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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107772
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240802BHJP
   H02M 7/49 20070101ALI20240802BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240802BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02M7/49
H02M7/48 E
H02J3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011868
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】泉 純太
(72)【発明者】
【氏名】三木 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】伴 尊行
(72)【発明者】
【氏名】水野 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 一雄
(72)【発明者】
【氏名】塚田 浩司
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H770
【Fターム(参考)】
5G066HB09
5G066JB03
5G503BA02
5G503BA03
5G503BB01
5G503DA02
5G503GB06
5H770BA11
5H770DA03
5H770DA23
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03Y
5H770HA03Z
5H770HA06Z
5H770LB02
(57)【要約】
【課題】電池ストリングを用いて交流電力を出力する電源システムにおいて、電池損失の増加を抑制する。
【解決手段】交流スウィープユニットは、Y結線された3個の電池ストリングから交流電力を出力する。ストリング電圧指令V*abcから求めた、ストリング電圧のオフセット成分V*abc_offと、dq軸電圧指令値v*d、v*qを用いて算出した、指令電圧の振幅Vampと、余裕電圧Vmrgと、を加算して、オフセット電圧指令Vst_offsetを算出する。ストリング電圧指令V*abcとオフセット電圧指令Vst_offsetを用いて、ゲート信号のオン時間tonを求め、ゲート信号をデューティ制御することで、指令電圧に応じたオフセット電圧を設定することができ、電池損失の増加を抑制できる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y結線された、第1電池ストリング、第2電池ストリング、および第3電池ストリングから交流電力を出力する交流スウィープユニットと、
前記交流スウィープユニットを制御する制御装置と、を備え、
前記第1電池ストリング、前記第2電池ストリング、および前記第3電池ストリングの各々は、直列接続された複数の電池回路モジュールを含み、
前記複数の電池回路モジュールの各々は、電池と、前記電池に並列に接続された第1スイッチと、前記電池に直列に接続された第2スイッチと、前記第1スイッチがOFF状態かつ前記第2スイッチがON状態であるときに前記電池の電圧が印加される第1出力端子及び第2出力端子とを含み、
前記制御装置は、前記第1電池ストリング、前記第2電池ストリング、および前記第3電池ストリングの各々から出力される交流電圧のオフセット電圧を、前記第1電池ストリング、前記第2電池ストリング、および前記第3電池ストリングの指令電圧に基づいて設定するよう構成されている、電源システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記指令電圧の振幅に基づいて、前記オフセット電圧を設定する、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記第1電池ストリング、前記第2電池ストリング、および前記第3電池ストリングから互いに120°位相の異なる交流電圧を出力するように前記交流スウィープユニットを制御するとともに、
