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  • 特開-水流発生手段及び藻類の回収方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107675
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】水流発生手段及び藻類の回収方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/02 20060101AFI20240802BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C12M1/02 A
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011722
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】植田 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】酒井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】逢坂 竜之介
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DA01
4B029DB01
4B029DB06
(57)【要約】
【課題】培養槽内の藻類の回収効率及び回収コストを削減可能な培養槽等を提供する。
【解決手段】藻類を培養可能な培養液Pが収容される培養槽1に配設可能な水流発生手段10であって、培養液Pを循環させる流路を形成する一対の壁面間の距離と実質的に対応する幅を有する第1の水車と、第1の水車の径方向内側において回転可能とされ、壁面間の距離よりも短い幅を有する第2の水車とを備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類を培養可能な培養液が収容される培養槽に配設可能な水流発生手段であって、
前記培養液を循環させる流路を形成する一対の壁面間の距離と実質的に対応する幅を有する第1の水車と、
前記第1の水車の径方向内側において回転可能とされ、前記壁面間の距離よりも短い幅を有する第2の水車と、
を備えたことを特徴とする水流発生手段。
【請求項2】
前記第1の水車及び前記第2の水車の回転中心となる回転軸と、
前記回転軸の前記培養液の液面に対する高さ位置を変更可能な位置切替手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の水流発生手段。
【請求項3】
前記位置切替手段により、前記第2の水車を前記培養液中にて回転可能な位置としたとき、
前記第1の水車の表面が、前記培養液の液面と接することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の水流発生手段。
【請求項4】
藻類を培養可能な培養液が収容された培養槽における藻類の回収方法であって、
前記培養液を循環させる流路を形成する一対の壁面間の距離と実質的に対応する幅を有する第1の水車を駆動させ、前記藻類を一定期間培養する工程と、
前記一定期間経過後に、前記壁面間の距離よりも短い幅を有する第2の水車を駆動させ、前記培養液に含まれる藻類を当該第2の水車の下流側に停留させる工程と、
を含むことを特徴とする藻類の回収方法。
【請求項5】
前記第1の水車及び前記第2の水車の回転軸を同一軸上とし、
前記一定期間培養する工程において、前記第1の水車の回転によって前記培養液を循環させ、
前記停留させる工程において、前記回転軸の前記培養液の液面に対する高さ位置を変更可能な位置切替手段の操作によって前記第2の水車を前記培養液中にて回転可能な位置として、前記培養液を循環させることを特徴とする藻類の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養槽に配設可能な水流発生手段に関し、特に培養後の藻類の回収を容易に可能な水流発生手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食用、或いは所謂バイオマス資源として藻類を培養する施設や装置の開発が盛んに行われている。このような装置の一例として特許文献1には、レースウェイと称される循環型の培養槽内において培養液を攪拌、循環させながら培養液内の藻類の光合成を促進し、以て藻類を回収可能な培養槽が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-23979号広報
