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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107715
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】紙蓋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B31D 5/02 20170101AFI20240802BHJP
   B65D 3/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B31D5/02
B65D3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011794
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑典
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 恒昭
(72)【発明者】
【氏名】塚本 拓也
【テーマコード(参考)】
3E075
【Fターム(参考)】
3E075AA07
3E075AA12
3E075BA95
3E075CA01
3E075DC70
3E075GA03
(57)【要約】
【課題】天板が上側に膨出した、いわゆるドーム形状に成型でき、しかもシワを介した内容物の漏れを効果的に抑制可能な紙蓋の製造方法を提供する。
【解決手段】ブランク10の周縁を押さえながら中央領域を第1方向へ押し込むことにより、天板部11及び被包部12を形成する第1工程と、ブランク10における被包部12の外周から外側に離間させた領域を第1方向へ押し込むことにより、外延部13及び内嵌合部14を形成する第2工程と、ブランク10における内嵌合部14の外周から外側に離間させた領域を第1方向に対して反対の第2方向へ押し込むことにより、頂部15及び外嵌合部16を形成する第3工程とを有する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を主体とするブランクの周縁を押さえながら中央領域を第1方向へ押し込むことにより、天板部及び上記天板部の外周に沿って設けられて上記第1方向に延長された被包部を形成する第1工程と、
上記ブランクにおける上記被包部の外周から外側に離間させた領域を上記第1方向へ押し込むことにより、上記被包部の外周に沿って設けられて外側に延長された外延部、及び上記外延部の外周に沿って設けられて上記第1方向に延長された内嵌合部を形成する第2工程と、
上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を上記第1方向に対して反対の第2方向へ押し込むことにより、上記内嵌合部の外周に沿って設けられて外側に延長された頂部、及び上記頂部の外周に沿って設けられて上記第2方向に延長された外嵌合部を形成する第3工程とを有すること
を特徴とする紙蓋の製造方法。
【請求項2】
上記第1工程では、ドローダイ及びブランクホルダーにより上記ブランクにおける周縁を挟持することにより押さえ、
上記第3工程では、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第2方向へ移動させることで、上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を押し込み、
次に、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第1方向に移動させることで、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーにそれぞれ設けられた丸溝状のカーリング部に上記ブランクの端部を入り込ませて変形させることにより、カール部を形成する第4工程を更に有すること
を特徴とする請求項1記載の紙蓋の製造方法。
【請求項3】
上記第1工程では、ドローダイ及びブランクホルダーにより上記ブランクにおける周縁を挟持することにより押さえ、
上記第3工程では、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第2方向へ移動させることで、上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を押し込み、
次に、上記ブランクの端部を上記ドローダイにおける当接面を介して当接させつつ、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第1方向へ移動させることで、上記外嵌合部を外側に屈曲させる第4工程を更に有すること
を特徴とする請求項1記載の紙蓋の製造方法。
【請求項4】
上記第1工程では、ドローダイ及びブランクホルダーにより上記ブランクにおける周縁を挟持することにより押さえ、
上記第2工程では、上記ブランクにおける上記被包部の外周から外側に離間させた領域を環状突起部を有する第1サイドホルダーにより上記第1方向へ押し込み、
上記第3工程では、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第2方向へ移動させることで、上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を押し込み、
次に、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第1方向に移動させることで、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーにそれぞれ設けられた丸溝状のカーリング部に上記ブランクの端部を入り込ませて変形させると共に、上記ドローダイと対向する上記第1サイドホルダーの側周面において内側に凹状に形成された凹部に上記外嵌合部を内側に屈曲させる第4工程を更に有すること
を特徴とする請求項1記載の紙蓋の製造方法。
【請求項5】
上記第2工程では、上記ブランクにおける上記被包部の外周から外側に離間させた領域を、根本部分にテーパー面が形成された環状突起部を有する第1サイドホルダーにより上記第1方向へ押し込むこと
を特徴とする請求項1記載の紙蓋の製造方法。
【請求項6】
ドローダイ及びブランクホルダーにより紙を主体とするブランクにおける周縁を挟持することにより押さえつつ、その中央領域の外周から外側に離間させた領域を第1方向へ押し込むことにより、上記第1方向に延長された内嵌合部を形成する第2工程と、
上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を上記第1方向に対して反対の第2方向へ上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを移動させることで押し込むことにより、上記内嵌合部の外周に沿って設けられて外側に延長された頂部、及び上記頂部の外周に沿って設けられて上記第2方向に延長された外嵌合部を形成する第3工程と、
