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  • 特開-金属体の探傷方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107677
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】金属体の探傷方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
G01N25/72 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011724
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】山腰 浩平
(72)【発明者】
【氏名】森山 稔
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AA05
2G040AB08
2G040AB12
2G040BA08
2G040BA25
2G040CA02
2G040DA06
2G040EA04
2G040EB02
2G040GC01
2G040HA14
(57)【要約】
【課題】金属体に生じる表面欠陥と表層欠陥を確実に識別できる金属体の探傷方法を提供する。
【解決手段】金属体1を高周波加熱して、加熱時に金属体1の表面温度が一般領域13と温度差を生じた部分を有欠陥領域11,12とし、加熱後の放冷時に有欠陥領域11と一般領域13の間の温度差が解消された場合に有欠陥領域11に有る欠陥を表層欠陥Dtと判定し、温度差が解消されない場合には有欠陥領域12にある欠陥を表面欠陥Dsと判定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属体を高周波加熱して、加熱時に前記金属体の表面温度が一般領域と温度差を生じた部分を有欠陥領域とし、加熱後の放冷時に前記有欠陥領域と前記一般領域の間の温度差が解消された場合に前記有欠陥領域に有る欠陥を表層欠陥と判定し、温度差が解消されない場合には前記有欠陥領域にある欠陥を表面欠陥と判定する金属体の探傷方法。
【請求項2】
前記金属体を黒色化した請求項1に記載の金属体の探傷方法。
【請求項3】
前記金属体は丸棒磁性体である請求項1又は2に記載の金属体の探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は丸棒鋼等の金属体の探傷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
丸棒鋼の表面に生じた表面欠陥と、表面直下の内部に生じた表層欠陥を検出し、これらを判別する探傷方法として例えば特許文献1に記載されたものが知られており、ここでは、超音波を丸棒鋼材の外周面から所定の屈折角でその内部へ入射させ、反射波中の位相反転の有無によって表面欠陥か、表面直下の内部に生じる表層欠陥かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-24142
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の探傷方法では、表層欠陥が丸棒鋼の表面に極めて近い位置にあると表面欠陥との識別を誤ることがあるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、金属体に生じる表面欠陥と表層欠陥を確実に識別できる金属体の探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、金属体(1)を高周波加熱して、加熱時に前記金属体(1)の表面温度が一般領域(13)と温度差を生じた部分を有欠陥領域(11,12)とし、加熱後の放冷時に前記有欠陥領域(11)と前記一般領域(13)の間の温度差が解消された場合に前記有欠陥領域(11)に有る欠陥を表層欠陥(Dt)と判定し、温度差が解消されない場合には前記有欠陥領域(12)にある欠陥を表面欠陥(Ds)と判定する。
【0007】
本第1発明によれば、加熱後の放冷時に一般領域との間で温度差を生じるか否かで有欠陥領域にある欠陥が表層欠陥であるか表面欠陥であるかを確実に識別することが可能である。
【0008】
本第2発明では、前記金属体を黒色化する。これにより金属体表面の放射率が一様となるから、表層欠陥ないし表面欠陥の識別をより確実に行うことができる。
【0009】
本第3発明では、前記金属体は丸棒磁性体である。本発明方法は丸棒磁性体における表層欠陥ないし表面欠陥の識別に特に有効である。
