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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107694
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】レール送り装置を備えた台車
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
E21D11/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011755
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】早津 隆広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和寛
(72)【発明者】
【氏名】和久田 敦志
(72)【発明者】
【氏名】棚瀬 富弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信二
(72)【発明者】
【氏名】小谷 拓也
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155BB02
2D155CA03
2D155DA08
(57)【要約】
【課題】レール先端を浮かせた状態で移動可能としたレール送り装置を備えた台車を提供する。
【解決手段】台車1の左右にそれぞれ前後一対で車輪装置3、4を備えるとともに、それらの近傍位置に台車1を昇降させるアウトリガー2を備え、前記アウトリガー2によって台車1を上昇させた状態で、ウインチ7の巻上げによってレール11を滑走させながら前方向に送出し可能とし、台車1から前方に延びるガイドレール25を備え、このガイドレール25に、レール11を前方向に送り出す際、レール11の前方端11bを吊り上げるとともに、レール11の送出しに合わせてガイドレール25に沿って走行する荷役機器26を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車の右側及び左側にそれぞれ前後一対で車輪装置を備えるととともに、それらの近傍位置に台車を昇降させるアウトリガーを備え、前記アウトリガーによって台車を上昇させた状態で、レールを進行方向に送り出し可能としたレール送り装置を備えた台車において、
台車の右側及び左側の後方部にそれぞれウインチを配設し、このウインチと前記レールの後方端とをワイヤーで直接的又は間接的に連結し、前記ウインチの巻上げによって前記レールを地盤面を滑走させながら前方向に送出し可能とし、
台車から前方に延びるガイドレールを備え、このガイドレールに、前記レールを前方向に送り出す際、前記レールの前方端を吊り上げるとともに、前記レールの送出しに合わせて前記ガイドレールに沿って走行する荷役機器を備えたことを特徴とするレール送り装置を備えた台車。
【請求項2】
前記前後一対の車輪装置の内、後側の車輪装置及び前側の車輪装置のいずれか一方又は両方は、台車に対して水平軸を介して揺動自在に保持された車輪ホルダを備え、この車輪ホルダに前記水平軸を跨いで前側に前車輪を備えるとともに、後側に後車輪を備え、かつ前記台車をアウトリガーによって上昇させた際に、前後の自重差によって前記車輪ホルダが自動的に揺動動作し、前記前車輪と後車輪の内の一方がレールに接触するようにした請求項1記載のレール送り装置を備えた台車。
【請求項3】
前後の自重差によって自動的に揺動動作する車輪ホルダの揺動位置を調整するため、揺動動作する前記車輪ホルダの先端部と台車との間に接続される位置調整用ジャッキを設けている請求項2記載のレール送り装置を備えた台車。
【請求項4】
左右のレールが連結部材によって連結されている請求項1記載のレール送り装置を備えた台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール先端を浮かせた状態で移動可能としたレール送り装置を備えた台車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネルの施工に当たっては、各作業工程に応じて、シート張り台車、セントル、足場台車などの各種台車が用いられている。これら台車の走行は、下記特許文献1、2に示されるように、地盤上に左右一対のレールを敷設し、台車の車輪が前記レール上を走行させるようにしたものが多く採用されている。この場合、前記レールは長手方向に沿って複数に分割され、台車の走行に伴って、走行し終えたレールを進行方向前方側に順次盛替えしながら台車を走行させるようにしていた。
