IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-バルブ装置 図1
  • 特開-バルブ装置 図2
  • 特開-バルブ装置 図3
  • 特開-バルブ装置 図4
  • 特開-バルブ装置 図5
  • 特開-バルブ装置 図6
  • 特開-バルブ装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107753
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/22 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
F16K3/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011843
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 貴士
(72)【発明者】
【氏名】石原 啓光
【テーマコード(参考)】
3H053
【Fターム(参考)】
3H053AA02
3H053BB19
3H053BC07
3H053DA01
(57)【要約】
【課題】気密性低下等の不具合の発生を抑制するバルブ装置を提供する。
【解決手段】バルブ装置1は、流体が流入する流入口10a及び流体が流出する流出口11,12を有するハウジング10と、ハウジング10に収容され、回転軸38に支持されて回転軸38を中心に回転することにより流出口11,12を開状態と閉状態とに切替えるロータリバルブ30と、流出口11,12に配置され、閉状態でロータリバルブ30に密着するシール40と、を備えている。ロータリバルブ30は、閉状態でシール40に密着する弁体部31、弁体部31の少なくとも一方の端部に配置されたテーパ部33、及び弁体部31とテーパ部33とを繋ぐ湾曲部32を有している。ロータリバルブ30が開状態から閉状態に向かって回転したときに、シール40は最初にロータリバルブ30のテーパ部33若しくは湾曲部32に当接する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入口及び前記流体が流出する流出口を有するハウジングと、
前記ハウジングに収容され、回転軸に支持されて前記回転軸を中心に回転することにより前記流出口を開状態と閉状態とに切替えるロータリバルブと、
前記流出口に配置され、前記閉状態で前記ロータリバルブに密着するシールと、を備え、
前記ロータリバルブは、前記回転軸に対して垂直方向の断面において、前記閉状態で前記シールに密着する部分が円弧状を有する弁体部、前記弁体部の少なくとも一方の端部に配置されたテーパ部、及び前記弁体部と前記テーパ部とを繋ぐ湾曲部を有し、
前記ロータリバルブが前記開状態から前記閉状態に向かって回転したときに、前記シールは最初に前記ロータリバルブの前記テーパ部若しくは前記湾曲部に当接するバルブ装置。
【請求項2】
前記シールは、前記流出口から流出する前記流体の流通方向に沿う方向の軸芯を有し、前記軸芯に沿う方向で内径及び外径が連続的に変化している環状であり、径方向内側に括れた括れ部と、前記回転軸側の一端部に前記括れ部から延在し拡径した拡径部と、を含んでいる請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記シールは、更に前記回転軸側の一端部とは反対側の他端部に前記ハウジングに保持される保持部を含んでおり、
前記保持部の外径が前記拡径部の外径よりも大きい請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記流入口は、前記回転軸に沿っており、
前記ロータリバルブは、前記回転軸に対して少なくとも前記弁体部を支持する支持部を有しており、
前記支持部は、前記流入口から前記ハウジング内に流入する前記流体が流通する貫通孔を有している請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項5】
