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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107627
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/41 20060101AFI20240802BHJP
   H01R 13/6581 20110101ALI20240802BHJP
【FI】
H01R13/41
H01R13/6581
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011653
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】赤池 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】河崎 崇志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勲
(72)【発明者】
【氏名】佐土原 寛幸
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB02
5E021FB20
5E021FC21
5E021FC23
5E021LA09
5E021LA11
5E087EE02
5E087EE07
5E087EE11
5E087FF03
5E087FF18
5E087GG06
5E087JJ09
5E087MM02
5E087QQ04
5E087RR02
5E087RR06
(57)【要約】
【課題】ハウジング内の一対のコンタクトピンの離間距離を一定に保つ。
【解決手段】電気コネクタ1は、一対のコンタクトピン2と、一対のコンタクトピン2を内部に収納する絶縁性のハウジング3と、を含む。コンタクトピン2は、相手側コネクタ200の挿抜方向に直線状に延伸し、互いに対向する一対の面を有する水平延伸部21を備えている。ハウジング3は、相手側コネクタ200の挿抜方向に直線状に延伸し、内部に水平延伸部21を収納する筒状部と31、筒状部31を相手側コネクタ200の挿抜方向に貫通し、一対のコンタクトピン2の水平延伸部21をそれぞれ挿通させるための一対の挿通孔33と、を備えている。一対の挿通孔33のそれぞれは、水平延伸部21の一対の面の一方の面と対向する第1壁面331と、水平延伸部21の一対の面の他方の面と対向する第2壁面332と、第1壁面331上に設けられた平坦な受け部34と、を備えている。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側から挿入される相手側コネクタと連結可能な電気コネクタであって、
一対のコンタクトピンと、
前記一対のコンタクトピンを互いに絶縁した状態で、内部に収納する絶縁性のハウジングと、を含み、
前記一対のコンタクトピンのそれぞれは、前記ハウジング内に位置し、前記相手側コネクタの挿抜方向に直線状に延伸し、互いに対向する一対の面を有する水平延伸部を備え、
前記ハウジングは、
前記相手側コネクタの前記挿抜方向に直線状に延伸し、内部に前記一対のコンタクトピンの前記水平延伸部を収納する筒状部と、
前記筒状部を前記相手側コネクタの前記挿抜方向に貫通し、前記一対のコンタクトピンの前記水平延伸部をそれぞれ挿通させるための一対の矩形状の挿通孔と、を備え、
前記一対の挿通孔のそれぞれは、前記水平延伸部の前記一対の面の一方の面と対向する第1壁面と、前記水平延伸部の前記一対の面の他方の面と対向する第2壁面と、前記第1壁面に設けられた平坦な受け部と、を備え、
前記挿通孔の前記第2壁面は、対応する前記コンタクトピンの前記水平延伸部の前記他方の面を前記挿通孔の内側に押圧し、これにより、対応する前記コンタクトピンを、前記挿通孔の前記受け部上に押し付けることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記受け部は、平坦部と、前記平坦部の両端部と前記第1壁面との間を接続する一対の脚部と、を有しており、
前記平坦部は、前記第1壁面から前記挿通孔の内側に突出している請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記受け部は、前記相手側コネクタの前記挿抜方向からの平面視において台形形状を有しており、
前記平坦部は、前記相手側コネクタの前記挿抜方向に直線状に延伸し、対応する前記コンタクトピンの前記水平延伸部の前記一方の面と接触し、
前記一対の脚部は、前記平坦部の両端部から前記挿通孔の前記第1壁面に向かって、前記平坦部および前記第1壁面に対して斜め方向に延伸し、前記第1壁部に接続されている
請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記一対の挿通孔の前記第1壁面の間には、前記相手側コネクタの前記挿抜方向に直線状に延伸する板状の壁部が形成されており、前記一対の挿通孔の前記第1壁面は、前記壁部を介して互いに離間した状態で対向している請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記一対のコンタクトピンおよび前記ハウジングを保持する金属製のシェルをさらに含み、
前記ハウジングは、前記筒状部の外周面上であって、前記一対の挿通孔の前記第2壁面と対向する位置にそれぞれ形成された一対の押圧リブをさらに備えており、
前記シェルは、
本体部と、
前記本体部を前記相手側コネクタの前記挿抜方向に貫通し、前記ハウジングの前記筒状部を挿通させるための挿通孔と、を備え、
前記シェルの前記挿通孔に前記ハウジングの前記筒状部が挿通される際に、前記ハウジングの前記一対の押圧リブは、前記シェルの前記挿通孔の内側面によって内側に押圧され、前記ハウジングの前記筒状部の前記一対の押圧リブが形成されている部分が内側に弾性変形し、これにより、前記一対の挿通孔の前記第2壁部が前記一対のコンタクトピンの前記水平延伸部の前記他方の面をそれぞれ押圧し、前記一対のコンタクトピンを前記一対の挿通孔の前記受け部上にそれぞれ押し付ける請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記筒状部の基端部から下方に延伸する下方延伸部をさらに備え、
前記下方延伸部は、前記下方延伸部の先端面上、かつ、前記筒状部と隣接する部分に設けられた切り欠き部を備えている請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記ハウジングの前記下方延伸部の前記切り欠き部は、前記シェルの前記本体部の基端側のエッジ部と間隙を介して対向している請求項6に記載の電気コネクタ。
【請求項8】
先端側から挿入される相手側コネクタと連結可能な電気コネクタであって、
一対のコンタクトピンと、
前記一対のコンタクトピンを互いに絶縁した状態で、内部に収納する絶縁性のハウジングと、を含み、
前記一対のコンタクトピンのそれぞれは、前記ハウジング内に位置し、前記相手側コネクタの挿抜方向に直線状に延伸し、互いに対向する一対の面を有する水平延伸部を備え、
前記ハウジングは、
前記相手側コネクタの前記挿抜方向に直線状に延伸し、内部に前記一対のコンタクトピンの前記水平延伸部を収納する筒状部と、
前記筒状部を前記相手側コネクタの前記挿抜方向に貫通し、前記一対のコンタクトピンの前記水平延伸部をそれぞれ挿通させるための一対の矩形状の挿通孔と、を備え、
前記一対の挿通孔のそれぞれは、前記水平延伸部の前記一対の面の一方の面と対向する第1壁面と、前記水平延伸部の前記一対の面の他方の面と対向する第2壁面と、を備え、
前記挿通孔の前記第2壁面は、対応する前記コンタクトピンの前記水平延伸部の前記他方の面を前記挿通孔の内側に押圧し、これにより、対応する前記コンタクトピンを、前記挿通孔の前記第1壁面上に押し付けることを特徴とする電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気コネクタに関し、より具体的には、同軸ケーブルとの同軸接続を提供するために用いられる電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスと、他の電子デバイスとの間のケーブルを介した電気的接続を提供するために、レセプタクルコネクタとプラグコネクタの組み合わせが広く用いられている。また、近年の電子デバイスの処理能力の向上に伴い、ケーブルを介して、電子デバイスから他の電子デバイスに送信されるデータの量が増大している。大容量のデータを短い時間で送信するためには、ケーブルを介して高周波信号を送信する必要があり、ケーブルの信号伝送特性、特に、高周波帯域でのケーブルの信号伝送特性を向上させたいというニーズが存在している。このようなニーズに対し、高周波帯域での高い信号伝送特性を有する同軸ケーブルが広く用いられている。良く知られているように、同軸ケーブルは、信号を伝送するための芯線と、芯線を覆う内側絶縁層と、絶縁層を覆う外部導体層(編組層)と、外部導体層を覆う外側絶縁層とが同心に配置された同軸構造を有している。
【0003】
このような同軸ケーブルとの同軸接続を提供するために、同軸ケーブルの芯線と電気的に接続されるコンタクトピンと、コンタクトピンを覆う絶縁性のハウジングと、を含む電気コネクタが広く用いられている。例えば、特許文献1は、このような電気コネクタにおいて典型的に用いられる、図1に示されているハウジング10とコンタクトピン11を示している。ハウジング10は、前後方向(Z方向)に延伸する筒状部101と、筒状部101の基端部から下方に延伸する下方延伸部102と、を備えるL字状の部材である。ハウジング10の筒状部101には、筒状部101を前後方向に貫通する一対の挿通孔103が形成されている。一対の挿通孔103の間には、一対の挿通孔103を隔てるよう前後方向に延伸する壁部104が形成されている。図2は、コンタクトピン11の斜視図である。図3は、図1に示すハウジング10とコンタクトピン11を別の角度から見た斜視図である。
【0004】
図2に示されているように、コンタクトピン11は、前後方向に直線状に延伸し、ハウジング10の筒状部101内で保持される水平延伸部111と、水平延伸部111の先端部から先端側に突出し、相手側コンタクトの対応するコンタクトピンと接触する接点部112と、水平延伸部111の基端部から下方に湾曲して延伸する接続部113と、接続部113の下端部から下方に延伸する下方延伸部114と、下方延伸部114の下端部に形成され、回路基板の対応する端子に接続される端子部115と、を備えている。
【0005】
図3に示されているように、コンタクトピン11は、ハウジング10の基端側から挿通孔103内へ挿入される。挿通孔103内へコンタクトピン11の挿入が完了すると、コンタクトピン11の水平延伸部111は、ハウジング10の筒状部101内で保持される。コンタクトピン11が筒状部101内で保持された状態において、水平延伸部111と挿通孔103の内周面との間には隙間が存在している。このような隙間を挿通孔103の内周面と、コンタクトピン11との間に設けることにより、コンタクトピン11の製造時の公差によりコンタクトピン11のサイズが変動したとしても、コンタクトピン11を挿通孔103内に挿入することが可能となる。
【0006】
しかしながら、挿通孔103の内周面と、コンタクトピン11との間に隙間が存在する場合、挿通孔103内においてコンタクトピン11がガタつき、コンタクトピン11の保持位置が不安定となってしまう。これにより、ハウジング10内の一対のコンタクトピン11の離間距離を一定に保つことできず、その結果、電気コネクタの信号伝送特性、特に、高周波帯域での信号伝送特性が悪化してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開公報US2021/0408740A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、ハウジングの挿通孔内における一対のコンタクトピンの保持位置を安定化することにより、ハウジング内における一対のコンタクトピンの離間距離を一定に保ち、これにより、電気コネクタの高い信号伝送特性を維持向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、以下の(1)~(2)によって規定される本発明により達成される。
