(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107670
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】蓄電池のデータ抽出装置及び蓄電池のデータ抽出方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/396 20190101AFI20240802BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240802BHJP
G01R 31/3842 20190101ALI20240802BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G01R31/396
H02J7/00 Y
G01R31/3842
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011715
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】沖田 優斗
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 涼
(72)【発明者】
【氏名】吉田 翔治
(72)【発明者】
【氏名】長岡 直人
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB05
2G216BA23
2G216CB27
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA08
5H030AA01
5H030AS03
5H030FF41
(57)【要約】
【課題】蓄電池の劣化診断に有用なより多くのデータを抽出し得る蓄電池のデータ抽出装置及び蓄電池のデータ抽出方法を提供する。
【解決手段】蓄電池の検出値データを劣化診断に係る解析用データとして抽出するかの判定は、蓄電池の検出電流値が急変する変動区間及び前区間での変動条件を充足するかで行われる。変動区間での検出電流値の頂点以降では、蓄電池の検出電流値の変動条件が一定変動若しくは減少変動のいずれでも判定可能である。また、データ抽出区間の検出値データについては有用な解析用データとなるような選定処理(処理A~C)も行われる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
稼動中の蓄電池の検出値データを連続的に格納する記憶部と、
前記記憶部に連続的に格納した前記検出値データの中から前記蓄電池の劣化診断に係る有用な解析用データを取得するためのデータ抽出を行うデータ抽出部と、を備えた蓄電池のデータ抽出装置であって、
前記データ抽出部は、前記蓄電池のCレート値又は電流値若しくは電力値のいずれかである検出値が急変する変動区間と前記変動区間の前区間とに分け、
前記前区間では、前記検出値の変動が第1閾値以下で第1時間以上継続する安定推移の判定と、
前記変動区間では、前記検出値の変動の頂点の設定とともに、前記検出値の前記頂点までの変動が第2時間以内に第2閾値以上変動する急変推移の判定と、前記頂点以降において、前記頂点からの前記検出値の一定変動が第3閾値以下の変動幅内で第3時間以上継続する、若しくは前記頂点からの前記検出値の減少変動が減少過程での第4閾値以下の増加変動の許容を含み第4時間以上継続する頂点後推移の判定と、を実施し、
前記各判定に基づき、前記前区間及び前記変動区間を含むデータ抽出区間を設定するものであり、
前記データ抽出部の後段には更に、前記データ抽出区間の前記検出値データを選定して前記解析用データとして出力するデータ選定部を備えている、
蓄電池のデータ抽出装置。
【請求項2】
前記データ選定部は、前記データ抽出区間における前記前区間の減少と前記検出値の前記頂点後の区間延長とを図るべく前記データ抽出区間の後側へのシフトにより前記検出値データの選定を行う、
請求項1に記載の蓄電池のデータ抽出装置。
【請求項3】
前記データ選定部は、前記データ抽出区間における最終点と前記最終点より後側にシフトした変更点とのそれぞれの過渡応答解析の解析値に基づき前記検出値データの選定を行う、
請求項1に記載の蓄電池のデータ抽出装置。
【請求項4】
前記データ選定部は、前記データ抽出区間における途中点の過渡応答解析の解析値と前記途中点以降の前記検出値の変化量とに基づき前記検出値データの選定を行う、
請求項1に記載の蓄電池のデータ抽出装置。
【請求項5】
前記データ選定部は、前記データ抽出区間における前記前区間の減少と前記検出値の前記頂点後の区間延長とを図るべく前記データ抽出区間の後側へのシフトにより前記検出値データの選定を行う第1処理と、
前記データ抽出区間における最終点と前記最終点より後側にシフトした変更点とのそれぞれの過渡応答解析の解析値に基づき前記検出値データの選定を行う第2処理と、
