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特開2024-107776ワイヤレス給電システム、送電装置、送電電圧制御方法および充電電流制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107776
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電システム、送電装置、送電電圧制御方法および充電電流制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20240802BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240802BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011872
(22)【出願日】2023-01-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】313005318
【氏名又は名称】パナソニックコネクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 達雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 修一郎
【テーマコード(参考)】
5G064
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA11
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503GB03
5G503GB08
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】一次側から二次側への電力伝送における力率を加味して送電電圧を適切に制御し、二次側でのDC/DC電源の動作停止を抑制しながら送電効率の向上を図る。
【解決手段】送電装置は、受電装置への送電電力を生成する送電回路と、送電回路の送電電流および送電回路の送電電圧に基づいて、送電電力の力率を算出する解析回路と、を備える。受電装置は、水中において送電装置からワイヤレスで伝送された送電電力を受電する受電回路と、受電回路で受電された受電電力に基づいて蓄電池を充電する電源回路と、電源回路への受電電流および電源回路に供給する受電電圧に基づいて、蓄電池に係る等価抵抗値を算出する受電側プロセッサと、を備える。送電装置は、等価抵抗値および力率に基づいてサーバから指示される送電電圧指令に応じて、送電電力を送電回路において可変可能に制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中を移動可能であって蓄電池を有する受電装置と、サーバと通信可能に接続される送電装置と、を含むワイヤレス給電システムであって、
前記送電装置は、
前記受電装置への送電電力を生成する送電回路と、
前記送電回路の送電電流および前記送電回路の送電電圧に基づいて、前記送電電力の力率を算出する解析回路と、
前記受電装置および前記サーバとの間で通信可能な第1の通信回路と、を備え、
前記受電装置は、
前記水中において前記送電装置からワイヤレスで伝送された前記送電電力を受電する受電回路と、
前記受電回路で受電された受電電力に基づいて前記蓄電池を充電する電源回路と、
前記電源回路の受電電流および前記電源回路に供給する受電電圧に基づいて、前記蓄電池に係る等価抵抗値を算出する受電側プロセッサと、
前記送電装置との間で通信可能な第2の通信回路と、を備え、
前記送電装置は、
前記等価抵抗値および前記力率に基づいて前記サーバから指示される送電電圧指令に応じて、前記送電電力を前記送電回路において可変可能に制御する、
ワイヤレス給電システム。
【請求項2】
前記サーバ、を更に備え、
前記サーバは、
前記等価抵抗値が所定値以上であって前記力率が第1の範囲内である場合、前記送電電圧を現在の送電電圧より所定値増加する第1の送電電圧指令を前記送電電圧指令として前記送電装置に送る、
請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項3】
前記サーバは、
前記等価抵抗値が前記所定値以上であって前記力率が前記第1の範囲より小さい第2の範囲内である場合、前記送電電圧を現在の送電電圧に維持する第2の送電電圧指令を前記送電電圧指令として前記送電装置に送る、
請求項2に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項4】
前記サーバは、
前記等価抵抗値が前記所定値以上であって前記力率が前記第2の範囲より小さい第3の範囲内である場合、前記送電電圧を現在の送電電圧より所定値減少する第3の送電電圧指令を前記送電電圧指令として前記送電装置に送る、
請求項3に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項5】
前記サーバ、を更に備え、
前記サーバは、
前記等価抵抗値が所定値未満であって前記力率が第1の範囲内である場合、前記送電電圧を現在の送電電圧より所定値減少する第4の送電電圧指令を前記送電電圧指令として前記送電装置に送る、
請求項1に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項6】
前記サーバは、
前記等価抵抗値が前記所定値未満であって前記力率が前記第1の範囲より小さい第2の範囲内である場合、前記送電電圧を現在の送電電圧に維持する第5の送電電圧指令を前記送電電圧指令として前記送電装置に送る、
請求項5に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項7】
前記サーバは、
前記等価抵抗値が前記所定値未満であって前記力率が前記第2の範囲より小さい第3の範囲内である場合、前記送電電圧を現在の送電電圧より所定値増加する第6の送電電圧指令を前記送電電圧指令として前記送電装置に送る、
請求項6に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項8】
水中を移動可能であって蓄電池を有する受電装置とサーバとの間で通信可能に接続される送電装置であって、
前記受電装置への送電電力を生成する送電回路と、
前記送電回路の送電電流および前記送電回路の送電電圧に基づいて、前記送電電力の力率を算出する解析回路と、
前記受電装置および前記サーバとの間で通信可能な第1の通信回路と、を備え、
前記送電回路は、前記サーバから送られる、前記力率と前記受電装置により算出される前記蓄電池に係る等価抵抗値とに基づく送電電圧指令に応じて、前記送電電力を前記送電回路において可変可能に制御する、
送電装置。
【請求項9】
水中を移動可能であって蓄電池を有する受電装置と、サーバと通信可能に接続される送電装置と、を含むワイヤレス給電システムにより実行される送電電圧制御方法であって、
前記送電装置が、
前記受電装置への送電電力を生成し、
送電回路の送電電流および前記送電回路の送電電圧に基づいて、前記送電電力の伝送に関する力率を算出し、
前記受電装置および前記サーバとの間で通信可能に接続し、
前記受電装置が、
前記水中において前記送電装置からワイヤレスで伝送された前記送電電力を受電し、
受電された受電電力に基づいて前記蓄電池を充電し、
前記受電電力に起因する受電電流および受電電圧に基づいて、前記蓄電池に係る等価抵抗値を算出し、
前記送電装置との間で通信可能に接続し、
前記送電装置が、
前記等価抵抗値および前記力率に基づいて前記サーバから指示される送電電圧指令に応じて、前記送電電力を前記送電回路において可変可能に制御する、
送電電圧制御方法。
【請求項10】
水中を移動可能であって蓄電池を有する受電装置と、サーバと通信可能に接続される送電装置と、を含むワイヤレス給電システムであって、
前記送電装置は、
前記受電装置への送電電力を生成する送電回路と、
前記送電回路の送電電流および前記送電回路の送電電圧に基づいて、前記送電電力の力率を算出する解析回路と、
前記受電装置および前記サーバとの間で通信可能な第1の通信回路と、を備え、
前記受電装置は、
前記水中において前記送電装置からワイヤレスで伝送された前記送電電力を受電する受電回路と、
前記受電回路で受電された受電電力に基づく充電電流により前記蓄電池を充電する電源回路と、
前記送電装置との間で通信可能な第2の通信回路と、を備え、
前記受電装置は、