【0010】
(1)先端側から挿入される相手側コネクタと連結可能な電気コネクタであって、
一対のコンタクトピンと、
前記一対のコンタクトピンを互いに絶縁した状態で、内部に収納する絶縁性のハウジングと、を含み、
前記一対のコンタクトピンのそれぞれは、前記ハウジング内に位置し、前記相手側コネクタの挿抜方向に直線状に延伸し、互いに対向する一対の面を有する水平延伸部を備え、
前記ハウジングは、
前記相手側コネクタの前記挿抜方向に直線状に延伸し、内部に前記一対のコンタクトピンの前記水平延伸部を収納する筒状部と、
前記筒状部を前記相手側コネクタの前記挿抜方向に貫通し、前記一対のコンタクトピンの前記水平延伸部をそれぞれ挿通させるための一対の矩形状の挿通孔と、を備え、
前記一対の挿通孔のそれぞれは、前記水平延伸部の前記一対の面の一方の面と対向する第1壁面と、前記水平延伸部の前記一対の面の他方の面と対向する第2壁面と、前記第1壁面に設けられた平坦な受け部と、を備え、
前記挿通孔の前記第2壁面は、対応する前記コンタクトピンの前記水平延伸部の前記他方の面を前記挿通孔の内側に押圧し、これにより、対応する前記コンタクトピンを、前記挿通孔の前記受け部上に押し付けることを特徴とする電気コネクタ。
【0011】
(2)先端側から挿入される相手側コネクタと連結可能な電気コネクタであって、
一対のコンタクトピンと、
前記一対のコンタクトピンを互いに絶縁した状態で、内部に収納する絶縁性のハウジングと、を含み、
前記一対のコンタクトピンのそれぞれは、前記ハウジング内に位置し、前記相手側コネクタの挿抜方向に直線状に延伸し、互いに対向する一対の面を有する水平延伸部を備え、
前記ハウジングは、
前記相手側コネクタの前記挿抜方向に直線状に延伸し、内部に前記一対のコンタクトピンの前記水平延伸部を収納する筒状部と、
前記筒状部を前記相手側コネクタの前記挿抜方向に貫通し、前記一対のコンタクトピンの前記水平延伸部をそれぞれ挿通させるための一対の矩形状の挿通孔と、を備え、
前記一対の挿通孔のそれぞれは、前記水平延伸部の前記一対の面の一方の面と対向する第1壁面と、前記水平延伸部の前記一対の面の他方の面と対向する第2壁面と、を備え、
前記挿通孔の前記第2壁面は、対応する前記コンタクトピンの前記水平延伸部の前記他方の面を前記挿通孔の内側に押圧し、これにより、対応する前記コンタクトピンを、前記挿通孔の前記第1壁面上に押し付けることを特徴とする電気コネクタ。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、電気コネクタのハウジングの一対の挿通孔のそれぞれは、コンタクトピンの水平延伸部の一方の面と対向する第1壁面と、水平延伸部の他方の面と対向する第2壁面と、第1壁面上に設けられた平坦な受け部と、を備えている。シェルの挿通孔にハウジングの筒状部が挿入され、ハウジングがシェルによって保持されている状態において、挿通孔の第2壁面は、対応するコンタクトピンの水平延伸部の他方の面を押圧し、対応するコンタクトピンの水平延伸部を受け部上に押し付けている。このような構造により、一対のコンタクトピンが、ハウジングの挿通孔の内部において強固に挟持される。その結果、ハウジングの挿通孔内における一対のコンタクトピンの保持位置が安定化するため、一対のコンタクトピン間の離間距離を一定に保つことができ、これにより、電気コネクタの高い信号伝送特性を維持向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の電気コネクタにおいて典型的に用いられるハウジングとコンタクトピンを示す斜視図である。
図2図1に示すコンタクトピンの斜視図である。
図3図1に示すハウジングとコンタクトピンを別の角度から見た斜視図である。
図4】本発明の電気コネクタ、本発明の電気コネクタが搭載される回路基板、および本発明の電気コネクタと連結される相手側コネクタを示す斜視図である。
図5図4に示す電気コネクタの斜視図である。
図6図4に示す電気コネクタを別の角度から見た斜視図である。
図7図4に示す電気コネクタのハウジングの挿通孔を含むYZ平面の断面図である。
図8図4に示す電気コネクタのハウジングの挿通孔を含むXZ平面の断面図である。
図9図4に示す電気コネクタの分解斜視図である。
図10】コンタクトピンの斜視図である。
図11】コンタクトピンのYZ平面図および上側の突出部の一部拡大図である。
図12】コンタクトピンの仕掛品を示す平面図である。
図13】ハウジングの斜視図である。
図14】ハウジング内へのコンタクトピンの圧入を説明するための斜視図である。
図15A】ハウジングの挿通孔の内部を示す断面斜視図である。
図15B図15Aに示す受け部が、挿通孔の第1壁面から内側に突出しない変形例を示す断面斜視図である。
図16A】ハウジング内へのコンタクトピンの圧入開始時の状態を示すYZ平面断面図である。
図16B】ハウジング内へのコンタクトピンの圧入完了時の状態を示すYZ平面断面図である。
図16C】シェル内にハウジングが保持されている状態におけるYZ平面断面図およびコンタクトピンの一対の突出部の上側の突出部の一部拡大図である。
図17】参考形状の一対の突出部を有するコンタクトピンのYZ平面図および上側の突出部の一部拡大図である。
図18A】ハウジング内への図17に示すコンタクトピンの圧入開始時の状態を示すYZ平面断面図である。
図18B】ハウジング内への図17に示すコンタクトピンの圧入完了時の状態を示すYZ平面断面図である。
図18C】シェル内に図17に示すハウジングが保持されている状態におけるYZ平面断面図、および、図17に示すコンタクトピンの上側の突出部の一部拡大図である。
図19図19(a)は、ハウジング内へのコンタクトピンの圧入が完了した状態における、XY平面断面図の一部拡大図である。図19(b)は、シェル内にハウジングが保持されている状態におけるXY平面断面図の一部拡大図である。
図20】シェルの斜視図である。
図21】シェルを別の角度から見た斜視図である。
図22】カバーの斜視図である。
図23】カバーを別の角度から見た斜視図である。
図24】電気コネクタと相手側コネクタが連結された状態のコンタクトピンを含むYZ平面の断面図である。
図25】本発明の電気コネクタの平面図である。
図26】本発明の電気コネクタの底面図である。
図27】本発明の電気コネクタの正面図である。
図28】本発明の電気コネクタの背面図である。
図29】本発明の電気コネクタの左側面図である。
図30】本発明の電気コネクタの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電気コネクタを、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて、説明する。なお、以下で参照する各図は、本発明の説明のために用意された模式的な図である。図面に示された各構成要素の寸法(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法を反映したものではない。また、各図において、同一または対応する要素には、同じ参照番号が付されている。以下の説明において、各図のZ軸の正方向を「先端側」または「前側」といい、Z軸の負方向を「基端側」または「後側」といい、Y軸の正方向を「上側」といい、Y軸の負方向を「下側」といい、X軸の正方向を「手前側」といい、X軸の負方向を「奥側」ということがある。また、Z方向を「相手側コネクタの挿抜方向」といい、Y方向を「高さ方向」といい、X方向を「幅方向」ということがある。
【0015】
図4は、本発明の電気コネクタ、本発明の電気コネクタが搭載される回路基板、および本発明の電気コネクタと連結される相手側コネクタを示す斜視図である。図5は、図4に示す電気コネクタの斜視図である。図6は、図4に示す電気コネクタを別の角度から見た斜視図である。図7は、図4に示す電気コネクタのハウジングの挿通孔を含むYZ平面の断面図である。図8は、図4に示す電気コネクタのハウジングの挿通孔を含むXZ平面の断面図である。図9は、図4に示す電気コネクタの分解斜視図である。図10は、コンタクトピンの斜視図である。図11は、コンタクトピンのYZ平面図および上側の突出部の一部拡大図である。図12は、コンタクトピンの仕掛品を示す平面図である。図13は、ハウジングの斜視図である。図14は、ハウジング内へのコンタクトピンの圧入を説明するための斜視図である。図15Aは、ハウジングの挿通孔の内部を示す断面斜視図である。図15Bは、図15Aに示す受け部が、挿通孔の第1壁面から内側に突出しない変形例を示す断面斜視図である。図16Aは、ハウジング内へのコンタクトピンの圧入開始時の状態を示すYZ平面断面図である。図16Bは、ハウジング内へのコンタクトピンの圧入完了時の状態を示すYZ平面断面図である。図16Cは、シェル内にハウジングが保持されている状態におけるYZ平面断面図およびコンタクトピンの一対の突出部の上側の突出部の一部拡大図である。図17は、参考形状の一対の突出部を有するコンタクトピンのYZ平面図および上側の突出部の一部拡大図である。図18Aは、ハウジング内への図17に示すコンタクトピンの圧入開始時の状態を示すYZ平面断面図である。図18Bは、ハウジング内への図17に示すコンタクトピンの圧入完了時の状態を示すYZ平面断面図である。図18Cは、シェル内に図17に示すハウジングが保持されている状態におけるYZ平面断面図、および、図17に示すコンタクトピンの上側の突出部の一部拡大図である。図19(a)は、ハウジング内へのコンタクトピンの圧入が完了した状態における、XY平面断面図の一部拡大図である。図19(b)は、シェル内にハウジングが保持されている状態におけるXY平面断面図の一部拡大図である。図20は、シェルの斜視図である。図21は、シェルを別の角度から見た斜視図である。図22は、カバーの斜視図である。図23は、カバーを別の角度から見た斜視図である。図24は、電気コネクタと相手側コネクタが連結された状態のコンタクトピンを含むYZ平面の断面図である。
【0016】
図4に示されているように、本発明の電気コネクタ1は、任意のデバイス内に設けられた回路基板100上に搭載されるレセプタクルコネクタである。同軸ケーブル300の先端部に取り付けられた相手側コネクタ(プラグコネクタ)200が、先端側から電気コネクタ1内に挿入され、電気コネクタ1と相手側コネクタ200が連結されると、電気コネクタ1および相手側コネクタ200を介して、同軸ケーブル300と回路基板100との間の電気的接続が提供される。
【0017】
同軸ケーブル300は、一対の芯線(中心導体)310と、一対の芯線310をそれぞれ覆う一対の内側絶縁層320と、一対の内側絶縁層320を覆う第1の外側絶縁層330と、第1の外側絶縁層330を覆う外部導体層(編組層)340と、外部導体層340をさらに覆う第2の外側絶縁層350とが同心に配置された構造を有している。なお、図4中では省略されているが、同軸ケーブル300の他端部は、回路基板100を備えるデバイスとは別のデバイスに接続されている。そのため、電気コネクタ1と相手側コネクタ200が連結されると、同軸ケーブル300を介して、回路基板100を備えるデバイスと、別のデバイスとの間の信号通信が可能となる。典型的には、回路基板100を備えるデバイスは、自動車の動作を制御するECU(Electronic Control Unit)であり、同軸ケーブル300の他端部が接続される他のデバイスは、車載Ethernet等に用いられる車載ネットワーク通信機器、カーナビ、カーオーディオ、車載カメラ、車載GPS、車載TV、車載ラジオ等の車載デバイスである。電気コネクタ1と相手側コネクタ200を連結させることによって、2本の芯線(中心導体)310を含む同軸ケーブル300を介した車載デバイスとECUとの間の高速信号通信が可能となる。図示の形態においては、電気コネクタ1は、2本の芯線310を含む同軸ケーブル300との同軸接続を提供するための2ピンコネクタであるが、二対以上の芯線310を含む二対以上の同軸ケーブル300の同軸接続を提供するマルチピンコネクタ(例えば、4ピンコネクタ(HSDコネクタ))であってもよい。以下、2本の芯線310を含む同軸ケーブル300の同軸接続を提供する2ピンコネクタであるものとして、説明を提供する。