前記第1電池ストリング、前記第2電池ストリング、および前記第3電池ストリングの前記指令電圧のオフセット成分に基づいて、前記オフセット電圧を設定する、請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1電池ストリング、前記第2電池ストリング、および前記第3電池ストリングの各々から出力される最低電圧に基づいて、前記オフセット電圧を設定する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-120255号公報(特許文献1)には、複数の電池回路モジュールを直列接続可能にした電池ストリングを用いて、交流電力(交流電圧)を出力する電源システムが開示されている。電池ストリングに含まれる電池回路モジュールは、電池と、電池に並列に接続された第1スイッチと、電池に直列に接続された第2スイッチと、第1スイッチがOFF状態かつ第2スイッチがON状態であるときに電池の電圧が印加される第1出力端子及び第2出力端子とを備える。電池ストリングに含まれる各電池回路モジュールの第1スイッチ及び第2スイッチを制御することで、電池ストリングの出力電圧を所望の大きさに調整することができる。
【0003】
電池ストリングは、0[V]以上の電圧しか出力できないので、この電源システムでは、複数の電池ストリングから、オフセット電圧を中心とした正弦波の電圧を、位相差をもって出力することにより、交流電力を出力可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-120255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電源システムから出力される交流電力の電圧が同じ場合、オフセット電圧が高く設定されると、電池ストリングから出力する電圧が高くなる。電池ストリングから出力する電圧が高くなると、電池回路モジュールの第1スイッチおよび第2スイッチを駆動するデューティ比が大きくなるため、電池ストリング(電池)の電流実効値が上昇する。電流実効値が上昇すると、電池損失の増加や電源システムの効率の悪化、等が生じる。
【0006】
本開示の目的は、電池ストリングを用いて交流電力を出力する電源システムにおいて、電池損失の増加を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示に係る電源システムは、Y結線された、第1電池ストリング、第2電池ストリング、および第3電池ストリングから交流電力を出力する交流スウィープユニットと、交流スウィープユニットを制御する制御装置と、を備える。第1電池ストリング、第2電池ストリング、および第3電池ストリングの各々は、直列接続された複数の電池回路モジュールを含み、各電池回路モジュールは、電池と、電池に並列に接続された第1スイッチと、電池に直列に接続された第2スイッチと、第1スイッチがOFF状態かつ2スイッチがON状態であるときに電池の電圧が印加される第1出力端子及び第2出力端子とを含む。制御装置は、前記第1電池ストリング、第2電池ストリング、および第3電池ストリングの各々から出力される交流電圧のオフセット電圧を、第1電池ストリング、第2電池ストリング、および第3電池ストリングの指令電圧に基づいて設定するよう構成されている。
【0008】
この構成によれば、電池回路モジュールの第1スイッチと第2スイッチをON/OFFするデューティ比が制御されることにより、各電池ストリングの出力電圧が制御される。Y結線された各電池ストリングが、オフセット電圧を中心とした正弦波の電圧を出力し、交流スウィープユニットから交流電力が出力される。正弦波の電圧は、交流電圧にオフセット電圧を加えた波形であり、本開示では、この電圧を交流電圧とも称する。
【0009】
制御装置は、各電池ストリングから出力される交流電圧のオフセット電圧を、各電池ストリングの指令電圧に基づいて設定する。これにより、指令電圧に応じてオフセット電圧を設定することができ、好適なデューティ比を用いることができるので、電池損失の増加を抑制できる。
【0010】
(2)好ましくは、制御装置は、指令電圧の振幅に基づいて、オフセット電圧を設定するようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、各電池ストリングの指令電圧の振幅に応じてオフセット電圧を設定するので、最低限必要なオフセット電圧を設定することができる。
【0012】
