(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010777
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】鉄心取付装置及び鉄心取付方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20240118BHJP
B22D 41/01 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B22D11/10 310D
B22D41/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112267
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 博之
(72)【発明者】
【氏名】葉山 正信
(72)【発明者】
【氏名】中野 健一郎
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014AA01
(57)【要約】
【課題】本開示は、タンディッシュに対して鉄心を簡易且つ迅速に取り付けることが可能な鉄心取付装置及び鉄心取付方法を説明する。
【解決手段】鉄心取付装置は、タンディッシュ内の溶湯を誘導加熱するように構成された加熱装置の鉄心を、タンディッシュに取り付けるための鉄心取付装置であって、昇降部と、XYステージと、回転ステージと、回転力付与部とを備える。昇降部は、鉄心を直接的又は間接的に昇降させるように構成されている。XYステージは、鉄心を直接的又は間接的に略水平面内において移動させるように構成されている。回転ステージは、鉛直方向に沿って延びる回転軸周りにおいて鉄心を直接的又は間接的に回転させるように構成されている。回転力付与部は、回転軸周りにおいて回転ステージを昇降部又はXYステージに対して回転移動させるように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンディッシュ内の溶湯を誘導加熱するように構成された加熱装置の鉄心を、前記タンディッシュに取り付けるための鉄心取付装置であって、
昇降部と、
XYステージと、
回転ステージと、
回転力付与部とを備え、
前記昇降部、前記XYステージ及び前記回転ステージは、上下方向において順不同に並んで配置されており、
前記昇降部は、前記鉄心を直接的又は間接的に昇降させるように構成されており、
前記XYステージは、前記鉄心を直接的又は間接的に略水平面内において移動させるように構成されており、
前記回転ステージは、鉛直方向に沿って延びる回転軸周りにおいて前記鉄心を直接的又は間接的に回転させるように構成されており、
前記回転力付与部は、前記回転軸周りにおいて前記回転ステージを前記昇降部又は前記XYステージに対して回転移動させるように構成されている、鉄心取付装置。
【請求項2】
前記回転力付与部は、締め込み量が調節可能なボルトであり、前記ボルトの締め込み量に応じて前記回転ステージを前記昇降部又は前記XYステージに対して回転移動させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記回転力付与部は、一端部が前記昇降部又は前記XYステージに接続され且つ他端部が前記回転ステージに接続されたターンバックル式の伸縮器具であり、前記伸縮器具を伸縮させることにより前記回転ステージを前記昇降部又は前記XYステージに対して回転移動させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記回転力付与部は、一端部が前記昇降部又は前記XYステージに接続され且つ他端部が前記回転ステージに接続された電動式の直動アクチュエータであり、前記直動アクチュエータを伸縮させることにより前記回転ステージを前記昇降部又は前記XYステージに対して回転移動させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記回転ステージは、回転ローラ又は摺動部材の上に載置されており、前記回転ローラ又は前記摺動部材を介して滑りながら回転移動するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置を用いて前記鉄心を前記タンディッシュに取り付ける鉄心取付方法であって、
