB2及びEB3が設けられた壁10Bのうち、検出電極EB1及びEB2間の特定部分RP1、及び、検出電極EB2及びEB3間の特定部分RP2の各々に、突起部PTが設けられている。なお、図6では、複数の突起部PTを互いに区別するために、突起部PTの符号の末尾には、数字の“1”又は“2”が付されている。例えば、突起部PT1は、Z1方向において、検出電極EB1及びEB2間に位置し、突起部PT2は、Z1方向において、検出電極EB2及びEB3間に位置する。
【0051】
突起部PT1及びPT2は、例えば、壁10Bの内面IFbに付着したインクIKの液残りを分断するように、特定部分RP1及びRP2にそれぞれ設けられる。以下では、壁10Aの内面IFaに付着したインクIKの液残り、及び、壁10Bの内面IFbに付着したインクIKの液残りは、非検出物RIKとも称される。
【0052】
例えば、突起部PT1は、非検出物RIKが検出電極EB1から検出電極EB2まで連続して壁10Bの内面IFbに付着しないように、特定部分RP1に設けられる。同様に、突起部PT2は、非検出物RIKが検出電極EB2から検出電極EB3まで連続して壁10Bの内面IFbに付着しないように、特定部分RP2に設けられる。突起部PTのX2方向への突出量、すなわち、突起部PTのX方向に沿う長さD1は、特に限定されないが、非検出物RIKを分断できる程度の長さであることが好ましい。さらに、インクタンクTK[m]の内部に貯蔵されたインクIKが減少する場合に、インクIKがスムーズに流れるように、突起部PTと壁10BとのX方向の間隔D2が確保されるように、突起部PTのX方向に沿う長さD1が決められることが好ましい。
【0053】
このように、本実施形態では、検出電極EB1から検出電極EB2まで連続して壁10Bの内面IFbに非検出物RIKが付着することを、突起部PTにより抑制することができる。これにより、本実施形態では、キャパシターCCの容量値が非検出物RIKの影響により変動することを抑制することができる。この結果、本実施形態では、インクタンクTK[m]の内部に貯蔵されたインクIKの残量を精度よく検出することができる。
【0054】
なお、突起部PTの形状は、特に限定されない。例えば、Y1方向からY2方向に向かって突起部PTを見た場合に把握される突起部PTの形状は、図6に示すように、三角形状でもよい。あるいは、Y1方向からY2方向に向かって突起部PTを見た場合に把握される突起部PTの形状は、矩形状でもよい。また、突起部PTの形成方法は、特に限定されない。例えば、突起部PTは、壁10Bと同じ材料で、壁10Bと一体に形成されてもよい。あるいは、突起部PTは、壁10Bと同じ材料又は異なる材料で形成され、壁10Bに接着されてもよい。
【0055】
図7は、フレキシブルプリント基板FP[m]の構成の一例を示す平面図である。なお、図7では、フレキシブルプリント基板FP[m]をインクタンクTK[m]から取り外して平面状に展開した場合の展開図が示されている。また、図7では、配線部分FA[m]の位置及び姿勢を、図4における位置及び姿勢から変化させずに、配線部分FC[m]及び配線部分FB[m]が、配線部分FA[m]と同一平面上に位置するように、フレキシブルプリント基板FP[m]を展開した場合を想定して、X軸、Y軸、及び、Z軸を表示している。また、図7では、フレキシブルプリント基板FP[m]のうち、配線層LE及びシールド層LSのみを図示し、基材層LK、カバーフィルム層LF1、及び、カバーフィルム層LF2の図示は省略している。
【0056】
フレキシブルプリント基板FP[m]のうち配線層LEは、配線部分FC[m]において、貫通電極VEAと、貫通電極VSA1及びVSA2と、貫通電極VEB1、VEB2及びVEB3と、貫通電極VSB1、VSB2、VSB3及びVSB4とを有する。また、フレキシブルプリント基板FP[m]のうちシールド層LSは、端子NEAと、端子NSA1及びNSA2と、端子NEB1、NEB2及びNEB3と、端子NSB1、NSB2、NSB3及びNSB4とを有する。さらに、シールド層LSは、シールド電極SSAに接続される端子NSSA1及びNSSA2と、シールド電極SSBに接続される端子NSSB1及びNSSB2とを有する。
【0057】
貫通電極VEAは、接続配線HEAと接続されるとともに、基材層LKに設けられたスルーホールを介して端子NEAと接続される。貫通電極VSA1は、接続配線HSA1と接続されるとともに、基材層LKに設けられたスルーホールを介して端子NSA1と接続される。貫通電極VSA2は、接続配線HSA2と接続されるとともに、基材層LKに設けられたスルーホールを介して端子NSA2と接続される。貫通電極VEB1は、接続配線HEB1と接続されるとともに、基材層LKに設けられたスルーホールを介して端子NEB1と接続される。貫通電極VEB2は、接続配線HEB2と接続されるとともに、基材層LKに設けられたスルーホールを介して端子NEB2と接続される。貫通電極VEB3は、接続配線HEB3と接続されるとともに、基材層LKに設けられたスルーホールを介して端子NEB3と接続される。貫通電極VSB1は、接続配線HSB1と接続されるとともに、基材層LKに設けられたスルーホールを介して端子NSB1と接続される。貫通電極VSB2は、接続配線HSB2と接続されるとともに、基材層LKに設けられたスルーホールを介して端子NSB2と接続される。貫通電極VSB3は、接続配線HSB3と接続されるとともに、基材層LKに設けられたスルーホールを介して端子NSB3と接続される。貫通電極VSB4は、接続配線HSB4と接続されるとともに、基材層LKに設けられたスルーホールを介して端子NSB4と接続される。
【0058】
次に、図8及び図9を参照しつつ、インク量検出装置2の概要を説明する。
【0059】
<<A.4.インク量検出装置の概要>>
図8は、貯蔵装置3の構成の一例を示すブロック図である。なお、図8では、インク供給装置1及びインク量検出装置2を含む貯蔵装置3の構成を説明するためのブロック図が示されている。