燃料電池へ供給する前記流体の流路を切替える三方弁として用いられる請求項1から4のいずれか一項に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体や液体といった流体の流路を切替えるためのバルブ装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、ガスメータ内のガス流を遮断するために、回動可能な密閉部材で構成された弁が開示されている。弁の密閉部材は、第1シース部材と第2シース部材とを有しており、第1シース部材は弁の流出口を開き、第2シース部材は弁の流出口を閉じる。弁の流出口にはリップ状のシールが配置されており、第1シース部材及び第2シース部材のシース面は、流出口に対向したときにシールに接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-112310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された弁においては、シールのうち第1シース部材及び第2シース部材が接触する先端部分が細くて尖った形状を有している。このため、密閉部材が回動して第1シース部材又は第2シース部材がシールに接触するときに、シールの先端部分が最初に接触するので、先端部分が引っかかったり、先端部分が切れたりするおそれがある。仮にシールが第1シース部材又は第2シース部材が先端部分に引っかかると、密閉部材がそれ以上回転することができないので、密閉部材がロックするおそれがある。また、シールの先端部分が切れた場合には、切れた部分からガスが漏出し、気密性が低下するおそれがある。さらに、特許文献1の弁は、シールの先端部分と第1シース部材又は第2シース部材とが接触することにより気密性を確保しているので、密閉部材の回動が繰り返された場合に、シールの先端部分が摩耗して気密性が低下するおそれがある。
【0006】
このため、気密性低下等の不具合の発生を抑制するバルブ装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るバルブ装置の一つの実施形態は、流体が流入する流入口及び前記流体が流出する流出口を有するハウジングと、前記ハウジングに収容され、回転軸に支持されて前記回転軸を中心に回転することにより前記流出口を開状態と閉状態とに切替えるロータリバルブと、前記流出口に配置され、前記閉状態で前記ロータリバルブに密着するシールと、を備え、前記ロータリバルブは、前記回転軸に対して垂直方向の断面において、前記閉状態で前記シールに密着する部分が円弧状を有する弁体部、前記弁体部の少なくとも一方の端部に配置されたテーパ部、及び前記弁体部と前記テーパ部とを繋ぐ湾曲部を有し、前記ロータリバルブが前記開状態から前記閉状態に向かって回転したときに、前記シールは最初に前記ロータリバルブの前記テーパ部若しくは前記湾曲部に当接する。
【0008】
本実施形態によると、ロータリバルブが、回転軸に対して垂直方向の断面において、閉状態でシールに密着する部分が円弧状を有する弁体部、湾曲部、及びテーパ部を有し、ロータリバルブが開状態から閉状態に向かって回転したときに、シールは最初にロータリバルブのテーパ部若しくは湾曲部に当接するように構成されている。このように、シールがロータリバルブのテーパ部の先端部分に最初に当接しないので、ロータリバルブがシールの先端部分に引っかかったり、先端部分が切れたりするおそれがない。その結果、ロータリバルブがロックすることも気密性が低下することもない。このように、気密性低下等の不具合の発生を抑制するバルブ装置を提供することができた。
【0009】
本発明に係るバルブ装置の他の一つの実施形態において、前記シールは、前記流出口から流出する前記流体の流通方向に沿う方向の軸芯を有し、前記軸芯に沿う方向で内径及び外径が連続的に変化している環状であり、径方向内側に括れた括れ部と、前記回転軸側の一端部に前記括れ部から延在し拡径した拡径部と、を含んでいる。
【0010】
本実施形態によると、シールが軸芯に沿う方向で内径及び外径が連続的に変化している環状を有しているので、シールが弁体部に密着することにより、流体の漏出を確実に防止することができる。また、シールの軸芯に沿って括れ部と拡径部とを有しており、径の小さい括れ部の方が拡径部よりも変形しやすい。そのため、括れ部が変形し拡径部が変形しないことにより、シールを軸芯に沿う方向に容易に弾性変形させつつロータリバルブの弁体部に確実に当接させることができる。
【0011】
