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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107756
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】歪検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011849
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 史掘
(72)【発明者】
【氏名】上原 利範
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BD11
2F063CA09
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD06
2F063DD07
2F063EC03
2F063EC14
2F063EC16
2F063KA02
2F063LA23
(57)【要約】
【課題】実施形態の課題は、検出精度の向上を図ることが可能な歪検出装置を提供することにある。
【解決手段】実施形態に係る歪検出装置は、基材を挟んで対向する第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bと、第1および第2センサシートを駆動するコントローラと、を備えている。第1センサシートおよび第2センサシートの各々は、一列に並んで設けられた複数の歪ゲージG1~Gnと、それぞれ複数の歪ゲージの一端に接続された複数の電源線VL1~VLnおよび複数の第1信号線Sa1~Sanと、それぞれ複数の歪ゲージの他端に接続された複数のグランド線GNL1~GNLnおよび複数の第2信号線Sb1~SBnと、を具備し、第1センサシートの複数のグランド線は、それぞれ第2センサシートの複数の電源線に接続されている。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および前記第1主面に対向する第2主面を有するフレキシブルな基材と、
前記第1主面側に設けられた第1センサシートと、
前記第2主面側に設けられ前記基材を挟んで前記第1センサシートに対向する第2センサシートと、
前記第1センサシートおよび前記第2センサシートを駆動するコントローラと、を備え、
前記第1センサシートおよび前記第2センサシートの各々は、
それぞれ一端および他端を有し、間隔を空けて一列に並んで設けられた複数の歪ゲージと、それぞれ前記複数の歪ゲージの列に沿って延在し前記歪ゲージの一端に接続された複数の電源線および複数の第1信号線と、それぞれ前記複数の歪ゲージの列に沿って延在し前記歪ゲージの他端に接続された複数のグランド線および複数の第2信号線と、を具備し、
前記第1センサシートの前記複数の歪ゲージは、それぞれ前記基材を挟んで前記第2センサシートの前記複数の歪ゲージに対向して配置され、
前記第1センサシートの前記複数のグランド線は、それぞれ前記第2センサシートの前記複数の電源線に接続されている、
歪検出装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1センサシートの前記複数の電源線に順次、電源電圧を印加し、前記第1センサシートの複数の歪ゲージおよび前記第2センサシートの複数の歪ゲージを互いに同期して順次駆動し、前記第1信号線および第2信号線から前記歪ゲージの一端の検出信号および他端の検出信号を順次取得するセレクタを備えている、請求項1に記載の歪検出装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1センサシートの前記歪ゲージの一端の検出信号と他端の検出信号との差分を検出する第1差分検出回路と、前記第2センサシートの前記歪ゲージの一端の検出信号と他端の検出信号との差分を検出する第2差分検出回路と、を含んでいる、請求項1に記載の歪検出装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記複数の歪ゲージの列の一端側から他端側に向かって前記複数の歪ゲージを順次駆動する、請求項2に記載の歪検出装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1センサシートの配線および前記第2センサシートの配線に接続された回路基板を含み、前記回路基板は、前記第1センサシートの前記グランド線と前記第2センサシートの前記電源線とを繋ぐ接続線を有している、請求項1に記載の歪検出装