上記ブランクの端部を上記ドローダイにおける当接面を介して当接させつつ、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第1方向へ移動させることで、上記外嵌合部を外側に屈曲させる第4工程とを有すること
を特徴とする紙蓋の製造方法。
【請求項7】
ドローダイ及びブランクホルダーにより紙を主体とするブランクにおける周縁を挟持することにより押さえつつ、その中央領域の外周から外側に離間させた領域を環状突起部を有する第1サイドホルダーにより第1方向へ押し込むことにより、上記第1方向に延長された内嵌合部を形成する第2工程と、
上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を上記第1方向に対して反対の第2方向へ上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを移動させることで押し込むことにより、上記内嵌合部の外周に沿って設けられて外側に延長された頂部、及び上記頂部の外周に沿って設けられて上記第2方向に延長された外嵌合部を形成する第3工程と、
上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第1方向に移動させることで、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーにそれぞれ設けられた丸溝状のカーリング部に上記ブランクの端部を入り込ませて変形させると共に、上記ドローダイと対向する上記第1サイドホルダーの側周面において内側に凹状に形成された凹部に上記外嵌合部を内側に屈曲させる第4工程とを有すること
を特徴とする紙蓋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙蓋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙コップ等の紙容器の蓋として、プラスチック等の樹脂蓋が用いられている。しかし、樹脂蓋は、廃棄する際、紙コップや紙容器と分別する必要があり、消費者の手間となる。特に地球温暖化対策として樹脂使用量の削減やCO2の削減が求められており、樹脂蓋から紙蓋への切り替えが増えている。
【0003】
蓋は、一般的に天板がフラットな平蓋形状と、天板が上側に膨出したものの2種類に大別できる。中でもコールド飲料等のようにストローを利用して飲むタイプは、平蓋形状が適用されるが、ホット飲料のように容器から直接口へ喫飲するタイプや、クリーム等のトッピングが施されるタイプは、天板が上側に膨出した、いわゆるドーム形状のようなものが適用される場合が多い。
【0004】
特許文献1には、平蓋形状の紙蓋が記載されている。この特許文献1に開示の紙蓋によれば、天板の外周側に設けられた内嵌合部、頂部、外嵌合部により形成された環状凹部により容器を嵌合自在とされている。しかし、この紙蓋は、天板が容器の内面側に入り込んだ構成とされており、環状凹部がこの天板よりも上側に立ち上げられた構成とされている。このため、ホット飲料のように容器から直接口へ喫飲するタイプや、クリーム等のトッピングが施されるタイプに対する適用が困難になるという問題点があった。
【0005】
また、このような紙蓋は絞り成型により製造されるが、この絞り成型時に紙に加わる圧縮力によりシワが発生する。このシワは内嵌合部から頂部を跨ぐように発生している場合には、容器内の内容物がそのシワを介して漏れ出てしまう。このようなシワを介した内容物の漏れを効果的に抑制できる紙蓋の製造方法が案出されていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6978606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、天板が上側に膨出した、いわゆるドーム形状に成型でき、しかもシワを介した内容物の漏れを効果的に抑制可能な紙蓋の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る紙蓋の製造方法は、紙を主体とするブランクの周縁を押さえながら中央領域を第1方向へ押し込むことにより、天板部及び上記天板部の外周に沿って設けられて上記第1方向に延長された被包部を形成する第1工程と、上記ブランクにおける上記被包部の外周から外側に離間させた領域を上記第1方向へ押し込むことにより、上記被包部の外周に沿って設けられて外側に延長された外延部、及び上記外延部の外周に沿って設けられて上記第1方向に延長された内嵌合部を形成する第2工程と、上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を上記第1方向に対して反対の第2方向へ押し込むことにより、上記内嵌合部の外周に沿って設けられて外側に延長された頂部、及び上記頂部の外周に沿って設けられて上記第2方向に延長された外嵌合部を形成する第3工程とを有することを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る紙蓋の製造方法は、第1発明において、上記第1工程では、ドローダイ及びブランクホルダーにより上記ブランクにおける周縁を挟持することにより押さえ、上記第3工程では、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第2方向へ移動させることで、上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を押し込み、次に、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第1方向に移動させることで、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーにそれぞれ設けられた丸溝状のカーリング部に上記ブランクの端部を入り込ませて変形させることにより、カール部を形成する第4工程を更に有することを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る紙蓋の製造方法は、第1発明において、上記第1工程では、ドローダイ及びブランクホルダーにより上記ブランクにおける周縁を挟持することにより押さえ、上記第3工程では、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第2方向へ移動させることで、上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を押し込み、次に、上記ブランクの端部を上記ドローダイにおける当接面を介して当接させつつ、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第1方向へ移動させることで、上記外嵌合部を外側に屈曲させる第4工程を更に有することを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る紙蓋の製造方法は