前記回転ステージに前記鉄心を載置する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記XYステージ及び前記回転ステージをそれぞれ移動させて、前記鉄心を前記タンディッシュに対して位置合わせする第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記昇降部によって前記鉄心を前記タンディッシュに向けて上昇させる第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記鉄心を前記タンディッシュに取り付ける第4の工程とを含む、鉄心取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄心取付装置及び鉄心取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造設備は、連続的に鋳片を製造するものであり、溶湯(溶鋼)を貯留するように構成されたタンディッシュと、タンディッシュから供給された溶湯を冷却しつつ所定形状に成形するように構成された鋳型とを含む。特許文献1~3はいずれも、タンディッシュ内の溶湯を加熱するための加熱装置を開示している。加熱装置は、タンディッシュを貫通して取り囲むようにタンディッシュに取り付けられ且つ閉磁気回路を構成する鉄心と、鉄心の周囲に巻かれた誘導コイルとを含む。誘導コイルに電流(交流)を流すことにより、電磁誘導の原理に基づき、タンディッシュ内の溶湯が誘導加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭48-088312号公報
【特許文献2】特開昭57-070066号公報
【特許文献3】特開昭61-038757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、タンディッシュに対して鉄心を簡易且つ迅速に取り付けることが可能な鉄心取付装置及び鉄心取付方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鉄心取付装置の一例は、タンディッシュ内の溶湯を誘導加熱するように構成された加熱装置の鉄心を、タンディッシュに取り付けるための鉄心取付装置であって、昇降部と、XYステージと、回転ステージと、回転力付与部とを備える。昇降部、XYステージ及び回転ステージは、上下方向において順不同に並んで配置されている。昇降部は、鉄心を直接的又は間接的に昇降させるように構成されている。XYステージは、鉄心を直接的又は間接的に略水平面内において移動させるように構成されている。回転ステージは、鉛直方向に沿って延びる回転軸周りにおいて鉄心を直接的又は間接的に回転させるように構成されている。回転力付与部は、回転軸周りにおいて回転ステージを昇降部又はXYステージに対して回転移動させるように構成されている。
【0006】
鉄心取付方法の一例は、上記の装置を用いて鉄心をタンディッシュに取り付ける鉄心取付方法であって、回転ステージに鉄心を載置する第1の工程と、第1の工程の後に、XYステージ及び回転ステージをそれぞれ移動させて、鉄心をタンディッシュに対して位置合わせする第2の工程と、第2の工程の後に、昇降部によって鉄心をタンディッシュに向けて上昇させる第3の工程と、第3の工程の後に、鉄心をタンディッシュに取り付ける第4の工程とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る鉄心取付装置及び鉄心取付方法によれば、タンディッシュに対して鉄心を簡易且つ迅速に取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、連続鋳造設備の一例を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図2は、鉄心取付装置の一例を概略的に示す側面図である。
【
図6】
図6は、鉄心取付装置の他の例を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
【0010】
[連続鋳造設備の構成]
まず、連続鋳造設備100の構成について、
図1を参照して説明する。連続鋳造設備100は、取鍋101と、タンディッシュ102と、鋳型103と、二次冷却帯104と、ピンチロール105と、複数の軽圧下装置106と、複数の鋳片支持ロール107と、鋳片圧下装置108と、切断機109と、加熱装置110と、鉄心取付装置1とを備える。
