(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107718
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】シャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
A47K 3/28 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011800
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄真
【テーマコード(参考)】
2D132
【Fターム(参考)】
2D132FA01
2D132FJ17
2D132FJ22
2D132FJ25
2D132FJ28
2D132FJ31
2D132FJ35
(57)【要約】
【課題】パッキンと水路形成部との間にパッキンを固定するための固定部材を要することなく、水路の選択を行う。
【解決手段】シャワーヘッドは、放出部と、放出部よりも上流側に配置され、第1の水路と第2の水路とが形成された水路形成部と、水路形成部の下流側と水路形成部の上流側との少なくとも一方に配置され、第1の水路と第2の水路とを選択的に封止する選択部と、を備える。選択部は、パッキンと、パッキンを、第1の水路を封止する第1の封止位置と、第2の水路を封止する第2の封止位置との間で移動させる移動機構と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出部と、
前記放出部よりも上流側に配置され、第1の水路と第2の水路とが形成された水路形成部と、
前記水路形成部の下流側と前記水路形成部の上流側との少なくとも一方に配置され、前記第1の水路と前記第2の水路とを選択的に封止する選択部と、を備え、
前記選択部は、
パッキンと、
前記パッキンを、前記第1の水路を封止する第1の封止位置と、前記第2の水路を封止する第2の封止位置との間で移動させる移動機構と、
を有する、シャワーヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のシャワーヘッドであって、
前記水路形成部は、前記第1の水路の開口と前記第2の水路の開口とを繋ぐ平坦面を有し、
前記移動機構は、前記パッキンを前記平坦面に沿って移動させる構成である、シャワーヘッド。
【請求項3】
請求項1に記載のシャワーヘッドであって、
前記移動機構は、
さらに、前記パッキンを前記水路形成部側に付勢する付勢部材を有する、シャワーヘッド。
【請求項4】
請求項1に記載のシャワーヘッドであって、
前記移動機構は、
移動アームであって、前記移動アームの一端部が所定の軸を中心に回転可能に支持されるとともに前記移動アームの他端部側が揺動可能とされ、前記一端部と前記他端部との間に前記パッキンを保持する保持部を有する移動アームと、
前記パッキンが前記第1の封止位置にあるときと前記第2の封止位置にあるときとで、それぞれ、前記移動アームの前記他端部を係止するロック機構と、を有する構成である、シャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、シャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の水路を有し、互いに異なる水路を介して水を放出する複数のモードを選択的に実行可能なシャワーヘッドが知られている。複数のモードには、例えばシャワーヘッドの水路に流れている水に外部より空気を取り込むことにより、泡沫を含んだ水を放出するモードと、相対的に水圧が高く、勢いのある水を放出するモードとが含まれる。
【0003】
この種のシャワーヘッドは、放出部と、水路形成部と、選択部とを備える。放出部には、複数の放出孔が形成されている。水路形成部は、放出部の上流側に配置されている。水路形成部には、例えば第1の水路と第2の水路とが形成されている。選択部は、例えば放出部と水路形成部との間に配置されている。選択部は、水路形成部に形成された第1の水路と第2の水路とを選択的に封止するよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、従来のシャワーヘッドの選択部は、2つの環状のパッキンと、固定部材と、金属の球と、移動機構とを有する。2つのパッキンは、水路形成部における第1の水路と第2の水路とのそれぞれの開口端に配置される。固定部材は、パッキンと水路形成部との間に配置され、パッキンを固定する。