(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107651
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】雰囲気制御装置、反応システムおよび反応生成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
F27B 7/06 20060101AFI20240802BHJP
B01J 19/28 20060101ALI20240802BHJP
F27B 7/30 20060101ALI20240802BHJP
F27B 7/36 20060101ALI20240802BHJP
F27B 7/42 20060101ALI20240802BHJP
F27D 7/06 20060101ALI20240802BHJP
F27D 11/02 20060101ALI20240802BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20240802BHJP
F27B 7/10 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
F27B7/06
B01J19/28
F27B7/30
F27B7/36
F27B7/42
F27D7/06 C
F27D11/02 B
F27D19/00 A
F27B7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011681
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】平松 靖也
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】古木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中村 諭
【テーマコード(参考)】
4G075
4K056
4K061
4K063
【Fターム(参考)】
4G075AA02
4G075AA62
4G075AA63
4G075AA70
4G075CA02
4G075DA02
4G075EA06
4G075EB01
4G075EC07
4G075EC09
4G075ED04
4G075ED09
4G075FB02
4G075FB04
4K056AA02
4K056BA06
4K056FA04
4K056FA13
4K061AA08
4K061BA00
4K061DA05
4K061FA11
4K061GA02
4K063AA03
4K063DA13
4K063DA15
4K063DA32
4K063FA02
(57)【要約】
【課題】原料と流体とを好適に反応させる雰囲気制御装置、反応システムおよび反応生成物の製造方法を提供する。
【解決手段】雰囲気制御装置20は、原料を上流側から下流側に搬送するロータリーキルンの筒部に挿入して使用される。放出口21は、筒部103内に流体を放出する。吸入口22は、原料と接触した上記流体を吸入する。邪魔板23は、放出口21と吸入口22とを結ぶ空間の上流側と下流側とに位置することにより筒部103において放出口21から放出された流体が原料に接触して吸入口22に吸入される流体領域を形成する。測温部24は、流体領域における原料の反応を制御するために流体領域の内部の所定位置の温度を測定する。支持部201は、筒部103の少なくともいずれか一方の端部から筒部の内部に延伸可能であって放出口21と吸入口22と邪魔板23と測温部24とを支持する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を上流側から下流側に搬送するロータリーキルンの筒部に挿入して使用される雰囲気制御装置であって、
前記筒部内に流体を放出する放出口と、
前記原料と接触した前記流体を吸入可能な吸入口と、
前記放出口と前記吸入口とを結ぶ空間の前記上流側と前記下流側とに位置することにより前記筒部において前記放出口から放出された前記流体が前記原料に接触して前記吸入口に吸入される流体領域を形成する邪魔板と、
前記流体領域における前記原料の反応を制御するために前記流体領域の内部の所定位置の温度を測定するための測温部と、
前記筒部の少なくともいずれか一方の端部から前記筒部の内部に延伸可能であって前記放出口と前記吸入口と前記邪魔板と前記測温部とを支持する支持部と、を備える
雰囲気制御装置。
【請求項2】
前記支持部が前記筒部に挿入された状態において、前記筒部の少なくともいずれか一方の端部に着脱可能に係合する係合部をさらに備える、
請求項1に記載の雰囲気制御装置。
【請求項3】
前記流体領域は、
第1流体を放出する第1放出口と、前記第1流体を吸入可能な第1吸入口と、前記第1流体と接触する前記原料の反応を制御するための第1測温部と、を有する第1流体領域と、
前記ロータリーキルンの延伸方向に沿った前記第1流体領域とは異なる位置において、第2流体を放出する第2放出口と、前記第2流体を吸入可能な第2吸入口と、前記第2流体と接触する前記原料の反応を制御するための第2測温部と、を有する第2流体領域と、
を含む、
請求項1に記載の雰囲気制御装置。
【請求項4】
前記第1流体領域と前記第2流体領域とは前記筒部の延伸方向に沿って離間して設けられている、
請求項3に記載の雰囲気制御装置。
【請求項5】
前記第1流体領域と前記第2流体領域とは前記筒部の延伸方向に沿って互いの距離が変更可能に設けられている、
請求項3に記載の雰囲気制御装置。
【請求項6】
前記邪魔板は、前記筒部において前記上流側から前記下流側へ移動する前記原料を通過させるための空間である原料通過部を前記筒部との間に形成する、
請求項1に記載の雰囲気制御装置。
【請求項7】
前記邪魔板は、前記筒部の延伸方向に交差する主面を有する2以上の板材であって、前記放出口と前記吸入口と前記測温部とを、前記上流側と前記下流側とにおいて挟み込むように囲み、前記筒部の延伸方向に沿った互いの距離が変更可能に前記支持部に固定されている、
請求項1に記載の雰囲気制御装置。
【請求項8】
前記測温部は、前記放出口および前記吸入口の近傍の少なくともいずれか一方の温度を測定可能に設置されている、
請求項1に記載の雰囲気制御装置。
【請求項9】
前記支持部は、前記放出口と前記吸入口と前記邪魔板と前記測温部との少なくともいずれか1つを前記筒部の回転に対応した方向に回転可能に支持する、
請求項1に記載の雰囲気制御装置。
【請求項10】
前記邪魔板を前記筒部の延伸方向に変位させるための変位機構と、前記変位機構を介して前記邪魔板を変位可能に構成された駆動装置と、をさらに備える、
請求項1に記載の雰囲気制御装置。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の雰囲気制御装置と、
中心軸に沿って回転可能に延伸して前記雰囲気制御装置を受容し、供給された前記原料を前記上流側から前記下流側に搬送可能である前記筒部と、
前記測温部が測定した温度に基づいて、前記筒部を介して前記筒部の内部の少なくとも一部を加熱可能に設けられた温度制御部と、を備える
反応システム。
【請求項12】