【0003】
しかしながら、この方法の場合は、例えばバックホウなどの重機でレールを引きずって移動させ、重機のバケットなどでレール位置の微調整を行うようにしていたため、バックホウの後進・作業との複合作業のため接触・挟まれ事故の災害が懸念されるなどの危険要因が多くなるとともに、ズリ出し時、インバート埋戻し時や資機材運搬時は作業に時間的制約を受け、レールの盛替えができないためレール送り作業が遅延化するなどの問題があった。更には見張り等を含め複数の作業員を必要とするなどの問題もあった。
【0004】
そこで、近年はレール送り装置を備えた台車が提案され実用化されている。このレール送り装置について、図14図17に基づいて詳述する。
【0005】
図14及び図15に示されるように、台車50の左右一対の前側支柱50A、50Bと、左右一対の後側支柱50C、50Dの下端には車輪60が回転自在に設けられているとともに、その側部にアウトリガー51が設けられている。
【0006】
図16に示されるように、前記車輪60の両側には鉛直配向部材62、62が設けられ、これらの鉛直配向部材62、62の下端にはレール61の側面凹部に嵌合する送りローラー63が設けられ、前記アウトリガー51を伸長して台車50を上昇させた際にレール61が地盤から離れ上方に引き上げられるようになっている。前記レール61は、車輪60が走行するレール本体61Aと、このレール本体61Aの下側に一体に連設されたH形鋼からなる送りレール61Bとから構成され、前記送りレール61Bによって前記送りローラ63が嵌合する側面凹部が構成されている。
【0007】
一方、レールの送り機構は、図15に示されるように、レール61の前端と後端との間にローラーチェーン64を張架するとともに、このローラーチェーン64に歯合する原動スプロケット66を配設し、前記原動スプロケット66をモータ駆動させるようにしている。従って、アウトリガー51によって台車50を上方に引き上げた状態としたならば、前記ローラーチェーン64を駆動させることによってレール61を進行方向前方に送り出し、図17に示されるように、アウトリガー51を収縮させてレール61を地盤上に設置する。その後は、レール61の上を車輪60が走行し台車50が前進するようになっている。
【0008】
前記レール送り機構によって、重機などを用いてレールを進行方向前側に盛替えしていた際の問題点は解消されるようになった。更に、本出願人等は、レール送り機構をトンネルが曲線である場合にも対応できるようにするため、下記特許文献3において、レール横移動装置を設けたレール送り機構を提案した。
【0009】
具体的には、本出願人等は、下記特許文献3において、台車の右側及び左側にそれぞれ前後一対で車輪を備えるととともに、台車を昇降させるアウトリガーを備え、前記アウトリガーによって台車を上昇させた状態で、レールを進行方向に送り出し可能としたレール送り装置を備えた台車において、台車の後方部にウインチを配設し、このウインチとレール後方端とをワイヤーで連結し、前記ウインチの巻上げによって前記レールを地盤面を滑走させながら前方向に送出し可能とし、前記台車の前側に、台車をアウトリガーによって上昇させた際に、レールを進行方向に対して直交する方向に横移動させるレール横移動装置を設けたレール送り装置を備えた台車を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000-291392号公報
【特許文献2】特開2003-35098号公報
【特許文献3】特開2022-176463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献3に係るレール送り機構の提案によって、台車は曲線走行に対応可能となったが、特許文献3に記載されたレール送り機構では、レールを地盤面に置いたまま、ウインチ&ワイヤーシステムによってレールを地盤面を滑らせながら送り出す滑走式のレール送り機構を採用しているため、レールの前端を上方向に屈曲させてソリのように地盤面を滑走しやすくしているにもかかわらず、移動の際の抵抗が大きいとともに、移動の方向を制御することが難しかった。このため、移動作業が複雑となる、レール前端をソリのように屈曲させるための加工費用が嵩み、施工期間が長期化するなどの問題があった。