移動機構は、金属の球を、一方のパッキンの孔を封止する位置と、他方のパッキンの孔を封止する位置との間で移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のシャワーヘッドでは、パッキンと水路形成部との間にパッキンを固定するための固定部材を配置することが必須であるという課題がある。このため、例えば固定部材の存在がシャワーヘッドの小型化の障害になるなどといった不具合が生じる。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示されるシャワーヘッドは、放出部と、前記放出部よりも上流側に配置され、第1の水路と第2の水路とが形成された水路形成部と、前記水路形成部の下流側と前記水路形成部の上流側との少なくとも一方に配置され、前記第1の水路と前記第2の水路とを選択的に封止する選択部と、を備え、前記選択部は、パッキンと、前記パッキンを、前記第1の水路を封止する第1の封止位置と、前記第2の水路を封止する第2の封止位置との間で移動させる移動機構と、を有する。
【0010】
本シャワーヘッドの選択部は、パッキンと、パッキンを第1の封止位置と第2の封止位置との間で移動させる移動機構とを有する構成である。このため、本シャワーヘッドによれば、パッキンと水路形成部との間にパッキンを固定するための固定部材を要することなく、水路の選択を行うことができる。
【0011】
(2)上記シャワーヘッドにおいて、前記水路形成部は、前記第1の水路の開口と前記第2の水路の開口とを繋ぐ平坦面を有し、前記移動機構は、前記パッキンを前記平坦面に沿って移動させる構成としてもよい。本シャワーヘッドによれば、パッキンを第1の封止位置と第2の封止位置との間で円滑に移動させることができる。
【0012】
(3)上記シャワーヘッドにおいて、前記移動機構は、さらに、前記パッキンを前記水路形成部側に付勢する付勢部材を有する構成としてもよい。本シャワーヘッドによれば、付勢部材による付勢によって水路形成部に対するパッキンの密着性が高くなり、水路を効果的に封止することができる。
【0013】
(4)上記シャワーヘッドにおいて、前記移動機構は、移動アームであって、前記移動アームの一端部が所定の軸を中心に回転可能に支持されるとともに前記移動アームの他端部側が揺動可能とされ、前記一端部と前記他端部との間に前記パッキンを保持する保持部を有する移動アームと、前記パッキンが前記第1の封止位置にあるときと前記第2の封止位置にあるときとで、それぞれ、前記移動アームの前記他端部を係止するロック機構と、を有する構成としてもよい。本シャワーヘッドによれば、パッキンが各封止位置で係止されるため、パッキンが各封止位置からずれて封止性が低下することを抑制することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、シャワーヘッドおよびそのモード切替方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態におけるシャワーヘッド10の外観構成を示す斜視図
【
図5】移動アーム610と水路322,324との関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A-1.シャワーヘッド10の構成:
図1は、本実施形態におけるシャワーヘッド10の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、シャワーヘッド10の内部構成を示す断面図である。
図1、
図2および後述の各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。Z軸正方向は上方向であり、Z軸負方向は下方向であり、Y軸正方向は左方向であり、Y軸負方向は右方向であり、X軸正方向は前方向であり、X軸負方向は後方向である。
【0017】
シャワーヘッド10は、例えば「泡沫モード」と「ストレートモード」とで放出モードを切り替えて水を放出できるよう構成されている。泡沫モードは、シャワーヘッドの流水経路に流れている水に外部より空気を取り込むことにより、泡沫を含んだ水を放出するモードであり、ストレートモードは、相対的に水圧が高く、勢いのある水を放出するモードである。
【0018】
図1および
図2に示すように、シャワーヘッド10は、ヘッド本体100と、シャワープレート200とを備える。シャワープレート200は、特許請求の範囲における放出部の一例である。なお、ヘッド本体100とシャワープレート200とは、例えば樹脂(EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム))により形成されている。
【0019】
ヘッド本体100は、略球状のヘッド部分110と、そのヘッド部分110から下方に延びる略筒状の延出部分120とを有している。ヘッド部分110の内部には、収容空間112が形成されており、ヘッド部分110の前面には、収容空間112に連通する前側開口部114が形成されている(