前記測温部が測定した温度が予め設定された範囲になるように、前記温度制御部の温度または前記流体の流量の少なくともいずれかの制御をする制御装置をさらに備える、
請求項11に記載の反応システム。
【請求項13】
前記雰囲気制御装置は、前記邪魔板を前記筒部の延伸方向に変位させるための変位機構と、前記変位機構を介して前記邪魔板を変位可能に構成された駆動装置と、を有し、
前記制御装置は、前記測温部が測定した温度に基づいて前記駆動装置の動作を制御する、
請求項12に記載の反応システム。
【請求項14】
前記筒部の回転に対応して前記邪魔板を回転可能な回転機構をさらに備える、
請求項11に記載の反応システム。
【請求項15】
前記筒部の回転に対応して前記支持部を回転させる回転駆動部をさらに備える、
請求項11に記載の反応システム。
【請求項16】
中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部において供給された原料を上流側から下流側に搬送するとともに、前記筒部において放出口から放出された流体が前記原料に接触して吸入口に吸入される1以上の流体領域を有する反応システムが、
前記筒部に前記原料を受け入れ、
前記流体領域において前記放出口から前記流体を放出し、
放出され前記原料に接触した前記流体を前記吸入口から吸入し、
前記流体領域における所定の位置の温度を測定し、
測定した温度が予め設定された温度の範囲に入るように、前記流体領域の温度または前記流体の流量の少なくともいずれかの制御をする、
反応生成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雰囲気制御装置、反応システムおよび反応生成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原料に対して所定の雰囲気を与えることにより所望の反応生成物を連続的に生成する反応装置が存在する。
【0003】
例えば特許文献1に記載のロータリーキルンは、キルン本体の内部に、入口フード側から順に第一反応室と第二反応室とに区画する仕切板が設置されている。第一反応室は、気体状の六フッ化ウランと水蒸気との反応に適した温度に設定され、第二反応室は、第一反応室での反応により生成したフッ化ウラニルと水蒸気との反応に適し、かつ、この反応で生成した三酸化ウランと水素との反応に適した温度に設定される。
【0004】
また例えば特許文献2は、以下の反応装置について開示している。反応装置は、圧力反応容器となるスクリュフィーダ本体と、スクリュフィーダ本体内に触媒を導入する触媒供給部と、スクリュフィーダ本体内に低級炭化水素を導入する低級炭化水素供給部と、を有する。またこの反応装置は、生成したナノ炭素を移送するスクリュと、スクリュによって移送される触媒とナノ炭素を送出する固体送出部と、生成した水素をフィーダ本体外に送出する気体送出部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-028463号公報
【特許文献2】特開2006-290682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述の技術は、ガスを中に流して原料を反応させる場合には、原料とガスとの反応が進むにつれて消費されていくため、下流側のガスは濃度が薄くなり反応効率が低下する。一方、反応効率の低下を抑制するためにガスを大量に流し込むとキルン内の温度が低下してしまい好ましくない。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、原料と流体とを好適に反応させる反応システム等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる雰囲気制御装置は、原料を上流側から下流側に搬送するロータリーキルンの筒部に挿入して使用される雰囲気制御装置であって、放出口、吸入口、邪魔板、測温部および支持部を有する。放出口は、筒部内に流体を放出する。吸入口は、原料と接触した上記流体を吸入することが可能である。邪魔板は、放出口と吸入口とを結ぶ空間の上流側と下流側とに位置することにより筒部において放出口から放出された流体が原料に接触して吸入口に吸入される流体領域を形成する。測温部は、流体領域における原料の反応を制御するために流体領域の内部の所定位置の温度を測定する。支持部は、筒部の少なくともいずれか一方の端部から筒部の内部に延伸可能であって放出口と吸入口と邪魔板と測温部とを支持する。
【0009】
本開示に係る反応システムは、上記雰囲気制御装置、筒部および温度制御部を有する。筒部は、中心軸に沿って回転可能に延伸して雰囲気制御装置を受容し、供給された原料を上流側から下流側に搬送可能である。温度制御部は、測温部が測定した温度に基づいて、筒部を介して筒部の内部の少なくとも一部を加熱可能に設けられている。
【0010】
本開示にかかる反応生成物の製造方法は、反応システムが以下の処理を実行する。反応システムは、中心軸に沿って回転可能に延伸する筒部において供給された原料を上流側から下流側に搬送するとともに、筒部において放出口から放出された流体が原料に接触して吸入口に吸入される1以上の流体領域を有する。反応システムは、筒部に原料を受け入れる。反応システムは、流体領域において放出口から流体を放出する。反応システムは、原料に接触した上記流体を吸入口から吸入する。反応システムは、流体領域における所定の測定位置の温度を測定する。反応システムは、測定した温度が予め設定された温度の範囲に入るように、流体領域の温度または流体の流量の少なくともいずれかの制御をする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、原料と流体とを好適に反応させる雰囲気制御装置、反応システムおよび反応生成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1にかかる反応システムの構成を示す側面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる雰囲気制御装置の構成を示す斜視図である。
【
図4】反応生成物の製造方法を示す第1のフローチャートである。
【
図5】反応生成物の製造方法を示す第2のフローチャートである。
【
図6】反応生成物の製造方法を示す第3のフローチャートである。
【
図7】雰囲気制御装置の構成の変形例を示す第1の断面図である。
【
図8】雰囲気制御装置の構成の変形例を示す第2の断面図である。
【
図9】実施の形態2にかかる反応システムの構成を示す側面図である。
【
図10】実施の形態3にかかる反応システムの構成を示す側面図である。
【
図11】実施の形態3にかかる雰囲気制御装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0014】
<実施の形態1>
図1を参照しながら、実施の形態1にかかる反応装置の主な構成について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる反応システムの構成を示す側面図である。なお
図1は、理解容易のために反応システム10の構造の一部を断面により示している。