【0018】
図5図9、特に、図9に示されているように、電気コネクタ1は、相手側コネクタ200の対応するコンタクトピン230(図24参照)とそれぞれ接触する2つのコンタクトピン2と、2つのコンタクトピン2を保持するハウジング3と、ハウジング3を保持する金属製のシェル4と、シェル4の先端側に取り付けられたカバー5と、を含んでいる。
【0019】
2つのコンタクトピン2のそれぞれは、銅合金等の導電性材料により構成されたL字状部材である。コンタクトピン2は、電気コネクタ1と相手側コネクタ200が連結した際に、相手側コネクタ200の対応するコンタクトピン230と接触し、相手側コネクタ200と電気コネクタ1との間の電気的接続を提供する機能を有している。2つのコンタクトピン2は、ハウジング3の筒状部31に形成された一対の挿通孔33(図9参照)内にそれぞれ圧入される。図10および図11は、図9に示す2つのコンタクトピン2のうち、+X方向側に位置するコンタクトピン2を示している。なお、2つのコンタクトピン2のそれぞれは、互いに同じ構成を有しているため、以下、代表的に+X方向側に位置するコンタクトピン2の構成について詳述する。
【0020】
図10に示されているように、コンタクトピン2は、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に直線状に延伸する水平延伸部21と、水平延伸部21の先端部から先端側に直線状に延伸する接点部22と、水平延伸部21の基端部から下方に屈曲する接続部23と、接続部23の下端部から下方に直線状に延伸する下方延伸部24と、下方延伸部24の下端部から下方に突出する端子部25と、水平延伸部21の上側面および下側面(Y方向と直交する面)から、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)と直交するコンタクトピン2の高さ方向(Y方向、外側)に延伸する一対の第1の突出部26と、水平延伸部21の上側面上および下側面上であって、水平延伸部21の一対の第1の突出部26が形成されている箇所に先端側から隣接する部分にそれぞれ形成された一対の凹部27と、水平延伸部21の上側面からコンタクトピン2の高さ方向(+Y方向)に突出する第1のカット痕28aと、水平延伸部21の下側面からコンタクトピン2の高さ方向(-Y方向)に突出する第2のカット痕28bと、下方延伸部24から基端側に突出する第3のカット痕28cと、下方延伸部24から先端側に突出する第4のカット痕28dと、水平延伸部21の上側面および下側面から、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)と直交するコンタクトピン2の高さ方向(Y方向、外側)に延伸する一対の第2の突出部29と、を備えている。
【0021】
水平延伸部21は、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に直線状に延伸する板状部分である。一対のコンタクトピン2が、ハウジング3の一対の挿通孔33内にそれぞれ圧入されると、水平延伸部21は、ハウジング3の筒状部31の内側に位置する。特に、図7に示されているように、水平延伸部21は、挿通孔33内で保持されており、これにより、コンタクトピン2が、ハウジング3によって保持される。
【0022】
図10に戻り、より具体的には、水平延伸部21は、相手側コネクタ200の挿抜方向に、互いに離間して略平行に延伸し、Y方向と直交する第1面(上側面)211および第2面(下側面)212と、相手側コネクタ200の挿抜方向に、互いに離間して略平行に延伸し、かつ、第1面211および第2面212と直交する第3面(内側面)213および第4面(外側面)214と、を有している。
【0023】
接点部22は、水平延伸部21の先端部から先端側に直線状に延伸する円柱状部分である。また、図5に示されているように、コンタクトピン2がハウジング3によって保持された状態において、接点部22は、ハウジング3の筒状部31から先端側に突出し、露出する。電気コネクタ1と相手側コネクタ200が連結された際、接点部22は、相手側コネクタ200の対応するコンタクトピン230と接触し、相手側コネクタ200と電気コネクタ1との間の電気的接続が提供される。
【0024】
図10に戻り、接続部23は、水平延伸部21と下方延伸部24とを接続するL字状部分である。接続部23は、水平延伸部21の基端部から下方に屈曲している。接続部23の一方の端部(+Z方向を向く端部)が水平延伸部21の基端部と連続し、接続部23の他方の端部(-Y方向を向く端部)が下方延伸部24の上端部と連続する。下方延伸部24は、接続部23の下端部から下方に直線状に延伸する板状部分である。図7に示されているように、コンタクトピン2がハウジング3によって保持された状態において、下方延伸部24は、ハウジング3の下方延伸部32内に位置する。図10に戻り、端子部25は、下方延伸部24の下端部から下方に突出するよう形成された円錐状部分である。コンタクトピン2がハウジング3によって保持された状態において、端子部25は、コンタクトピン2から下方に延伸し、露出する。端子部25は、回路基板100の対応する端子120(図4参照)に接続される。
【0025】
一対の第1の突出部26は、水平延伸部21の第1面211および第2面212からコンタクトピン2の高さ方向(Y方向、外側)に突出する部分である。一対の第1の突出部26のそれぞれは、後述するシェル4の挿通孔43(図21参照)にハウジング3の筒状部31が挿入され、ハウジング3がシェル4によって保持されている状態において、挿通孔33の内側面によって内側に押圧され、挿通孔33内におけるコンタクトピン2の係止力を高める機能を有している。なお、図示の形態では、一対の第1の突出部26のそれぞれの厚さ(X方向の長さ)は、水平延伸部21の厚さ(X方向の長さ)と同一であるが、本発明はこれに限られない。一対の第1の突出部26のそれぞれの厚さが、水平延伸部21の厚さと異なっており、水平延伸部21の両側面と一対の第1の突出部26の両側面との間に段差が存在するような態様も、本発明の範囲内である。なお、水平延伸部21の厚さ、および、一対の第1の突出部26のそれぞれの厚さは、コンタクトピン2が圧入されるハウジング3の形状、状態等に応じて、適宜異なる値に設定してもよい。さらに、図示の形態では、水平延伸部21の第1面211および第2面212上に一対の第1の突出部26が形成されているが、第1面211または第2面212上に形成される第1の突出部26の数および位置は、これに限られず、1つまたは3つ以上の第1の突出部26が第1面211または第2面212上に形成されてもよい。
【0026】
一対の第1の突出部26のそれぞれは、外側方向(Y方向)に向かって幅(Z方向の長さ)が漸減するテーパー形状を有している。一対の第1の突出部26のそれぞれは、同様の構成を有しているので、代表的に、水平延伸部21の第1面211上に形成された上側の第1の突出部26について詳述する。なお、図11は、上側の第1の突出部26の周辺領域が拡大された一部拡大図を含んでいる。
【0027】
第1の突出部26は、第1面211に対して斜め方向に延伸する前側斜面部261と、前側斜面部261よりも基端側に位置し、第1面211に対して斜め方向に延伸する後側斜面部262と、前側斜面部261と後側斜面部262との間で直線状、かつ、相手側コネクタ200の挿抜方向に延伸する平坦部263と、前側斜面部261の基端部と平坦部263の先端部との間を接続する前側接続部264と、後側斜面部262の先端部と平坦部263の基端部との間を接続する後側接続部265と、を備えている。
【0028】
前側斜面部261は、水平延伸部21の第1面211から、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)、かつ、水平延伸部21から離間する方向に延伸する部分である。前側斜面部261は、先端側から基端側に向かって高さ(Y方向の長さ)が漸増する斜面であり、第1面211から、斜め方向(図11中の右斜め上方向)に延伸している。前側斜面部261の先端部は、第1面211に形成された後述する凹部27に連続しており、前側斜面部261の基端部は、前側接続部264を介して平坦部263の先端部に接続されている。また、前側斜面部261の基端部と平坦部263とを接続する前側接続部264の外側面は、面取りされ、曲面となっている。
【0029】
後側斜面部262は、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)、かつ、水平延伸部21に接近する方向に延伸し、水平延伸部21の第1面211に接続する部分である。後側斜面部262は、前側斜面部261よりも基端側に位置している。さらに、後側斜面部262は、先端側から基端側に向かって高さが漸減する斜面であり、斜め方向(図11中の右斜め下方向)に延伸している。後側斜面部262の先端部は、後側接続部265を介して平坦部263の基端部に接続されている。後側斜面部262の基端部は、第1面211に接続されている。また、後側斜面部262の先端部と平坦部263の基端部とを接続する後側接続部265の外側面は、面取りされ、曲面となっている。
【0030】
平坦部263は、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に沿って高さ(Y方向の長さ)が一定であり、外側面がY方向と直交する平坦面となっている部分である。平坦部263は、前側斜面部261と後側斜面部262との間に位置し、直線状、かつ、相手側コネクタ200の挿抜方向に延伸している。
【0031】
図10および図11に戻り、一対の凹部27は、水平延伸部21の第1面211または第2面212上において、一対の第1の突出部26に先端側から隣接する部分にそれぞれ形成されている。一対の凹部27は、前述のようにコンタクトピン2をハウジング3の挿通孔33内に圧入した際に、コンタクトピン2の平坦部263が挿通孔33の内側面を削ることにより発生する、後述する削り屑S(図16B参照)を収容する機能を有している。
【0032】
一対の凹部27のそれぞれは、同様の構成を有しているので、代表的に、水平延伸部21の第1面211上に形成された上側の凹部27について詳述する。凹部27は、水平延伸部21の第1面211上であって、第1の突出部26に基端側から隣接する部分に形成されている。凹部27の深さ(Y方向の長さ)および奥行き(Z方向の長さ)は、コンタクトピン2を挿通孔33内へ圧入する際に生じる削り屑Sを収容するのに十分な寸法となるように、かつ、コンタクトピン2に必要な強度を損なわない程度に適宜設定されている。また、凹部27の先端側面(+Z方向の面)と底面との接続部分は、面取りされた湾曲部となっている。同様に、凹部27の基端側面(-Z方向の面)と底面との接続部分は、面取りされた湾曲部となっている。また、凹部27の基端側面は、前側斜面部261と連続している。
【0033】
図11に示されているように、X方向から見た平面視において、前側斜面部261の凹部27の底面(水平延伸部21の第1面211)に対する第1の角度(傾き)θ1は、後側斜面部262の第1面211に対する第2の角度(傾き)θ2よりも大きい。1つの例において、第1の角度θ1は、40°から70°の範囲内であり、第2の角度θ2は、15°から39°の範囲内である。一対の第1の突出部26が形成されている箇所のコンタクトピン2のインピーダンスの低下を抑制するために第1の角度θ1および第2の角度θ2は、大きく設定されることが好ましいが、第1の角度θ1を大きく設定しすぎるとコンタクトピン2をハウジング3の挿通孔33内へ圧入する際に必要とされる圧入力が大きくなってしまう。第1の角度θ1を上述の範囲内に設定することにより、コンタクトピン2の伝送特性の大幅な低下を防止しつつ、ハウジング3の挿通孔33内へコンタクトピン2を圧入する際に必要とされる圧入力を低減させることが可能となる。
