(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107665
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】冷凍寿司の解凍容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240802BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20240802BHJP
A23L 7/10 20160101ALN20240802BHJP
【FI】
B65D81/34 V
B65D85/50 140
A23L7/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011704
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】522128778
【氏名又は名称】株式会社ちかなり
(74)【代理人】
【識別番号】100102923
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】近成 善行
【テーマコード(参考)】
3E013
3E035
4B023
【Fターム(参考)】
3E013BA04
3E013BA24
3E013BA28
3E013BB06
3E013BB08
3E013BC04
3E013BD20
3E013BE01
3E013BF73
3E035AA10
3E035BA02
3E035BB01
3E035BC02
3E035BD06
3E035CA02
4B023LE17
4B023LP15
4B023LT60
(57)【要約】
【課題】 冷凍寿司を並べて容器ごと販売を可能にする。シャリとネタが適温に解凍される。
【解決手段】
容器本体12と蓋14とを重ね合わせて使用する。容器本体12と蓋14とは、解凍の際に受ける熱に耐える耐熱プラスチックをプレス成型したものである。容器本体12は、冷凍されたシャリ22を並べてシャリ全体を一個ずつ包囲する容器部分18を備える。容器部分18の開口縁20はフランジ部分16により連結されている。各容器部分18の開口縁20を覆うように、冷凍されたネタ24が配列される。蓋14とフランジ部分16とが、全てのネタ24を挟んでこれらの移動を阻止している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と蓋とを重ね合わせて使用されるものであって、
容器本体と蓋とは、電子レンジを用いた解凍の際に受ける熱に耐える耐熱性を有するプラスチックをプレス成型したもので、
容器本体は、複数の冷凍されたシャリを並べて各シャリの全体を一個ずつ包囲するように収容する容器部分と、これらの容器部分を一定間隔で整列させてそれらの開口縁を連結一体化するフランジ部分とを有し、
上記のフランジ部分に設けられた各容器部分の開口縁に接して、その開口縁を覆うように、冷凍されたネタが配列されたときに、
上記の蓋と上記のフランジ部分とが、それらの間に全てのネタを挟んでこれらのネタの移動を阻止し、
上記の蓋と容器本体との間の空間が密閉されていることを特徴とする冷凍した寿司の解凍容器。
【請求項2】
上記のフランジ部分には、フランジ部分と蓋との間隔を設定値に保持する突起と、少なくとも容器部分の底に達する深さの凹部が設けられ、いずれも上記のフランジ部分と連続一体にプレス成型されていることを特徴とする請求項1に記載の寿司の解凍容器。
【請求項3】
上記のシャリの容器部分の底には一体にプレス成型されたことによるエンボス加工が施され、他の部分よりも柔軟性が付与されていることを特徴とする請求項1または2に記載の寿司の解凍容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍寿司を並べた状態で解凍できるように梱包し販売等をするための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍した寿司を並べた状態で解凍をすることができる容器は、特許文献1~4等に示すように各種開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開1999-290206号公報
【特許文献2】特開2004-136975号公報
【特許文献3】特開2007-137493号公報