【0010】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の金属体の探傷方法によれば、金属体に生じる表面欠陥と表層欠陥を確実に識別して探傷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】欠陥を有する丸棒磁性材の全体斜視図である。
図2】丸棒磁性材を収容した高周波加熱炉の概略断面図である。
図3】それぞれ表面欠陥ないし表層欠陥を有する丸棒磁性材内に生じた渦電流の挙動を示す断面図である。
図4】表層欠陥を有する丸棒磁性材の、加熱開始時(図4(1))と加熱時(図4(2))のサーモグラフィー観測画面である。
図5】表面欠陥を有する丸棒磁性材の、加熱開始時(図5(1))と加熱時(図5(2))のサーモグラフィー観測画面である。
図6】表層欠陥を有する丸棒磁性材の、加熱終了後のサーモグラフィー観測画面である。
図7】表面欠陥を有する丸棒磁性材の、加熱終了後のサーモグラフィー観測画面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0014】
図1には探傷対象である金属体として、一定長さの圧延肌の丸棒磁性材1を使用した場合を示し、その外周面の一カ所には長手方向へ延びる線状の表面欠陥Dsが深さ1mm、幅0.5mmで形成され、また丸棒磁性材1内には、外周面にごく接近した(本実施形態では外周面から0.3mmの深さ)位置にφ1mmの長手方向へ延びる円筒空洞状の表層欠陥Dtが形成されている。そして、丸棒磁性材1全体は放射率を均一にするために全体に黒色塗料をスプレーして黒体化してある。なお、黒色塗料は水溶性のものを使用すれば探傷後は洗浄除去できる。また、黒皮状態のような放射率の一様性が許容できる金属体であれば黒体化は不要である。
【0015】
このような丸棒磁性体1を図2に示すように高周波加熱炉2内に設置してその周囲の螺旋状加熱コイル21によって加熱する。この時の加熱条件の一例は、加熱周波数が200kHz、加熱電力が25kVAであり、加熱時間は約1.0秒とする。そして、加熱時および加熱終了後の丸棒磁性体1の温度変化をサーモグラフィー3によって観測した。
【0016】
加熱時には丸棒磁性体1はこれに生じる渦電流によって全体が誘導加熱され、その温度が上昇するが、表面欠陥Dsや表層欠陥Dtがあると図3(1)、(2)に示すように、これらの近傍で渦電流Idの流路が狭められることによって電流密度が高くなり、有欠陥領域では一般領域よりもその温度が高くなる。
【0017】
この場合のサーモグラフィー画像を図4図5にそれぞれ示す。なお、画像は螺旋状の放熱コイル21の上下のコイル部間に、内方に位置する丸棒磁性材1が見えているものである。図4(1)、(2)は表層欠陥Dtがある場合のそれぞれ加熱開始時と加熱時の画像、図5(1)、(2)は表面欠陥Dsがある場合のそれぞれ加熱開始時と加熱時の画像である。図4図5から明らかなように、加熱開始時には有欠陥領域11、12と一般領域13は常温で均一な温度分布を示しているが、加熱すると、上述のように、表層欠陥Dtがある有欠陥領域11や表面欠陥Dsがある有欠陥領域12ではそれぞれの欠陥部において一般領域13よりもその温度が高くなる(図の濃色部分)。
【0018】
そして加熱終了後の放冷時には、表層欠陥Dtがある有欠陥領域11は、図6に示すように熱平衡によって速やかに一般領域13と差のない温度へ低下するのに対して、表面欠陥Dsがある有欠陥領域12では、図7に示すように空洞放射効果によって放射率が一般領域13より高くなり、加熱終了後も表面欠陥Dsのある部分(図の白色部分)で一般領域13との間に温度差を生じている。
【0019】
従って、加熱後の表面温度を検出することによって、丸棒磁性体1に生じている表面欠陥Dsと表層欠陥Dtを確実に識別して探傷することができる。
【0020】
(その他の実施形態)
上記実施形態では探傷対象の金属体として丸棒磁性体を使用したが、丸棒には限られず、また非磁性体でも良い。なお、非磁性体では渦電流が欠陥を迂回することによって有欠陥領域では一般領域よりも温度が低下する。
【0021】
上記実施形態では放射率を均一にするために金属体の黒色化を行ったが、放射率の一様性が許容できる範囲内ならば黒色化は特に必要ではない。この場合、表面が光沢面である金属体の探傷も可能であるが、加熱時に有欠陥領域と一般領域の温度差が十分大きくなるように、渦電流が表層欠陥の深さまで浸透してこれと干渉するように加熱周波数を適切に選ぶ必要がある。
【符号の説明】
【0022】
1…丸棒磁性材(金属体)、11,12…有欠陥領域、13…一般領域、2…高周波加熱炉、21…加熱コイル、3…サーモグラフィー、Ds…表面欠陥、Dt…表層欠陥。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7