前記力率に基づいて前記サーバから指示される充電電流指令に応じて、前記充電電流を前記電源回路において可変可能に制御する、
ワイヤレス給電システム。
【請求項11】
前記サーバ、を更に備え、
前記サーバは、
前記力率が第1の範囲内である場合、前記充電電流を現在の充電電流より所定値減少する第1の充電電流指令を前記充電電流指令として前記受電装置に送る、
請求項10に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項12】
前記サーバは、
前記力率が前記第1の範囲より小さい第2の範囲内である場合、前記充電電流を現在の充電電流に維持する第2の充電電流指令を前記充電電流指令として前記受電装置に送る、
請求項11に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項13】
前記サーバは、
前記力率が前記第2の範囲より小さい第3の範囲内である場合、前記充電電流を現在の充電電流より所定値増加する第3の充電電流指令を前記充電電流指令として前記受電装置に送る、
請求項12に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項14】
水中を移動可能であって蓄電池を有する受電装置と、サーバと通信可能に接続される送電装置と、を含むワイヤレス給電システムにより実行される充電電流制御方法であって、
前記送電装置が、
前記受電装置への送電電力を生成し、
送電回路の送電電流および前記送電回路の送電電圧に基づいて、前記送電電力の力率を算出し、
前記受電装置および前記サーバとの間で通信可能に接続し、
前記受電装置が、
前記水中において前記送電装置からワイヤレスで伝送された前記送電電力を受電し、
受電された受電電力に基づく充電電流によって前記蓄電池を充電し、
前記送電装置との間で通信可能に接続し、
前記受電装置が、
前記力率に基づいて前記サーバから指示される充電電流指令に応じて、前記蓄電池への充電電流を可変可能に制御する、
充電電流制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤレス給電システム、送電装置、送電電圧制御方法および充電電流制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水中において、受電装置(例えば水中航走体)との間で磁気共鳴方式を用いて非接触で電力を伝送する送電装置(例えば水中基地局)が開示されている。この送電装置は、送電用共鳴コイルと、風船と、風船制御機構とを備える。送電用共鳴コイルは、磁界共鳴方式により受電装置の受電用共鳴コイルに非接触で電力を伝送する。風船は、送電用共鳴コイルを内包する。風船制御機構は、風船を電力伝送時に膨張させることにより、送電用共鳴コイルと受電用共鳴コイルとの間の水を排除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-015901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1のように水中(例えば海中)で送電装置から受電装置へワイヤレスで電力を伝送することを想定する。
【0005】
受電装置は、蓄電池を保持し、具体的には自立型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)等の水中航走体が該当する。磁気共鳴方式を用いた水中(例えば海中)でのワイヤレス電力伝送(給電)では、送電装置と受電装置との間の電力伝送における整合条件にある程度の許容幅を持つことが可能である。これにより、送電装置から、受電装置をポジションフリー(つまり送電コイルと磁気結合する受電コイルを有する受電装置の相対的な位置が非固定)のままで電力伝送を行うことが可能である。その一方で、特に海中では海流の影響によって受電装置は位置を安定化させることが容易ではないこともあり、送電装置(特に送電コイル)と受電装置(特に受電コイル)との間の位置あるいは角度等の条件によっては、送電装置から受電装置への送信電力あるいは送電効率が低下するという課題がある。
【0006】
磁気共鳴方式を用いたワイヤレス電力伝送では、受電装置内の蓄電池への充電用電源としてDC/DC電源を採用することがある。この場合、送電装置と受電装置との間の電力伝送における整合条件(上述参照)に合致させると、受電装置に搭載されているDC/DC電源の変換効率の限界(上限)を超える電力供給が必要になる場合があり、この時DC/DC電源の動作が限界能力以上の出力で停止してしまう。このとき受電装置の充電回路内におけるインピーダンスが急増して高電圧が発生し、受電装置内の充電回路内における各電子機器等の破損を招きかねないという課題があった。
【0007】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、一次側から二次側への電力伝送における力率を加味して送電電圧を適切に制御し、二次側でのDC/DC電源の動作停止を抑制しながら送電効率の向上を図るワイヤレス給電システム、送電装置、送電電圧制御方法および充電電流制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、水中を移動可能であって蓄電池を有する受電装置と、サーバと通信可能に接続される送電装置と、を含むワイヤレス給電システムであって、前記送電装置は、前記受電装置への送電電力を生成する送電回路と、前記送電回路の送電電流および前記送電回路の送電電圧に基づいて、前記送電電力の力率を算出する解析回路と、前記受電装置および前記サーバとの間で通信可能な第1の通信回路と、を備え、前記受電装置は、前記水中において前記送電装置からワイヤレスで伝送された前記送電電力を受電する受電回路と、前記受電回路で受電された受電電力に基づいて前記蓄電池を充電する電源回路と、前記電源回路の受電電流および前記電源回路に供給する受電電圧に基づいて、前記蓄電池に係る等価抵抗値を算出する受電側プロセッサと、前記送電装置との間で通信可能な第2の通信回路と、を備え、前記送電装置は、前記等価抵抗値および前記送電電力の力率(以下、単に「力率」と記す)に基づいて前記サーバから指示される送電電圧指令に応じて、前記送電電力を前記送電回路において可変可能に制御する、ワイヤレス給電システムを提供する。
【0009】
また、本開示は、水中を移動可能であって蓄電池を有する受電装置とサーバとの間で通信可能に接続される送電装置であって、前記受電装置への送電電力を生成する送電回路と、前記送電回路の送電電流および前記送電回路の送電電圧に基づいて、前記送電電力の力率を算出する解析回路と、前記受電装置および前記サーバとの間で通信可能な第1の通信回路と、を備え、前記送電回路は、前記サーバから送られる、前記力率と前記受電装置により算出される前記蓄電池に係る等価抵抗値とに基づく送電電圧指令に応じて、前記送電電力を前記送電回路において可変可能に制御する、送電装置を提供する。
【0010】
また、本開示は、水中を移動可能であって蓄電池を有する受電装置と、サーバと通信可能に接続される送電装置と、を含むワイヤレス給電システムにより実行される送電電圧制御方法であって、前記送電装置が、前記受電装置への送電電力を生成し、送電回路の送電電流および前記送電回路の送電電圧に基づいて、前記送電電力の伝送に関する力率を算出し、前記受電装置および前記サーバとの間で通信可能に接続し、前記受電装置が、前記水中において前記送電装置からワイヤレスで伝送された前記送電電力を受電し、受電された受電電力に基づいて前記蓄電池を充電し、前記受電電力に起因する受電電流および受電電圧に基づいて、前記蓄電池に係る等価抵抗値を算出し、前記送電装置との間で通信可能に接続し、前記送電装置が、前記等価抵抗値および前記力率に基づいて前記サーバから指示される送電電圧指令に応じて、前記送電電力を前記送電回路において可変可能に制御する、送電電圧制御方法を提供する。
【0011】
また、本開示は、水中を移動可能であって蓄電池を有する受電装置と、サーバと通信可能に接続される送電装置と、を含むワイヤレス給電システムであって、前記送電装置は、前記受電装置への送電電力を生成する送電回路と、前記送電回路の送電電流および前記送電回路の送電電圧に基づいて、前記送電電力の力率を算出する解析回路と、前記受電装置および前記サーバとの間で通信可能な第1の通信回路と、を備え、前記受電装置は、前記水中において前記送電装置からワイヤレスで伝送された前記送電電力を受電する受電回路と、前記受電回路で受電された受電電力に基づく充電電流により前記蓄電池を充電する電源回路と、前記送電装置との間で通信可能な第2の通信回路と、を備え、前記受電装置は、前記力率に基づいて前記サーバから指示される充電電流指令に応じて、前記充電電流を前記電源回路において可変可能に制御する、ワイヤレス給電システムを提供する。