【特許文献4】WO1005/7532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような開発にあたって、従来着目されていたのは、容器に収容したまま電子レンジで寿司を解凍したときに、シャリが適度に暖まり、かつ、ネタが不必要に加熱されないようにすることである。そのために、例えば、ネタに電子レンジのマイクロ波が照射され難いような容器の構造が工夫されていた。上記の特許文献にあるように、アルミニウム箔でネタの周りを覆うような構造にするのもの一つである。しかし、電子レンジの内部で、アルミニウム箔のエッジの部分で生じる放電により発火する恐れがあった。従って、寿司店の厨房で使用するのはともかく、一般購入者が自宅で解凍をするための容器には安全しの面でふさわしくない。本発明は、このような課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
【0006】
<構成1>
容器本体と蓋とを重ね合わせて使用されるものであって、
容器本体と蓋とは、電子レンジを用いた解凍の際に受ける熱に耐える耐熱性を有するプラスチックをプレス成型したもので、
容器本体は、複数の冷凍されたシャリを並べて各シャリの全体を一個ずつ包囲するように収容する容器部分と、これらの容器部分を一定間隔で整列させてそれらの開口縁を連結一体化するフランジ部分とを有し、
上記のフランジ部分に設けられた各容器部分の開口縁に接して、その開口縁を覆うように、冷凍されたネタが配列されたときに、
上記の蓋と上記のフランジ部分とが、それらの間に全てのネタを挟んでこれらのネタの移動を阻止し、
上記の蓋と容器本体との間の空間が密閉されていることを特徴とする冷凍した寿司の解凍容器。
【0007】
<構成2>
上記のフランジ部分には、フランジ部分と蓋との間隔を設定値に保持する突起と、少なくとも容器部分の底に達する深さの凹部が設けられ、いずれも上記のフランジ部分と連続一体にプレス成型されていることを特徴とする構成1に記載の寿司の解凍容器。
<構成3>
上記のシャリの容器部分の底には一体にプレス成型されたことによるエンボス加工が施され、他の部分よりも柔軟性が付与されていることを特徴とする構成1または2に記載の寿司の解凍容器。
【発明の効果】
【0008】
容器本体12と蓋14とが耐熱プラスチックをプレス成型したものなので、シャリを包囲する容器部分12や蓋14の肉厚を成型の形状を工夫して調整して、マイクロ波が浸透し易いように最適化できる。
容器部分18がシャリ22の全体を一個ずつ包囲して、フランジ部分16の下側に並ぶので、下方からのマイクロ波がシャリ22全体に均一に照射される。
蓋14と上記のフランジ部分16との間に容器部分18の開口縁20を覆うようにネタ24が挟み込まれて、移動が阻止されるように配置されいるので、下方からくるマイクロ波が弱められ、シャリよりも加熱され難く、適温に解凍できる。
フランジ部分16と蓋14との間隔を設定値に保持する突起26を設ければ、ネタの潰れを防止しつつネタ24に蓋14を接するように支持して、適度の温度で解凍できるようになる。また、ネタ24の解凍が不十分の場合には蓋14に直接湯をかけて温度調節もできる。
フランジ部分16に少なくとも容器部分18の底に達する深さの凹部28を設ければ、容器部分18の柔軟な底に加わる外力による容器部分18の変形を抑えることができる。
プラスチックをプレス成型するので、容器部分18の底にエンボス加工をすればその部分の肉厚が薄くなり、容器部分の底が他の部分よりも柔軟性が増す。これにより、解凍後にシャリを容器部分から押し出し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は容器本体12の上面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)はシャリ22とネタ24とを収容したところを示すA-A断面図である。
【
図2】
図2(a)は蓋14の上面図、(b)は(a)のB-B断面図、(c)は容器本体12と蓋14とを重ねた状態を示すB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例0011】
本発明の冷凍寿司の解凍容器は、冷凍したシャリ22の上に冷凍したネタ24を乗せて、容器内にいくつも並べた状態で販売をし、購入者はその容器のまま電子レンジで解凍をして寿司を食べることができるものである。冷凍保存をしておき、寿司店舗の厨房で解凍をして顧客に提供するための容器としても活用できる。
【0012】
その容器は、電子レンジを用いた解凍の際に受ける熱に耐える程度の耐熱性を有するプラスチック製で、容器本体12と蓋14とを図示したような形状にプレス成型したものである。
【0013】