、第1発明において、上記第1工程では、ドローダイ及びブランクホルダーにより上記ブランクにおける周縁を挟持することにより押さえ、上記第2工程では、上記ブランクにおける上記被包部の外周から外側に離間させた領域を環状突起部を有する第1サイドホルダーにより上記第1方向へ押し込み、上記第3工程では、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第2方向へ移動させることで、上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を押し込み、次に、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第1方向に移動させることで、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーにそれぞれ設けられた丸溝状のカーリング部に上記ブランクの端部を入り込ませて変形させると共に、上記ドローダイと対向する上記第1サイドホルダーの側周面において内側に凹状に形成された凹部に上記外嵌合部を内側に屈曲させる第4工程を更に有することを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る紙蓋の製造方法は、第1発明において、上記第2工程では、上記ブランクにおける上記被包部の外周から外側に離間させた領域を、根本部分にテーパー面が形成された環状突起部を有する第1サイドホルダーにより上記第1方向へ押し込むことを特徴とする。
【0013】
第6発明に係る紙蓋の製造方法は、ドローダイ及びブランクホルダーにより紙を主体とするブランクにおける周縁を挟持することにより押さえつつ、その中央領域の外周から外側に離間させた領域を第1方向へ押し込むことにより、上記第1方向に延長された内嵌合部を形成する第2工程と、上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を上記第1方向に対して反対の第2方向へ上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを移動させることで押し込むことにより、上記内嵌合部の外周に沿って設けられて外側に延長された頂部、及び上記頂部の外周に沿って設けられて上記第2方向に延長された外嵌合部を形成する第3工程と、上記ブランクの端部を上記ドローダイにおける当接面を介して当接させつつ、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第1方向へ移動させることで、上記外嵌合部を外側に屈曲させる第4工程とを有することを特徴とする。
【0014】
第7発明に係る紙蓋の製造方法は、ドローダイ及びブランクホルダーにより紙を主体とするブランクにおける周縁を挟持することにより押さえつつ、その中央領域の外周から外側に離間させた領域を環状突起部を有する第1サイドホルダーにより第1方向へ押し込むことにより、上記第1方向に延長された内嵌合部を形成する第2工程と、上記ブランクにおける上記内嵌合部の外周から外側に離間させた領域を上記第1方向に対して反対の第2方向へ上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを移動させることで押し込むことにより、上記内嵌合部の外周に沿って設けられて外側に延長された頂部、及び上記頂部の外周に沿って設けられて上記第2方向に延長された外嵌合部を形成する第3工程と、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーを上記第1方向に移動させることで、上記ドローダイ及び上記ブランクホルダーにそれぞれ設けられた丸溝状のカーリング部に上記ブランクの端部を入り込ませて変形させると共に、上記ドローダイと対向する上記第1サイドホルダーの側周面において内側に凹状に形成された凹部に上記外嵌合部を内側に屈曲させる第4工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述した構成からなる本発明によれば、天板が上側に膨出した、いわゆるドーム形状に成型でき、また紙容器の嵌合時において、内嵌合部における外延部へと連続する下側部位が紙容器の容器部内周面と接触可能な紙蓋を製造することができ、シワを介した内容物の漏れを効果的に抑制可能な形状に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式平面図であり、図1(b)は、図1(a)中のIB-IB線に沿う模式断面図である。
図2図2は、図1(a)中の破線枠II内を拡大して示す模式断面図である。
図3図3は、内嵌合部において下側部位が外側に向けて拡径され、下側部位よりも上側にある上側部位が略同一径で上側に延長される例を示す図である。
図4図4(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示す模式斜視図の一部を切り欠いて示す模式斜視図である。
図5図5(a)は、内嵌合部における図2中紙面奥行方向の断面図であり、図5(b)は、シワを周方向内側に圧縮させることにより狭小化させた例を示す断面図である。
図6図6は、内嵌合部と紙容器の容器部内周面との当接部分における拡大図である。
図7図7は、何ら処理が施されないシワと、周方向に圧縮させたシワとの間で紙容器の内容物の漏れの有無を検証した結果を示す図である。
図8図8は、内嵌合部の高さに対する内容物の漏れの有無を検証した結果を示す図である。
図9図9は、プレス荷重を付与することで圧縮力を高めた例について内容物の漏れ度合を検証した結果を示す図である。
図10図10(a)は、外篏合部の外側に屈曲する屈曲部を形成した例であり、図10(b)は、図10(a)の点線で囲まれる領域の拡大図である。
図11図11(a)は、外篏合部の外側に屈曲部を形成しない例を示す図であり、図11(b)は、外篏合部の外側に屈曲部を形成する例を示す図である。
図12図12は、屈曲部の形成位置について説明するための図である。
図13図13は、外篏合部において内側に屈曲する屈曲部を形成する例を示す図である。
図14図14は、本発明の一実施形態に係る紙蓋の製造に使用可能な加工機の一例を示す模式断面図である。
図15図15は、加工機を使用することにより、天板部及び被包部を絞り成型する方法について説明するための図である。
図16図16は、加工機を使用することにより、外延部、内嵌合部、頂部、外嵌合部を絞り成型する方法について説明するための図である。
図17図17は、加工機を使用することにより、カール部を絞り成型する方法について説明するための図である。
図18図18は、テーパー面を形成した状態で、第1サイドホルダーを下降方向に押し下げることにより絞り成型する方法について説明するための図である。
図19図19は、絞り成型方法に基づいて実際に成型した紙蓋の紙厚を測定した例を示す図である。
図20図20は、外篏合部において外側に屈曲する屈曲部を成形する方法について説明するための図である。