図2参照)。また、ヘッド部分110の上面には、収容空間112に連通する上側開口部118が形成されており、この上側開口部118から後述の切り替えスイッチ150の一部が突出している。なお、ヘッド部分110の外周面には、取っ手部116が設けられている。取っ手部116は、ヘッド部分110の後面側から斜め上方向に向かって突出している。
【0020】
延出部分120の内部空間122の上端は、ヘッド部分110の収容空間112に連通している。延出部分120の下端部分には管状の接続部材124が設けられており、この接続部材124にシャワーホース126の先端部が接続される(
図1参照)。シャワーホース126の基端部は、図示しない水供給源(例えば給湯器など)に接続される。水供給源から供給される水(湯水でもよい)がシャワーホース126を通って、接続部材124の内部経路125からヘッド本体100(内部空間122、収容空間112)内に導入される。なお、接続部材124と延出部分120との間には、水漏れ防止のためのシール部材244が配置されている。
【0021】
図2に示すように、延出部分120の内部空間122には、バブル発生部130とストレーナ132とが収容されている。バブル発生部130には、複数(
図2は1つだけ図示)のバブル発生孔131が形成されている。バブル発生孔131は、シャワーホース126からヘッド部分110の内部に導入された水を通過させて泡沫(マイクロバブル等)を発生させる。具体的には、バブル発生孔131は、略円形の開口形状を有しており、シャワーホース126からの水流の上流側から下流側に向かって次第に径が大きくなるようにテーパ状に形成されている。ストレーナ132は、バブル発生部130に対して上流側に配置されている。ストレーナ132は、水供給源から供給される水から異物を除去する濾過装置である。なお、バブル発生部130と延出部分120との間には、水漏れ防止のためのシール部材246が配置されている。
【0022】
シャワープレート200は、ヘッド本体100の前側開口部114を覆うように配置されている。シャワープレート200は、全体として円形板状であり、シャワープレート200には、複数のバブル放出孔210と複数のストレート放出孔220とが形成されている。バブル放出孔210およびストレート放出孔220は、特許請求の範囲における放出孔の一例である。
【0023】
各バブル放出孔210は、泡沫モードの設定時に、シャワーホース126から導入される水を放出する孔である。複数のバブル放出孔210は、シャワープレート200の中心Pを含む中央側の領域に形成されている(
図1参照)。各バブル放出孔210は、例えば全長にわたって断面形状が同一の孔である(
図2参照)。なお、シャワープレート200の上記中央側の領域の上流側(シャワープレート200の放出方向(X軸正方向)の後方側)には、泡沫発生部230が設けられている。泡沫発生部230には、外部より空気を取り込む孔(図示しない)が形成されており、シャワーホース126からの水に空気が取り込まれる。これにより、泡沫を含んだ水が各バブル放出孔210から放出される。
【0024】
各ストレート放出孔220は、ストレートモードの設定時に、シャワーホース126から導入された水を放出する孔である。複数のストレート放出孔220は、ストレート放出孔220の外周側の領域に形成されている(
図1参照)。各ストレート放出孔220は、バブル放出孔210よりも水圧を高めて放出する構成を有している。具体的には、各ストレート放出孔220は、水流の上流側から下流側に向かって次第に径が小さくなるようにテーパ状に形成されている(
図2参照)。なお、シャワープレート200の上記外周央側の領域の上流側には、泡沫発生部230が存在しない。このため、泡沫を含まず、かつ、ストレート放出孔220によって高められた、勢いのある水が各ストレート放出孔220から放出される。
【0025】
ヘッド部分110の収容空間112には、水路形成部300と、選択部400とが収容されている。なお、水路形成部300と選択部400(後述のパッキン500と板状部材504とを除く)は、例えば樹脂(EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム))により形成されている。
【0026】
水路形成部300は、シャワープレート200の後方側(水流の上流側)に配置されている。水路形成部300には、バブル水路322と、ストレート水路324とが形成されている。バブル水路322は、泡沫モードの設定時に、シャワーホース126から導入された水を通過させる水路であり、バブル放出孔210に連通している。ストレート水路324は、ストレートモードの設定時に、シャワーホース126から導入された水を通過させる水路であり、ストレート放出孔220に連通している。バブル水路322は、特許請求の範囲における第1の水路の一例であり、ストレート水路324は、特許請求の範囲における第2の水路の一例である。
