(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107642
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
H02K15/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011670
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】奥野 智士
(72)【発明者】
【氏名】本田 武
(72)【発明者】
【氏名】桂田 仁司
(72)【発明者】
【氏名】永野 義人
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP11
5H615SS05
5H615SS11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】帯状の鉄心片形成部が螺旋状に巻かれた積層鉄心の製造効率を向上可能な装置及び方法を提供する。
【解決手段】外周面上に鉄心片形成部71が巻き付けられる円柱状のロール部材3と、前記ロール部材に対する前記鉄心片形成部の巻き付きをガイドするガイド部5と、前記ロール部材を該ロール部材の中心軸Pを中心として回転させる回転部と、を有する。前記ロール部材は、外周面上に径方向に突出し且つ軸方向に延びる少なくとも一つの突出部32を有する。前記回転部は、前記少なくとも一つの突出部が前記鉄心片形成部における複数のティース部の間に挿入された状態で、前記ロール部材を、前記中心軸を中心として回転させる。前記ガイド部は、前記ロール部材の回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、前記ロール部材の軸方向の他側に位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のバックヨーク形成部と、前記バックヨーク形成部から前記バックヨーク形成部の幅方向の一方に突出する複数のティース部とを有する板状の鉄心片形成部を、前記幅方向の一方に変形させつつ螺旋状に巻いて積層鉄心を製造する製造装置であって、
外周面上に前記鉄心片形成部が巻き付けられる円柱状のロール部材と、
前記ロール部材に対して該ロール部材の軸方向の一側の位置で、前記鉄心片形成部を前記ロール部材に対して所定の角度で支持して、前記ロール部材に対する前記鉄心片形成部の巻き付きをガイドするガイド部と、
前記ロール部材を該ロール部材の中心軸を中心として回転させる回転部と、
を有し、
前記ロール部材は、
外周面上に径方向に突出し且つ軸方向に延びる少なくとも一つの突出部を有し、
前記回転部は、
前記少なくとも一つの突出部が前記鉄心片形成部における前記複数のティース部の間に挿入された状態で、前記ロール部材を、前記中心軸を中心として回転させ、
前記ガイド部は、
前記ロール部材の回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、前記ロール部材の軸方向の他側に位置している、
積層鉄心の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の積層鉄心の製造装置において、
前記突出部の前記軸方向の長さは、
前記積層鉄心の軸方向の長さよりも長い、
積層鉄心の製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載の積層鉄心の製造装置において、
前記突出部の基端部における周方向の長さは、
前記積層鉄心における前記複数のティース部同士の周方向の隙間のうち、先端側の周方向の隙間の長さよりも短く、
前記突出部の突出方向の長さは、
前記ティース部の突出方向の長さよりも短い、
積層鉄心の製造装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の積層鉄心の製造装置において、
前記ロール部材は、
周方向に並ぶ複数の前記突出部を有し、
前記ロール部材を前記軸方向から見て、前記複数の突出部の周方向の間隔は、90度以下である、
積層鉄心の製造装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の積層鉄心の製造装置において、
前記ガイド部は、
前記ロール部材に対して前記軸方向の一側で、該ロール部材の周方向に並ぶ複数の鉄心片支持部を含み、
前記複数の鉄心片支持部のうち前記回転方向の前側に位置する鉄心片支持部は、
該鉄心片支持部に対して前記回転方向の後側に位置する鉄心片支持部よりも、前記ロール部材の前記軸方向の他側に位置している、
積層鉄心の製造装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の積層鉄心の製造装置において、
前記ガイド部は、
前記ロール部材に対して前記軸方向の一側で、該ロール部材の周方向に延びる少なくとも一つの鉄心片支持部を含み、
前記少なくとも一つの鉄心片支持部は、
前記回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、前記ロール部材の軸方向の他側に位置している、
積層鉄心の製造装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の積層鉄心の製造装置において、
前記突出部は、
前記ロール部材を軸方向から見て、前記ロール部材の径方向に対して交差し且つ回転方向の前側に向かって延びている、
積層鉄心の製造装置。
【請求項8】
帯状のバックヨーク形成部と、前記バックヨーク形成部から前記バックヨーク形成部の幅方向の一方に突出する複数のティース部とを有する板状の鉄心片形成部を、前記幅方向の一方に変形させつつ螺旋状に巻いて積層鉄心を製造する製造方法であって、