【0060】
貯蔵装置3は、上述のとおり、インク管理装置FF[m]を含むインク供給装置1と、インク量検出装置2とを有する。インク量検出装置2は、インク供給装置1が有するM個のインク管理装置FF[1]~FF[M]と1対1に対応するM個の選択回路4と、インク供給装置1が有するM個のインク管理装置FF[1]~FF[M]と1対1に対応するM個のインク量情報生成回路5とを有する。なお、図8では、説明の便宜上、インク供給装置1が有するM個のインク管理装置FF[1]~FF[M]のうち、一のインク管理装置FF[m]のみを図示している。同様に、図8では、インク量検出装置2が有するM個の選択回路4及びM個のインク量情報生成回路5のうち、インク管理装置FF[m]に対応する選択回路4[m]と、インク管理装置FF[m]に対応するインク量情報生成回路5[m]とを図示している。また、図8では、説明の便宜上、インク管理装置FF[m]を、インク管理装置FF[m]に設けられたキャパシターCC1、CC2及びCC3を用いて、インク管理装置FF[m]の等価回路として図示している。
【0061】
インク管理装置FF[m]の端子NEAは、交流電源22と電気的に接続される。交流電源22は、交流のパルス信号である入力信号Vinを端子NEAに供給する。そして、インク管理装置FF[m]の端子NEAに入力された入力信号Vinは、キャパシターCC1を介して端子NEB1に検出信号Vout1として伝達され、キャパシターCC2を介して端子NEB2に検出信号Vout2として伝達され、キャパシターCC3を介して端子NEB3に検出信号Vout3として伝達される。なお、本実施形態では、検出信号Vout1、Vout2及びVout3を、検出信号Voutと総称する場合がある。
【0062】
選択回路4[m]は、入力端子IN1、IN2及びIN3と、出力端子OSと、スイッチSW1、SW2及びスイッチSW3とを有する。
【0063】
入力端子IN1は、端子NEB1と電気的に接続される。入力端子IN1には、端子NEB1に伝達された検出信号Vout1が供給される。入力端子IN2は、端子NEB2と電気的に接続される。入力端子IN2には、端子NEB2に伝達された検出信号Vout2が供給される。入力端子IN3は、端子NEB3と電気的に接続される。入力端子IN3には、端子NEB3に伝達された検出信号Vout3が供給される。
【0064】
また、スイッチSW1は、制御装置7から供給される選択信号Selに基づいて、入力端子IN1と出力端子OSとを電気的に接続するか否かを切り替える。スイッチSW2は、制御装置7から供給される選択信号Selに基づいて、入力端子IN2と出力端子OSとを電気的に接続するか否かを切り替える。スイッチSW3は、制御装置7から供給される選択信号Selに基づいて、入力端子IN3と出力端子OSとを電気的に接続するか否かを切り替える。
【0065】
具体的には、選択回路4[m]は、選択信号Selに基づいて、入力端子IN1、IN2及びIN3のうち、選択信号Selにより選択された一の入力端子INを、出力端子OSと電気的に接続する。また、選択回路4[m]は、入力端子IN1、IN2及びIN3のうち、選択信号Selにより選択された一の入力端子IN以外の2個の入力端子IN、すなわち、選択信号Selにより非選択とされた入力端子INを接地する。これにより、入力端子IN1、IN2及びIN3のうち、選択信号Selにより選択された一の入力端子INは、出力端子OSと電気的に接続され、一の入力端子IN以外の2個の入力端子INは、出力端子OSと電気的に切断される。また、選択回路4[m]は、選択回路4[m]に入力された検出信号Vout1、Vout2及びVout3のうち、選択信号Selにより選択された一の入力端子INに入力された検出信号Voutを、出力信号VSとして、出力端子OSから出力する。
【0066】
インク量情報生成回路5[m]は、入力端子IN5と、出力端子O5と、バイアス回路51と、バッファー回路52と、バンドパスフィルター53と、サンプルホールド回路54と、ローパスフィルター55と、増幅回路56と、アナログデジタル変換回路57とを有する。
【0067】
入力端子IN5は、出力端子OSと電気的に接続される。入力端子IN5には、選択回路4[m]により選択された検出信号Voutが、出力信号VSとして選択回路4[m]の出力端子OSから供給される。入力端子IN5は、バイアス回路51を介して、バッファー回路52の入力端子に電気的に接続される。
【0068】
バイアス回路51は、入力端子IN5に供給される出力信号VSを、電源電圧と接地電圧との間の所定のバイアス電圧にバイアスする。バッファー回路52は、バイアス回路51によりバイアスされた出力信号VSを、バンドパスフィルター53に出力する。バンドパスフィルター53は、バッファー回路52から供給される信号のうち、所定の周波数範囲の成分を選択的に通過させ、他の成分を除去する。
【0069】
サンプルホールド回路54は、バンドパスフィルター53から出力される信号を、交流電源22から供給される入力信号Vinの周期に基づく周期でサンプリングし、当該サンプリングした信号の電圧値を、アナログデジタル変換回路57の動作が終了するまで保持する。また、サンプルホールド回路54は、サンプリングした信号を、ローパスフィルター55に出力する。ローパスフィルター55は、ローパスフィルター55に入力された信号のうち、所定の閾値よりも高い周波数成分を除去し、所定の閾値以下の周波数成分を増幅回路56に出力する。増幅回路56は、ローパスフィルター55から供給された信号を所定の増幅率で増幅し、当該増幅した信号をアナログデジタル変換回路57に出力する。
【0070】