前記データ抽出区間における途中点の過渡応答解析の解析値と前記途中点以降の前記検出値の変化量とに基づき前記検出値データの選定を行う第3処理と、のうち少なくとも2つ以上の処理を行う、
請求項1に記載の蓄電池のデータ抽出装置。
【請求項6】
前記データ抽出部及び前記データ選定部の対象とする前記蓄電池は定置用蓄電池である、
請求項1に記載の蓄電池のデータ抽出装置。
【請求項7】
稼動中の蓄電池の検出値データを連続的に記憶部に格納し、
前記記憶部に連続的に格納した前記検出値データの中から前記蓄電池の劣化診断に係る有用な解析用データを取得するためのデータ抽出を行う、蓄電池のデータ抽出方法であって、
前記蓄電池のCレート値又は電流値若しくは電力値のいずれかである検出値が急変する変動区間と前記変動区間の前区間とに分け、
前記前区間では、前記検出値の変動が第1閾値以下で第1時間以上継続する安定推移を判定し、
前記変動区間では、前記検出値の変動の頂点の設定とともに、前記検出値の前記頂点までの変動が第2時間以内に第2閾値以上変動する急変推移を判定し、前記頂点以降において、前記頂点からの前記検出値の一定変動が第3閾値以下の変動幅内で第3時間以上継続する、若しくは前記頂点からの前記検出値の減少変動が減少過程での第4閾値以下の増加変動の許容を含み第4時間以上継続する頂点後推移を判定し、
前記各判定に基づき、前記前区間及び前記変動区間を含むデータ抽出区間を設定するものであり、
更に、前記データ抽出区間の前記検出値データを選定して前記解析用データとして出力する、
蓄電池のデータ抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電池の劣化診断を行うためのデータ抽出を行う蓄電池のデータ抽出装置及び蓄電池のデータ抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの有効利用や災害時の電力供給等を目的とした定置用蓄電池設備の導入が拡大しつつある。蓄電池は次第に劣化していくため、蓄電池の現状を把握することはシステムを健全に運用していく上で非常に重要である。そのため、蓄電池の劣化状態を診断することが行われている。
【0003】
蓄電池の劣化診断の一例としては、稼動中の蓄電池の過渡応答特性を用いる例えば特許文献1に開示されているような技術がある。開示の劣化診断技術は、蓄電池が所定の過渡応答特性を示した時の電流等の検出値データを解析用データとして抽出し、抽出した解析用データを用いて劣化診断がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記開示の劣化診断技術は、蓄電池の検出値データから劣化診断に適するデータをより多く抽出できるかが劣化診断の精度を向上させる上での検討事項の一つである。すなわち、本発明者は、蓄電池の劣化診断に有用なより多くのデータを抽出し得る手法を様々検討していた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示の一態様に係る蓄電池のデータ抽出装置は、稼動中の蓄電池の検出値データを連続的に格納する記憶部と、前記記憶部に連続的に格納した前記検出値データの中から前記蓄電池の劣化診断に係る有用な解析用データを取得するためのデータ抽出を行うデータ抽出部と、を備えた蓄電池のデータ抽出装置であって、前記データ抽出部は、前記蓄電池のCレート値又は電流値若しくは電力値のいずれかである検出値が急変する変動区間と前記変動区間の前区間とに分け、前記前区間では、前記検出値の変動が第1閾値以下で第1時間以上継続する安定推移の判定と、前記変動区間では、前記検出値の変動の頂点の設定とともに、前記検出値の前記頂点までの変動が第2時間以内に第2閾値以上変動する急変推移の判定と、前記頂点以降において、前記頂点からの前記検出値の一定変動が第3閾値以下の変動幅内で第3時間以上継続する、若しくは前記頂点からの前記検出値の減少変動が減少過程での第4閾値以下の増加変動の許容を含み第4時間以上継続する頂点後推移の判定と、を実施し、前記各判定に基づき、前記前区間及び前記変動区間を含むデータ抽出区間を設定するものであり、前記データ抽出部の後段には更に、前記データ抽出区間の前記検出値データを選定して前記解析用データとして出力するデータ選定部を備えている。
【0007】
上記蓄電池のデータ抽出装置によれば、蓄電池の検出値データを劣化診断に係る解析用データとして抽出するかの判定は、蓄電池の検出値が急変する変動区間及び前区間での変動条件を充足するかで行われる。変動区間での検出値の頂点以降では、蓄電池の検出値の変動条件が一定変動若しくは減少変動のいずれでも判定可能であるため、データ抽出数を多く確保することが可能である。また、データ抽出区間の検出値データの選定も行われて解析用データを得るため、より有用なデータを抽出することが可能である。
【0008】
[2]上記[1]に記載の蓄電池のデータ抽出装置において、前記データ選定部は、前記データ抽出区間における前記前区間の減少と前記検出値の前記頂点後の区間延長とを図るべく前記データ抽出区間の後側へのシフトにより前記検出値データの選定を行う。