図21図21は、外篏合部において外側に屈曲する屈曲部を成形する他の方法について説明するための図である。
図22図22は、外篏合部において内側に屈曲する屈曲部を成形する方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した紙蓋の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
(紙蓋)
図1(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式平面図、図1(b)は、図1(a)中のIB-IB線に沿う模式断面図である。図2は、図1(a)中の破線枠II内を拡大して示す模式断面図である。
【0019】
図1(a)、図1(b)、及び図2に示すように、紙蓋1は、紙を主体とするブランク10から成り、天板部11と、被包部12と、外延部13と、内嵌合部14と、頂部15と、外嵌合部16と、カール部17とを備えている。紙蓋1の平面視した形状は、例えば円形である。以下、図1、2において外側(方向X1)とは、嵌合すべき例えば紙コップからなる紙容器2を中心にして外方向をいい、下側(方向X2)とは、紙容器2を底面を介して載置した場合における下方向をいい、上側(方向X3)とは、紙容器2を底面を介して載置した場合における上方向をいう。但し、これらの下側(方向X2)、上側(方向X3)は、完全な鉛直下向き、鉛直上向きに限定されるものではなく、鉛直下向きからずれた斜め下向き、鉛直上向きからずれた斜め上向きも含まれる。
【0020】
また、紙蓋1として本来の蓋としての、いわゆる紙容器2内の内容物の飛散、漏れを防止する機能を担うのは、天板部11及び被包部12であり、残りの周縁部OEP(外延部13、内嵌合部14、頂部15、外嵌合部16、カール部17)は、紙容器2と嵌合するための機能を担う。
【0021】
天板部11は、外側(方向X1)に向けて延長されている。天板部11は、天面11aと、容器面11bと、を有する。容器面11bは、天面11aの裏面にある。容器面11bは、紙蓋1が、紙容器2に嵌合されたとき、紙容器2の容器部と面する。
【0022】
被包部12は、天板部11の外周に沿って設けられ、天板部11よりも下側(方向X2)に延長されている。この被包部12は、天板部11と連続して構成されている。このとき被包部12は、下側に向かうにつれて徐々に拡径するように、換言すれば側断面視で外側に向けて傾斜するように成型されるものであってもよい。また、被包部12と天板部11との連続部分は、丸みを帯びるような流線形状で成型されるものであってもよい。このような形態からなる被包部12により天板部11を紙容器2に対して離間させた位置で閉蓋することができる。また、これら天板部11及び被包部12により、上側に膨出した、いわゆるドーム形状となるように成型することができ、ホット飲料のように容器から直接口へ喫飲するタイプや、クリーム等のトッピングが施されるタイプにも適用可能となる。
【0023】
外延部13は、紙蓋1の周縁部OEPに、被包部12の外周に沿って設けられて外側(方向X1)に向けて延長されている。この外延部13は、被包部12と連続して構成されている。この外延部13の延長幅は、特段限定されるものではないが、後述するように紙容器2の嵌合時において内嵌合部14が紙容器2の容器部内周面21と接触可能となるようにサイズ設計がなされるものであってもよい。
【0024】
内嵌合部14は、紙蓋1の周縁部OEPに、外延部13の外周に沿って設けられて上側(方向X3)に向けて延長されている。この内嵌合部14は、外延部13と連続して構成されている。内嵌合部14は、略同一径、換言すれば断面視で略鉛直方向に向けて頂部15に至るまで立ち上げられていてもよいが、これに限定されるものではなく、頂部15に至るまで外側に向けて徐々に拡径されるものであってもよい。また図3に示すように、内嵌合部14は、下側部位14aが外側に向けて拡径され、下側部位14aよりも上側にある上側部位14bが略同一径で上側に延長されるものであってもよい。
【0025】
頂部15は、紙蓋1の周縁部OEPに、内嵌合部14の外周に沿って設けられて外側(方向X1)に向けて延長されている。この頂部15は、内嵌合部14と連続して構成されている。頂部15は、その断面において上側(方向X3)に向かって凸となる曲面を含む。
【0026】
外嵌合部16は、紙蓋1の周縁部OEPに、頂部15の外周に沿って設けられて下側(方向X2)に向けて延長されている。この外嵌合部16は、頂部15と連続して構成されている。外嵌合部16は、内嵌合部14と離れて相対する。頂部15の下で、内嵌合部14と外嵌合部16との間には、内嵌合部14及び外嵌合部16のそれぞれを囲壁とし、頂部15を底とした環状凹部20が設けられる。環状凹部20は、紙容器2に嵌合される。このとき、内嵌合部14は、紙容器2の容器部内周面21と嵌合し、外嵌合部16は、紙容器2のカール部28の外周面と嵌合する。
【0027】
カール部17は、周縁部OEPに、外嵌合部16の周方向に沿って設けられている。カール部17は、外側(方向X1)に延び、外嵌合部16と連続している。カール部17は、紙蓋1の端部10aを含む。カール部17は、断面視で上向きにカールする形状とされていてもよいが、これに限定されるものではない。このようなカール部17を形成することにより、環状凹部20を紙容器2に嵌合する際に、このカール部17を介して紙容器2を環状凹部20へと案内することが可能となる。
【0028】
即ち、紙蓋1は、紙蓋1の断面において、被包部12において下側(方向X2)に曲がり、外延部13において外側(方向X1)に曲がり、内嵌合部14において上側(方向X3)に曲がり、頂部15において外側(方向X1)に曲がり、外嵌合部16において下側(方向X2)に曲がり、カール部17において、外側(方向X1)に曲がる。つまり、天板部11、被包部12、外延部13、内嵌合部14、頂部15、外嵌合部16、カール部17のそれぞれは、1枚のブランク10から得られている。
【0029】
このような形状の紙蓋1において、天板部11と被包部12の境界、被包部12と外延部13の境界、外延部13と内嵌合部14の境界、内嵌合部14と頂部15の境界、頂部15と外嵌合部16の境界、外嵌合部16とカール部17の境界は、例えば、ブランク10を絞り成型することに生じる変曲点、又は変曲点近傍をそれぞれの境界として定めるようにしてもよい。
【0030】
図4(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の一例を示す模式斜視図である。図4(b)は、図4(a)に示す模式斜視図の一部を切り欠いて示す模式斜視図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、紙蓋1における少なくとも周縁部OEP(外延部13、内嵌合部14、頂部15、外嵌合部16、カール部17)には、外側に向かってシワ27が形成されている。このシワ27は、この絞り成型時にブランク10に加わる圧縮力により自然に生じてしまうものである。このシワ27は、周縁部OEPにおける内面、外面共に多数存在しており、紙蓋1の全周に亘り形成されている。