【0012】
また、本開示は、水中を移動可能であって蓄電池を有する受電装置と、サーバと通信可能に接続される送電装置と、を含むワイヤレス給電システムにより実行される充電電流制御方法であって、前記送電装置が、前記受電装置への送電電力を生成し、送電回路の送電電流および前記送電回路の送電電圧に基づいて、前記送電電力の力率を算出し、前記受電装置および前記サーバとの間で通信可能に接続し、前記受電装置が、前記水中において前記送電装置からワイヤレスで伝送された前記送電電力を受電し、受電された受電電力に基づく充電電流によって前記蓄電池を充電し、前記送電装置との間で通信可能に接続し、前記受電装置が、前記力率に基づいて前記サーバから指示される充電電流指令に応じて、前記蓄電池への充電電流を可変可能に制御する、充電電流制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、一次側から二次側への電力伝送における力率を加味して送電電圧を適切に制御でき、二次側でのDC/DC電源の動作停止を抑制しながら送電効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】各実施の形態に係るワイヤレス給電システムが設置される使用環境例を模式的に示す図
図2】各実施の形態に係るワイヤレス給電システムのハードウェア構成例を示す図
図3】送電側プロセッサおよび受電側プロセッサの機能構成例を詳細に示すブロック図
図4】定電流充電する際の受電装置の等価抵抗値に対する送電電力、伝送効率、力率の各特性例を示すグラフ
図5】実施の形態1に係る充電制御サーバの動作手順例を時系列に示すフローチャート
図6】実施の形態1に係る充電制御サーバの動作手順例を時系列に示すフローチャート
図7】送電電力が一定である際の受電装置の等価抵抗値に対する充電電流、伝送効率、力率の各特性例を示すグラフ
図8】実施の形態2に係る充電制御サーバの動作手順例を時系列に示すフローチャート
図9】蓄電池電圧、充電電流、DC/DC電源電圧、出力停止コマンドのそれぞれの時系列変化例を示すタイムチャート
図10】実施の形態3に係る受電装置および充電制御サーバの各動作手順例を時系列に示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るワイヤレス給電システム、送電装置、送電電圧制御方法および充電電流制御方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0016】
[用語の定義]
以下の説明において、水中(例えば海中)においてワイヤレスで電力を伝送する(言い換えると、送電する)側を「一次側」と定義し、一方、一次側からワイヤレスで送電された電力を受け取る(言い換えると、受電する)側を「二次側」と定義する。
【0017】
以下の説明において、送信電力の力率とは、水中(例えば海中)においてワイヤレスで一次側から二次側に電力伝送する際に、その送電対象となる電力のうち何パーセントが有効に伝送されたか(言い換えると、二次側が一次側から送電された電力のうち何パーセントを有効に受電することができたか)を示す指標(パラメータ)と定義する。
【0018】
(実施の形態1)
実施の形態1では、一次側から二次側へのワイヤレスでの電力伝送において、力率を最大値未満の一定値付近に保つようにモニタリングしながら、二次側の充電回路に搭載されるDC/DC電源の動作停止を抑制できるように一次側の送電回路における送電電力(言い換えると、送電電圧)を制御する例を説明する。
【0019】
[ワイヤレス給電システムの構成]
まず、図1から図3を参照して、実施の形態1に係るワイヤレス給電システム1000の構成例を説明する。図1は、各実施の形態に係るワイヤレス給電システム1000が設置される使用環境例を模式的に示す図である。図2は、各実施の形態に係るワイヤレス給電システム1000のハードウェア構成例を示す図である。図3は、送電側プロセッサ130および受電側プロセッサ226の機能構成例を詳細に示すブロック図である。
【0020】
ワイヤレス給電システム1000は、送電装置100と、受電装置200と、複数のコイル(図示略)とを有する。図2では図示を省略しているが、送電装置100と受電装置200との間には、1つ以上のコイルCL(図1参照)が設けられる。送電装置100は、受電装置200に対し、1つ以上のコイルCLを介して、磁気共鳴方式に従ってワイヤレス(つまり無接点)で電力を伝送する。送電装置100と受電装置200との間に配置されるコイルCLの数は、n(n:1以上の整数)個であり任意である。なお、本実施の形態では、送電装置100が備えるコイル(送電コイル)は、複数ターンのコイルが電気的に接続されたものが使用されてもよいし、その代わりに送電コイルから中継コイルCLC(後述参照)等のブースターコイルを介して受電装置200のコイル(受電コイル)に電力が伝送されてもよい。
【0021】
n個のコイルCLは、例えば環状に形成され、樹脂のカバーにより被覆されることで絶縁される。n個のコイルCLは、例えば、キャブタイヤケーブル、ヘリカルコイル、あるいはスパイラルコイルにより形成される。ヘリカルコイルは、同一平面内ではなく、磁気共鳴方式による電力の伝送方向に沿って、螺旋状に巻回された環状のコイルである。スパイラルコイルは、同一平面内においてスパイラル形状に形成された環状のコイルである。スパイラルコイルの採用により、コイルの薄型化が可能となる。ヘリカルコイルの採用により、巻回されたコイルCLの内部の空間を広く確保できる。なお、図1に図示されているコイルCL(例えば中継コイルCLC11)ではスパイラルコイルの例が図示されている。
【0022】
電力伝送に使用されるコイルCLは、送電装置100と受電装置200との間に配置されるn個のコイルに限定されず、送電装置100が備える送電コイルCLA、受電装置200が備える受電コイルCLBを含んでよい。送電コイルCLAは、一次側(つまり送電装置100)が有する一次コイル(Primary Coil)である。受電コイルCLBは、二次側(つまり受電装置200)が有する二次コイル(Secondary Coil)である。送電コイルCLAと受電コイルCLBとの間には、少なくとも1つのブースターコイルとしての役割を有する中継コイルCLC11(図1参照)が配置される。もし中継コイルCLC11が複数ある場合、それぞれの中継コイルCLC11同士は略平行に配置され、中継コイルCLC11により形成される開口面の半分以上が重なる。複数の中継コイルCLC11の間隔は、例えば中継コイルCLC11の半径以上確保される。中継コイルCLC11は、送電コイルCLAによる電力伝送を補助する。
【0023】
送電コイルCLAは、送電装置100に設けられる(図2参照)。受電コイルCLBは、受電装置200に設けられる(図2参照)。中継コイルCLC11は、送電装置100に設けられても、受電装置200に設けられても、送電装置100および受電装置200のいずれとも別に設けられてもよい。中継コイルCLC11は、その一部が送電装置100に設けられ、他の一部が受電装置200に設けられてもよい。
【0024】
送電装置100は、船舶50に設置されてもよいし、その他の箇所(例えば陸上に設置された給電設備1200)に配置されてもよい。なお、送電装置100が船舶50に設置される場合、送電装置100は地上に配置されている充電制御サーバ300とはワイヤレスで通信可能に接続される。
【0025】
受電装置200は、移動可能な水中航走体70(例えば潜水艇、水底掘削機)に設置されてもよいし、固定的に設置される水中設備(例えば地震計、監視カメラ、地熱発電機)に設置されてもよい。受電装置200は、データ通信用の水中アンテナAn1、An2を備え、送電コイルCLA12の位置に設けられた水中アンテナAn3との間でデータ通信可能であり、送電コイルCLA11との間では電力伝送の際に通信用データも重畳して通信することができる。図1では、水中航走体70の一例として潜水艇が図示されている。送電コイルCLA11、CLA12、中継コイルCLC11は、いずれも水中(例えば海中)に配置されている。
【0026】