中心軸を中心として回転する円柱状のロール部材に対して、前記ロール部材の軸方向の一側の位置で、前記ロール部材の回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、前記軸方向の他側に位置する角度で前記鉄心片形成部を支持するガイド部によって、前記ロール部材に対する前記鉄心片形成部の巻き付きをガイドし、
前記鉄心片形成部の前記複数のティース部の間に、前記ロール部材の外周面上に位置する突出部を挿入した状態で、前記ロール部材を回転させることにより、前記鉄心片形成部を前記幅方向の一方に変形させつつ前記ロール部材の外周面上に螺旋状に巻き付け、且つ、前記鉄心片形成部を前記軸方向に重ねる、積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状の鉄心片形成部を螺旋状に変形しつつ巻回することにより積層鉄心を製造する巻回装置が知られている。例えば、特許文献1には、コア材を螺旋状に巻回する巻回装置が開示されている。前記巻回装置は、帯状のコア材を螺旋状に曲げる圧延ロールと、前記圧延ロールから押し出された帯状薄板を巻き取る巻き取りローラとを有する。
【0003】
前記特許文献1の前記巻回装置では、前記圧延ロールからの前記帯状薄板の出口側に、櫛歯状の側面規制ガイドが位置している。前記巻回装置では、前記巻き取りローラの回転により前記帯状薄板が巻き取られると、前記側面規制ガイドがネジ溝と同様の役割を果たし、前記巻き取りローラに巻き取られた前記帯状薄板が巻き取りローラの先端側に押し出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の巻回装置によって、バックヨーク形成部及びティース部が形成された帯状の鉄心片形成部を巻回することにより、螺旋状に曲げられた鉄心片形成部が得られる。しかしながら、前記巻回装置によって形成された鉄心片形成部は、積層方向に隙間を有する。よって、特許文献1の巻回装置を用いる場合、前記鉄心片形成部の積層方向の隙間を小さくして前記鉄心片形成部を積層方向に重ねる積層装置を、さらに用いる必要がある。
【0006】
これに対して、帯状の鉄心片形成部が螺旋状に巻かれた積層鉄心の製造効率を向上可能な装置が求められている。
【0007】
本発明の目的は、帯状の鉄心片形成部が螺旋状に巻かれた積層鉄心の製造効率を向上可能な装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的な一実施形態に係る積層鉄心の製造装置は、帯状のバックヨーク形成部と、前記バックヨーク形成部から前記バックヨーク形成部の幅方向の一方に突出する複数のティース部とを有する板状の鉄心片形成部を、前記幅方向の一方に変形させつつ螺旋状に巻いて積層鉄心を製造する製造装置である。前記積層鉄心の製造装置は、外周面上に前記鉄心片形成部が巻き付けられる円柱状のロール部材と、前記ロール部材に対して該ロール部材の軸方向の一側の位置で、前記鉄心片形成部を前記ロール部材に対して所定の角度で支持して、前記ロール部材に対する前記鉄心片形成部の巻き付きをガイドするガイド部と、前記ロール部材を該ロール部材の中心軸を中心として回転させる回転部と、を有する。前記ロール部材は、外周面上に径方向に突出し且つ軸方向に延びる少なくとも一つの突出部を有する。前記回転部は、前記少なくとも一つの突出部が前記鉄心片形成部における前記複数のティース部の間に挿入された状態で、前記ロール部材を、前記中心軸を中心として回転させる。前記ガイド部は、前記ロール部材の回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、前記ロール部材の軸方向の他側に位置している、
【0009】
本発明の例示的な一実施形態に係る積層鉄心の製造方法は、帯状のバックヨーク形成部と、前記バックヨーク形成部から前記バックヨーク形成部の幅方向の一方に突出する複数のティース部とを有する板状の鉄心片形成部を、前記幅方向の一方に変形させつつ螺旋状に巻いて積層鉄心を製造する製造方法である。前記積層鉄心の製造方法は、中心軸を中心として回転する円柱状のロール部材に対して、前記ロール部材の軸方向の一側の位置で、前記ロール部材の回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、前記軸方向の他側に位置する角度で前記鉄心片形成部を支持するガイド部によって、前記ロール部材に対する前記鉄心片形成部の巻き付きをガイドし、前記鉄心片形成部の前記複数のティース部の間に、前記ロール部材の外周面上に位置する突出部を挿入した状態で、前記ロール部材を回転させることにより、前記鉄心片形成部を前記幅方向の一方に変形させつつ前記ロール部材の外周面上に螺旋状に巻き付け、且つ、前記鉄心片形成部を前記軸方向に重ねる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、帯状の鉄心片形成部が螺旋状に巻かれた積層鉄心の製造効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る積層鉄心の製造装置の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、積層鉄心の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、積層鉄心を分解して示す平面図である。
【
図6】
図6は、ロール部材に対して鉄心片形成部が供給される様子を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る積層鉄心の製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、ロール部材に鉄心片形成部が巻き付けられる様子を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施形態1の変形例1に係る製造装置を模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、実施形態1の変形例1に係る積層鉄心の製造装置を模式的に示す側面図である。