【0031】
図5(a)は、内嵌合部14における図2中紙面奥行方向の断面図を示している。即ち、この断面図は、図中矢印方向が、紙蓋1の周方向となる。図5(a)に示すようにシワ27が内面31a、外面31bにそれぞれ互いに間隔をおいて形成されている。このシワ27は、周方向内側に向けて圧縮されてなるものであってもよい。即ち、シワ27の幅は、図5(a)点線に示す何ら処理が施されない比較的広いものに対して、図5(b)に示すように周方向内側(図5(b)中点線)に圧縮させることにより、狭小化させることができる。その結果、シワ27の空隙面積を小さくすることができる。ここでいう空隙面積とは、シワ27の断面積を示すものであり、図中に示すようにシワの深さと幅の関係から算出することができる。この空隙面積は、その断面を光学顕微鏡に上にて撮像し、その撮影画像から空隙面積を算出することができる。
【0032】
このようなシワ27の周方向内側へ向けた圧縮は、シワ27の始端から終端に至るまで施されていることは必須ではなく、少なくとも内嵌合部14において施されていればよい。図6は、この内嵌合部14と紙容器2の容器部内周面21との当接部分における拡大図である。内嵌合部14における下側部位14aが、紙容器2の容器部内周面21と接触することで嵌合が実現できる。このとき、この内嵌合部14の下側部位14aに形成されているシワ27が周方向内側に向けて圧縮されていることにより、このシワ27を伝って紙容器2内における液体状の内容物が漏れ出てしまうのを効果的に抑制できる。
【0033】
図7は、何ら処理が施されないシワ27(比較例1)と、周方向に圧縮させたシワ27(本発明例1)との間で最大空隙面積に対する紙容器2の内容物の漏れの有無を検証した結果を示している。ここでいう最大空隙面積とは、計測したシワ27の断面積のうち、最大の空隙面積のものをいう。本実施形態における検証では、実際に内嵌合部14の断面を円周方向に向けてカットし、その断面を光学顕微鏡に上にて撮像し、最大空隙面積を算出した。比較例1の最大空隙面積は、6741μm2であるのに対して、本発明例1の最大空隙面積は、4359μm2であった。なお、この検証において内容物は、水としている。実際の検証では、内容物を入れた紙容器2に紙蓋1を閉め、その後紙容器2を90°傾けて1分間保持し、漏れが無いかを確認する。
【0034】
何ら処理が施されていない比較例1では、実験開始後7秒後に内容物の漏れが確認できた。これに対して周方向にシワ27を圧縮させた本発明例1では、1分経過後であっても内容物の漏れが確認できなかった。このため、シワ27は周方向に圧縮させておくことが望ましく、その最大空隙面積は4359μm2とすることが望ましい。
【0035】
また本発明によれば、図6に示すように、嵌合時において、内嵌合部14の下側部位14aが、紙容器2の容器部内周面21に対して外側(方向X1)に向けて押圧力が付与されていることが望ましい。これにより、内嵌合部14の下側部位14aに形成されたシワ27が、かかる紙容器2の容器部内周面21に対する押圧を通じて圧縮される結果、シワ27を伝って紙容器2内における液体状の内容物が漏れ出てしまうのを効果的に抑制できる。このような内嵌合部14の下側部位14aの押圧力は、内嵌合部14に連続する外延部13が拡径しようとする力に基づいて付与される。そして、この外延部13が拡径しようとする力は、例えば外延部13の方向X1に向けた寸法をやや大きめに設計する以外に、天板部11の方向X1に向けた寸法や、被包部12の外側に向けた拡径幅を調整することで、付与することも可能となる。
【0036】
また、紙容器2中の内容物の漏れ出しを抑制するためには、図6に示す内嵌合部14の高さhを高めに設定することが望ましい。内嵌合部14の高さを高く設定することで、紙容器2の容器部内周面21に対して接触する内嵌合部14の下側部位14aの接触面積をより大きくすることができ、内容物の漏れ出しの抑制につながる。これに加えて、内嵌合部14の高さを高めに設定することで、内嵌合部14におけるシワ27の長さを長くすることができる結果、内容物が当該シワ27を伝って漏れ出すまでの伝搬距離を長くすることができ、内容物の漏れ出しの抑制につながる。
【0037】
図8は、この内嵌合部14の高さに対する内容物の漏れの有無を検証した結果を示している。比較例2は、内嵌合部14の高さを3mmとしたものであり、比較例3は、内嵌合部14の高さを5mmとしたものであり、本発明例2は、内嵌合部14の高さを7mmとしたものである。なお、この検証において内容物は、水としている。実際の検証では、内容物を入れた紙容器2に紙蓋1を閉め、その後紙容器2を90°傾けて1分間保持し、漏れが無いかを確認する。
【0038】
検証の結果、比較例2、3は、何れも内容物の漏れが確認できた。これに対して本発明例2では、内容物の漏れが確認できなかった。このため、内嵌合部14の高さを7mm以上とすることでシワ27を介した内容物の漏れを効果的に抑制することができることが分かる。なお内嵌合部14は、5mm超とすることにより、これを7mmとする場合と同様に内容物の漏れを抑制できる。
【0039】
また図3に示すように、内嵌合部14における下側部位14aを外側に向けて拡径させ、上側部位14bを略同一径で上側に延長することにより、後段において詳述するように製造時の絞り成型においてシワ27に対して効果的にプレス荷重を付与することができる結果、よりシワ27を周方向及び各方向から更に圧縮することができる。その結果、シワ27を伝って内容物が漏れ出てしまうのを更に効果的に防止することができる。
【0040】
図9は、プレス荷重を特段付与しない通常の本発明例3と、プレス荷重を付与することで圧縮力を高めた本発明例4について、内容物の漏れ度合を検証した結果を示している。検証は、漏れ試験(N5)により行い、内容物はホットコーヒーとした。ちなみに、本発明例3におけるシワ27の最大空隙面積は4220μm2であり、本発明例4におけるシワ27の最大空隙面積は、2457μm2であった。この検証では、内容物として85℃のコーヒーを入れた紙容器2に紙蓋1を閉め、その後紙容器2を90°傾けて1分間保持し、漏れが無いかを確認する。またこの検証では、内容物の液滴が机上に落下したものを「漏れ」とみなし、また紙容器2に紙蓋1の隙間に内容物が溜まった状態で落下はしていないものを「滲み」とみなして判定を行った。滲みよりも漏れの方が性能としては優れているとみなす。また、漏れについては、液滴が机上に落下するまでの時間を測定している。
【0041】
検証の結果、本発明例3は、漏れ試験(N5)の結果、漏れが4/5(平均41.8秒)であり、滲みが1/5であった。これに対して、本発明例4は、漏れが1/5(50秒)であり、滲みが3/5であった。このため、本発明例4の方が内容物の漏れ抑制効果が向上していることが分かる。
【0042】
このようにシワ27を形成しておくことにより、紙容器2中の内容物の漏れ出し抑制効果に加え、シワ27を周方向に向けて自在に開かせることが可能となり、環状凹部20自体を拡径自在に構成することができる。このため、以下に説明する効果をも奏することとなる。