本発明に係るバルブ装置の他の一つの実施形態において、前記シールは、更に前記回転軸側の一端部とは反対側の他端部に前記ハウジングに保持される保持部を含んでおり、前記保持部の外径が前記拡径部の外径よりも大きい。
【0012】
本実施形態によると、保持部の外径が拡径部の外径よりも大きいので、シールを安定してハウジングに取付けることができる。また、大径の保持部がハウジングに保持されているため、シールの強度を高めることができる。
【0013】
本発明に係るバルブ装置の他の一つの実施形態において、前記流入口は、前記回転軸に沿っており、前記ロータリバルブは、前記回転軸に対して少なくとも前記弁体部を支持する支持部を有しており、前記支持部は、前記流入口から前記ハウジング内に流入する前記流体が流通する貫通孔を有している。
【0014】
本実施形態によると、ロータリバルブの支持部が貫通孔を有しているので、回転軸に沿った流入口から流入した流体の一部が貫通孔を通り抜けて流出口から流出する。これにより、支持部における流体の圧損を低減することができる。
【0015】
本発明に係るバルブ装置の他の一つの実施形態は、燃料電池へ供給する前記流体の流路を切替える三方弁として用いられる。
【0016】
本実施形態のバルブ装置を用いることにより、燃料電池に供給する流体が流通する流路を、例えば加湿器を経由する流路と、加湿器を経由しない流路とに容易に切替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るバルブ装置を有する車両用燃料電池システムの回路構成図である。
図2】バルブ装置の分解斜視図である。
図3】リップシールの斜視図である。
図4】リップシールの断面図である。
図5】バルブ装置の第1流出孔が閉じ、第2流出孔が開いた状態を表す断面図である。
図6】回転途中にロータリバルブがリップシールに最初に当接した状態を表す断面図である。
図7】バルブ装置の第1流出孔が開き、第2流出孔が閉じた状態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るバルブ装置の一つの実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0019】
図1には、本実施形態に係るバルブ装置1を有する車両用燃料電池システム100の回路構成図が示される。バルブ装置1は、外部から流入されて車両用燃料電池システム100の燃料電池スタック2(燃料電池の一例)に供給される空気(流体の一例)の加湿量を制御する。具体的には、燃料電池スタック2内の膜が乾燥状態であるときや流入流路4を流通する空気が乾燥しているときには、車両用燃料電池システム100の不図示の制御部は、空気が流入流路4から第1流出流路5に流通するようにバルブ装置1の流路を切替える。これにより、加湿器3内を流通して加湿された空気が燃料電池スタック2に供給される。また、燃料電池スタック2内の膜が湿潤状態であるときや流入流路4を流通する空気が加湿されているときには、制御部は、空気が流入流路4から第2流出流路6に流通するようにバルブ装置1の流路を切替える。これにより、加湿器3を通らない空気が燃料電池スタック2に供給される。このように、バルブ装置1は、燃料電池スタック2に供給する流路の切替えが可能に構成されている。
【0020】
〔バルブ装置の構造〕
図2には、バルブ装置1の分解斜視図が示される。バルブ装置1は、流入流路4から流入した空気を第1流出流路5及び第2流出流路6のいずれかに切替えて流出させる三方弁である。バルブ装置1は、ハウジング10、モータ18、流入管20、第1流出管21、第2流出管22、ロータリバルブ30、及びリップシール40(シールの一例)により構成されている。ハウジング10は樹脂等の材料からなる円筒形状を有しており、内部にロータリバルブ30が収容される円柱状の収容空間13が形成されている。以下、ハウジング10の中心軸Pに沿う方向を鉛直方向とも称する。また、ハウジング10は、側面に円形状の貫通孔である第1流出孔11(流出口の一例)と第2流出孔12(流出口の一例)とが形成されている。第1流出孔11の中心軸Qと第2流出孔12の中心軸Rとは、いずれも中心軸Pに対して垂直な方向に沿う。また、第1流出孔11と第2流出孔12とは、中心軸Qと中心軸Rとが中心軸Pに沿う方向視で中心軸Pに対する中心角が約120度となるように配置されている(図5参照)。
