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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107656
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】有機性廃棄物の処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/38 20220101AFI20240802BHJP
   B01F 35/50 20220101ALI20240802BHJP
   B01F 35/92 20220101ALI20240802BHJP
   B01F 27/053 20220101ALI20240802BHJP
   B01F 27/072 20220101ALI20240802BHJP
   B01F 27/091 20220101ALI20240802BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20240802BHJP
   B01F 27/191 20220101ALI20240802BHJP
   B01F 27/70 20220101ALI20240802BHJP
   B01F 35/12 20220101ALI20240802BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20240802BHJP
【FI】
B09B3/38 ZAB
B01F35/50
B01F35/92
B01F27/053
B01F27/072
B01F27/091
B01F27/112
B01F27/191
B01F27/70
B01F35/12
B09B3/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011692
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】517306640
【氏名又は名称】株式会社下瀬微生物研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】下瀬 眞一
【テーマコード(参考)】
4D004
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4D004AA01
4D004AB01
4D004CA15
4D004CA18
4D004CA22
4D004CB26
4D004CB28
4D004CB31
4D004CB45
4D004CC07
4G037CA03
4G037CA04
4G037DA15
4G037DA30
4G037EA03
4G078AA13
4G078AB20
4G078BA01
4G078BA09
4G078CA03
4G078CA09
4G078CA12
4G078DA30
4G078EA03
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】攪拌装置の攪拌体と収容容器の周壁部との間における有機性廃棄物の噛み込み等のトラブルを防ぎメンテナンス性を向上させ得る有機性廃棄物の処理装置を提供する。
【解決手段】収容容器2と、収容部加熱手段Hと、攪拌装置3とを備える。攪拌装置3は、攪拌シャフト31と複数の攪拌羽根33とを有する。攪拌羽根33は、支持軸部34と、攪拌体35とを有する。攪拌体35は、送り面36a,36b,37a,37bと、周壁対向面36c,37cとを有する。送り面は、攪拌シャフト31の回転方向に対向する位置に設けられ、攪拌シャフト31の軸方向に対する有機性廃棄物の送り量を調節する。周壁対向面は、収容容器2の周壁部21の内周面ISに対向し、内周面ISと離間する位置に設けられる。周壁対向面には、周壁対向面から内周面ISに向かって突出し、周壁対向面よりも小さな面積で内周面ISに当接するスクレーパ部39が設けられる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を収容する収容部を有する収容容器と、前記収容部を加熱する収容部加熱手段と、前記収容部で前記有機性廃棄物を攪拌する攪拌装置とを含み、微生物を利用して前記有機性廃棄物の有機成分を分解させる有機性廃棄物の処理装置であって、
前記収容容器は、筒状の周壁部と、前記周壁部の開口端を塞ぐ一対の端壁部とを有し、
前記一対の端壁部のいずれか一方は、生成物排出口を有し、
前記攪拌装置は、前記一対の端壁部に両端部が支持される攪拌シャフトと、前記攪拌シャフトの軸方向に所定間隔をもって取り付けられるとともに前記攪拌シャフトから放射状に延びる複数の攪拌羽根とを有し、
前記攪拌羽根は、前記攪拌シャフトに取り付けられる支持軸部と、前記支持軸部の先端部に取り付けられる攪拌体とを有し、
前記攪拌体は、前記攪拌シャフトの回転方向に対向する位置に設けられるとともに前記攪拌シャフトの軸方向に対する前記有機性廃棄物の送り量を調節する送り面と、前記周壁部の内周面に対向するとともに前記内周面と離間する位置に設けられる周壁対向面とを有し、
前記周壁対向面には、前記周壁対向面から前記内周面に向かって突出するとともに前記周壁対向面よりも小さな面積で前記内周面に当接するスクレーパ部が設けられている、
ことを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。
【請求項2】
前記スクレーパ部のうち前記周壁部の前記内周面に当接する部分は、前記攪拌シャフトの軸方向に延びる直線状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項3】
前記収容容器の前記周壁部は、断面半円状で山型の上側曲面部材と、断面半円状で谷型の下側曲面部材と、前記上側曲面部材の下端と前記下側曲面部材の上端とを接続する断面直線状の一対の中間平面部材とを有し、
前記下側曲面部材が、前記周壁部の下部を構成し、
前記下側曲面部材の内周半径は、前記スクレーパ部の回転半径よりも大きく設定され、
前記スクレーパ部は、前記周壁部の前記内周面の下端部のみ当接するように構成した、
ことを特徴とする請求項2に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項4】