【0027】
具体的には、水路形成部300は、前側部材310と後側部材320とを有している。前側部材310は、例えば略円盤状の部材であり、シャワープレート200の後面に接触するように配置されている。バブル水路322の前端が前側部材310に開口形成されており、泡沫発生部230が配置された空間とバブル水路322とが連通している。また、ストレート水路324の前端が前側部材310に開口形成されており、ストレート水路324とストレート放出孔220とが連通している。なお、シャワープレート200と前側部材310との間には、水漏れ防止のためのシール部材240が配置されている。
【0028】
後側部材320は、例えば略円盤状の部材であり、前側部材310の後面に接触するように配置されている。なお、後側部材320の外周面とヘッド部分110の内周面との間には、水漏れ防止のためのシール部材242が配置されている。後側部材320の詳細構成については次述する。
【0029】
選択部400は、パッキン500と、移動機構600とを有している。移動機構600は、移動アーム610と、ロック機構650とを有している。
図3は、選択部400の構成部品を示す分解図である。
図3には、選択部400の構成部品と水路形成部300の後側部材320とが分解された状態が示されている。また、
図4は、選択部400の内部構成を示す断面図である。
図4には、選択部400の構成部品と水路形成部300の後側部材320とが組み付けられた状態の断面構成が示されている。
図5は、移動アーム610と水路322,324との関係を示す説明図である。
図5には、移動アーム610と水路形成部300の後側部材320とが組み付けられた状態の後面構成が示されている。
【0030】
図3および
図4に示すように、後側部材320の後面321は、放出方向(X軸方向)に略垂直な平坦面である。
図3および
図5に示すように、後側部材320の後面321には、バブル水路322の後端が開口形成されており、ストレート水路324の後端が開口形成されている。バブル水路322の開口形状とストレート水路324の開口形状とは、略同一であり、本実施形態では、略円形である。また、後側部材320の後面321には、支持部326が後方に突出するように形成されている。支持部326は、移動アーム610の基端部612を中心に揺動可能に支持する(
図5参照)。支持部326は、例えば略円筒状である。バブル水路322とストレート水路324とは、いずれも、放出方向(X軸方向)視で支持部326(回転軸L 後述の
図5参照)を中心とする同一の仮想円M(後述の
図5参照)上に配置されている。
【0031】
なお、後側部材320の後面321には、補強部323,325が形成されている。補強部323は、バブル水路322を補強するものであり、バブル水路322に交差するように配置された線状部分である。補強部323の両端部は、バブル水路322の後端開口の周囲部分に接合されている。補強部325は、ストレート水路324を補強するものであり、ストレート水路324に交差するように配置された線状部分である。補強部325の両端部は、ストレート水路324の後端開口の周囲部分に接合されている。補強部323,325は、上記一の仮想円M上に沿って延びる円弧状に形成されている。
【0032】
さらに、後側部材320の後面321には、一対のガイド壁340が形成されている。一対のガイド壁340は、バブル水路322およびストレート水路324の左右方向の外側に配置されている。各ガイド壁340は、後側部材320の後面321の周縁に沿って円弧状に延びる壁である。各ガイド壁340の内周面342は、移動アーム610の先端部614の移動を案内するガイド部として機能する。各ガイド壁340の下端面344は、移動アーム610の先端部614の移動を制限するストッパ部として機能する。
【0033】
選択部400は、水路形成部300の後方側に配置されている。選択部400は、水路形成部300に形成されたバブル水路322とストレート水路324とを選択的に封止する。
【0034】
選択部400を構成する移動機構600は、パッキン500を、バブル水路322を封止するバブル封止位置と、ストレート水路324を封止するストレート封止位置との間で移動させる(
図5参照)。
【0035】
移動機構600を構成する移動アーム610は、基端部612と、先端部614と、保持部616とを有している。基端部612は、特許請求の範囲における移動アームの一端部の一例であり、先端部614は、特許請求の範囲における移動アームの他端部の一例である。