【0011】
取鍋101は、溶湯(溶鋼)Mを貯留する容器である。タンディッシュ102は、取鍋101の下方に配置されている。タンディッシュ102は、取鍋101から流出した溶湯Mを貯留し、溶湯M内に存在する介在物(例えば、アルミナ等からなる粒状の固形物など)を除去する機能を有する。
【0012】
鋳型103は、タンディッシュ102の下方に配置されている。鋳型103は、タンディッシュ102の底壁に設けられたノズルから流出した溶湯を冷却しながら所定形状に成形して鋳片St(ストランド:Strand)を形成する。
【0013】
二次冷却帯104は、鋳型103の下流側に位置しており、鋳型103から引き抜かれた鋳片Stをさらに冷却する。この冷却過程において、鋳片Stの表面側から徐々に凝固していく。換言すれば、二次冷却帯104を通過した鋳片Stの内部には、未凝固溶鋼が存在している。ピンチロール105は、二次冷却帯104の下流側に位置しており、鋳片Stを曲げ矯正しながら鋳造方向Ar1に沿って下流側に引き抜きぬく。
【0014】
ここで、鋳型103によって成形された鋳片Stは、表面部が凝固した凝固部(凝固シェル)と、凝固シェルの内部において未凝固状態の溶湯である溶融部(未凝固溶鋼)とで構成されている。鋳片Stが下流側に向かうにつれて二次冷却帯104等で冷却され、溶融部が徐々に凝固していき、凝固シェルが成長する。すなわち、凝固シェルの成長に伴って、溶融部が縮小し、凝固シェルの厚みが増加する。鋳片Stが鋳片圧下装置108に至る前までに、鋳片Stは完全に凝固する。
【0015】
複数の軽圧下装置106は、二次冷却帯104の下流側に位置している。軽圧下装置106は、一対の軽圧下ロールで凝固途中の鋳片Stを上下から加圧するように構成されている。具体的には、軽圧下装置106は、鋳片Stのうち溶融部が凝固末期となる箇所の近傍を一対の軽圧下ロールで圧下している。これにより、鋳片Stにおける内部割れ及び中心偏析の発生を抑制している。
【0016】
複数の鋳片支持ロール107は、軽圧下装置106の下流側において、鋳片Stの延在方向に沿って並ぶように配置されている。鋳片支持ロール107は、鋳片Stを冷却しつつ下流側に向けて搬送する機能を有する。
【0017】
鋳片圧下装置108は、軽圧下装置106の下流側に位置している。鋳片圧下装置108は、一対の圧下ロールで凝固後の鋳片Stを上下から加圧するように構成されている。これにより、鋳片Stの中央部分での、鋳片Stの延在方向に延びる微小な空洞の発生を抑制している。
【0018】
切断機109は、鋳片圧下装置108の下流側に位置している。切断機109は、例えばガス切断トーチであり、切断機109に到達した鋳片Stを幅方向に切断する。これにより、製品としての金属片Pが形成される。
【0019】
加熱装置110は、鉄心MGと、誘導コイル(図示せず)とを含む。鉄心MGは、タンディッシュ102に対して着脱可能に構成されている。鉄心MGは、複数に分割されていてもよい。鉄心MGは、
図1に例示されるように、下部鉄心MG1と、上部鉄心MG2とを含んでいてもよい。下部鉄心MG1と、上部鉄心MG2とが組み合わせられることにより、閉磁気回路が構成される。下部鉄心MG1は、タンディッシュ102の底面に対して複数(例えば、6本から8本程度)のボルト(図示せず)によって取り付けられている。すなわち、下部鉄心MG1及びタンディッシュ102の底面には、複数のボルト孔(図示せず)が設けられている。上部鉄心MG2は、タンディッシュ102を貫通して取り囲むようにタンディッシュ102に取り付けられる。誘導コイルは、鉄心MGの周囲に巻かれている。誘導コイルに電流(交流)を流すことにより、電磁誘導の原理に基づき、タンディッシュ102内の溶湯Mが誘導加熱される。
【0020】
[鉄心取付装置の構成]
続いて、
図2~
図5を参照して、鉄心取付装置1の詳細について説明する。鉄心取付装置1は、鉄心MGをタンディッシュ102に取り付けるように構成されている。鉄心取付装置1は、
図2に例示されるように、昇降部10と、XYステージ20と、回転力付与部30と、回転ステージ40とを備える。
【0021】
昇降部10は、XYステージ20及び回転ステージ40を支持して昇降させるように構成されている。昇降部10は、昇降ロッド10aを含んでいる。昇降部10は、図示しないコントローラ(制御部)からの指示に基づいて、昇降ロッド10aを上下動させる。昇降ロッド10aの上端部には、例えば一対の案内レール11が取り付けられている。一対の案内レール11は、例えば、所定の水平方向(例えば、各図のX方向)に延びている。
