(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107728
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
A47J27/00 109L
A47J27/00 109G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011812
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】平川 功
(72)【発明者】
【氏名】井岡 葵
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA01
4B055BA31
4B055BA66
4B055CD02
4B055GB08
4B055GB09
4B055GB45
4B055GC38
4B055GD02
4B055GD05
(57)【要約】
【課題】連続して調理を行った場合も適切に調理することができる加熱調理器を実現する。
【解決手段】加熱調理器(1)は、内鍋(21)と、内鍋を加熱するヒータ(65)と、内鍋を覆う内蓋(33)と、連続した調理であるかを判断する連続調理判定部(61a)と、調理制御部(61b)と、を備え、加熱の開始時に実行される第1加熱工程と、第1加熱工程の後に実行されるヒータの出力が第1加熱工程よりも低い第2加熱工程と、を有し、調理制御部は、連続した調理である場合と連続した調理でない場合とで、制御シーケンスを変更する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内鍋を有する調理器本体と、
上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記調理器本体に対して開閉し、閉状態において上記内鍋を覆う蓋体と、
連続した調理であるかを判断する連続調理判定部と、
調理制御部と、を備え、
前記加熱の開始時に実行される第1加熱工程と、前記第1加熱工程の後に実行される前記加熱部の出力が前記第1加熱工程よりも低い第2加熱工程と、を有し、
前記調理制御部は、連続した調理である場合と連続した調理でない場合とで、加熱開始時における、前記第1加熱工程および前記第2加熱工程を行うための制御シーケンスを変更する加熱調理器。
【請求項2】
上記蓋体に備えられ、蓋体近傍の温度を検出する第1温度センサと、
上記調理器本体に備えられ、前記内鍋の温度を検出する第2温度センサと、を備え、
前記調理制御部は、
連続した調理でない場合、前記第1温度センサによる検出温度に基づいて第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換え、
連続した調理である場合、前記第2温度センサによる検出温度に基づいて第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換える、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
上記蓋体に備えられ、蓋体近傍の温度を検出する第1温度センサを備え、
前記調理制御部は、
連続した調理でない場合、前記第1温度センサによる検出温度が第1温度に到達すると第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換え、
連続した調理である場合、前記第1温度センサによる検出温度が第1温度よりも高い第2温度に達すると第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換える、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
上記蓋体に備えられ、蓋体近傍の温度を検出する第1温度センサを備え、
前記調理制御部は、
連続した調理でない場合、前記第1温度センサによる検出温度が第1温度に到達すると第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換え、
連続した調理である場合、前記第1温度センサによる検出温度が所定温度以下になるまで加熱を開始せず、所定温度以下になってから加熱を開始する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項5】
上記蓋体に備えられ、蓋体近傍の温度を検出する第1温度センサを備え、
前記調理制御部は、
調理開始時に、上記加熱部によって第1加熱工程を開始し、
連続した調理でない場合、前記第1温度センサによる検出温度が第1温度に到達すると第1加熱工程から第2加熱工程へと切り替え、
連続した調理である場合、前記第1温度センサによる検出温度が所定温度以下になった後、前記第1温度センサによる検出温度に基づいて第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換える、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記連続調理判定部は、前回の調理終了時点から所定の時間が経過していなかった場合に、連続調理と判断する、請求項1から5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
