(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107684
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】再エネ利用電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240802BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240802BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H02J3/38 120
H02J3/32
H02J7/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011737
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 重純
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】バッテリを備えた再エネ利用電力システムにおいて、電力変換効率の低下を抑え、コスト上昇を抑え、かつ、バッテリの寿命を延ばす。
【解決手段】DC-DCコンバータ12は、再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電部11の出力を、所定電圧の直流電力に変換し、DCバス13に出力する。電力変換部14は、DCバス13の直流電力を直流電力または交流電力に変換してシステム外部に出力する。スイッチ15は、DCバス13とバッテリ16との間に接続されており、オン状態とオフ状態とを切替可能に構成されている。DC-DCコンバータ12は、スイッチ15のオンオフ状態に応じて、出力する直流電力の電圧値を変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電部と、
前記発電部の出力を、所定電圧の直流電力に変換し、DCバスに出力するDC-DCコンバータと、
前記DCバスの直流電力を、直流電力または交流電力に変換する電力変換部と、
前記DCバスに接続されており、オン状態とオフ状態とを切替可能に構成されたスイッチと、
前記スイッチに接続されたバッテリと、
前記スイッチのオンオフを制御する制御部とを備え、
前記DC-DCコンバータは、前記スイッチのオンオフ状態に応じて、出力する直流電力の電圧値を変更する
再エネ利用電力システム。
【請求項2】
再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電部と、
前記発電部の出力を、所定電圧の直流電力に変換する第1DC-DCコンバータと、
前記発電部の出力を、所定電圧の直流電力に変換する第2DC-DCコンバータと、
前記第1DC-DCコンバータの出力、および、前記第2DC-DCコンバータの出力のいずれかを選択して出力する第1スイッチと、
前記第1スイッチの出力を、直流電力または交流電力に変換する電力変換部と、
前記第2DC-DCコンバータの出力端に接続されており、オン状態とオフ状態とを切替可能に構成された第2スイッチと、
前記第2スイッチに接続されたバッテリと、
前記第1スイッチの選択動作、および前記第2スイッチのオンオフを制御する制御部とを備える
再エネ利用電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギーを利用した発電部とバッテリを備える電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、特許文献1の
図1に示された従来の太陽光発電システムの構成例である。
図4の構成では、パワーコンディショナ11は、太陽電池20の出力を受ける昇圧チョッパ(DC-DCコンバータ)12と、昇圧チョッパ12からの直流電力を交流電力に変換するインバータ13と、インバータ13の入力ラインと蓄電池21との間に設けられた双方向チョッパ(DC-DCコンバータ)14とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-354677号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、DC-DCコンバータやインバータは、入力電圧と出力電圧の差が大きいと変換効率が低下する。例えば特許文献1の構成では、インバータ13の入力ラインに、昇圧チョッパ12の出力と、蓄電池21の充放電に用いられる双方向チョッパ14が接続されている。双方向チョッパ14が存在することにより、蓄電池21の充放電電圧に影響なく、昇圧チョッパ12の出力電圧をインバータ13の動作に適した電圧に設定可能である。ただし、双方向チョッパ14という回路が必要となるため、コスト上昇につながる。