【0015】
なお、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、
図1は、右手系の直交座標系が付されている。また、
図2以降において、直交座標系が付されている場合、
図1のX軸、Y軸、およびZ軸方向と、これらの直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸方向はそれぞれ一致している。
【0016】
図1に示される反応システム10は、ロータリーキルンと称される装置であって、本実施の形態の一実施態様である。反応システム10は、受け入れた原料R10を転動させつつ加熱しながら所定の流体に接触させることにより反応生成物R11を生成し、生成した反応生成物R11を送出する。
【0017】
反応システム10は主な構成として、キルン部100、温度制御部110および雰囲気制御装置20を有している。また反応システム10は上述の構成に加えて、フィーダ140、キルンフット150、キルン駆動部160および流体制御部170を有している。
図1の反応システム10は左側(すなわちY軸マイナス側)が上流側であり、右側(すなわちY軸プラス側)が下流側である。なお、以降の説明において、キルン部100の内部に供給された物質は、原料R10も反応生成物R11もその中間体も含めて、原料R10と称する。
【0018】
キルン部100は円筒状の反応炉であって、上流側においてフィーダ140を介して原料R10を受け入れ、受け入れた原料R10を転動させつつ下流側へ搬送することにより反応生成物R11を生成する。またキルン部100は生成した反応生成物R11を下流側の端部からキルンフット150を介して送出する。キルン部100は、供給口101、送出口102、筒部103および従動部106を有している。
【0019】
キルン部100は、上流側において、供給口101にフィーダ140が回転可能に係合し、フィーダ140から原料R10を受け入れる。フィーダ140は上方に設けられた開口部である原料投入口141から原料R10を受け入れて、受け入れた原料R10を供給口101に案内する。
【0020】
筒部103は中空円筒形状を有するキルン部100の本体である。筒部103は中心軸C10に沿って延伸し、上流側においてフィーダ140と中心軸C10周りに回転可能に係合するとともに、下流側においてキルンフット150と中心軸C10周りに回転可能に係合する。なお、図に示す筒部103は、Y軸に並行に横臥しているが、筒部103は上流側より下流側が下になる姿勢に傾いていても良い。
【0021】
筒部103は外周部に温度制御部110が接触している。これにより筒部103は温度制御部110により加熱される。また筒部103は外周に従動部106を有している。従動部106はキルン駆動部160から中心軸C10周りに回転する方向の外力を受ける。
【0022】
また筒部103は、雰囲気制御装置20を受容している。筒部103が雰囲気制御装置20を受容することにより、筒部103は内部に第1流体領域A11および第2流体領域A12を形成する。
【0023】
第1流体領域A11は、雰囲気制御装置20が有する第1邪魔板231、第2邪魔板232および筒部103により囲まれた領域である。第1流体領域A11には、雰囲気制御装置20が有する第1流体供給管251および第1流体回収管252を含む。第1流体供給管251は、第1流体領域A11に第1流体G11を放出する。第1流体回収管252は、第1流体G11が原料R10と接触した後の流体である第1反応流体G12を吸入する。すなわち原料R10は第1流体領域A11を通過することにより、第1流体G11と接触する。なお、第1邪魔板231と筒部103とは原料R10が通過可能な隙間である原料通過部を有している。同様に、第2邪魔板232と筒部103とは原料R10が通過可能な隙間である原料通過部を有している。
【0024】
第2流体領域A12は、雰囲気制御装置20が有する第2邪魔板232、第3邪魔板233および筒部103により囲まれた領域である。第1流体領域A11には、雰囲気制御装置20が有する第2流体供給管253および第2流体回収管254を含む。第2流体供給管253は、第2流体領域A12に第2流体G21を放出する。第2流体回収管254は、第2流体G21が原料R10と接触した後の流体である第2反応流体G22を吸入する。すなわち原料R10は第2流体領域A12を通過することにより、第2流体G21と接触する。なお、第3邪魔板233と筒部103とは原料R10が通過可能な隙間を有している。
【0025】
キルン部100は、下流側において、送出口102にキルンフット150が係合する。キルンフット150は、送出口102の側を回転可能に支持するとともに、送出口102から送出される反応生成物R11を下方に設けられた開口部である反応生成物出口151から送出する。
【0026】
上記構成により、キルン部100は、受け入れた原料R10を下流側へ搬送する過程において、反応生成物R11を第1流体領域A11に通過させる。またキルン部100は、第1流体領域A11を通過した原料R10を、第1流体領域A11の下流側に隣接する第2流体領域A12に順次通過させる。反応生成物R11は、第1流体領域A11および第2流体領域A12を順次通過することにより反応生成物R11に変化する。
【0027】
キルン部100は、受け入れる原料R10に対して室温から摂氏1500度の範囲における所定の温度を付与する。そのため、キルン部100の主たる構成はこの温度に耐えうる部材により形成されている。すなわちキルン部100を構成する部材は、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、銅、アルミニウム、チタン、タングステン、ニオブ、タンタル、モリブデン、ケイ素、硼素、炭素の少なくとも一つを成分として含む合金や、アルミナやジルコニアなどの金属酸化物、窒化ケイ素などの窒化物、炭化チタンなどの炭化物、クロム硼化物などの硼化物を含むセラミックスや、結晶質グラファイトや繊維強化グラファイトのようなカーボンにより形成されるか、上記合金と上記セラミックスと上記カーボンのいずれかを組み合わせた複合材、被覆材、接合材により形成され得る。
【0028】
温度制御部110は、筒部103を転動する原料R10の反応を促進させる温度にキルン部の少なくとも一部を加熱する。反応システム10において、温度制御部110は、キルン部100の外周部を加熱する。温度制御部110は例えば室温から摂氏1500度程度の範囲の加熱を行う。温度制御部110は、例えば筒状のキルン部100の周囲を囲むように加熱装置を有している。加熱装置は例えばシースヒータ、コイルヒータまたはセラミックヒータなどの温度制御可能な任意のヒータを含む。あるいは加熱装置は、ガスを燃焼して加熱した流体を循環させるものであってもよい。温度制御部110は、キルン部100の温度を制御するための制御装置を含みうる。例えば温度制御部110は、キルン部100の所定の位置に温度を監視するための温度計を有していてもよい。
【0029】