前記攪拌体は、金属板から成る複数の要素部材を溶接することによって形成され、
前記要素部材は、前記支持軸部の先端部が挿通される第1孔部を有するとともに前記攪拌体の外壁の一部を形成する第1外部要素部材と、前記支持軸部の先端部が挿通される第2孔部を有するとともに前記攪拌体の内部に配置される内部要素部材とを含み、
前記支持軸部の先端部は、前記第1孔部を形成する壁面と前記第2孔部を形成する壁面とを支持した状態で前記第1外部要素部材と溶接されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項5】
前記送り面は、前記攪拌シャフトの第1の回転方向における前面側に設けられる第1送り面と、前記第1の回転方向とは逆側の第2の回転方向における前面側に設けられる第2送り面とを有し、
前記第1送り面は、前記第1の回転方向に対して傾斜状の平面に形成され、
前記第2送り面は、弧状の曲面に形成され、
前記攪拌シャフトが前記第1の回転方向に回転された場合、前記収容部の前記有機性廃棄物は、前記第1送り面により前記生成物排出口に送られるように構成され、
前記攪拌シャフトが前記第2の回転方向に回転された場合、前記収容部の前記有機性廃棄物は、前記第2送り面により前記生成物排出口に送られない状態を保持して攪拌されるように構成され、
前記スクレーパ部は、前記支持軸部の長手方向中心線を通るとともに前記攪拌シャフトの軸方向に延びるように配置され、
前記スクレーパ部を境界として前記第1の回転方向の側に前記第1送り面が配置され、
前記スクレーパ部を境界として前記第2の回転方向の側に前記第2送り面が配置されている、
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機性廃棄物を発酵乾燥処理する処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の処理装置は、有機性廃棄物を収容する収容部を有する収容容器(攪拌槽)と、収容部を加熱する加熱ジャケット(加温装置)と、収容部で有機性廃棄物を攪拌する攪拌装置とを備えている。
【0003】
攪拌装置は、収容容器の一対の端壁部に支持される攪拌シャフト(回転軸)と、攪拌シャフトに設けられる攪拌羽根とを有している。収容容器の一方の端壁部には、有機性廃棄物が処理されてできた生成物を排出するための生成物排出口(取出し口)が設けられている。攪拌羽根は、攪拌シャフトに取り付けられる支持軸部(通気管)と、支持軸部の先端に取り付けられる攪拌体(羽根体)とを有している。攪拌体は、断面形状が三角形のものと平行四辺形のものがあり、一端側の平行四辺形状の攪拌体を除いてそれらが交互に配置されている。攪拌シャフトが第1の回転方向へ回転する場合には、有機性廃棄物は生成物排出口の方へ送られる。また攪拌シャフトが第1の回転方向とは逆側の第2の回転方向へ回転する場合には、有機性廃棄物は決まった方向へ移動することがなく攪拌される。これにより、攪拌シャフトの回転方向によって有機性廃棄物の動きを制御することができる。特許文献1の処理装置では、攪拌体は、攪拌シャフトの回転方向に対向する位置に送り面を有している。これにより、攪拌体のうち、収容容器の周壁部の内周面に対向する位置に設けられる周壁対向面は、三角形や平行四辺形の形状となるので、支持軸部の直径に対して大きな面積を有していた。
【0004】
特許文献1のような処理装置では、加熱ジャケットで加熱される収容容器の周壁部の内周面に、有機性廃棄物の付着が生じやすい。そこで、従来、収容容器の周壁部の内周面における有機性廃棄物の焦げ付きを防止するために、攪拌羽根の攪拌体の部分を掻き取りスクレーパとした処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の処理装置は、掻き取りスクレーパによって、収容容器の周壁部の内周面に付着した有機性廃棄物を掻き取ることができる。これにより、付着した有機性廃棄物の焦げ付きを防止し、付着物により加熱ジャケットの熱の伝達量が低下して加熱効率が低下する不都合を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-106277号公報
【特許文献2】特開2008-64345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような送り面を有する攪拌体を、特許文献2のような掻き取りスクレーパとして使用する場合、攪拌体の周壁対向面を収容容器の周壁部の内周面に当接させる必要があった。周壁対向面は大きな面積を有していたため、攪拌体の周壁対向面を適切な接触強度で収容容器の周壁部の内周面に当接させることが難しかった。これにより、製造時およびメンテナンス作業時における接触強度の調整作業が煩雑になるという問題点があった。
【0007】
また、掻き取りスクレーパとして使用する従来の攪拌体は、大きな面積の周壁対向面を有していたので、攪拌体と収容容器の周壁部との間に有機性廃棄物が噛み込み易いという問題点があった。噛み込みが多く発生することにより、その解消のために多くのメンテナンス作業時間を必要としていた。
【0008】
また、従来の処理装置では、攪拌体は金属製のブロックで形成されていた。支持軸部の先端と攪拌体の表面とが溶接により結合されていた。このため、攪拌体と収容容器の周壁部との間に有機性廃棄物が噛み込むと、その衝撃で支持軸部から攪拌体が脱落しやすいという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、その目的は、攪拌装置の攪拌体と収容容器の周壁部との間における有機性廃棄物の噛み込み等のトラブルを防ぎメンテナンス性を向上させ得る有機性廃棄物の処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために本明細書に開示する発明は、以下のように構成されている。すなわち、第1の発明は、有機性廃棄物を収容する収容部を有する収容容器と、前記収容部を加熱する収容部加熱手段と、前記収容部で前記有機性廃棄物を攪拌する攪拌装置とを含み、微生物を利用して前記有機性廃棄物の有機成分を分解させる有機性廃棄物の処理装置であって、前記収容容器は、筒状の周壁部と、前記周壁部の開口端を塞ぐ一対の端壁部とを有し、前記一対の端壁部のいずれか一方は、生成物排出口を有し、前記攪拌装置は、前記一対の端壁部に両端部が支持される攪拌シャフトと、前記攪拌シャフトの軸方向に所定間隔をもって取り付けられるとともに前記攪拌シャフトから放射状に延びる複数の攪拌羽根とを有し、前記攪拌羽根は、前記攪拌シャフトに取り付けられる支持軸部と、前記支持軸部の先端部に取り付けられる攪拌体とを有し、前記攪拌体は、前記攪拌シャフトの回転方向に対向する位置に設けられるとともに前記攪拌シャフトの軸方向に対する前記有機性廃棄物の送り量を調節する送り面と、前記周壁部の内周面に対向するとともに前記内周面と離間する位置に設けられる周壁対向面とを有し、前記周壁対向面には、前記周壁対向面から前記内周面に向かって突出するとともに前記周壁対向面よりも小さな面積で前記内周面に当接するスクレーパ部が設けられている。