【0043】
通常生産される紙容器2は、外径(内径)の寸法が決まっているが、公差が存在しており、0.5~1mm程度の寸法差が生じる。仮に内径の小さい紙容器2に対しても、拡径自在に構成された環状凹部20を拡径させることで、容易に紙蓋1を嵌合させることが可能となる。即ち、事前にシワ27を導入しておくことで、内径の小さい紙容器2に対する嵌合時においても余分なシワが新たに入るのを防ぐことができ、その余分なシワを伝って内容物が漏れ出てしまうのを防止することができる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば図10(a)に示すように、外篏合部16には、外側に屈曲する屈曲部31が形成されていてもよい。図10(b)は、この図10(a)の点線で囲まれる領域の拡大図であるが、この屈曲部31は、外篏合部16における外面及び内面を点P1を中心にして外側に折り曲げ、次に折り曲げられた外面及び内面を点P2を中心に折り返し、更にこの折り返された外面及び内面を点P3において折り曲げることにより、屈曲させた形状を形成することができる。
【0045】
このような屈曲部31は、外篏合部16において形成されているシワ27と交差するように形成される。特に周方向に圧縮させたシワ27は、図11(a)に示すように元に戻ろうとする。これに対して、シワ27に対してこの屈曲部31を交差するように形成させることにより、図11(b)に示すように、周方向に圧縮させてなるシワ27が戻ろうとするのを、この屈曲部31により抑制することができる。シワ27は、少なくとも環状凹部20を形成する、内篏合部14、頂部15、外篏合部16に至るまで連続していることから、外篏合部16に形成された屈曲部31を介して、これに交差するシワ27について、連続する内篏合部14に至るまで、圧縮方向と反対側に戻ろうとするのを抑制できる。
【0046】
従って、内嵌合部14におけるシワ27が周方向に戻ろうとするのを、この屈曲部31を介して抑制できる結果、この内嵌合部14におけるシワ27は周方向に圧縮された状態を維持することが可能となる。その結果、この内嵌合部14におけるシワ27を伝って紙容器2の内容物が漏れ出てしまうのを防止することができる。
【0047】
なお、この屈曲部31は、シワ27が周方向内側に向けて圧縮されていない場合であっても、シワ27自体が開こうとする力を屈曲部31を介して抑制することができる面において有利な効果がある。
【0048】
また屈曲部31を設ける場合には、天板部11の周囲にある被包部12、外延部13の構成が省略されるものであってもよい。かかる場合には、天板部11の外周が直接内嵌合部14の下側部位14aの下端に接続される構成となる。
【0049】
この屈曲部31の位置は、例えば図12に示すように、環状凹部20に紙容器2を嵌合させる際において、紙容器2の上端のカール部28の下側に接触可能な位置に形成されることが望ましい。即ち、この屈曲部31を外側に屈曲させることにより、P1を中心にして折り曲げられた内面が内側31aに隆起する場合がある。この隆起させた内面31aにより、紙容器2のカール部28を係止させることができ、紙蓋1を安定した状態で嵌合させることが可能となる。
【0050】
なお、紙蓋1を安定した状態で嵌合させるためには、図13(a)に示すように外篏合部16において内側に屈曲する屈曲部32を形成するようにしてもよい。屈曲部32の詳細な構成は、屈曲部31と同様であるため、以下での説明を省略する。この屈曲部32は、例えば図13(a)に示すように、環状凹部20に紙容器2を嵌合させる際において、紙容器2のカール部28の下側に接触可能な位置形成させる。これにより、屈曲部32により、紙容器2のカール部28を係止させることができ、紙蓋1を安定した状態で嵌合させることが可能となる。図13(b)は、内側に屈曲する屈曲部32の他の実施形態を示す図である。この実施形態では、図13(a)において断面三角形状に構成される屈曲部32を押し潰した形状に仕上げた例である。この押し潰された屈曲部31を介して紙容器2のカール部28をより安定的に係止させることができる。なお、この形態では、カール部17の構成を省略してもよく、また、内嵌合部14は、鉛直方向に立設しているが、これに限定されるものではない。
【0051】
次に、本発明を適用した紙蓋1の製造方法の一例を説明する。
【0052】
(紙蓋1の製造方法)
<加工機の一例>
図14は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造に使用可能な加工機の一例を示す模式断面図である。
【0053】
加工機100は、例えばプレス機である。例えば、図14に示されるような加工機100を使用することで、ブランク10から、環状凹部20を備えた紙蓋1を、製造することができる。
【0054】
加工機100は、ドローダイ110と、ブランクホルダー120と、ドローパンチ130と、プランジャー140と、第2サイドホルダー150と、第1サイドホルダー160とを備えている。なお、加工機100においては、ドローダイ110、ブランクホルダー120の外側においてさらに載置台170が設けられている。なお、図14は、この加工機100の断面形状を示すものであり、このような断面形状が周方向に向けて形成されている。
【0055】
実際にこの紙蓋1を加工機100により製造する上で、先ずブランク10をプランジャー140の載置面142、ドローダイ110の載置面112、載置台170上に載置する。
【0056】
次に図15(a)に示すように、ブランクホルダー120、ドローパンチ130、第1サイドホルダー160を下降方向ZDに移動させ、ドローダイ110、プランジャー140、第2サイドホルダー150との間でブランク10を押さえる。そして、このブランクを押さえた状態でドローダイ110と、ブランクホルダー120と、ドローパンチ130と、プランジャー140と、第2サイドホルダー150と、第1サイドホルダー160を下降方向ZDへ押し下げる。これにより、載置台170により囲まれる空間において、ブランク10を挟み込んだドローダイ110と、ブランクホルダー120と、ドローパンチ130と、プランジャー140と、第2サイドホルダー150と、第1サイドホルダー160とが下降方向ZDへ下がっていく。その結果、ブランク10は、載置台170とブランクホルダー120との間で打ち抜かれ、ブランク10を平面視で略円形状に構成することが可能となる。
【0057】
ドローダイ110は、ガイドホール111と、載置面112とを有する。ガイドホール111は、例えば、円形のホールである。載置面112は、ガイドホール111の外側に設けられている。載置面112は、ブランクホルダー120と向き合う。載置面112は、ブランク10を載置することが可能な面である。また、ドローダイ110における載置面112と、ガイドホール111との交点において、丸溝状のカーリング部115が設けられている。
【0058】