【0021】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、図2に示される状態で、「上」はバルブ装置1の中心軸P(鉛直方向)に沿った矢印Uの方向(上方向)及び相対的に矢印Uの側(上側)を意味し、「下」はバルブ装置1の中心軸Pに沿った矢印Dの方向(下方向)及び相対的に矢印Dの側(下側)を意味するものとする。
【0022】
ハウジング10の鉛直方向の両端に位置する円形状の孔のうち、図2で下側に位置する第1孔10a(流入口の一例)には、流入管20が接続されている。流入管20は、流入流路4に接続されており、流入流路4の一部を構成する。流入管20には、外部から流入された空気が流通する。流入管20は樹脂等の材料からなる円筒形状を有している。ハウジング10と流入管20とは、それぞれに形成されたフランジ同士を複数(本実施形態においては三本)のボルトで締結することにより接続されている。このとき、ハウジング10と流入管20との接続部位には環状のリングシール23が配置されており、これにより該接続部位の気密性が確保される。
【0023】
流入管20の径方向の中心には、ハウジング10に接続された状態でハウジング10の中心軸Pと同軸芯になる、有底円筒形状の軸支持部24が形成されている。軸支持部24は、ロータリバルブ30を支持して回転させる回転軸38の下側の端部を挿入保持することにより、ロータリバルブ30を回転可能に支持する。すなわち、バルブ装置1において、回転軸38の軸芯はハウジング10の中心軸Pと同軸芯になるように配置されている。
【0024】
ハウジング10の鉛直方向の両端の円形状の孔のうち、図2で上側に位置する第2孔10bには、モータ18が接続されている。ハウジング10とモータ18とは、それぞれに形成されたフランジ同士を複数(本実施形態においては三本)のボルトで締結することにより接続されている。モータ18には、回転軸38の上側の端部が接続されている。また、ハウジング10とモータ18との接続部位には環状のリングシール23が配置されており、これにより該接続部位の気密性が確保される。モータ18が作動することにより回転軸38とロータリバルブ30とが一体となって回転する。
【0025】
ハウジング10の第1流出孔11には、第1流出管21が接続されている。第1流出管21は、第1流出流路5に接続されており、第1流出流路5の一部を構成する。第1流出管21は樹脂等の材料からなる円筒形状を有している。ハウジング10と第1流出管21とは、それぞれに形成されたフランジ同士を複数(本実施形態においては二本)のボルトで締結することにより接続されている。このとき、ハウジング10と第1流出管21との接続部位には環状のリップシール40が配置されており、これにより該接続部位の気密性が確保される。リップシール40の詳細な構造については後述する。
【0026】
ハウジング10の第2流出孔12には、第2流出管22が接続されている。第2流出管22は、第2流出流路6に接続されており、第2流出流路6の一部を構成する。第2流出管22は樹脂等の材料からなる円筒形状を有している。ハウジング10と第2流出管22とは、それぞれに形成されたフランジ同士を複数(本実施形態においては二本)のボルトで締結することにより接続されている。このとき、ハウジング10と第2流出管22との接続部位には環状のリップシール40が配置されており、これにより該接続部位の気密性が確保される。
【0027】
本実施形態のロータリバルブ30は、図2、及び図5から図7に示されるように、弁体部31、湾曲部32、テーパ部33、及び支持部34を有している。弁体部31は、中空の球を回転軸38の軸芯を中心に中心角が約110度となる放射状に切断した形状を有する(図2参照)。この形状は、回転軸38の軸芯に垂直な任意の断面が、常に中心角が約110度の円弧状となる。弁体部31の周方向の両端は、それぞれ端部に向かうにつれて、湾曲部32とテーパ部33とがこの順で形成されている。すなわち、弁体部31とテーパ部33との間に湾曲部32があり、弁体部31とテーパ部33とは湾曲部32により滑らかに繋がっている。テーパ部33は、弁体部31よりも厚さが薄くなる方向、すなわち、回転軸38の軸芯に近づく方向に傾斜している。
【0028】