【0011】
第1の発明によれば、攪拌羽根の攪拌体の周壁対向面は、収容容器の周壁部の内周面と離間する位置に設けられている。また、攪拌体の周壁対向面には、周壁対向面から周壁部の内周面に向かって突出するとともに周壁対向面よりも小さな面積で周壁部の内周面に当接するスクレーパ部が設けられている。
【0012】
収容容器の周壁部の内周面に当接するスクレーパ部により、当該内周面に付着した有機性廃棄物を掻き取ることができる。これにより、付着した有機性廃棄物の焦げ付きを抑制し、付着物により収容部加熱手段の熱の伝達量が低下して加熱効率が低下する不都合を抑制することができる。
【0013】
ここで、攪拌体は、攪拌シャフトの回転方向に対向する位置に送り面が設けられているので、周壁部の内周面に対向する位置の周壁対向面は、支持軸部の直径と比較して大きくなる。しかし、周壁対向面は、周壁部の内周面と離間する位置に設けられている。これにより、攪拌羽根が回転した場合であっても攪拌体の周壁対向面が周壁部の内周面に接触することがない。一方で、スクレーパ部は、周壁対向面よりも小さな面積で周壁部の内周面に当接する。これにより、攪拌体と周壁部との間に収容部の有機性廃棄物が噛み込むことを抑制することができる。有機性廃棄物の噛み込みのトラブルを抑制することにより、従来よりもメンテナンス性を向上させることができる。
【0014】
また、スクレーパ部は、攪拌体の周壁対向面よりも小さな面積で周壁部の内周面に当接するので、攪拌体の周壁対向面全体を周壁部の内周面に直接当接させる場合と比較して、スクレーパ部を適切な接触強度で周壁部の内周面に当接させることが容易である。これにより、製造時およびメンテナンス作業時において、容易に接触強度の調整作業を行うことができる。
【0015】
第2の発明では、第1の発明において、前記スクレーパ部のうち前記周壁部の前記内周面に当接する部分は、前記攪拌シャフトの軸方向に延びる直線状に形成されている。
【0016】
第2の発明によれば、回転羽根の回転方向に対して直交する方向に延びるような形でスクレーパ部を周壁部の内周面に線接触させるので、周壁部の内周面に付着した有機性廃棄物をより確実に掻き取ることができる。これにより、攪拌体と周壁部との間に収容部の有機性廃棄物が噛み込むことをよりいっそう防ぐことができる。これにより、メンテナンス性をより向上させることができる。
【0017】
第3の発明では、第2の発明において、前記収容容器の前記周壁部は、断面半円状で山型の上側曲面部材と、断面半円状で谷型の下側曲面部材と、前記上側曲面部材の下端と前記下側曲面部材の上端とを接続する断面直線状の一対の中間平面部材とを有し、前記下側曲面部材が、前記周壁部の下部を構成し、前記下側曲面部材の内周半径は、前記スクレーパ部の回転半径よりも大きく設定され、前記スクレーパ部は、前記周壁部の前記内周面の下端部のみ当接するように構成している。
【0018】
第3の発明によれば、収容容器の周壁部の内周面のうち、有機性廃棄物の自重でより付着しやすい下端部のみスクレーパ部を当接させ、それ以外の場所では、スクレーパ部を当接させないことにより、有機性廃棄物の掻き取りと噛み込み防止とを効率よく行うことができる。
【0019】
第4の発明では、第3の発明において、前記攪拌体は、金属板から成る複数の要素部材を溶接することによって形成され、前記要素部材は、前記支持軸部の先端部が挿通される第1孔部を有するとともに前記攪拌体の外壁の一部を形成する第1外部要素部材と、前記支持軸部の先端部が挿通される第2孔部を有するとともに前記攪拌体の内部に配置される内部要素部材とを含み、前記支持軸部の先端部は、前記第1孔部を形成する壁面と前記第2孔部を形成する壁面とを支持した状態で前記第1外部要素部材と溶接されている。
【0020】
第4の発明によれば、攪拌体は、第1孔部を形成する壁面と第2孔部を形成する壁面との2箇所において支持軸部に支持されている。これにより、従来よりも攪拌体の回転方向に加わる外力に対する強度を十分に確保することができるので、外力により支持軸部から攪拌体が脱落するトラブルを防ぐことができる。これにより、メンテナンス性をより向上させることができる。また、攪拌体を金属板から成る複数の要素部材を溶接することによって形成するので、攪拌体を金属ブロックで形成する場合と比較して、形状の設計変更を容易にすることができる。
【0021】
第5の発明では、第2~第4のいずれか一つの発明において、前記送り面は、前記攪拌シャフトの第1の回転方向における前面側に設けられる第1送り面と、前記第1の回転方向とは逆側の第2の回転方向における前面側に設けられる第2送り面とを有し、前記第1送り面は、前記第1の回転方向に対して傾斜状の平面に形成され、前記第2送り面は、弧状の曲面に形成され、前記攪拌シャフトが前記第1の回転方向に回転された場合、前記収容部の前記有機性廃棄物は、前記第1送り面により前記生成物排出口に送られるように構成され、前記攪拌シャフトが前記第2の回転方向に回転された場合、前記収容部の前記有機性廃棄物は、前記第2送り面により前記生成物排出口に送られない状態を保持して攪拌されるように構成され、前記スクレーパ部は、前記支持軸部の長手方向中心線を通るとともに前記攪拌シャフトの軸方向に延びるように配置され、前記スクレーパ部を境界として前記第1の回転方向の側に前記第1送り面が配置され、前記スクレーパ部を境界として前記第2の回転方向の側に前記第2送り面が配置されている。
【0022】