水中航走体70は、例えば遠隔操作無人探査機(ROV:Remotely Operated Vehicle)、無人潜水艇(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)、あるいは自立型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)でよい。
【0027】
船舶50の一部は、水面90(例えば海面)より上部つまり水上に存在し、船舶50の他の一部は、水面90よりも下部つまり水中(例えば海中)に存在する。船舶50は、水上(例えば海上)で移動可能であり、例えばデータ取得場所の水上(例えば海上)へ自由に移動可能である。船舶50に設置された送電装置100と送電コイルCLAとの間は、電力ケーブル280により接続される。電力ケーブル280は、水上のコネクタを介して、送電装置100内のドライバ151(図2参照)と接続される。
【0028】
水中航走体70は、水中を潜行し、船舶50からの指示に基づいて所定のデータ取得ポイントへ自由に移動可能である。船舶50からの指示は、各コイルCLを介した通信により伝送されてもよいし、その他の通信手段(例えば船舶50とワイヤレス通信中の通信装置BSと水中アンテナAn1、An2とを介した通信手段)により伝送されてもよい。
【0029】
各コイルCLは、例えば等間隔に配置される。隣り合うコイルCL間の距離(間隔)は、例えば5mである。コイル間隔は、例えばコイルの直径の半分程度の長さである。伝送周波数は、水中(例えば海中)での磁界強度の減衰量を考慮すると、例えば40kHz以下であり、10kHz未満とされることが好ましい。また、10kHz以上の送信周波数で電力伝送する場合、電波法の規定に基づいて所定のシミュレーションを行う必要があり、10kHz未満の場合にはこの作業を省略できる。なお、伝送周波数が低周波であるほど、電力伝送距離が長くなり、コイルが大きくなり、コイル間隔が長くなる。なお、伝送周波数は、例えば通信信号が重畳される場合、40kHzよりも高い周波数でもよい。
【0030】
伝送周波数は、コイルのインダクタンス、コイルの直径、コイルの巻き数等のコイル特性に基づき定まる。コイルの直径は、例えば数m~数10mである。また、コイルの太さが太い程、つまりコイルの線径が大きい程、コイルでの電気抵抗が減り、電力損失が小さくなる。また、コイルを介して伝送される電力は、例えば50W以上であり、kWオーダーでもよい。
【0031】
また、送電装置100は、コイルCLの線材が巻かれる1つ以上のボビンbnを備えてよい。ボビンbnの材料は、非導電性あるいは弱磁性の材料(例えばポリ塩化ビニル、アクリル、ポリエステル等の樹脂)が用いられる。なお、ボビンbnの材料は、誘電性を有してもよい。例えば、ボビンbnの材料としてポリ塩化ビニルを用いると、安価で入手し易く、加工し易くなる。ボビンbnが非導電性を有することで、送電装置100は、コイルに流れる交流電流に起因して発生する磁界が、ボビンbnに吸収されることを抑制できる。図1では、水中給電(例えば海中給電)を行うために、水中に浮遊するボビンbn10を含む給電スタンドと、海底に配置されたボビンbn11を含む給電スタンドとが設置されている。
【0032】
ボビンbn10を含む給電スタンドでは、筒状のボビンbn10の外周には、送電コイルCLA11および中継コイルCLC11が巻回されて配置されている。送電コイルCLA11には、電力ケーブル280が接続されており、海上に係留している船舶50から電力ケーブル280を介して電力が供給される。電力ケーブル280は、この給電スタンドを海中で浮遊状態に支持する。浮遊状態では、筒状のボビンbn10の両側の開口は、水平方向を向いてよい。水中航走体70は、浮遊状態にある給電スタンドの出入口に対し、水平方向に進入し、ボビンbn10の内部に留まって受電する。
【0033】
ボビンbn11を含む給電スタンドは、海底910に埋め込まれた2本の支柱1101の上部に固定される。この給電スタンドの出入口は、水平方向を向いてよい。給電スタンドでは、筒状のボビンbn11に送電コイルCLA12が巻回されて配置されているが、中継コイルCLCは配置されていない。送電コイルCLA12には、例えば海底910に這わされた電力ケーブル280Aが接続され、給電設備1200から電力ケーブル280Aを介して電力が供給されてよい。水中航走体70は、海底910に設置された給電スタンドの出入口に対し、水平方向に進入し、ボビンbn11の内部に留まって受電する。
【0034】
給電施設1200が配置されている海岸あるいは岸辺付近の地上には、通信装置BSが配置されている。通信装置BSは、充電制御サーバ300との間でデータ通信が可能に接続されており、船舶50の送電装置100との間でデータ通信したり、海底付近に設けられている送電コイルCLA12の位置と対応して設けられた通信用の水中アンテナAn3との間でデータ通信したりする。なお、水中アンテナAn3は、水中航走体70が送電コイルCLA12付近に位置する場合に、水中航走体70が備える水中アンテナAn1、An2との間でデータ通信を行う。これにより、水中航走体70は、充電制御サーバ30からの指示(後述参照)を、通信装置BSおよび水中アンテナAn3を介して受信して取得できる。
【0035】
充電制御サーバ300は、給電施設1200および通信装置BSのそれぞれとデータ通信可能に接続されている。また、充電制御サーバ300は、船舶50の送電装置100との間でデータ通信可能にワイヤレス接続されるとともに、受電装置200が水中アンテナAn3もしくは送電コイルCLA11との間でデータ通信可能に接続されている場合には受電装置200ともデータ通信可能に接続される。充電制御サーバ300は、送電装置100から取得する力率と受電装置200から取得する等価抵抗値(後述参照)とに基づいて、送電装置100から受電装置200に向けてワイヤレスで伝送する電力の送電電力(言い換えると、送電電圧)を可変可能に制御する。充電制御サーバ300の動作の詳細については後述する。
【0036】
[送電装置の構成]
図2に示すように、送電装置100は、AC電源110と、ADC(AC/DC Converter)120と、送電側プロセッサ130と、水中アンテナAn3と接続された通信回路140と、送電回路150と、電圧プローブ160と、電流プローブ170と、パワーアナライザ180と、を備える。送電装置100は、例えば船舶50に搭載されている。
【0037】
ADC120は、送電側プロセッサ130からの指示に基づいて、送電用電源の一例としてのAC電源110から供給される交流電力を、送電側プロセッサ130からの送電電圧指令(後述参照)に対応する直流電力に変換する。変換された直流電力は、送電回路150へ送られる。
【0038】
送電側プロセッサ130は、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いて構成され、送電装置100の各部(例えばAC電源110、ADC120、通信回路140、送電回路150、電圧プローブ160、電流プローブ170、パワーアナライザ180)の動作を統括して制御する。例えば、送電側プロセッサ130は、充電制御サーバ300が周期的に行う割込み処理(図5および図6参照)に基づいて生成する送電電圧指令(後述参照)に応じて、送電回路150に供給している現在の送電電圧を所定量増加したり、維持したり、あるいは所定量減少したりするための制御を実行する。割込み処理は例えば10msごとに実行され、その詳細については図5および図6を参照して後述する。
【0039】
通信回路140は、例えばPLC(Power Line Communication)通信に対応したPLCアダプタと、受電装置200との間で通信される通信データを変調あるいは復調するための変復調回路と、通信用の水中アンテナAn3と、を有する。この変復調回路はPLCアダプタ内に設けられてもよく、PLCアダプタの構成例は例えば特開2019-176316号公報に開示されている。通信回路140は、例えば送電装置100から受電装置200への制御情報を、PLCアダプタ(図示略)、水中アンテナAn3あるいはコイルCLを介して送信する。通信回路140は、例えば受電装置200から送電装置100へのデータを、コイルCLあるいは水中アンテナAn3、PLCアダプタを介して受信する。このデータには、例えば水中航走体70により水中探査もしくは水底探査された探査結果のデータが含まれる。通信回路140は、水中航走体70がデータ収集等の作業を行いながら、水中航走体70(言い換えると、受電装置200)との間で迅速にデータ通信できる。
【0040】
送電回路150は、ドライバ151、共振回路152、整合回路153を含む。