支持部34は、弁体部31、湾曲部32、テーパ部33の上側端部と下側端部とにそれぞれ形成され、回転軸38に固定されている。これにより、支持部34は、回転軸38に対して弁体部31、湾曲部32、テーパ部33を支持している。支持部34は、回転軸38の軸芯を中心とする中心角が約110度の扇形を有している(図5参照)。下側の支持部34には、複数(本実施形態においては二つ)の貫通孔35が形成されている。すなわち、貫通孔35は、ハウジング10の第1孔10aに対向している。貫通孔35を設けることにより、第1孔10aから流入した空気の一部が貫通孔35を通り抜けて第1流出孔11又は第2流出孔12から流出するので、下側の支持部34による圧損を低減することができる。
【0029】
リップシール40は、図3図4に示されるように、シール軸芯44(軸芯の一例)を中心として、シール軸芯44に沿う方向で内径及び外径が連続的に変化している環状のシールであり、ゴムやエラストマ等の弾性部材からなる。リップシール40のシール軸芯44に沿って、環状の括れ部41、拡径部42、及び保持部43を有する。リップシール40は、シール軸芯44に沿って、保持部43、括れ部41、拡径部42の順で連続的に延在し配置され、括れ部41、拡径部42、保持部43の順で内径及び外径が連続的に大きくなっている。すなわち、括れ部41は保持部43に対して径方向内側に括れており、拡径部42は括れ部41に対して拡径している。保持部43の外径は、拡径部42の外径よりも大きい。
【0030】
リップシール40は、拡径部42が回転軸38の側に位置するように配置されており、ロータリバルブ30の弁体部31に当接、密着することにより、当該当接した箇所から空気が漏出するのを防止する。括れ部41は、ロータリバルブ30の弁体部31が拡径部42に当接したときに、シール軸芯44に沿う方向に圧縮されて弾性変形して、拡径部42を弁体部31の表面に押し付けて密着させる弾性力を発揮する。保持部43は、回転軸38と反対側の端部に形成されており、括れ部41から拡径した環状の縁部からシール軸芯44に沿う方向に立設し、リップシール40をハウジング10に対して固定する。なお、ハウジング10と第1流出管21との接続部位に配置されたリップシール40と、ハウジング10と第2流出管22との接続部位に配置されたリップシール40とは、同じものが用いられている。
【0031】
図5に示されるように、ハウジング10の第1流出孔11と第1流出管21との接続部位に配置されたリップシール40は、第1流出孔11の周囲に形成された環状の溝である第1保持溝11aに保持部43を嵌め込むことにより、ハウジング10の第1流出孔11に対して固定、保持されている。このとき、括れ部41と拡径部42とは第1保持溝11aよりも収容空間13及び回転軸38に近づく側に位置している。同様に、図7に示されるように、ハウジング10の第2流出孔12と第2流出管22との接続部位に配置されたリップシール40は、第2流出孔12の周囲に形成された環状の溝である第2保持溝12aに保持部43を嵌め込むことにより、ハウジング10の第2流出孔12に対して固定、保持されている。このとき、括れ部41と拡径部42とは第2保持溝12aよりも収容空間13及び回転軸38に近づく側に位置している。なお、第1流出孔11と第1流出管21との接続部位に配置されたリップシール40のシール軸芯44は、第1流出孔11の中心軸Qと同軸芯になるように配置されており、第2流出孔12と第2流出管22との接続部位に配置されたリップシール40のシール軸芯44は、第2流出孔12の中心軸Rと同軸芯になるように配置されている。
【0032】
本実施形態のバルブ装置1は、ロータリバルブ30の回転軸38の軸芯(中心軸Pの軸芯)から自然長時のリップシール40の拡径部42までの長さ(以下、シール離間長さ)と、回転軸38の軸芯からロータリバルブ30の湾曲部32及びテーパ部33の周方向での特定の一箇所までの距離とが等しくなるように構成されている。以下、この特定の一箇所を特定箇所という。したがって、ロータリバルブ30において、特定箇所よりも周方向で弁体部31側の箇所における回転軸38の軸芯からの長さはシール離間長さよりも長く、特定箇所よりも周方向でテーパ部33側の箇所における回転軸38の軸芯からの長さはシール離間長さよりも短い。これにより、ロータリバルブ30の弁体部31がリップシール40に当接しているときは、リップシール40は自然長から圧縮されて弁体部31に密着する方向に弾性力を発揮している。なお、ロータリバルブ30において、湾曲部32及びテーパ部33は弁体部31の周方向の両側にそれぞれ形成されているので、特定箇所は周方向の両側に二つある。また、特定箇所には、テーパ部33の先端部分(ロータリバルブ30の周方向の両先端部分)は含まれない。