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第1センサシートの配線および前記第2センサシートの配線に接続された回路基板を含み、前記セレクタは、前記回路基板に設けられ、前記第1センサシートの前記グランド線と前記第2センサシートの前記電源線とを繋ぐ配線を有している、請求項2に記載の歪検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、歪検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歪検出装置の一例として、フレキシブルなフィルム状あるいはシート状の歪ゲージセンサが知られている。歪ゲージセンサは、帯状のフレキシブルなシート基材の表面に並んで設けられた歪ゲージと、これらの歪ゲージに通電するための複数本の信号線と、を有している(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献2に開示されている歪ゲージにおいては、シートの表裏に複数の歪ゲージが設けられている。表面側の歪ゲージは、裏面側の歪ゲージとそれぞれ対向して配置されている。歪ゲージセンサを湾曲した被検体に巻き付け、各歪ゲージの抵抗変化を検出することにより、被検体の湾曲形状を検知することができる。
当該歪ゲージセンサでは、シートの表裏にて温度状態が異なる等に起因して表裏の歪ゲージにて配線抵抗等を揃えることが難しく、これが歪検出の精度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-174514号公報
【特許文献2】特開昭60-67804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の実施形態の課題は、検出精度の向上を図ることが可能な歪検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る歪検出装置は、第1主面および前記第1主面に対向する第2主面を有するフレキシブルな基材と、前記第1主面側に設けられる第1センサシートと、前記第2主面側に設けられ前記基材を挟んで前記第1センサシートに対向する第2センサシートと、前記第1センサシートおよび前記第2センサシートを駆動するコントローラと、を備えている。前記第1センサシートおよび前記第2センサシートの各々は、それぞれ一端および他端を有し、間隔を空けて一列に並んで設けられた複数の歪ゲージと、それぞれ前記複数の歪ゲージの列に沿って延在し前記歪ゲージの一端に接続された複数の電源線および複数の第1信号線と、それぞれ前記複数の歪ゲージの列に沿って延在し前記歪ゲージの他端に接続された複数のグランド線および複数の第2信号線と、を具備している。前記第1センサシートの前記複数の歪ゲージは、それぞれ前記基材を挟んで前記第2センサシートの前記複数の歪ゲージに対向して配置され、前記第1センサシートの前記複数のグランド線は、それぞれ前記第2センサシートの前記複数の電源線に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る歪ゲージセンサ装置の斜視図。
図2図2は、前記歪ゲージセンサ装置の縦断面図。
図3図3は、前記歪ゲージセンサ装置の第1センサシートおよび第2センサシートのゲージパターンおよび配線パターンを模式的に示す展開図。
図4図4は、前記歪ゲージセンサ装置のコントローラのブロック図。
図5図5は、前記コントローラのアナログフロントエンドにおける差分検出回路の回路図。
図6図6は、前記歪ゲージセンサ装置を被検体の表面に設置した状態を模式的に示す側面図。
図7図7は、前記歪ゲージセンサ装置の検出時の各種信号のタイミングチャート。
図8図8は、検出時のスキャン動作を示す前記歪ゲージセンサ装置の展開図。
図9図9は、検出時のスキャン動作を示す前記歪ゲージセンサ装置の展開図。
図10図10は、被検体の周面に設置した状態の前記歪ゲージセンサ装置の一部を模式的に示す図。
図11図11は、前記第1および第2センサシートの等価回路図。
図12図12は、変形例に係る歪ゲージセンサ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
(実施形態)
歪検出装置の一例として、実施形態に係る歪ゲージセンサ装置について詳細に説明する。図1は、実施形態に係る歪ゲージセンサ装置の斜視図である。