さらに第3温度センサを備え、
前記第3温度センサが所定の閾値を上回る場合に、連続調理と判断する、請求項2から5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記第1温度センサの検出温度が前記第3温度センサの検出温度よりも所定の値以上大きい場合に、連続調理と判断する、請求項7に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を加熱調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内鍋の内部に収容した食材(内容物)を加熱して調理する加熱調理器が知られている。加熱調理器は、内鍋が収容される調理器本体と、内鍋に蓋をする蓋体とを備える。蓋体は内蓋を有し、調理器本体に対して蓋体を閉じることにより内鍋は内蓋によって蓋をされる。
【0003】
このような加熱調理器においては、自動調理のための種々の調理メニューが記憶部に記憶されている。ユーザは、内鍋に食材を投入して蓋をし、調理メニューを選択することで自動調理を行わせることができる。調理メニューにはそれぞれ、順番に実行する複数のステージが設定されている(例えば、特許文献1,2)。
【0004】
調理メニューにおける、加熱部の出力を調整するステージ間の遷移は、蓋体に備えられている蓋温度センサの検出温度が、予め設定されている遷移温度に到達した時点で実施される。例えば、調理開始時に食材の温度を急速に上げる加熱ステージから、沸騰を維持するような煮込みステージへの遷移は、蓋体に備えられている蓋温度センサが遷移温度を検出すると実施される。蓋温度センサは、蓋体に備えられているため、その検出温度は内鍋の温度に比べて低くなる。遷移温度は、このような内鍋の温度との差を考慮して設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6754173号公報
【特許文献2】特開2020-124291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような加熱調理器においては、連続して調理を行う場合、ある程度の時間をおいて加熱調理器を冷ましてから実施する必要がある。これは、蓋温度センサが遷移温度よりも高い温度を検出したままで次の調理が開始されると、加熱ステージが実行されず、煮込みステージから調理が開始されるためである。
【0007】
今日、加熱調理器の普及に伴い、連続して調理が行われた場合にも適切に加熱ステージが実行され、適切に調理が可能な仕様が望まれている。
【0008】
本発明の一態様は、連続して調理を行った場合も適切に調理することができる加熱調理器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加熱調理器は、内鍋を有する調理器本体と、上記内鍋を加熱する加熱部と、上記調理器本体に対して開閉し、閉状態において上記内鍋を覆う蓋体と、連続した調理であるかを判断する連続調理判定部と、調理制御部と、を備え、前記加熱の開始時に実行される第1加熱工程と、前記第1加熱工程の後に実行される前記加熱部の出力が前記第1加熱工程よりも低い第2加熱工程と、を有し、前記調理制御部は、連続した調理である場合と連続した調理でない場合とで、加熱開始時における、前記第1加熱工程および前記第2加熱工程を行うための制御シーケンスを変更する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、連続して調理を行った場合も適切に調理することができる加熱調理器を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】蓋体を閉じた状態における加熱調理器の外観斜視図である。
【
図2】蓋体を開けた状態における加熱調理器の外観斜視図である。
【
図3】蓋体を閉じた状態における加熱調理器の断面図である。
【
図4】加熱調理器の制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図5】通常調理における制御シーケンスによって、通常調理を行った場合の温度変化を示すグラフである。
【
図6】通常調理における制御シーケンスによって、連続調理を行った場合の温度変化を示すグラフである。
【
図7】連続調理判定部における連続調理か否かを判断するフローチャートである。
【
図8】実施形態1に係る調理制御部における連続調理での制御シーケンスを表すフローチャートである。
【
図9】連続調理における制御シーケンスによって、連続調理を行った場合の温度変化を示すグラフである。
【
図10】実施形態2に係る調理制御部における連続調理での制御シーケンスを表すフローチャートである。
【
図11】実施形態3に係る調理制御部における連続調理での制御シーケンスを表すフローチャートである。
【
図12】実施形態4に係る調理制御部における連続調理での制御シーケンスを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
(加熱調理器1の構造)
図1は、蓋体を閉じた状態における加熱調理器の外観斜視図である。
図2は、蓋体を開けた状態における加熱調理器の外観斜視図である。
図3は、蓋体を閉じた状態における加熱調理器の