第5の発明によれば、攪拌シャフトを第1の回転方向に回転させる場合と第2の回転方向に回転させる場合の両方において、攪拌シャフトの軸方向に対する有機性廃棄物の送り量の調節機能、スクレーパ部の掻き取り機能、および、攪拌体と周壁部との間の有機性廃棄物の噛み込み防止機能を、バランスよく発揮させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る有機性廃棄物の処理装置によれば、攪拌装置の攪拌体と収容容器の周壁部との間における有機性廃棄物の噛み込み等のトラブルを防いでメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る有機性廃棄物の処理装置の概略構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る有機性廃棄物の処理装置の収容容器およびその周辺を示す正面図である。
図3】本実施形態に係る有機性廃棄物の処理装置の攪拌シャフトおよび攪拌羽根を示す側面図である。
図4図3の攪拌シャフトおよび攪拌羽根の要部拡大斜視図である。
図5】攪拌シャフトおよび攪拌羽根と収容容器の周壁部との位置関係を示す正面断面図である。
図6】攪拌羽根の第1攪拌体を示す図であって、(a)は第1攪拌体の側面図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
図7】攪拌羽根の第2攪拌体を示す図であって、(a)は第2攪拌体の側面図、(b)は(a)のB-B線断面図である。
図8】攪拌羽根の第1攪拌体の送り面と第2攪拌体の送り面の組み合わせを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る有機性廃棄物の処理装置1の概略構成を示す図である。図2は、本実施形態に係る有機性廃棄物の処理装置1の収容容器2およびその周辺を示す正面図である。この処理装置1は、微生物を利用して有機性廃棄物の有機成分を分解させる装置である。処理装置1は、図1および図2に示すように、収容容器2と、攪拌装置3と、収容部加熱手段Hと、凝縮部6と、真空ポンプ7と、冷却水ポンプ8と、クーリングタワー9とを備えている。
【0027】
収容容器2は、筒状の周壁部21と、周壁部21の開口端を塞ぐ一対の端壁部22,22とを有している。収容容器2は、周壁部21の中心軸が水平方向に延びるようにして配置される。周壁部21および一対の端壁部22,22により囲まれた収容容器2の内部には、有機性廃棄物を収容するための収容部26が形成されている。周壁部21は、略楕円の断面形状をしている。周壁部21の長手方向中央部の上部には、有機性廃棄物の投入口23が設けられている。また、周壁部21の収容容器21の長手方向の一端部側および他端部側には、それぞれ連通管25が設けられている。一対の端壁部22,22の一方側には、投入された有機性廃棄物を処理した後の発酵生成物を排出するための生成物排出口24が設けられている。
【0028】
攪拌装置3は、収容部26で有機性廃棄物を攪拌するために設けられている。攪拌装置3は、攪拌シャフト31と、複数の攪拌羽根33と、電動モータ32とを有している。攪拌シャフト31の両端部は、一対の端壁部22,22に支持されている。攪拌羽根33は、攪拌シャフト31の軸方向(図1のX方向)に所定間隔をもって、かつ、攪拌シャフト31から放射状に延びるように、攪拌シャフト31に複数取り付けられている。電動モータ32は、攪拌シャフト31を第1の回転方向Fまたは第1の回転方向Fとは逆側の第2の回転方向Sに回転させる。
【0029】
収容部加熱手段Hは、収容容器2の周壁部21を覆うように設けられる加熱ジャケット4と、加熱ジャケット4に加熱用蒸気を供給するボイラ5とを有している。加熱ジャケット4は、収容部26を加熱するために設けられている。加熱ジャケット4は、周壁部21を覆うジャケット周壁部41を有している。加熱ジャケット4には、供給配管11を通じてボイラ5から加熱用蒸気が供給される。加熱ジャケット4に供給された加熱用蒸気が収容容器2の周壁部21を加熱することによって、収容部26の有機性廃棄物には、熱が与えられる。加熱ジャケット4に供給された加熱用蒸気は、熱交換により凝縮されて凝縮水となる。この凝縮水は、加熱ジャケット4に接続された戻配管12によってボイラ5に戻される。
【0030】
凝縮部6は、収容部26で加熱された有機性廃棄物から発生する蒸気を凝縮させるために設けられている。凝縮部6は、凝縮容器61と、案内管64と、接続部65とを有している。凝縮容器61は、収容容器2に隣接するとともに収容容器2の長手方向に沿って延びるように配設されている。案内管64は、凝縮容器61の両端部のそれぞれに接続されている。接続部65は、案内管64の端部と収容容器2の連通管25の端部とを接続している。収容部26の有機性廃棄物から発生した蒸気は、連通管25、接続部65、および案内管64を通って凝縮容器61へ導かれる。凝縮容器61の内部には、一対のヘッド62と、一対のヘッド62によって支持された複数の冷却管63が設けられている。冷却管63とクーリングタワー9との間には、冷却水配管13が設けられている。
【0031】
クーリングタワー9は、受水槽91、汲み上げポンプ92、ノズル93、流下部94、およびファン95を有している。受水槽91には、凝縮部6から排出された冷却水が流入する。汲み上げポンプ92は、受水槽91から冷却水を汲み上げる。ノズル93は、汲み上げられた冷却水を流下部94に向けて噴射する。ファン95は、冷却水が流下部94を流下する間、流下部94に向けて送風を行う。冷却水は、ファン95からの送風を受けて温度が低下する。冷却水は、流下部94を流下した後、再び受水槽91に流入する。クーリングタワー9で冷却された冷却水は、冷却水ポンプ8によって送水され、冷却水配管13を通って凝縮部6に戻される。冷却水は、凝縮部6とクーリングタワー9との間の冷却水配管13を循環する。
【0032】
クーリングタワー9では、加熱された有機性廃棄物から発生する蒸気が凝縮部6において凝縮した凝縮水も注水される。本実施形態では、凝縮部6の凝縮容器61に吸引配管14を介して真空ポンプ7が接続されている。真空ポンプ7は、収容容器2の収容部26を減圧するとともに、収容容器2および吸引配管14に滞留した凝縮水をクーリングタワー9の受水槽91へ導く。
【0033】
上述の収容容器2、攪拌装置3および加熱ジャケット4は、設置ベース15を介して建物の床面に設置される。設置ベース15には、収容部26に収容された有機性廃棄物の重量を測定するための重量計が設けられている。
【0034】