アナログデジタル変換回路57は、増幅回路56から出力されたアナログの信号を、デジタルの信号に変換する。そして、アナログデジタル変換回路57は、当該デジタルの信号を制御装置7に出力する。なお、アナログデジタル変換回路57から制御装置7に供給される信号は、選択回路4[m]により出力信号VSとして選択された検出信号Voutの大きさを示すインク量情報DRを表す信号である。ここで、インク量情報DRの示す検出信号Voutの大きさとは、例えば、検出信号Voutの振幅Aoutである。但し、インク量情報DRの示す検出信号Voutの大きさは、検出信号Voutの実効値であってもよい。
【0071】
次に、図9を参照しつつ、インク量情報DRの示す検出信号Voutの振幅Aoutについて説明する。
【0072】
図9は、液面高さLVと検出信号Voutの振幅Aoutの関係の一例を示す説明図である。図9の縦軸は、検出信号Voutの振幅Aoutを示し、図9の横軸は、液面高さLVを示す。
【0073】
なお、図9において、液面高さLV1dは、壁10Eから、検出電極EB1のうちのZ1方向の端部までの高さである。液面高さLV1uは、壁10Eから、検出電極EB1のうちのZ2方向の端部までの高さである。すなわち、液面高さLV1dから液面高さLV1uまでの液面範囲LV1は、インクタンクTK[m]の内部において、インクIKが、検出電極EB1の下端にある場合から、検出電極EB1の上端にある場合までの、液面高さLVの範囲である。
【0074】
また、図9において、液面高さLV2dは、壁10Eから、検出電極EB2のうちのZ1方向の端部までの高さである。液面高さLV2uは、壁10Eから、検出電極EB2のうちのZ2方向の端部までの高さである。すなわち、液面高さLV2dから液面高さLV2uまでの液面範囲LV2は、インクタンクTK[m]の内部において、インクIKが、検出電極EB2の下端にある場合から、検出電極EB2の上端にある場合までの、液面高さLVの範囲である。
【0075】
また、図9において、液面高さLV3dは、壁10Eから、検出電極EB3のうちのZ1方向の端部までの高さである。液面高さLV3uは、壁10Eから、検出電極EB3のうちのZ2方向の端部までの高さである。すなわち、液面高さLV3dから液面高さLV3uまでの液面範囲LV3は、インクタンクTK[m]の内部において、インクIKが、検出電極EB3の下端にある場合から、検出電極EB3の上端にある場合までの、液面高さLVの範囲である。
【0076】
一般的に、インクIKの比誘電率は、空気の比誘電率よりも大きい。このため、インクタンクTK[m]のうち入力電極EA及び検出電極EB1の間に位置する液面範囲LV1に対応する空間がインクIKで満たされた場合、当該空間が空気で満たされた場合に比べて、キャパシターCC1の静電容量は大きくなる。同様に、インクタンクTK[m]のうち入力電極EA及び検出電極EB2の間に位置する液面範囲LV2に対応する空間がインクIKで満たされた場合、当該空間が空気で満たされた場合に比べて、キャパシターCC2の静電容量は大きくなる。同様に、インクタンクTK[m]のうち入力電極EA及び検出電極EB3の間に位置する液面範囲LV3に対応する空間がインクIKで満たされた場合、当該空間が空気で満たされた場合に比べて、キャパシターCC3の静電容量は大きくなる。
【0077】
また、一般的に、キャパシターの面積が大きい場合、キャパシターの面積が小さい場合に比べて、当該キャパシターの静電容量は大きくなる。具体的には、X2方向からX1方向に向かってインクタンクTK[m]を見た場合に検出電極EB1及び入力電極EAの重なる部分の面積が大きい場合、当該面積が小さい場合に比べて、キャパシターCC1の静電容量は大きくなる。また、X2方向からX1方向に向かってインクタンクTK[m]を見た場合に検出電極EB2及び入力電極EAの重なる部分の面積が大きい場合、当該面積が小さい場合に比べて、キャパシターCC2の静電容量は大きくなる。また、X2方向からX1方向に向かってインクタンクTK[m]を見た場合に検出電極EB3及び入力電極EAの重なる部分の面積が大きい場合、当該面積が小さい場合に比べて、キャパシターCC3の静電容量は大きくなる。
【0078】
なお、本実施形態では、一例として、X2方向からX1方向に向かってインクタンクTK[m]を見た場合に、検出電極EB1の全部と検出電極EB2の全部と検出電極EB3の全部とが、入力電極EAに覆われるように、入力電極EAと、検出電極EB1、EB2及びEB3とが設けられる場合を想定する。このため、本実施形態では、検出電極EB1の面積が大きい場合、当該面積が小さい場合に比べて、キャパシターCC1の静電容量は大きくなる。また、本実施形態では、検出電極EB2の面積が大きい場合、当該面積が小さい場合に比べて、キャパシターCC2の静電容量は大きくなる。また、本実施形態では、検出電極EB3の面積が大きい場合、当該面積が小さい場合に比べて、キャパシターCC3の静電容量は大きくなる。
【0079】
そして、キャパシターCC1の静電容量が大きい場合、キャパシターCC1の静電容量が小さい場合に比べて、検出信号Vout1の振幅Aout1は大きくなる。同様に、キャパシターCC2の静電容量が大きい場合、キャパシターCC2の静電容量が小さい場合に比べて、検出信号Vout2の振幅Aout2は大きくなる。同様に、キャパシターCC3の静電容量が大きい場合、キャパシターCC3の静電容量が小さい場合に比べて、検出信号Vout3の振幅Aout3は大きくなる。
【0080】
このため、図9に示すように、液面高さLVが液面高さLV1u以上の場合、液面高さLVが液面高さLV1d以下の場合に比べて、検出信号Vout1の振幅Aout1は大きくなる。また、液面高さLVが液面高さLV2u以上の場合、液面高さLVが液面高さLV2d以下の場合に比べて、検出信号Vout2の振幅Aout2は大きくなる。また、液面高さLVが液面高さLV3u以上の場合、液面高さLVが液面高さLV3d以下の場合に比べて、検出信号Vout3の振幅Aout3は大きくなる。
【0081】