(3)上記(2)において、制御装置は、第1電池ストリング、第2電池ストリング、および第3電池ストリングから互いに120度位相の異なる交流電圧を出力するように交流スウィープユニットを制御するとともに、第1電池ストリング、第2電池ストリング、および第3電池ストリングの指令電圧のオフセット成分に基づいて、オフセット電圧を設定するようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、交流スウィープユニットから、三相交流電力が出力される。出力される三相交流電圧が平衡(平衡三相交流)であるときには、各電池ストリングの指令電圧の加算値はゼロになり、オフセット成分はゼロになる。三相交流電圧が不平衡(不平衡三相交流)である場合には、第1電池ストリング、第2電池ストリング、および第3電池ストリングの指令電圧の総和に1/3を乗算して得られるオフセット成分を、各相の電池ストリングの指令電圧の振幅に加えて、オフセット電圧が設定される。これにより、不平衡三相交流であっても、適切にオフセット電圧を設定できる。
【0014】
(4)上記(1)~(3)において、制御装置は、第1電池ストリング、第2電池ストリング、および第3電池ストリングの各々から出力される最低電圧に基づいて、オフセット電圧を設定するようにしてもよい。
【0015】
電池ストリングの出力電圧が不安定にならないよう、電池ストリングの出力電力の最低電圧が設定される場合もある。この構成によれば、オフセット電圧は、各電池ストリングから出力される最低電圧に応じて設定されるので、交流スウィープユニットから、安定して、交流電力を出力することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、電池ストリングを用いて交流電力を出力する電源システムにおいて、電池損失の増加を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施の形態に係る電源システムの構成を示す図である。
図2】電池ストリングの構成を示す図である。
図3】(A)~(D)は、ゲート信号によって制御される電池回路モジュールの動作の説明する図である。
図4】電源システムが系統連系に用いられる場合おける、機能ブロック図を示す図である。
図5】オフセット電圧を算出するためのブロック図である。
図6】制御装置で実行される、交流スウィープ制御の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
図1は、本開示の実施の形態に係る電源システムの構成を示す図である。図1を参照して、電源システム1は、交流スウィープユニット100と、LCLフィルタ200と、制御装置(スウィープコントローラ)300とを含む。制御装置300はコンピュータであってよく、たとえばプロセッサと記憶装置と通信I/F(インターフェース)とを備える。記憶装置には、たとえば、プロセッサによって実行されるプログラム、及びプログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。
【0020】
交流スウィープユニット100は、3つの電池ストリングSta、Stb、Stcを備える。電池ストリングSta~Stcの各々の負極端子は中性点N1に接続されている。この実施の形態に係る電池ストリングSta、Stb、Stcは、それぞれ本開示に係る「第1電池ストリング」、「第2電池ストリング」、「第3電池ストリング」の一例に相当する。電池ストリングSta~Stcの構成は、実質的に同一であるので、これらの構成について、図2を用いて説明する。以下において、電池ストリングSta~Stcを区別しない場合、電池ストリングSta~Stcを「電池ストリングSt」と称する。
【0021】
図2は、電池ストリングStの構成を示す図である。電池ストリングStは、複数の電池回路モジュールMを備える。本実施の形態において、電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールMの数は14個であるが、その数は任意であり、5~50個であってもよいし、100個以上であってもよい。本実施の形態では、各電池ストリングStが同じ数の電池回路モジュールMを含むが、電池ストリングStごとに電池回路モジュールMの数が異なっていてもよい。
【0022】
電池回路モジュールMはそれぞれ、電力回路SUBと、カートリッジCgとを含む。カートリッジCgは、電池Bと、監視ユニットBSとを含む。電力回路SUBと電池Bとがそれぞれ接続されることによって、電池Bを含む電池回路モジュールMが形成されている。駆動回路SUAは、電池回路モジュールMに含まれるスイッチ(後述するSW11及びSW12)を駆動するように構成される。電池Bは、ニッケル水素二次電池、あるいは、リチウムイオン二次電池であってよく、電動車両で使用された二次電池を直列に接続することにより、電池Bを製造してよい。