【0009】
上記構成によれば、検出値データの選定は、データ抽出区間における前区間の減少と検出値の頂点後の区間延長としてデータ抽出区間を後側にシフトすることにより行われる。本手法を用いることで、より有用なデータの抽出が可能である(
図8中、処理A参照)。
【0010】
[3]上記[1]に記載の蓄電池のデータ抽出装置において、前記データ選定部は、前記データ抽出区間における最終点と前記最終点より後側にシフトした変更点とのそれぞれの過渡応答解析の解析値に基づき前記検出値データの選定を行う。
【0011】
上記構成によれば、検出値データの選定は、データ抽出区間における最終点と最終点より後側にシフトした変更点とのそれぞれの過渡応答解析の解析値に基づいて行われる。本手法を用いることで、より有用なデータの抽出が可能である(
図8中、処理B参照)。
【0012】
[4]上記[1]に記載の蓄電池のデータ抽出装置において、前記データ選定部は、前記データ抽出区間における途中点の過渡応答解析の解析値と前記途中点以降の前記検出値の変化量とに基づき前記検出値データの選定を行う。
【0013】
上記構成によれば、検出値データの選定は、データ抽出区間における途中点の過渡応答解析の解析値と途中点以降の検出値の変化量とに基づいて行われる。本手法を用いることで、より有用なデータの抽出が可能である(
図8中、処理C参照)。
【0014】
[5]上記[1]に記載の蓄電池のデータ抽出装置において、前記データ選定部は、前記データ抽出区間における前記前区間の減少と前記検出値の前記頂点後の区間延長とを図るべく前記データ抽出区間の後側へのシフトにより前記検出値データの選定を行う第1処理と、前記データ抽出区間における最終点と前記最終点より後側にシフトした変更点とのそれぞれの過渡応答解析の解析値に基づき前記検出値データの選定を行う第2処理と、前記データ抽出区間における途中点の過渡応答解析の解析値と前記途中点以降の前記検出値の変化量とに基づき前記検出値データの選定を行う第3処理と、のうち少なくとも2つ以上の処理を行う。
【0015】
上記構成によれば、検出値データの選定は、第1~第3処理のうち少なくとも2つ以上の処理を含んで行われる。第1処理は、データ抽出区間における前区間の減少と検出値の頂点後の区間延長としてデータ抽出区間を後側にシフトすることによる選定処理である。第2処理は、データ抽出区間における最終点と最終点より後側にシフトした変更点とのそれぞれの過渡応答解析の解析値に基づく選定処理である。第3処理は、データ抽出区間における途中点の過渡応答解析の解析値と途中点以降の検出値の変化量とに基づく選定処理である。第1~第3処理のうち少なくとも2つ以上を含む選定処理を行うことで、より有用なデータの抽出が可能である(
図8中、処理A~C及び本案参照)。
【0016】
[6]上記[1]に記載の蓄電池のデータ抽出装置において、前記データ抽出部及び前記データ選定部の対象とする前記蓄電池は定置用蓄電池である。
上記構成によれば、データ抽出及びデータ選定の対象が定置用蓄電池であるため、定置用蓄電池の劣化診断に係るデータ抽出を好適に行うことが可能である。
【0017】
[7]本開示の一態様に係る蓄電池のデータ抽出方法は、稼動中の蓄電池の検出値データを連続的に記憶部に格納し、前記記憶部に連続的に格納した前記検出値データの中から前記蓄電池の劣化診断に係る有用な解析用データを取得するためのデータ抽出を行う、蓄電池のデータ抽出方法であって、前記蓄電池のCレート値又は電流値若しくは電力値のいずれかである検出値が急変する変動区間と前記変動区間の前区間とに分け、前記前区間では、前記検出値の変動が第1閾値以下で第1時間以上継続する安定推移を判定し、前記変動区間では、前記検出値の変動の頂点の設定とともに、前記検出値の前記頂点までの変動が第2時間以内に第2閾値以上変動する急変推移を判定し、前記頂点以降において、前記頂点からの前記検出値の一定変動が第3閾値以下の変動幅内で第3時間以上継続する、若しくは前記頂点からの前記検出値の減少変動が減少過程での第4閾値以下の増加変動の許容を含み第4時間以上継続する頂点後推移を判定し、前記各判定に基づき、前記前区間及び前記変動区間を含むデータ抽出区間を設定するものであり、更に、前記データ抽出区間の前記検出値データを選定して前記解析用データとして出力する。
【0018】
上記蓄電池のデータ抽出方法によれば、上記蓄電池のデータ抽出装置と同様、蓄電池の劣化診断に有用なより多くのデータを抽出することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本開示の蓄電池のデータ抽出装置及び蓄電池のデータ抽出方法によれば、蓄電池の劣化診断に有用なより多くのデータを抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態における蓄電池のデータ抽出及び劣化診断に係るシステム全体の構成図である。
【