具体的には、本実施形態では、液面高さLVが液面高さLV1u以上の場合における検出信号Vout1の振幅Aout1が電圧VHとなり、液面高さLVが液面高さLV1d以下の場合における検出信号Vout1の振幅Aout1が電圧VHよりも小さい電圧VLとなるように、検出電極EB1が設けられる。また、本実施形態では、液面高さLVが液面高さLV2u以上の場合における検出信号Vout2の振幅Aout2が電圧VHとなり、液面高さLVが液面高さLV2d以下の場合における検出信号Vout2の振幅Aout2が電圧VLとなるように、検出電極EB2が設けられる。また、本実施形態では、液面高さLVが液面高さLV3u以上の場合における検出信号Vout3の振幅Aout3が電圧VHとなり、液面高さLVが液面高さLV3d以下の場合における検出信号Vout3の振幅Aout3が電圧VLとなるように、検出電極EB3が設けられる。なお、図9に示す閾値電圧VTHは、電圧VHよりも小さく、且つ、電圧VLよりも大きい電圧である。
【0082】
次に、図10を参照しつつ、制御装置7が実行するインク残量判定処理の概要を説明する。ここで、インク残量判定処理とは、インク量情報DRに基づいて、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量を判定する処理である。
【0083】
<<A.5.インク残量判定処理の概要>>
図10は、インク残量判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0084】
先ず、ステップS101において、制御装置7は、検出信号Vout1を出力する検出電極EB1に対応するスイッチSW1を選択する。例えば、制御装置7は、選択回路4[m]に対して、スイッチSW1を選択する選択信号Selを供給する。すなわち、制御装置7は、スイッチSW1により、入力端子IN1及び出力端子OSを電気的に接続させ、選択回路4[m]に出力信号VSとして検出信号Vout1を出力させる。
【0085】
次に、ステップS103において、制御装置7は、インク量情報生成回路5[m]が出力するインク量情報DRの示す振幅Aout1が閾値電圧VTH以下であるか否かを判定する。
【0086】
ステップS103における判定の結果が否定の場合、制御装置7は、ステップS105において、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が「多」であると判定し、図10に示すインク残量判定処理を終了させる。すなわち、制御装置7は、インク量情報DRの示す振幅Aout1が閾値電圧VTHよりも大きい場合、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が「多」であると判定し、インク残量判定処理を終了させる。
【0087】
一方、ステップS103における判定の結果が肯定の場合、すなわち、インク量情報DRの示す振幅Aout1が閾値電圧VTH以下である場合、制御装置7は、処理をステップS111に進める。
【0088】
ステップS111において、制御装置7は、検出信号Vout2を出力する検出電極EB2に対応するスイッチSW2を選択する。例えば、制御装置7は、選択回路4[m]に対して、スイッチSW2を選択する選択信号Selを供給する。すなわち、制御装置7は、スイッチSW2により入力端子IN2及び出力端子OSを電気的に接続させ、選択回路4[m]に出力信号VSとして検出信号Vout2を出力させる。
【0089】
次に、ステップS113において、制御装置7は、インク量情報生成回路5[m]が出力するインク量情報DRの示す振幅Aout2が閾値電圧VTH以下であるか否かを判定する。
【0090】
ステップS113における判定の結果が否定の場合、制御装置7は、ステップS115において、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が「中」であると判定し、図10に示すインク残量判定処理を終了させる。すなわち、制御装置7は、インク量情報DRの示す振幅Aout2が閾値電圧VTHよりも大きい場合、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が「中」であると判定し、インク残量判定処理を終了させる。なお、インクIKの残量が「中」である場合、インクIKの残量が「多」である場合に比べて、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量は少ない。
【0091】
一方、ステップS113における判定の結果が肯定の場合、すなわち、インク量情報DRの示す振幅Aout2が閾値電圧VTH以下である場合、制御装置7は、処理をステップS121に進める。
【0092】
ステップS121において、制御装置7は、検出信号Vout3を出力する検出電極EB3に対応するスイッチSW3を選択する。例えば、制御装置7は、選択回路4[m]に対して、スイッチSW3を選択する選択信号Selを供給する。すなわち、制御装置7は、スイッチSW3により入力端子IN3及び出力端子OSを電気的に接続させ、選択回路4[m]に出力信号VSとして検出信号Vout3を出力させる。
【0093】
次に、ステップS123において、制御装置7は、インク量情報生成回路5[m]が出力するインク量情報DRの示す振幅Aout3が閾値電圧VTH以下であるか否かを判定する。
【0094】
ステップS123における判定の結果が否定の場合、制御装置7は、ステップS125において、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が「少」であると判定し、図10に示すインク残量判定処理を終了させる。すなわち、制御装置7は、インク量情報DRの示す振幅Aout3が閾値電圧VTHよりも大きい場合、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が「少」であると判定し、インク残量判定処理を終了させる。なお、インクIKの残量が「少」である場合、インクIKの残量が「中」である場合に比べて、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量は少ない。