図1におけるA断面図である。
【0014】
図1~3に示すように、加熱調理器1は、調理器本体11と、蓋体12と、を備えている。調理器本体11と蓋体12とは、後部の回転支持部13によって連結されている。したがって、蓋体12は回転支持部13を中心として回転し、調理器本体11に対して開閉自在となっている。
【0015】
調理器本体11は、内鍋21を有する。内鍋21は、調理器本体11の内部の凹部に出し入れ自在に収納されている。内鍋21は、テフロン(登録商標)加工されたアルミニウムやステンレスなどの鍋である。
【0016】
蓋体12は、閉状態において、ロック機構(図示せず)により閉状態に保持される。蓋体12は、前部の上面に開ボタン31を備え、開ボタン31が押されると、ロック機構が外れて、
図2に示すように開状態となる。
【0017】
蓋体12は、外蓋32と内蓋33とを有する。外蓋32は、蓋体12の筐体部となっており、主として樹脂にて形成されている。内蓋33は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属材料にて形成され、蓋体12を閉じたときに、内鍋21の蓋となり、内鍋21の上面を塞ぐようになっている。内蓋33は外周部に例えばゴム製のパッキン33bを有している。内蓋33は、外蓋32の内面に設けられ、例えば外周部分を外蓋32に勘合させることにより、外蓋32に対して着脱自在となっている。
【0018】
加熱調理器1は、回転して内鍋21内の食材を撹拌する撹拌装置を備えてもよい。加熱調理器1は、蓋体12に形成された蒸気排出口を利用して、内鍋21内の圧力を加減圧する加減圧装置を備えてもよい。
【0019】
(ヒータと温度センサ)
加熱調理器1は、ヒータ65(加熱部)と、蓋温度センサ71(第1温度センサ)と、鍋温度センサ72(第2温度センサ)と、基板温度センサ73(第3温度センサ)と、をさらに備える。
【0020】
ヒータ65は、
図3に示すように、調理器本体11における内鍋21の下方位置に設けられ、内鍋21を加熱する。
【0021】
蓋温度センサ71は、外蓋32における内蓋33に接触した部位に設けられた温度センサである。内蓋33によって、内鍋21を塞いでいる場合、ヒータ65によって加熱された食材を介して、内鍋21が存在する空間における空気は加熱される。そのため、内蓋33もヒータ65によって加熱され、この温度を蓋温度センサ71が計測する。
【0022】
なお、蓋温度センサ71は、内蓋33に接触せずに、例えば内蓋33に蓋温度センサ71の突出用の穴を設けて、内鍋21が存在する空間に突出させても良い。この場合、蓋温度センサ71は、直接内鍋21によって加熱される空間の温度を計測することができる。つまり、蓋温度センサ71は、内蓋33近傍の温度を検出しても良い。
【0023】
鍋温度センサ72は、調理器本体11における内鍋21に接し、ヒータ65から離間した部位に設けられた温度センサである。鍋温度センサ72は、ヒータ65によって加熱された内鍋21の温度を計測する。
【0024】
基板温度センサ73は、加熱調理器1を制御する制御部61に実装された温度センサである。基板温度センサ73の取り付け位置は特に制限されず、例えば、蓋体12の外周面近傍に設けられてもよい。例えば、基板温度センサ73は、制御部61の温度を計測する。
【0025】
(制御系統の構成)
図4は、加熱調理器1の制御系統の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、加熱調理器1は制御部61を備えている。制御部61には、ヒータ65、蓋温度センサ71、鍋温度センサ72、基板温度センサ73、および調理開始ボタン63が接続されている。
【0026】
調理開始ボタン63は、調理の開始を加熱調理器1に指示するボタンである。加熱調理器1は、調理開始ボタン63が押されると、所定の制御シーケンスに従って調理を開始する。
【0027】
制御部61は、連続調理判定部61aと、調理制御部61bと、を含む。連続調理判定部61aは、加熱調理器1が連続して使用され、少なくとも蓋温度センサ71が冷めていない状態で調理を開始した「連続調理」であるか否かを判定する。なお、「連続調理」でない場合は「通常調理」と記載する。連続調理判定部61aは、連続調理であるか否かの判定結果を調理制御部61bに出力する。調理制御部61bは、調理メニューごとに定まった、制御シーケンスに則って加熱調理器1の各部を制御して食材を調理する。
【0028】
(通常調理と連続調理)
ここで、通常調理における制御シーケンスによって、通常調理および連続調理を行った場合の温度変化に関して示す。
図5は、通常調理における制御シーケンスによって、通常調理を行った場合の温度変化を示すグラフである。
図6は、通常調理における制御シーケンスによって、連続調理を行った場合の温度変化を示すグラフである。なお、
図5および6では、蓋温度センサ71および鍋温度センサ72の温度変化に加え、被加熱物である食材の温度も合わせて示している。
【0029】
加熱調理器1は、最初は加熱ステージ(第1加熱工程)で加熱を行い、ある程度の温度まで被加熱物が温まったと判断したときに、煮込みステージ(第2加熱工程)に遷移して加熱を行う。加熱ステージでは、ヒータ65は大出力で加熱を行い、煮込みステージではヒータ65は小出力で加熱を行う。これは、加熱ステージでは、冷めている被加熱物を水の沸点等の調理温度にまで上げる必要があるのに対し、煮込みステージでは、調理温度に達した被加熱物の温度を保つことが目的となるためである。