収容容器2の投入口23から投入された有機性廃棄物は、加熱ジャケット4によって加熱されながら、攪拌装置3の攪拌羽根33の回転によって攪拌される。そして、所定時間経過した後、発酵生成物は、生成物排出口24から排出される。
【0035】
図3は、本実施形態に係る有機性廃棄物の処理装置1の攪拌シャフト31および攪拌羽根33を示す側面図である。図4は、図3の攪拌シャフト31および攪拌羽根33の要部拡大斜視図である。図5は、攪拌シャフト31および攪拌羽根33と収容容器2の周壁部21との位置関係を示す正面断面図である。図3図5に基づいて攪拌シャフト31および攪拌羽根33の詳細構造について説明する。
【0036】
攪拌シャフト31は、中空構造となっている。攪拌シャフト31の内部には、加熱用蒸気の通路が形成されている。攪拌シャフト31の内部には、供給配管11を介してボイラ5から加熱用蒸気が供給される。攪拌シャフト31の一端部には、供給配管11と接続するための蒸気供給口31aが設けられている。攪拌シャフト31の他端部には、電動モータ32と接続するためのモータ接続部31bが設けられている。攪拌シャフト31の蒸気供給口31a側は、生成物排出口24を有する端壁部22に支持されている。以下の説明において、攪拌シャフト31の軸方向(X方向)のうち、モータ接続部31b側をX1方向とする。また、攪拌シャフト31の軸方向(X方向)のうち、蒸気供給口31a側をX2方向とする。
【0037】
攪拌羽根33は、攪拌シャフト31に取り付けられる支持軸部34と、支持軸部34の先端部に取り付けられる攪拌体35とを有している。支持軸部34は、金属製の円管により形成されている。支持軸部34の基端部の内部は、攪拌シャフト31の内部の蒸気通路と接続されている。したがって、支持軸部34の内部にも加熱用蒸気が通るようになっている。支持軸部34は、攪拌シャフト31の外周面の相対する2箇所の位置に一対取り付けられている。この一対の支持軸部34,34は、長手方向の中心線CLが互いに一致するように配置されている(図5参照)。また、この一対の支持軸部34,34は、一対の第1放熱板部34a,34aによって連結されている。一対の第1放熱板部34a,34aは、攪拌シャフト31の軸方向(X方向)から合わせて見た場合、略菱形になるように形成されている。そして、この一対の支持軸部34,34が、攪拌シャフト31の軸方向(X方向)に所定の間隔をもって複数並び、かつ、攪拌シャフト31の回転方向に90度ずつ向きを変えて複数並ぶようにして、取り付けられている。すなわち、図5に示すように、攪拌シャフト31の軸方向から見た場合、支持軸部34の中心線CLの2本が直交するように配置されている。
【0038】
各支持軸部34には、中心線CLに沿って延びる一対の第2放熱板部34b,34bが設けられている。第1放熱板部34aおよび第2放熱板部34bは、支持軸部34の内部を通る加熱用蒸気の熱を、効率良く周囲の有機性廃棄物に伝えることができる。また、第1放熱板部34aおよび第2放熱板部34bは、支持軸部34の補強部材としても機能している。また、第1放熱板部34aは、有機性廃棄物を生成物排出口24の方に送る際に、その動きを補助する機能を有している。
【0039】
支持軸部34先端部の攪拌体35は、第1攪拌体36、第2攪拌体37および第3攪拌体38の3種類により構成されている。これら3種類の攪拌体35は、互いに形状が異なっている。攪拌シャフト31の蒸気供給口31aに最も近い位置にある一対の支持軸部34,34のうち、一方の支持軸部34の先端部には、第1攪拌体36が設けられている。攪拌シャフト31の蒸気供給口31aに最も近い位置にある一対の支持軸部34,34のうち、他方の支持軸部34の先端部には、第3攪拌体38が設けられている。攪拌シャフト31の蒸気供給口31aに最も近い位置から2番目の位置にある一対の支持軸部34,34のうち、一方の支持軸部34の先端部には、第1攪拌体36が設けられている。攪拌シャフト31の蒸気供給口31aに最も近い位置から2番目の位置にある一対の支持軸部34,34のうち、他方の支持軸部34の先端部には、第3攪拌体38が設けられている。攪拌シャフト31の蒸気供給口31aに最も近い位置から3番目の位置にある一対の支持軸部34,34のうち、一方の支持軸部34の先端部には、第2攪拌体37が設けられている。攪拌シャフト31の蒸気供給口31aに最も近い位置から3番目の位置にある一対の支持軸部34,34のうち、他方の支持軸部34の先端部には、第3攪拌体38が設けられている。
【0040】
攪拌シャフト31の蒸気供給口31aに最も近い位置から4番目の位置以降の一対の支持軸部34,34では、第1攪拌体36および第3攪拌体38の組み合わせと、第2攪拌体37および第3攪拌体38の組み合わせとが、X1方向に交互に並ぶように配置されている。ただし、最後の位置にある一対の支持軸部34,34と、最後から2番目の位置にある一対の支持軸部34,34とは、両方とも第2攪拌体37および第3攪拌体38の組み合わせとなっている。
【0041】
また、第1攪拌体36および第2攪拌体37は、図4に示すように、攪拌シャフト31の周囲に90度ピッチでX1方向かつ第2の回転方向Sに螺旋状に配置されている。また、図5に示すように、攪拌シャフト31の中心C2に対して第1攪拌体36と点対称の位置には、第3攪拌体38が配置されている。また、攪拌シャフト31の回転中心C2に対して第2攪拌体37と点対称の位置には、第3攪拌体38が配置されている。
【0042】
図5に示すように、第1攪拌体36は、第1送り面36aと、第2送り面36bと、周壁対向面36cとを有している。第1送り面36aおよび第2送り面36bは、攪拌シャフト31の軸方向(X方向)に対する有機性廃棄物の送り量を調節するために設けられている。第1送り面36aは、攪拌シャフト31の第1の回転方向Fにおける前面側に設けられている。第2送り面36bは、第2の回転方向Sにおける前面側に設けられている。また、周壁対向面36cは、収容容器2の周壁部21の内周面ISに対向するとともに内周面ISと離間する位置に設けられている。周壁対向面36cには、周壁対向面36cから内周面ISに向かって突出するとともに周壁対向面36cよりも小さな面積で内周面ISに当接するスクレーパ部39が設けられている。
【0043】