【0095】
一方、ステップS123における判定の結果が肯定の場合、制御装置7は、ステップS127において、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が「無」であると判定し、図10に示すインク残量判定処理を終了させる。すなわち、制御装置7は、インク量情報DRの示す振幅Aout3が閾値電圧VTH以下である場合、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が「無」であると判定し、インク残量判定処理を終了させる。なお、インクIKの残量が「無」である場合、インクIKの残量が「少」である場合に比べて、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量は少ない。
【0096】
次に、図11を参照しつつ、突起部PTによる効果を説明する。
【0097】
図11は、突起部PTによる効果を説明するための説明図である。図11のグラフは、入力電極EA及び検出電極EB1の間の静電容量、すなわち、キャパシターCC1の静電容量の測定値を示す。なお、図11では、液面高さLVが液面高さLV2uで、かつ、非検出物RIKが壁10A及び10Bのいずれにも付着していない場合のキャパシターCC1の静電容量に対する相対的な容量値が示される。非検出物RIKは、図6において説明したように、壁10Aの内面IFaに付着したインクIKの液残り、及び、壁10Bの内面IFbに付着したインクIKの液残り等のインクIKの液残りである。
【0098】
図11において、グラフデータGD10は、液面高さLVが液面高さLV1uである場合のキャパシターCC1の静電容量を示す。グラフデータGD20は、液面高さLVが液面高さLV2uで、かつ、非検出物RIKが壁10A及び10Bのいずれにも付着していない場合のキャパシターCC1の静電容量を示す。すなわち、グラフデータGD20は、本グラフにおいて、基準となる静電容量を示す。
【0099】
グラフデータGD21は、突起部PTが設けられた構成において、液面高さLVが液面高さLV2uで、かつ、非検出物RIKが壁10A及び10Bに付着している場合のキャパシターCC1の静電容量を示す。すなわち、グラフデータGD21は、本実施形態におけるキャパシターCC1の静電容量を示す。ここで、グラフデータGD21において、壁10Bに非検出物RIKが付着した状態とは、例えば、壁10Bのうち、検出電極EB1及びEB2間の特定部分RP1の内面IFbに付着した非検出物RIKが突起部PT1により分断された状態である。
【0100】
グラフデータGD22、GD23及びGD24は、突起部PTが設けられていない構成、すなわち、本実施形態と対比される対比例におけるキャパシターCC1の静電容量を示す。例えば、グラフデータGD22は、対比例において、液面高さLVが液面高さLV2uで、かつ、非検出物RIKが壁10A及び10Bに付着している場合のキャパシターCC1の静電容量を示す。グラフデータGD23は、対比例において、液面高さLVが液面高さLV2uで、かつ、非検出物RIKが壁10A及び10Bのうち壁10Aのみに付着している場合のキャパシターCC1の静電容量を示す。グラフデータGD24は、対比例において、液面高さLVが液面高さLV2uで、かつ、非検出物RIKが壁10A及び10Bのうち壁10Bのみに付着している場合のキャパシターCC1の静電容量を示す。ここで、グラフデータGD22及びGD24において、壁10Bに非検出物RIKが付着した状態とは、例えば、壁10Bのうち、検出電極EB1及びEB2間の特定部分RP1の内面IFbに非検出物RIKが連続して付着した状態である。
【0101】
グラフデータGD10及びGD20に示すように、液面高さLVが液面高さLV1uから液面高さLV2uまで変化した場合、キャパシターCC1の静電容量が大きく変化することが理想的である。以下では、グラフデータGD10により示される静電容量から、グラフデータGD20により示される静電容量への変化量は、所望の変化量とも称される。また、以下では、グラフデータGD20により示される静電容量は、所望の静電容量とも称される。
【0102】
なお、対比例では、グラフデータGD20及びGD24に示すように、検出電極EB1が設けられた壁10Bに非検出物RIKが付着した場合、液面高さLVが液面高さLV2uである場合のキャパシターCC1の静電容量は、所望の静電容量の約1.5倍になる。このことから、対比例では、壁10Bに付着した非検出物RIKがキャパシターCC1に影響を与えていることが考えられる。例えば、対比例では、インクタンクTK[m]のうち、入力電極EA及び検出電極EB2の間に対応する空間に存在するインクIKが、壁10Bに付着した非検出物RIKを介してキャパシターCC1に影響を与えていることが考えられる。
【0103】
上述したように、対比例では、非検出物RIKが壁10Bに付着した場合、液面高さLVが液面高さLV2uである場合のキャパシターCC1の静電容量は、非検出物RIKの影響により、所望の静電容量に比べて大きくなる。従って、対比例では、液面高さLVが液面高さLV1uから液面高さLV2uまで変化した場合のキャパシターCC1の静電容量の変化量が、壁10Bに付着した非検出物RIKの影響により、所望の変化量に比べて小さくなる。この結果、対比例では、液面高さLVが液面高さLV1uから液面高さLV2uまで変化した場合の検出信号Vout1の振幅Aout1の変化量が小さくなり、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量を誤検出するおそれがある。
【0104】