図示のように、歪ゲージセンサ装置10は、両面型の歪ゲージセンサを構成している。歪ゲージセンサ装置10は、基材として機能する細長い帯状のフレキシブルなベース基板44と、ベース基板44の第1主面(前面)に貼付された第1センサシート20Aと、ベース基板44の第2主面(背面)に貼付された第2センサシート20Bと、一対のフレキシブル配線板(FPC)14と、当該一対のフレキシブル配線板14を介して第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bに接続された中継基板(駆動回路基板)12と、を備えている。一例では、ベース基板44は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド等の樹脂で厚さ0.3~0.5mm程度に形成されている。
【0009】
第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの各々は、細長い帯状のフレキシブルなシート基材22とシート基材22の片面の側に設けられた導体パターンとを有している。導体パターンは、複数の歪ゲージG1~Gnを含んでいる。複数の歪ゲージG1~Gnは、シート基材22の長手方向Xの一端から他端に亘り所定の間隔を空けて長手方向Xに並んで設けられている。
なお、図において、センサシートの長手方向X、幅方向Yは、互いに直交する2方向を示している。これらの方向は、90度以外の角度で交差していてもよい。
【0010】
図2は、歪ゲージセンサ装置10の縦断面図である。
図2に示すように、ベース基板44は前面および前面に対向する背面を有している。一例では、第1センサシート20Aは、導体パターン(G1~Gn)を備える面が透明粘着シート(OCA)などの接着剤層Adによりベース基板44の前面に貼付されている。第2センサシート20Bは、導体パターン(G1~Gn)を備える面が接着剤層Adによりベース基板44の背面に貼付されている。
中継基板12は、一方の面側に設けられた駆動回路40および複数の配線と、他方の面側に設けられた図示しない複数の配線と、を含んでいる。第1センサシート20Aの導体パターンは、FPC14を介して、中継基板12の上面側に設けられる配線に接続されている。同様に、第2センサシート20Bの導体パターンは、FPC14を介して、中継基板12の下面側に設けられる配線に接続されている。
【0011】
図3は、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bを展開した状態で、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの歪ゲージおよび配線パターンを模式的に示す平面図である。図示のように、本実施形態によれば、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bは、同一の形状、寸法、および導体パターンに構成されている。詳細には、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの各々は、フレキシブルな帯状のシート基材22と、シート基材22の片面側に設けられた導体パターンと、を有している。導体パターンは、複数の歪ゲージG1~Gnを有している。複数の歪ゲージG1~Gnは、シート基材22の長手方向Xの一端(先端)から他端(基端)まで長手方向Xに間隔を空けて一列に並んで設けられている。歪ゲージG1~Gnの各々は、幅方向Yに蛇腹状に延在し、幅方向Yの一端および他端を有している。各歪ゲージG1~Gnは、歪に応じた抵抗変化を生じる。
【0012】
導体パターンは、それぞれ歪ゲージG1~Gnの列に沿って長手方向Xに延在している複数本の電源線VL1~VLn、複数本のグランド線GNL1~GNLn、複数本の第1信号線Sa1~San、および複数本の第2信号線Sb1~Sbnを有している。
電源線VL1~VLnは、歪ゲージG1~Gnの一端の側に位置している。電源線VL1~VLnは、それぞれ歪ゲージG1~Gnの一端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
第1信号線Sa1~Sanは、歪ゲージG1~Gnの一端と電源線VL1~VLnとの間に位置している。第1信号線Sa1~Sanは、それぞれ歪ゲージG1~Gnの一端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
グランド線GNL1~GNLnは、歪ゲージG1~Gnの他端の側に位置している。グランド線GNL1~GNLnは、それぞれ歪ゲージG1~Gnの他端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
第2信号線Sb1~Sbnは、歪ゲージG1~Gnの他端とグランド線GNL1~GNLnとの間に位置している。第2信号線Sb1~Sbnは、それぞれ歪ゲージG1~Gnの他端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