【0030】
図5に示すように、通常調理での調理開始時(時刻t
11)は、蓋温度センサ71の検出温度、鍋温度センサ72の検出温度、および被加熱物の温度は全て低く常温である。調理開始時から加熱ステージが始まり、蓋温度センサ71が第1遷移温度(tss)に到達すると、加熱ステージから煮込みステージに遷移する(時刻t
12)。煮込みステージに遷移した後も、蓋温度センサ71の検出温度、鍋温度センサ72の検出温度、および被加熱物の温度はある程度の期間、全て上昇していく。これは、ヒータ65による小出力での加熱と内鍋21に蓄熱された余熱とで昇温するためである。その後、時刻t
13において、被加熱物の温度が一定の状態になるようになる。これはヒータ65による小出力の加熱と放熱とが平衡した状態になるためである。この状態を維持し、煮込みステージを行っていくことで、十分に被加熱物が温まった状態で保持でき、十分に煮えた状態になる。
【0031】
ここで、調理の制御シーケンスの管理のために蓋温度センサ71を用いるのは、鍋温度センサ72はヒータ65で直接加熱されるため高温になりすぎるのに対し、蓋温度センサ71は断熱層である空気層を挟んで加熱された温度になるため、被加熱物の温度に近い温度となるためである。
【0032】
次に、通常調理と同じ制御シーケンスによって連続調理を行った場合の温度変化に関して説明する。対して、被加熱物の温度は、新規に被加熱物が投入されていることから低温(常温)となっている。対して、連続調理のために、蓋温度センサ71および鍋温度センサ72の温度は常温ではなく、ある程度高い温度となっている。そのため、蓋温度センサ71の検出温度は、調理開始時(時刻t21)において既に、第1遷移温度(tss)を超過していることもある。超過していた場合、加熱ステージがスキップされ、時刻t21から煮込みステージから調理が開始される。なお、超過していない場合でも、加熱開始後、短時間で第1遷移温度(tss)を超過するため、高出力による加熱ステージはすぐに終わり、小出力の煮込みステージで加熱を行うことになる。
【0033】
このような場合、煮込みステージの最初では、内蓋33および内鍋21による余熱分は、低温である被加熱物に移ることになるため、蓋温度センサ71の検出温度および鍋温度センサ72の検出温度はともに低下していく。その後、時刻t22において、被加熱物の温度と鍋温度センサ72の温度が平衡し、時刻t23において、蓋温度センサ71の温度も低下を終了する。これ以降の煮込みステージにおいて、被加熱物は小出力のみの加熱によって加熱されていく。
【0034】
このように、連続調理である場合に、通常調理の制御シーケンスに従って加熱調理が実施されると、被加熱物の温度が調理温度にまで達しない状態で、これ以降の調理ステージが実施される。そのため、被加熱物である食材は生煮えとなり、食べるのに適さない状態になる。以降、この問題を解決していく。
【0035】
(連続調理の判断)
図7は、連続調理判定部61aにおける連続調理か否かを判断するフローチャートである。制御部61は、前回の調理の終了時刻を記憶している。連続調理判定部61aは、前回の調理の終了時刻から、調理開始ボタン63が押された時刻までの時間が所定時間以上かを判断する(S11)。所定時間経過していた場合(S11においてYES)、S13に遷移する。所定時間経過していなかった場合(S11においてNO)、蓋温度センサ71の検出温度が所定値以下かを判断する(S12)。蓋温度センサ71の検出温度が所定値以下の場合(S12においてYES)、S13に遷移する。蓋温度センサ71の検出温度が所定値より大きい場合(S12においてNO)、連続調理判定部61aは、連続調理と判断する(S14)。S13において、連続調理判定部61aは、通常調理と判断する。
【0036】
図7においては、S11およびS12の両方の条件を満たさなかった場合のみ連続調理と判断したが、この限りではない。連続調理判定部61aは、S11を満たさなかっただけで連続調理と判断してもよいし、S12を満たさなかっただけで連続調理と判断してもよい。
【0037】
また、蓋温度センサ71の検出温度に基づいて判断するだけではなく、鍋温度センサ72の検出温度および基板温度センサ73の検出温度を考慮してもよい。例えば、基板温度センサ73の温度に対して、蓋温度センサ71の温度が十分に高い場合は、連続調理として判断するなどである。
【0038】
(連続調理を考慮した制御シーケンス)
図8は、実施形態1に係る調理制御部61bにおける連続調理を考慮した制御シーケンスを表すフローチャートである。調理制御部61bは、連続調理判定部61aから入力される情報より連続調理か否かの情報を判断する(S21)。連続調理の場合(S21においてYES)、S25に移行する。つまり、連続調理における制御シーケンスに移行する。
【0039】
連続調理ではない(通常調理)場合(S21においてNO)、通常調理の制御シーケンスであるS22に進み、調理制御部61bは加熱ステージを開始する。蓋温度センサ71の検出温度が第1遷移温度(tss)以上になったときに、調理制御部61bは、加熱ステージから煮込みステージに移行する(S23)。その後も、調理制御部61bは、通常調理の制御シーケンスに従って以降のステージを実行する(S24)。