また温度制御部110はキルン部100の延伸方向に沿って複数設置されていてもよい。温度制御部110は例えば、供給口101に比較的に近い側であって、供給口101から離間した位置に第1温度制御部110Aを有し、第1温度制御部110Aよりも下流側の第1流体領域A11に対応する位置に第2温度制御部110Bを有し得る。同様に温度制御部110は、第1流体領域A11より下流の第2流体領域A12に対応する位置において第3温度制御部110Cを有し得る。
【0030】
この場合例えば、供給口101における内部温度は供給口101の領域では室温となる。また第1温度制御部110Aはキルン部100の内部温度を例えば100度になるように制御する。さらに第2温度制御部110Bは第1流体領域A11の温度を例えば400度になるように制御する。第3温度制御部110Cは第2流体領域A12の温度を例えば800度になるように制御する。上述のように、反応システム10は複数の温度制御部110を有することによりキルン部100の延伸方向に沿って複数の温度プロファイルを設定できる。
【0031】
上述の構成により、温度制御部110は、測温部24が測定した温度に応じて、筒部103を介して筒部103の内部の少なくとも一部を加熱できる。これにより反応システム10は、好適に原料を処理し、反応生成物を製造する。
【0032】
キルン駆動部160は、モータと、このモータから突出する駆動軸に嵌合する駆動力伝達機構とを有する。キルン駆動部160は、駆動力伝達機構を駆動する。これにより駆動力伝達機構が従動部106を駆動してキルン部100を回転させる。駆動力伝達機構および従動部106は例えば互いに噛み合うように構成された歯車である。キルン駆動部160はこのような構成により中心軸C10を回転中心としてキルン部100を回転させる。またこれにより、キルン部100は、供給口101から受け入れた原料R10を転動させながら送出口102に搬送する。従動部106は筒部103の外周に固定された歯車であって、キルン駆動部160に従って中心軸C10を中心に回転運動をする。
【0033】
流体制御部170は、雰囲気制御装置20に接続し、第1流体G11および第2流体G21をそれぞれ供給するとともに、第1反応流体G12および第2反応流体G22をそれぞれ回収する。流体制御部170は第1流体供給管251、第1流体回収管252、第2流体供給管253および第2流体回収管254に接続する配管のそれぞれに設けられた流量調整バルブを含み得る。
【0034】
次に、
図2をさらに参照して雰囲気制御装置20について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる雰囲気制御装置の構成を示す斜視図である。
図2は理解容易のため一部を切欠いて表示している。雰囲気制御装置20は、ロータリーキルンである反応システム10の筒部103に挿入して使用される。雰囲気制御装置20は、構成として、放出口21、吸入口22、邪魔板23、測温部24および支持部201を含む。
【0035】
放出口21は、雰囲気制御装置20の外部から供給される所定の流体を筒部103の内部に放出する開口部である。
図2に示す例の場合、放出口21は第1放出口211と第2放出口212とを含む。
【0036】
第1放出口211は、第1流体供給管251に設けられた開口部であって、第1邪魔板231と第2邪魔板232との間に位置している。これにより第1放出口211は、筒部103と第1邪魔板231と第2邪魔板232とが形成する第1流体領域A11に、第1流体供給管251から供給される第1流体G11を放出する。
【0037】
第2放出口212は、第2流体供給管253に設けられた開口部であって、第2邪魔板232と第3邪魔板233との間に位置している。これにより第2放出口212は、筒部103と第2邪魔板232と第3邪魔板233とが形成する第2流体領域A12に、第2流体供給管253から供給される第1反応流体G12を放出する。
【0038】
吸入口22は、放出口21から放出され原料に接触した流体を吸入して雰囲気制御装置20の外部に排出することが可能に設けられた開口部である。
図2に示す吸入口22は、第1吸入口221と第2吸入口222とを含む。
【0039】
第1吸入口221は、第1流体回収管252に設けられた開口部であって、第1邪魔板231と第2邪魔板232との間に位置している。これにより第1吸入口221は、第1流体領域A11において第1放出口211から放出された第1流体G11が原料R10と接触した後の流体を含む第1反応流体G12を吸入する。第1吸入口221が吸入した第1反応流体G12は、第1流体回収管252を介してキルン部100の外部へ排出される。
【0040】
第2吸入口222は、第2流体回収管254に設けられた開口部であって、第2邪魔板232と第3邪魔板233との間に位置している。これにより第2吸入口222は、第2流体領域A12において第2放出口212から放出された第2流体G21が原料R10と接触した後の流体を含む第2反応流体G22を吸入する。第2吸入口222が吸入した第2反応流体G22は、第2流体回収管254を介してキルン部100の外部へ排出される。
【0041】
邪魔板23は、筒部103の延伸方向に交差する主面を有する2以上の板状部材であって、放出口21と吸入口22と測温部24とを、上流側と下流側とにおいて挟み込むように囲み、流体領域を形成する。雰囲気制御装置20において、邪魔板23は、第1邪魔板231、第2邪魔板232および第3邪魔板233を含む。
【0042】
第1邪魔板231は、第1放出口211と第1吸入口221とを結ぶ空間の上流側に位置する。第2邪魔板232は、第1放出口211と第1吸入口221とを結ぶ空間の下流側且つ第2放出口212と第2吸入口222とを結ぶ空間の上流側に位置する。そして第3邪魔板233は、第2放出口212と第2吸入口222とを結ぶ空間の下流側に位置する。これにより雰囲気制御装置20は筒部103において第1邪魔板231と第2邪魔板232との間に第1流体領域A11を形成するとともに、第2邪魔板232と第3邪魔板233との間に第2流体領域A12を形成する。
【0043】
なお、邪魔板23は、筒部103において上流側から下流側へ移動する原料R10を通過させるための空間を筒部103との間に形成する。これにより雰囲気制御装置20は、原料R10を円滑に反応させることができる。
【0044】
図2に示した邪魔板23は、円盤状であるが、これは一例であって邪魔板23の形状は限定されない。邪魔板は原料R10が通過可能な複数の螺旋状の板を有していてもよい。邪魔板23は原料R10を通過させるための孔や溝を有していてもよい。
【0045】
雰囲気制御装置20は、ロータリーキルンに流体領域を設けることより、流体領域において流体と原料とを効率よく接触させることができる。よって反応システム10は、原料と流体とを好適に反応させて反応生成物を製造できる。
【0046】
測温部24は、流体領域における原料R10の反応を制御するために流体領域の内部の所定位置の温度を測定する。雰囲気制御装置20において、測温部24は第1測温部241、第2測温部242、第3測温部243および第4測温部244を含む。この内の第1測温部241は、第1放出口211の近傍に設置されている。第2測温部242は、第2放出口212の近傍に設置されている。第3測温部243は、第1吸入口221の近傍に設置されている。第4測温部244は、第2吸入口222の近傍に設置されている。