【0023】
図2に示すように、電池回路モジュールMは、電力回路SUBと、カートリッジCgと、遮断器RB1及びRB2(以下、区別しない場合は「遮断器RB」と称する)とを含む。電力回路SUBとカートリッジCgとは、遮断器RB1及びRB2を介して、互いに接続されている。遮断機RBは、制御装置300からの指令によって、電力回路SUBとカートリッジCgとの接続状態(導通/遮断)を切り替える。遮断器RBは、ユーザが手動でON/OFFできるように構成されてもよく、この構成によって、カートリッジCgが、電力回路SUBに対して着脱可能にされている。
【0024】
カートリッジCgにおいて、監視ユニットBSは、電池Bの状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出して、検出結果を制御装置300へ出力するように構成される。
【0025】
電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールMは共通の電線PLによって接続されている。電線PLは、各電池回路モジュールMの出力端子OT1及びOT2を含む。電池回路の出力端子OT2が、当該電池回路モジュールMに隣接する電池回路の出力端子OT1と接続されることによって、電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールM同士が接続されている。
【0026】
電力回路SUBは、第1スイッチング素子11(以下、「SW11」と称する)と、第2スイッチング素子12(以下、「SW12」と称する)と、第1ダイオード13と、第2ダイオード14と、チョークコイル15と、コンデンサ16と、出力端子OT1及びOT2とを備える。SW11及びSW12の各々は、駆動回路SUAによって駆動される。この実施の形態に係るSW11、SW12は、それぞれ本開示に係る「第1スイッチ」、「第2スイッチ」の一例に相当する。
【0027】
電力回路SUBの出力端子OT1及びOT2間には、SW11と、コンデンサ16と、電池Bとが並列に接続されている。SW11は、電線PL上に位置し、出力端子OT1と出力端子OT2との接続状態(導通/遮断)を切り替えるように構成される。出力端子OT1は電線BL1を介して電池Bの正極に接続されており、出力端子OT2は電線BL2を介して電池Bの負極に接続されている。電線BL1には、SW12及びチョークコイル15がさらに設けられている。電池回路BCにおいては、電池Bと直列に接続されたSW12がON状態(接続状態)であり、かつ、電池Bと並列に接続されたSW11がOFF状態(遮断状態)であるときに、出力端子OT1及びOT2間に電池Bの電圧が印加される。
【0028】
出力端子OT1,OT2と電池Bとの間には、電線BL1及び電線BL2の各々に接続されたコンデンサ16が設けられている。SW11及びSW12の各々は、たとえばFET(電界効果トランジスタ)である。第1ダイオード13、第2ダイオード14は、それぞれSW11、SW12に対して並列に接続されている。なお、SW11及びSW12の各々は、FETに限られず、FET以外のスイッチであってもよい。
【0029】
制御装置300は、ゲート信号を生成する。駆動回路SUAは、電池回路モジュールMごとに設けられており、ゲート信号に従ってSW11及びSW12を駆動するGD(ゲートドライバ)81と、ゲート信号を遅延させる遅延回路82とを含む。電池回路モジュールMに含まれるSW11及びSW12の各々は、ゲート信号に従ってON/OFF制御される。
【0030】
図3は、ゲート信号によって制御される電池回路モジュールMの動作の説明する図である。図3(A)は、電池回路モジュールMの動作の一例を示すタイムチャートであり、本実施の形態では、SW11及びSW12を駆動するためのゲート信号として、矩形波信号を採用する。図3(A)中に示されるゲート信号の「Low」、「High」は、それぞれゲート信号(矩形波信号)のLレベル、Hレベルを意味する。また、「出力電圧」は、出力端子OT1及びOT2間に出力される電圧を意味する。電池回路モジュールMの初期状態では、駆動回路SUAにゲート信号が入力されず(ゲート信号=Lレベル)、SW11、SW12がそれぞれON状態、OFF状態になっている。本実施の形態では、電池回路モジュールMを駆動するためのゲート信号として、矩形波信号を採用している。SW11及びSW12は、ゲート信号の立ち上がり/立ち下がりに応じて状態(ON/OFF)が切り替わる。制御装置300は、ゲート信号を用いてPWM(パルス幅変調)制御を行なう。