例えば、対比例では、液面高さLVが液面高さLV2uの場合の検出信号Vout1の振幅Aout1が、閾値電圧VTHよりも大きくなるおそれがある。従って、対比例では、液面高さLVが液面高さLV1d以下の場合であっても、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が「多」であると誤判定されるおそれがある。
【0105】
これに対し、本実施形態では、グラフデータGD20及びGD21に示すように、非検出物RIKが壁10Bに付着した場合においても、液面高さLVが液面高さLV1uである場合のキャパシターCC1の静電容量は、所望の静電容量の約1.1倍である。このように、本実施形態では、非検出物RIKが壁10Bに付着した場合にキャパシターCC1の静電容量が所望の静電容量に対して増加する量を、突起部PT1により抑制することができる。
【0106】
例えば、突起部PT1は、壁10Bにおいて、検出電極EB1の下端から検出電極EB2の上端まで、非検出物RIKが連続して付着することを防止する。これにより、本実施形態では、検出電極EB1から検出電極EB2まで非検出物RIKを介して電気的なパスが形成されることを抑制することができる。換言すれば、本実施形態では、検出電極EB1から検出電極EB2まで非検出物RIKを介して形成される電気的なパスを、突起部PT1により分断することができる。これにより、本実施形態では、インクタンクTK[m]のうち、入力電極EA及び検出電極EB2の間に対応する空間に存在するインクIKから非検出物RIKを介してキャパシターCC1が受ける影響を小さくすることができる。
【0107】
上述したように、本実施形態では、非検出物RIKが壁10Bに付着した場合においても、液面高さLVが液面高さLV2uである場合のキャパシターCC1の静電容量の所望の静電容量に対する増加量を抑制することができる。従って、本実施形態では、非検出物RIKが壁10Bに付着した場合においても、液面高さLVが液面高さLV1uから液面高さLV2uまで変化した場合のキャパシターCC1の静電容量の変化量を、所望の変化量と同程度に確保することができる。これにより、本実施形態では、液面高さLVが液面高さLV1uから液面高さLV2uまで変化した場合の検出信号Vout1の振幅Aout1の変化量が小さくなることを抑制することができる。この結果、本実施形態では、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が誤検出されることを抑制することができる。すなわち、本実施形態では、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量を精度よく検出することができる。
【0108】
なお、本実施形態では、液面高さLVが液面高さLV2uから液面高さLV3uまで変化した場合においても、キャパシターCC2の静電容量の変化量が小さくなることを、突起部PT2により抑制することができる。
【0109】
<<A.6.実施形態の結び>>
以上、本実施形態では、インクジェットプリンター100は、複数の壁10を含み、複数の壁10に囲まれた空間にインクIKを貯蔵するインクタンクTK[m]と、インクタンクTK[m]から供給されたインクIKを吐出する液体吐出ヘッドHU[m]と、複数の壁10のうちの壁10Bの外面OFbに設けられ、インクタンクTK[m]内のインクIKの残量を検出するための検出電極EB1及び検出電極EB2と、壁10Bの外面OFbとは反対側の内面IFbに設けられた突起部PT1と、を有する。突起部PT1は、インクタンクTK[m]においてインクIKが減少する方向であるX1方向において、検出電極EB1と検出電極EB2との間に位置する。なお、本実施形態に係る貯蔵装置3は、上述の要素のうち、インクタンクTK[m]と、検出電極EB1及びEB2と、突起部PT1とを有する。
【0110】
このように、本実施形態では、壁10Bの内面IFbのうち、検出電極EB1及びEB2間に対応する位置に、突起部PT1が設けられる。このため、本実施形態では、壁10Bの内面IFbに付着したインクIKの液残りが非検出物RIKとして、壁10Bにおいて検出電極EB1から検出電極EB2まで連続して付着することを、突起部PT1により防止することができる。これにより、本実施形態では、壁10Bに非検出物RIKが付着した場合においても、非検出物RIKが、入力電極EA及び検出電極EB1の間に形成されるキャパシターCC1に与える影響を小さくすることができる。この結果、本実施形態では、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が誤検出されることを抑制することができる。すなわち、本実施形態では、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量を精度よく検出することができる。
【0111】
また、本実施形態では、貯蔵装置3は、複数の壁10のうち、壁10Bと向かい合う壁10Aに設けられ、入力信号Vinが供給される入力電極EAをさらに有する。すなわち、本実施形態では、「第1電極」及び「第2電極」は、インクタンクTK[m]内のインクIKの残量と入力信号Vinとに基づく検出信号Voutを出力する検出電極EBである。このように、本実施形態では、壁10Aに入力電極EAが設けられ、壁10Bに複数の検出電極EBが設けられる構成において、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量を精度よく検出することができる。
【0112】
<<B.変形例>>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0113】
<第1変形例>
上述した実施形態において、突起部PT1には、撥水処理が施されてもよい。例えば、撥水処理は、シリコーン系コーティングによる撥水処理であってもよい。なお、撥水処理は、シリコーン系コーティングによる撥水処理に限定されない。例えば、撥水処理は、フッ素系コーティングによる撥水処理であってもよい。