【0040】
連続調理であるS25においては、調理制御部61bは加熱ステージを開始する。鍋温度センサ72の検出温度が第2遷移温度(tbs)以上となったときに、調理制御部61bは、加熱ステージから煮込みステージへと遷移する。第2遷移温度の値は、第1遷移温度の値よりも高く設定されている。その後は、S24に移行し、調理制御部61bは、通常調理である場合と同様に、通常調理の制御シーケンスに従って以降のステージを実行する。
【0041】
図9は、連続調理における制御シーケンスによって、連続調理を行った場合の温度変化を示すグラフである。
図9に示すように、連続調理での調理開始時(時刻t
31)は、前回の調理による余熱によって、蓋温度センサ71の検出温度および鍋温度センサ72の検出温度はともに高温となっており、これは
図6における時刻t
21の状態と同様である。連続調理における制御シーケンスでは、蓋温度センサ71ではなく鍋温度センサ72に基づいて、加熱ステージから煮込みステージに遷移する。鍋温度センサ72は、被加熱物の温度によって第2遷移温度よりも低温であることから、加熱ステージが実行される。鍋温度センサ72が第2遷移温度に到達するまで、加熱ステージは続き、調理制御部61bは、鍋温度センサ72が第2遷移温度に到達したことでもって煮込みステージに遷移する(時刻t
32)。以降の
図9における温度変化は、
図5の時刻t
12以降の温度変化と類似する。
【0042】
したがって、連続調理の場合でも、調理制御部61bが、連続調理における制御シーケンスに従って、蓋温度センサ71ではなく鍋温度センサ72でもって、加熱ステージを開始し、煮込みステージへと遷移させるので、被加熱物は十分に煮える時間を確保することができ、食べるのに適した状態とすることができる。つまり、調理制御部61bは、連続調理である場合と通常調理である場合とで、加熱開始時における、煮込みステージへと遷移するための制御シーケンスを変更する。
【0043】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0044】
調理制御部61bは、連続調理の場合でも蓋温度センサ71で調理を行ってもよい。
図10は、実施形態2に係る調理制御部61bにおける連続調理を考慮した制御シーケンスを表すフローチャートである。
図10は
図8に対し、S21~25が共通し、連続調理における制御シーケンスに従ったS26に代えてS36の処理を行う。
【0045】
実施形態2では、S36において、蓋温度センサ71の検出温度が第1遷移温度より高い第3遷移温度以上となったときに、調理制御部61bは、加熱ステージから煮込みステージへと遷移する。第3遷移温度は調理メニューごとに固定の値でもよいし、調理開始時の各種温度から自動で設定する値であってもよい。
【0046】
調理開始時点において、蓋温度センサ71の検出温度が第1遷移温度よりも高い場合であっても、第3遷移温度には満たないために、加熱ステージを実行し、かつ加熱ステージにおける調理時間を確保することができる。これにより、被加熱物は十分に煮える時間を確保することができ、食べるのに適した状態とすることができる。
【0047】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0048】
調理制御部61bは、連続調理の場合でも蓋温度センサ71で調理を行ってもよい。
図11は、実施形態3に係る調理制御部61bにおける連続調理を考慮した制御シーケンスを表すフローチャートである。
図11は
図8に対し、S21~S24が共通し、連続調理における制御シーケンスに従ったS25およびS26の処理に代えて、S45およびS46の処理を行う。
【0049】
実施形態3では、S45において、連続調理の場合では、蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度以下か否かを判定する。蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度より高い場合(S45においてNO)、S45の処理を繰り返す。つまり、蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度以下になるまで待機する(待機ステージ)。待機ステージでは、加熱を行わない。
【0050】
蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度以下の場合(S45においてYES)、S46に移行し、調理制御部61bは待機ステージから加熱ステージへ遷移する。
【0051】
つまり、実施形態3では、調理開始ボタン63が押されたときに、蓋温度センサ71の検出温度が所定の温度以下になっていない場合は、強制的に蓋温度センサ71の検出温度が所定の温度以下になるまで加熱を開始しない。これにより、蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度から加熱を開始するため、被加熱物は十分に煮える時間を確保することができ、食べるのに適した状態とすることができる。
【0052】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0053】