【0005】
また、バッテリは、常時充放電されると寿命が短くなり、他の部品より寿命が短いため、できるだけ充放電を減らすことが好ましい。
【0006】
本発明では、バッテリを備えた再エネ利用電力システムにおいて、電力変換効率の低下を抑え、コスト上昇を抑え、かつ、バッテリの寿命を延ばすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様では、再エネ利用電力システムは、再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電部と、前記発電部の出力を所定電圧の直流電力に変換し、DCバスに出力するDC-DCコンバータと、前記DCバスの直流電力を、直流電力または交流電力に変換する電力変換部と、前記DCバスに接続されており、オン状態とオフ状態とを切替可能に構成されたスイッチと、前記スイッチに接続されたバッテリと、前記スイッチのオンオフを制御する制御部とを備え、前記DC-DCコンバータは、前記スイッチのオンオフ状態に応じて、出力する直流電力の電圧値を変更する。
【0008】
この構成によると、再エネ利用電力システムにおいて、発電部の発電電力が当該再エネ利用電力システムの出力電力に対して十分な場合、スイッチをオフ状態にして、バッテリをDCバスから切り離すことができる。このとき、DC-DCコンバータは、出力する直流電力の電圧値を、システム全体の電力変換効率が最大化するような電圧に設定できるので、最適な制御が可能となる。また、バッテリの充放電を行わないときは、スイッチをオフ状態にしてバッテリをDCバスから切り離すことができるので、消耗品であるバッテリの寿命を延ばすことができる。
【0009】
また、本発明の別の態様では、再エネ利用電力システムは、再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電部と、前記発電部の出力を所定電圧の直流電力に変換する第1DC-DCコンバータと、前記発電部の出力を所定電圧の直流電力に変換する第2DC-DCコンバータと、前記第1DC-DCコンバータの出力、および、前記第2DC-DCコンバータの出力のいずれかを選択して出力する第1スイッチと、前記第1スイッチの出力を、直流電力または交流電力に変換する電力変換部と、前記第2DC-DCコンバータの出力端に接続されており、オン状態とオフ状態とを切替可能に構成された第2スイッチと、前記第2スイッチに接続されたバッテリと、前記第1スイッチの選択動作、および前記第2スイッチのオンオフを制御する制御部とを備える。
【0010】
この構成によると、再エネ利用電力システムにおいて、発電部の発電電力が当該再エネ利用電力システムの出力電力に対して十分な場合、第1スイッチに第1DC-DCコンバータの出力を選択させる。したがって、第1DC-DCコンバータの出力電圧を、システム全体の電力変換効率が最大化するような電圧に設定することによって、最適な制御が可能となる。また、第1スイッチに第2DC-DCコンバータの出力を選択させ、第2スイッチをオン状態にすることによって、電力変換部に、バッテリの電力に加えて発電部からのアシスト電力が供給されるので、このモードにおけるバッテリの消費電力を抑えることが可能となる。さらに、バッテリの充放電を行わないときは、第2スイッチをオフ状態にしてバッテリを第2DC-DCコンバータの出力端から切り離すことができるので、消耗品であるバッテリの寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、バッテリを備えた再エネ利用電力システムにおいて、電力変換効率の低下を抑え、コスト上昇を抑え、かつ、バッテリの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る再エネ利用電力システムの構成
【
図2】
図1の再エネ利用電力システムの効果を説明するための図
【
図3】第2実施形態に係る再エネ利用電力システムの構成
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0014】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る再エネ利用電力システムの構成例である。
図1において、発電部11は、再生利用可能エネルギーを利用して発電を行う。発電部11は、例えば、太陽電池(PV:Photovoltaic)、あるいは、温度差発電素子(TEG:Thermoelectric Generator)である。DC-DCコンバータ12は、発電部11の出力を、所定電圧の直流電力に変換し、DCバス13に出力する。DC-DCコンバータ12は、出力する直流電力の電圧値を変更可能に構成されている。