【0041】
ドライバ151は、ADC120からの直流電力を所定の周波数の交流電圧(例えばパルス波形)に変換する。
【0042】
共振回路152は、コンデンサCAと送電コイルCLAとを含んで構成され、ドライバ151からのパルス波形の交流電圧から正弦波波形の交流電圧を生成する。送電コイルCLAは、ドライバ151から印加される交流電圧に応じて、所定の共振周波数で共振する。送電コイルCLAは、整合回路153により、送電装置100の出力インピーダンスにインピーダンス整合(インピーダンスマッチング)されている。なお、ドライバ151が変換することで得られる交流電圧の周波数は、送電装置100と受電装置200との間での電力伝送の伝送周波数に相当し、共振周波数に相当する。伝送周波数は、例えば、各コイルCLのQ値に基づき設定されてよい。
【0043】
電圧プローブ160は、送電回路150内のドライバ151と共振回路152との間の位置にかかる電圧をセンシングするセンサ(測定器)であり、センシング結果である測定電圧(送電電圧)をパワーアナライザ180に出力する。
【0044】
電流プローブ170は、送電回路150内のドライバ151と共振回路152との間の位置を流れる電流をセンシングするセンサ(測定器)であり、センシング結果である測定電流(送電電流)をパワーアナライザ180に出力する。
【0045】
パワーアナライザ180は、電圧プローブ160からの送電電圧の測定値と電流プローブ170からの送電電流の測定値とに基づいて、公知の所定関係式を用いて力率を計算して算出する。パワーアナライザ180は、計算結果である力率を、送電側プロセッサ130を介して通信回路140に送る。この力率の値は、通信回路140を介して充電制御サーバ300に送信される。
【0046】
[充電制御サーバの構成]
図2に示すように、充電制御サーバ300は、通信回路301と、プロセッサ302と、メモリ303と、を少なくとも備える。
【0047】
通信回路301は、送電装置100の通信回路140との間でワイヤレス通信を可能に接続する。通信回路301は、送電装置100の通信回路140から、送電装置100で計算された力率の値(データ)を受信してプロセッサ302に送る。また、通信回路301は、送電装置100の通信回路140を介して、受電装置200で計算された等価抵抗値(後述参照)の値(データ)を受信してプロセッサ302に送る。
【0048】
プロセッサ302は、例えばCPUあるいはFGPA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成され、メモリ303と協働して充電制御サーバ300の各種動作の統括的な制御を実行する。プロセッサ302は、通信回路140から取得する力率および等価抵抗値に基づいて、送電装置100からの送電電力を送電回路150において可変可能に制御するための送電電圧指令を生成する。プロセッサ302は、送電電圧指令を、通信回路301を介して送電装置100に送信する。
【0049】
メモリ303は、一時的なデータ保存領域として機能するRAM(Random Access Memory)、恒常的なデータ保存領域として機能するROM(Read Only Memory)を含む。RAMは、プロセッサ302の動作中に生成あるいは取得されたデータを一時的に保存する。ROMは、プロセッサ302が実行する各種動作の手順を規定するプログラムおよびそのプログラムの実行に必要となるデータを保存している。
【0050】
[受電装置の構成]
図2に示すように、受電装置200は、受電回路210と、充電回路220と、蓄電池230と、水中アンテナAn2と接続された通信回路240と、を備える。受電装置200は、例えばAUVである水中航走体70に搭載されている。
【0051】
受電回路210は、整流回路211、共振回路212、整合回路213を含む。
【0052】
整流回路211は、受電コイルCLBに誘起された交流電力を直流電力に変換して動力源としての直流電圧(言い換えると、整流電圧)を充電回路220に供給する。
【0053】
共振回路212は、コンデンサCBと受電コイルCLBとを含んで構成され、送電コイルCLAから送電された交流電力を受電する。受電コイルCLBは、整合回路213により、受電装置200の入力インピーダンスにインピーダンス整合(インピーダンスマッチング)される。
【0054】
充電回路220は、受電電流検出部221、受電電圧検出部222、DC/DC電源223、充電制御回路224、充電電流検出部225、受電側プロセッサ226、通信インターフェース227を含む。なお、図2では、インターフェースを「I/F」と略記している。
【0055】
受電電流検出部221は、DC/DC電源223に流れる直流電流をセンシングするセンサ(測定器)であり、センシング結果である測定電流を充電制御回路224および受電側プロセッサ226に送る。
【0056】
受電電圧検出部222は、DC/DC電源223に供給する直流電圧をセンシングするセンサ(測定器)であり、センシング結果である測定電圧を充電制御回路224および受電側プロセッサ226に送る。
【0057】
DC/DC電源223は、ワイヤレス給電システム1000での蓄電池230への充電用電源として、1つ以上の汎用的な回路部品(例えばDC/DCコンバータ)が使用された電源回路を構成し、受電回路210からの直流電圧(整流電圧)を昇圧、降圧等して充電制御回路224に供給する。
【0058】
充電制御回路224は、DC/DC電源223から供給される直流の電源電圧(整流電圧)に基づいて、蓄電池230の種別に応じた充電電流を蓄電池230に供給して蓄電池230の充電もしくは放電を制御する。
【0059】
充電電流検出部225は、充電制御回路224により制御される蓄電池230へ供給される充電電流をセンシングするセンサ(測定器)であり、センシング結果である測定電流を充電制御回路224および受電側プロセッサ226に送る。
【0060】
受電側プロセッサ226は、例えばCPUを用いて構成され、受電装置200の充電回路220による蓄電池230への充電もしくは放電を制御する。例えば、受電側プロセッサ226は、充電制御サーバ300が周期的に行う割込み処理(図8参照)に基づいて生成する充電電流指令(後述する実施の形態2参照)に応じて、蓄電池230に供給している現在の充電電流を所定量増加したり、維持したり、あるいは所定量減少したりするための制御を実行する。割込み処理は例えば10msごとに実行され、その詳細については図8を参照して後述する。
【0061】
通信インターフェース227は、通信回路240と充電回路220との間の通信を司るインターフェース回路を用いて構成され、例えば通信回路240からの充電電流指令(後述する実施の形態2参照)を受電側プロセッサ226に送る。また、通信インターフェース227は、受電側プロセッサ226により計算される等価抵抗値(図3参照)を通信回路240に送る。この等価抵抗値は、通信回路240、水中アンテナAn1、An2、水中アンテナAn3、通信回路140を介して充電制御サーバ300に送信される。
【0062】
蓄電池230は、二次電池であり、受電装置200において受電された電力に基づく充電回路220の制御によって蓄電する。蓄電池230は、例えばリチウムイオン電池である。
【0063】
通信回路240は、例えばPLC通信に対応したPLCアダプタと、送電装置100との間で通信される通信データを変調あるいは復調するための変復調回路と、通信用の水中アンテナAn1、Ant2と、を有する。この変復調回路はPLCアダプタ内に設けられてもよく、PLCアダプタの構成例は例えば特開2019-176316号公報に開示されている。通信回路240は、例えば送電装置100から受電装置200への制御情報を、コイルCLあるいは水中アンテナAn3、PLCアダプタを介して受信する。通信回路240は、例えば受電装置200から送電装置100へのデータを、PLCアダプタ、コイルCLあるいは水中アンテナAn1、An2を介して送信する。このデータには、例えば水中航走体70により水中探査もしくは水底探査された探査結果のデータが含まれる。通信回路240は、水中航走体70がデータ収集等の作業を行いながら、船舶50(言い換えると、送電装置100)との間で迅速にデータ通信できる。
【0064】
ここで、図2を参照して、送電装置100から受電装置200への電力伝送について簡単に説明する。
【0065】
送電装置100の共振回路152では、送電装置100の送電コイルCLAに電流が流れると送電コイルCLAの周囲に磁場が発生する。発生した磁場の振動は、共振回路152での共振周波数と同一の周波数で共振する中継コイルCLCを含む共振回路に伝達される。