実施形態3では、被加熱物の量が多く、蓋温度センサ71の検出温度が熱伝導によって下がることを考慮し、待機ステージにおいて蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度以下になるまで加熱を開始しなかった。そのため、加熱を開始するまでにある程度の時間を要する。対して、実施形態4は、被加熱物の量が多く、蓋温度センサ71の検出温度が熱伝導によって下がる場合においても、待機ステージを省略することで、調理開始ボタン63が押されると同時に加熱を開始する場合である。そのため、実施形態4では、実施形態3よりも調理時間を短縮することができる。
【0054】
図12は、実施形態4に係る調理制御部61bにおける連続調理での制御シーケンスを表すフローチャートである。
図12は
図8に対し、S25およびS26の処理に代えて、S55~S57の処理を行う。
【0055】
S55において、調理制御部61bは加熱ステージを開始する。蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度以下か否かを判定する。蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度より高い場合(S56においてNO)、S57に移行する。
【0056】
S57において、調理制御部61bは加熱ステージを所定期間だけ続けたか否かを判定する。加熱ステージを所定期間だけ続けていない場合(S57においてNO)、S56に処理を戻す。つまり、蓋温度センサ71の検出温度が所定の温度以下になるか、所定期間加熱ステージが続くか、するまで加熱ステージから遷移しない。
【0057】
蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度以下の場合(S56においてYES)、または加熱ステージを所定期間だけ続けた場合(S57においてYES)、S23に移行し、通常調理と同じ制御シーケンスになる。
【0058】
つまり、連続調理時に、例えば、多量の食材が内鍋21に投入されると、多量の食材によって温度が低下し、蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度より大きい値から第4遷移温度以下になる場合がある。
【0059】
このような場合、調理開始ボタン63が押されてすぐに加熱を開始しても、すぐに煮込みステージへ遷移することがない。そこで、十分な加熱時間を確保するために、調理開始ボタン63が押されると同時に加熱を開始する。このようにすることで、連続調理時の調理時間を短縮することができる。
【0060】
ただし、食材の量や種類等によっては、調理開始ボタン63が押されるとすぐに加熱を開始するため、蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度以下にならない場合も考えられる。このような場合は、蓋温度センサ71の検出温度が第4遷移温度以下にならなくても、所定時間が経過すれば、煮込みステージへ遷移するようにすればよい。
【0061】
〔ソフトウェアによる実現例〕
加熱調理器1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部61に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0062】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0063】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0064】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0065】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0066】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る加熱調理器は、内鍋を有する調理器本体と、上記内鍋を加熱する加熱部と、上記調理器本体に対して開閉し、閉状態において上記内鍋を覆う蓋体と、連続した調理であるかを判断する連続調理判定部と、調理制御部と、を備え、前記加熱の開始時に実行される第1加熱工程と、前記第1加熱工程の後に実行される前記加熱部の出力が前記第1加熱工程よりも低い第2加熱工程と、を有し、前記調理制御部は、連続した調理である場合と連続した調理でない場合とで、加熱開始時における、前記第1加熱工程および前記第2加熱工程を行うための制御シーケンスを変更する。
【0067】
上記の構成によれば、連続した調理の場合に、連続した調理でない場合と異なる制御シーケンスとすることができる。これにより、連続した調理であっても、必要な長さの第1加熱工程を行うことができるようになり、食材を十分に加熱することができるようになる。
【0068】
本発明の態様2に係る加熱調理器は、上記態様1において、上記蓋体に備えられ、蓋体近傍の温度を検出する第1温度センサと、上記調理器本体に備えられ、前記内鍋の温度を検出する第2温度センサと、を備え、前記調理制御部は、連続した調理でない場合、前記第1温度センサによる検出温度に基づいて第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換え、連続した調理である場合、前記第2温度センサによる検出温度に基づいて第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換えてもよい。