【0031】
駆動回路SUAにゲート信号が入力されると、GD31が、入力されたゲート信号に従ってSW11及びSW12を駆動する。図3に示す例では、タイミングt1で、ゲート信号がLレベルからHレベルに立ち上がり、ゲート信号の立ち上がりと同時にSW11がON状態からOFF状態に切り替わる。そして、ゲート信号の立ち上がりから所定の時間(デッドタイムdt1)だけ遅れたタイミングt2で、SW12がOFF状態からON状態に切り替わる。これにより、電池回路モジュールMが駆動状態になり、図3(B)に示すように、SW11がOFF状態かつSW12がON状態になることで、出力端子OT1及びOT2間に電池Bの電圧が印加される。
【0032】
図3(A)を参照して、タイミングt3で、ゲート信号がHレベルからLレベルに立ち下がると、ゲート信号の立ち下がりと同時にSW12がON状態からOFF状態に切り替わる。これにより、電池回路モジュールMが停止状態になる。停止状態の電池回路モジュールMでは、SW12がOFF状態になることで、出力端子OT1及びOT2間に電池Bの電圧が印加されなくなる。その後、ゲート信号の立ち下がりから所定の時間(デッドタイムdt2と表記する)だけ遅れたタイミングt4で、SW11がOFF状態からON状態に切り替わる。なお、デッドタイムdt1とデッドタイムdt2とは互いに同じであっても異なってもよい。
【0033】
デッドタイムdt1、dt2においては、図3(C)に示すように、SW11とSW12の両方がOFF状態になる。これにより、SW11及びSW12が同時にON状態になること(電池回路モジュールMが短絡状態になること)が抑制される。
【0034】
デッドタイムdt2の終了(t4)から電池回路モジュールMが駆動状態になるまでの期間を「停止期間」と称すると、停止期間では、図3(D)に示すように、初期状態と同様に、SW11がON状態かつSW12がOFF状態になる。
【0035】
ゲート信号は、遅延回路82によって、所定の遅延時間Tdずつ遅延されて、上流の駆動回路SUAから下流の駆動回路SUAへ伝達される。本実施の形態では、電池回路モジュールMの数は14個であり、ゲート信号の周期Tは、Td×14とされており、デューティ比(Hレベルの時間:オン時間ton)を制御することにより、駆動状態の電池回路モジュールMの数を調整することができる。
【0036】
電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールMを、上述のように制御することにより、駆動状態の電池回路モジュールMの数を調整することができ、電池ストリングStの出力電圧を制御することができる。これにより、電池ストリングStは、0Vから、電池ストリングStに含まれる各電池B(カートリッジCg)の電圧の総和までの電圧を出力可能とされている。
【0037】
再び図1を参照して、第1電池ストリングStaの正極端子は、電力線PLuに接続されている。第2電池ストリングStbの正極端子は、電力線PLvに接続され、第3電池ストリングStcの正極端子は、電力線PLwに接続されている。また、各電池ストリングSta~Stcの負極端子は、中性点N1に接続されており、各電池ストリングSta~Stcの出力電圧極性が中性点で同じになるようY結線されている。
【0038】
制御装置300からの制御指令により、電池ストリングSta~Stcのストリング電圧(出力電圧)を、図1の左上に示した電圧波形になるよう制御する。図1において、線Vaは、第1電池ストリングStaのストリング電圧「Va」であり、線Vbは、第2電池ストリングStbのストリング電圧「Vb」であり、線Vcは、第3電池ストリングStcのストリング電圧「Vc」である。各電圧Va,Vb,Vcは、オフセット電圧Voffsetを中心とした正弦波であり、位相が互いに120°ずれている。
【0039】
このように、各電池ストリングSta~Stcのストリング電圧Va~Vcが制御されることにより、電力線PLu、PLv、およびPLwの線間電圧は、図1の右上に示した電圧波形になる。線Vuvは、電力線PLuと電力線PLvの線間電圧「Vuv」を示し、線Vwuは、電力線PLwと電力線PLuの線間電圧「Vwu」を示し、線Vvwは、電力線PLvと電力線Plwの線間電圧「Vvw」を示している。各線間電圧は、周期的に極性(正/負)が変わる正弦波交流波形になる。これにより、交流スウィープユニット100から、交流電力(三相交流電力)が出力される。