【0012】
そこで本発明の主たる課題は、レール送り時の移動抵抗を軽減するとともに、移動方向を制御することができ、工費の軽減及び工期の短縮が図れるレール送り装置を備えた台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、台車の右側及び左側にそれぞれ前後一対で車輪装置を備えるととともに、それらの近傍位置に台車を昇降させるアウトリガーを備え、前記アウトリガーによって台車を上昇させた状態で、レールを進行方向に送り出し可能としたレール送り装置を備えた台車において、
台車の右側及び左側の後方部にそれぞれウインチを配設し、このウインチと前記レールの後方端とをワイヤーで直接的又は間接的に連結し、前記ウインチの巻上げによって前記レールを地盤面を滑走させながら前方向に送出し可能とし、
台車から前方に延びるガイドレールを備え、このガイドレールに、前記レールを前方向に送り出す際、前記レールの前方端を吊り上げるとともに、前記レールの送出しに合わせて前記ガイドレールに沿って走行する荷役機器を備えたことを特徴とするレール送り装置を備えた台車が提供される。
【0014】
上記請求項1記載の発明では、先ず、レール送り出し機構は、台車の右側及び左側の後方部にそれぞれウインチを配設し、このウインチと前記レールの後方端とをワイヤーで直接的又は間接的に連結し、前記ウインチの巻上げによって前記レールを地盤面を滑走させながら前方向に送出し可能とした機構としている。前述した従来のレール送り出し機構は、レールを空中に吊り上げた状態で送り出す、言わば滑空式というタイプであるが、本発明の場合は、レールは地盤面に置いたまま、ウインチ&ワイヤーシステムによってレールを地盤面を滑らせながら送り出す、言わば滑走式のレール送り出し機構としている。
【0015】
ここで、滑走式のレール送り出し機構において、レール先端を浮かせた状態で移動できるようにするため、台車から前方に延びるガイドレールを備え、このガイドレールに、前記レールを前方向に送り出す際、前記レールの前方端を吊り上げるとともに、前記レールの送り出しに合わせて前記ガイドレールに沿って走行する荷役機器を備えている。前記荷役機器によってレール先端を吊り上げた状態で、前記レールを前方向に送り出すことによって、レールが地盤面を滑走する際の移動抵抗が大幅に軽減できる。また、レール先端を吊り上げている荷役機器が、レールの送出しに合わせてガイドレールに沿って走行するようになっているため、ガイドレールの延びる方向にレールが移動するのを容易に制御できる。このようにレールの移動を確実に行うことができるため、工費の軽減及び工期の短縮が図れるようになる。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記前後一対の車輪装置の内、後側の車輪装置及び前側の車輪装置のいずれか一方又は両方は、台車に対して水平軸を介して揺動自在に保持された車輪ホルダを備え、この車輪ホルダに前記水平軸を跨いで前側に前車輪を備えるとともに、後側に後車輪を備え、かつ前記台車をアウトリガーによって上昇させた際に、前後の自重差によって前記車輪ホルダが自動的に揺動動作し、前記前車輪と後車輪の内の一方がレールに接触するようにした請求項1記載のレール送り装置を備えた台車が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明では、前記前後一対の車輪装置の内、後側の車輪装置及び前側の車輪装置のいずれか一方又は両方は、台車に対して水平軸を介して揺動自在に保持された車輪ホルダを備え、この車輪ホルダに前記水平軸を跨いで前側に前車輪を備えるとともに、後側に後車輪を備え、かつ前記台車をアウトリガーによって上昇させた際に、前後の自重差によって前記車輪ホルダが自動的に揺動動作し、前記前車輪と後車輪の内の一方がレールに接触するようにしている。従って、前記アウトリガーによって台車を上昇させた状態でレールを地盤面を滑走させながら前方向に送り出す際、常時、前車輪と後車輪の内の一方がレールに接触してレールをしっかりと保持するため、レールの移動方向の制御がより確実にできるようになる。
【0018】
請求項3に係る本発明として、前後の自重差によって自動的に揺動動作する車輪ホルダの揺動位置を調整するため、揺動動作する前記車輪ホルダの先端部と台車との間に接続される位置調整用ジャッキを設けている請求項2記載のレール送り装置を備えた台車が提供される。