【0114】
以上、本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本変形例では、突起部PT1に撥水処理が施されているため、壁10Bにおいて検出電極EB1から検出電極EB2まで非検出物RIKが連続して付着することを防止する効果を向上させることができる。これにより、本変形例では、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量をより精度よく検出することができる。また、本変形例では、壁10Bの内面IFbの全体に撥水処理を施さなくてもよいため、壁10Bの内面IFbの全体に撥水処理が施される場合に比べて、少ない撥水処理で対応することができる。この結果、本変形例では、壁10Bの内面IFbの全体に撥水処理が施される場合に比べて、貯蔵装置3及びインクジェットプリンター100の製造コストが増加することを抑制することができる。
【0115】
<第2変形例>
上述した実施形態及び変形例において、壁10Bの内面IFbのうち突起部PT1の周りの所定範囲内には、撥水処理が施されてもよい。例えば、壁10Bの特定部分RP1のうち、突起部PT1が形成される部分を除いた部分に、撥水処理が施されてもよい。同様に、壁10Bの特定部分RP2のうち、突起部PT2が形成される部分を除いた部分に、撥水処理が施されてもよい。上述した第1変形例では、撥水処理が施される部分には、突起部PTも含まれる。
【0116】
なお、撥水処理が施される範囲は、特定部分RP1及びRP2に限定されない。例えば、特定部分RP1よりも狭い範囲に撥水処理が施されてもよいし、特定部分RP1よりも広い範囲に撥水処理が施されてもよい。同様に、特定部分RP2よりも狭い範囲に撥水処理が施されてもよいし、特定部分RP2よりも広い範囲に撥水処理が施されてもよい。
【0117】
以上、本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。例えば、本変形例では、突起部PTの周辺に撥水処理が施されているため、壁10Bにおいて検出電極EB1から検出電極EB2まで非検出物RIKが連続して付着することを防止する効果を向上させることができる。
【0118】
<第3変形例>
上述した実施形態及び第1変形例において、壁10Bの内面IFbのうち突起部PT1の周りの所定範囲内には、親水処理が施されてもよい。
【0119】
図12は、第3変形例に係るインク管理装置FF[m]の構成の一例を示す断面図である。なお、図12では、上述した図6と同様に、Y1方向を法線方向とする平面により、電極形成領域RA及びRBを含むようにインク管理装置FF[m]を切断した場合のインク管理装置FF[m]の断面図が示されている。図1から図11において説明した要素と同様の要素については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0120】
図12に示すインク管理装置FF[m]は、突起部PT1の周辺に親水膜HM1u及びHM1dが設けられ、突起部PT2の周辺に親水膜HM2u及びHM2dが設けられていることを除いて、図6に示したインク管理装置FF[m]と同様である。以下では、親水膜HM1u及びHM1dを親水膜HM1と総称し、親水膜HM2u及びHM2dを親水膜HM2と総称する場合がある。さらに、以下では、親水膜HM1u、HM1d、HM2u及びHM2dを親水膜HMと総称する場合がある。
【0121】
例えば、親水膜HM1は、壁10Bの特定部分RP1のうち、突起部PT1が形成される部分を除いた部分に設けられ、親水膜HM2は、壁10Bの特定部分RP2のうち、突起部PT2が形成される部分を除いた部分に設けられる。なお、親水膜MHの形成方法は特に限定されない。例えば、親水膜MHは、親水性を有する任意の公知の材料により形成される。
【0122】
図12では、親水膜MH1uのうちのZ2方向の端部が、検出電極EB1のうちのZ1方向の端部と一致又はほぼ一致し、親水膜MH1dのうちのZ1方向の端部が、検出電極EB2のうちのZ2方向の端部と一致又はほぼ一致する場合を想定している。同様に、図12では、親水膜MH2uのうちのZ2方向の端部が、検出電極EB2のうちのZ1方向の端部と一致又はほぼ一致し、親水膜MH2dのうちのZ1方向の端部が、検出電極EB3のうちのZ2方向の端部と一致又はほぼ一致する場合を想定している。但し、親水膜MHのうちのZ2方向の端部、及び、Z1方向の端部の位置は、図12に示す例に限定されない。例えば、親水膜MH1uのうちのZ2方向の端部は、検出電極EB1のうちのZ1方向の端部と突起部PT1との間に位置してもよい。同様に、親水膜MH1dのうちのZ1方向の端部は、検出電極EB2のうちのZ2方向の端部と突起部PT1との間に位置してもよい。
【0123】
以上、本変形例においても、上述した実施形態及び第1変形例と同様の効果を得ることができる。さらに、本変形例では、突起部PTの周辺に親水処理が施されているため、壁10Bの内面IFbに付着した非検出物RIKが、突起部PTの周辺に引き付けられる。これにより、本変形例では、壁10Bの内面IFbに付着した非検出物RIKを突起部PT上で確実に分断することができる。これにより、本変形例では、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量をより精度よく検出することができる。
【0124】
<第4変形例>
上述した実施形態では、インクタンクTK[m]に貯蔵される物体の一例として、「液体」であるインクIKを例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。インクタンクTK[m]は、インクIK以外の物体を貯蔵可能であってもよい。例えば、インクタンクTK[m]には、油等の流体を貯蔵可能であってもよいし、ゲル状の物体を貯蔵可能であってもよい。以上、本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0125】