【0066】
中継コイルCLCを含む共振回路では、磁場の振動により中継コイルCLCに電流が励起され、電流が流れ、中継コイルCLCの周囲に更に磁場が発生する。発生した磁場の振動は、共振回路152での共振周波数と同一の周波数で共振する他の中継コイルCLCを含む共振回路あるいは受電コイルCLBを含む共振回路212にそれぞれ伝達される。
【0067】
受電装置200の共振回路212では、中継コイルCLCの磁場の振動により、受電コイルCLBに交流電力が誘起される。誘起された交流電力が整流回路211により整流され、充電回路220のDC/DC電源223において所定の電圧に変換されて充電電流が流れることで、蓄電池230が充電される。即ち、蓄電池230への効率的な蓄電が行われるためには、充電回路220のDC/DC電源223が正しく動作して適切な所定の電圧に変換する処理を行う必要がある。
【0068】
図3では、図2に示すハードウェア構成例の中で、データ信号の流れに着目して図2中の構成要素を機能的に詳細化することを目的として、各構成要素が図示されている。
【0069】
例えば送電装置100では、データ信号の流れに着目した機能的構成として、図2中の送電装置100の構成要素の中から送電側プロセッサ130、情報通信部141、送電回路150、AC電圧検出部161、AC電流検出部171、パワーアナライザ180が図示されている。図3の送電装置100の説明において、図2の構成と同一の構成には同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0070】
送電側プロセッサ130は、電源制御部131を機能的に有している。
【0071】
電源制御部131は、充電制御サーバ300が周期的に行う割込み処理(図5および図6参照)に基づいて生成する送電電圧指令に応じて、送電回路150に供給している現在の送電電圧を所定量増加したり、維持したり、あるいは所定量減少したりするための制御を実行する。
【0072】
ここで、図4を参照して、実施の形態1に係る送電電圧指令と力率、伝送効率、等価抵抗値との関係について説明する。図4は、定電流充電する際の受電装置の等価抵抗値に対する送電電力、伝送効率、力率の各特性例を示すグラフである。実施の形態1では、水中航走体70(つまり受電装置200)では、定電流充電することを想定している。図4の横軸は等価抵抗値(Ω:オーム)を示し、図4の第1縦軸は送電電力[W:ワット]を示し、図4の第2縦軸は力率・伝送効率[%:パーセント]を示す。図4では、受電装置200が3kW[キロワット]の電力を受電する場合の、送電電力、伝送効率、力率と等価抵抗値との関係が示されている。
【0073】
ここで、等価抵抗値Rx(図4参照)とは、受電装置200の負荷が充電回路220および蓄電池230である場合に、実施の形態1では蓄電池230への充電電流を一定にするために、充電回路220内のDC/DC電源223に流れる電流とDC/DC電源223に印加(供給)される電圧とにより定まる抵抗値である。図4に示すように、等価抵抗値Rxの変動に応じて、力率、伝送効率および送電電力は、それぞれ特性Pr1、Pr2、Pr3のように変動することがシミュレーションにより判明した。図4の中央部分に示す整合値Rm1は、電力伝送に適する共振周波数に応じてインピーダンスマッチングされた抵抗値(インピーダンス値)であって、例えば15オームとなっている。
【0074】
例えば等価抵抗値Rxが整合値Rm1以上(例えば15オーム以上)である場合、等価抵抗値Rxが高ければ高いほど力率および伝送効率は低下する傾向が見られる。つまり、力率を実運用上望ましい上限値LMT1に近づけるために送電電力を下げるように制御することが好ましいことが分かる。この場合、電源制御部131は、現在の力率および等価抵抗値に応じて送電電力を現在値よりも所定量下げるように設定するための送電電圧指令を充電制御サーバ300から受け取り、送電回路150に送電電圧指令に応じた送電電圧の制御を実行させる。
【0075】
なお、上限値LMT1は、等価抵抗値Rxが整合値Rm1に限りなく近い場合に生じ易くなるDC/DC電源223の破損を抑圧するために、DC/DC電源223の動作を保証するための力率の許容上限値である。つまり、力率が上限値LMT1を超える場合には、DC/DC電源の突然の停止に伴う充電電流の停止から生じる受電側のインピーダンスの急上昇によりDC/DC電源223に定格電圧を超える電圧が印加されて破損する事態が生じる。そこで、実施の形態1では、力率が上限値LMT1を超えないことを前提条件として、電源制御部131は、現在の力率および等価抵抗値に応じた送電電圧指令を充電制御サーバ300から受け取り、送電回路150に送電電圧指令に応じた送電電圧の制御を実行させる。
【0076】
一方、例えば等価抵抗値Rxが整合値Rm1未満(例えば15オーム未満)である場合、等価抵抗値Rxが低ければ低いほど力率および伝送効率は低下する傾向が見られる。つまり、力率を上限値LMT1に近づけるために送電電力を上げるように制御することが好ましいことが分かる。この場合、電源制御部131は、現在の力率および等価抵抗値に応じて送電電力を現在値よりも所定量上げるように設定するための送電電圧指令を充電制御サーバ300から受け取り、送電回路150に送電電圧指令に応じた送電電圧の制御を実行させる。
【0077】
情報通信部141は、図2の通信回路140および水中アンテナAn3を含む構成に対応しており、通信回路140と同一の機能を有するため、詳細な説明は省略する。情報通信部141は、パワーアナライザ180により計算された力率を取得して充電制御サーバ300に送信する。情報通信部141は、充電制御サーバ300から送られた送電電圧指令を受信して送電側プロセッサ130に送る。情報通信部141は、受電装置200から送られた等価抵抗値を充電制御サーバ300に送る。
【0078】
AC電圧検出部161は、図2の電圧プローブ160と同一の構成であり、電圧プローブ160と同一の機能を有するため、詳細な説明は省略する。
【0079】
AC電流検出部171は、図2の電流プローブ170と同一の構成であり、電流プローブ170と同一の機能を有するため、詳細な説明は省略する。
【0080】
パワーアナライザ180は、力率計算部181および通信制御部182を機能的に有している。
【0081】
力率計算部181は、電圧プローブ160からの送電電圧の測定値と電流プローブ170からの送電電流の測定値とに基づいて、公知の所定関係式を用いて力率を計算して算出して通信制御部182に送る。
【0082】
通信制御部182は、力率計算部181により計算された現在の力率を情報通信部141に送る。
【0083】
例えば受電装置200では、データ信号の流れに着目した機能的構成として、図2中の受電装置200の構成要素の中から受電回路210、受電電流検出部221、受電電圧検出部222、DC/DC電源223、蓄電池230、充電電流検出部225、受電側プロセッサ226、情報通信部241が図示されている。図3の受電装置200の説明において、図2の構成と同一の構成には同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0084】
受電側プロセッサ226は、AD変換部271、272、273、等価抵抗値算出部274、メモリ275およびDC/DC電源電圧決定部276を機能的に有している。
【0085】
AD変換部271は、受電電流検出部221によりセンシング(測定、検出)された現在の整流電流値をデジタル値に変換し、デジタル値の整流電流値を等価抵抗値算出部274に送る。
【0086】
AD変換部272は、受電電流検出部221によりセンシング(測定、検出)された現在の整流電圧値をデジタル値に変換し、デジタル値の整流電圧値を等価抵抗値算出部274に送る。
【0087】
AD変換部273は、充電電流検出部225によりセンシング(測定、検出)された現在の充電電流値をデジタル値に変換し、デジタル値の充電電流値をDC/DC電源電圧決定部276に送る。
【0088】
等価抵抗値算出部274は、AD変換部271、272のそれぞれの出力に基づいて、例えばオームの法則の関係式にしたがって等価抵抗値(図4参照)を算出し、算出結果である等価抵抗値を情報通信部241に送る。
【0089】
メモリ275は、例えばDC/DC電源電圧決定部276がDC/DC電源223から蓄電池230への充電に関して供給する電源電圧を決定するための基準となる基準電流値を保持している。また、メモリ275は、情報通信部241から転送された充電電流指令(後述する実施の形態2参照)を一時的に保持する。