【0034】
第1のカット痕28aは、水平延伸部21の第1面211上であって、図11中の上側の第1の突出部26よりも基端側に位置する箇所から、上側(+Y方向)に突出する部分である。第2のカット痕28bは、水平延伸部21の第2面212上であって、図11中の下側の第1の突出部26よりも先端側に位置する箇所から下側(-Y方向)に突出する部分である。第3のカット痕28cは、下方延伸部24の基端面から基端側に突出する部分である。第4のカット痕28dは、下方延伸部24の先端面から先端側に突出する部分である。
【0035】
一対の第2の突出部29は、水平延伸部21の第1面211および第2面212から、外側(Y方向)にそれぞれ突出する部分である。一対の第2の突出部29のそれぞれは、同様の構成を有しているので、代表的に、図11中の上側の第2の突出部29について詳述する。
【0036】
第2の突出部29は、第2のカット痕28bが形成されている箇所よりも先端側に位置する。第2の突出部29は、外側(Y方向)に向かって幅(Z方向の長さ)が漸減するテーパー形状を有している。さらに、第2の突出部29は、シェル4の挿通孔43にハウジング3の筒状部31が挿入され、ハウジング3がシェル4によって保持されている状態において、挿通孔33の内側面と接触し、挿通孔33内におけるコンタクトピン2の係止力を高める機能を有している。挿通孔33の内側面によって一対の第1の突出部26が内側かつ先端側に押圧されて保持されることにより提供される係止力に、第2の突出部29と挿通孔33の内側面との接触によって提供される係止力も加わり、挿通孔33内におけるコンタクトピン2の基端側へのシフト、および、挿通孔33からのコンタクトピン2の離脱を、さらに確実に防止することができる。
【0037】
上述のようなコンタクトピン2は、図12に示す仕掛け品に対して切断加工を施すことにより得られる。以下、図12を参照して、コンタクトピン2の製造工程を説明する。最初に、一枚の金属板が、所定の形状に打ち抜かれて、図12に示されているような仕掛品が得られる。仕掛品の段階では、複数のコンタクトピン2が、複数のキャリア281を介して、互いに連結されている。具体的には、コンタクトピン2の水平延伸部21の第1面211と、隣接するコンタクトピン2の水平延伸部21の第2面212との間がキャリア281によって接続されている。さらに、コンタクトピン2の下方延伸部24の先端面と、隣接するコンタクトピン2の下方延伸部24の基端面との間がキャリア281によって接続されている。この状態において、図12において点線で示されている箇所に対して、それぞれカット加工を施し、複数のコンタクトピン2をキャリア281から切り離すことにより、複数のコンタクトピン2が得られる。このようなカット加工の後に、第1面211に残存するキャリア281の一部分が、第1のカット痕28aであり、第2面212に残存するキャリア281の一部分が、第2のカット痕28bである。さらに、下方延伸部24の基端面に残存するキャリア281の一部分が、第3のカット痕28cであり、下方延伸部24の先端面に残存するキャリア281の一部分が、第4のカット痕28dである。
【0038】
上述のようなコンタクトピン2は、ハウジング3の挿通孔33内に圧入され、ハウジング3によって保持される。ハウジング3は、樹脂材料(例えば、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP))等の弾性を有する絶縁性材料から構成されている。図13および図14に示されているように、ハウジング3は、相手側コネクタ200の挿抜方向に延伸する筒状部31と、筒状部31の基端部から下方に延伸する下方延伸部32と、を備えている。
【0039】
図13に示されているように、筒状部31は、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に直線状に延伸する筒状部分である。筒状部31は、Z方向から見た平面視において、角丸長方の平面形状を有している。Z方向から見た平面視において、筒状部31の幅方向(X方向)の長さは、高さ方向(Y方向)の長さよりも大きい。筒状部31の上側面および下側面は、互いに離間して、相手側コネクタ200の挿抜方向に延伸する平坦面であり、筒状部31のX方向の両側面は、互いに離間して、相手側コネクタ200の挿抜方向に延伸する曲面である。筒状部31の外径は、シェル4の本体部41に形成された挿通孔43の内径よりもわずかに小さい。
【0040】
筒状部31は、筒状部31の上側面および下側面上にそれぞれ位置し、相手側コネクタ200の挿抜方向に延伸する4つの第1の押圧リブ311と、筒状部31のX方向の両側面上にそれぞれ位置し、相手側コネクタ200の挿抜方向に延伸する一対の第2の押圧リブ312と、筒状部31を相手側コネクタ200の挿抜方向に貫通する一対の挿通孔33と、一対の挿通孔33のそれぞれの内側面上に形成された平坦な受け部34と、一対の挿通孔33の間を隔てる壁部35と、を備えている。
【0041】
4つの第1の押圧リブ311は、筒状部31の外周面から、外側に向かって突出する突出部である。4つの第1の押圧リブ311は、ハウジング3の挿通孔33内におけるコンタクトピン2の基端側へのシフトまたは挿通孔33からの離脱の防止、および、シェル4の挿通孔43からのハウジング3の離脱防止のために形成されている。4つの第1の押圧リブ311は、筒状部31の上側面および下側面であって、一対のコンタクトピン2の一対の第1の突出部26とそれぞれ対応する位置にそれぞれ形成されており、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に直線状に延伸する突出部である。4つの第1の押圧リブ311のうちの2つは、筒状部31の上側面上に位置しており、残りの2つは、筒状部31の下側面上に位置している。上側の2つの第1の押圧リブ311は、筒状部31の一対の挿通孔33を介して、下側の2つの第1の押圧リブ311にそれぞれ対向している。上側の2つの第1の押圧リブ311は、筒状部31の上側面において、互いに離間して設けられている。下側の2つの第1の押圧リブ311は、筒状部31の下側面上において、互いに離間して設けられている。
【0042】
なお、図示の形態では、4つの第1の押圧リブ311は、筒状部31の上側面上に2つ、下側面上に2つが上下対称に形成されているが、本発明はこれに限られない。例えば、1つ、2つ、3つ、または、5つ以上の第1の押圧リブ311が、筒状部31の外周面上に形成されてもよい。
【0043】
4つの第1の押圧リブ311のそれぞれは、筒状部31の先端部に位置する低背部311aと、低背部311aから外側に向かって延伸する傾斜部311bと、傾斜部311bから基端側に延伸する高背部311cと、を備えている。
【0044】
低背部311aは、筒状部31の先端部に位置し、先端部から基端側に向かって一定の高さで延伸する突出部である。ハウジング3がシェル4によって保持されている状態において、低背部311aがシェル4の挿通孔43の内周面と接触しないよう、低背部311aの高さ(Y方向の長さ)が設定されている。傾斜部311bは、低背部311aと高背部311cの間に位置し、先端側から基端側に向かって高さが漸増するよう形成されている。さらに、傾斜部311bの先端部は、低背部311aの基端部と連続し、傾斜部311bの基端部は、高背部311cの先端部と連続している。ハウジング3の筒状部31をシェル4の挿通孔43内に挿入する際、シェル4の挿通孔43の内周面が傾斜部311bの外側面(Y方向と直交する面)上をスライドし、挿通孔43内へのハウジング3の筒状部31の挿入がガイドされる。
【0045】
高背部311cは、傾斜部311bよりも基端側に位置し、傾斜部311bの基端部から基端側に向かって一定の高さで延伸し、外側に向かって突出する部分である。高背部311cは、ハウジング3がシェル4によって保持されている状態において、シェル4の挿通孔43の内周面と接触し、ハウジング3の筒状部31が挿通孔43から離脱することを防止する。さらに、高背部311cは、挿通孔43の内周面と接触し、挿通孔43の内周面によって内側に押圧される。高背部311cが内側に押圧されると、筒状部31の高背部311cが形成されている部分が内側に弾性変形する。これにより、挿通孔33の内側面とコンタクトピン2を接触させ、挿通孔33内におけるコンタクトピン2のシフトおよび挿通孔33からの離脱を防止することができる。また、筒状部31の下側面上に形成されている2つの第1の押圧リブ311の高背部311cの基端部は、下方延伸部32の前板321の先端面に接続されている。
【0046】
高背部311cの高さ(Y方向への突出量)は、低背部311aの高さよりも大きい。また、ハウジング3に外力が印加されていない自然状態において、筒状部31の上側面上の高背部311cの外側面と、筒状部31の下側面上の高背部311cの外側面との間のY方向の離間距離は、シェル4の挿通孔43のY方向(高さ方向)の内径よりもわずかに大きい。このような構成により、筒状部31を挿通孔43内に挿入する際、高背部312cの外側面が、シェル4の挿通孔43の内周面と接触し、内側に押圧されるため、ハウジング3がシェル4によって保持される。さらに、ハウジング3が弾性を有する絶縁性材料から構成されているため、筒状部31は、内側に向けて弾性変形可能である。そのため、ハウジング3を挿通孔43内に挿入する際、挿通孔43の内周面によって4つの第1の押圧リブ311の高背部311cの外側面が、挿通孔43の内周面によって内側に押圧され、この結果、筒状部31の高背部311cが形成されている部分が内側に弾性変形する。
【0047】
筒状部31の高背部311cが形成されている部分が内側に弾性変形することにより、図16Cに示されているように、挿通孔33の内側面が、コンタクトピン2の一対の第1の突出部26の後側斜面部262の外側面(基端面)と面接触する。その結果、挿通孔33の内側面が、コンタクトピン2の一対の第1の突出部26の後側斜面部262を、基端側から斜め内側方向(図16Cの矢印A方向)に押圧するため、コンタクトピン2が、挿通孔33内で保持される。
【0048】
図13に戻り、4つの第1の押圧リブ311のそれぞれの位置および相手側コネクタ200の挿抜方向への延伸長は、コンタクトピン2の後側斜面部262にハウジング3の挿通孔33の内側面が基端側から面接触し、コンタクトピン2をハウジング3の挿通孔33内で保持するのに十分なだけ、挿通孔33の内側面を内側に弾性変形させることが可能となるように適宜設定されている。
【0049】
一対の第2の押圧リブ312は、シェル4の挿通孔43にハウジング3の筒状部31が挿入された状態において、ハウジング3の挿通孔33内部におけるコンタクトピン2の基端側へのシフトまたは離脱の防止、および、挿通孔43からの筒状部31の離脱防止のために形成されている。さらに、一対の第2の押圧リブ312は、ハウジング3の一対の挿通孔33内にそれぞれ保持された一対のコンタクトピン2間の幅方向(X方向)の離間距離を安定的に一定に保つことにより、電気コネクタ1の信号伝送特性を向上させるために形成されている。
【0050】
図13に示されているように、一対の第2の押圧リブ312は、互いに離間しながら相手側コネクタ200の挿抜方向に直線状に延伸する突出部である。一対の第2の押圧リブ312は、一対の挿通孔33および一対の挿通孔33の間に形成された壁部35を介して180度の角度間隔で対向している。一対の第2の押圧リブ312は、筒状部31の両側面(X方向の両側面)上にそれぞれ形成されている。
【0051】
一対の第2の押圧リブ312のそれぞれは、筒状部31の先端部に位置する低背部312aと、低背部312aから外側に向かって延伸する傾斜部312bと、傾斜部312bから基端側に延伸する高背部312cと、を備えている。
【0052】