第2攪拌体37は、第1送り面37aと、第2送り面37bと、周壁対向面37cとを有している。第1送り面37aおよび第2送り面37bは、攪拌シャフト31の軸方向に対する有機性廃棄物の送り量を調節するために設けられている。第1送り面37aは、攪拌シャフト31の第1の回転方向Fにおける前面側に設けられている。第2送り面37bは、第2の回転方向Sにおける前面側に設けられている。また、周壁対向面37cは、収容容器2の周壁部21の内周面ISに対向するとともに内周面ISと離間する位置に設けられている。周壁対向面37cには、周壁対向面37cから内周面ISに向かって突出するとともに周壁対向面37cよりも小さな面積で内周面ISに当接するスクレーパ部39が設けられている。
【0044】
第3攪拌体38は、第1攪拌体36および第2攪拌体37のような送り面を有していない。第3攪拌体38は、第1攪拌体36および第2攪拌体37よりも小さい直方体状の本体部を有している。この本体部に、第1攪拌体36および第2攪拌体37と同様のスクレーパ部39が設けられている。
【0045】
収容容器2の周壁部21は、断面半円状で山型の上側曲面部材21aと、断面半円状で谷型の下側曲面部材21bと、上側曲面部材21aの下端と下側曲面部材21bの上端とを接続する断面直線状の一対の中間平面部材21c,21cとを有している。下側曲面部材21bが、周壁部21の下部を構成している。下側曲面部材21bの内周半径R1は、スクレーパ部39の回転半径R2よりも大きく設定されている。図5では、回転半径R2によるスクレーパ部39の回転軌跡Lが示されている。スクレーパ部39の回転中心は、攪拌シャフト31の回転中心C2と一致している。回転中心C2と下側曲面部材21bのR中心C1とは位置がずれている。回転中心C2は、R中心C1よりも鉛直下方の位置となるように設定されている。これにより、スクレーパ部39は、周壁部21の内周面ISの下端部のみ当接するように構成されている。
【0046】
図6は、攪拌羽根33の第1攪拌体36を示す図であって、(a)は第1攪拌体36の側面図、(b)は(a)のA-A線断面図である。図7は、攪拌羽根33の第2攪拌体37を示す図であって、(a)は第2攪拌体37の側面図、(b)は(a)のB-B線断面図である。第1攪拌体36および第2攪拌体37は、金属板から成る複数の要素部材を溶接することによって形成されている。
【0047】
第1攪拌体36は、図6に示すように、第1外部要素部材361と、第2外部要素部材362と、第3外部要素部材363と、第4外部要素部材364と、第5外部要素部材365と、第6外部要素部材366と、内部要素部材367とを有している。第1外部要素部材361、第2外部要素部材362、第3外部要素部材363、第4外部要素部材364、第5外部要素部材365、および、第6外部要素部材366は、それぞれ第1攪拌体36の外壁の一部を形成している。内部要素部材367は、第1攪拌体36の内部に配置されている。第1外部要素部材361は第1孔部361aを有している。第1孔部361aには、支持軸部34の先端部が挿通される。また、内部要素部材367は第2孔部367aを有している。第2孔部367aにも支持軸部34の先端部が挿通される。支持軸部34の先端部は、第1孔部361aを形成する壁面と第2孔部367aを形成する壁面とを支持した状態で第1外部要素部材361と溶接されている。
【0048】
第3外部要素部材363は、第1送り面36aを形成している。第1送り面36aは、攪拌シャフト31の第1の回転方向Fに対して傾斜状の平面に形成されている。第4外部要素部材364は、第2送り面36bを形成している。第2送り面36bは、攪拌シャフト31の第2の回転方向Sに対して弧状の曲面に形成されている。第5外部要素部材365は、平板状であり、攪拌シャフト31のX2側に位置している。第5外部要素部材365の第1の回転方向F側の端部は、第3外部要素部材363に接続されている。第5外部要素部材365の第2の回転方向S側の端部は、第4外部要素部材364に接続されている。第6外部要素部材366は、平板状であり、攪拌シャフト31のX1側に位置している。第6外部要素部材366の第1の回転方向F側の端部は、第3外部要素部材363に接続されている。第6外部要素部材366の第2の回転方向S側の端部は、第4外部要素部材364に接続されている。
【0049】
第2外部要素部材362は、周壁対向面36cを形成している。第2外部要素部材362には、スクレーパ部39が溶接により取り付けられている。スクレーパ部39は、直線状の四角棒に形成されている。スクレーパ部39の一端部は、第3外部要素部材363と第5外部要素部材365との接続部近傍に配置される。スクレーパ部39の他端部は、第4外部要素部材364と第6外部要素部材366との接続部近傍に配置される。そして、このスクレーパ部39は、支持軸部34の長手方向の中心線CLを通るとともに攪拌シャフト31の軸方向(X方向)に延びるように配置されている。これにより、第1攪拌体36のスクレーパ部39のうち周壁部21の内周面ISに当接する部分は、攪拌シャフト31の軸方向に延びる直線状に形成されている。また、第1攪拌体36の第1送り面36aは、スクレーパ部39を境界として第1の回転方向Fの側に配置される。また、第1攪拌体36の第2送り面36bは、スクレーパ部39を境界として第2の回転方向Sの側に配置される。
【0050】
第2攪拌体37は、図7に示すように、第1外部要素部材371と、第2外部要素部材372と、第3外部要素部材373と、第4外部要素部材374と、第5外部要素部材375と、内部要素部材376とを有している。第1外部要素部材371、第2外部要素部材372、第3外部要素部材373、第4外部要素部材374、および、第5外部要素部材375は、それぞれ第2攪拌体37の外壁の一部を形成している。内部要素部材376は、第2攪拌体37の内部に配置されている。第1外部要素部材371は第1孔部371aを有している。第1孔部371aには、支持軸部34の先端部が挿通される。また、内部要素部材376は第2孔部376aを有している。第2孔部376aにも支持軸部34の先端部が挿通される。支持軸部34の先端部は、第1孔部371aを形成する壁面と第2孔部376aを形成する壁面とを支持した状態で第1外部要素部材371と溶接されている。
【0051】