ブランクホルダー120は、ガイドホール121と、押さえ面122とを有する。ガイドホール121は、円形のホールである。押さえ面122は、ガイドホール121の外側に設けられている。押さえ面122は、載置面112と向き合う。ブランクホルダー120は、載置面112上に載置されたブランク10を押さえる。また、ブランクホルダー120におけるガイドホール121と押さえ面122との交点において、丸溝状のカーリング部125が設けられている。
【0059】
ドローパンチ130は、ガイドホール121内を、上昇方向ZU及び下降方向ZDのそれぞれの方向に移動可能である。上昇方向ZU及び下降方向ZDのそれぞれは、載置面112と交差、例えば、直交する。下降方向ZDは、上昇方向ZUと反対向きである。ドローパンチ130の先端部分には、パンチ面132が形成される。パンチ面132は、平坦な面で形成されブランク10を押さえる。またドローパンチ130は、上昇方向ZU側に位置する第1側周面131aと、下降方向ZD側に位置する第2側周面131bが形成されている。
【0060】
プランジャー140は、ガイドホール111内を、上昇方向ZU及び下降方向ZDのそれぞれの方向に移動可能である。プランジャー140の先端部分には、載置面142が設けられている。載置面142は、パンチ面132と対向する。載置面142の直径D1は、ドローパンチ130のパンチ面132の直径D2以下となる。またプランジャー140には側周面141が形成されている。
【0061】
第2サイドホルダー150は、その側周面151をガイドホール111に周接しつつ、ガイドホール111内を、上昇方向ZU及び下降方向ZDのそれぞれの方向に移動可能である。第2サイドホルダー150は、その上端において環状突起部152が形成され、更にその環状突起部152の外側において当該環状突起部152の先端から下側に向けて段差が設けられた段差部153が設けられている。
【0062】
第1サイドホルダー160は、その側周面161をガイドホール121に周接しつつ、ガイドホール121内を、上昇方向ZU及び下降方向ZDのそれぞれの方向に移動可能である。第1サイドホルダー160は、その下端において環状突起部162が形成され、更にその環状突起部162の外側において当該環状突起部162の先端から上側に向けて段差が設けられた段差部163が設けられている。
【0063】
なお、上述したドローダイ110と、ブランクホルダー120と、ドローパンチ130と、プランジャー140と、第2サイドホルダー150と、第1サイドホルダー160の上昇方向ZU及び下降方向ZDの移動は何れも図示しないエアシリンダにより行うがこれに限定されるものではなく、他の周知のいかなる駆動手段を用いるようにしてもよいことは勿論である。
【0064】
次に図15(b)に示すようにドローパンチ130と、プランジャー140のみを下降方向ZDに押し下げる。その間、ブランク10の周縁領域は、ドローダイ110及びブランクホルダー120により挟持することにより押さえている。その結果、ブランク10は、下降方向ZDに向けて伸張することとなり、ブランク10の中央領域を押し込む結果、天板部11及び被包部12に相当する外観形状が形成されることとなる。
【0065】
次に図16(a)に示すように、ドローダイ110と、ブランクホルダー120、第1サイドホルダー160を下降方向ZDに押し下げる。これにより第1サイドホルダー160における環状突起部162が、第2サイドホルダー150における段差部153に嵌合し、また、第2サイドホルダー150における環状突起部152が、第1サイドホルダー160における段差部163に嵌合するように互いに近接することとなる。その結果、ブランク10は、これらの環状突起部162と段差部153、及び環状突起部152と段差部163との近接形状に応じて変形する結果、上述した外延部13及び内嵌合部14に相当する外観形状が形成されることとなる。即ち、この工程においては、第2サイドホルダー150における環状突起部152の分に応じて、被包部12の外周から外側から離間した領域から第1サイドホルダー160における環状突起部162により押し込むことで、ちょうど外延部13に応じた形状が形成される。
【0066】
次に図16(b)に示すように、ドローダイ110と、ブランクホルダー120のみを上昇方向ZUに向けて上昇させる。その結果、ブランク10の端部は、ドローダイ110のガイドホール111と、第1サイドホルダー160の側周面161との間に挟持された状態で上昇方向ZUに向けて成型される。その結果、頂部15及び外嵌合部16に相当する外観形状が形成されることとなる。即ち、この工程においては、第2サイドホルダー150における段差部153の分に応じて、内嵌合部14の外周から外側から離間した領域からドローダイ110により押し込むことで、ちょうど頂部15に応じた形状が形成される。
【0067】
次に図17(a)に示すようにドローダイ110と、ブランクホルダー120のみを下降方向ZDに向けて下降させる。又は、プランジャー140、第1サイドホルダー160、第2サイドホルダー150、ドローパンチ130を上昇方向ZUに向けて上昇させる。その結果、上昇方向ZUに向けて成型されたブランク10の端部は、ちょうど丸溝状のカーリング部115、カーリング部125に入り込む。そして、ドローダイ110と、ブランクホルダー120が徐々に下降していくにつれてブランク10の端部は、カーリング部115、カーリング部125の丸溝形状に沿って変形する結果、カール部17が形成されることとなる。これにより、ブランク10から本発明を適用した紙蓋1を製造することができる。
【0068】
次に図17(b)に示すように、ドローパンチ130を上昇方向ZUに移動させることにより、ブランク10から離間させる。更に、ドローダイ110及び第2サイドホルダー150を下降方向ZDに向けて下降させ、完成した紙蓋1を搬出する。
【0069】
上述した工程を経ることにより製造する紙蓋1の製造方法によれば、紙蓋1の特徴的な部分といえる天板部11及び被包部12による上側に膨出した、いわゆるドーム形状となるような成型を実現することができる。即ち、図15(b)に示すようにドローパンチ130と、プランジャー140のみを下降させることで天板部11及び被包部12に相当する形状を作り出し、その後に、図16(a)に示すように外延部13及び内嵌合部14の形状を作り出すことで実現することができる。このような工程を経た後、図17(a)に示すように、ドローダイ110と、ブランクホルダー120の押し下げを通じて、又は、プランジャー140、第1サイドホルダー160、第2サイドホルダー150、ドローパンチ130の上昇方向ZUへの上昇を通じて、丸溝形状のカーリング部115、カーリング部125を介してカール部17を形成することができ、しかもこれらの特徴的な形状を、加工機100による1サイクルで実現することができる。
【0070】