低背部312aは、筒状部31の先端部に位置し、先端部から基端側に一定の高さで延伸する突出部である。ハウジング3がシェル4によって保持されている状態において、低背部312aがシェル4の挿通孔43の内周面と接触しないよう、低背部312aの高さ(X方向の長さ)が設定されている。傾斜部312bは、低背部312aと高背部312cの間に位置し、先端側から基端側に向かって高さが漸増するよう形成されている。さらに、傾斜部312bの先端部は、低背部312aの基端部と連続し、傾斜部312bの基端部は、高背部312cの先端部と連続している。ハウジング3の筒状部31を挿通孔43内に挿入する際、挿通孔43の内周面が傾斜部312bの外側面(X方向と直交する面)上をスライドし、挿通孔43内への筒状部31の挿入がガイドされる。
【0053】
高背部312cは、傾斜部312bよりも基端側に位置し、傾斜部312bの基端部から基端側に向かって一定の高さで延伸し、外側に向かって突出する部分である。高背部312cは、ハウジング3がシェル4によって保持されている状態において、シェル4の挿通孔43の内周面と接触し、ハウジング3の筒状部31が挿通孔43から離脱することを防止する。さらに、高背部312cは、挿通孔43の内周面と接触し、挿通孔43の内周面によって内側に押圧される。挿通孔43の内周面によって高背部312cが内側に押圧されると、筒状部31の高背部312cが形成されている部分が内側に弾性変形する。
【0054】
高背部312cの高さ(X方向の長さ)は、低背部312aの高さよりも大きい。また、ハウジング3に外力が印加されていない自然状態において、筒状部31の幅方向(X方向)の外径と一対の高背部312cの高さ(突出量)の合計の長さは、シェル4の挿通孔43の幅方向の内径よりもわずかに大きい。このような構成により、挿通孔43に筒状部31が挿入されると、高背部312cの外側面が挿通孔43の内周面と接触し、内側に押圧されるため、ハウジング3がシェル4によって保持される。さらに、前述のように、筒状部31は、内側に向けて弾性変形可能である。そのため、ハウジング3を挿通孔43内に挿入する際、高背部312cの外側面が挿通孔43の内周面と接触し、内側に押圧され、筒状部31の高背部312cが形成されている箇所が内側に弾性変形する。
【0055】
なお、図示の形態では、一対の第2の押圧リブ312のそれぞれは、ハウジング3の筒状部31の両側面上にそれぞれ形成されているが、一対の第2の押圧リブ312の数および位置は、これに限られない。1つまたは3つ以上の第2の押圧リブ312が筒状部31の両側部上に形成されているような態様も、本発明の範囲内である。
【0056】
下方延伸部32は、コンタクトピン2をハウジング3で保持した際に、コンタクトピン2の下方延伸部24を内部において収納する部分である。図13および図14に示されているように、下方延伸部32は、筒状部31の基端部の下側部分から下方に延伸する前板321と、前板321の幅方向(X方向)の両端部から基端側に延伸する一対の側壁部322と、前板321の先端面上の上側部、かつ、筒状部31の基端部の下側部分と隣接する箇所に形成された第1の切り欠き部323と、一対の側壁部322の間であって、前板321の幅方向の中心から基端側に一対の側壁部322とそれぞれ離間しながら延伸する中央壁部324と、含む。
【0057】
前板321は、筒状部31の基端部の下側部分から下方に鉛直に延伸する板状部分である。図7に示されているように、基端側からシェル4の挿通孔43内へのハウジング3の筒状部31の挿入が完了すると、前板321の先端面は、シェル4の本体部41と当接する。
【0058】
図13に示されているように、第1の切り欠き部323は、前板321の先端面上の上側部であって、かつ、筒状部31の基端部の下側部分と隣接する箇所に、前板321の幅方向(X方向)に沿って、形成されている。第1の切り欠き部323は、シェル4の挿通孔43内にハウジング3の筒状部31を挿入した際に、挿通孔43の基端側のエッジ部414(図21参照)の逃げ部としての機能を有する凹部である。
【0059】
図7に示されているように、第1の切り欠き部323は、シェル4のエッジ部414と、間隙を介して離間している。シェル4の本体部41の形状の製造時のばらつきや、部品の公差を考慮して、ハウジング3の前板321に第1の切り欠き部323を形成することにより、シェル4のエッジ部414が前板321に干渉することを防止し、本体部41と前板321の先端面とを密着させることができる。このような構成により、シェル4内におけるハウジング3のガタつきを防止することができる。
【0060】
図7および図14に示されているように、前板321は、前板321の基端面上に形成された当接部325と、前板321の基端面上であって、かつ、当接部325の下側に形成された第2の切り欠き部326と、を有している。当接部325は、挿通孔33の下側面の基端部から下方に延伸する平坦部分である。コンタクトピン2をハウジング3の挿通孔33内へ圧入する際に、コンタクトピン2の下方延伸部24の先端面が当接部325の基端面に当接すると、コンタクトピン2の挿通孔33内への圧入が完了する。
【0061】
第2の切り欠き部326は、当接部325の下側部から下方に延伸する平坦部分である。さらに、第2の切り欠き部326は、コンタクトピン2の第4のカット痕28dと対応する位置に位置している。図7に示されているように、第2の切り欠き部326の基端面は、当接部325の基端面と比較して、第4のカット痕28dの下方延伸部24の先端方向への突出量よりも先端側に位置している。そのため、コンタクトピン2の圧入が完了した状態において、当接部325の基端面が、下方延伸部24の先端面と当接し、第2の切り欠き部326の基端面は、第4のカット痕28dの先端面と間隙を介して対向しており、第4のカット痕28dの先端面と接触しない。第2の切り欠き部326の基端面は、当接部325の基端面よりも先端側に位置するため、このような第2の切り欠き部326を前板321の基端面上に形成することにより、第4のカット痕28dが、前板321(第2の切り欠き部326)に干渉することを防止することができる。このような第2の切り欠き部326を前板321の基端面上に形成しない場合、コンタクトピン2のハウジング3の挿通孔33内への圧入が完了した状態において、第4のカット痕28dの先端面が前板321の基端面に接触してしまい、当接部325の基端面とコンタクトピン2の下方延伸部24の先端面が当接しない(密着しない)。このような場合、ハウジング3内におけるコンタクトピン2の保持が不安定になり、ハウジング3内におけるコンタクトピン2のガタつきが発生しまう。本発明においては、第2の切り欠き部326が前板321の基端面上に形成されているため、当接部325の基端面が、コンタクトピン2の下方延伸部24の先端面と密着する。これにより、ハウジング3内におけるコンタクトピン2のガタつきを防止することができる。
【0062】
図13および図14に示されているように、一対の側壁部322は、前板321の幅方向(X方向)の両端部から基端側に延伸する板状部分である。図14に示されているように、前板321の基端面(当接部325および第2の切り欠き部326)と一対の側壁部322の内側面および中央壁部324の外側面によって、一対のコンタクトピン2のそれぞれの下方延伸部24を収納する2つの内部空間が規定される。一対のコンタクトピン2をハウジング3によって保持した際、一対のコンタクトピン2のそれぞれの下方延伸部24が、ハウジング3の下方延伸部32の2つの内部空間内にそれぞれ位置する。中央壁部324は、前板321の幅方向(X方向)の中心から基端側に延伸する板状部分である。中央壁部324は、一対の側壁部322の間に位置し、一対の側壁部322の双方と間隙を介して対向している。中央壁部324は、前述の2つの内部空間を隔てている。
【0063】
図13に戻り、一対の挿通孔33は、幅方向(X方向)に並列しており、壁部35を介して互いに離間して相手側コネクタ200の挿抜方向に延伸している。一対の挿通孔33のそれぞれは、筒状部31を相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に貫通している。前述したように、一対の挿通孔33内に一対のコンタクトピン2がそれぞれ圧入される。挿通孔33は、コンタクトピン2の水平延伸部21に対応した形状を有しており、Z方向から見た平面視において、略矩形状の平面形状を有している。
【0064】
図7および図8に示されているように、コンタクトピン2の水平延伸部21が、挿通孔33内で保持される。挿通孔33は、X方向に対して直交する平坦面である第1壁面(内側壁面)331と、第1壁面331に対向する平坦面である第2壁面(外側壁面)332と、を有している。また、図19(a)に示されているように、水平延伸部21が挿通孔33内に収納された状態において、第1壁面331は、水平延伸部21の第3面213と対向し、第2壁面332は、水平延伸部21の第4面214と対向する。
【0065】
図15Aは、挿通孔33の第1壁面331上に形成された平坦な受け部34を示している。受け部34は、第1壁面331上に形成された平坦な部分である。受け部34は、第1壁面331から挿通孔33の内側(X方向)に向かって突出し、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に直線状に延伸している。受け部34は、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)からの平面視において台形の平面形状を有している。受け部34は、コンタクトピン2の水平延伸部21の第3面213と対向し、幅(X方向への突出量)が一定の平坦部341と、平坦部341のY方向の両端部から、挿通孔33の第1壁面331に向かって、平坦部341および第1壁面331に対して斜め方向に延伸する一対の脚部342を有している。一対の脚部342のそれぞれは、平坦部341のY方向の両端部に形成され、平坦部341から第1壁面331に向かって傾斜する傾斜部である。
【0066】
なお、図示の形態では、第1壁面331上に、第1壁面331から挿通孔33の内側に向けて突出する受け部34が形成されているが、受け部34の形態はこれに限られない。例えば、図15Bに示されているように、受け部34が、一対の脚部342を有しておらず、平坦部341と、挿通孔33の第1壁面331とが同一平面上に位置していてもよい。なお、図15B中に示されている点線部分が、平坦部341である。この場合、第1壁面331のコンタクトピン2の水平延伸部21の第3面213と対向する部分が受け部34の平坦部341として機能する。このような、受け部34が第1壁面331から突出していないような態様も、本発明の範囲内である。
【0067】
図13に戻り、壁部35は、一対の挿通孔33の第1壁面331の間に位置している。壁部35は、筒状部31の内部において、幅方向において隣り合う挿通孔33を隔てるよう、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に沿って直線上に延伸する板状部分である。
【0068】
図14に示されているように、このような構成を有するハウジング3の一対の挿通孔33内に、基端側から一対のコンタクトピン2がそれぞれ圧入される。次に、図16A図16Cを参照して、コンタクトピン2の一対の第1の突出部26と、挿通孔33の内側面との接触による、挿通孔33内でのコンタクトピン2の係止について説明する。
【0069】
前述のように、X方向から見た平面視において、コンタクトピン2の一対の第1の突出部26の平坦部263の外側面間のY方向の離間距離は、外力が印加されていない自然状態におけるハウジング3の挿通孔33のY方向の長さよりも大きい。そのため、図16Aに示されているように、一対の第1の突出部26の平坦部263の先端部が、挿通孔33の内側面と接触する。
【0070】
図16A中の矢印は、挿通孔33内におけるコンタクトピン2の進行方向を示しており、コンタクトピン2を挿通孔33内に圧入する際に、一対の第1の突出部26の平坦部263の先端部が、挿通孔33の内側面と接触し、挿通孔33の内側面を削りながら、挿通孔33内を図16Aの矢印方向に前進する。図16Bは、挿通孔33内へのコンタクトピン2の圧入が完了した状態を示している。
【0071】