第3外部要素部材373は、第1送り面37aを形成している。第1送り面37aは、攪拌シャフト31の第1の回転方向Fに対して傾斜状の平面に形成されている。第4外部要素部材374は、第2送り面37bを形成している。第2送り面37bは、攪拌シャフト31の第2の回転方向Sに対して弧状の曲面に形成されている。第5外部要素部材375は、平板状であり、攪拌シャフト31のX1側に位置している。第5外部要素部材375の第1の回転方向F側の端部は、第3外部要素部材373に接続されている。第5外部要素部材375の第2の回転方向S側の端部は、第4外部要素部材374に接続されている。また、攪拌シャフト31のX2側における第3外部要素部材373の端部と第4外部要素部材374の端部とは、相互に接続されている。
【0052】
第2外部要素部材372は、周壁対向面37cを形成している。第2外部要素部材372には、スクレーパ部39が溶接により取り付けられている。スクレーパ部39は、直線状の四角棒に形成されている。スクレーパ部39の一端部は、第3外部要素部材373と第4外部要素部材374との接続部近傍に配置される。スクレーパ部39の他端部は、第5外部要素部材375の中間位置に配置される。そして、このスクレーパ部39は、支持軸部34の長手方向の中心線CLを通るとともに攪拌シャフト31の軸方向(X方向)に延びるように配置されている。これにより、第2攪拌体37のスクレーパ部39のうち周壁部21の内周面ISに当接する部分は、攪拌シャフト31の軸方向に延びる直線状に形成されている。また、第2攪拌体37の第1送り面37aは、スクレーパ部39を境界として第1の回転方向Fの側に配置される。また、第2攪拌体37の第2送り面37bは、スクレーパ部39を境界として第2の回転方向Sの側に配置される。
【0053】
図8は、攪拌羽根33の第1攪拌体36の送り面(第1送り面36a,第2送り面36b)と第2攪拌体37の送り面(第1送り面37a,第2送り面37b)との組み合わせを示す説明図である。上述のように、第1攪拌体36および第2攪拌体37は、攪拌シャフト31の周囲に90度ピッチで軸方向に螺旋状に配置されている。これらを全て同一直線状に並ぶように回転させて描いた図が、図8である。この図8に示すように、第1攪拌体36の第1送り面36aと第2攪拌体37の第1送り面37aとは、全て平行に並ぶように配置されている。第1送り面36aおよび第1送り面37aは、攪拌シャフト31のX2側に向かって傾斜している。一方、第1攪拌体36の第2送り面36bと第2攪拌体37の第2送り面37bとは、合わせて波型の曲面を形成するように配置されている。
【0054】
上述の送り面の組み合わせによって、攪拌シャフト31が第1の回転方向Fに回転される場合と、第2の回転方向Sに回転される場合とで、収容部26の有機性廃棄物の動きが異なるように制御される。攪拌シャフト31が第1の回転方向Fに回転された場合、収容部26の有機性廃棄物は、第1攪拌体36の第1送り面36aおよび第2攪拌体37の第1送り面37aによりX2側に送られる。一方、攪拌シャフト31が第2の回転方向Sに回転された場合、収容部26の有機性廃棄物は、第1攪拌体36の第2送り面36bおよび第2攪拌体37の第2送り面37bによりX2側に送られない状態を保持して攪拌される。なお、図8では、第3攪拌体38を描いていない。第3攪拌体38は、有機性廃棄物をX1側またはX2側へ送る効果を有さないからである。しかし、第3攪拌体38は、第1攪拌体36およびの第2攪拌体37よりも大きさが小さいため、第3攪拌体38と周壁部21との間に収容部26の有機性廃棄物が噛み込むことを抑制する効果を有している。
【0055】
以上のとおり、上記実施形態に係る有機性廃棄物の処理装置1は、有機性廃棄物を収容する収容部26を有する収容容器2と、収容部26を加熱する収容部加熱手段Hと、収容部26で有機性廃棄物を攪拌する攪拌装置3とを備えている。収容容器2は、筒状の周壁部21と、周壁部21の開口端を塞ぐ一対の端壁部22,22とを有している。一対の端壁部22,22の一方は、生成物排出口24を有している。また、攪拌装置3は、一対の端壁部22,22に両端部が支持される攪拌シャフト31と、攪拌シャフト31の軸方向に所定間隔をもって取り付けられるとともに攪拌シャフト31から放射状に延びる複数の攪拌羽根33とを有している。
【0056】
また、攪拌羽根33は、攪拌シャフト31に取り付けられる支持軸部34と、支持軸部34の先端部に取り付けられる攪拌体35とを有している。攪拌体35は、送り面36a,36b,37a,37bと、周壁対向面36c,37cとを有している。送り面36a,36b,37a,37bは、攪拌シャフト31の回転方向に対向する位置に設けられるとともに攪拌シャフト31の軸方向に対する有機性廃棄物の送り量を調節する。周壁対向面36c,37cは、周壁部21の内周面ISに対向するとともに内周面ISと離間する位置に設けられる。また、周壁対向面36c,37cには、周壁対向面36c,37cから内周面ISに向かって突出するとともに周壁対向面36c,37cよりも小さな面積で内周面ISに当接するスクレーパ部39が設けられている。
【0057】
上記構成によれば、収容容器2の周壁部21の内周面ISに当接するスクレーパ部39により、内周面ISに付着した有機性廃棄物を掻き取ることができる。これにより、付着した有機性廃棄物の焦げ付きを抑制し、付着物により収容部加熱手段Hの熱の伝達量が低下して加熱効率が低下する不都合を抑制することができる。
【0058】
また、攪拌体35の周壁対向面36c,37cは、周壁部21の内周面ISと離間する位置に設けられている。これにより、攪拌羽根33が回転した場合であっても攪拌体35の周壁対向面36c,37cが周壁部21の内周面ISに接触することがない。一方で、スクレーパ部39は、周壁対向面36c,37cよりも小さな面積で周壁部21の内周面ISに当接する。これにより、攪拌体35と周壁部21との間に収容部26の有機性廃棄物が噛み込むことを抑制することができる。有機性廃棄物の噛み込みのトラブルを抑制することにより、従来よりもメンテナンス性を向上させることができる。
【0059】
また、スクレーパ部39は、攪拌体35の周壁対向面36c,37cよりも小さな面積で周壁部21の内周面ISに当接するので、攪拌体35の周壁対向面36c,37c全体を内周面ISに直接当接させる場合と比較して、スクレーパ部39を適切な接触強度で内周面ISに当接させることが容易である。これにより、製造時およびメンテナンス作業時において、容易に接触強度の調整作業を行うことができる。
【0060】
