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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107696
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】行動補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240802BHJP
   A61B 5/389 20210101ALI20240802BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240802BHJP
   A61M 21/00 20060101ALI20240802BHJP
   A61F 5/58 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
A61B5/11 200
A61B5/389
A61B5/0245 200
A61M21/00 Z
A61F5/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011758
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】板津呂 真夕
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 深雪
(72)【発明者】
【氏名】秋山 寿美江
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼戸 千裕
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C098
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA10
4C017AA19
4C017AA20
4C017AB02
4C017AC16
4C017BC16
4C017BD06
4C017CC02
4C017DD14
4C017DD17
4C017EE15
4C017FF17
4C038VA04
4C038VB11
4C098AA02
4C098BB14
4C098BC08
4C098BD20
4C127AA04
4C127GG15
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】会話相手と会話する発話者の行動を補助することが可能な行動補助装置を提供する。
【解決手段】行動補助装置SEは、検出部が検出した発話者の状態に基づいて、吃音等の対象行動の発症を判定し(S204,S206,S212)、発症していると判定した場合、発話者に対して、対象行動の発症を抑制する処理を実行する(S210,S213)。また、行動補助装置SEは、初対面の会話者に対し、対象行動の発症を告知する(S209)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
会話相手と会話する発話者の行動を補助する行動補助装置であって、
身体の状態を検出する検出部と、
前記検出部が検出した状態に基づいて、対象行動の発症を判定する手段と、
対象行動を発症していると判定した場合に、発話者に対して対象行動の発症を抑制する抑制処理を実行する手段と
を備えることを特徴とする行動補助装置。
【請求項2】
会話相手と会話する発話者の発話に関する行動を補助する行動補助装置であって、
身体の状態を検出する検出部と、
前記検出部が検出した状態に基づいて、吃音の発症を判定する判定手段と、
前記判定手段により吃音を発症していると判定した場合に、発話者に対して吃音の発症を抑制する抑制処理を実行する抑制手段と
を備えることを特徴とする行動補助装置。
【請求項3】
請求項2に記載の行動補助装置であって、
前記判定手段により吃音を発症していると判定した場合に、会話相手に対して吃音の発症を告知する告知手段を備える
ことを特徴とする行動補助装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の行動補助装置であって、
発話者の身体への装着に使用する装着部を備える
ことを特徴とする行動補助装置。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の行動補助装置であって、
前記検出部は、
発話者の発声を受音する音声検出部を含み、
前記判定手段は、
前記音声検出部が受音した発声に基いて、吃音の発症を判定する
ことを特徴とする行動補助装置。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に記載の行動補助装置であって、
前記検出部は、
発話以外の身体の状態を検出する身体状態検出部を含み、
前記身体状態検出部が検出した身体の状態が、設定されている基礎身体情報にて規定された範囲から外れる場合に、前記判定手段は、吃音の発症を判定する処理を開始する
ことを特徴とする行動補助装置。
【請求項7】
請求項6に記載の行動補助装置であって、
発話者が発話していない時間を含む時間帯に、前記身体状態検出部が検出した情報を集計する手段と、
集計した情報に基づいて、基礎身体情報を設定する手段と