コンタクトピン2の平坦部263がハウジング3の挿通孔33の内側面を削ることにより、削り屑Sが発生する。このような削り屑Sが挿通孔33内に散乱し、コンタクトピン2の水平延伸部21の表面にランダムに付着している場合、挿通孔33内におけるコンタクトピン2の保持位置および保持姿勢に変動が生じ、挿通孔33内におけるコンタクトピン2の保持位置および保持姿勢を安定化させることが困難となる。挿通孔33内におけるコンタクトピン2の保持位置および保持姿勢が変動すると、ハウジング3によって保持されている2つのコンタクトピン2間の離間距離が不安定になり、電気コネクタ1の信号伝送特性、特に、高周波帯域での信号伝送特性が低下してしまうという問題がある。このような問題に対応するため、本発明の電気コネクタ1においては、コンタクトピン2の水平延伸部21に一対の凹部27が形成されている。
【0072】
図16Bに示されているように、削り屑Sは、一対の平坦部263に先端側から隣接するよう形成された一対の凹部27内に収容される。このため、削り屑Sが挿通孔33内に散乱せず、水平延伸部21の表面にランダムに付着しない。このような構成により、挿通孔33内におけるコンタクトピン2の保持位置および保持姿勢を安定化させることができる。この結果、ハウジング3によって保持されている2つのコンタクトピン2間の離間距離を安定化させることができ、電気コネクタ1の信号伝送特性の低下、特に、高周波帯域での信号伝送特性の低下を防止することができる。
【0073】
また、図16Bに示されているコンタクトピン2が挿通孔33内に圧入された状態の後、コンタクトピン2を内部に収納する筒状部31が、シェル4の挿通孔43内に挿入され、図16Cに示す状態に移行する。挿通孔43に筒状部31が挿入されると、筒状部31の4つの第1の押圧リブ311が挿通孔43の内周面によって内側に押圧され、ハウジング3がシェル4によって保持される。また、筒状部31の4つの第1の押圧リブ311が形成されている箇所が内側に変形することから、挿通孔33の内側面によってコンタクトピン2が外側から押圧され、挿通孔33内においてコンタクトピン2が保持される。
【0074】
また、の4つの第1の押圧リブ311がシェル4の挿通孔43の内側面によって押圧されると、4つの第1の押圧リブ311が形成されている部分が内側に弾性変形し、挿通孔33の内側面が、コンタクトピン2の一対の第1の突出部26の後側斜面部262および後側接続部265に対して面接触する。その結果、挿通孔33の内側面が、後側斜面部262および後側接続部265を基端側から斜め内側方向(図16C中の矢印A方向)に押圧し、コンタクトピン2が挿通孔33内で保持される。
【0075】
このような構成により、ハウジング3の挿通孔33内におけるコンタクトピン2の係止力を高めることができる。このため、コンタクトピン2に対して基端側(-Z方向)への強い力が印加された場合であっても、コンタクトピン2の後側斜面部262および後側接続部265が、挿通孔33の内側面によって基端側から斜め内側方向に支持されているので、挿通孔33内におけるコンタクトピン2の基端側へのシフトまたは挿通孔33からの離脱を確実に防止することができる。また、後側斜面部262および後側接続部265が、挿通孔33の内側面に面接触するので、後側斜面部262および後側接続部265と挿通孔33の内側面との間の接触面積を大きくすることができる。このため、コンタクトピン2に対して基端側(-Z方向)への強い力が印加された場合に、挿通孔33の内側面に印加される単位面積当たりの力を低減することができ、挿通孔33の内側面が、後側斜面部262および後側接続部265によって削られてしまうことを防止することができる。
【0076】
このように、発明の電気コネクタ1のコンタクトピン2は、上述のような構成の第1の突出部26を備えるよう構成されている。このような構成の第1の突出部26をコンタクトピン2の水平延伸部21に形成することの利点を、図17に示す参考形状の第1の突出部26´を備えるコンタクトピン2´との比較により説明する。
【0077】
図17は、参考形状の一対の第1の突出部26´を有するコンタクトピン2´のYZ平面図および上側の第1の突出部26´の一部拡大図である。図17に示すコンタクトピン2´は、第1の突出部26´の形状が、前述した第1の突出部26の形状と異なる点を除き、図10および図11を参照して詳述したコンタクトピン2と同様の構成を有している。一対の第1の突出部26´のそれぞれは、同様の構成を有しているので、代表的に、図17中の上側の第1の突出部26´について詳述する。
【0078】
第1の突出部26´は、水平延伸部21の第1面211上から、図17中の右斜め上方向に延伸する前側斜面部261と、前側斜面部261よりも基端側であって、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に対して直交する平坦面である基端側壁部262´と、前側斜面部261と基端側壁部262´との間で直線状、かつ、相手側コネクタ200の挿抜方向に延伸する平坦部263と、前側斜面部261の基端部と平坦部263の先端部とを接続する前側接続部264と、基端側壁部262´の上端部と平坦部263の基端部とを接続する角部265´と、を有している。
【0079】
図17に示されている前側斜面部261、平坦部263、および、前側接続部264は、図10および図11を参照して詳述した前側斜面部261、平坦部263、および、前側接続部264と同様の形状、位置、構成であるため説明を省略する。
【0080】
基端側壁部262´は、水平延伸部21の第1面211から上側(+Y方向)に向かって直線状に延伸し、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に対して直交する平坦な壁部である。基端側壁部262´は、平坦部263よりも基端側に位置し、角部265´を介して平坦部263の基端部に接続されている。角部265´は、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に対して直交する基端側壁部262´の外側面と、高さ方向に直交する方向に延伸する平坦部263の外側面との交差によって形成され、約90度の角度を有している。
【0081】
図18A図18Cは、図16A図16Cを参照して説明したコンタクトピン2のハウジング3の挿通孔33での係止と同様に、図17を参照して説明した参考形状の一対の第1の突出部26´を有するコンタクトピン2´の挿通孔33内での係止を説明するための図である。図18A中の矢印は、挿通孔33内におけるコンタクトピン2´の進行方向を示している。
【0082】
図18Aに示されているように、コンタクトピン2´をハウジング3の挿通孔33内に圧入する際、コンタクトピン2´の一対の第1の突出部26´の平坦部263が、挿通孔33の内側面に接触する。さらに、コンタクトピン2´が挿通孔33内に圧入される際に、平坦部263の先端部が、挿通孔33の内側面と接触し、挿通孔33の内側面を削りながら、挿通孔33内を前進する(図18Aの矢印方向)。図18Bは、挿通孔33内へのコンタクトピン2´の圧入が完了した状態を示している。
【0083】
さらに、コンタクトピン2´が挿通孔33内に圧入された後、コンタクトピン2´を内部に収納するハウジング3の筒状部31が、シェル4の挿通孔43内に挿入され、図18Cに示す状態に移行する。シェル4の挿通孔43にハウジング3の筒状部31が挿入されると、図18Cに示されているように、シェル4の挿通孔43の内周面によって、ハウジング3の4つの第1の押圧リブ311が押圧される。これにより、4つの第1の押圧リブ311が形成されている部分が内側に弾性変形し、一対の第1の突出部26´の角部265´および基端側壁部262´が、挿通孔33の内側面と接触する。その結果、挿通孔33の内側面は、一対の第1の突出部26の角部265´および基端側壁部262´を基端側から斜め内側方向(図18Cの矢印B方向)に押圧し、コンタクトピン2´が挿通孔33内に保持される。このような構成により、挿通孔33内にコンタクトピン2´を係止することができる。
【0084】
さらに、コンタクトピン2´に対して基端側(-Z方向)に力が印加された場合には、角部265´が、ハウジング3の挿通孔33の内側面に引掛かかるため、挿通孔33内におけるコンタクトピン2´の基端側へのシフトおよび挿通孔33からの離脱を防止することができる。
【0085】
しかしながら、コンタクトピン2´のような構成では、コンタクトピン2´の基端側壁部262´および角部265´とハウジング3の挿通孔33との間の接触面積が、図16Cに示されている様態と比較して小さい。そのため、コンタクトピン2´に対して基端側(-Z方向)に強い力が印加された場合、基端側壁部262´および角部265´と挿通孔33の内側面との接触箇所に力が集中し、挿通孔33の内側面が基端側壁部262´および角部265´により削られてしまう。その結果、コンタクトピン2´を挿通孔33内に係止することができず、挿通孔33内において、コンタクトピン2´が基端側にシフトしてしまう問題、さらには、コンタクトピン2´が、挿通孔33内から離脱してしまうという問題が生じる。
【0086】
上述の問題に鑑みて、図10および図11に示された一対の第1の突出部26のそれぞれは、基端部に後側斜面部262を備え、さらに、平坦部263と後側斜面部262とを接続する後側接続部265の外側面が曲面となっている。このような構成により、シェル4の挿通孔43にハウジング3の筒状部31が挿入され、ハウジング3がシェル4によって保持されている状態において、図16Cに示されているように、ハウジング3の挿通孔33の内側面と後側斜面部262および後側接続部265とが面接触するため、挿通孔33の内側面と後側斜面部262および後側接続部265との間の接触面積が大きい。そのため、図17を参照して説明した参考形状の突出部26´を備えるコンタクトピン2´を用いた場合に生じる、前述のような挿通孔33の内側面が基端側壁部262´および角部265´により削られてしまうという問題の発生を防止することができる。
【0087】
次に、図19を参照して、ハウジング3の挿通孔33内での幅方向(X方向)からのコンタクトピン2の挟持による、挿通孔33内でのハウジング3の係止について詳述する。図19(a)に示されているように、コンタクトピン2の公差を加味して、ハウジング3の挿通孔33の幅(X方向の長さ)は、コンタクトピン2の幅より広く設定されているため、挿通孔33にコンタクトピン2を圧入した段階では、コンタクトピン2と挿通孔33の第1壁面331および第2壁面332との間に隙間がある。より具体的には、コンタクトピン2の第3面213と挿通孔33の第1壁面331との間、および、コンタクトピン2の第4面214と挿通孔33の第2壁面332との間には隙間が存在している。このような隙間を挿通孔33の第1壁面331および第2壁面332と、コンタクトピン2との間に設けることにより、コンタクトピン2の製造時に公差によりコンタクトピン2のサイズが変動したとしても、確実に、コンタクトピン2を挿通孔33内に圧入することが可能となる。一方、挿通孔33の第1壁面331および第2壁面332と、コンタクトピン2との間に隙間が存在する場合、挿通孔33内においてコンタクトピン2がガタつき、コンタクトピン2のX方向における保持位置が不安定となってしまうという問題がある。
【0088】
受け部34の平坦部341は、挿通孔33の第1壁面331から内側に向かって突出し、コンタクトピン2の第3面213と接触し、コンタクトピン2を内側から支持する。さらに、図19(b)に示されているように、シェル4の挿通孔43内にハウジング3の筒状部31が挿入されると、一対の第2の押圧リブ312の高背部312cの外側面(X方向と直交する面)が挿通孔43の内周面と接触し、内側方向に押圧され、筒状部31の高背部312cが形成されている部分が内側に弾性変形する。
【0089】
筒状部31の高背部311cが形成されている部分が内側に弾性変形すると、挿通孔33の第2壁面332であって、高背部312cが形成されている部分が、内側に弾性変形する。この結果、挿通孔33の第2壁面332がコンタクトピン2の第4面214と外側から接触し、コンタクトピン2を内側に押圧する。このような構成により、コンタクトピン2の水平延伸部21は、挿通孔33の第1壁面331上に形成された受け部34の平坦部341上に押し付けられる。これにより、コンタクトピン2の水平延伸部21がハウジング3の受け部34と第2壁面332により強固に挟持される。