【0013】
上記のように構成された第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bは、ベース基板44の前面および背面に貼付され、ベース基板44を挟んで互いに対向する。すなわち、第1センサシート20Aの歪ゲージG1~Gnは、ベース基板44を挟んで、第2センサシート20Bの歪ゲージG1~Gnにそれぞれ対向している。ここで、第1センサシートの各歪ゲージG1~Gnと第2センサシートの各歪ゲージG1~Gnとは、ベース基板44の表面に垂直な方向から見た平面視で互いに少なくとも一部が重畳していることが好ましい。或いは、これら各センサシート20A、20Bの歪ゲージG1~Gnは、少なくとも、長手方向Xへのずれを許容しつつも幅方向Yにはずれることなく重畳していることが好ましい。或いは、これら各センサシート20A、20Bの歪ゲージG1~Gnは、長手方向Xにも幅方向Yにもずれることなく重畳していることが好ましい。
【0014】
第1センサシート20Aのグランド線GNL1~GNLnは、FPC14を介して中継基板12の上面上まで延びている。第2センサシート20Bの電源線VL1~VLnは、FPC14を介して中継基板12の背面上まで延びている。本実施形態では、第1センサシート20Aのグランド線GNL1~GNLnは、それぞれ、中継基板12の位置で、第2センサシート20Bの電源線VL1~VLnに電気的に接続されている、すなわち、短絡している。図2に示すように、中継基板12に形成された接続線としてのメッキスルーホールSHにより、グランド線GNL1~GNLnと電源線VL1~VLnとが接続されている。なお、接続線は、メッキスルーホールSHに限らず、中継基板12上の配線パターン等を用いても良い。また、第2センサシート20Bの側のFPC14も中継基板12の上面側と接続することにより、メッキスルーホールではなく中継基板12上の配線を介してこれら第1センサシート20Aのグランド線GNL1~GNLnを第2センサシート20Bの電源線VL1~VLnにそれぞれ接続する構成を採用することも可能である。更には、第1センサシート20Aの側のFPC14及び第2センサシート20Bの側のFPC14を中継基板12の上面側に設けられる駆動回路40と接続し、当該駆動回路40内でこれら第1センサシート20Aのグランド線GNL1~GNLnを第2センサシート20Bの電源線VL1~VLnにそれぞれ接続する構成を採用することも可能である。
【0015】
次に、上記のように構成された第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bを駆動する駆動回路(コントローラ)について説明する。図4は、歪ゲージセンサ装置10の駆動回路を模式的に示すブロック図、図5は、アナログフロントエンドにおける差分検出回路の回路図である。
図4に示すように、中継基板(制御回路基板)12に設けられた駆動回路40は、セレクタSEL、アナログフロントエンド(AFE:信号調整回路)30、タイミングコントローラ34、通信インターフェース36などを有している。
【0016】
通信インターフェース36は、外部のホストコントローラ38に無線あるいは有線接続され、ホストコントローラ38から駆動信号(setting)を受けるとともに、検出データ(Data)をホストコントローラ38に送信する。
タイミングコントローラ34は、駆動信号(setting)に応じて、セレクタSELおよびアナログフロントエンド30に駆動信号を出力する。
セレクタSELは、複数のシフトレジスタ、マルチプレクタ等で構成される。セレクタSELは、タイミングコントローラ34からの駆動信号に応じて、第1センサシート20Aの電源線VL1~VLnを順次、電源に接続し、歪ゲージG1~Gnに順次電圧を印加する。これに同期して、セレクタSEL1は、第1信号線Sa1~San、第2信号線Sb1~Sbnを介して各歪ゲージG1~Gnの一端側および他端側の検出信号(電圧値)RXa1~RXan、RXb1~RXbnを順次読み取る。更に、セレクタSELは、上記読取りに同期して、第2センサシート20Bの第1信号線Sa1~San、第2信号線Sb1~Sbnを介して各歪ゲージG1~Gnの一端側および他端側の検出信号(電圧値)RXc1~RXcn、RXd1~RXdnを順次読み取る。
【0017】