なお、本発明においては図16(a)に示す内嵌合部14を成型する工程において、図18に示すように、第1サイドホルダー160における環状突起部162の根本部分においてテーパー面162aを設け、また第2サイドホルダー150における環状突起部152における上端近傍部分において、テーパー面152aを設けている。テーパー面162aは、環状突起部162から段差部163に至る根本部分のみ傾斜させることで構成されている。テーパー面152aは、環状突起部152における上端近傍のみを傾斜させることで構成されている。第2サイドホルダー150と、第1サイドホルダー160を近接させることにより、これらテーパー面152a、テーパー面162aが互いに対向するようになり、これらに挟持されるブランク10は、テーパー面152a及びテーパー面162aの傾斜に沿って変形することとなる。その結果、図3に示すように、内嵌合部14において、下側部位14aが外側に向けて拡径され、下側部位14aよりも上側にある上側部位14bが略同一径で上側に延長される形態を成型することが可能となる。
【0071】
実際にこのようなテーパー面162a、152aを形成した状態で、第1サイドホルダー160を下降方向ZDに押し下げることにより、荷重のベクトル方向は下降方向ZDから、図18中矢印に示すようにブランク10の厚み方向への荷重ベクトルに分解することができる。その結果、上述した絞り成型の過程において発生したブランク10内のシワ27が圧縮され、また周方向内側に向けても圧縮されることとなる。その結果、ブランク10の厚み方向への荷重ベクトルに基づいてシワ27への圧縮力を高めることで、図9に示す本発明例4の如く最大空隙面積をより小さくすることができ、内容物の漏れを強固に抑えることが可能となる。
【0072】
図19は、上述した絞り成型方法に基づいて実際に成型した紙蓋1の紙厚を測定した例を示している。元のブランク10の紙厚が0.32mmであるのに対して、天板部11から被包部12、外延部13へと紙厚が厚くなってくる。これは絞り成型に基づいて生じたシワ27が寄ることによる影響によるものであり、シワ27に応じて紙厚が厚くなっている。一方で内嵌合部14における特に下側部位14aでは、紙厚がより薄くなる。第1サイドホルダー160を下降方向ZDに押し下げることによる絞り成型の過程でこの内嵌合部14における下側部位14aに圧縮力が付与される結果、紙厚自体が薄くなる。このとき、上述のようなテーパー面162a、152aを形成した状態で、第1サイドホルダー160を下降方向ZDに押し下げることにより、ブランク10の厚み方向への荷重ベクトルがより負荷される結果、この下側部位14aの紙厚が薄くなり、しかもその紙厚の自体を略均等にすることが可能となる。さらにこの内嵌合部14における下側部位14aに圧縮力を以って紙厚を薄くすることで当該下側部位14a自体を硬くすることができ、その結果、内嵌合部14の下側部位14aから紙容器2の容器部内周面21に対する押圧力をより負荷しやすくなり、紙容器2内における液体状の内容物が漏れ出てしまうのを効果的に抑制できる。この下側部位14aとは別の上側部位14bや頂部15は、下側部位14aよりも紙厚が厚くなる。しかし、この紙厚の薄い下側部位14aに対して絞り成型においてより荷重をかけることで、他の紙厚の厚い部分に荷重をかけないようにすることで当該部分が破れてしまうのを防止できる。
【0073】
また内嵌合部14における特に下側部位14aに紙の厚み方向への圧縮力がかかる結果、シワ27についても深さ方向への圧縮力がかかる。その結果、内嵌合部14の下側部位14aのシワ27が最も浅くなり、内嵌合部14の上側部位14b、頂部15、外嵌合部16は、そのシワの深さが深くなる。内嵌合部14の下側部位14aにおいてシワ27を浅くすることで、同様に紙容器2内における液体状の内容物が漏れ出てしまうのを効果的に抑制できる。なおシワ27の深さは、下側部位14aか、上側部位14bかに関わらず、少なくとも内嵌合部14が、他の頂部15、外嵌合部16よりも浅ければ同様の効果が発現する。
【0074】
また、外篏合部16において外側に屈曲する屈曲部31を形成する場合には、図17(a)に示すカール部17を形成する工程において、図20(a)に示す形状からなるドローダイ110´を利用する。このドローダイ110´において、図20(a)中の点線で囲まれた領域を拡大表示したものが、図20(b)である。このドローダイ110´は、カーリング部115について、ブランク10の端部10aを当接可能な当接面115aを形成している。ブランク10の端部10aをカーリング部115の当接面115aに当接させた状態で、ドローダイ110と、ブランクホルダー120のみを下降方向ZDに向けて下降させる。その結果、このブランク10における外嵌合部16に相当する部分は上下方向から圧縮される結果、自然に外側に向けて屈曲し、上述した屈曲部31が形成されることとなる。このとき、カーリング部115において丸溝が形成されていることで、ブランク10における外嵌合部16に相当する部分が上下方向から圧縮される結果、自然に外側に屈曲させることが可能となる。
【0075】
また図21に示すように、カーリング部115のフラットな当接面115aをより広くすることで、ブランク10の端部10aをこの当接面115aを介して係止させやすくすることができる。かかる場合においてもブランク10における外嵌合部16相当する部分を外側に屈曲可能なようにカーリング部115において僅かでも溝を形成させておくことが望ましい。
【0076】
また、外篏合部16において内側に屈曲する屈曲部32を形成する場合には、図17(a)に示すカール部17を形成する工程において、図22に示す形状からなる第1サイドホルダー160´を利用する。この第1サイドホルダー160´では、側周面161におけるドローダイ110と対向する位置において内側に向けて凹状に加工された凹部165を形成しておく。このような凹部165を形成しておくことで、ドローダイ110と、ブランクホルダー120のみを下降方向ZDに向けて下降させた際に、ブランク10の端部10aが、ブランクホルダー120のカーリング部125を介して押圧される結果、ブランク10における外嵌合部16に相当する部分は上下方向から圧縮され、唯一押さえが効いていない凹部165において逃げようとする。その結果、この凹部165において内側に屈曲した屈曲部32を形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
1 紙蓋
2 紙容器
10 ブランク
10a 端部
11 天板部
11a 天面
11b 容器面
12 被包部
13 外延部
14 内嵌合部
14a 下側部位
14b 上側部位
15 頂部
16 外嵌合部
17 カール部
20 環状凹部
21 容器部内周面
27 シワ
28 カール部
31、32 屈曲部
100 加工機
110 ドローダイ
111 ガイドホール
112 載置面
115 カーリング部
115a 当接面
120 ブランクホルダー
121 ガイドホール
125 カーリング部
130 ドローパンチ
132 パンチ面
140 プランジャー
141、151、161 側周面
142 載置面
150、160 サイドホルダー
152、162 環状突起部
153、163 段差部
165 凹部
170 載置台
OEP 周縁部
図1
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図21
図22