【0090】
このような構成により、電気コネクタ1が組み立てられた後におけるコンタクトピン2のX方向のガタつきを防止することができるため、ハウジング3の挿通孔33におけるコンタクトピン2の位置決めを正確に実行することができ、これにより、一対のコンタクトピン2のX方向の離間距離を確実に一定に保つことができる。一対のコンタクトピン2のX方向の離間距離を一定に保つことにより、電気コネクタ1の伝送特性を安定させることができる。さらに、コンタクトピン2の水平延伸部21は、挿通孔33内において挟持されるため、シェル4の挿通孔43にハウジング3の筒状部31が挿入された状態において、ハウジング3の挿通孔33内におけるコンタクトピン2の係止力を高めることができ、コンタクトピン2のハウジング3からの後側へのシフトまたは離脱を防止する効果を得ることができる。
【0091】
図9に戻り、シェル4は、電気コネクタ1の各コンポーネントを収納するハウジングとしての機能と、回路基板100上のグランド端子110との間を電気的に接続する電気経路としての機能を有する。図20および図21に示されているように、シェル4は、金属材料により構成された箱状部材である。
【0092】
シェル4は、前板411と、一対の側壁412と、天板413とから構成される本体部41と、本体部41の前板411の先端面上から先端側に延伸する筒状部42と、本体部41の前板411の先端面上であって、筒状部42の基端部の上側部分および下側部分に隣接する箇所に形成された位置決め凸部421と、本体部41の前板411を貫通する挿通孔43と、本体部41の下端部から下方に延伸する4つのグランド端子44と、本体部41の一対の側壁412のそれぞれの上に互いに離間してZ方向に延伸するよう形成された一対の壁部45と、一対の側壁412のそれぞれの外側面上に形成されたカバー受け部46と、カバー受け部46の基端部に形成された係合凹部47と、カバー受け部46と係合凹部47とを隔てる隔壁48と、を備えている。
【0093】
本体部41は、前板411と、前板411の幅方向の端部から基端側に延伸する一対の側壁412と、前板411の上端部から基端側に延伸する天板413と、を含み、基端側および下側に開放する箱状形状を有している。前板411、一対の側壁412、および天板413の内側面によって規定される本体部41の内部空間内に、電気コネクタ1のコンポーネントが収納される。
【0094】
筒状部42は、本体部41の前板411の先端面から先端側に突出するよう形成されている筒状部材であり、挿通孔43と連通している。筒状部42は、ハウジング3の筒状部31を外側から覆う外部導体として機能する。また、電気コネクタ1に相手側コネクタ200が連結された際、筒状部42は、相手側コネクタ200の対応するアウターコンタクト240(図24参照)とそれぞれ接触し、電気コネクタ1と相手側コネクタ200のグランド電位を等しくする。
【0095】
図20に示されているように、位置決め凸部421は、本体部41の前板411の先端面から先端側に突出し、かつ、筒状部42の基端部の上側面および下側面から外側(Y方向)に延伸するよう形成されている。位置決め凸部421の上端面は、天板413の上側面と同一平面上に位置している。位置決め凸部421は、シェル4に対するカバー5の位置決めを実行するために設けられている。位置決め凸部421は、後述するカバー5の一対の位置決め凹部52(図23参照)に対応する位置および形状で形成されている。
【0096】
挿通孔43は、本体部41の前板411を、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に貫通するよう形成されている。さらに、挿通孔43の内径の幅(X方向の長さ)は、挿通孔43の内径の高さ(Y方向の長さ)よりも大きく、ハウジング3の筒状部31の角丸長方の平面形状と対応している。
【0097】
図21に示されているように、挿通孔43の内側面の上側部分は、天板413の内側面と連続しており、挿通孔43の内側面の両側部分(X方向の部分)は、一対の側壁412の内側面とそれぞれ連続している。挿通孔43は、挿通孔43の内側面の上側部分に形成され、ハウジング3の4つの第1の押圧リブ311の上側2つをそれぞれガイドするための2つの第1のガイド部431と、挿通孔43の内側面の両側部分に形成された、ハウジング3の一対の第2の押圧リブ312をそれぞれガイドするための一対の第2のガイド部432と、を備えている。
【0098】
2つの第1のガイド部431は、天板413の内側面上に位置しており、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に直線状に延伸するよう形成された凹部である。2つの第1のガイド部431は、筒状部31の外周面上に形成された4つの第1の押圧リブ311のうちの上側2つと対応する位置に形成されている。ハウジング3の筒状部31が、本体部41の基端側から、本体部41の内側に挿入される際、4つの第1の押圧リブ311のうちの上側2つが、それぞれ2つの第1のガイド部431内に挿入される。
【0099】
一対の第2のガイド部432は、本体部41の一対の側壁412のそれぞれの内側面上に位置しており、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に直線状に延伸するよう形成された凹部である。一対の第2のガイド部432は、筒状部31の外周面上に形成された一対の第2の押圧リブ312と対応する位置に形成されている。ハウジング3の筒状部31が、本体部41の基端側から、本体部41の内側に挿入される際、一対の第2の押圧リブ312が、一対の第2のガイド部432内にそれぞれ挿入される。このような構成により、シェル4内部へのハウジング3の挿入がガイドされる。
【0100】
また、図16Cに示されているように、ハウジング3の筒状部31をシェル4の挿通孔43内に挿入した際、挿通孔43の内周面によって、ハウジング3の4つの第1の押圧リブ311の高背部311cの外側面が内側に押圧され、筒状部31の高背部312cが形成されている部分が内側に弾性変形する。
【0101】
さらに、図19(b)に示されているように、ハウジング3の筒状部31をシェル4の挿通孔43内に挿入した際、挿通孔43の内周面によって、ハウジング3の一対の第2の押圧リブ312の高背部312cの外側面が内側に押圧され、筒状部31の高背部312cが形成されている部分が内側に弾性変形する。
【0102】
図20および図21に戻り、4つのグランド端子44は、回路基板100の対応するグランド端子110(図4参照)にそれぞれ接続される。シェル4は、グランド端子44を介して、グランド端子110に電気的に接続される。
【0103】
一対の壁部45は、本体部41の一対の側壁412上に、カバー5の一対の突出片54をそれぞれ受けるための一対のカバー受け部46を形成するために設けられている。一対の壁部45の一方は、一対の側壁412のそれぞれの上側(+Y方向)に形成され、他方は、一対の側壁412のそれぞれの下側(-Y方向)に形成され、一対のカバー受け部46のそれぞれを介して互いに対向している。一対の壁部45のそれぞれの内側面は、隔壁48によって接続され、カバー受け部46の基端面を規定している。一対の壁部45のそれぞれは、側壁412の外側面上の先端部から基端側に延伸し、先端側から基端側に向かって幅(Y方向の長さ)が漸増している。一対の壁部45のそれぞれの内側面(Y方向の内側面)は、先端側から基端側の隔壁48に向かって傾斜する平坦な斜面となっている。
【0104】
一対のカバー受け部46のそれぞれは、本体部41の一対の側壁412の外側面上であって、一対の壁部45の間に形成されており、カバー5の一対の突出片54をそれぞれ受ける機能を有している。カバー受け部46は、本体部41の側壁412の外側面と、一対の壁部45の内側面(Y方向の内側面)と、隔壁48の先端面とによって規定されている。カバー受け部46のY方向の開口幅は、先端側から基端側に向かって漸減している。このような構成により、シェル4に対するカバー5の取り付けをガイドすることができる。
【0105】
係合凹部47は、本体部41の一対の側壁412の基端側部分を切り欠くよう形成された凹部である。カバー受け部46と係合凹部47との間は、隔壁48によって隔てられている。図8に示されているように、シェル4にカバー5が取り付けられた状態において、係合凹部47の底面(X方向の面)と、後述するカバー5の係合突部55は、間隙を介して対向している。
【0106】
隔壁48は、カバー受け部46と係合凹部47との間に形成されており、カバー受け部46と係合凹部47とを隔離する。隔壁48は、シェル4に対するカバー5の取り付けを実行するために形成されている。さらに、Y方向から見た平面視において、隔壁48は、内側から外側に向かってZ方向の長さが漸減するテーパー形状を有している。特に図8に明確に示されているように、隔壁48の先端面は、本体部41の側壁412の外側面から、外側、かつ、基端側に向かって斜めに延伸する斜面である。隔壁48の基端面は、カバー受け部46の外側面に対して垂直な平坦面となっている。隔壁48は、一対の壁部45の間に位置し、外側(Y方向)に延伸しており、一対の壁部45の間を接続している。
【0107】
図9に戻り、カバー5は、シェル4に取り付けられ、電気コネクタ1と相手側コネクタ200との連結をガイドする機能を有している。図22および図23に示されているように、カバー5は、先端側および基端側に開口する角筒状の本体部51と、本体部51の基端面上に形成された一対の位置決め凹部52と、一対の位置決め凹部52のそれぞれの底面上(Z方向と直交する面)に形成された2つの突起53と、本体部51から基端側に延伸する一対の突出片54と、一対の突出片54の内側面の基端側縁部のそれぞれから内側に向かって延伸する係合突部55と、を備えている。
【0108】
本体部51は、先端側および基端側に開口する角筒形状を有している。本体部51の先端側開口内に相手側コネクタ200が差し込まれることにより、電気コネクタ1と相手側コネクタ200との連結がガイドされる。本体部51は、さらに、基端側に開口し、シェル4の筒状部42が基端側から挿通される基端側開口511を備えている。
【0109】
図23に示されているように、一対の位置決め凹部52のそれぞれは、本体部51の基端面上に形成された凹部である。一対の位置決め凹部52は、カバー5をシェル4に取り付けた際に、シェル4の位置決め凸部421を収納する機能を有している。一対の位置決め凹部52の一方は、基端側開口511の上端部に沿って幅方向に延伸しており、一対の位置決め凹部52の他方は、基端側開口511の下端部に沿って幅方向に延伸している。一対の位置決め凹部52は、前述したシェル4の位置決め凸部421に対応した位置および形状で、本体部51の基端面を先端側に切り欠くようにして形成されている。位置決め凸部421を一対の位置決め凹部52内に挿入することにより、シェル4に対するカバー5の位置決めが実行される。一対の位置決め凹部52のそれぞれの底面上には、基端側に突出する2つの突起53が形成されている。すなわち、図示の形態において、合計4つの突起53が形成されている。カバー5をシェル4に取り付けた際に、4つの突起53がシェル4の位置決め凸部421に当接する。このような構成により、シェル4に対するカバー5の位置決めを安定的に実行することができる。
【0110】
一対の突出片54は、本体部51のX方向の一対の対向する側面(壁部)の基端部から基端側に向かって延伸する板状部分である。一対の突出片54は、間隙を介して互いに対向している。一対の突出片54のそれぞれは、前述したシェル4の一対のカバー受け部46のそれぞれと対応する形状を有しており、カバー5をシェル4に取り付けた際、一対の突出片54が一対のカバー受け部46内にそれぞれ収納される。
【0111】
一対の係合突部55は、シェル4に形成された係合凹部47と係合し、かつ、一対の係合突部55の先端面が隔壁48の基端面と当接することにより、シェル4に対するカバー5の取り付けを実行するために形成されている。一対の係合突部55は、一対の突出片54の内側面の基端側縁部から内側に向かってそれぞれ突出するテーパー状部分である。