容器本体12は複数の冷凍されたシャリ22を並べて一個ずつ、各シャリ22の全体を包囲するように収容する容器部分18と、これらの容器部分18を一定間隔で整列させてそれらの開口縁20を連結一体化するフランジ部分16とを有する。
【0014】
図1に示すように、容器部分18はフランジ部分16の下側に突き出して並んでいる。下側から電子レンジのマイクロ波が照射されると容器部分18の壁を通じてシャリ22全体にマイクロ波が届く。従ってシャリ22の一部がフランジ部分16の開口縁20から上方に突出しないように容器部分18の高さが設定されている。
【0015】
フランジ部分16には開口縁20の周辺に容器部分18の高さを調整する丘状の膨らみが設けられている。フランジ部分16の一部がプレス成型されるので、容器部分18の壁の厚みが他の部分よりも十分に薄く、マイクロ波が浸透し易い構造になっている。
【0016】
また、フランジ部分16の機械的強度は高いが、容器部分18の機械的強度が相対的に低いので、潰れ防止のために凹部28を設けている。このほかに、フランジ部分16の各所に、蓋14を支える突起26を設けた。
図1や
図2に示すように円柱状のものや三角柱状のものが適する。
【0017】
図1(b)に示すように、フランジ部分16を円盤状にしたとき、その中心で凹部28がフランジ部分16を下から支えている。また、突起26と凹部28とは、
図1(c)に示すように、容器本体12と蓋14の間隔を保持し、容器部分18の底の柔軟な部分の変形を抑える機能を持つ。突起26と凹部28とは容器部分18よりも高さが低いから、側壁の機械的強度が容器部分18より高い。凹部28は少なくとも容器部分18の底まで達しており、容器部分18の底に加わる力を緩和して変形を防止している。
【0018】
上記のフランジ部分16の上面には、容器部分18の開口縁20を覆うように冷凍されたネタ24が配列される。蓋14は、これら全てのネタ24を覆って、これらのネタ24の移動を阻止し、容器本体12と重なり合って全てのシャリ22とネタ24を挟んで密閉する。蓋14は全てのネタとほぼ密着した状態で保持される。
【0019】
冷凍されたシャリ22とネタ24を収容した状態でこの容器が冷凍保存され、例えば、店舗で販売される。購入者はその容器をそのまま電子レンジに入れて、指定された電力と時間をセットして解凍をする。
【0020】
電子レンジの図示しないプレートの上にシャリ22を収容した容器部分18を下にして解凍を開始すると、プレート側からマイクロ波が照射されて、シャリ22が適度に加熱されて解凍される。このとき、シャリ22の上に配列されたネタ24は、シャリ22によってマイクロ波の照射強度が弱められるから、適度な温度に解凍される。
【0021】
電子レンジのプレート上で反射したマイクロ波は容器部分18の壁を通じてシャリ22全体に万遍なく照射されるからシャリ22は速やかに解凍されて適温に達する。最適なマイクロ波の照射強度と解凍時間とを、容器の形状や寿司の種類に応じて測定しておき、容器または包装に表示しておくとよい。
【0022】
また、蓋14がネタ24とほぼ密着した状態で保持されるので、ネタ24の解凍不足が心配される場合には、蓋14の上から湯をかけて調整をすることができる。
【0023】
解凍後は、蓋14を下にして容器本体12を上方に持ち上げるようにするとよい。そのときに、凹部28を掴んで容器本体12を持ち上げることができる。こうして蓋14の上に、ネタ24を下にしてシャリ22が乗った状態で容器本体12を取り除く。その後、配膳に使用する皿を上から被せて、全体を上下反転すると、皿の上に一定間隔で丸く配列された解凍済みの寿司が並ぶ。
【0024】
ネタ24はすべて、蓋14の船底状の部分36に収まっているから、ネタ24が位置ずれすることなく、寿司の正常な形状を保つことができる。例えば、蓋14を半透明にしておくと、ネタ24がシャリ22の上に正しく並んでいるかどうかを確認することができる。
【0025】
実際に厚みが0.7mmのポリカーボネートシートをプレス成型して
図3~
図5に示したような容器を作成し、電子レンジの解凍モードで120秒解凍をしたところ、シャリの温度は49度、ネタの温度は8度であった。160秒解凍すると、シャリの温度は65度、ネタの温度は13度であった。この範囲は最適値である。
【0026】
即ち、最適な条件の解凍処理が可能になった。従って、寿司店の店舗内で解凍して顧客に提供する場合も、容器ごと購入した購入者が解凍する場合にも最適な容器ということができる。また、マイクロ波を遮断するための金属箔等は使用しないから、安全である。容器も蓋も、簡単にプレス成型できるから、製造コストを十分に抑えられる。