【
図12】
図12は、実施形態1の変形例2に係るロール部材を模式的に示す平面図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る積層鉄心の製造装置の概略構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表しているわけではない。
【0013】
なお、以下の説明では、積層鉄心の製造装置において、ロール部材の中心軸Pと平行な方向を軸方向、中心軸Pに直交する方向を径方向、中心軸Pを中心とする円弧に沿う方向を周方向、とそれぞれ称する。
【0014】
また、本発明の積層鉄心の製造装置によって製造される積層鉄心において、積層鉄心の中心軸Qと平行な方向を軸方向、中心軸Qに直交する方向を径方向、中心軸Qを中心とする円弧に沿う方向を周方向、とそれぞれ称する。
【0015】
また、以下の説明では、板状の部材において、板厚の方向を、前記部材の厚み方向と称する。「部材を厚み方向から見て」とは、厚み方向と視線の方向とが一致していることを意味する。例えば、「鉄心片形成部を厚み方向から見て」とは、鉄心片形成部に対して厚み方向に離れた位置から鉄心片形成部の面を見ることを意味する。
【0016】
また、以下の説明において、「同等」とは、厳密に等しい場合だけでなく、実質的に等しいとみなせる範囲で同じである場合を含む。
【0017】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”及び“取り付ける”等の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0018】
(実施形態1)
図1から
図6を参照して、本発明の例示的な実施形態1に係る積層鉄心の製造装置1について説明する。製造装置1は、帯状の鉄心片形成部71を、幅方向の一方に変形させつつ螺旋状に巻いて積層鉄心80を製造する装置である。
【0019】
(積層鉄心の構成)
最初に、
図2及び
図3を参照して、製造装置1によって製造される積層鉄心80について簡単に説明する。
図2に示すように、積層鉄心80は、中心軸Qに沿って延びる筒状である。本実施形態では、積層鉄心80は、中心軸Qに沿って螺旋状に延びる板状の鉄心片81が厚み方向に積層されたスパイラル積層コアである。
【0020】
図2に示すように、鉄心片81は、積層鉄心80の周方向に延びるバックヨーク部82と、バックヨーク部82から積層鉄心80の径方向内方に突出する複数のティース部83とを有する。積層鉄心80は、バックヨーク部82と、複数のティース部83とが、それぞれ厚み方向に積層されている。
【0021】
積層鉄心80を軸方向から見て、複数のティース部83のうち隣り合うティース部83の間には、軸方向に延びるとともに径方向内方に開口するスロット84が位置する。スロット84内には、図示省略するコイル線が挿入される。
【0022】
図2に示すように、積層鉄心80の軸方向の長さは、L81である。
図3に示すように、積層鉄心80において、スロット84の開口の幅寸法は、L82である。すなわち、積層鉄心80において、周方向に隣り合うティース部83同士の周方向の隙間のうち、先端側の周方向の隙間の長さは、L82である。
【0023】
図3は、積層鉄心80を分解して示す平面図である。
図3に示すように、積層鉄心80は、鉄心片81の材料である板状の鋼板70を打ち抜いて形成された鉄心片形成部71によって構成されている。
【0024】
鉄心片形成部71は、帯状のバックヨーク形成部72と、バックヨーク形成部72からバックヨーク形成部72の幅方向の一方に突出する複数のティース部83とを有する。ティース部83の突出方向の長さは、L83である。
【0025】
バックヨーク形成部72は、複数のティース部83の間に、前記幅方向に延びるスリット74を有する。
【0026】
鉄心片形成部71は、本発明の製造装置1によって螺旋状に巻かれつつ厚み方向に積層される。すなわち、製造装置1によって、鉄心片形成部71を前記幅方向の一方に変形しつつ螺旋状に巻くことによって、
図2に示す積層鉄心80が製造される。
【0027】
詳細には、鉄心片形成部71のバックヨーク形成部72は、幅方向の両側のうち、複数のティース部83が突出する前記幅方向の一側にスリット74を有する。スリット74の隙間を狭めることにより、バックヨーク形成部72の幅方向の一側の長さを、幅方向の他側の長さよりも短くすることができる。すなわち、スリット74の隙間を狭めることにより、軸方向から見て、バックヨーク形成部72は円環状に形成される。
【0028】
(製造装置の構成)
次に、
図1、
図4及び
図5を参照して、上述の構成を有する積層鉄心80を製造する製造装置1について、説明する。
図1、
図4及び
図5に示すように、製造装置1は、装置本体部2と、ロール部材3と、回転部4と、ガイド部5とを有する。
【0029】
装置本体部2は、ロール部材3、回転部4及びガイド部5を支持する。装置本体部2は、ロール部材3を回転可能に支持している。
【0030】
ロール部材3は、円柱状である。本実施形態では、ロール部材3の中心軸Pは、上下方向に延びている。本実施形態では、ロール部材3は、下側が装置本体部2に接続されている。すなわち、本実施形態では、ロール部材3は、装置本体部2に対して上下方向に延びる中心軸Pを中心として回転可能に、装置本体部2に支持されている。
【0031】
ロール部材3は、筒部31と、突出部32とを有する。
図1に示すように、ロール部材3の外周面上には、鉄心片形成部71が巻き付けられる。
【0032】
筒部31は、中心軸Pに沿って延びる円柱状である。本実施形態では、筒部31の直径は、積層鉄心80の内径と同等である。筒部31の軸方向の長さは、積層鉄心80の軸方向の長さL81よりも長い。
【0033】
図4に示すように、突出部32は、筒部31の外周面から外方に突出している。