【0112】
一対の係合突部55のそれぞれは、基端側に位置する傾斜部551と、傾斜部551の先端部から直線状に延伸する平坦部552と、を備えている。傾斜部551は、基端面が突出片54の基端部と連続し、基端側から先端側に向かって高さ(X方向の長さ)が漸増する部分である。傾斜部551の内側面は、基端側から先端側に向かって、内側方向に傾斜する傾斜面となっている。シェル4に対するカバー5の取り付け時に、傾斜部551がシェル4の隔壁48の先端面上をスライドし、これにより、突出片54が外側に徐々に弾性変形される。平坦部552は、傾斜部551の先端部から直線状に延伸し、基端側から先端側に向かって高さが一定となっている部分である。平坦部552の先端面は、Z方向に対して垂直な平坦面となっている。平坦部552の先端面が、隔壁48の基端面と係合することにより、シェル4の先端側部分に対してカバー5が取り付けられる。
【0113】
受け部56は、本体部51の上面上に形成されており、相手側コネクタ200のケース210の位置決め突部220(図4参照)を受ける機能を有している。受け部56は、相手側コネクタ200のケース210の位置決め突部220を挿入させるための開口561と、相手側コネクタ200の位置決め突部220をスライドさせ、電気コネクタ1と相手側コネクタ200の連結をガイドする一対のガイド部562と、相手側コネクタ200のケース210の位置決め突部220を係止するための係止部563と、を備えている。
【0114】
開口561は、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に開口する矩形開口である。開口561に相手側コネクタ200のケース210の位置決め突部220を挿入するような姿勢で、相手側コネクタ200を電気コネクタ1に差し込むことにより、電気コネクタ1に対する相手側コネクタ200の位置決めが実行される。一対のガイド部562は、本体部51の上面から上方に向かって延伸し、かつ、互いに対向する板状部である。一対のガイド部562の内側面上を相手側コネクタ200のケース210の位置決め突部220がスライドすることにより、相手側コネクタ200の電気コネクタ1に対する連結がガイドされる。係止部563は、一対のガイド部562の基端部同士を接続する板状部である。係止部563は、相手側コネクタ200の挿抜方向(Z方向)に対して直交する平坦面であり、相手側コネクタ200のケース210の位置決め突部220の先端部が係止部563に当接すると、相手側コネクタ200の電気コネクタ1に対する差し込みが規制される。
【0115】
以上説明したようなコンポーネントを含む電気コネクタ1は、例えば、以下のような手順で組み立てることができる。最初に、適切な圧入器具を用いて、ハウジング3の一対の挿通孔33内に一対のコンタクトピン2をそれぞれ圧入する。ハウジング3の一対の挿通孔33内への一対のコンタクトピン2の圧入は、それぞれ同じ手順によって実行されるので、以下、一方のコンタクトピン2をハウジング3の一方の挿通孔33内へ圧入する手順を代表的に説明する。
【0116】
最初に、コンタクトピン2の接点部22が、ハウジング3の挿通孔33内に挿入される。次に、コンタクトピン2の接続部23を先端側に向かって押圧し、ハウジング3の挿通孔33内にコンタクトピン2を圧入する。コンタクトピン2の下方延伸部24が、ハウジング3の当接部325に接触すると、コンタクトピン2の挿通孔33内への圧入が完了する。同様の手順により、他方の挿通孔33内に他方のコンタクトピン2を圧入する。
【0117】
次に、一対のコンタクトピン2がそれぞれ圧入されたハウジング3を、基端側から、シェル4の挿通孔43内に挿入する。最初に、ハウジング3の筒状部31が、基端側から、挿通孔43内に挿入される。挿通孔43内へのハウジング3の挿入は、ハウジング3の前板321が、シェル4の前板411に接触すると、完了する。挿通孔43内へのハウジング3の挿入が完了した状態において、筒状部31上に形成された4つの第1の押圧リブ311の高背部311c、および、一対の第2の押圧リブ312の高背部312cの外側面が、挿通孔43の内周面にそれぞれ接触する。そのため、筒状部31が挿通孔43内で固定される。
【0118】
最後に、先端側から、カバー5をシェル4に取り付ける。具体的には、カバー5の一対の突出片54が、シェル4の一対のカバー受け部46内にそれぞれ挿入されるような姿勢で、カバー5の基端側にシェル4の先端側部分が圧入される。この際、一対の突出片54の傾斜部551が、シェル4の隔壁48の先端面上をスライドし、カバー5内へシェル4が挿入されるにつれ、一対の突出片54が外側に弾性変形し、開いていく。一対の係合突部55が、隔壁48の基端面を超えると、一対の突出片54が内側に弾性復元し、スナップフィットにより係合する。このようなスナップフィットによる係合によって、カバー5のシェル4の先端側部分に対する取り付けが完了する。図8に示されているように、この状態において、係合突部55の平坦部552は、係合凹部47と間隙を介して対向している。さらに、係合突部55の平坦部552の先端面は、隔壁48の基端面と係合している。このような構成により、カバー5からシェル4が基端側に離脱することを防止することができる。ここまで、電気コネクタ1の組立手順の一例について詳述したが、本発明の電気コネクタ1の組立手順は、これに限られず、適切な任意の組立手順によって、電気コネクタ1を組み立てることができる。
【0119】
図24は、電気コネクタ1と相手側コネクタ200が連結された状態のコンタクトピン2を含むYZ平面の断面図である。図24に示されているように、先端側から、電気コネクタ1に対して相手側コネクタ200が挿入され、電気コネクタ1と相手側コネクタ200が連結される。この状態において、電気コネクタ1のコンタクトピン2の接点部22は、相手側コネクタ200の対応するコンタクトピン230と接触する。相手側コネクタ200のコンタクトピン230は、対応する同軸ケーブル300の芯線310に接続されている。そのため、電気コネクタ1と相手側コネクタ200が連結された状態において、電気コネクタ1のコンタクトピン2は、相手側コネクタ200の対応するコンタクトピン230を介して、同軸ケーブル300の対応する芯線310に電気的に接続される。
【0120】
さらに、電気コネクタ1のシェル4の筒状部42は、相手側コネクタ200の対応するアウターコンタクト240と接触する。相手側コネクタ200のアウターコンタクト240は、導体部品250、260を介して、同軸ケーブルの外部導体層340に接続されている。そのため、電気コネクタ1と相手側コネクタ200が連結された状態において、電気コネクタ1のシェル4の筒状部42は、相手側コネクタ200の対応するアウターコンタクト240を介して、同軸ケーブル300の外部導体層340に電気的に接続される。
【0121】
上述のように、本発明の電気コネクタ1は、ハウジング3が、筒状部31の一対の挿通孔33のそれぞれが、第1壁面331上に設けられた平坦な受け部34を備えるよう、構成されている。さらに、本発明の電気コネクタ1は、ハウジング3が、筒状部31の外周面のX方向の両側面上に一対の第2の押圧リブ312を備えるよう、構成されている。そのため、ハウジング3をシェル4の挿通孔43内に挿入する際、第2の押圧リブ312の高背部312cの外側面は、挿通孔43の内周面によって内側に押圧され、筒状部31の高背部312cが形成されている部分が内側に弾性変形する。これにより、高背部312cが形成されている部分の内側面(第2壁面332)が、水平延伸部21の第4面214と外側から接触し、コンタクトピン2を内側に押圧する。このような構成により、水平延伸部21は、挿通孔33の第1壁面331上に形成された受け部34上に押し付けられる。これにより、水平延伸部21が受け部34と第2壁面332により強固に挟持される。その結果、電気コネクタ1が組み立てられた後におけるコンタクトピン2のX方向のガタつきを防止し、ハウジング3の挿通孔33におけるコンタクトピン2の位置決めを正確に実行することができる。これにより、一対のコンタクトピン2のX方向の離間距離を確実に一定に保つことができ、電気コネクタ1の信号伝送特性を維持向上することができる。
【0122】
以上、本発明の電気コネクタを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の各構成に任意の構成のものを付加することができる。
【0123】
本発明の属する分野および技術における当業者であれば、本発明の原理、考え方、および範囲から有意に逸脱することなく、記述された本発明の電気コネクタの構成の変更を実行可能であろうし、変更された構成を有する電気コネクタもまた、本発明の範囲内である。
【0124】
また、図面に示された電気コネクタの構成要素の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の構成要素が追加若しくは組み合わされ、または任意の構成要素が削除された態様も、本発明の範囲内である。
【0125】
また、参考のため、本発明の実施形態に係る電気コネクタの6面図を図25図30に示す。図25は、本発明の電気コネクタの平面図である。図26は、本発明の電気コネクタの底面図である。図27は、本発明の電気コネクタの正面図である。図28は、本発明の電気コネクタの背面図である。図29は、本発明の電気コネクタの左側面図である。図30は、本発明の電気コネクタの右側面図である。
【符号の説明】
【0126】
1…電気コネクタ 2…コンタクトピン 2´…コンタクトピン 21…水平延伸部 211…第1面 212…第2面 213…第3面 214…第4面 22…接点部 23…接続部 24…下方延伸部 25…端子部 26…第1の突出部 26´…第1の突出部 261…前側斜面部 262…後側斜面部 262´…基端側壁部 263…平坦部 264…前側接続部 265…後側接続部 265´…角部 27…凹部 θ1…第1の角度(傾き) θ2…第2の角度(傾き) 28a…第1のカット痕 28b…第2のカット痕 28c…第3のカット痕 28d…第4のカット痕 281…キャリア 29…第2の突出部 A…矢印 B…矢印 3…ハウジング 31…筒状部 311…第1の押圧リブ 311a…低背部部 311b…傾斜部 311c…高背部 312…第2の押圧リブ 312a…低背部 312b…傾斜部 312c…高背部 32…下方延伸部 321…前板 322…側壁部 323…第1の切り欠き部 324…中央壁部 325…当接部 326…第2の切り欠き部 33…挿通孔 331…第1壁面 332…第2壁面 34…受け部 341…平坦部 342…脚部 35…壁部 4…シェル 41…本体部 411…前板 412…側壁 413…天板 414…エッジ部 42…筒状部 421…凸部 43…挿通孔 431…第1のガイド部 432…第2のガイド部 44…グランド端子 45…壁部 46…カバー受け部 47…係合凹部 48…隔壁 5…カバー 51…本体部 511…基端側開口 52…位置決め凹部 53…突起 54…突出片 55…係合突部 551…傾斜部 552…平坦部 56…受け部 561…開口 562…ガイド部 563…係止部 100…回路基板 110…グランド端子 120…端子 200…相手側コネクタ 210…ケース 220…位置決め突部 230…コンタクトピン 240…アウターコンタクト 250…導体部品 260…導体部品 300…同軸ケーブル 310…芯線 320…内側絶縁層 330…第1の外側絶縁層 340…外部導体層 350…第2の外側絶縁層 10…ハウジング 101…筒状部 102…下方延伸部 103…挿通孔 104…壁部 11…コンタクトピン 111…水平延伸部 112…接点部 113…接続部 114…下方延伸部 115…端子部 S…削り屑
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図17
図18A
図18B
図18C
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30