<第5変形例>
上述した実施形態及び変形例では、検出電極EB1及びEB2間に突起部PT1が位置し、検出電極EB2及びEB3間に突起部PT2が位置する場合を例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、入力電極EA及び検出電極EBは、壁10A及び10Bの一方に設けられてもよい。具体的には、例えば、壁10Bに、1個の入力電極EA及び1個の検出電極EBがX1方向に沿って配置されてもよい。そして、突起部PTは、壁10Bの内面IFbのうち、入力電極EA及び検出電極EBの間に対応する位置に、突起部PTが設けられてもよい。
【0126】
なお、本変形例では、入力電極EA及び検出電極EBがX1方向に沿って交互に配置されるように、壁10Bに複数の入力電極EA及び複数の検出電極EBが設けられてもよい。この場合においても、壁10Bの内面IFbのうち、入力電極EA及び検出電極EBの間に対応する位置に、突起部PTが設けられる。
【0127】
すなわち、本変形例では、「第1電極」及び「第2電極」の一方は、入力信号Vinが供給される入力電極EAであり、「第1電極」及び「第2電極」の他方は、インクタンクTK[m]内のインクIKの残量と入力信号Vinとに基づく検出信号Voutを出力する検出電極EBである。
【0128】
以上、本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0129】
<第6変形例>
上述した実施形態及び変形例では、突起部PTのY方向に沿う幅WPが検出電極EBのY方向に沿う幅WE以上である場合を例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、突起部PTのY方向に沿う幅WPは、検出電極EBのY方向に沿う幅WEよりも小さくてもよい。さらには、複数の突起部PTがY方向に沿って配置されてもよい。以上、本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0130】
<第7変形例>
上述した実施形態及び変形例では、インク量検出装置2が、M個の選択回路4と、M個のインク量情報生成回路5とを有する場合を例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。インク量検出装置2は、1個以上の選択回路4と、1個以上のインク量情報生成回路5とを有していればよい。以上、本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0131】
<第8変形例>
上述した実施形態及び変形例では、液体吐出ヘッドHU[m]を搭載した収納ケース921を、X軸方向に往復同させるシリアル方式のインクジェットプリンター100を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。インクジェットプリンター100は、媒体PPの全幅に亘りインクIKを吐出可能な液体吐出ヘッドHU[m]を具備する、ライン方式の液体吐出装置であってもよい。以上、本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0132】
<第9変形例>
上述した実施形態及び変形例でインクジェットプリンター100を例示して説明した液体吐出装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。以上、本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0133】
<<C.応用例>>
1個の入力電極EAと1個の検出電極EBとの組により、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量が「多」、「少」又は「無」であるかが判定されてもよい。この場合、突起部PTは、検出電極EBが設けられる壁10Bの内面IFbのうち、検出電極EBのZ方向における上端及び下端の間に対応する位置に設けられてもよい。例えば、突起部PTは、壁10Bの内面IFbのうち、検出電極EBのZ方向における中間付近に対応する位置に設けられてもよい。この場合、検出信号Voutの振幅Aoutは、第1の閾値電圧と第2の閾値電圧との2個の閾値電圧と比較されてもよい。例えば、第1の閾値電圧は、電圧VHよりも小さく、且つ、電圧VH及びVL間の中央の電圧よりも大きい電圧であり、第2の閾値電圧は、電圧VH及びVL間の中央の電圧よりも小さく、且つ、電圧VLよりも大きい電圧である。本応用例においても、液面高さLVが検出電極EBのZ方向における上端から突起部PTのZ方向における下端まで変化した場合の入力電極EA及び検出電極EB間の静電容量の変化量を、突起部PTが設けられない構成に比べて、大きくすることができる。このため、本応用例においても、突起部PTが設けられない構成に比べて、インクタンクTK[m]に貯蔵されているインクIKの残量を精度よく検出することができる。
【符号の説明】
【0134】
1…インク供給装置、2…インク量検出装置、3…貯蔵装置、4…選択回路、5…インク量情報生成回路、7…制御装置、10A…壁、10B…壁、10C…壁、100…インクジェットプリンター、EA…入力電極、EB1…検出電極、EB2…検出電極、EB3…検出電極、FA…配線部分、FB…配線部分、FC…配線部分、FF…インク管理装置、FP…フレキシブルプリント基板、HM1u、HM1d、HM2u、HM2d…親水膜、LE…配線層、LF1…カバーフィルム層、LF2…カバーフィルム層、LK…基材層、LS…シールド層、PT1、PT2…突起部、SSA…シールド電極、SSB…シールド電極、TK…インクタンク。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12