を備えることを特徴とする行動補助装置。
【請求項8】
請求項2又は請求項3に記載の行動補助装置であって、
音を出力する音出力部を備え、
前記抑制手段は、
抑制処理として、音出力部から音楽を出力する
ことを特徴とする行動補助装置。
【請求項9】
請求項2又は請求項3に記載の行動補助装置であって、
発話者の身体に対して刺激を与える刺激部を備え、
前記検出部は、発話者の四肢の動作を検出する四肢動作検出部を含み、
前記四肢動作検出部が検出した動作が所定の動作に該当するか否かを判定する四肢動作判定手段を備え、
前記抑制手段は、前記四肢動作判定手段により所定の動作が検出されたと判定した場合に、抑制処理として、前記刺激部により刺激を与える
ことを特徴とする行動補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、会話相手と会話する発話者の行動を補助する行動補助装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
会話相手との会話に際し、発話者が特定の症状を発症する場合がある。例えば、発達障害の1つである吃音は、人口の1%の割合で存在するとされている。このような状況にも拘わらず、吃音に対しての認知及び理解は進んでおらず、適切なサポートが充分に行われていない。そこで、例えば、特許文献1では、吃音者の発する音声を一定時間遅延させて出力する音声遅延処理機能、及び発話リード処理機能を備えた吃音発話リード装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-156656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された吃音発話リード装置は、吃音の矯正に焦点がおかれており、会話中の処理については充分に検討されていない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、会話相手と会話する発話者の行動を補助する行動補助装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本願開示の行動補助装置は、会話相手と会話する発話者の行動を補助する行動補助装置であって、身体の状態を検出する検出部と、前記検出部が検出した状態に基づいて、対象行動の発症を判定する手段と、対象行動を発症していると判定した場合に、発話者に対して対象行動の発症を抑制する抑制処理を実行する手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記行動補助装置において、会話相手と会話する発話者の発話に関する行動を補助する行動補助装置であって、身体の状態を検出する検出部と、前記検出部が検出した状態に基づいて、吃音の発症を判定する判定手段と、前記判定手段により吃音を発症していると判定した場合に、発話者に対して吃音の発症を抑制する抑制処理を実行する抑制手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記行動補助装置において、前記判定手段により吃音を発症していると判定した場合に、会話相手に対して吃音の発症を告知する告知手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記行動補助装置において、発話者の身体への装着に使用する装着部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記行動補助装置において、前記検出部は、発話者の発声を受音する音声検出部を含み、前記判定手段は、前記音声検出部が受音した発声に基いて、吃音の発症を判定することを特徴とする。
【0011】
また、前記行動補助装置において、前記検出部は、発話以外の身体の状態を検出する身体状態検出部を含み、前記身体状態検出部が検出した身体の状態が、設定されている基礎身体情報にて規定された範囲から外れる場合に、前記判定手段は、吃音の発症を判定する処理を開始することを特徴とする。
【0012】
また、前記行動補助装置において、発話者が発話していない時間を含む時間帯に、前記身体状態検出部が検出した情報を集計する手段と、集計した情報に基づいて、基礎身体情報を設定する手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、前記行動補助装置において、音を出力する音出力部を備え、前記抑制手段は、抑制処理として、音出力部から音楽を出力することを特徴とする。
【0014】
また、前記行動補助装置において、発話者の身体に対して刺激を与える刺激部を備え、前記検出部は、発話者の四肢の動作を検出する四肢動作検出部を含み、前記四肢動作検出部が検出した動作が所定の動作に該当するか否かを判定する四肢動作判定手段を備え、前記抑制手段は、前記四肢動作判定手段により所定の動作が検出されたと判定した場合に、抑制処理として、前記刺激部により刺激を与えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願開示の行動補助装置は、会話相手と会話する発話者の身体の状態を検出し、対象行動の発症を判定し、対象行動を発症している場合に、対象行動の発症を抑制する抑制処理を実行する。これにより、会話相手と会話する発話者の行動を補助することが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願開示の行動補助装置の外観の一例を示す概略外観図である。