図2】同実施形態の蓄電池のデータ抽出に係るフロー図である。
【
図3】同実施形態の蓄電池のデータ抽出に係るフロー図である。
【
図4】同実施形態の蓄電池のデータ抽出に係る説明図である。
【
図5】(a)(b)は同実施形態の蓄電池のデータ抽出に係る説明図である。
【
図6】(a)~(d)は同実施形態の蓄電池のデータ抽出に係る説明図である。
【
図7】(a)(b)は同実施形態の蓄電池のデータ抽出に係る説明図である。
【
図8】同実施形態の蓄電池のデータ抽出の優位性を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、蓄電池のデータ抽出装置及び蓄電池のデータ抽出方法の一実施形態を説明する。
(発電装置12及び蓄電池15を含むシステム全体構成)
図1に示すように、分散型発電設備11は、例えば太陽光や風力等を用いる再生可能エネルギー発電設備であり、発電装置12及び発電用パワーコンディショナ13等を備えている。分散型発電設備11は、発電装置12で発電された直流電力を発電用パワーコンディショナ13にて商用交流電力に変換し、変換した交流電力を系統連系設備10を介して電力系統に供給可能に構成されている。蓄電池設備14は、例えば定置用リチウムイオン蓄電池よりなる蓄電池15及び蓄電池用パワーコンディショナ16等を備えている。蓄電池設備14は、分散型発電設備11に併設されている。蓄電池設備14は、発電電力が大きく変動し得る分散型発電設備11の出力電力の変化率が所定値以下となるように蓄電池15を充放電させ、蓄電池用パワーコンディショナ16の電力変換を通じて電力系統に対する出力変動を抑制するものである。
【0022】
劣化診断装置17は、稼動中の蓄電池15を対象とした劣化診断を行う装置である。劣化診断装置17は、計測部18、記憶部19、データ抽出部20、データ選定部21、及び劣化診断部22を備えている。
【0023】
計測部18は、電流計18a、電圧計18b及び温度計18c等を備えている。計測部18は、稼動中の蓄電池15の充放電電流の検出、稼動中の蓄電池15の入出力電圧の検出及び蓄電池15の温度を検出し、各検出信号を記憶部19に出力する。記憶部19は、計測部18からの各検出信号のサンプリングにて取得する電流値データ、電圧値データ及び温度データの各検出値データを時刻情報とともに連続的に格納する。
【0024】
データ抽出部20は、本実施形態では蓄電池15の電流値が所定電流値を超えたことを抽出条件として、記憶部19に連続的に格納されている各検出値データの抽出を行う。データ抽出部20は、抽出したデータを時刻情報とともにデータ選定部21に出力する。データ選定部21は、抽出データの中から蓄電池15の劣化診断に好適な解析用データとなり得るより適切なデータを選定し、選定したデータを劣化診断部22に出力する。劣化診断部22は、データ抽出部20及びその後段のデータ選定部21にて抽出及び選定されたデータを解析用データとして用い、本実施形態では蓄電池15の過渡応答特性を用いた等価回路解析を行う。そして、劣化診断部22は、該解析に基づいて蓄電池15の劣化状態の診断を行う。
【0025】
(蓄電池15のデータ抽出及び選定処理の詳細)
本実施形態のデータ抽出及び選定処理は、
図2及び
図3に示すフローに沿って行われる。
【0026】
図2に示すステップS11では、計測及び抽出開始点探索として、計測部18にて計測された蓄電池15のその時々の電流値、電圧値及び温度が時刻情報とともに連続的なデータとして記憶部19に格納される。データ抽出部20では、連続的な電流値データの中から、後の劣化診断部22に好適な解析用データとして抽出するための抽出開始点の探索が行われる。
【0027】
ちなみに、本処理で扱う電流値としては「Cレート値」が用いられる。Cレート値[C]は電流値の大きさを相対的に表現したもので、電流値[A]/電池容量[Ah]で表される。つまり、電池容量の異なる蓄電池15に対して共通して用いることができるパラメータである。本処理はステップS12に進む。
【0028】
ステップS12では、
図4に示すその時々の検出電流値I(この場合絶対値|I|)と判定電流値I
a0との比較による抽出開始点の探索が行われる。検出電流値Iは正負に変化するため、絶対値|I|の判定電流値I
a0との比較となる。抽出開始点の検出に用いる判定電流値I
a0は、例えば0~0.1[C]に設定されている。検出電流値Iの絶対値|I|が判定電流値I
a0より大きい場合(|I|>I
a0)、本処理はステップS11に戻る。一方、検出電流値Iの絶対値|I|が判定電流値I
a0以下となった場合(|I|≦I
a0)、本処理は次のステップS13に進む。
【0029】
ステップS13では、検出電流値Iが安定推移し始めたとして、
図4に示すように|I|≦I
a0となった時刻a
0が設定される。時刻a
0では、|I|≦I
a0となった検出電流値Iが基準電流値I
aとして設定される。また、時刻a
0から前区間T
aの時間計時が行われる。前区間T