【0022】
XYステージ20は、回転力付与部30を介して回転ステージ40を支持するように構成されている。XYステージ20は、回転ステージ40を昇降部10に対して略水平面内において移動させるように構成されている。XYステージ20は、Xステージ21と、Yステージ22とを含む。
【0023】
Xステージ21は、案内レール11上に載置されている。Xステージ21は、例えば平板状を呈している。Xステージ21の下面には、複数の支持片21aが設けられている。複数の支持片21aにはそれぞれ、ローラ21bが回転可能に取り付けられている。各ローラ21bはそれぞれ、対応する案内レール11によって支持されている。そのため、Xステージ21は、ローラ21bが案内レール11上を転動することで、案内レール11に沿ってX方向に移動するように構成されている。Xステージ21の上面には、
図2及び
図3に例示されるように、一対の案内レール21cが設けられている。一対の案内レール21cは、例えば、平面視において案内レール11に直交する水平方向(例えば、各図のY方向)に沿って延びている。
【0024】
Yステージ22は、
図2及び
図3に例示されるように、Xステージ21上に載置されている。Yステージ22は、例えば平板状を呈している。Yステージ22の下面には、複数の支持片22aが設けられている。複数の支持片22aにはそれぞれ、ローラ22bが回転可能に取り付けられている。各ローラ22bはそれぞれ、対応する案内レール21cによって支持されている。そのため、Yステージ22は、ローラ22bが案内レール21c上を転動することで、案内レール21cに沿ってY方向に移動するように構成されている。Yステージ22の周囲には、Yステージ22を取り囲むように、複数のガード部材23が設けられている。複数のガード部材23は、Yステージ22の周囲から上方に向けて延びており、回転ステージ40上に載置された下部鉄心MG1が回転ステージ40から落下するのを防止するように構成されている。
【0025】
回転力付与部30は、鉛直方向に沿って延びる回転軸周りにおいて、回転ステージ40をXYステージ20に対して回転移動させるように構成されている。回転力付与部30は、
図2~
図4に例示されるように、案内レール31,32と、摺動部材33,34と、一対のボルト支持片35と、一対のボルト支持片36と、ボルトB1,B2とを含む。
【0026】
案内レール31,32は、Yステージ22の上面に設けられている。案内レール31,32は、例えば、直方体形状を呈していてもよい。案内レール31,32は、例えば、X方向において並ぶように配置されていてもよい。案内レール31,32は、例えば、Y方向に沿って延びて直線状にいてもよい。案内レール31の上面には、
図4及び
図5(a)に例示されるように、案内レール31の延在方向に沿って延びる凹溝31aが設けられている。案内レール32の上面には、
図4及び
図5(b)に例示されるように、案内レール32の延在方向に沿って延びる凹溝32aが設けられている。
【0027】
摺動部材33,34は、これらの上に直接載置される回転ステージ40を滑らかに移動させるように構成されている。摺動部材33,34は、例えば、銅などの固体潤滑剤であってもよい。摺動部材33,34の表面に、低摩擦材料によるコーティング膜が設けられていてもよい。摺動部材33は、案内レール31の上面に設けられている。摺動部材34は、案内レール32の上面に設けられている。
【0028】
一対のボルト支持片35はそれぞれ、ボルトB1を支持するように構成されている。一対のボルト支持片35は、案内レール31及び摺動部材33が間に位置するようにY方向に並んでおり、Yステージ22の側面に設けられている。すなわち、一対のボルト支持片35の一方は、案内レール31及び摺動部材33の一端部に隣接しており、一対のボルト支持片35の他方は、案内レール31及び摺動部材33の他端部に隣接している。
【0029】
ボルト支持片35には、ボルトB1と螺合するネジ穴(図示せず)が設けられている。ネジ穴は、Y方向から見て、案内レール31の凹溝31aと連通している。そのため、ボルトB1をボルト支持片35に対して締めたり緩めたりすることにより、ボルトB1のボルト支持片35に対する締め込み量が変化して、ボルトB1の先端部が案内レール31の凹溝31a内を進退する。
【0030】