【0090】
DC/DC電源電圧決定部276は、AD変換部273からの出力(つまり現在の充電電流値)とメモリ275に保存されている基準電流値とに基づいて、DC/DC電源223から蓄電池230への充電に関して供給する電源電圧を決定する。DC/DC電源電圧決定部276は、決定した電源電圧をDC/DC電源223に供給する制御を行う。
【0091】
情報通信部241は、図2の通信回路240および水中アンテナAn1、An2を含む構成に対応しており、通信回路240および水中アンテナAn1、An2と同一の機能を有するため、詳細な説明は省略する。情報通信部241は、受電側プロセッサ226により計算された等価抵抗値を取得し、情報通信部141を介して充電制御サーバ300に送信する。情報通信部241は、充電制御サーバ300から送られた充電電流指令(後述する実施の形態2参照)を受信して受電側プロセッサ226に送る(実施の形態2参照)。
【0092】
[ワイヤレス給電システムの動作手順]
次に、図5および図6を参照して、実施の形態1に係るワイヤレス給電システム1000の動作手順について、充電制御サーバ300の動作を中心に説明する。図5および図6は、実施の形態1に係る充電制御サーバの動作手順例を時系列に示すフローチャートである。図5および図6に示す各処理は、主に充電制御サーバ300のプロセッサ302により実行され、定期的に実行される受信割込み処理である。この受信割込み処理は、例えば1[秒]ごとに周期的に実行される。
【0093】
図5において、プロセッサ302は、等価抵抗値の算出結果を、受電装置200から送電装置100の情報通信部141(図3参照)を介して受信して取得する(ステップSt1)。プロセッサ302は、ステップSt1で取得した等価抵抗値の算出結果が整合値(図4参照)以上であるか否かを判定する(ステップSt2)。この整合値のデータは例えばメモリ303において予め保存されている。プロセッサ302は、ステップSt1で取得した等価抵抗値の算出結果が整合値未満であると判定した場合(ステップSt2、NO)、ステップSt14以降の処理を実行する(図6参照)。
【0094】
一方、プロセッサ302は、ステップSt1で取得した等価抵抗値の算出結果が整合値以上であると判定した場合(ステップSt2、YES)、力率の算出結果を送電装置100の情報通信部141(図3参照)から受信して取得する(ステップSt3)。
【0095】
プロセッサ302は、ステップSt3で取得した力率が第1の範囲(a(例えば0.95)より大きく1.0以下)内であるか否かを判定する(ステップSt4)。プロセッサ302は、ステップSt3で取得した力率が第1の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt4、YES)、現在の送電電力(言い換えると、送電電圧)を所定量(例えば1u)増加するための送電電圧指令(図4参照)を生成する(ステップSt5)。ここで、uは、制御対象となる送電電圧の設定単位(unit)を示す。例えばu=1V[ボルト]であれば、ステップSt5で生成される送電電圧指令は、現在の送電電圧よりも+1V[ボルト]増加するための指令(コマンド)を含む。これにより、力率が上限値LMT1を超えずに向上するだけでなく、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が向上する。
【0096】
一方、プロセッサ302は、ステップSt3で取得した力率が第1の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.95以下である)と判定した場合(ステップSt4、NO)、ステップSt3で取得した力率が第2の範囲(b(例えば0.92)より大きくa(例えば0.95)以下)内であるか否かを判定する(ステップSt6)。プロセッサ302は、ステップSt3で取得した力率が第2の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt6、YES)、現在の送電電力(言い換えると、送電電圧)を現在の送電電圧を維持するための送電電圧指令(図4参照)を生成する(ステップSt7)。これにより、力率が上限値LMT1を超えずに近い状態のままとなるため、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が高い状態が維持される。
【0097】
一方、プロセッサ302は、ステップSt3で取得した力率が第2の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.92以下である)と判定した場合(ステップSt6、NO)、ステップSt3で取得した力率が第3の範囲(c(例えば0.85)より大きくb(例えば0.92)以下)内であるか否かを判定する(ステップSt8)。プロセッサ302は、ステップSt3で取得した力率が第3の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt8、YES)、現在の送電電力(言い換えると、送電電圧)を所定量(例えば1u)減少するための送電電圧指令(図4参照)を生成する(ステップSt9)。ここで、uは、制御対象となる送電電圧の設定単位(unit)を示す。例えばu=1V[ボルト]であれば、ステップSt9で生成される送電電圧指令は、現在の送電電圧よりも+1V[ボルト]減少するための指令(コマンド)を含む。これにより、力率が上限値LMT1を超えずに向上するだけでなく、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が向上する。
【0098】
一方、プロセッサ302は、ステップSt3で取得した力率が第3の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.85以下である)と判定した場合(ステップSt8、NO)、ステップSt3で取得した力率が第4の範囲(0より大きくc(例えば0.85)以下)内であるか否かを判定する(ステップSt10)。プロセッサ302は、ステップSt3で取得した力率が第4の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt10、YES)、現在の送電電力(言い換えると、送電電圧)を所定量(例えば2u)減少するための送電電圧指令(図4参照)を生成する(ステップSt11)。ここで、uは、制御対象となる送電電圧の設定単位(unit)を示す。例えばu=1V[ボルト]であれば、ステップSt11で生成される送電電圧指令は、現在の送電電圧よりも+2V[ボルト]減少するための指令(コマンド)を含む。これにより、力率が上限値LMT1を超えずに向上するだけでなく、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が向上する。
【0099】
一方、プロセッサ302は、ステップSt3で取得した力率が第4の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.85以下である)と判定した場合(ステップSt10、NO)、所定の異常処理(例えば送電装置100からの電力伝送の中断)を実行する(ステップSt12)。ステップSt12の後、充電制御サーバ300の処理は終了する。なお、所定の異常処理は上述した送電装置100からの電力伝送の中断に限定されなくてもよい。
【0100】
プロセッサ302は、ステップSt5、St7、St9、St11のうちいずれの処理の後に、生成した送電電圧指令を、通信回路301および情報通信部141を介して送電装置100の送電側プロセッサ130に送信する(ステップSt13)。ステップSt13の後、充電制御サーバ300の処理は終了する。
【0101】
一方、プロセッサ302は、ステップSt1で取得した等価抵抗値の算出結果が整合値未満であると判定した場合(ステップSt2、NO)、力率の算出結果を送電装置100の情報通信部141(図3参照)から受信して取得する(ステップSt14)。
【0102】