aは、蓄電池15の所望の過渡応答特性を得るために、検出電流値Iの大きく変化する変動区間T
b前の安定推移を見るための区間として設定される。前区間T
aは、例えば1~100[s]に設定されている。本処理はステップS14に進む。
【0030】
ステップS14では、時刻a
0の基準電流値I
aに対するその時々の検出電流値Iの電流変化量ΔIが閾値ΔI
a以下であり、かつ前区間T
a以上継続するかが判定される。閾値ΔI
aは、例えば0~0.1[C]に設定されている。ここでは、時々の検出電流値Iが所望の安定推移となっているかが判定されている。前区間T
a内に検出電流値Iの電流変化量ΔIが閾値ΔI
aより大きくなると、本処理はステップS11に戻る。一方、
図4に示すように、検出電流値Iの電流変化量ΔIが閾値ΔI
a以内でかつ前区間T
a以上継続すると、つまり前区間T
a以上となってから電流変化量ΔIが閾値ΔI
aより大きくなると、本処理は次のステップS15に進む。
【0031】
ステップS15では、検出電流値Iの電流変化量ΔIが閾値ΔIaより大きくなった直前の時刻が時刻abとして設定される。時刻abは、前区間Taと次の変動区間Tbとの境界点となる。時刻abから時間計時が開始され、先ず変動区間Tbの前半区間である変動第1区間Tb1の計時開始となる。変動第1区間Tb1は、例えば1~100[s]に設定されている。変動第1区間Tb1以内における検出電流値Iの頂点Ipの探索が行われる。この場合、変動第1区間Tb1以内において上記基準電流値Iaからの変動が最も大きい検出電流値Iが頂点Ipとして選定される。本処理はステップS16に進む。ちなみに、変動区間Tbは変動第1区間Tb1と後述の変動第2区間Tb2との合計値であり、変動区間Tbとしては特に設定されない。
【0032】
ステップS16では、変動第1区間T
b1以内の検出電流値Iの頂点I
pが上記基準電流値I
aから閾値ΔI
b以上の変化が生じたかが判定される。基準電流値I
aから頂点I
pへの検出電流値Iの電流変化量ΔI、この場合変化する側を正とした電流変化量ΔIと閾値ΔI
bとが比較される。閾値ΔI
bは、例えば0.1~1.0[C]に設定されている。ここでは、検出電流値Iの所望の急変が生じたかが判定されている。基準電流値I
aから頂点I
pへの電流変化量ΔIが閾値ΔI
b未満の場合、本処理はステップS11に戻る。一方、
図4に示すように、基準電流値I
aから頂点I
pへの電流変化量ΔIが閾値ΔI
b以上であると、本処理は次のステップS17に進む。
【0033】
ステップS17では、検出電流値Iの頂点Ipの設定及び頂点Ipの時刻pの設定とともに、時刻pから変動第2区間Tb2の時間計時が開始される。変動第2区間Tb2は、例えば1~100[s]に設定されている。本処理は次のステップS18に進む。
【0034】
ステップS18では、頂点Ip以降の変動第2区間Tb2における検出電流値Iが所望の変動をしたかが判定されて、上記変動第1区間Tb1と合わせて変動区間Tbにおける検出電流値Iの変動条件を充足したかが判定される。頂点Ip以降の本実施形態の判定については次の通りである。
【0035】
図5(a)は、頂点I
p以降に検出電流値Iがステップ状に変動する場合の判定の一例である。
図5(b)は、ステップ状以外で変動する場合の判定の一例である。
図5(a)(b)は、検出電流値Iが充電時又は放電時に変動する側をいずれも正としている。頂点I
p以降で頂点I
pを基準とした検出電流値Iの電流変化量ΔIが変動第2区間T
b2において閾値ΔI
s以下で略一定推移していれば、
図5(a)に示すようなステップ波形の所望変動と判定される。閾値ΔI
sは、例えば0~0.1[C]に設定されている。
図5(a)に示すようなステップ波形の所望変動は、変動区間T
bでの検出電流値Iの一つの変動充足条件である。
【0036】
また、頂点I
p以降で頂点I
pからの変動が上記閾値ΔI
sを超えて次第に減少に転じる場合、次いで検出電流値Iの都度の電流変化量ΔIと閾値ΔI
nとが比較される。都度の電流変化量ΔIは、サンプリング周期毎の検出電流値Iの変化量である。頂点I
p以降で都度の電流変化量ΔIが閾値ΔI
n以下の増加変動を含んで変動第2区間T
b2において略減少推移していれば、
図5(b)に示すようなステップ波形以外の所望変動と判定される。閾値ΔI
nは、例えば0~0.1[C]に設定されている。
図5(b)に示すようなステップ波形以外の所望変動は、変動区間T
bでの検出電流値Iの別の変動充足条件である。
【0037】
なお、
図6(a)についても同様に、頂点I
pが設定された以降において検出電流値Iの都度の電流変化量ΔIが閾値ΔI
n以下の増加変動を含んで変動第2区間T
b2にて減少変動する態様が示されている。つまり、変動第2区間T
b2で検出電流値Iが所望変動している態様である。そのため、変動区間T
bとしての検出電流値Iの変動条件が充足すると判定されて、本処理は次のステップS19に進む。
【0038】
これに対し、
図6(b)には、変動第2区間T