一対のボルト支持片36はそれぞれ、ボルトB2を支持するように構成されている。一対のボルト支持片36は、案内レール32及び摺動部材34が間に位置するようにY方向に並んでおり、Yステージ22の側面に設けられている。すなわち、一対のボルト支持片36の一方は、案内レール32及び摺動部材34の一端部に隣接しており、一対のボルト支持片36の他方は、案内レール32及び摺動部材34の他端部に隣接している。
【0031】
ボルト支持片36には、ボルトB2と螺合するネジ穴(図示せず)が設けられている。ネジ穴は、Y方向から見て、案内レール32の凹溝32aと連通している。そのため、ボルトB2をボルト支持片36に対して締めたり緩めたりすることにより、ボルトB2のボルト支持片36に対する締め込み量が変化して、ボルトB2の先端部が案内レール32の凹溝32a内を進退する。
【0032】
回転ステージ40は、下部鉄心MG1を支持するように構成されている。回転ステージ40は、
図2~
図5に例示されるように、支持台41,42と、連結部材43とを含む。
【0033】
支持台41は、摺動部材33の上面と当接しており、摺動部材33に支持されている。支持台41は、各ボルト支持片35のボルト孔にそれぞれ螺合されているボルトB1の先端部によって、Y方向の両側から挟持されている。
【0034】
支持台41の上面は、下部鉄心MG1を支持する支持面として機能する。支持台41の下面には、下方に向けて突出する突起41aが設けられている(
図2~
図4及び
図5(a)参照)。突起41aは、例えば円柱形状を呈していてもよい。突起41aは、案内レール31の凹溝31a内に位置している。そのため、支持台41は、ボルトB1の締め込み量に応じて凹溝31aに沿ってY方向に移動可能である。突起41aの幅は、凹溝31aの幅と同程度であってもよい(
図5(a)参照)。この場合、支持台41は、X方向にはほとんど移動できない。
【0035】
支持台42は、摺動部材34の上面と当接しており、摺動部材34に支持されている。支持台42は、各ボルト支持片36のボルト孔にそれぞれ螺合されているボルトB2の先端部によって、Y方向の両側から挟持されている。
【0036】
支持台42の上面が、下部鉄心MG1を支持する支持面として機能する。支持台42の下面には、下方に向けて突出する突起42aが設けられている(
図2~
図4及び
図5(b)参照)。突起42aは、例えば円柱形状を呈していてもよい。突起42aは、案内レール32の凹溝32a内に位置している。そのため、支持台42は、ボルトB2の締め込み量に応じて凹溝32aに沿ってY方向に移動可能である。突起42aの幅は、凹溝32aの幅よりも小さくてもよい(
図5(b)参照)。この場合、支持台41は、X方向においても移動可能である。
【0037】
連結部材43は、
図2及び
図4に例示されるように、支持台41,42を連結している。そのため、例えば支持台41がボルトB1によって固定されている状態でボルトB2が進退すると、連結部材43を介して支持台41に連結されている支持台42は、支持台41を中心に回転することとなる。すなわち、ボルトB1,B2の締め込み量に応じて、回転ステージ40が平面視において回転する。これにより、回転力付与部30によって回転ステージ40の傾きを調節することができる。
【0038】
[鉄心取付方法]
続いて、鉄心取付装置1によって下部鉄心MG1をタンディッシュ102に取り付ける方法について説明する。
【0039】
まず、下部鉄心MG1を回転ステージ40(支持台41,42)上に載置する。次に、XYステージ20によって、下部鉄心MG1を必要に応じてX方向及び/又はY方向に移動させ、下部鉄心MG1の水平方向における位置を調整する。次に、必要に応じてボルトB1,B2を進退させ、回転ステージ40の傾きを回転力付与部30によって調節する。XYステージ20による調節と、回転力付与部30による調節とは、略同時に実行されてもよいし、一方が他方に対して先行して実行されてもよい。
【0040】
XYステージ20及び回転力付与部30による調節の結果、下部鉄心MG1とタンディッシュ102との位置合わせが完了したら、昇降部10によってXYステージ20、回転力付与部30及び回転ステージ40を上昇させる。これにより、下部鉄心MG1がタンディッシュ102に向けて上昇する。次に、下部鉄心MG1がタンディッシュ102の底面に近接又は当接した状態で、これらのボルト孔を通じてボルトを締結する。これにより、下部鉄心MG1がタンディッシュ102に取り付けられる。