【発明の概要】
【0004】
上記従来の培養槽にあっては、一定程度の培養が完了した後に、藻類を回収する作業が必要となるが、通常このような回収作業は、培養槽内の培養液をポンプ等によって全量又は半量程度回収し、その後に藻類と培養液を遠心分離機等によって分離する固液分離処理が必要となる。そして、このような回収、分離作業は回収効率及び回収コストの増大を招く要因となる。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、培養槽内の藻類の回収効率を増大させ、かつ、回収コストを削減可能な培養槽等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明に係る構成として、藻類を培養可能な培養液が収容される培養槽に配設可能な水流発生手段であって、培養液を循環させる流路を形成する一対の壁面間の距離と実質的に対応する幅を有する第1の水車と、第1の水車の径方向内側において回転可能とされ、壁面間の距離よりも短い幅を有する第2の水車とを備えた構成とした。
上記構成によれば、流路を形成する一対の壁面間の距離と実質的に対応する幅を有する第1の水車によって培養液を均一な流れによって循環させることができ、壁面間の距離よりも短い幅を有する第2の水車によって当該第2の水車の下流側において、壁面との間に形成された隙間方向に向かって旋回する渦流を生じさせることができ、培養液中の藻類を停留させることが可能となる。よって、停留した藻類(藻類の密度が高い領域)を回収することで、回収効率の向上、コスト削減が可能となる。
また、第1の水車及び前記第2の水車の回転中心となる回転軸と、回転軸の培養液の液面に対する高さ位置を変更可能な位置切替手段とを備えた構成であっても良い。
また、位置切替手段により、第2の水車を培養液中にて回転可能な位置としたとき、第1の水車の表面が、培養液の液面と接する構成であっても良い。
上記構成によれば、第2の水車の回転によって生じる波動を第1の水車の表面によって抑制することができ、渦流を効率的に発生させることができる。
なお、上記発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。また、以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成又は工程をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】培養槽の全体構造を示す平面図である。
図2】水流発生手段の構造を示す模式図等である。
図3】水流発生手段の側面及び位置切替手段の構造を示す模式図である。
図4】実験設備に係る培養槽を示す平面図である。
図5】流路の流れ方向における速度ベクトルを示す断面図である。
図6】流路の幅方向における速度ベクトルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、実施形態に係る開放型の培養槽1の平面図である。同図に示すように、培養槽1は、例えばコンクリートにより形成されたオーバル状の外壁3と、外壁3の短軸方向中心において長軸方向に延在する仕切り部5とを備え、水車型の水流発生手段10を起点として培養液Pを主に矢印方向に循環させる流路が形成される。ここで、培養液Pは、例えば、窒素源、リン源、ミネラルなどの栄養塩類を添加した液体であって、培養液P中にて藻類が培養される。
【0009】
図1に示すように、水流発生手段10は、外壁3と仕切り部5との間の直線状の流路中央に渡って配設される。図2に示すように、水流発生手段10は、第1の回転手段としての外側水車12と、当該外側水車12の内側において独立して回転可能とされた第2の回転手段としての内側水車14と、外側水車12及び内側水車14を回転可能とするモーターMを備えた駆動手段20と、当該駆動手段20の回転力を内側水車12及び外側水車14をそれぞれに独立して伝達可能な水車回転軸30と、駆動手段20の駆動力を伝達すると共に、水車回転軸30の培養液Pの液面に対する高さを変更可能な位置切替手段40等から構成される。以下、上記各構成の詳細について説明する。
【0010】
[外側水車]