【0040】
図1において、LCLフィルタ200は、電力線PLu、PLv、及びPLwに対してそれぞれ設けられた、連系リアクトルLmu、Lmv、Lmwと、フィルタコンデンサCfu、Cfv、Cfwと、フィルタリアクトルLfu、Lfv、Lfwとを含む。フィルタコンデンサCfu、Cfv、及びCfwの各々の一端は、中性点N2に接続されている。フィルタコンデンサCfu、Cfv、Cfwには、それぞれ電圧センサVu、Vv、Vwが設けられており、フィルタコンデンサCfu、Cfv、Cfwの電圧を検出して、検出値を制御装置300へ出力するように構成される。
【0041】
また、第1電池ストリングStaの出力電流Iaを検出する電流センサIa、第2電池ストリングStbの出力電流Ibを検出する電流センサIb、および、第3電池ストリングStcの出力電流Icを検出する電流センサIcが設けられており、これらの検出値が制御装置300へ入力される。なお、LCLフィルタ200は、分電盤を介して、宅内や電力系統に接続されてよい。
【0042】
このように構成された交流スウィープユニット100において、ストリング電圧のオフセット電圧Voffsetが高いと、線間電圧Vuv~Vwuの電圧(交流電力の電圧)が同じ場合であっても、ストリング電圧Va~Vcを高くする必要がある。ストリング電圧Va~Vcは、「PWM制御のデューティ比(%)×(カートリッジの電圧×カートリッジの数」によって決定する。このため、オフセット電圧Voffsetが高く設定されると、デューティ比が大きくなる。デューティ比が大きくなると、電池Bから出力される電力の電流実効値が上昇する。電流実効値が上昇すると、電池Bの損失が増加し、電源システム1(交流スウィープユニット100)の効率が悪化する。本実施の形態では、オフセット電圧Voffsetの値を適切に設定することにより、電池Bの損失の増加を抑制する。
【0043】
図4は、電源システム1が系統連系に用いられる場合おける、ブロック図を示す図である。このブロック図は、制御装置300に構成され、電池ストリングStの電圧指令V*abcを算出する。なお、図4のブロック図は、特開2022-120255号公報(特許文献1)に開示されたブロック図と実質的に同一であるので、簡略な説明を行う。
【0044】
まず、LCLフィルタ200のフィルタコンデンサCfu、Cfv、Cfwの電圧センサで検出した、系統相電圧Vu、Vv、Vwから、PLL(Phase Lock Loop)により系統電圧の位相θgを算出する。次に、電圧位相θgと系統相電圧Vu、Vv、Vwによりabc/dq変換を行い、dq軸電圧vd、vqを算出する。また、電池ストリングStの出力電流Ia、Ib、Icをabc/dq変換し、dq軸電流id、iqを算出する。次に、電源システム1に対する電力指令P*とd軸電圧vdとから、d軸指令電流idcomを算出する。無効電力をゼロ(0)にする場合には、q軸指令電流iqcomは、0に設定される。
【0045】
dq軸指令電流idcom、iqcomとdq軸電流id、iqを用いて、PI制御によって、dq軸指令電圧フィードバック(FB)項v*dfbとv*qfbを算出する。これらのdq軸指令電圧FB項に、vd指令フィードフォワード(FF)項、vq指令FF項を加算して、d軸電圧指令値v*dおよびq軸電圧指令値v*qを求める。そして、dq軸電圧指令値v*d、v*qをdq/abc変換することにより、dq軸から三相のabc軸への変換を行い、電池ストリングStの電圧指令V*abc(第1電池ストリングStaの電圧指令V*a、第2電池ストリングStbの電圧指令V*b、第3電池ストリングの電圧指令V*c)を算出する。なお、電池ストリングStの電圧指令V*abcは、本開示の「指令電圧」の一例に相当する。
【0046】
図5は、オフセット電圧Voffsetを算出するためのブロック図である。このブロック図は、制御装置300に構成され、電池ストリングStのオフセット電圧指令Vst_offsetを算出する。まず、図4のブロック図で算出した、ストリング電圧指令V*abc(第1電池ストリングStaの電圧指令V*a、第2電池ストリングStbの電圧指令V*b、第3電池ストリングの電圧指令V*c)の総和に1/3を乗算して、ストリング電圧指令V*abcのオフセット成分V*abc_offを算出する。ストリング電圧指令V*abcが平衡三相交流(三相平衡電圧)である場合には、オフセット成分V*abc_offは、ゼロ(0)になる。
【0047】