【0041】
[作用]
以上の例によれば、鉄心取付装置1が回転ステージ40を備えており、回転ステージ40がXYステージ20に対して回転移動可能とされている。そのため、回転ステージ40に載置されている下部鉄心MG1をXYステージ20及び回転ステージ40によって変位させることにより、下部鉄心MG1をタンディッシュ102に近づける前に、下部鉄心MG1とタンディッシュ102との位置合わせを予め行える。そのため、下部鉄心MG1を鉄心取付装置1に置き直したり、下部鉄心MG1をタンディッシュ102に対して昇降し直したりする必要がなくなる。したがって、タンディッシュ102に対して下部鉄心MG1を簡易且つ迅速に取り付けることが可能となる。
【0042】
以上の例によれば、ボルトB1,B2の締め込み量に応じて、回転ステージ40がXYステージ20に対して回転移動する。そのため、例えば、作業者がボルトB1,B2を締めたり緩めたりして、ボルトB1,B2の締め込み量を調節することで、回転ズレを簡易且つ迅速に修正することが可能となる。
【0043】
以上の例によれば、回転ステージ40は、摺動部材33,34を介して、XYステージ20上を滑りながら回転移動する。そのため、回転ステージ40がXYステージ20上を回転移動しやすくなるので、回転ズレをより簡易且つ迅速に修正することが可能となる。
【0044】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0045】
(1)鉄心取付装置1は、回転力付与部30及び回転ステージ40に代えて、
図6~
図8に例示される回転力付与部50及び回転ステージ60を備えていてもよい。
【0046】
回転力付与部50は、複数の支持片51と、複数のローラ52(回転ローラ)と、伸縮器具53と、軸受け54と、回転軸55とを含む。複数の支持片51は、Yステージ22の上面に設けられている。複数の支持片51は、
図8に例示されるように、上方から見たときに全体として円形状をなすように配置されている。複数の支持片51は、周方向において略等間隔に配置されていてもよい。複数のローラ52はそれぞれ、対応する支持片51に回転可能に取り付けられている。
【0047】
伸縮器具53は、所定方向に沿って直線状に伸縮可能に構成されている。伸縮器具53は、
図8に例示されるように、ターンバックルであってもよい。すなわち、伸縮器具53は、胴部53aと、胴部53aの一端側に螺合された右ネジ部53bと、胴部53aの他端側に螺合された左ネジ部53cとを含んでいてもよい。この場合、胴部53aをねじることにより、右ネジ部53b及び左ネジ部53cが同時に締め付けられたり緩められたりする。これにより、伸縮器具53の全長が伸縮する。右ネジ部53bの先端部は、Yステージ22に設けられた支持片24に対して、平面内において回転可能に取り付けられていてもよい。左ネジ部53cの先端部は、後述する支持台61に設けられた支持片63に対して、平面内において回転可能に取り付けられていてもよい。
【0048】
軸受け54は、
図7に例示されるように、Yステージ22の上面に設けられている。軸受け54は、例えば有底円筒状を呈している。回転軸55は、後述する支持台61の下面に設けられている。回転軸55は、例えば円柱状を呈している。回転軸55が軸受け54内に挿通された状態において、回転ステージ60(支持台61)は、回転軸55を中心に回転可能である。
【0049】
回転ステージ60は、支持台61と、複数のガード部材62とを含む。支持台61は、複数のローラ52と当接しており、複数のローラ52によって支持されている。そのため、複数のローラ52は、これらの上に直接載置される回転ステージ60(支持台61)を滑らかに移動させるように構成されている。支持台61の上面は、下部鉄心MG1を支持する支持面として機能する。複数のガード部材62は、支持台61の上面に設けられている。複数のガード部材62は、支持台61上に載置された下部鉄心MG1が回転ステージ60から落下するのを防止するように構成されている。
【0050】
図6~
図8の例においては、胴部53aをねじって伸縮器具53を伸縮させることにより、回転ステージ60がXYステージ20に対して回転移動する。そのため、例えば、作業者が胴部53aを締めたり緩めたりして、伸縮器具53の伸縮量を調節することで、回転ズレを簡易且つ迅速に修正することが可能となる。
【0051】
また、
図6~