【0047】
測温部24は、熱電対であってもよいし、サーミスタであってもよい。測温部24はあるいは非接触式の温度計を構成するものであってもよい。非接触式の温度計は例えば、熱源が放射する赤外線等を検出することにより温度を測定する放射温度計である。なお、測温部24は、上記の温度センサに加えて、ガスセンサ、圧力センサ、位置センサ等の測定手段を備えていてもよい。
【0048】
上述の通り、第1流体領域A11は、第1流体G11を放出する第1放出口211と、第1流体G11と原料R10とが接触した後の第1反応流体G12を吸入可能な第1吸入口221と、第1流体G11と接触する原料R10の反応を制御するための第1測温部241および第3測温部243と、を有する。
【0049】
第2流体領域A12は、ロータリーキルンの延伸方向に沿った第1流体領域A11とは異なる位置において、第2流体G21を放出する第2放出口212と、第2流体G21と原料R10とが接触した後の第2反応流体G22を吸入可能な第2吸入口222と、第2流体G21と接触する原料R10の反応を制御するための第2測温部242および第4測温部244と、を有する。
【0050】
これにより、雰囲気制御装置20は、反応システム10に組み込まれた状態において、複数の流体を異なる雰囲気において原料と接触させることができる。そのため、反応システム10は、原料R10に複数の反応を連続的に与えることができる。
【0051】
また雰囲気制御装置20は第1流体領域A11において第1測温部241および第3測温部243を有している。これにより、反応システム10を使用するユーザまたは反応システム10を制御する制御装置は、第1流体領域A11の温度を把握できる。さらにこのユーザまたは制御装置は、把握した温度に応じて第1流体領域A11の反応を制御できる。
【0052】
例えば、第1流体領域A11において原料R10と第1流体G11とを接触させることにより発熱する場合において、第1放出口211の近傍の温度と第1吸入口221の近傍の温度の差が予め設定された範囲より小さい場合には、反応が充分に行われていない可能性がある。そのような場合、ユーザまたは制御装置は、第1流体G11の供給量、原料R10の供給量または温度制御部110の温度を調整し得る。
【0053】
なお、測温部24は、放出口21および吸入口22の近傍の少なくともいずれか一方の温度を測定可能に設置されていることが好ましい。雰囲気制御装置20は、放出口21の近傍と吸入口22の近傍との両方の温度を測定可能に測温部24が設置されている。そのため雰囲気制御装置20は流体領域における反応の状況を好適に把握するためのデータを提供可能である。
【0054】
支持部201は、筒部103の少なくともいずれか一方の端部から筒部103の内部に延伸可能な構造体であって、放出口21、吸入口22、邪魔板23および測温部24を支持する。支持部201は係合部202を含む。係合部202は、支持部201が筒部103に挿入された状態において、筒部103の少なくともいずれか一方の端部に着脱可能に係合する。
【0055】
反応システム10は、下流側の端部であるキルンフット150に雰囲気制御装置20を受け入れるための孔を有している。雰囲気制御装置20は、キルンフット150の孔から筒部103に挿入され、係合部202がキルンフット150と係合する。これにより雰囲気制御装置20は反応システム10に組み込まれた状態となる。このように雰囲気制御装置20がキルン部100に挿抜可能な構造を有することにより、雰囲気制御装置20は、ロータリーキルンに対する組み込みやメンテナンスが容易となる。
【0056】
次に、
図3を参照して反応システム10の機能についてさらに説明する。
図3は、反応システムのブロック図である。反応システム10は、雰囲気制御装置20、温度制御部110、キルン駆動部160、流体制御部170および制御装置300を有している。またこれらの各構成は適宜通信可能に接続している。
【0057】
雰囲気制御装置20は測温部24が測定する温度のデータを制御装置300に供給する。温度制御部110は、制御装置300からの指示を受けてキルン部100を加熱する。温度制御部110は設定された温度を実現するための温度計や電流計などを含んでいてもよい。キルン駆動部160は制御装置300からの指示によりキルン部100を回転させるための動力を発揮する。
【0058】
流体制御部170は制御装置300からの指示に応じて第1流体G11、第1反応流体G12、第2流体G21および第2反応流体G22の流量を調整する。なお、流体制御部170はそれぞれの流体を加熱または冷却する機能を有していても良い。この場合、流体制御部170はからの指示に応じて流体の加熱または冷却をおこなってもよい。
【0059】
制御装置300は、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)などと称される演算装置を含む制御回路である。制御装置300は主な構成として演算部310および記憶部320を有している。演算部310は各構成から種々のデータを受けとり、これを処理し、処理結果をする。記憶部320は不揮発性メモリを含む記憶装置であって、例えば反応システム10を動作させるためのプログラムを記憶している。また記憶部320は、反応システム10が好適に反応生成物を製造するための製造条件の設定を記憶しうる。反応生成物を製造するための製造条件の設定は例えば温度制御部110の温度設定、キルン駆動部160によるキルン部100の回転速度、あるいは流体制御部170が有するバルブの開度などである。
【0060】
制御装置300は上述の構成に加えて、ユーザからの操作を受け付けるインタフェースを有している。反応システム10はユーザの操作に応じてパラメータを設定してもよいし、予め設定された条件にしたがって自動的に製造条件を設定するものであってもよい。
【0061】
例えば反応システム10は、測温部24が測定した温度が予め設定された範囲になるように、温度制御部110の温度または流体の流量の少なくともいずれかの制御をするものであってもよい。これにより、反応システム10は、効率良く原料R10を処理し、反応生成物を製造する。
【0062】
次に、
図4を参照して反応システム10が実行する反応生成物の製造方法について説明する。
図4は、反応生成物の製造方法を示す第1のフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、反応システム10において製造条件を設定する場合に実行されるものである。
【0063】
まず、反応システム10は、キルン部100を予め設定された設定温度に加熱する(ステップS11)。このとき反応システム10は温度制御部110がキルン部100を加熱する。
【0064】
次に、反応システム10は、キルン駆動部160を駆動させることによりキルン部100を回転させる(ステップS12)。
【0065】
次に、反応システム10は、第1流体領域A11および第2流体領域A12において流体の放出および吸入を開始する(ステップS13)。
【0066】
次に、反応システム10は、キルン部100に原料R10を受け入れる(ステップS14)。