【0019】
上記請求項3記載の発明では、前記位置調整用ジャッキを設けることによって、前後の自重差によって自動的に揺動動作する車輪ホルダの揺動位置を調整しているため、前記荷役機器によってレールの先端を吊り上げたとき、車輪ホルダの揺動動作によってレールに作用する重量が調整でき、前記荷役機器にかかる負担を軽減することが可能となる。
【0020】
請求項4に係る本発明として、左右のレールが連結部材によって連結されている請求項1記載のレール送り装置を備えた台車が提供される。
【0021】
上記請求項4記載の発明では、レール移動後も左右のレール間の適切な幅寸法が維持できるようにするため、左右のレールを連結部材によって連結している。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、レール送り時の移動抵抗が低減できるとともに、移動方向を確実に制御することができ、工費の軽減及び工期の短縮が図れるレール送り装置を備えた台車が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るレール送り装置を備えた台車1の横断面図である。
図2】その側面図である。
図3】台車1のアウトリガー2部の断面図である。
図4】後側の車輪装置3を示す側面図(図2のIV部)である。
図5】車輪18の横断面図である。
図6】車輪装置4の他例を示す側面図である。
図7】レール送り装置を示す要部拡大図である。
図8】台車1の前端部を示す側面図である。
図9】荷役機器26を示す(A)は正面図、(B)は側面図である。
図10】レール11の送出し要領(その1)を示す側面図である。
図11】レール11の送出し要領(その2)を示す側面図である。
図12】レール11の送出し要領(その3)を示す側面図である。
図13】車輪とレール11と連結部材30との関係を示す平面模式図である。
図14】従来のレール送り装置50を示す台車1の横断面図である。
図15】その側面図である。
図16】アウトリガー部分の正面図(台車上昇状態)である
図17】アウトリガー部分の正面図(台車下降状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
〔台車1について〕
先ず、図1図4に基づいて、台車1及びレール送り装置の構造について詳述する。
【0026】
台車1としては、例えばトンネルの施工の場合、掘削後に壁面に防水シートを張設するためのシート張り台車、鉄筋組立などのための足場台車、覆工コンクリートを打設するためのセントルなどの各種台車1を挙げることができる。図示の例はセントルの例を示している。
【0027】
図2に示されるように、台車1の右側及び左側にそれぞれ前後一対で、すなわち台車1の左右一対の前側支柱1A、1Bと、左右一対の後側支柱1C、1Dの下端又はその近傍に、レール11を走行するための車輪装置3、4が設けられている。車輪装置3は後側の車輪装置を指し、車輪装置4は前側の車輪装置を指している。前記レール11は、詳細には図3に示されるように、レール本体12と、このレール本体12と一体的に接合された上方に開口する断面コ字状部材(溝型鋼)13とからなる。前記断面コ字状部材13は、地盤面を滑走させるためのソリとしての機能を担うものである。前記レール本体12は、前記断面コ字状部材13の内面中央部に溶接等により一体的に接合されている。
【0028】
前記後側支柱1C、1Dの下端に設けられた車輪装置3の部位には、図3に示されるように、後側支柱1C、1Dを横方向に跨いで左右一対のジャッキ6A、6Bを備えたアウトリガー2が設けられている。すなわち、後側支柱1C、1Dの両側面から側方に突出して下方向に延びる脚部5A、5Bが設けられるとともに、その下端にジャッキ6A、6Bが設けられ、アウトリガー2が構成されている。
【0029】
一方、前記前側支柱1A,1Bにおいても同様に、該支柱1A,1Bの下端に設けられた車輪装置4の部位には、前側支柱1A,1Bを横方向に跨いで、左右一対のジャッキ6A,6Bを備えたアウトリガー2が設けられている。すなわち、前側支柱1A、1Bの両側面から側方に突出して下方向に延びる脚部5A、5Bが設けられるとともに、その下端にジャッキ6A、6Bが設けられ、アウトリガー2が構成されている。なお、アウトリガー2としては、前述のような両側脚タイプの構造ではなく、片側脚タイプのアウトリガーとすることも可能である。