【0036】
移動アーム610の基端部612は、移動アーム610の基端を含む部分であり、後側部材320に形成された上記支持部326に回転可能に支持される。具体的には、基端部612の前面には、支持部326に対応した円形状の凹部613が形成されている(
図4参照)。凹部613に支持部326が挿入されることにより、移動アーム610は、支持部326(水流の流れ方向に沿った回転軸L)を中心に揺動可能に支持される(
図5参照)。回転軸Lは、特許請求の範囲における所定の軸の一例である。
【0037】
移動アーム610の先端部614は、移動アーム610の先端を含む部分である。先端部614は、バブル水路322やストレート水路324に対して、基端部612とは反対側に配置される(
図5参照)。
【0038】
保持部616は、移動アーム610の長手方向において基端部612と先端部614との間に位置する。保持部616は、パッキン500を保持する。具体的には、保持部616の前面には、保持凹部617が開口形成されている。保持凹部617には、パッキン500とコイルバネ510とが収容される。コイルバネ510は、特許請求の範囲における付勢部材の一例である。
【0039】
パッキン500は、例えばゴム等の弾性材料により形成されている。パッキン500は、例えば移動アーム610の長手方向に延びる長円状である。保持凹部617の形状も、パッキン500の形状に対応した長円状である。このため、パッキン500が保持凹部617内で回転することが抑制される。
【0040】
コイルバネ510は、パッキン500を水路形成部300側に付勢する。具体的には、コイルバネ510は、放出方向(X軸方向)においてパッキン500の後面と保持部616の保持凹部617の底面との間に配置される。コイルバネ510は、後側部材320の後面321に対して略垂直な方向(放出方向(X軸方向))に圧縮した状態で配置されることにより、パッキン500を後側部材320の後面321に押しつける。このとき、パッキン500の前面と、後側部材320の後面321とはいずれも平坦面であるため、パッキン500は後面321に対して面接触する。
【0041】
なお、パッキン500の後面には、環状の溝502が形成されている(
図3参照)。一方、保持凹部617の底面には、支持凸部619が形成されている(
図4参照)。コイルバネ510の前端部は、パッキン500の溝502に挿入され、コイルバネ510の後端部内には、保持部616の支持凸部619が挿入される。これにより、コイルバネ510は、放出方向に沿った姿勢が維持されている。なお、溝502の底面には、環状の板状部材504が配置されている。板状部材504は、パッキン500よりも硬度が高い材料(例えば金属)により形成されている。このため、コイルバネ510がパッキン500に食い込んでコイルバネ510による付勢力が低減することを抑制することができる。
【0042】
また、移動アーム610には、基端部612から後方に延びる係合突出部618が設けられている。係合突出部618の先端部は、切り替えスイッチ150に形成された係合孔152に係合している(
図2参照)。このため、切り替えスイッチ150のうち、ヘッド本体100の上側開口部118が突出した部分(
図1参照)を、回転軸Lを中心とする周方向にスライドさせることにより、移動アーム610の保持部616に保持されたパッキン500を移動させることができる。なお、係合突出部618の外周面とヘッド部分110との間には、水漏れ防止のためのシール部材248が配置されている(
図2および
図3参照)。
【0043】
ロック機構650は、パッキン500がバブル封止位置にあるときとストレート封止位置(
図5参照)にあるときとで、それぞれ、移動アーム610を係止する。具体的には、ロック機構650は、押さえ板652と、ロックピン654と、ロック用バネ656とを有している(
図4参照)。
【0044】
押さえ板652は、移動アーム610の先端部614および保持部616の移動経路を覆うように配置される。押さえ板652の前面には、一対の係止凹部651が形成されている。一方の係止凹部651は、放出方向においてバブル水路322と対向する位置に形成されており、他方の係止凹部651は、放出方向においてストレート水路324と対向する位置に形成されている。
【0045】
一方、移動アーム610の先端部614の後面には、収容孔615が形成されている。収容孔615には、ロックピン654が進退可能に収容されている。ロック用バネ656は、例えばコイルバネであり、ロックピン654と収容孔615の底面との間に圧縮状態で配置されており、ロックピン654を押さえ板652の前面側に付勢する。
【0046】