図8の例においては、回転ステージ60は、ローラ52を介して、XYステージ20上を滑りながら回転移動する。そのため、回転ステージ60がXYステージ20上を回転移動しやすくなるので、回転ズレをより簡易且つ迅速に修正することが可能となる。
【0052】
(2)ボルトB1,B2又は伸縮器具53に代えて、電動式の直動アクチュエータ(図示せず)が用いられてもよい。この場合、例えば、作業者が直動アクチュエータを制御して、直動アクチュエータの伸縮量を調節することで、回転ズレを簡易且つ迅速に修正することが可能となる。
【0053】
(3)以上の例では、昇降部10に対して、XYステージ20及び回転ステージ40,60がこの順に載置されていたが、昇降部10、XYステージ20及び回転ステージ40,60は、上下方向において順不同に並んで配置されていてもよい。すなわち、昇降部10に回転ステージ40,60が載置されており、回転ステージ40,60にXYステージ20が載置されていてもよい。XYステージ20に昇降部10が載置されており、昇降部10に回転ステージ40,60が載置されていてもよい。XYステージ20に回転ステージ40,60が載置されており、回転ステージ40,60に昇降部10が載置されていてもよい。回転ステージ40,60に昇降部10が載置されており、昇降部10にXYステージ20が載置されていてもよい。回転ステージ40,60にXYステージ20が載置されており、XYステージ20に昇降部10が載置されていてもよい。昇降部10、XYステージ20及び回転ステージ40,60の配列に応じて、回転ステージ40,60が昇降部10に対して回転移動するように構成されていてもよいし、回転ステージ40,60がXYステージ20に対して回転移動するように構成されていてもよい。
【0054】
[他の例]
例1.鉄心取付装置の一例は、タンディッシュ内の溶湯を誘導加熱するように構成された誘導加熱装置の鉄心を、タンディッシュに取り付けるための鉄心取付装置であって、昇降部と、XYステージと、回転ステージと、回転力付与部とを備える。昇降部、XYステージ及び回転ステージは、上下方向において順不同に並んで配置されている。昇降部は、鉄心を直接的又は間接的に昇降させるように構成されている。XYステージは、鉄心を直接的又は間接的に略水平面内において移動させるように構成されている。回転ステージは、鉛直方向に沿って延びる回転軸周りにおいて鉄心を直接的又は間接的に回転させるように構成されている。回転力付与部は、回転軸周りにおいて回転ステージを昇降部又はXYステージに対して回転移動させるように構成されている。
【0055】
ところで、連続鋳造設備の使用に伴い、タンディッシュを構成する耐火物を適時に補修する必要がある。その際、鉄心のタンディッシュへの取り付け及び取り外しの作業も必要となる。鉄心の下部をタンディッシュに取り付ける際には、まず、鉄心の下部を鉄心取付装置に載置する。次に、鉄心取付装置のXYステージによって、鉄心の下部に設けられている複数のボルト孔と、タンディッシュの底面に設けられている複数のボルト孔とを位置合わせする。その後、鉄心取付装置によって鉄心の下部をタンディッシュの底面に向けて上昇させ、ボルトによってこれらを固定する。
【0056】
鉄心とタンディッシュとの位置合わせの際に、平面視において、鉄心がタンディッシュに対して傾く(鉛直軸周りの回転方向においてずれる、すなわち「回転ズレ」が生ずる)ことがある。XYステージでは回転ズレを修正することができないので、回転ズレを修正するためには鉄心を鉄心取付装置に置き直したり、鉄心をタンディッシュに対して昇降し直したりする必要がある。しかしながら、鉄心及びタンディッシュは重量物であるので、置き直し作業に手間及び時間を要する。加えて、鉄心の下部及びタンディッシュの両者に設けられている複数のボルト孔を一致させる必要があるため、位置合わせのために高い精度が求められる。例えば、平面内(XY方向)については±2mm以内で、且つ、回転ズレについては1mm/1000mm以内の精度が求められることがある。そのため、正確な位置合わせのために、置き直し作業を繰り返す場合もあり得る。さらに、これらの複数のボルト孔の位置精度や、タンディッシュの経年劣化に伴う熱変形によるボルト孔の位置ずれの発生などに起因して、位置合わせがさらに困難となり得る。
【0057】