【0069】
上記の構成によれば、連続した調理の場合と連続した調理でない場合とで、異なる温度センサを用いて、第1加熱工程から第2加熱工程への遷移を判断することができる。これにより、連続した調理であっても、必要な長さの第1加熱工程を行うことができるようになり、食材を十分に加熱することができるようになる。
【0070】
本発明の態様3に係る加熱調理器は、上記態様1において、上記蓋体に備えられ、蓋体近傍の温度を検出する第1温度センサを備え、前記調理制御部は、連続した調理でない場合、前記第1温度センサによる検出温度が第1温度に到達すると第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換え、連続した調理である場合、前記第1温度センサによる検出温度が第1温度よりも高い第2温度に達すると第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換えてもよい。
【0071】
上記の構成によれば、連続した調理の場合に、連続した調理でない場合での加熱工程の遷移温度(第1温度)よりも高い遷移温度(第2温度)でもって、加熱工程を遷移することができる。これにより、連続した調理であっても、必要な長さの第1加熱工程を行うことができるようになり、食材を十分に加熱することができるようになる。
【0072】
本発明の態様4に係る加熱調理器は、上記態様1において、上記蓋体に備えられ、蓋体近傍の温度を検出する第1温度センサを備え、前記調理制御部は、連続した調理でない場合、前記第1温度センサによる検出温度が第1温度に到達すると第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換え、連続した調理である場合、前記第1温度センサによる検出温度が所定温度以下になるまで加熱を開始せず、所定温度以下になってから加熱を開始してもよい。
【0073】
上記の構成によれば、連続した調理の場合に、第1温度センサが適切な調理を行える検出温度になるまで待機してから調理を開始することができる。これにより、連続した調理であっても、必要な長さの第1加熱工程を行うことができるようになり、食材を十分に加熱することができるようになる。
【0074】
本発明の態様5に係る加熱調理器は、上記態様1において、上記蓋体に備えられ、蓋体近傍の温度を検出する第1温度センサを備え、前記調理制御部は、調理開始時に、上記加熱部によって第1加熱工程を開始し、連続した調理でない場合、前記第1温度センサによる検出温度が第1温度に到達すると第1加熱工程から第2加熱工程へと切り替え、連続した調理である場合、前記第1温度センサによる検出温度が所定温度以下になった後、前記第1温度センサによる検出温度に基づいて第1加熱工程から第2加熱工程へと切り換えてもよい。
【0075】
本発明の態様6に係る加熱調理器は、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記連続調理判定部は、前回の調理終了時点から所定の時間が経過していなかった場合に、連続調理と判断してもよい。
【0076】
上記の構成によれば、前回の調理終了時点からの経過時間でもって、連続した調理であるか否かを判断することができる。
【0077】
本発明の態様7に係る加熱調理器は、上記態様2から6のいずれかにおいて、さらに第3温度センサを備え、前記第3温度センサが所定の閾値を上回る場合に、連続調理と判断してもよい。
【0078】
上記の構成によれば、第3温度センサの検出温度でもって、連続した調理であるか否かを判断することができる。
【0079】
本発明の態様8に係る加熱調理器は、上記態様7において、前記第1温度センサの温度が前記第3温度センサの温度よりも所定の値以上大きい場合に、連続調理と判断してもよい。
【0080】
上記の構成によれば、第1温度センサの検出温度と第3温度センサの検出温度とを比較して判断することができる。これにより、環境温度などの条件の変動にも対応することができるようになる。
【0081】
本発明の各態様に係る加熱調理器は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記加熱調理器が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記加熱調理器をコンピュータにて実現させる加熱調理器の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0082】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 加熱調理器
11 調理器本体
12 蓋体
13 回転支持部
21 内鍋
31 開ボタン
32 外蓋
33 内蓋
61 制御部
61a 連続調理判定部
61b 調理制御部
63 調理開始ボタン
65 ヒータ(加熱部)
71 蓋温度センサ(第1温度センサ)
72 鍋温度センサ(第2温度センサ)
73 基板温度センサ(第3温度センサ)