図2】本願開示の行動補助装置の外観の一例を示す概略外観図である。
図3】本願開示の行動補助装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図4】本願開示の行動補助装置が実行する基礎身体情報収集処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本願開示の行動補助装置が実行する行動補助処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳述する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術範囲を限定する性格のものではない。
【0018】
<適用例>
本願開示の行動補助装置は、会話者と会話する発話者の行動の補助に使用される。本願では、会話、特に会話相手と1対1での対話を行う発話者が、対象行動として、吃音を発症した場合に、発話者の行動を補助する形態に適用した行動補助装置を例示して説明する。以下では、図面を参照しながら、図面に記載された行動補助装置SEを例示して説明する。
【0019】
<外観>
図1及び図2は、本願開示の行動補助装置SEの外観の一例を示す概略外観図である。行動補助装置SEは、発話者の腕部、頭部、頸部等の身体に装着することが可能である。図1は、腕時計を模した形状の行動補助装置SEを、発話者の腕部に装着した状態を示しており、図2は、行動補助装置SEを腕部から外した状態で、腕部に接する面(以降、裏面という)が視認可能な角度で示している。
【0020】
行動補助装置SEは、本体装置1と、発話者の身体への装着に使用するベルト等の装着部2とを備えている。本体装置1は、扁平で婉曲した直方体状に形成されており、身体に装着した場合に視認可能な面(以降、表面という)には、操作部10、検出部11、出力部12、接続部13等の各種構成を備えている。本体装置1の裏面には、検出部11が配設されている。
【0021】
行動補助装置SEが備える操作部10としては、発話者の操作を受け付けるメインスイッチ100、初対面設定スイッチ101等のスイッチが配設されている。メインスイッチ100は、電源のオン/オフ、各種設定等の操作に用いられるスイッチである。初対面設定スイッチ101は、会話相手が、発話者にとって、初対面の人物の場合に操作するスイッチである。
【0022】
行動補助装置SEが備える検出部11として、表面には、音声を検出するマイク110(音声検出部)が配設されている。また、行動補助装置SEが備える検出部11として、裏面には、発話以外の身体の状態を検出する身体状態検出部111が配設されている。図2は、身体状態検出部111として、筋肉の動きを検出する筋電センサ111a及び脈拍を検出する心拍センサ111bを搭載した形態を例示している。
【0023】
行動補助装置SEが備える出力部12として、表面には、音を出力するスピーカ120(音出力部)が配設されている。
【0024】
接続部13は、USB(Universal Serial Bus)等の通信規格に準拠したコネクタであり、様々なデバイスを接続することが可能である。
【0025】
<機能構成>
図3は、本願開示の行動補助装置SEの構成例を示す機能ブロック図である。前述のように、行動補助装置SEは、操作部10、検出部11、出力部12、接続部13等の様々な構成を備え、接続部13には、外付け用の検出部11、出力部12等のデバイスを接続することが可能である。更に、行動補助装置SEは、本体装置1内に、制御部14、記憶部15等の各種デバイスを備えている。
【0026】
行動補助装置SEは、操作部10として、メインスイッチ100、初対面設定スイッチ101等のスイッチを備えている。
【0027】
行動補助装置SEは、外部に露出した検出部11として、音声を検出するマイク110、そして、筋電センサ111a、心拍センサ111b等のセンサを用いた身体状態検出部111を備えている。更に、行動補助装置SEは、内蔵している検出部11として、加速度センサ112等のセンサを備えている。加速度センサ112は、装着した発話者の行動、例えば、歩行状態にあることを検出することができる。
【0028】
行動補助装置SEは、外部に露出した出力部12として、音を出力するスピーカ120を備えている。更に、行動補助装置SEは、内蔵している出力部12として、発話者の身体に対して振動等の刺激を与えるバイブレータ等の刺激部121を備えている。
【0029】
制御部14は、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit )等のプロセッサであり、情報処理回路、計時回路、レジスタ回路等の各種回路を備えている。
【0030】
記憶部15は、SSD(Solid State Drive )、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、及び各種RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを用いて構成される記憶用デバイスである。記憶部15には、各種プログラム及びデータ等の各種情報が記憶されている。