【0033】
〔バルブ装置の作動〕
次に、バルブ装置1の作動について説明する。上述したように、バルブ装置1は、流入流路4から流入した空気を第1流出流路5と第2流出流路6とに切替えて流出させる三方弁である。ここでは、一例として、ロータリバルブ30が回転することにより、第1流出孔11を閉状態(以下、初期状態ともいう)(図5の状態)から開状態(図7の状態)にするときの作動について説明する。このとき、第2流出孔12は開状態(図5の状態)から閉状態(図7の状態)になる。
【0034】
バルブ装置1が図5に示される初期状態にあるときは、流入流路4から流入管20及び第1孔10aを流通してバルブ装置1内に流入した空気は、第2流出孔12及び第2流出管22を流通して第2流出流路6に流出する。このとき、第1流出孔11とロータリバルブ30とが対向して閉状態になっている。具体的には、第1流出孔11に固定されたリップシール40の拡径部42の全体がロータリバルブ30の弁体部31に密着している。このとき、第1流出孔11に固定されたリップシール40の括れ部41は弁体部31からの反力を受けて弾性変形しており、リップシール40のシール軸芯44に沿う方向の長さは圧縮されて若干短くなっている。これにより、第1流出孔11から空気が漏出することはない。
【0035】
この初期状態から、モータ18に通電してロータリバルブ30を第2流出孔12に向けて回転させる(図5では反時計方向)。ロータリバルブ30の弁体部31はリップシール40の拡径部42に密着した状態で摺動する。ロータリバルブ30が回転するにつれて、第1流出孔11は開いていき、拡径部42に対する摺動箇所は弁体部31から湾曲部32、テーパ部33へと移動する。そして、湾曲部32及びテーパ部33のうちの特定箇所がリップシール40の拡径部42に当接したときにリップシール40は自然長に復帰し、回転軸38の軸芯から拡径部42までの長さがシール離間長さに等しくなる。その後ロータリバルブ30の回転が継続すると、ロータリバルブ30とリップシール40とが離間する。これは、自然長のリップシール40はそれ以上伸長することはないからである。
【0036】
一方、初期状態からロータリバルブ30が回転すると、ロータリバルブ30は、第1流出孔11に配置されたリップシール40と離間する前に、第2流出孔12に配置されたリップシール40と当接する(図6参照)。すなわち、ロータリバルブ30が第1流出孔11に対向した状態から第2流出孔12に対向した状態になるまでの過渡期では、ロータリバルブ30は、第1流出孔11に配置されたリップシール40と第2流出孔12に配置されたリップシール40の両方に当接した状態となる。以下では、第2流出孔12に配置されたリップシール40にロータリバルブ30が当接するときについて、図6を用いて説明する。
【0037】
ロータリバルブ30が第2流出孔12に向かって回転すると、図6に示されるように、湾曲部32及びテーパ部33の周方向における特定箇所で、第2流出孔12に固定された自然長状態のリップシール40の拡径部42と当接する。すなわち、ロータリバルブ30の特定箇所における回転軸38の軸芯からの長さは、シール離間距離に等しいため、ロータリバルブ30のテーパ部33若しくは湾曲部32が最初に拡径部42に当接する。その後、ロータリバルブ30は回転しながら拡径部42上を弁体部31に向けて摺動し、最終的に拡径部42は、全体が弁体部31と当接した状態で第2流出孔12を閉塞する。これにより、第2流出孔12は図7に示される閉状態となる。このとき、第1流出孔11は開状態となっている。
【0038】
〔バルブ装置の効果〕
本実施形態によると、ロータリバルブ30が、回転軸38に対して垂直方向の断面において、閉状態でリップシール40に密着する部分が円弧状を有する弁体部31、湾曲部32、及びテーパ部33を有し、ロータリバルブ30が開状態から閉状態に向かって回転したときに、リップシール40の拡径部42は最初にロータリバルブ30の湾曲部32若しくはテーパ部33に当接するように構成されている。このように、リップシール40がロータリバルブ30のテーパ部33の先端部分に最初に当接しないので、ロータリバルブ30がリップシール40の先端部分に引っかかったり、先端部分が切れたりするおそれがない。その結果、ロータリバルブ30がロックすることも気密性が低下することもない。