図5に示すように、突出部32は、筒部31の軸方向に延びている。本実施形態では、突出部32は、厚み方向が、筒部31の周方向である板状である。すなわち、突出部32は、ロール部材3を軸方向から見て、筒部31の径方向に延びている。
【0034】
突出部32は、積層鉄心80におけるスロット84内に挿入可能な形状を有する。突出部32は、ロール部材3の外周面上に巻き付けられる鉄心片形成部71における複数のティース部83の間に挿入される。本実施形態では、ロール部材3は、4つの突出部32を有する。なお、ロール部材は、少なくとも一つの突出部を有していればよい。突出部32の詳細な構成は、後述する。
【0035】
回転部4は、ロール部材3の中心軸Pを中心として、ロール部材3を回転させる。詳しくは、回転部4は、鉄心片形成部71における複数のティース部83の間に突出部32が挿入された状態で、ロール部材3を回転させる。
【0036】
上述したように、ロール部材3の突出部32は、鉄心片形成部71の複数のティース部83の間に挿入される。したがって、回転部4がロール部材3を回転させた場合、鉄心片形成部71は、ロール部材3に対して、周方向に移動できない。すなわち、突出部32は、ロール部材3に対して、鉄心片形成部71を周方向に位置付ける。また、突出部32は、ロール部材3に対して、鉄心片形成部71が周方向に移動することを規制する。よって、回転部4がロール部材3を回転させることにより、ロール部材3の外周面上に鉄心片形成部71が巻き付けられる。
【0037】
ガイド部5は、装置本体部2に固定されている。ガイド部5は、ロール部材3の下側で且つ外周側に位置する。ガイド部5は、鉄心片形成部71をロール部材3に対して所定の角度で支持して、ロール部材3に対する鉄心片形成部71の巻き付きをガイドする。
【0038】
ガイド部5は、ロール部材3の回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、ロール部材3の軸方向の上側に位置している。よって、ガイド部5によって支持された鉄心片形成部71は、前記回転方向の前側が、前記回転方向の後側よりも、上方に位置する状態で、ロール部材3に巻き付けられる。
【0039】
本実施形態では、ガイド部5は、ロール部材3の周方向に並ぶ2つの鉄心片支持部51、52を含む。2つの鉄心片支持部51、52のうちロール部材3の回転方向の前側に位置する鉄心片支持部51は、鉄心片支持部51に対して前記回転方向の後側に位置する鉄心片支持部52よりも、軸方向の上側に位置している。
【0040】
すなわち、本実施形態では、ガイド部5は、ロール部材3に対して前記軸方向の一側で、ロール部材3の周方向に並ぶ複数の鉄心片支持部51、52を含む。複数の鉄心片支持部51、52のうち前記回転方向の前側に位置する鉄心片支持部51は、該鉄心片支持部51に対して前記回転方向の後側に位置する鉄心片支持部52よりも、ロール部材3の軸方向の他側に位置している。
【0041】
これにより、
図1に示すように、鉄心片支持部51、52によって支持された鉄心片形成部71は、前記回転方向の前側が、前記回転方向の後側よりも、上方に位置する状態で、ロール部材3に巻き付けられる。よって、ロール部材3に巻き付けられた鉄心片形成部71は上方に移動する。これにより、鉄心片形成部71は、積層方向に重なる。したがって、ロール部材3の外周面上に、鉄心片形成部71が螺旋状に巻き付けられ、且つ、積層される。
【0042】
なお、ガイド部は、3つまたは3つよりも多い数の鉄心片支持部を有してもよい。この場合、複数の鉄心片支持部は、前記回転方向の後側から前側に向かうにつれて、軸方向の上側に位置していればよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る積層鉄心の製造装置1は、帯状のバックヨーク形成部72と、バックヨーク形成部72からバックヨーク形成部72の幅方向の一方に突出する複数のティース部83とを有する板状の鉄心片形成部71を、前記幅方向の一方に変形させつつ螺旋状に巻いて積層鉄心80を製造する製造装置である。積層鉄心の製造装置1は、外周面上に鉄心片形成部71が巻き付けられる円柱状のロール部材3と、ロール部材3に対してロール部材3の軸方向の一側の位置で、鉄心片形成部71をロール部材3に対して所定の角度で支持して、ロール部材3に対する鉄心片形成部71の巻き付きをガイドするガイド部5と、ロール部材3をロール部材3の中心軸Pを中心として回転させる回転部4と、を有する。ロール部材3は、外周面上に径方向に突出し且つ軸方向に延びる少なくとも一つの突出部32を有する。回転部4は、前記少なくとも一つの突出部32が鉄心片形成部71における複数のティース部83の間に挿入された状態で、ロール部材3を、中心軸Pを中心として回転させる。ガイド部5は、ロール部材3の回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、ロール部材3の軸方向の他側に位置している。
【0044】
上述の積層鉄心の製造装置1では、ロール部材3の突出部32は、鉄心片形成部71がロール部材3に対して周方向に移動することを規制する。よって、ロール部材3が回転部4によって回転することにより、ロール部材3の外周面上に鉄心片形成部71が巻き付けられる。ガイド部5は、鉄心片形成部71を、ロール部材3に対して、ロール部材3の中心軸Pに対して傾いた角度で支持する。したがって、回転部4が、ロール部材3を回転させることにより、ロール部材3の外周面上には、鉄心片形成部71が螺旋状に巻き付けられる。
【0045】
回転部4がロール部材3を回転させることにより、既にロール部材3に巻き付けられた鉄心片形成部71は上方に移動する。したがって、ロール部材3に、所定の長さの鉄心片形成部71を巻き付けることにより、鉄心片形成部71が積層方向に重なった積層鉄心80を形成することができる。すなわち、上述の積層鉄心の製造装置1によって、鉄心片形成部71を螺旋状に巻く巻回工程及び螺旋状に巻かれた鉄心片形成部71を積層方向に重ねる積層工程の両工程を実施することができる。よって、本実施形態に係る製造装置1によって、前記巻回工程と前記積層工程とを、それぞれ別の装置で実現する場合よりも、積層鉄心80の製造効率を向上することができる。