【0031】
接続部13は、検出部11等の様々なデバイスを接続することが可能なコネクタである。接続部13に接続される検出部11としては、口唇動作検出部113、四肢動作検出部114等のデバイスを例示することができる。口唇動作検出部113は、口周りの筋肉の動きを検出するセンサである。四肢動作検出部114は、腕部、脚部等の四肢の筋肉の動きを検出するセンサである。
【0032】
<処理>
次に、行動補助装置SEにて実行される各種処理について説明する。図4は、本願開示の行動補助装置SEが実行する基礎身体情報収集処理の一例を示すフローチャートである。基礎身体情報収集処理は、日常生活における身体情報を収集する処理であり、緊張していない平常状態の身体情報を収集する処理である。収集する身体情報は、身体状態検出部111等の各検出部11の検出により得られる筋力、脈拍等の情報である。また、口唇動作検出部113等の検出部11を使用して、口周りの筋肉の動きを示す身体情報を収集するようにしてもよい。検出する時間帯は、発話者が発話している時間及び発話していない時間を含む時間帯、例えば、起床から就寝までの時間帯が設定される。行動補助装置SEは、制御部14の制御により、基礎身体情報収集処理を実行する。
【0033】
行動補助装置SEが備える制御部14は、身体状態検出部111により、発話者が発話していない時間をも含む時間帯に、身体情報を検出し(S101)、検出した身体情報を記憶部15に記憶する(S102)。
【0034】
制御部14は、1時間、1日等の時間間隔で、記憶部15に記憶している身体情報を集計し(S103)、基礎身体情報を設定する(S104)。基礎身体情報は、身体情報の集計処理の結果に基づいて設定される通常状態を示す範囲である。基礎身体情報は、例えば、身体情報のデータから異常値を除き、平均値に対して±3σの範囲として設定される。設定された基礎身体情報の範囲は、記憶部15に記憶される。なお、範囲の設定は、上限及び下限を設定してもよいが、例えば、脈拍等の身体情報については、上限のみを設定するようにしてもよい。
【0035】
以上のようにして、基礎身体情報収集処理が実行される。
【0036】
図5は、本願開示の行動補助装置SEが実行する行動補助処理の一例を示すフローチャートである。行動補助処理は、発話者が、会話をする際、特に、会話者と1対1での対話をする際に発話者の操作に基いて実行される処理である。以下では、対象行動として吃音を発症する傾向のある発話者が、行動補助装置SEを使用する形態を例示して説明する。発話者は、会話の前に、腕部に装着した行動補助装置SEの操作部10に対し、行動補助処理の実行を開始する操作を行い、更に、会話相手となる会話者が初対面であるか否かを設定する入力を行う。
【0037】
行動補助装置SEの制御部14は、操作部10の初対面設定スイッチ101から、初対面の設定を受け付ける(S201)。ステップS201の設定により、行動補助装置SEは、初対面モード又は再会モードに設定される。例えば、初対面モードの場合、記憶部15に設定された初対面モードを示す変数に「YES」を示す符号「1」が記憶され、再会モードの場合、初対面モードを示す変数に「NO」を示す符号「0」が記憶される。
【0038】
制御部14は、加速度センサ112等の検出部11による検出結果に基づいて、発話者が歩行動作を行っているか否かを判定する(S202)。ステップS202の歩行動作の判定は、会話が終了したか否かを判定する処理である。
【0039】
ステップS202において、歩行動作を行っていないと判定した場合(S202:NO)、制御部14は、会話が終了していないと判定し、身体状態検出部111により脈拍数等の身体状態を検出する(S203)。そして、制御部14は、検出した身体の状態が、設定されている基礎身体情報にて規定された範囲内か否かを判定する(S204)。ステップS204の判定は、例えば、検出した脈拍数が、基礎身体情報にて規定された平常時の範囲を超える場合、吃音を発症し易い身体状態にあると判定する処理である。
【0040】
ステップS204において、身体状態が範囲外であると判定した場合(S204:YES)、制御部14は、マイク110(音声検出部)による受音を開始し(S205)、吃音を発症しているか否かを判定する(S206)。
【0041】
ステップS206の吃音の発症は、受音した音に対してA/D変換、周波数変換、音素抽出、音響モデル照合等の処理にて、テキスト情報に変換し、変換したテキスト情報から吃音の症状の有無を判定することにより行われる。テキスト情報に基づく吃音の症状の有無は、連発性吃音、難発性吃音、伸発性吃音等の症状の吃音が発症しているか否かを判定することにより行われる。連発性吃音は、例えば、「くくくくくるまです。」のように、3秒間で子音及び母音からなる音、例えば、「く」を連続4回以上繰り返した場合に、発症していると判定する。難発性吃音は、例えば、「ーーーーーー、k、k、く、くるまです。」のように、3秒間で子音、例えば、「k」を連続4回以上、繰り返した場合に、発症していると判定する。伸発性吃音は、例えば、「くーーーーーーるまです。」のように、言葉が3秒以上、伸発した場合に、発症していると判定する。
【0042】