アナログフロントエンド30は、読み出し回路31、差分検出回路30a、30b、AD変換器32、デジタルフィルタ33、メモリ37等を含んでいる(図8参照)。図5に示すように、本実施形態によれば、アナログフロントエンド30は、第1センサシート20Aの検出信号を処理する差分検出回路(減算回路)30a、および第2センサシート20Bの検出信号を処理する差分検出回路(減算回路)30bを含んでいる。アナログフロントエンド30は、駆動信号に応じて、セレクタSELから送られた各歪ゲージG1~Gnの検出信号RXa、RXbおよび検出信号RXc、RXdを信号調整(増幅、AD変換、フィルタリング)し、通信インターフェース36に出力する。この際、曲率半径の算出には各歪ゲージGの電圧降下値が必要となるため、差分検出回路30a、30bによりそれぞれの歪ゲージG1~Gnの検出値Rxa、Rxbの差分、および歪ゲージG1~Gnの検出値Rxc、Rxdの差分、を取って信号出力する。
ホストコントローラ38は、通信インターフェース36から送られた出力信号(データ)を読取り、データ成形、曲面計算等の演算処理を行い、第1および第2センサシート20A、20Bにより検出された被検体の歪、湾曲形態等を算出する。
【0018】
次に、歪ゲージセンサ装置10の検出動作モードについて説明する。
図6は、第1センサシートおよび第2センサシートを被検体の表面に設置した状態を模式的に示す図、図7は、検出動作モードで動作する際の信号出力を示すタイミングチャート、図8および図9は、歪ゲージセンサ装置のスキャン動作を模式的に示す平面図である。
一例では、図6に示すように、歪ゲージセンサ装置10は、被検体50の周面50aに巻き付けて設置され、周面50aの曲面形態を検出する。この場合、歪ゲージセンサ装置10は、第2センサシート20Bの側が周面50aに接触した状態で設置される。
【0019】
検出動作モードでは、電源線および信号線をスキャン駆動することにより、歪ゲージG1~Gnを順次駆動し、歪ゲージG1~Gnの検出値を順次読取る。詳細には、図7に示すように、検出時、タイミングコントローラ34は、ホストコントローラ38からの指示に応じて、スタート信号VD、これに同期するクロック信号HDをセレクタSELに入力し、1フレーム期間において、第1および第2センサシート20A、20Bの歪ゲージG1~Gnを順次駆動(setting)させる。
【0020】
図8に示すように、セレクタSELは、第1センサシート20Aの電源線VL1を駆動し、すなわち、電源線VL1に電源電圧を印加し、歪ゲージG1に所望の電圧PW1を印加する。これにより、一定時間、歪ゲージG1に電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第1信号線Sa1および第2信号線Sb1を介して、歪ゲージG1の一端の検出信号(電圧値)RXa1および歪ゲージG1の他端の検出信号(電圧値)RXb1を取得する。
第1センサシート20Aのグランド線GNL1は、第2センサシート20Bの電源線VL1に繋がっている。より具体的には、第1センサシート20Aの歪ゲージG1と第2センサシート20Bの歪ゲージG1とは、第1センサシート20Aのグランド線GNL1、接続線(メッキスルーホール)及び第2センサシート20Bの電源線VL1を介して直列に接続されている。そのため、第1センサシート20Aの歪ゲージG1を駆動すると第2センサシート20Bの歪ゲージG1が同期して駆動され、当該歪ゲージG1にも電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第2センサシート20Bの第1信号線Sa1および第2信号線Sb1を介して、歪ゲージG1の一端の検出信号(電圧値)RXc1および歪ゲージG1の他端の検出信号(電圧値)RXd1を取得する。
取得した検出信号RXa1、RXb1、RXc1、RXd1は、アナログフロントエンド30に送られ、ここで調整および差分検出された後、メモリ37に格納される。
【0021】
図9に示すように、次いで、セレクタSELは、第1センサシート20Aの電源線VL2を駆動し、すなわち、電源線VL2に電源電圧を印加し、第1センサシート20Aの歪ゲージG2および第2センサシート20Bの歪ゲージG2にそれぞれ所望の電圧PW2を印加する。これにより、対向する2つの歪ゲージG2に一定時間、電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第1センサシート20Aの第1信号線Sa2および第2信号線Sb2を介して、歪ゲージG2の一端の検出信号RXa2および歪ゲージG2の他端の検出信号RXb2を取得する。同時に、セレクタSELは、第2センサシート20Bの第1信号線Sa2および第2信号線Sb2を介して、歪ゲージG2の一端の検出信号RXc2および歪ゲージG2の他端の検出信号RXd2を取得する。
取得した検出信号RXa2、RXb2、RXc2、RXd2は、アナログフロントエンド30に送られ、ここで調整および差分検出された後、メモリ37に格納される。