【0030】
前記4つのアウトリガー2、2…は、相互のバランスを取るため平面視で矩形の交点位置に配置するのが望ましい。前記4つのアウトリガー2、2…のジャッキ6A…、6B…を同時的に収縮させることにより車輪装置3、4の車輪がレール11に載った状態となり、前記4つのアウトリガー2、2…のジャッキ6A…、6B…を同時的に伸長させることにより台車1を上方向に上昇させることが可能になる。
【0031】
前記車輪装置3、すなわち前記車輪装置3、4の内、後側の車輪装置3は、図4に示されるように、台車1に対して水平軸14を介して揺動自在に保持された車輪ホルダ17を備え、この車輪ホルダ17に前記水平軸14を跨いで前側に前車輪18を備えるとともに、後側に後車輪19を備え、かつ前記台車1をアウトリガー2、2…によって上昇させた際に、前後の自重差によって前記車輪ホルダー17が自動的に揺動動作し、前記前車輪18と後車輪19の内の一方がレール11に接触させるようにするものである。以下に、各構造について具体的に詳述する。
【0032】
図4及び図5に示されるように、前記後側支柱1C、1Dの下端に、下方側に突出する左右一対の垂下片からなる連結ブラケット15を備える一方、車輪ホルダ17は上面に上方向に突出する左右一対の上延片からなる連結ブラケット16を備えており、前記連結ブラケット15と前記連結ブラケット16とが水平軸14によって連結されることにより、前記車輪ホルダ17が揺動自在に保持された構造となっている。
【0033】
前記車輪ホルダ17は、左右一対の側枠17A、17Bが所定箇所で横連結部材(図示せず)で結合されたフレーム状の台車構造となっており、前記水平軸14を跨いで前側に前車輪18を備えるとともに、後側に後車輪19を備えている。また、車輪ホルダ17の前側上面には駆動用モータ20が搭載されるとともに、スプロケット21が隣接して配置されている。前記スプロケット21の周面に形成されたギアに対して駆動用モータ20の軸部に設けられた傘歯車が歯合し、前記スプロケット21と前車輪18とがベルト又はチェーン22を介して連結されている。従って、車輪装置3がレール11上に載った状態で、前記駆動用モータ20を駆動させることにより前車輪18が回転駆動され、台車1を走行させるようになっている。
【0034】
前記駆動用モータ20は、前記台車1をアウトリガー2、2…によって上昇させた際に、車輪ホルダ17を揺動動作させるウエイトを兼用している。すなわち、前記車輪ホルダ17は揺動自在に保持された構造となっており、アウトリガー2、2…によって台車1を上昇させた際に、前記駆動用モータ20(ウエイト)による前後の自重差により、車輪ホルダ17が自動的に図示で時計回り方向に揺動動作し、前記前車輪18がレール11に接触した状態を保持するようになっている。
【0035】
前後の自重差によって自動的に揺動動作する前記車輪ホルダ17の揺動位置を調整するため、図4に示されるように、揺動動作する車輪ホルダ17の先端部と台車1との間が位置調整用ジャッキ23によって接続されている。すなわち、アウトリガー2、2…によって台車1を上昇させた際に、前記駆動用モータ20などの自重により車輪ホルダ17が揺動動作し、前車輪18によってレール11にかかる荷重が大きすぎることにより、後述する荷役機器26によるレール11前端部が吊り上げにくくなるのを防止するとともに、レール送り機構によるレール11の送出しがし難くなるのを防止するため、レール11にかかる荷重を調整する目的で、ウエイトとなる駆動用モータ20が配置された側の車輪ホルダ17の端部に一端が連結され、他端が台車1に連結された前記位置調整用ジャッキ23を設けている。前記位置調整用ジャッキ23の伸縮によって、アウトリガー2、2…によって台車1を上昇させた際に、揺動動作した車輪ホルダ17の前車輪18がレール11にかかる荷重を調整することができる。なお、位置調整用ジャッキ23の中間部に設けられた保持具24は、台車1を降下させて台車1をレール11上に全ての車輪で支持した際に、車輪ホルダ17側に連結された一端を取り外した位置調整用ジャッキ23の中間部を、台車1に固定支持しておくための保持具である。
【0036】
前記アウトリガー2、2…によって台車1を上昇させた際に、常時、前車輪18がレール11に所定の荷重で接触した状態を保持することにより、後述のレール送り装置によってレール11を送出しする際、前記前車輪18の位置が支点として機能し、レール11が確実に所望の方向へ送出しできるようになる。また、アウトリガー2、2…によって台車1を上昇させた際においても、常時、前車輪18がレール11に係合した状態が保持できるため、台車1を降下させて全ての車輪で台車1をレール11上に支持する際の脱輪が防止できる。