【0067】
次に、原料R10がキルン部100に搬送されて第1流体領域A11および第2流体領域A12に搬送された状態において、反応システム10は、流体領域における温度を測定する(ステップS15)。
【0068】
次に、反応システム10は、測定した温度が設定範囲内か否かを判定する(ステップS16)。より具体的には反応システム10の制御装置300は、記憶部320が記憶する設定範囲を参照して、測温部24が測定した温度が設定範囲か否かを判定する。
【0069】
測定した温度が設定範囲内であると制御装置300が判定しない場合(ステップS16:NO)、反応システム10はステップS17へ進む。測定した温度が設定範囲内であると制御装置300が判定する場合(ステップS16:YES)、反応システム10はステップS18へ進む。
【0070】
ステップS17において、反応システム10の制御装置300は製造条件の設定を変更する(ステップS17)。製造条件の設定の変更は、ステップS16において測定した温度に応じて行われうる。具体的は例えば、反応が目論見よりも進んでいないと想定される場合には、反応システム10は、製造条件を反応が促進する条件に変更し、ステップS18に進む。
【0071】
反応を進めるための設定の一例は、例えば原料R10と反応するための第1流体G11の流量を増加させることである。あるいは反応を抑制する必要がある場合には、反応システム10は、原料R10と反応するための第1流体G11の流量を低下させる。反応システム10は予め設定されたプログラムに応じてこのような製造条件の設定を行う。製造条件は、原料R10の供給量であってもよいし、キルン駆動部160の駆動速度であってもよい。製造条件は温度制御部110の温度設定であってもよい。
【0072】
ステップS18において、反応システム10の制御装置300は、測定した温度が設定温度内に入っているときの製造条件を記憶部320に記憶する(ステップS18)。製造条件を記憶部320に記憶すると、反応システム10は一連の処理を終了する。
【0073】
以上、製造条件の設定を行う場合の処理について説明した。上述の方法により、反応システム10は、記憶した製造条件を用いて好適に反応生成物を製造できる。なお、上述のフローチャートは、制御装置300が製造条件の設定を行う例を示したが、製造条件を変更する場合にユーザが条件設定の一部または全部を実行してもよい。いずれにせよ、反応システム10は、第1流体領域A11および第2流体領域A12において効率良く流体を供給すると共に、反応の状況を把握できる。そのため反応システム10は、効率良い製造条件を設定できる。
【0074】
次に、
図5を参照して、反応システム10が反応生成物を製造している場合における処理の例を説明する。
図5は、反応生成物の製造方法を示す第2のフローチャートである。
図5に示すフローチャートは、例えば
図4に示すフローチャートが実行され製造条件の設定が行われた後に、反応生成物を連続的に製造する場合の例である。
図5のフローチャートは、ステップS16の後の処理が
図4のフローチャートと異なる。
【0075】
ステップS16において、測定した温度が設定範囲内であると制御装置300が判定しない場合(ステップS16:NO)、反応システム10はステップS21へ進む。測定した温度が設定範囲内であると制御装置300が判定する場合(ステップS16:YES)、反応システム10はステップS22へ進む。
【0076】
ステップS21において、反応システム10は所定のアラートを出力する(ステップS21)。アラートは、反応システム10が有するユーザインタフェースを介してユーザに通知する手段を介して、ユーザに通知される。通知手段は例えば画像、音、光、振動等を用いて実現されうる。ここで、反応システム10がアラートを出力する場合は、例えば製造している反応生成物の反応効率が所定の設定範囲から逸脱した場合である。反応システム10はアラートを出力するとステップS22に進む。
【0077】
ステップS22において、反応システム10は、反応生成物の製造を終了するか否かを判定する(ステップS22)。反応生成物の製造を終了するか否かは、例えばアラートに応じて制御装置300またはユーザが判定してもよい。あるいは反応生成物の製造を終了するか否かは、アラートの有無に拘わらずユーザの操作により判定するものであってもよい。
【0078】
反応生成物の製造を終了すると判定しない場合(ステップS22:NO)、反応システム10は反応生成物をキルン部100の外へ送出し(ステップS23)、さらにステップS14に戻り処理を続ける。反応生成物の製造を終了すると判定する場合(ステップS22:YES)、反応システム10は一連の処理を終了する。
【0079】
以上、反応生成物の製造方法について説明したが、ステップS16において、反応システム10は設定範囲を複数の段階有していても良い。また反応システム10は複数の段階に応じてアラートの態様を変更させてもよい。さらに反応システム10は、複数の段階に応じてステップS22において処理を終了するか否かを判定しても良い。
【0080】
次に、
図6を参照して、反応生成物の製造方法についてさらに説明する。
図6は、反応生成物の製造方法を示す第3のフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、ステップS21に代えてステップS31を有している点が、
図5のフローチャートと異なる。
【0081】
ステップS16において、測定した温度が設定範囲内であると制御装置300が判定しない場合(ステップS16:NO)、反応システム10はステップS31へ進む。
【0082】
ステップS31において、反応システム10は、測定した温度が設定範囲に入るように製造条件を制御する(ステップS31)。すなわち反応システム10の制御装置300は、予め設定されたプログラムに従い、測温部24が測定した温度に応じて、製造条件を上述した例のように、測定した温度が予め設定された温度の範囲に入るように、流体領域の温度または流体の流量の少なくともいずれかの制御をする。反応システム10は製造条件を制御すると、ステップS22に進む。
【0083】
以上、
図6のフローチャートについて説明した。なお、反応システム10は、
図5のフローチャートと
図6のフローチャートを兼ね備えた処理を実行するものであってもよい。すなわち反応システム10は例えば測温部24が測定した温度が設定範囲に入っていると判定しない場合に、アラートを出力するとともに、製造条件の制御をおこなってもよい。あるいは反応システム10は、複数段階の設定範囲を有しており、アラートを出力せずに製造条件を制御したり、製造条件を制御せずにアラートを出力したりしてもよい。
【0084】
次に、
図7を参照して雰囲気制御装置20の形態の変形例について説明する。
図7は、雰囲気制御装置の構成の変形例を示す第1の断面図である。
図7は上から順に雰囲気制御装置20A、20Bおよび20Cの断面図が示されている。なお、以降の説明において、各構成を示す符号において、同じ数字の後に異なるアルファベットが付されている場合には、それらは同じ構成の変形例であることを示している。
【0085】