図2に示すように、外側水車12は、培養液Pの循環方向(流路方向)に延在する板状体であって、平面視した場合に後述の水車回転軸30を回転中心として回転可能である。外側水車12は、回転動作によって培養液Pを攪拌し、矢印方向への水流を発生させる一対の攪拌部12A;12Aと、一対の攪拌部12A;12A同士を接続する接続部12B;12Bを有する略H型の形状を呈し、攪拌部12A;12A及び接続部12B;12Bに囲まれた内部領域R内に、これを相補する形状を呈する小径な内側水車14が配置される。攪拌部12Aの幅方向寸法L1は、外壁3の内周面と仕切り部5の外周面との離間寸法と略一致しており、その回転動作によって外壁3及び仕切り部5の表面と接触しない寸法に設定される。外側水車12には、接続部12B;12Bに形成された円筒状の挿入部13A;13Aを介して水車回転軸30が挿入されている。当該水車回転軸30と挿入部13A;13Aとは、水車回転軸30周りに配設されたワンウェイクラッチによって係合しており、水車回転軸30の正方向への回転に応じて外側水車12が回転し、逆方向への回転によっては空転する。
【0011】
[内側水車]
内側水車14は、外側水車12と同厚の板状体であって、外側水車12の内部領域Rの形状と略対応し、かつ、内部領域Rの周縁と非接触な寸法を有する矩形状に形成される。内側水車14には、短手方向の両側部に形成された円筒状の挿入部15A;15Aを介して水車回転軸30が挿入されている。当該水車回転軸30と挿入部15A;15Aとは、外側水車12と同様にワンウェイクラッチによって係合している。当該ワンウェイクラッチは、外側水車12を回転させるワンウェイクラッチとの比較において、水車回転軸30の正方向への回転によっては空転し、逆方向への回転に応じて内側水車14を回転させる。即ち、外側水車12と内側水車14とは、共に水車回転軸30を回転中心として回転可能な板状体であるが、水車回転軸30の回転によって回転可能となる回転方向が逆の関係となる。次に、図2図3を参照して、水車回転軸30を回転させる駆動手段20及び位置切替手段40について説明する。
【0012】
[水車回転軸]
外側水車12及び内側水車14の回転中心軸となる水車回転軸30は、流路の幅方向に離間して配設された位置切替手段40を構成する回転盤42A;42B間に架設される。図3にも示すように、回転盤42A;42Bは、円形盤として形成され、その中心に後述のシャフト22及び支持軸24の貫通を可能とする貫通部44と、当該貫通部44の径方向外側に開設された軸挿入部46とを有する。
回転盤42Aの軸挿入部46には、プーリP1が配置され、回転盤42Bの軸挿入部46には、ベアリングBが配置される。そして、水車回転軸30の両端部が軸挿入部46内において回転可能に支持され、回転盤42A;42Bの回転動作によってその周面上に位置する軸挿入部46に挿入された水車回転軸30の位置が変化し、水車回転軸30の培養液Pの水面からの高さ位置を変化させることが可能となる。なお、当該高さ位置の変化については後述する。
【0013】
回転盤42A;42Bの回転中心である貫通部44には、駆動手段20のモーターMの回転動作と一体的に回転可能なシャフト22及び支持軸24が図外のベアリングを介してそれぞれ挿入される。図2に示すように、一方の回転盤42Aを貫通するシャフト22は、一端側が培養槽1の外部に配設されたモーターMと図外の伝達手段を介して接続され、他端側が回転盤42Aを貫通する。回転盤42Aを貫通するシャフト22の他端には、回転盤42Aの径方向外側に延在する無端ベルト43に回転力を伝達するギアGが配置される。無端ベルト43は、当該ギアGと前述の水車回転軸30の一端を支持するプーリP1との間に掛け渡されており、モーターMの駆動に応じたシャフト22の回転力が無端ベルト43を介して水車回転軸30に伝達される。他方の回転盤42Bに挿入される支持軸24は、一端側が仕切り部5上に固定的に配設された軸受け部45によって回転可能に支持される。
【0014】
以上のように、本実施形態に係る水流発生手段10は、その幅方向寸法及び半径が異なる複数の水車(外側水車12;内側水車14)を備え、水車回転軸30の回転に応じて各水車が異なる方向に回転可能である。また、モーターMから延在するシャフト22(支持軸24)を中心として回転可能な回転盤42A;42Bを有する位置切替手段40の動作によって水車回転軸30の高さ位置を変更、調整可能な構成である。以下、図3を参照して、水車回転軸30の高さ位置の変化について説明する。
【0015】
図3(a)は、藻類の培養を促進する培養期において設定される水車回転軸30の位置を示す。培養期においては、藻類の光合成を促進するべく、培養槽1内において藻類の局所的な堆積が生じないように、培養液を均一に攪拌、循環させる必要がある。よって、当該培養期においては、幅方向の寸法が流路の幅方向寸法と実質的に同一であり、かつ、大径に設定された外側水車12の回転による循環が好ましい。そして、この場合、回転盤42A;42Bに設けられた軸挿入部46の位置を回転中心となる貫通部44の直上となる位置に設定する。そしてこの状態にてモーターMを正回転させることにより、外側水車12のみを矢印T1方向に常時回転させ、均一な循環を継続的に行う。なお、上記位置において、外側水車12よりも小径な内側水車14は、培養液Pを適正に循環させるための長さを有さないため、培養液Pの循環が不可な位置と言える。