このような構成により、例えばパッキン500がストレート封止位置にあるとき(
図4および
図5参照)、ロック用バネ656の付勢力によって、ロックピン654の先端部が押さえ板652の係止凹部651内に進入することにより、パッキン500がストレート水路324を封止した状態で移動アーム610の移動がロックされる。これにより、シャワーヘッド10は、泡沫モードで水を放出する。
【0047】
次に、切り替えスイッチ150を操作して、パッキン500がバブル封止位置側に向かうように移動アーム610を揺動させる。すると、ロック用バネ656の付勢力に抗して、ロックピン654の先端部が押さえ板652の係止凹部651から抜けて、移動アーム610のロックが解除される。その後、パッキン500がバブル封止位置に到達すると、ロックピン654の先端部が押さえ板652の係止凹部651内に進入し、パッキン500がバブル水路322を封止した状態で移動アーム610の移動がロックされる。これにより、シャワーヘッド10は、ストレートモードで水を放出する。なお、押さえ板652は、移動アーム610のうち、保持部616の後面に接触してパッキン500を前側部材310の後面321に向けて押圧する(
図4参照)。
【0048】
A-2.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のシャワーヘッド10は、シャワープレート200と水路形成部300と選択部400とを備える。水路形成部300には、バブル水路322とストレート水路324とが形成されている。選択部400は、パッキン500と移動機構600とを有する。移動機構600は、パッキン500を、バブル水路322を封止するバブル封止位置と、ストレート水路324を封止するストレート封止位置との間で移動させる(
図5参照)。このため、本実施形態によれば、パッキン500と水路形成部300との間にパッキン500を固定するための固定部材を要することなく、水路の選択を行うことができる。その結果、本実施形態では、固定部材が不要な分だけ、例えば選択部の部品点数の低減やコンパクト化を図ることができる。
【0049】
本実施形態では、移動機構600は、パッキン500を、水路形成部300の平坦な後面321に沿って移動させる(
図5参照)。このため、パッキン500は、バブル封止位置とストレート封止位置との間で円滑に移動させることができる。その結果、シャワーヘッド10から水が放出され、ヘッド本体100内に水圧が発生した状態でも、切り替えスイッチ150の操作負担を軽減することができる。
【0050】
本実施形態では、パッキン500がコイルバネ510によって水路形成部300側に付勢される(
図4参照)。このため、本実施形態によれば、コイルバネ510による付勢によって水路形成部300に対するパッキン500の密着性が高くなり、各水路322,324を効果的に封止することができる。
【0051】
例えば金属の球を、環状のパッキンの孔に入れて水路を封止する構成では、金属の球がパッキンに点接触しつつ移動するため、パッキンが損傷しやく、その結果、水路の封止性が低下するおそれがある。これに対して、本実施形態では、パッキン500が、樹脂で形成された水路形成部300(前側部材310)に接触することによって各水路322,324が封止される構成である。このため、パッキン500の損傷が抑制される。しかも、本実施形態では、上述したように、パッキン500が水路形成部300に面接触して各水路322,324を封止する構成であるため、パッキン500と水路形成部300との密着性が高く、各水路322,324の封止性を向上させることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、ヘッド本体100に取っ手部116が設けられている。このため、ユーザは、取っ手部116を2本の指で挟みつつ、ヘッド部分110を握るように把持することができる。また、選択部400が水路形成部300の後方側に配置されており、それに伴い、切り替えスイッチ150がヘッド部分110の後方側に配置されている。そのため、ユーザは、ヘッド部分110を把持した手の指先で切り替えスイッチ150の切り替え操作を容易に行うことができる。
【0053】
また、パッキン500は、水路形成部300の後面321において、補強部323,325の上を移動する。このため、補強部323,325によって、パッキン500を、各水路322,324の開口端に引っかかることなく円滑に移動させることができる。
【0054】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0055】