【0039】
また、本実施形態によると、リップシール40がシール軸芯44に沿う方向で内径及び外径が連続的に変化している環状を有しているので、リップシール40が弁体部31に密着することにより、空気の漏出を確実に防止することができる。また、リップシール40のシール軸芯44に沿って括れ部41と拡径部42とを有しており、径の小さい括れ部41の方が拡径部42よりも変形しやすい。そのため、括れ部41が変形し拡径部42が変形しないことにより、リップシール40をシール軸芯44に沿う方向に容易に弾性変形させつつロータリバルブ30の弁体部31に確実に当接させることができる。
【0040】
また、本実施形態によると、保持部43の外径が拡径部42の外径よりも大きいので、リップシール40を安定してハウジング10に取付けることができる。また、大径の保持部43がハウジング10に保持されているため、リップシール40の強度を高めることができる。
【0041】
また、本実施形態によると、ロータリバルブ30の支持部34が貫通孔35を有しているので、回転軸38に沿った第1孔10aから流入した空気の一部が貫通孔35を通り抜けて第1流出孔11又は第2流出孔12から流出する。これにより、支持部34における空気の圧損を低減することができる。
【0042】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態では、バルブ装置1は第1流出管21と第2流出管22の二つの流出管を備えた三方弁であったが、一つの流出管を備えて開閉する開閉弁であってもよい。また、流出管を三つ以上備えていてもよい。
【0043】
(2)上記実施形態のバルブ装置1では、流入管20は、ハウジング10の中心軸Pに沿って配置され、第1流出管21と第2流出管22はハウジング10の側面に配置されていたが、流入管20、第1流出管21、及び第2流出管22の全てがハウジング10の側面に配置されるように構成されてもよい。
【0044】
(3)上記実施形態のバルブ装置1では、中心軸Qと同軸芯になるように配置された第1流出管21と中心軸Rと同軸芯になるように配置された第2流出管22とのなす角度は120度であったが、120度未満であっても120度を超える角度であってもよい。
【0045】
(4)上記実施形態のバルブ装置1では、流入管20を一つ備え、第1流出管21と第2流出管22の二つの流出管を備えていたが、流入管を二つ備え、流出管を一つ備えた構成であってもよい。
【0046】
(5)上記実施形態のバルブ装置1では、ロータリバルブ30は、弁体部31の周方向の両側に湾曲部32とテーパ部33とを備えていたが、湾曲部32とテーパ部33が弁体部31の周方向の片側にだけ配置されるように構成されてもよい。この場合、第1流出孔11又は第2流出孔12を閉じるときには、常にリップシール40の拡径部42にロータリバルブ30の湾曲部32若しくはテーパ部33が最初に当接するように、ロータリバルブ30を一方向に回転させるように構成するのが好ましい。
【0047】
(6)上記実施形態では、ロータリバルブ30の弁体部31は、中空の球を放射状に切断した形状であったが、円筒を放射状に切断した形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、バルブ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 :バルブ装置
2 :燃料電池スタック(燃料電池)
10 :ハウジング
10a :第1孔(流入口)
11 :第1流出孔(流出口)
12 :第2流出孔(流出口)
30 :ロータリバルブ
31 :弁体部
32 :湾曲部
33 :テーパ部
34 :支持部
35 :貫通孔
38 :回転軸
40 :リップシール(シール)
41 :括れ部
42 :拡径部
43 :保持部
44 :シール軸芯(軸芯)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7