雰囲気制御装置20Aは、第1流体供給管251A、第1流体回収管252A、第2流体供給管253Aおよび第2流体回収管254Aを有している。第1流体供給管251A、第1流体回収管252A、第2流体供給管253Aおよび第2流体回収管254Aは、キルン部100の延伸方向に沿って変位可能に固定されている。これにより例えば第1流体供給管251Aが有する第1放出口211Aは、第1邪魔板231と第2邪魔板232との間において変位可能となっている。
【0086】
またこれに伴い、第1流体供給管251はキルン部100の外側において可撓性を有する部分を含む。可撓性を有する部分を含むことにより、第1流体供給管251Aは、第1放出口211Aが変位することを許容する。第1流体回収管252A、第2流体供給管253Aおよび第2流体回収管254Aも同様の構造を有している。上述の構成により、雰囲気制御装置20Aは、流体領域における流体の流れを好適に調整できる。
【0087】
次に、雰囲気制御装置20Bについて説明する。雰囲気制御装置20Bは、第1流体供給管251B、第1流体回収管252B、第2流体供給管253Bおよび第2流体回収管254Bが支持部201に内蔵されている。また雰囲気制御装置20Bは、第1邪魔板231B、第2邪魔板232Bおよび第3邪魔板233Bを有している。
【0088】
第1邪魔板231B、第2邪魔板232Bおよび第3邪魔板233Bは、キルン部100の延伸方向(Y軸方向)に沿って互いの距離が変更可能に支持部201に固定されている。また第1邪魔板231B、第2邪魔板232Bおよび第3邪魔板233Bは、支持部201の周りを回転可能に支持されていてもよい。これにより、雰囲気制御装置20Bは、流体領域の範囲を好適に調整できる。
【0089】
次に、雰囲気制御装置20Cについて説明する。雰囲気制御装置20Cは、第1流体供給管251C、第1流体回収管252C、第2流体供給管253Cおよび第2流体回収管254Cが支持部201に内蔵されている。雰囲気制御装置20Cは、支持部201の外周に、第2邪魔板232Cを有する。第2邪魔板232Cは支持部201の外周にスライド可能に設けられた中空円筒の部分と、この中空円筒の端部に設けられた板材とを含む。また雰囲気制御装置20Cは、第2邪魔板232Cの外周に第3邪魔板233Cを有する。第3邪魔板233Cは、第2邪魔板232Cの円筒部の外周にスライド可能に設けられた中空円筒の部分と、この中空円筒の端部に設けられた板材とを含む。
【0090】
このような構成により、第2邪魔板232Cと第3邪魔板233Cとはキルン部100の延伸方向に沿って変位可能である。これにより、これにより、雰囲気制御装置20Cは、流体領域の範囲を好適に調整できる。
【0091】
以上、雰囲気制御装置20の変形例について説明した。上述の変形例はそれぞれ独立したものに限られない。雰囲気制御装置20は、上述の構成の全部または一部が組み合わせられた構成であってもよい。また雰囲気制御装置20は、上述の変位可能な構成を駆動する駆動装置を有していてもよい。さらに雰囲気制御装置20は、この駆動装置を制御装置300が制御する構成であってもよい。
【0092】
例えば雰囲気制御装置20は、邪魔板23を筒部103の延伸方向に変位させるための変位機構と、変位機構を介して邪魔板23を変位可能に構成された駆動装置と、を有していてもよい。またこの場合、制御装置300は、測温部24が測定した温度に基づいてこの駆動装置の動作を制御するものであってもよい。これにより反応システム10は、様々な製造条件を設定可能となり、製造条件の設定範囲が広がり、効率良く反応生成物を製造できる。
【0093】
次に、
図8を参照して雰囲気制御装置20のさらなる変形例について説明する。
図8は、雰囲気制御装置の構成の変形例を示す第2の断面図である。
図8には上から順に、雰囲気制御装置20Eと雰囲気制御装置20Fが示されている。
【0094】
雰囲気制御装置20Eは、支持部201Eの内部に第1流体供給管251E、第1流体回収管252Eを含む。また支持部201Eは、第1放出口211Eの近傍に第1測温部241を有し、第1吸入口221の近傍に第3測温部243を有している。第1測温部241Eは、例えば熱電対であって、測定したデータを伝達するためのケーブル261Eが第1流体供給管251Eに沿って敷設されている。同様に、第3測温部243Eは、測定したデータを伝達するためのケーブル262Eが第1流体回収管252Eに沿って敷設されている。また、ケーブルは耐熱性や耐腐食性を有する合金やセラミックス、樹脂、ガラス等で被覆されていてもよい。このような構成により、雰囲気制御装置20Eの測温部24は、熱電対やケーブルをキルン部100の雰囲気から保護できる。なお、測定されたデータは、金属線を含むケーブルを介して伝達されてもよいし、光ファイバのように中空構造を含むケーブルを介して伝達されてもよい。
【0095】
次に、雰囲気制御装置20Fについて説明する。雰囲気制御装置20Fは、支持部201Fに第1流体供給管251Fおよび第1流体回収管252Fを内蔵している。また第1流体供給管251の第1放出口211Fは、第1邪魔板231Fの主面に設けられている。同様に、第1流体回収管252の第1吸入口221は、第2邪魔板232Fの主面に設けられている。
【0096】
第1放出口211Fの近傍には第1測温部241Fが設けられている。第1測温部241Fは第1邪魔板231Fに設けられた溝部に設置されており、さらに第1測温部241Fが測定したデータを伝達するためのケーブル261Fは、支持部201Fの表面に設けられた溝に敷設されている。
【0097】
同様に、第1吸入口221第1放出口211Fの近傍には第3測温部243Fが設けられている。第3測温部243Fは第1邪魔板231Fに設けられた溝部に設置されており、さらに第3測温部243Fが測定したデータを伝達するためのケーブル262Fは、支持部201Fの表面に設けられた溝に敷設されている。なお、第2邪魔板232Fには、ケーブル261Fおよびケーブル262Fが通過できる孔が設けられている。上述の構成により、雰囲気制御装置20Fは、測温部24の配置について、より製造容易な態様を有している。
【0098】
なお、測温部24の配置は、上述の例に限られない。測温部24は流体領域に1つでもよいし、3つ以上であってもよい。例えば測温部24は、邪魔板23の外周部に沿って複数配置されていてもよい。このような配置をした場合、雰囲気制御装置20は、流体領域における温度分布が把握できるため、反応の状況がより詳しく判定できる。また測温部24は例えば第1流体領域A11において、第1邪魔板231と第2邪魔板232との中間部から下方に突出して筒部103の内壁近傍に配置されてもよい。これにより雰囲気制御装置20は、原料R10の温度をより正確に測定できる。
【0099】
以上、実施の形態1について説明したが、実施の形態1にかかる反応システム10は上述の構成に限られない。例えば反応システム10が有する流体領域の数や大きさについては制限されない。また上述の例において第1流体G11と第2流体G21とは異なる種類の流体であってもよいし、同じ種類の流体であってもよい。反応システム10において、雰囲気制御装置20はキルン部100の上流側においてフィーダ140に支持され、上流側から筒部103の内部に延伸するものであってもよい。また反応システム10は、雰囲気制御装置20を、キルン部100の上流側の端部と、下流側の端部とのそれぞれに有していてもよい。実施の形態1によれば、原料と流体とを好適に反応させる雰囲気制御装置、反応システムおよび反応生成物の製造方法を提供することができる。