図4のブロック図で算出したdq軸電圧指令値v*d、v*qを用いて、d軸電圧指令値v*dの2乗値とq軸電圧指令値v*qの2乗値を加算し、この加算値の平方根を、指令電圧(電圧指令V*abc)の振幅Vampとして算出する。オフセット成分V*abc_offと、指令電圧の振幅Vampと、余裕電圧Vmrgとを加算して、オフセット電圧指令Vst_offsetを算出する。余裕電圧Vmrgは、電池ストリングStから出力可能な最低電圧であり、たとえば、カートリッジCgの出力電圧であってよい。本実施の形態では、電池ストリングStに含まれるカートリッジCgの電池Bは、すべて同じ仕様であり、カートリッジCg(電池B)の電圧は、たとえば44.4[V]であり、余裕電圧Vmrgは44.4[V]に設定されている。
【0048】
制御装置300は、ストリング電圧指令V*abcとオフセット電圧指令Vst_offsetを用いて、ゲート信号のオン時間tonを、式(1)から算出する。
ton=(V*abc+Vst_offset)×(td/Vbave_abc)・・・(1)
なお、Vbave_abcは、電池ストリングSta~Stcの各々の電池回路モジュールMの平均電圧である。
【0049】
式(1)で算出したオン時間tonが達成されるよう、電池ストリングSta~Stcの各々における、ゲート信号のデューティ比を制御すると、電池ストリングSta~Stcの各々から出力される交流電圧のオフセット電圧Voffsetが、とオフセット電圧指令Vst_offsetに対応した電圧になる。
【0050】
図6は、制御装置300で実行される、交流スウィープ制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、電源システム1の作動中、所定期間毎に繰り返し処理される。まず、ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10では、LCLフィルタ200のフィルタコンデンサCfu、Cfv、Cfwの電圧センサで検出した、系統相電圧Vu、Vv、Vw(Vuvw)と、電流センサIa~Icで検出した、電池ストリングStの出力電流Ia、Ib、Ic(Iabc)を取得する。続くS11では、図4のブロック図で説明したように、ストリング電圧指令V*abcを算出したあと、S12へ進む。S12では、図5のブロック図を用いて、オフセット電圧指令Vst_offsetを算出する。続くS13では、式(1)を用いて、ゲート信号のオン時間tonを算出し、今回のルーチンを終了する。
【0051】
本実施の形態によれば、電池ストリングSta~Stcの各々から出力される交流電圧のオフセット電圧Voffsetを、電池ストリングSta~Stcの電圧指令V*abcに基づいて設定している。これにより、電圧指令V*abcに応じてオフセット電圧Voffsetを設定することができ、好適なデューティ比を用いることができるので、電池Bの損失の増加を抑制できる。
【0052】
上記実施の形態では、図5のブロック図において、ストリング電圧指令V*abcのオフセット成分V*abc_offを算出していた。しかし、ストリング電圧指令V*abcが平衡三相交流(三相平衡電圧)である場合には、オフセット成分V*abc_offを算出しなくともよい。
【0053】
上記実施の形態では、オフセット電圧指令Vst_offsetに、余裕電圧Vmrgを加えていたが、電池ストリングStから出力可能な最低電圧が設定されていない場合には、余裕電圧Vmrgを用いることなく、オフセット電圧指令Vst_offsetを算出するようにしてもよい。
【0054】
上記実施の形態において、交流スウィープユニット100は、3つの電池ストリングSta、Stb、Stcから構成されているが、電池ストリングSta~Stcの各々は、並列に接続された複数の電池ストリングから構成されてもよい。
【0055】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 電源システム、11 第1スイッチング素子(SW)、12 第2スイッチング素子(SW)、81 ゲートドライバ(GD)、82 遅延回路、100 交流スウィープユニット 電池、200 LCLフィルタ、300 制御装置(スウィープコントローラ)、B 電池、Cg カートリッジ、M 電池回路モジュール、OT1,OT2 出力端子、St,Sta,Stb,Stc 電池ストリング、SUA 駆動回路、SUB 電力回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6