【0046】
(突出部の詳細な構成)
次に、
図1、
図4から
図6を参照して、本実施形態に係る突出部32の詳細な構成について説明する。
【0047】
図6に示すように、本実施形態では、ロール部材3を軸方向から見て、突出部32は、基端部から先端部まで、周方向の長さが同じである。具体的には、本実施形態では、突出部32の周方向の長さは、L22である。突出部32の周方向の長さL22は、積層鉄心80における複数のティース部83同士の周方向の隙間のうち、先端側の周方向の隙間の長さL82よりも短い。すなわち、突出部32の基端部における周方向の長さL22は、積層鉄心80における複数のティース部83同士の周方向の隙間のうち、先端側の周方向の隙間の長さL82よりも短い。
【0048】
突出部32の突出方向の長さは、L23である。突出部32の突出方向の長さL23は、鉄心片形成部71のティース部83の突出方向の長さL83よりも短い。
【0049】
この構成により、鉄心片形成部71における複数のティース部83の間に、ロール部材3の突出部32を挿入し、且つ、複数のティース部83の突出方向の先端を、ロール部材3の外周面に接触させた状態で、鉄心片形成部71をロール部材3の外周面上に螺旋状に巻き付けることができる。
【0050】
図5に示すように、本実施形態では、突出部32の軸方向の長さL21は、筒部31の軸方向の長さと同等である。よって、突出部32の軸方向の長さL21は、積層鉄心80の軸方向の長さL81よりも長い。
【0051】
上述したように、本実施形態では、筒部31の直径は、積層鉄心80の内径と同等である。したがって、鉄心片形成部71における複数のティース部83の突出方向の先端を、ロール部材3の外周面に接触させつつ、鉄心片形成部71をロール部材3に螺旋状に巻き付けることができる。これにより、積層鉄心80において軸方向に積層されるティース部83を、ロール部材3を軸方向から見て重なる位置に位置付けることができる。すなわち、ロール部材3を軸方向から見て、ロール部材3に巻かれた螺旋状の鉄心片形成部71の複数のティース部83の位置を揃えることができる。
【0052】
なお、突出部の軸方向の長さL21は、筒部の軸方向の長さよりも短くてもよい。また、突出部の軸方向の長さL21は、積層鉄心の軸方向の長さと同じか、短くてもよい。複数のティース部の周方向の位置を積層方向に揃えるためには、突出部の軸方向の長さL21は、積層鉄心の軸方向の長さL81の1.5倍または1.5倍よりも大きいことが好ましい。また、突出部によって、ロール部材に巻き付けられた鉄心片形成部が所定の内径を有する状態に保持できるのであれば、筒部の直径は、積層鉄心の内径よりも小さくてもよい。
【0053】
本実施形態では、ロール部材3は、4つの突出部32を有する。
図6に示すように、4つの突出部32は、筒部31の周方向に等間隔で並んでいる。すなわち、ロール部材3を前記軸方向から見て、複数の突出部32の周方向の間隔は、90度である。
【0054】
これにより、前記軸方向から見て、180度につき少なくとも2つの突出部32によって、鉄心片形成部71を、ロール部材3に対して周方向に位置付けることができる。したがって、ロール部材3に対する鉄心片形成部71の位置精度を向上することができるとともに、ロール部材3に巻かれた鉄心片形成部71が周方向に移動することを、より確実に規制することができる。よって、ロール部材3に巻かれた螺旋状の鉄心片形成部71の複数のティース部83の位置を、ロール部材3を軸方向から見て、より確実に揃えることができる。
【0055】
なお、ロール部材は、互いの周方向の間隔が90度以内の位置に位置する5つまたは5つよりも多い数の突出部を有してもよい。すなわち、積層鉄心の製造装置は、ロール部材が、周方向に並ぶ複数の突出部を有し、ロール部材を前記軸方向から見て、複数の突出部の周方向の間隔が、90度以下である構成であってもよい。
【0056】
(積層鉄心の製造方法)
次に、上述の構成を有する製造装置1によって積層鉄心80を製造する例示的な積層鉄心80の製造方法を、
図1、
図6から
図9を用いて説明する。
【0057】
図7は、積層鉄心80の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図7に示すように、積層鉄心80の製造方法は、打ち抜き工程S1と、回転積層工程S2とを有する。
【0058】
打ち抜き工程S1は、磁性材料である鋼板70を打ち抜いて、帯状の鉄心片形成部71を形成する。鉄心片形成部71は、積層鉄心80における鉄心片81となる部分である。
【0059】
図8は、鋼板70の打ち抜き図である。
図8では、鋼板70を打ち抜く領域Rに斜線を付している。打ち抜き工程S1では、鋼板70の領域Rを打ち抜いて、帯状のバックヨーク形成部72と、バックヨーク形成部72からバックヨーク形成部72の幅方向の一方に突出する複数のティース部83とを有する板状の鉄心片形成部71を形成する。
【0060】
打ち抜き工程S1では、鋼板70を打ち抜いて、鉄心片形成部71のバックヨーク形成部72における複数のティース部83の間で前記幅方向に延びるスリット74も形成する。打ち抜き工程S1は、プレス加工によって行われる。プレス加工の説明は省略する。
【0061】
回転積層工程S2は、鉄心片形成部71をロール部材3の外周面上に巻き付けて積層する。
【0062】
回転積層工程S2では、打ち抜き工程S1で形成された鉄心片形成部71は、ガイド部5によって支持された状態で、ロール部材3の外周面上に巻き付けられる。
【0063】