【0100】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2について説明する。
図9は、実施の形態2にかかる反応システム10Gの構成を示す側面図である。本実施の形態にかかる反応システム10Gは、第1流体領域A11と第2流体領域A12との間に中間領域A20を有する点が、
図1に示す反応システム10と異なる。
【0101】
反応システム10Gは雰囲気制御装置20Gを有している。雰囲気制御装置20Gは、第1邪魔板231G、第2邪魔板232G、第3邪魔板233Gおよび第4邪魔板234Gを有している。第1邪魔板231Gと第2邪魔板232Gとが対向する領域は、第1流体領域A11である。第2邪魔板232Gと第3邪魔板233Gとが対向する領域は、中間領域A20である。第3邪魔板233Gと第4邪魔板234Gとが対向する領域は、第2流体領域A12である。
【0102】
中間領域A20は、第1流体領域A11の下流且つ第2流体領域A12の上流に位置する領域である。中間領域A20は、雰囲気制御装置20Gから流体が供給されたり、雰囲気制御装置20Gへ流体を供給したりする機能はない。第1流体領域A11から搬送される原料R10は、中間領域A20を通過した後に第2流体領域A12に進入する。
【0103】
中間領域A20を有することにより、雰囲気制御装置20Gは、第1流体領域A11において第1流体G11と反応した原料R10を中間領域A20において加熱または冷却できる。あるいは雰囲気制御装置20Gは、第1流体領域A11を通過した原料R10の経時的な変化を促進できる。
【0104】
なお、本実施形態にかかる支持部201は、キルンフット150からフィーダ140まで延伸しており、キルン部100の両端において支持されている。このような構成により、雰囲気制御装置20Gは、より安定した状態で反応システム10Gに組み込まれる。
【0105】
以上、実施の形態2について説明した。反応システム10Gは、第1流体領域A11と第2流体領域A12とが筒部103の延伸方向に沿って離間して設けられている。これにより雰囲気制御装置20Gは、例えば第1流体領域A11における第1の反応工程の後であって、第2流体領域A12における第2の反応工程を通過させる前に流体と接触させない領域を設定できる。これにより雰囲気制御装置20Gないし反応システム10Gは、反応の自由度を向上させることができる。
【0106】
以上、実施の形態2について説明した。本実施形態にかかる雰囲気制御装置20Gの邪魔板23は、筒部103の延伸方向に沿って互いの距離が変更可能に設けられていてもよい。また雰囲気制御装置20Gは、例えば上流側も流体を供給し、あるいは流体を回収してもよい。以上、実施の形態2によれば、原料と流体とを好適に反応させる雰囲気制御装置、反応システムおよび反応生成物の製造方法を提供することができる。
【0107】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3について説明する。
図10は、実施の形態3にかかる反応システム10Hの構成を示す側面図である。本実施形態にかかる反応システム10Hは、雰囲気制御装置20が回転可能な構成である点が、上述の実施形態と異なる。
【0108】
反応システム10Hは、ベアリングを介してキルンフット150およびフィーダ140に支持されており、中心軸C10を中心に回転可能に構成されている。また反応システム10Hは、回転駆動部260を有する。回転駆動部260は支持部201に設けられた回転機構261に係合して雰囲気制御装置20Hを駆動する。これにより例えば雰囲気制御装置20Hは、キルン部100と同期して回転できる。雰囲気制御装置20Hとキルン部100とが同期して回転することにより、第1邪魔板231H、第2邪魔板232Hおよび第3邪魔板233Hは、キルン部100と接触していても動作可能となる。
【0109】
なお、第1流体供給管251H、第1流体回収管252H、第2流体供給管253Hおよび第2流体回収管254Hは支持部201Hに内蔵されている。また、雰囲気制御装置20Hは、係合部202においてロータリージョイントを有している。この場合、第1流体供給管251H、第1流体回収管252H、第2流体供給管253Hおよび第2流体回収管254Hは、適宜、二重管構造等が採用されてもよい。
【0110】
図11は、実施の形態3にかかる雰囲気制御装置20Hの構成を示す斜視図である。雰囲気制御装置20Hは、第1邪魔板231H、第2邪魔板232Hおよび第3邪魔板233Hを有している。第1邪魔板231Hは、円周方向に3か所の凸部271を有している。271は筒部103の内壁に接触する。換言すると、第1邪魔板231Hは、凸部271と凸部271との間に原料通過部を有している。同様に、第2邪魔板232Hは円周方向に凸部272を有し、第3邪魔板233Hは円周方向に凸部273を有している。272および273は筒部103の内壁にそれぞれ接触する。このような構成により雰囲気制御装置20Hは、筒部103と一体となって回転する。
【0111】
またこのとき、第1放出口211H、第1吸入口221H、第2放出口212Hおよび第2吸入口222Hも中心軸C10を中心として回転する。これにより、第1放出口211Hおよび第2放出口212Hからそれぞれ放出される流体は撹拌される。そのため、雰囲気制御装置20Hは、第1流体領域A11および第2流体領域A12において原料R10と原料とが好適に反応する。
【0112】
以上、実施の形態3によれば、原料と流体とを好適に反応させる雰囲気制御装置、反応システムおよび反応生成物の製造方法を提供することができる。
【0113】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0114】
10 反応システム
20 雰囲気制御装置
21 放出口
22 吸入口
23 邪魔板
24 測温部
100 キルン部
101 供給口
102 送出口
103 筒部
106 従動部
110 温度制御部
140 フィーダ
141 原料投入口
150 キルンフット
151 反応生成物出口
160 キルン駆動部
170 流体制御部
201 支持部
202 係合部
211 第1放出口
212 第2放出口
221 第1吸入口
222 第2吸入口
241 第1測温部
242 第2測温部
243 第3測温部
244 第4測温部
251 第1流体供給管
252 第1流体回収管
253 第2流体供給管
254 第2流体回収管
231 第1邪魔板
232 第2邪魔板
233 第3邪魔板
234 第4邪魔板
260 回転駆動部
261 回転機構
300 制御装置
310 演算部
320 記憶部
A11 第1流体領域
A12 第2流体領域
A20 中間領域
C10 中心軸
G11 第1流体
G12 第1反応流体
G21 第2流体
G22 第2反応流体
R10 原料
R11 反応生成物