b2の間で都度の電流変化量ΔIが閾値ΔI
nより大きく増加した態様が示されている。したがって、変動第2区間T
b2で検出電流値Iが所望変動していない態様のため、変動条件が充足せずと判定されて、本処理はステップS11に戻る。
【0039】
なお説明が前後するが、
図6(c)(d)は、検出電流値Iの頂点I
pの設定についての補足を示している。検出電流値Iの仮頂点I
reが生じてから反転許容時間T
re以内に検出電流値Iが再び仮頂点I
re以上に変動する
図6(c)の態様では、仮頂点I
reは頂点I
pとして設定されない。この頂点設定処理は上記変動第1区間T
b1内で繰り返され、検出電流値Iの真の頂点I
pの設定が行われる。
図6(d)の態様のように、反転許容時間T
re以内に検出電流値Iが仮頂点I
re以上に変動せずその後に仮頂点I
re以上に変動した場合、頂点I
pは設定されない。
図6(c)(d)に示す態様は、検出電流値Iの頂点I
pの設定の一例である。
【0040】
ステップS19では、変動第2区間Tb2、すなわち変動区間Tbでの検出電流値Iの変動条件を充足した時刻が時刻endとして設定される。時刻endは、検出電流値Iの頂点Ipの時刻pから所定時間経過した時刻である。そして、次のステップS20からデータ選定部21によるデータの選定が行われる。本実施形態の選定処理としては、処理A、処理B、処理Cの順に行われる。処理AはステップS20、処理BはステップS21~S23、処理CはステップS24~S29である。
【0041】
図3に示すステップS20では、データ抽出区間の抽出開始点と抽出最終点との変更が行われる。抽出開始点は時刻a
0から時間T
s経過した時刻s(
図4参照)と設定され、抽出最終点は時刻endから時間T
e経過した時刻eと設定される。時刻sから時刻eまでの区間は、解析用データの抽出区間として設定され得る区間である。本実施形態では、時刻a
0から時刻endまでの区間から、時刻sから時刻eまでの区間にデータ抽出区間が後側にシフトさせている。データ抽出区間の前区間T
aの減少と、検出電流値Iの頂点I
p後の延長とがなされている。本処理は次のステップS21に進む。
【0042】
ステップS21では、時刻end及び時刻eそれぞれの時点での過渡応答解析の解析値Ri
end,Ri
eの取得が行われる。
図7(a)は検出電流値I及び過渡応答解析の解析値Riの変化の一例であり、同図中に解析値Ri
end及び解析値Ri
eのそれぞれが示されている。本処理は次のステップS22に進む。
【0043】
ステップS22では、解析値Riendと解析値Rieとを用い、解析値Riendに対する解析値Rieの誤差率ε1が取得される。誤差率ε1の算出式の一例としては、次式(|Riend-Rie|/Riend)×100[%]が用いられる。本処理は次のステップS23に進む。
【0044】
ステップS23では、取得された誤差率ε1が閾値X1未満かの判定が行われる。閾値X1は、一例として5[%]に設定されている。誤差率ε1が閾値X1以上となる場合、時刻sから時刻endまでの区間のデータは解析用データとして抽出するには不適、すなわち時刻sから時刻endまでの区間はデータ抽出区間として不適として、本処理はステップS11に戻る。一方、誤差率ε1が閾値X1未満となる場合、本処理は次のステップS24に進む。
【0045】
ステップS24では、時刻sから時刻endまでの区間の1/Y時点の解析値Ri
y(
図7(a)参照)が取得される。本処理は次のステップS25に進む。
ステップS25では、解析値Ri
yと過渡応答解析の真値Ri
0とを用い、真値Ri
0に対する解析値Ri
yの誤差率ε
2が取得される。誤差率ε
2の算出式としては、例えば上記と同様(|Ri
0-Ri
y|/Ri
0)×100[%]が用いられる。本処理は次のステップS26に進む。
【0046】
ステップS26では、取得された誤差率ε2が閾値X2未満かの判定が行われる。閾値X2は、一例として15[%]に設定されている。誤差率ε1が閾値X1未満となる場合、時刻sから時刻endまでの区間はデータ抽出区間として好適として、本処理は後述するステップS30に進む。一方、誤差率ε2が閾値X2以上となる場合、本処理は次のステップS27に進む。
【0047】
ステップS27では、時刻sから時刻endまでの区間の1/Y時点以降の電流変化量ΔIが取得される。
図7(b)は、
図7(a)と同様の検出電流値Iに基づく解析値Riの変化と電流変化量ΔIの分布の一例である。電流変化量ΔIは、上記したがサンプリング周期毎の検出電流値Iの変化量である。
図7(b)に示す網掛け範囲内の電流変化量ΔIの取得がなされる。本処理は次のステップS28に進む。
【0048】
ステップS28では、取得された電流変化量ΔIの大きさが閾値Z以上となる個数nが取得される。本処理は次のステップS29に進む。
ステップS29では、取得された個数nが閾値X
n未満かの判定が行われる。閾値X
nは、適切値に設定されている。個数nが閾値X