本実施形態では、ロール部材3の回転方向の前側に位置する鉄心片支持部51は、前記回転方向の後側に位置する鉄心片支持部52よりも、前記軸方向の上側に位置している。よって、ロール部材3の外周面上には、鉄心片形成部71において、前記回転方向の前側が、前記回転方向の後側よりも、上方に位置する状態で、ロール部材3に巻き付けられる。
【0064】
回転積層工程S2では、
図6に示すように、鉄心片形成部71の複数のティース部83の間に、ロール部材3の突出部32を挿入した状態で、回転部4によってロール部材3を回転させる。突出部32は、ロール部材3に対して鉄心片形成部71を周方向に位置付ける。突出部32は、ロール部材3に対して、鉄心片形成部71が周方向に移動することを規制する。
【0065】
よって、ロール部材3が回転すると、
図9に示すように、鉄心片形成部71は、スリット74の隙間が狭められて、ロール部材3の外周面上に巻き付けられる。すなわち、
図1に示すように、鉄心片形成部71は、ロール部材3の外周面上に螺旋状に巻き付けられる。
【0066】
回転部4がロール部材3を回転させることにより、既にロール部材3に巻き付けられた鉄心片形成部71は上方に移動する。これにより、鉄心片形成部71が軸方向に積層される。よって、積層鉄心80が製造される。
【0067】
以上説明した積層鉄心80の製造方法は、帯状のバックヨーク形成部72と、バックヨーク形成部72からバックヨーク形成部72の幅方向の一方に突出する複数のティース部83とを有する板状の鉄心片形成部71を、前記幅方向の一方に変形させつつ螺旋状に巻いて積層鉄心80を製造する製造方法である。積層鉄心80の製造方法は、中心軸Pを中心として回転する円柱状のロール部材3に対して、ロール部材3の軸方向の一側の位置で、ロール部材3の回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、前記軸方向の他側に位置する角度で鉄心片形成部71を支持するガイド部5によって、ロール部材3に対する鉄心片形成部71の巻き付きをガイドし、鉄心片形成部71の複数のティース部83の間に、ロール部材3の外周面上に位置する突出部32を挿入した状態で、ロール部材3を回転させることにより、鉄心片形成部71を前記幅方向の一方に変形させつつロール部材3の外周面上に螺旋状に巻き付け、且つ、鉄心片形成部71を前記軸方向に重ねる。
【0068】
上述の積層鉄心80の製造方法では、ロール部材3の突出部32は、鉄心片形成部71がロール部材3に対して周方向に移動することを規制する。よって、ロール部材3が回転することにより、ロール部材3の外周面上に鉄心片形成部71が巻き付けられる。鉄心片形成部71は、ガイド部5によって、前記回転方向の前側が前記回転方向の後側よりも上方位置する角度で支持されている。したがって、ロール部材3が回転することにより、ロール部材3の外周面上には、鉄心片形成部71が螺旋状に巻き付けられる。
【0069】
回転部4がロール部材3を回転させることにより、既にロール部材3に巻き付けられた鉄心片形成部71は上方に移動する。したがって、ロール部材3に、所定の長さの鉄心片形成部71を巻き付けることにより、鉄心片形成部71が積層方向に重なった積層鉄心80を形成することができる。すなわち、上述の積層鉄心の製造方法によって、鉄心片形成部71を螺旋状に巻く巻回工程及び螺旋状に巻かれた鉄心片形成部71を積層方向に重ねる積層工程の両工程を実施することができる。よって、前記巻回工程と前記積層工程とを、それぞれ実施する製造方法よりも、積層鉄心80の製造効率を向上可能な製造方法を実現することができる。
【0070】
(実施形態1の変形例1)
次に、
図10及び
図11を参照して、実施形態1の変形例1について説明する。本変形例では、ガイド部105の構成が実施形態1のガイド部5の構成と異なる。以下では、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0071】
図10及び
図11に示すように、製造装置101は、装置本体部2と、ロール部材3と、回転部4と、ガイド部105とを有する。
【0072】
本変形例では、ガイド部105は、鉄心片支持部151を含む。鉄心片支持部151は、ロール部材3の周方向に延びている。鉄心片支持部151は、ロール部材3の回転方向の前側に位置する部分が、前記回転方向の後側に位置する部分よりも、ロール部材3に対して上側に位置している。
【0073】
なお、本変形例では、ガイド部105は、一つの鉄心片支持部151を含むが、ガイド部は、ロール部材の周方向に延びる複数の鉄心片支持部を含んでもよい。
【0074】
すなわち、本変形例では、ガイド部105は、ロール部材3に対して前記軸方向の一側で、ロール部材3の周方向に延びる少なくとも一つの鉄心片支持部151を含む。少なくとも一つの鉄心片支持部151は、前記回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、前記ロール部材の軸方向の他側に位置している。
【0075】
この構成によっても、鉄心片形成部71は、ロール部材3に対して、前記回転方向の前側が、前記回転方向の後側よりも、上方に位置する状態で、ロール部材3に巻き付けられる。これにより、ロール部材3に既に巻き付けられた鉄心片形成部71は上方に移動する。すなわち、本変形例のガイド部105によっても、ロール部材3の外周面上に、鉄心片形成部71を螺旋状に巻き付けつつ積層することができる。
【0076】
(実施形態1の変形例2)
次に、
図12を参照して、実施形態1の変形例2について説明する。本変形例では、ロール部材203の突出部232の構成が、実施形態1のロール部材3の突出部32の構成と異なる。以下では、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0077】
図12に示すように、本実施形態のロール部材203は、筒部31と、突出部232とを有する。
【0078】
本変形例では、突出部232は、ロール部材203を軸方向から見て、ロール部材203の径方向に対して交差し且つ回転方向の前側に向かって延びている。