また、上記実施形態において、スクレーパ部39のうち周壁部21の内周面ISに当接する部分は、攪拌シャフト31の軸方向(X方向)に延びる直線状に形成されている。
【0061】
上記構成によれば、攪拌羽根33の回転方向(第1の回転方向F,第2の回転方向S)に対して直交する方向に延びるような形でスクレーパ部39を周壁部21の内周面ISに線接触させるので、内周面ISに付着した有機性廃棄物をより確実に掻き取ることができる。これにより、攪拌体35と周壁部21との間に収容部26の有機性廃棄物が噛み込むことをよりいっそう防ぐことができる。これにより、メンテナンス性をより向上させることができる。
【0062】
また、上記実施形態において、収容容器2の周壁部21は、断面半円状で山型の上側曲面部材21aと、断面半円状で谷型の下側曲面部材21bと、上側曲面部材21aの下端と下側曲面部材21bの上端とを接続する断面直線状の一対の中間平面部材21c,21cとを有している。下側曲面部材21bが、周壁部21の下部を構成している。下側曲面部材21bの内周半径R1は、スクレーパ部39の回転半径R2よりも大きく設定されている。そして、スクレーパ部39は、周壁部21の内周面ISの下端部のみ当接するように構成されている。
【0063】
上記構成によれば、周壁部21の内周面ISのうち、有機性廃棄物の自重でより付着しやすい下端部のみスクレーパ部39を当接させ、それ以外の場所では、スクレーパ部39を当接させないことにより、有機性廃棄物の掻き取りと噛み込み防止とを効率よく行うことができる。
【0064】
また、上記実施形態において、第1攪拌体36および第2攪拌体37は、金属板から成る複数の要素部材を溶接することによって形成されている。第1攪拌体36は、支持軸部34の先端部が挿通される第1孔部361aを有する第1外部要素部材361と、支持軸部34の先端部が挿通される第2孔部367aを有する内部要素部材367とを含んでいる。支持軸部34の先端部は、第1孔部361aを形成する壁面と第2孔部367aを形成する壁面とを支持した状態で第1外部要素部材361と溶接されている。また、第2攪拌体37は、支持軸部34の先端部が挿通される第1孔部371aを有する第1外部要素部材371と、支持軸部34の先端部が挿通される第2孔部376aを有する内部要素部材376とを含んでいる。支持軸部34の先端部は、第1孔部371aを形成する壁面と第2孔部376aを形成する壁面とを支持した状態で第1外部要素部材371と溶接されている。
【0065】
上記構成によれば、第1攪拌体36は、第1孔部361aを形成する壁面と第2孔部367aを形成する壁面との2箇所において支持軸部34に支持されている。また、第2攪拌体37は、第1孔部371aを形成する壁面と第2孔部376aを形成する壁面との2箇所において支持軸部34に支持されている。これにより、従来よりも第1攪拌体36および第2攪拌体37の回転方向に加わる外力に対する強度を十分に確保することができるので、外力により支持軸部34から第1攪拌体36および第2攪拌体37が脱落するトラブルを防ぐことができる。これにより、メンテナンス性をより向上させることができる。また、第1攪拌体36および第2攪拌体37を金属板から成る複数の要素部材を溶接することによって形成するので、形状の設計変更を容易にすることができる。
【0066】
また上記実施形態において、第1攪拌体36は、攪拌シャフト31の第1の回転方向Fにおける前面側に設けられる第1送り面36aと、第1の回転方向Fとは逆側の第2の回転方向Sにおける前面側に設けられる第2送り面36bとを有している。また、第2攪拌体37は、攪拌シャフト31の第1の回転方向Fにおける前面側に設けられる第1送り面37aと、第2の回転方向Sにおける前面側に設けられる第2送り面37bとを有している。第1送り面36a,37aは、第1の回転方向Fに対して傾斜状の平面に形成されている。第2送り面36b,37bは、弧状の曲面に形成されている。攪拌シャフト31が第1の回転方向Fに回転された場合、収容部26の有機性廃棄物は、第1送り面36a,37bにより生成物排出口24に送られる。攪拌シャフト31が第2の回転方向Sに回転された場合、収容部26の有機性廃棄物は、第2送り面36b,37bにより生成物排出口24に送られない状態を保持して攪拌される。
【0067】
また、スクレーパ部39は、支持軸部34の長手方向の中心線CLを通るとともに攪拌シャフト31の軸方向(X方向)に延びるように配置されている。第1攪拌体36および第2攪拌体37は、スクレーパ部39を境界として第1の回転方向Fの側に第1送り面36a,37bが配置される。また、第1攪拌体36および第2攪拌体37は、スクレーパ部39を境界として第2の回転方向Sの側に第2送り面36b,37bが配置される。
【0068】
上記構成によれば、攪拌シャフト31を第1の回転方向Fに回転させる場合と第2の回転方向Sに回転させる場合の両方において、攪拌シャフト31の軸方向に対する有機性廃棄物の送り量の調節機能、スクレーパ部39の掻き取り機能、第1攪拌体36および第2攪拌体3と周壁部21との間の有機性廃棄物の噛み込み防止機能を、バランスよく発揮させることができる。
【0069】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、上述した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 処理装置
2 収容容器
3 攪拌装置
21 周壁部
21a 上側曲面部材
21b 下側曲面部材
21c 中間平面部材
22 端壁部
24 生成物排出口
26 収容部
31 攪拌シャフト
33 攪拌羽根
34 支持軸部
35 攪拌体
36 第1攪拌体
36a 第1送り面
36b 第2送り面
36c 周壁対向面
37 第2攪拌体
37a 第1送り面
37b 第2送り面
37c 周壁対向面
39 スクレーパ部
361 第1外部要素部材
361a 第1孔部
367 内部要素部材
367a 第2孔部
371 第1外部要素部材
371a 第1孔部
376 内部要素部材
376a 第2孔部
F 第1の回転方向
S 第2の回転方向
H 収容部加熱手段
R1 内周半径
R2 回転半径
X 軸方向
X1 モータ接続部側の方向
X2 蒸気供給口側の方向
CL 中心線
IS 内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8