【0015】
DC-DCコンバータ14は、DCバス13の直流電力を、所定電圧の直流電力に変換する。DC-DCコンバータ14から出力された直流電力は、当該再エネ利用電力システムの出力電力になる。DC-DCコンバータ14は、本開示における電力変換部の例である。なお、DC-DCコンバータ14の代わりに、DCバス13の直流電力を交流電力に変換するインバータを、電力変換部として設けてもよい。この場合、本再エネ利用電力システムは、例えば系統に連結されたり、あるいはモータドライブ等に用いられたりする。
【0016】
DCバス13には、スイッチ15が接続されている。スイッチ15は、オン状態とオフ状態とを切り替え可能に構成されており、オン状態では入力端と出力端が電気的に導通し、オフ状態では入力端と出力端が電気的に遮断される。スイッチ15は、例えば、機械式リレーや半導体スイッチによって構成される。バッテリ16は、スイッチ15を介して、DCバス13に接続されている。スイッチ15がオン状態のとき、バッテリ16はDCバス13と電気的に接続される。スイッチ15がオフ状態のとき、バッテリ16はDCバス13と電気的に切り離される。
【0017】
制御部17は、スイッチ15のオンオフ状態の切り替えを制御する。すなわち、制御部17は、バッテリ16の充電を行うとき、または、バッテリ16の放電を行うとき、スイッチ15をオン状態に制御する。また制御部17は、バッテリ16の充電および放電を行わないとき、スイッチ15をオフ状態に制御する。
【0018】
ここで、制御部17は、発電部11の出力、DC-DCコンバータ14の出力、および、バッテリ16の状態を監視するものとする。そして、これらを基にして、スイッチ15のオンオフ状態の切り替えを制御する。例えば、発電部11の発電電力が当該再エネ利用電力システムの出力電力を十分に賄える場合、制御部17は、スイッチ15をオフ状態にする。これにより、バッテリ16はDCバス13から電気的に切り離される。また例えば、バッテリ16の残量が少なくバッテリ16の充電が必要な場合、制御部17は、スイッチ15をオン状態にする。これにより、バッテリ16はDCバス13に電気的に接続され、DCバス13からバッテリ16へ給電が行われる。あるいは、発電部11の発電電力が当該再エネ利用電力システムの出力電力に対して不足している場合、制御部17は、スイッチ15をオン状態にする。これにより、バッテリ16はDCバス13に電気的に接続され、バッテリ16からDCバス13に給電が行われる。
【0019】
そして、制御部17は、スイッチ15のオンオフ状態に関する情報を、DC-DCコンバータ12に通知する。DC-DCコンバータ12は、通知された情報が示すスイッチ15のオンオフ状態に応じて、出力する直流電力の電圧値を変更する。
【0020】
例えば、スイッチ15がオフ状態のとき、DC-DCコンバータ12は、DC-DCコンバータ12,14全体の電力変換効率が最大化するような電圧をもって、直流電力を出力する。例えば、DC-DCコンバータ12は、出力する直流電力の電圧を、発電部11の出力電圧とDC-DCコンバータ14の出力電圧との中間電圧に設定する。あるいは、スイッチ15がオン状態のとき、DC-DCコンバータ12は、バッテリ16の充電または放電に適した電圧で、直流電力を出力する。
【0021】
図2は本実施形態の効果を説明するための図である。
図2は、
図1の電力システムにおける各ノード、すなわち、DC-DCコンバータ12の入力ノードおよび出力ノード、DCバス13のノード、並びに、DC-DCコンバータ14の入力ノードおよび出力ノードの電圧値を表している。黒丸は、スイッチ15がオン状態であり、バッテリ16がDCバス13に接続されて放電を行うときの電圧値を示す。白丸は、スイッチ15がオフ状態であり、バッテリ16がDCバス13から切り離されたときの電圧値を示す。
【0022】
図2に示すように、スイッチ15がオン状態でバッテリ16が放電を行う場合は、DCバス13のノードの電圧値はバッテリ16の放電電圧になり、DC-DCコンバータ12の出力ノードおよびDC-DCコンバータ14の入力ノードの電圧値も、バッテリ16の放電電圧とほぼ同じになる。一方、スイッチ15がオフ状態でバッテリ16がDCバス13から切り離されている場合は、DCバス13のノードの電圧値はバッテリ16の放電電圧の影響を受けず、例えば、発電部11の出力電圧とDC-DCコンバータ14の出力電圧との中間電圧に設定される。これによって、システム全体の電力変換効率を最大化することができる。なお、