【0079】
図12に示すように、ロール部材203を軸方向から見て、ロール部材203に対して供給される鉄心片形成部71は、ロール部材203の接線に対して傾いた方向に延びている。詳しくは、鉄心片形成部71は、ロール部材203の回転方向に対して後側が、前記接線に対してロール部材203の中心軸Pから離れる方向に延びている。したがって、鉄心片形成部71がロール部材203と接する位置において、鉄心片形成部71における複数のティース部83の突出方向は、ロール部材203の径方向に対して回転方向の前側に傾いている。
【0080】
よって、本変形例のように、突出部232が、前記軸方向から見て、ロール部材203の径方向に対して交差し且つ回転方向の前側に向かって延びる構成を有することによって、突出部232を、鉄心片形成部71における複数のティース部83の間に、より容易に挿入することができる。したがって、ロール部材203に対して、より容易に鉄心片形成部71を巻き付けることができる。よって、積層鉄心80の製造効率をより向上することができる。
【0081】
(実施形態2)
次に、
図13を参照して、本発明の例示的な実施形態2に係る積層鉄心の製造装置301について説明する。本実施形態では、ロール部材303の中心軸Pの延びる方向が、実施形態1のロール部材3と異なる。以下では、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0082】
図13に示すように、本実施形態に係る製造装置301は、装置本体部302と、ロール部材303と、回転部4と、ガイド部305とを有する。
【0083】
装置本体部302は、ロール部材303、回転部4及びガイド部305を支持する。装置本体部302は、ロール部材303を回転可能に支持している。
【0084】
本実施形態では、ロール部材303の中心軸Pは、水平方向に延びている。本実施形態では、ロール部材303は、軸方向の一側が装置本体部302に接続されている。すなわち、本実施形態では、ロール部材303は、装置本体部302に対して水平方向に延びる中心軸Pを中心として回転可能に、装置本体部302に支持されている。
【0085】
ロール部材303は、実施形態1と同様、筒部31と、突出部32とを有する。ロール部材303は、外周面上に鉄心片形成部71が巻き付けられる。
【0086】
回転部4は、突出部32が鉄心片形成部71における複数のティース部83の間に挿入された状態で、ロール部材303を、中心軸Pを中心として回転させる。
【0087】
ガイド部305は、装置本体部302に固定されている。本実施形態では、ガイド部305は、ロール部材303の軸方向の一側で且つ外周側に位置する。
【0088】
本実施形態では、ガイド部305は、ロール部材303の周方向に並ぶ2つの鉄心片支持部351、352を含む。2つの鉄心片支持部351、352のうちロール部材303の回転方向の前側に位置する鉄心片支持部351は、鉄心片支持部351に対して前記回転方向の後側に位置する鉄心片支持部352よりも、ロール部材303に対して前記軸方向の他側に位置している。
【0089】
すなわち、本実施形態に係る積層鉄心の製造装置301は、外周面上に鉄心片形成部71が巻き付けられる円柱状のロール部材303と、ロール部材303に対してロール部材303の軸方向の一側の位置で、鉄心片形成部71をロール部材303に対して所定の角度で支持して、ロール部材303に対する鉄心片形成部71の巻き付きをガイドするガイド部305と、ロール部材303をロール部材303の中心軸Pを中心として回転させる回転部4と、を有する。ロール部材303は、外周面上に径方向に突出し且つ軸方向に延びる少なくとも一つの突出部32を有する。回転部4は、前記少なくとも一つの突出部32が鉄心片形成部71における複数のティース部83の間に挿入された状態で、ロール部材303を、中心軸Pを中心として回転させる。ガイド部305は、ロール部材303の回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、ロール部材303の軸方向の他側に位置している。
【0090】
本実施形態に係る製造装置301によっても、ロール部材303の外周面上に、鉄心片形成部71を螺旋状に巻き付けつつ積層することができる。ロール部材303の外周面上に巻き付けられる鉄心片形成部71の巻き数が増加するにしたがって、ロール部材303の外周面上における鉄心片形成部71の軸方向の間隔は狭くなる。したがって、ロール部材303に、所定の長さの鉄心片形成部71を巻き付けることにより、鉄心片形成部71の軸方向の隙間が小さくなって、鉄心片形成部71は、積層方向に重なる。
【0091】
すなわち、上述の積層鉄心の製造装置301によって、鉄心片形成部71を螺旋状に巻く巻回工程及び螺旋状に巻かれた鉄心片形成部71を積層方向に重ねる積層工程の両工程を実施することができる。よって、本実施形態に係る製造装置301によっても、前記巻回工程と前記積層工程とを、それぞれ別の装置で実現する場合よりも、積層鉄心80の製造効率を向上することができる。
【0092】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0093】
前記実施形態1では、製造装置1、101は、中心軸Pが上下方向に延びるロール部材3、203を有する。前記実施形態2では、製造装置301は、中心軸Pが水平方向に延びるロール部材303を有する。しかしながら、製造装置は、中心軸が、上下方向に対して傾斜する方向、または、水平方向に対して傾斜する方向に延びるロール部材を有してもよい。
【0094】
前記実施形態2では、ガイド部305は、ロール部材303の周方向に並ぶ複数の鉄心片支持部351、352を含む。しかしながら、ガイド部は、前記実施形態1の変形例1のガイド部105のように、ロール部材の周方向に延びる鉄心片支持部を有してもよい。
【0095】