これに対して、例1の装置によれば、鉄心取付装置が回転ステージを備えており、回転ステージが昇降部又はXYステージに対して回転移動可能とされている。そのため、昇降部、XYステージ及び回転ステージのいずれかに載置されている鉄心をXYステージ及び回転ステージによって変位させることにより、鉄心をタンディッシュに近づける前に、鉄心とタンディッシュとの位置合わせを予め行える。そのため、鉄心を鉄心取付装置に置き直したり、鉄心をタンディッシュに対して昇降し直したりする必要がなくなる。したがって、タンディッシュに対して鉄心を簡易且つ迅速に取り付けることが可能となる。
【0058】
なお、「昇降部は、鉄心を直接的又は間接的に昇降させるように構成されている」において、「直接的」とは、昇降部の昇降につれて、昇降部に載置されている鉄心も昇降する場合であり、「間接的」とは、鉄心が昇降部以外の他の部材(例えば、XYステージ、回転ステージ)に載置されているときに、昇降部の昇降につれて、当該他の部材と共に鉄心が昇降する場合である。「XYステージは、鉄心を直接的又は間接的に略水平面内において移動させるように構成されている」において、「直接的」とは、XYステージの移動につれて、XYステージに載置されている鉄心も略水平面内において移動する場合であり、「間接的」とは、鉄心がXYステージ以外の他の部材(例えば、昇降部、回転ステージ)に載置されているときに、XYステージの移動につれて、当該他の部材と共に鉄心も略水平面内において移動する場合である。「回転ステージは、鉛直方向に沿って延びる回転軸周りにおいて鉄心を直接的又は間接的に回転させるように構成されている」において、「直接的」とは、回転ステージの回転につれて、回転ステージに載置されている鉄心も回転軸周りに回転する場合であり、「間接的」とは、鉄心が昇降部以外の他の部材(例えば、昇降部、XYステージ)に載置されているときに、回転ステージの回転につれて、当該他の部材と共に鉄心も回転軸周りに回転する場合である。
【0059】
例2.例1の装置において、回転力付与部は、締め込み量が調節可能なボルトであり、ボルトの締め込み量に応じて回転ステージを昇降部又はXYステージに対して回転移動させるように構成されていてもよい。この場合、例えば、作業者がボルトを締めたり緩めたりして、ボルトの締め込み量を調節することで、回転ズレを簡易且つ迅速に修正することが可能となる。
【0060】
例3.例1の装置において、回転力付与部は、一端部が昇降部又はXYステージに接続され且つ他端部が回転ステージに接続されたターンバックル式の伸縮器具であり、伸縮器具を伸縮させることにより回転ステージを昇降部又はXYステージに対して回転移動させるように構成されていてもよい。この場合、例えば、作業者がターンバックルを締めたり緩めたりして、ターンバックルの伸縮量を調節することで、回転ズレを簡易且つ迅速に修正することが可能となる。
【0061】
例4.例1の装置において、回転力付与部は、一端部が昇降部又はXYステージに接続され且つ他端部が回転ステージに接続された電動式の直動アクチュエータであり、直動アクチュエータを伸縮させることにより回転ステージを昇降部又はXYステージに対して回転移動させるように構成されていてもよい。この場合、例えば、作業者が直動アクチュエータを制御して、直動アクチュエータの伸縮量を調節することで、回転ズレを簡易且つ迅速に修正することが可能となる。
【0062】
例5.例1~例4のいずれかの装置において、回転ステージは、回転ローラ又は摺動部材の上に載置されており、回転ローラ又は摺動部材を介して滑りながら回転移動するように構成されていてもよい。この場合、回転ステージが回転移動しやすくなるので、回転ズレをより簡易且つ迅速に修正することが可能となる。
【0063】
例6.鉄心取付方法の一例は、例1の装置を用いて鉄心をタンディッシュに取り付ける鉄心取付方法であって、回転ステージに鉄心を載置する第1の工程と、第1の工程の後に、XYステージ及び回転ステージをそれぞれ移動させて、鉄心をタンディッシュに対して位置合わせする第2の工程と、第2の工程の後に、昇降部によって鉄心をタンディッシュに向けて上昇させる第3の工程と、第3の工程の後に、鉄心をタンディッシュに取り付ける第4の工程とを含む。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0064】
1…鉄心取付装置、10…昇降部、20…XYステージ、30,50…回転力付与部、33,34…摺動部材、40,60…回転ステージ、52…ローラ(回転ローラ)、53…伸縮器具、100…連続鋳造設備、102…タンディッシュ、110…加熱装置、B1,B2…ボルト、M…溶湯、MG…鉄心、MG1…下部鉄心。