図2では、発電部11の出力電圧を降圧させる場合を示しているが、昇圧させる場合も同様の効果が得られる。
【0023】
以上のように本実施形態によると、再エネ利用電力システムにおいて、発電部11の発電電力が当該再エネ利用電力システムの出力電力に対して十分な場合、スイッチ15をオフ状態にして、DCバス13の電圧値を、DC-DCコンバータ12,14全体の電力変換効率が最大化するような電圧に設定することができる。したがって、DC-DCコンバータ12,14で出力効率に係る最適制御が可能となり、再エネ利用電力システムの電力変換効率を最大化することができる。また、バッテリ16の充放電を行わないときは、スイッチ15をオフ状態にして、DCバス13から切り離すことができるので、消耗品であるバッテリ16の寿命を延ばすことができる。
【0024】
(第2実施形態)
図3は第2実施形態に係る再エネ利用電力システムの構成例である。本実施形態では、第1実施形態と共通の構成要素に関しては、第1実施形態と同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する場合がある。
【0025】
本実施形態では、DC-DCコンバータ12は、DC-DCコンバータ12,14全体の電力変換効率が最大化するような電圧をもって、直流電力を出力する。一方、本実施形態で追加したDC-DCコンバータ21は、バッテリ16の充放電に適した電圧で、直流電力を出力する。
【0026】
スイッチ22は、DC-DCコンバータ12の出力、および、DC-DCコンバータ21の出力のいずれかを選択して出力する。DC-DCコンバータ14は、スイッチ22の出力を、所定電圧の直流電力に変換する。
【0027】
制御部27は、スイッチ22の選択動作と、スイッチ15のオンオフ状態の切り替えを制御する。すなわち、バッテリ16の充電を行うとき、または、バッテリ16の放電を行うとき、制御部27は、スイッチ22にDC-DCコンバータ21の出力を選択させるとともに、スイッチ15をオン状態に制御する。バッテリ16の充電および放電を行わないとき、制御部27は、スイッチ22にDC-DCコンバータ12の出力を選択させるとともに、スイッチ15をオフ状態に制御する。
【0028】
ここで、制御部27は、発電部11の出力、DC-DCコンバータ14の出力、および、バッテリ16の状態を監視するものとする。そして、これらを基にして、スイッチ22の選択動作と、スイッチ15のオンオフ状態の切り替えを制御する。例えば、発電部11の発電電力がDC-DCコンバータ14の出力電力を十分に賄える場合、制御部27は、スイッチ22にDC-DCコンバータ12の出力を選択させ、スイッチ15をオフ状態にする。また、例えば、バッテリ16の残量が少なくバッテリ16の充電が必要な場合、制御部27は、スイッチ22にDC-DCコンバータ21の出力を選択させ、スイッチ15をオン状態にする。これにより、DC-DCコンバータ21からバッテリ16へ給電が行われる。あるいは、発電部11の発電電力がDC-DCコンバータ14の出力電力に対して不足している場合、制御部27は、スイッチ22にDC-DCコンバータ21の出力を選択させ、スイッチ15をオン状態にする。これにより、バッテリ16からDC-DCコンバータ14に給電が行われる。
【0029】
以上のように本実施形態によると、再エネ利用電力システムにおいて、発電部11の発電電力が当該再エネ利用電力システムの出力電力に対して十分な場合、スイッチ22にDC-DCコンバータ12の出力を選択させる。したがって、DC-DCコンバータ12,14で出力効率に係る最適制御が可能となり、再エネ利用電力システムの電力変換効率を最大化することができる。また、スイッチ22にDC-DCコンバータ21の出力を選択させ、スイッチ15をオン状態にすることによって、バッテリ16の出力電力に加えて発電部11からのアシスト電力が供給されるので、このモードにおけるバッテリ16の消費電力を抑えることが可能となる。さらに、バッテリ16の充放電を行わないときは、スイッチ15をオフ状態にしてバッテリ16をDC-DCコンバータ21の出力端から切り離すことができるので、消耗品であるバッテリの寿命を延ばすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、バッテリを備えた再エネ利用電力システムにおいて、電力変換効率の低下を抑え、コスト上昇を抑え、かつ、バッテリの寿命を延ばすことができるので、電力システムの省エネやコストダウンに有用である。
【符号の説明】
【0031】
11 発電部
12 DC-DCコンバータ
13 DCバス
14 DC-DCコンバータ(電力変換部)
15 スイッチ
16 バッテリ
17 制御部
21 DC-DCコンバータ
22 スイッチ
27 制御部