n未満となる場合、この場合においても時刻sから時刻endまでの区間はデータ抽出区間として不適として、本処理はステップS11に戻る。一方、個数nが閾値X
n以上となる場合、本処理は次のステップS30に進む。つまり、上記した1/Y時点での解析値Ri
yの誤差は大きかったものの、1/Y時点以降の電流変化量ΔIを見たとき、
図7(b)のような瞬時電流の多く含まれる状況は好適と考えている。
【0049】
ステップS30では、上記ステップS20~S29を経ることで時刻sから時刻endまでの区間がデータ抽出区間として好適として確定となる。つまり、上記時刻sから時刻endまでの検出値データは、厳選された有用な解析用データとなり得るとして抽出対象として確定となる。
【0050】
上記のようにしてデータ抽出部20及びデータ選定部21は、厳選して抽出した解析用データを次の劣化診断部22に出力する。劣化診断部22は、厳選された解析用データに基づいて過渡応答解析による蓄電池15の劣化診断を行う。つまり、本実施形態の蓄電池15の劣化診断は、十分に高い精度で行えるものと期待できるものとなっている。
【0051】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
図8は、本実施形態(
図8中では本案)及び比較例等を含む各データ抽出手法を用いた場合の過渡応答解析の誤差率と抽出件数とについてのシミュレーション結果の一例である。対象の蓄電池15は定置用リチウムイオン蓄電池であり、分散型発電設備11の発電装置12は風力発電装置である。例えば風力発電装置の1年分の電流値データ、電圧値データ及び温度データの各検出値データが用いられる。
【0052】
図8の比較例1は、蓄電池15が大きく充放電する変動区間T
b以前を休止状態とした、すなわち前区間T
aに微小な充放電の生じない安定推移させた例である。比較例2は、蓄電池15が休止せずに充放電可能な状態であって、通常稼動させた例である。比較例1及び比較例2ともに、データ抽出区間は時刻a
0から時刻endまでの設定である。これに対し
図8の本実施形態は、解析用データを抽出する区間を時刻a
0から時刻endまでの区間から、時刻sから時刻eまでの区間に変更させる処理Aを含んでいる。また本実施形態は、時刻endの過渡応答解析の解析値Ri
endと時刻eの解析値Ri
eとの比較から不適データを除外する処理Bを含んでいる。更に本実施形態は、時刻sから時刻endまでの1/Y時点の解析値Ri
yと、1/Y時点以降の電流変化量ΔIとのそれぞれから不適データを除外する処理Cを含んでいる。なお
図8には、処理A~Cをそれぞれ単独で行った例も載せている。
【0053】
先ず比較例1と比較例2との比較において、比較例2は大きく充放電する変動区間Tb以前の充放電が影響し、比較例1よりも過渡応答解析の解析値Riが大幅に変動する(図示略)。そのため、解析値Riの真値との誤差率は比較例1の方が優れているのが明かであり、比較例2の方が低下しているのが分かる。抽出件数については、比較例1及び比較例2ともに「91件」と恵まれる結果となった。
【0054】
これに対し本実施形態は、解析値Riの誤差率が比較例1よりも優れている。例えば誤差率が本実施形態と比較例1とで同等となる「6%未満」となるまでに、抽出データの多くがより小さい誤差率の範囲に集まっている。抽出件数についても、本実施形態では「80件」と比較例1より若干少なくなるものの、件数としては十分である。したがって、本実施形態のデータ抽出及び選定処理を実施することにより、十分に多くのデータ抽出数を確保することが可能であり、その中で高い解析精度を得ることが可能である。つまり、本実施形態の蓄電池15の劣化診断は、高い信頼性を以て高い診断精度で実施できるものであると言える。
【0055】
ちなみに、本実施形態のデータ抽出及び選定処理に対して処理Aのみ、処理Bのみ、処理Cのみをそれぞれ単独に付加する態様についても検討してみた。処理Aの単独付加の態様、処理Bの単独付加の態様、処理Cの単独付加の態様のいずれにおいても、抽出データの多くがより小さい誤差率の範囲に集まり、抽出件数も十分な件数であった。処理A~Cを単独で付加する各態様でも十分に優れた結果が得られ、処理A~Cの全部を付加する本実施形態に近い優れた結果が得られることが分かった。したがって、本実施形態のデータ抽出及び選定処理に対し、処理A~Cの単独、若しくは処理A~Cの少なくとも2つの処理を選択して付加しても十分に期待できるものである。
【0056】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(1)蓄電池15の検出値データを劣化診断に係る解析用データとして抽出するかの判定は、蓄電池15の検出電流値Iが急変する変動区間Tb及び前区間Taでの変動条件を充足するかで行われる。変動区間Tbでの検出電流値Iの頂点Ip以降では、蓄電池15の検出電流値Iの変動条件が一定変動若しくは減少変動のいずれでも判定可能であるため、データ抽出数を多く確保することができる。また、データ抽出区間の検出値データの選定も行われて解析用データを得るようにしているため、より有用なデータを抽出することができる。そのため、後の蓄電池15の劣化診断については、高い信頼性を以て高い診断精度で実施することが期待できる。