【0016】
一方、一定の培養期が経過し、回収期を迎えた場合には培養槽1内に散逸した藻類を局所的に堆積させることによって、当該藻類を効率的に回収することが可能となる。そして、回収期においては、図3(b)に示すように、回転盤42A;42Bを例えば矢印方向に180°回転させることによって軸挿入部46の位置を回転中心となる貫通部44の直下となる位置に設定する。これによって、外側水車12よりも小径に設定された内側水車14の先端が培養槽1の底面近傍にまで達することができ、培養液Pを適正に循環させることが可能となる。そして、この状態にてモーターMを外側水車12の回転方向とは異なる逆回転させることにより、内側水車14のみを矢印T2方向に常時回転させ、循環を継続的に行う。また、このとき、外側水車12を培養液Pの液面Qに接する位置にて水平に位置決めしておくことにより、内側水車14の回転によって生じる液面の波動を抑制することができ、藻類の堆積作用が増大する。
【0017】
以下、内側水車14による藻類の堆積作用について説明する。図2に示すように、流路を形成する外壁3の内周面3Aと内側水車14の幅方向一端部との間、及び、仕切り部5の内周面5Aと内側水車14の幅方向他端部との間には、外側水車12との比較においてそれぞれ隙間G1;G2が形成される。つまり、内側水車14の上流側の培養液Pは、内側水車14の回転によって付勢されて下流側に導出されるか、内側水車14の幅方向両側に形成された隙間G1;G2を介して下流側に導出されることとなり、内側水車14を経るルートと、隙間G1;G2を経るルートが形成される。
【0018】
また、回収期においては、外側水車12が液面Qに接するように位置決めされるため、内側水車14によって導出された直後の培養液Pの液面の略全域を所定寸法(攪拌部12A)に渡って閉塞する状態となる。そして、このような規制手段とも概念できる外側水車12が内側水車14の下流側近傍に位置することにより、内側水車14の回転によって上方に押し上げられるように導出される培養液Pによって生じる波動を抑制することができ、更に下流側において藻類の停留、堆積に寄与する渦流を発生させることが可能となる。
【0019】
以下、上述の培養槽1を模した実験設備を用いて、内側水車14の回転による渦流の発生について説明する。図4は、実験設備の概要を示す模式図である。
【0020】
同図に示すように、本実験で用いる培養槽100は、透明なアクリル樹脂製であって、全長が490mm(=L)、全幅が93mm
(=2W+tod)の容器に長さ400mm(=Lcd)、厚さ3mm(=tod)の仕切り部5としての中間板を配置したものである。水車としてのパドルは、上記内側水車14とは羽根の数が異なり(4枚)、シャフトの中心を基準として、中間板の上流側端部から50mm(=Lw)の位置に配設され、その回転数は100rpmに設定した。培養槽100には、培養液Pとして水深が20mmとなるように水道水を満たしておく。このとき、開放型水路の水力直径、水車吐出直後の水路断面平均速度に基づくレイノルズ数はRe=8511となる。また、回転する水車によって生成される波動の影響を除去するため、水車部を除く水面の全域を厚さ2mmのアクリル樹脂製の平板で覆った。また、回転する水車によって水面より高く持ち上げられた水が平板の上面に乗り上げてしまうことを防ぐため、波止用板を水車の下流側の平板端面に垂直に取り付けている。
【0021】
水車の回転軸に取り付けられた4枚の平板は,流路幅Wに対して左右それぞれの隙間が(1)3mmの場合(各平板面積15×38[mm])と(2)0.25mmの場合(15×43[mm])との2種類である。即ち、(1)に示す平板は、その幅方向長さを、流路幅Wよりも短く設定し、流路を形成する壁面に対して積極的に隙間を設けた態様である。一方、(2)に示す平板は、その幅方向長さを、流路幅Wと実質的に同一に設定し、流路を形成する壁面との隙間が形成されない態様である。
【0022】
これまでの研究から、代表的な光合成微生物であるシアノバクテリアの比重は培養液中でおよそ1.1であることが知られている。そこで、本実験では微細藻類をナイロン製のトレーサ粒子(比重1.03、粒子径80μm)で模擬する。そして当該粒子を約1g/Lの濃度で培養槽内に混入し、全域で粒子が均一に分散するように十分攪拌してから3分間静置した後に水車を回転させる。粒子堆積の様子は、デジタルカメラを用いて培養槽1の底部から1分間隔で撮影した。水車から吐出される流れの様子は粒子画像流速計(PIV)によって計測した。具体的には、前述と同じトレーサ粒子を流路内に0.3g/Lの濃度で混入させ、波長532nmのDPSSレーザで照射された所望断面の速度ベクトルが150frames/sの高速度カメラで撮影する。