【0037】
なお、前記アウトリガー2、2…によって台車1を上昇させた際に、常時、レール11に接触させる車輪を後車輪19とすることでもよい。この場合は、駆動用モータ20を車輪ホルダ17の後側に搭載するようにする。
【0038】
一方、前記車輪装置3、4の内、前側の車輪装置4についても、上記後側の車輪装置3と同様の構造とすることができる。従って、ここでは詳細な説明は省略する。なお、図示例のものでは、前側の車輪装置4については、駆動用モータ20を車輪ホルダ17の後側に搭載することにより、前記アウトリガー2、2…によって台車1を上昇させた際に、常時、レール11に接触させる車輪を後車輪19としているが、駆動用モータ20を車輪ホルダ17の前側に搭載することにより、前記アウトリガー2、2…によって台車1を上昇させた際に、常時、レール11に接触させる車輪を前車輪18としてもよい。
【0039】
なお、上記形態例では、前記車輪装置3、4の両方が、車輪ホルダ17が水平軸14を介して揺動自在に保持された形態例を示したが、前記車輪装置3、4のいずれか一方は、図6に示されるように、駆動用モータ20による駆動機構を有しない構造としたり(この場合は他方の車輪装置側のみを駆動原として走行する。)、揺動しない固定式車輪40としたりすることも可能である。
【0040】
〔レール送り機構について〕
レール送り機構は、詳細には図7に示されるように、台車1の右側及び左側の後方部にそれぞれウインチ7を配設し、このウインチ7と前記レール11の後方端11aとをワイヤー8で直接的又は間接的に連結し、前記ウインチ7の巻上げによって前記レール11を地盤面を滑走させながら前方向に送出し可能としている。前記ウインチ7は、図示の例では、台車1の後方部となる後側支柱1C(1D)の背面側に配設しているが、その他の箇所でもよい。前記ウインチ7としては電動ウインチを好適に用いることができる。
【0041】
ここで、ワイヤー8で直接的に連結するとは、中間に滑車等を介さずに直接的にウインチ7と前記レール11の後方端11aとを連結する態様を意味し、ワイヤー8で間接的に連結するとは、ウインチ巻上げ力を軽減するために中間に滑車を介して連結する形態を意味する。図示の例は、ウインチ7とレール11の後方端11aとを滑車12、13を介して間接的に連結している態様を示している。
【0042】
また、図8及び図9に示されるように、台車1には、前方に延びるガイドレール25が備えられており、このガイドレール25に、前記ウインチ7の巻上げによって前記レール11を前方向に送り出す際、前記レール11の前方端11bを吊り上げるとともに、前記レール11の送出しに合わせて前記ガイドレール25に沿って走行する荷役機器26が備えられている。前記荷役機器26としては、手動又は電動のチェーンブロック、ホイスト、ウインチなど、機器本体から鉛直方向に延びるチェーン27の先端に設けられたフック28に掛止されたものを略鉛直方向に吊り上げることができる機器が使用される。
【0043】
前記ガイドレール25は、左右のレール11の上部にそれぞれ配置され、台車1の前端から台車1が前進する方向に対し水平方向に真っ直ぐに延びるH形鋼からなるレールである。前記ガイドレール25の後端は台車1に固定され、前端は自由端とされている。前記ガイドレール25の前端にはストッパー25aが設けられるとともに、中間部の上面から台車1に向けて補強材25bが延びている。前記ガイドレール25の長さは、前記ウインチ7の巻上げによってレール11を前方向に送出しできる1回分の長さと同等以上の長さで形成されている。
【0044】
前記荷役機器26は、ガイドレール25に沿って移動可能なトロリー装置29を介してガイドレール25に吊持されている。前記トロリー装置29としては、吊り下げた荷の移動に伴って自動的に移動可能なプレーントロリが用いられる。なお、トロリー装置29として手動又は電動で移動させるギヤードトロリや電動トロリを用いることも可能である。
【0045】
前記荷役機器26のチェーン27の先端に設けられたフック28は、レール11の前方端11bに設けられた掛止部に掛止される。前記ウインチ7の巻上げによって前記レール11を前方向に送り出す際、前記荷役機器26によってレール11の前方端11bを吊り上げることにより、レール11の移動抵抗を軽減するとともに、レール11の移動方向をガイドレール25が延びる方向に制御している。