【0057】
(2)検出値データの選定は、第1~第3処理として
図3に示す処理A~Cの全部を含んで行われる。処理Aは、データ抽出区間における前区間T
aの減少と検出電流値Iの頂点I
p後の区間延長としてデータ抽出区間を後側にシフトすることによる選定処理である。処理Bは、データ抽出区間における最終点である時刻endと、最終点より後側にシフトした変更点である時刻eとのそれぞれの過渡応答解析の解析値Ri
end,Ri
eに基づく選定処理である。処理Cは、データ抽出区間における途中点である1/Y時点の過渡応答解析の解析値Ri
yと途中点以降の検出電流値Iの電流変化量ΔIとに基づく選定処理である。本実施形態では、処理A~Cの選定処理を行うことで、より有用なデータの抽出が可能である(
図8中、本案参照)。
【0058】
なお、処理A~Cの選定処理をそれぞれ単独で行っても、より有用なデータの抽出が可能である(
図8中、処理A~C参照)。また、処理A~Cの選定処理を2つ組み合わせて行っても、より有用なデータの抽出が可能であると推察できる。
【0059】
(3)本実施形態のデータ抽出及び選定の対象の蓄電池15は定置用リチウムイオン蓄電池であるため、本実施形態のように定置用蓄電池の劣化診断に係るデータ抽出を好適に行うことができる。
【0060】
なお、検出電流値Iは検出値、電流変化量ΔIは変化量にそれぞれ相当する。また、検出電流値Iに係る閾値ΔIaは第1閾値、閾値ΔIbは第2閾値、閾値ΔIsは第3閾値、閾値ΔInは第4閾値にそれぞれ相当する。また、前区間Taは第1時間、変動第1区間Tb1は第2時間、変動第2区間Tb2は第3時間及び第4時間にそれぞれ相当する。
【0061】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・
図2及び
図3に示したデータ抽出及び選定処理は一例であり、適宜変更してもよい。例えば、データ抽出及び選定処理に処理A~Cの全部を備えたが、少なくとも1つ以上の処理を備える構成であってもよい。また、処理Bにおいて時刻end,eの解析値Ri
end,Ri
eを検証したが、時刻eの解析値Ri
eのみの検証としてもよい。また、処理CにおいてステップS24~S26、ステップS27~S29の処理をいずれか一方のみとしてもよい。また、ステップS27等において電流変化量ΔIを用いたが、電流変化量ΔIを含む電荷量で判定してもよい。
【0063】
・上記した各種の数値は一例であり、適宜変更してもよい。
・電流値にCレート値[C]を用いたが、電流値そのもの[A]を用いてもよい。また、電流値が含まれる電力値を用いてもよい。
【0064】
・各判定に電流値を用いたが、更に電圧値を加味して判定してもよい。また、環境温度、ノイズ等を考慮して判定してもよい。
・蓄電池15の劣化診断として充放電に伴う周知の過渡応答解析を用いたが、これ以外で蓄電池15の劣化診断の可能な種々の解析手法を用いてもよい。
【0065】
・時間計時はタイマによる計時の他、サンプリング数のカウントによる計時等も含む。
・蓄電池15は太陽光や風力等を用いる再生可能エネルギー発電設備に併設されるものであったが、他の再生可能エネルギー発電設備に併設されるものであってもよい。また、蓄電池15は定置用リチウムイオン蓄電池であったが、他の種の蓄電池であってもよい。また、定置用蓄電池以外であってもよい。
【0066】
・本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0067】
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)データ抽出部及びデータ選定部にて抽出した解析用データに基づいて蓄電池の劣化診断を行う劣化診断部を備えた、蓄電池の劣化診断装置。
【0068】
(ロ)抽出した解析用データに基づいて蓄電池の劣化診断を行う、蓄電池の劣化診断方法。
上記蓄電池の劣化診断装置及び蓄電池の劣化診断方法によれば、データ抽出に際して蓄電池の劣化診断に有用なより多くのデータを抽出し得ることから、劣化診断を高い信頼性を以て高い診断精度で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
15…蓄電池
19…記憶部
20…データ抽出部
21…データ選定部
I…検出電流値(検出値)
ΔI…電流変化量(変化量)
Ip…頂点
ΔIa…閾値(第1閾値)
ΔIb…閾値(第2閾値)
ΔIs…閾値(第3閾値)
ΔIn…閾値(第4閾値)
Ta…前区間(第1時間)
Tb…変動区間
Tb1…変動第1区間(第2時間)
Tb2…変動第2区間(第3時間及び第4時間)
end…時刻(最終点)
e…時刻(変更点)
1/Y…時点(途中点)
Riend…解析値
Rie…解析値
Riy…解析値