【0023】
以下、図5図6を参照して実験結果について説明する。なお、図示の実験結果は、上記(1)の条件により、平板と壁面との間に隙間を設けた態様を例とする。図5は、水車を起点として、水の流れ方向縦断面において速度ベクトルを計測した結果である。具体的には、図5(a)は、流路幅Wの中央(平板の中心)位置の断面を示し、図5(b)は、壁面から平板側に2mm離れた位置(隙間の位置)の断面を示す。
【0024】
図6は、水車の前方の流路の幅方向断面における速度ベクトルを計測した結果を示す。具体的には、図6(a)は、中間板の上流側端部から95mmの位置の幅方向断面であり、図6(b)は同360mmの位置、図6(c)は同390mmの位置である。なお、図示のPIV計測において,速度ベクトルは5秒間(その間、水車は約8.3回転する)に取得したデータの平均値として算出している。
【0025】
図5(a)に示すように、水車の平板によって上方に持ち上げられた水は水面を覆うアクリル樹脂製と波止用板によって上方に向かうことができず、流路の両側方にある隙間(各3mm)側に回り込んで下方へ向かうことになる。
【0026】
図6(a)に示すように、水車に近い前方(下流)位置においては、両壁面に沿って降下した後に、底面に沿って中央側に滑動し、中央部において上昇するような左右一対の渦が発生していることが分かる。また、このような一対の渦は、図6(b),(c)に示すように、水車からの距離が離れるに従って縮小、消失する。また、図6(a),(b)の比較から流路の底面近傍での流れ方向速度は、両壁面付近側が中央付近側よりも速くなるため、結果として一対の渦によって中央側に移動した粒子は、相対的に流れ方向速度の小さい流路の中央付近において停留すると言う結果が得られた。
【0027】
一方、(2)の条件に示す平板、即ち、幅方向長さが流路幅Wと実質的に同一に設定され、流路を形成する壁面との実質的な隙間が形成されない構成を採用した場合にあっては、水車から導出される水は平板と水面を覆う規制手段としてのアクリル製樹脂との隙間から流路前方に向けて流出するしかなく、上述の例に見られたような中央付近へと旋回する明瞭な渦対が形成されず、水車前方における粒子の均一な停留、堆積は認められなかった。
【0028】
以上の結果を踏まえると、回収期において外側水車12を培養液Pの液面を覆うように規制手段として配置し、外側水車12よりも小径な内側水車14と流路を形成する両壁面との間にそれぞれ隙間G1;G2を設けることにより、培養中の藻類等の対象物を水流発生手段10の下流側の中央付近に意図的に停留、堆積させることが可能となる。従って、当該位置、即ち、藻類の密度が高い領域における培養液Pをポンプ等によって集中的に回収することにより、培養後の藻類を効率的に回収することが可能となる。
【0029】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に多様な変更、改良を加え得ることは当業者にとって明らかであり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0030】
位置切替手段40を構成する回転盤42A:42Bをモーター等の駆動源によって回転させる構成であっても良い。このような構成とすれば、藻類の培養状況をモニタリングし、一定の培養が完了した時点で水車回転軸30の位置を自動的に調整(液面側に下げる)することができる。また、本実施形態では、外側水車12と内側水車14とを一体的な機構とし、これらを独立して回転可能な構成としたが、外側水車12と内側水車14とを培養槽1の流路上に個別的に配置し、外側水車12による一定期間の培養期の経過後に、内側水車14のみを回転させることにより当該内側水車14の下流側に藻類を堆積させることも可能である。また、内側水車14の回転時において、外側水車12の波動による揺動を抑制するため、回転動作をロックする機構を採用しても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 培養槽,3 外壁,5 仕切り部,10 水流発生手段,12 外側水車,
14 内側水車,22 シャフト,30 水車回転軸,42A;42B 回転盤,
G1;G2 隙間,P 培養液
図1
図2
図3
図4
図5
図6