【0046】
次に、図10図12に基づいて、レール送り機構によるレール送り要領について説明する。図10に示されるように、台車1がレール11上を走行してほぼレール前端側位置に達したところで、レール11を進行方向前方に送り出すには、4箇所のアウトリガー2、2…のジャッキ6A、6Bを伸長させることにより台車1全体を上昇させる。この際、台車1が上昇した際に、車輪装置3、4は前後の自重差により、車輪ホルダ17が自動的に揺動動作し、前記前車輪18又は後車輪19がレール11に接触した状態を保持する。
【0047】
ここまでの準備作業が完了したならば、前記荷役機器26によってレール11の前方端11bを吊り上げる。このとき、前記荷役機器26によるレール前方端の吊り上げ量は、レール前方端が地盤面に接触せず、地盤面から若干浮く程度が好ましいが、レール前方端が地盤面に接していても、荷役機器26による吊り上げによってレール11の送出しがスムーズに行える程度にレール前方端にかかる荷重が相当量軽減された状態であれば構わない。
【0048】
前記荷役機器26によってレール11の前方端11bを吊り上げる際、前記位置調整用ジャッキ23を収縮させて、各車輪ホルダ17の揺動動作によるレール11にかかる荷重を調整することにより、荷役機器26の吊り上げ荷重を軽減することができる。
【0049】
次に、図11に示されるように、ウインチ7によってワイヤー8を巻き上げることによりレール11を進行方向に送り出すようにする。レール11は、送出しに当たって、前方端11bが荷役機器26から延びるチェーン27の先端のフック28に保持されており、荷役機器26が前記トロリー装置29によってガイドレール25に沿って移動するため、横振れすること無くガイドレール25に沿って前方に送り出されるようになる。更に、レール中間部においても、車輪装置3、4の前車輪18又は後車輪19がレール11を保持しているため、レールの横振れがより確実に抑えられる。
【0050】
レールの送出しが完了したならば、図12に示されるように、アウトリガー2、2…のジャッキ6A、6Bを収縮させることにより台車1全体を降下させ、車輪装置3、4の全ての車輪18、19をレール11に載せた状態とするとともに、位置調整用ジャッキ23の前記車輪ホルダ17との連結を取り外し、位置調整用ジャッキ23の中間部を保持具24によって台車1に固定した状態とする。
【0051】
この状態で、車輪装置3、4の駆動用モータ20を作動させて、台車1をレール11上を前進させる。ウインチ7は、台車1の走行に合わせてワイヤー8を繰り出すようにする。荷役機器26は、台車1の走行によってトロリー装置29がガイドレール25を相対的に後退することにより、レール11の前方端11b上方に保持される。
【0052】
これらの作業を繰り返すことにより、台車1がトンネル内をガイドレール25が延びる方向に沿って前進することが可能になる。
【0053】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、山岳トンネルの施工に使用される各種台車を例に採り本発明を説明したが、山岳トンネル用の台車に限定されるものではなく、台車一般に対して適用が可能である。
(2)前記レール11は、左右にそれぞれ独立したレール11が1本ずつ配置されるようにしてもよいし、図13に示されるように、左右のレール11、11がレール延在方向に沿って間隔を空けて複数の連結部材30…によって連結されるようにしてもよい。前記連結部材30で連結することにより、左右のレール11、11間の適切な幅寸法が維持でき、レール間の配置間隔を修正する手間を減らすことができる。
【符号の説明】
【0054】
1…台車、2…アウトリガー、3…車輪装置(後側)、4…車輪装置(前側)、7…ウインチ、8…ワイヤー、11…レール、12…レール本体、13…断面コ字状部材(溝型鋼)、14…水平軸、17…車輪ホルダ、18…前車輪、19…後車輪、20…駆動用モータ、21…スプロケット、22…ベルト又はチェーン、23…位置調整用ジャッキ、24…保持具、25…ガイドレール、26…荷役機器、27…チェーン、28…フック、29…トロリー装置、30…連結部材、40…固定式車輪
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