【0022】
以後、セレクタSELは、第1センサシート20Aの歪ゲージG3~Gnおよび第2センサシート20Bの歪ゲージG3~Gnを順次駆動し、歪ゲージG3~Gnの検出信号RXa3~RXan、RXb3~RXbn、RXc3~RXcn、RXd3~RXdnを順次取得する。取得した検出信号は、順次、アナログフロントエンド30に送られ、調整および差分検出された後、メモリ37に格納される。
【0023】
上述したように、アナログフロントエンド30は、送られた検出信号RXa1~RXan、RXb1~RXbn、および検出信号RXc1~RXcn、RXd1~RXdnを読み出し回路31により順次、読み出して電圧信号に変換し、更に、AD変換器32およびデジタルフィルタ33によりデジタルデータ(Data)とする。更に、アナログフロントエンド30は、差分検出回路30a、30bにより、検出信号RXa1~RXanとRXb1~RXbnとの差分、および検出信号RXc1~RXcn、とRXd1~RXdnとの差分を検出する。検出された差分データは、順次、メモリ37に格納される。アナログフロントエンド30は、1フレーム期間のスキャンが完了した時点で、1フレーム分の差分データをメモリ37から読み出し、ホストコントローラ38に出力する。ホストコントローラ38は、送られたデータに基づいて、被検体50の周面50aの曲面形態を算出する。
【0024】
曲面形態、一例では、曲率半径の算出方法について説明する。
図10は、前述した被検体50の周面50aに設置された歪ゲージセンサ装置の一部を模式的に示す図である。図示のように、周面50a上に設置した状態において、ベース基板44の中立面は、周面50aと同一の曲率半径rで湾曲している。ここで、中立面とは、当該歪ゲージセンサの湾曲前後において伸長も収縮も生じない(すなわち湾曲後もひずみがゼロ)面である。本実施形態においては、中立面は、ベース基板44の厚さ方向の中央(厚さ×1/2)となる位置に設けられている。
外周側に位置する第1センサシート20Aの歪ゲージGaと内周側に位置する第2センサシート20Bの歪ゲージGbとは、径方向に対向しているとともに、互いに異なる曲率半径で湾曲している。
【0025】
図10および以下に示す数式において、W0:歪ゲージの初期幅、Wa:外周側の歪ゲージ幅、Wb:内周側の歪ゲージ幅、ΔW:歪ゲージの変化幅、d:基材厚さ、θ:歪ゲージ開き角、r:中立面の曲率半径、k:ゲージ率、R0:歪ゲージ基準抵抗、ΔR:歪ゲージ抵抗変化をそれぞれ示している。
【0026】
ベース基板44の中立面での歪ゲージGの幅を歪ゲージの初期幅W0とすると、W0=rθとなる。外周側の歪ゲージGaは、湾曲することにより延びた状態に変形し、そのゲージ幅Waは、
【数1】

となる。
内周側の歪ゲージGbは、湾曲することにより縮んだ状態に変形し、そのゲージ幅Wbは、
【数2】

となる。変化幅ΔWは、ΔW=dθ/2であり、中立面(被検体の周面50aに相当)の曲率半径rは、
【数3】

となる。
【0027】
図11は、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの等価回路を模式的に示す図である。
図示のように、本実施形態によれば、第1センサシート20Aのグランド線GNLは、第2センサシート20Bの電源線VLに繋がっている、すなわち、短絡している。これにより、外周側の歪ゲージGaと内周側の歪ゲージGbとが直列に接続されている。歪検出時、各歪ゲージGa、Gbの一端および他端で電圧降下を測定する。
各歪ゲージGa、Gbの変形前の初期抵抗値をR0、変形後の外周側の歪ゲージGaの抵抗値をRa、変形後の内周側の歪ゲージGbの抵抗値をRb、外周側の歪ゲージGaの一端および他端における電圧値をV1、V2、内周側の歪ゲージGbの一端および他端における電圧値をV3、V4、歪ゲージの抵抗変化をΔR、各歪ゲージGa、Gbに流れる電流をI、とすると、歪ゲージGaの一端と他端との間の電圧降下V12、および歪ゲージGbの一端と他端との間の電圧降下V34は、
【数4】

となる。上式を下式で除算すると、
【数5】

の関係となり、歪ゲージ抵抗の変化を用いて表すと以下の式となる。
【数6】

上式より、歪ゲージ抵抗の変化率は、以下の式で算出される。
【数7】
【0028】
上記の関係式を前述した曲率半径rの計算式(1)に当てはめると、以下の通りとなる。
【数8】

歪ゲージセンサ装置10は、各歪ゲージG1~Gnの一端および他端の電圧値を検出し、それらの差分値(V12、V34)と上記式(2)とにより、被検体50の周面50aの曲率半径rを算出することができる。周面50aの複数個所の曲率半径を順次算出することにより、周面50a全体の曲面形態を検出することができる。