上記実施形態におけるシャワーヘッド10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態のシャワーヘッド10における各部の形状や寸法、形成材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0056】
シャワーヘッド10は、例えば、取っ手部116、バブル発生部130、泡沫発生部230や切り替えスイッチ150等を有しない構成でもよい。切り替えスイッチ150を有しない構成では、例えば移動機構は、切り替えスイッチ150の代わりにシャワープレート200の周囲にダイヤル式の部材を設け、その部材の回転操作によってパッキンを移動させる構成でもよし、外部指示を受信して自動でパッキンを移動させる構成でもよい。移動機構は、揺動する移動アームを有する構成に限らず、例えば所定方向に直線的に移動するスライド部材がパッキンを保持する構成でもよい。
【0057】
上記実施形態において、シャワープレート200におけるバブル放出孔210とストレート放出孔220との配置関係は、上記実施形態の配置関係に限定されず、例えば、ストレート放出孔220が中央側の領域に配置され、バブル放出孔210が外周側の領域に配置されてもよい。
【0058】
上記実施形態では、選択部400が水路形成部300の後方側に配置された構成であったが、選択部が水路形成部300の前方側(下流側 シャワープレート200と水路形成部300との間)に配置された構成や、選択部が水路形成部300の前方側と後方側(下流側)との両方に配置された構成でもよい。このような構成では、選択部は、水路形成部300の前面に開口形成された各水路の前端をパッキンにより選択的に封止する構成となる。また、このような構成では、バブル発生部は、シャワープレート200のバブル放出孔210と、水路形成部300のバブル水路322との両方に連通する経路内に配置されることが好ましい。また、選択部および水路形成部は、シャワープレート200の後方側に限らず、例えばヘッド本体100の延出部分120に配置された構成でもよい。
【0059】
上記実施形態において、水路形成部300の後面321は、平坦面でなくてもよい。バブル水路322やストレート水路324の開口形状は、円形に限らず、楕円や多角形等でもよい。上記実施形態では、水路形成部として、2つの水路を有する水路形成部300を例示したが、例えば3つ以上の水路を有する水路形成部でもよい。例えば、水路形成部は、3つの水路を有し、そのうちの2つの水路が選択的に封止され、残りの1つが常に開放された構成や、3つの水路を有し、1つ目の水路が開放され、2つ目および3つ目の水路が封止された状態から、2つ目の水路が開放され、1つ目および3つ目の水路が封止された状態に変位する構成などでもよい。
【0060】
上記実施形態において、パッキン500が水路形成部300に点接触または線接触して各水路322,324を封止する構成でもよい。パッキン500の形状は、長円状に限らず、円形、球形や多角形等でもよい。また、上記実施形態では、コイルバネ510とロック用バネ656とは、いずれもコイルバネであったが、所定の方向に付勢する付勢部材であればよく、例えば板バネや弾性変形可能な部材などでもよい。
【0061】
上記実施形態では、ロック機構として、ロックピン654が係止凹部651に進入することでロックするロック機構650を例示したが、例えば移動アーム610と押さえ板652(または水路形成部300)との一方の部材に係止爪を設けて、その係止爪が他方の部材の所定の部位に係ることによってロックする構成でもよい。
【符号の説明】
【0062】
10:シャワーヘッド 100:ヘッド本体 110:ヘッド部分 112:収容空間 114:前側開口部 116:取っ手部 118:上側開口部 120:延出部分 122:内部空間 124:接続部材 125:内部経路 126:シャワーホース 130:バブル発生部 131:バブル発生孔 132:ストレーナ 150:切り替えスイッチ 152:係合孔 200:シャワープレート 210:バブル放出孔 220:ストレート放出孔 230:泡沫発生部 240,242,244,246,248:シール部材 300:水路形成部 310:前側部材 320:後側部材 321:後面 322:バブル水路 323,325:補強部 324:ストレート水路 326:支持部 340:ガイド壁 342:内周面 344:下端面 400:選択部 500:パッキン 502:溝 504:板状部材 510:コイルバネ 600:移動機構 610:移動アーム 612:基端部 613:凹部 614:先端部 615:収容孔 616:保持部 617:保持凹部 618:係合突出部 619:支持凸部 650:ロック機構 651:係止凹部 652:押さえ板 654:ロックピン 656:ロック用バネ L:回転軸 M:仮想円 P:中心