ステップS206において、吃音を発症していると判定した場合(S206:YES)、制御部14は、会話者が初対面の相手であるか否かを判定する(S207)。ステップS207の判定は、記憶部15に設定された初対面モードを示す変数を参照することにより、ステップS201にて受け付けた設定内容に基いて行われる。
【0043】
ステップS207において、初対面であると判定した場合(S207:YES)、制御部14は、会話者に対して吃音発症を告知済みであるか否かを判定する(S208)。
【0044】
ステップS208において、告知していないと判定した場合(S208:NO)、制御部14は、出力部12から吃音発症を告知する(S209)ステップS209の告知は、例えば、出力部12のスピーカ120(音出力部)から、「吃音の症状が表れています。しばらくお待ち下さい。」との音声を2回繰り返して出力する処理として行われる。本願開示の行動補助装置SEは、吃音の症状が現れた場合に、吃音の発症を会話者に告知することにより、会話者に発話者の状態を理解させ、会話者に対して発話者の緊張を高めるような行動を取らないように促すことが期待できる。
【0045】
ステップS207において、初対面ではないと判定した場合(S207:NO)、ステップS208~S209の処理は実行されない。ステップS208において、既に、吃音の発症を告知していると判定した場合(S208:YES)、ステップS209の処理は実行されない。
【0046】
そして、制御部14は、スピーカ120(音出力部)から音楽を出力する(S210)。ステップS210の音楽の出力は、発話者の緊張状態を和らげ、発話し易い雰囲気を作り、会話者に対しても発話を待つという緊張状態を和らげる効果が期待できる。
【0047】
制御部14は、四肢動作検出部114等の検出部11により、発話者の四肢の動作を検出し(S211)、検出した動作が、随伴運動等の所定の動作に該当するか否かを判定する(S212)。ステップS211の四肢の動作の検出は、接続部13に接続した四肢動作検出部114だけでなく、加速度センサ112を四肢動作検出部114として用い、四肢、特に腕の動きを検出するように設計してもよい。ステップS212では、四肢の動きが、例えば、難発性吃音者が発症する空気を切るような大きな動き、手足の振り、足のステップ等の随伴運動であるか否かを判定する。
【0048】
ステップS212において、四肢の動作が随伴運動等の所定の動作に該当すると判定した場合(S212:YES)、制御部14は、随伴運動を抑制する抑制処理として、発話者に対して、刺激部121による刺激を与える(S213)。ステップS213において、刺激部121、例えば、バイブレータは、振動の付与等の刺激を与える。刺激部121が、腕部に対して筋肉をリラックスさせるような振動を付与することにより、発話者に対し、マッサージのような心地よい小刻みな揺れを感じさせて、随伴運動の抑制を期待することができる。
【0049】
そして、制御部14は、ステップS202へ戻り、以降の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS202において、発話者が歩行動作を行っていると判定した場合(S202:YES)、制御部14は、会話が終了したと判定し、行動補助処理を終了する。行動補助処理の終了に際し、発声の受音、音楽の出力、抑制処理等の処理が実行中の場合、これらの処理も停止される。なお、行動補助処理の終了は、発話者による手動操作にて行うようにしてもよい。
【0051】
ステップS204において、検出した身体の状態が、設定されている範囲内であると判定した場合(S204:NO)、制御部14は、マイク110による発声の受音を停止し(S214)、ステップS202へ戻り、以降の処理を繰り返す。例えば、検出した脈拍数が、平常時の範囲内である場合、行動補助装置SEは、発話者が落ち着いており、吃音を発症していない又は発話者の吃音は治まったと判定し、受音を停止する。ステップS214において、マイク110による受音が行われていない場合、受音の停止状態を維持する。
【0052】
ステップS206において、吃音を発症していないと判定した場合(S206:NO)、制御部14は、スピーカ120からの音楽出力を停止し(S215)、更に、刺激部121による抑制処理を停止し(S216)、ステップS202へ戻り、以降の処理を繰り返す。ステップS215において、音楽を出力していない場合、音楽出力の停止状態を維持する。ステップS216において、抑制処理が行われていない場合、抑制処理の停止状態を維持する。
【0053】
ステップS212において、四肢の動作は所定の動作に該当しないと判定した場合(S212:NO)、制御部14は、抑制処理を停止し(S217)、ステップS202へ戻り、以降の処理を繰り返す。ステップS217において、抑制処理が行われていない場合、抑制処理の停止状態を維持する。
【0054】
以上のようにして、行動補助処理が実行される。
【0055】
以上のように、本願開示の行動補助装置SEは、会話相手と会話する発話者の身体の状態を検出し、吃音等の対象行動の発症を判定し、発症している場合に、対象行動の発症を抑制する抑制処理を実行する。これにより、本願開示の行動補助装置SEは、会話相手と会話する発話者の行動を補助することが可能である等、優れた効果を奏する。
【0056】
また、本願開示の行動補助装置SEは、吃音等の対象行動が発症した場合に、その旨を、会話者に告知することにより、会話者に発話者の状態を理解させ、会話者に対して発話者の緊張を高めるような行動を取らないように促すことが期待できる等、優れた効果を奏する。