なお、歪ゲージセンサ装置10によれば、歪ゲージを表裏の両面に対向して配置した構成とし、更に、側定電圧の差分値に基づいて曲面形態を検出する構成とすることにより、シートセンサ上や中継基板上で引き回されている配線の配線抵抗(Re1~Re5)が存在している場合でも、これらの配線抵抗の影響を受けることなく、歪ゲージの抵抗変化のみを検出することができる。
【0029】
以上のように構成された第1実施形態に係る歪ゲージセンサ装置10によれば、第1センサシートの歪ゲージG1~Gnと第2センサシートの歪ゲージG1~Gnとは、基材を挟んで、互いに対向して配置され、更に、第1センサシートの電源線と第2センサシートのグランド線とを短絡することにより、第1センサシートの歪ゲージと第2センサシートの歪ゲージとがそれぞれ直列に繋がっている。そのため、第1センサシートの歪ゲージG1~Gnの順次駆動(スキャン)に同期して第2センサシートの歪ゲージG1~Gnを順次駆動(スキャン)することができ、表裏で対向する2つの歪ゲージにより同一部位を同時に歪検出することができる。更に、検出時、対向する2つの歪ゲージに一定の電流Iを通電することができ、両歪ゲージの検出信号の差分を取ることにより、高い精度で曲面形態を検出することが可能となる。
前述したように、歪ゲージセンサ装置10では、歪ゲージG1~Gnの抵抗変化のみを検出することができ、検出した信号に歪ゲージの抵抗変化以外の要素(電源-歪ゲージ間の配線抵抗等)が混在しないことから、検出精度の向上を図ることが可能となる。また、複数の歪ゲージG1~Gnを歪ゲージ列の一端側から他端側に向かって順次駆動(スキャン)する構成とすることにより、複数の歪ゲージの全てを同時に駆動する場合に比較して、検出時の消費電力を低減することができる。
以上のことから、本実施形態によれば、検出精度の向上を図ることが可能な歪検出装置を得ることができる。
【0030】
次に、変形例に係る歪ゲージセンサ装置について説明する。以下に述べる変形例において、前述した実施形態と同一の部分には実施形態と同一の参照符号を付して、その詳細な説明を簡略化あるいは省略する場合がある。
(変形例)
図12は、変形例に係る歪ゲージセンサ装置における第1および第2センサシートの断面図である。図示のように、変形例によれば、第1センサシート20Aは、シート基材22が透明粘着シート(OCA)などの接着剤層Adによりベース基板44の前面に貼付されている。第1センサシート20Aの導体パターン(G1~Gn)の側に保護フィルムPFが積層されている。
第2センサシート20Bは、シート基材22が透明粘着シート(OCA)などの接着剤層Adによりベース基板44の背面に貼付されている。第2センサシート20Bの導体パターン(G1~Gn)の側に保護フィルムPFが積層されている。
変形例において、歪ゲージセンサ装置の他の構成は、前述した実施形態に係る歪ゲージセンサ装置の構成と同一である。変形例に係る歪ゲージセンサ装置においても、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0031】
なお、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本発明の実施形態として上述した各構成を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての構成も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0032】
例えば、歪ゲージをスキャン駆動する方向は、先端側の歪ゲージG1から基端側の歪ゲージGnに向う方向に限らず、逆向きで、基端側の歪ゲージGnから先端側の歪ゲージG1に向う方向としても良い。電源線とグランド線とを繋ぐ接続線は、メッキスルーホールに限らず、図8に示すように、セレクタSEL内の配線で構成してもよい。
また、センサシートにおける歪ゲージの配列数は、上述した実施形態に限らず、任意に選択可能である。センサシートの構成材料、寸法、および形状は、前述した実施形態に限定されることなく、適宜、変更可能である。
【符号の説明】
【0033】
10…歪ゲージセンサ装置、12…中継基板、20A…第1センサシート、
20B…第2センサシート、22…シート基材、30a、30b…差分検出回路、
44…ベース基板、G1~Gn…歪ゲージ、VL…電源線、GNL…グランド線、
Sa…第1信号線、Sb…第2信号線、SEL…セレクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12