前記各実施形態では、突出部32、232は、基端部から先端部まで、周方向の長さが同じである。しかしながら、突出部は、積層鉄心のスロット内に挿入可能な形状を有していればよい。すなわち、突出部は、基端部における周方向の長さが、積層鉄心における複数のティース部同士の周方向の隙間のうち、先端側の周方向の隙間の長さよりも短ければよい。突出部は、先端部における周方向の長さが、積層鉄心における複数のティース部同士の周方向の隙間のうち、前記先端側が挿入させる位置における周方向の隙間の長さよりも短ければよい。例えば、突出部は、基端部から先端部に向かうにつれて、周方向の長さが短くてもよい。突出部は、基端部から先端部に向かうにつれて、周方向の長さが長くてもよい。
【0096】
(構成例)
なお、本技術は以下のような構成をとることも可能である。
【0097】
(1)積層鉄心の製造装置は、帯状のバックヨーク形成部と、前記バックヨーク形成部から前記バックヨーク形成部の幅方向の一方に突出する複数のティース部とを有する板状の鉄心片形成部を、前記幅方向の一方に変形させつつ螺旋状に巻いて積層鉄心を製造する製造装置である。前記積層鉄心の製造装置は、外周面上に前記鉄心片形成部が巻き付けられる円柱状のロール部材と、前記ロール部材に対して該ロール部材の軸方向の一側の位置で、前記鉄心片形成部を前記ロール部材に対して所定の角度で支持して、前記ロール部材に対する前記鉄心片形成部の巻き付きをガイドするガイド部と、前記ロール部材を該ロール部材の中心軸を中心として回転させる回転部と、を有する。前記ロール部材は、外周面上に径方向に突出し且つ軸方向に延びる少なくとも一つの突出部を有する。前記回転部は、前記少なくとも一つの突出部が前記鉄心片形成部における前記複数のティース部の間に挿入された状態で、前記ロール部材を、前記中心軸を中心として回転させる。前記ガイド部は、前記ロール部材の回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、前記ロール部材の軸方向の他側に位置している。
【0098】
(2)(1)に記載の積層鉄心の製造装置において、前記突出部の前記軸方向の長さは、前記積層鉄心の軸方向の長さよりも長い。
【0099】
(3)(1)または(2)に記載の積層鉄心の製造装置において、前記突出部の基端部における周方向の長さは、前記積層鉄心における前記複数のティース部同士の周方向の隙間のうち、先端側の周方向の隙間の長さよりも短い。前記突出部の突出方向の長さは、前記ティース部の突出方向の長さよりも短い。
【0100】
(4)(1)から(3)のいずれか一つに記載の積層鉄心の製造装置において、前記ロール部材は、周方向に並ぶ複数の前記突出部を有する。前記ロール部材を前記軸方向から見て、前記複数の突出部の周方向の間隔は、90度以下である。
【0101】
(5)(1)から(4)のいずれか一つに記載の積層鉄心の製造装置において、前記ガイド部は、前記ロール部材に対して前記軸方向の一側で、該ロール部材の周方向に並ぶ複数の鉄心片支持部を含む。前記複数の鉄心片支持部のうち前記回転方向の前側に位置する鉄心片支持部は、該鉄心片支持部に対して前記回転方向の後側に位置する鉄心片支持部よりも、前記ロール部材の前記軸方向の他側に位置している。
【0102】
(6)(1)から(4)のいずれか一つに記載の積層鉄心の製造装置において、前記ガイド部は、前記ロール部材に対して前記軸方向の一側で、該ロール部材の周方向に延びる少なくとも一つの鉄心片支持部を含む。前記少なくとも一つの鉄心片支持部は、前記回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、前記ロール部材の軸方向の他側に位置している。
【0103】
(7)(1)から(6)のいずれか一つに記載の積層鉄心の製造装置において、前記突出部は、前記ロール部材を軸方向から見て、前記ロール部材の径方向に対して交差し且つ回転方向の前側に向かって延びている。
【0104】
(8)積層鉄心の製造方法は、帯状のバックヨーク形成部と、前記バックヨーク形成部から前記バックヨーク形成部の幅方向の一方に突出する複数のティース部とを有する板状の鉄心片形成部を、前記幅方向の一方に変形させつつ螺旋状に巻いて積層鉄心を製造する製造方法である。前記積層鉄心の製造方法は、中心軸を中心として回転する円柱状のロール部材に対して、前記ロール部材の軸方向の一側の位置で、前記ロール部材の回転方向における前側が、前記回転方向における後側よりも、前記軸方向の他側に位置する角度で前記鉄心片形成部を支持するガイド部によって、前記ロール部材に対する前記鉄心片形成部の巻き付きをガイドし、前記鉄心片形成部の前記複数のティース部の間に、前記ロール部材の外周面上に位置する突出部を挿入した状態で、前記ロール部材を回転させることにより、前記鉄心片形成部を前記幅方向の一方に変形させつつ前記ロール部材の外周面上に螺旋状に巻き付け、且つ、前記鉄心片形成部を前記軸方向に重ねる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、帯状の鉄心片形成部が螺旋状に巻かれて構成される積層鉄心の製造装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0106】
1、101、301 製造装置
2、302 装置本体部
3、203、303 ロール部材
4 回転部
5、105、305 ガイド部
31 筒部
32、232 突出部
51、52、151、351、352 鉄心片支持部
70 鋼板
71 鉄心片形成部
72 バックヨーク形成部
74 スリット
80 積層鉄心
81 鉄心片
82 バックヨーク部
83 ティース部
84 スロット
L21 突出部の軸方向の長さ
L22 突出部の基端部における周方向の長さ
L23 突出部の突出方向の長さ
L81 積層鉄心の軸方向の長さ
L82 周方向に隣り合うティース部の先端側における周方向の隙間の長さ
L83 ティース部の突出方向の長さ