【0057】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形態で実施することが可能である。そのため、かかる実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0058】
例えば、前記実施形態では、告知情報を音声で出力する形態を示したが、本願開示の行動補助装置SEは、これに限らず、様々な形態に展開することが可能である。例えば、本願開示の行動補助装置SEは、液晶モニタ等の表示部を設け、告知情報の出力として、表示部に文字、画像等の出力を行うようにしてもよい等、様々な形態に展開することが可能である。
【0059】
また、前記実施形態では、行動補助装置SEを装着可能な形態として示したが、本願開示の行動補助装置SEは、これに限らず、載置型の装置として実現する等、様々な形態に展開することも可能である。また、装着可能な行動補助装置SEの接続部13に、音出力部、刺激部121等の出力部12を接続する等、様々な形態に展開することが可能である。
【0060】
更に、本願開示の行動補助装置SEは、吃音の発症の検出に、口唇動作検出部113が検出した口唇の動きを用いることも可能である。また、本願開示の行動補助装置SEは、刺激部121による刺激として、身体を温める、冷やす等の温度による刺激を与える抑制処理により、発話者を落ち着かせるように設計することも可能である。
【0061】
更に、本願開示の行動補助装置SEは、3名以上で会話する場合でも適用することが可能である。
【0062】
また、本願開示の行動補助装置SEは、対象行動として吃音の発症以外に、チック症、認知症の発症等の様々な行動の発症に対応する装置として設計することが可能である。
【0063】
(付記1)
会話相手と会話する発話者の行動を補助する行動補助装置であって、
身体の状態を検出する検出部と、
前記検出部が検出した状態に基づいて、対象行動の発症を判定する手段と、
前記判定手段により対象行動を発症していると判定した場合に、発話者に対して対象行動の発症を抑制する抑制処理を実行する手段と
を備えることを特徴とする行動補助装置。
【0064】
(付記2)
会話相手と会話する発話者の発話に関する行動を補助する行動補助装置であって、
身体の状態を検出する検出部と、
前記検出部が検出した状態に基づいて、吃音の発症を判定する判定手段と、
前記判定手段により吃音を発症していると判定した場合に、発話者に対して吃音の発症を抑制する抑制処理を実行する抑制手段と
を備えることを特徴とする行動補助装置。
【0065】
(付記3)
付記2に記載の行動補助装置であって、
前記判定手段により吃音を発症していると判定した場合に、会話相手に対して吃音の発症を告知する告知手段を備える
ことを特徴とする行動補助装置。
【0066】
(付記4)
付記2又は付記3に記載の行動補助装置であって、
発話者の身体への装着に使用する装着部を備える
ことを特徴とする行動補助装置。
【0067】
(付記5)
付記2乃至付記4のいずれか一つに記載の行動補助装置であって、
前記検出部は、
発話者の発声を受音する音声検出部を含み、
前記判定手段は、
前記音声検出部が受音した発声に基いて、吃音の発症を判定する
ことを特徴とする行動補助装置。
【0068】
(付記6)
付記2乃至付記5のいずれか一つに記載の行動補助装置であって、
前記検出部は、
発話以外の身体の状態を検出する身体状態検出部を含み、
前記身体状態検出部が検出した身体の状態が、設定されている基礎身体情報にて規定された範囲から外れる場合に、前記判定手段は、吃音の発症を判定する処理を開始する
ことを特徴とする行動補助装置。
【0069】
(付記7)
付記6に記載の行動補助装置であって、
発話者が発話していない時間を含む時間帯に、前記身体状態検出部が検出した情報を集計する手段と、
集計した情報に基づいて、基礎身体情報を設定する手段と
を備えることを特徴とする行動補助装置。
【0070】
(付記8)
付記2乃至付記7のいずれか一つに記載の行動補助装置であって、
音を出力する音出力部を備え、
前記抑制手段は、
抑制処理として、音出力部から音楽を出力する
ことを特徴とする行動補助装置。
【0071】
(付記9)
付記2乃至付記8のいずれか一つに記載の行動補助装置であって、
発話者の身体に対して刺激を与える刺激部を備え、
前記検出部は、発話者の四肢の動作を検出する四肢動作検出部を含み、
前記四肢動作検出部が検出した動作が所定の動作に該当するか否かを判定する四肢動作判定手段を備え、
前記抑制手段は、前記四肢動作判定手段により所定の動作が検出されたと判定した場合に、抑制処理として、前記刺激部により刺激を与える
ことを特徴とする行動補助装置。
【符号の説明】
【0072】
SE 行動補助装置
1 本体装置
10 操作部
100 メインスイッチ
101 初対面設定スイッチ
11 検出部
110 マイク(音声検出部)
111 身体状態検出部
111a 筋電センサ
111b 心拍センサ
112 加速度センサ
113 口唇動作検出部
114 四肢動作検出部
12 出力部
120 スピーカ(音出力部)
121 刺激部
13 接続部
14 制御部
15 記憶部
2 装着部
図1
図2
図3
図4
図5