プロセッサ302は、ステップSt14で取得した力率が第1の範囲(a(例えば0.95)より大きく1.0以下)内であるか否かを判定する(ステップSt15)。プロセッサ302は、ステップSt14で取得した力率が第1の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt15、YES)、現在の送電電力(言い換えると、送電電圧)を所定量(例えば1u)減少するための送電電圧指令(図4参照)を生成する(ステップSt16)。ここで、uは、制御対象となる送電電圧の設定単位(unit)を示す。例えばu=1V[ボルト]であれば、ステップSt16で生成される送電電圧指令は、現在の送電電圧よりも+1V[ボルト]減少するための指令(コマンド)を含む。これにより、力率が上限値LMT1を超えずに向上するだけでなく、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が向上する。
【0103】
一方、プロセッサ302は、ステップSt14で取得した力率が第1の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.95以下である)と判定した場合(ステップSt15、NO)、ステップSt14で取得した力率が第2の範囲(b(例えば0.92)より大きくa(例えば0.95)以下)内であるか否かを判定する(ステップSt17)。プロセッサ302は、ステップSt14で取得した力率が第2の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt17、YES)、現在の送電電力(言い換えると、送電電圧)を現在の送電電圧を維持するための送電電圧指令(図4参照)を生成する(ステップSt18)。これにより、力率が上限値LMT1を超えずに近い状態のままとなるため、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が高い状態が維持される。
【0104】
一方、プロセッサ302は、ステップSt14で取得した力率が第2の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.92以下である)と判定した場合(ステップSt17、NO)、ステップSt14で取得した力率が第3の範囲(c(例えば0.85)より大きくb(例えば0.92)以下)内であるか否かを判定する(ステップSt19)。プロセッサ302は、ステップSt14で取得した力率が第3の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt19、YES)、現在の送電電力(言い換えると、送電電圧)を所定量(例えば1u)増加するための送電電圧指令(図4参照)を生成する(ステップSt20)。ここで、uは、制御対象となる送電電圧の設定単位(unit)を示す。例えばu=1V[ボルト]であれば、ステップSt20で生成される送電電圧指令は、現在の送電電圧よりも+1V[ボルト]増加するための指令(コマンド)を含む。これにより、力率が上限値LMT1を超えずに向上するだけでなく、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が向上する。
【0105】
一方、プロセッサ302は、ステップSt14で取得した力率が第3の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.85以下である)と判定した場合(ステップSt19、NO)、ステップSt14で取得した力率が第4の範囲(0より大きくc(例えば0.85)以下)内であるか否かを判定する(ステップSt21)。プロセッサ302は、ステップSt14で取得した力率が第4の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt21、YES)、現在の送電電力(言い換えると、送電電圧)を所定量(例えば2u)増加するための送電電圧指令(図4参照)を生成する(ステップSt22)。ここで、uは、制御対象となる送電電圧の設定単位(unit)を示す。例えばu=1V[ボルト]であれば、ステップSt22で生成される送電電圧指令は、現在の送電電圧よりも+2V[ボルト]増加するための指令(コマンド)を含む。これにより、力率が上限値LMT1を超えずに向上するだけでなく、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が向上する。
【0106】
一方、プロセッサ302は、ステップSt14で取得した力率が第4の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.85以下である)と判定した場合(ステップSt21、NO)、所定の異常処理(例えば送電装置100からの電力伝送の中断)を実行する(ステップSt23)。ステップSt23の後、充電制御サーバ300の処理は終了する。なお、所定の異常処理は上述した送電装置100からの電力伝送の中断に限定されなくてもよい。
【0107】
プロセッサ302は、ステップSt16、St18、St20、St22のうちいずれの処理の後に、生成した送電電圧指令を、通信回路301および情報通信部141を介して送電装置100の送電側プロセッサ130に送信する(ステップSt24)。ステップSt24の後、充電制御サーバ300の処理は終了する。
【0108】
以上により、実施の形態1に係るワイヤレス給電システム1000は、水中(例えば海中)を移動可能であって蓄電池230を有する受電装置200と、サーバ(充電制御サーバ300)と通信可能に接続される送電装置100と、を含む。送電装置100は、受電装置200への送電電力を生成する送電回路150と、送電回路150の送電電流および送電回路の送電電圧に基づいて、送電電力の力率を算出する解析回路(パワーアナライザ180)と、受電装置200およびサーバ(充電制御サーバ300)との間で通信可能な第1の通信回路(情報通信部141)と、を備える。受電装置200は、水中において送電装置100からワイヤレスで伝送された送電電力を受電する受電回路210と、受電回路210で受電された受電電力に基づいて蓄電池230を充電する電源回路(充電回路220)と、電源回路の受電電流および電源回路に供給する受電電圧に基づいて、蓄電池230に係る等価抵抗値を算出する受電側プロセッサ226と、送電装置100との間で通信可能な第2の通信回路(情報通信部241)と、を備える。送電装置100は、等価抵抗値および力率に基づいてサーバから指示される送電電圧指令に応じて、送電電力を送電回路150において可変可能に制御する。これにより、ワイヤレス給電システム1000は、一次側(送電装置100)から二次側(受電装置200)への電力伝送における力率を加味して、DC/DC電源223の動作が保証されるように送電電圧を適切に制御できる。したがって、ワイヤレス給電システム1000は、二次側でのDC/DC電源223の動作停止を抑制しながら送電効率の向上を図ることができる。
【0109】
また、ワイヤレス給電システム1000は、サーバ(充電制御サーバ300)を更に備える。サーバは、等価抵抗値が所定値(例えば整合値Rm1)以上であって力率が第1の範囲(図5のステップSt4参照)内である場合、送電電圧を現在の送電電圧より所定値増加する第1の送電電圧指令(図5のステップSt5参照)を送電電圧指令として送電装置100に送る。これにより、ワイヤレス給電システム1000は、送電電圧を所定量(図5のステップSt5参照)増加する制御により、力率を上限値LMT1未満の状態でできるだけ高い値として保持することができ、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率を向上することができる。
【0110】
また、サーバ(充電制御サーバ300)は、等価抵抗値が所定値(例えば整合値Rm1)以上であって力率が第1の範囲(図5のステップSt4参照)より小さい第2の範囲内(図5のステップSt6参照)である場合、送電電圧を現在の送電電圧に維持する第2の送電電圧指令(図5のステップSt7参照)を送電電圧指令として送電装置に送る。これにより、ワイヤレス給電システム1000は、現在の送電電圧を変更することなく、力率を上限値LMT1未満の状態でできるだけ高い値として保持することができ、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が高い状態を維持することができる。
【0111】
また、サーバ(充電制御サーバ300)は、等価抵抗値が所定値(例えば整合値Rm1)以上であって力率が第2の範囲(図5のステップSt6参照)より小さい第3の範囲内(図5のステップSt8、St10参照)である場合、送電電圧を現在の送電電圧より所定値減少する第3の送電電圧指令(図5のステップSt9、St11参照)を送電電圧指令として送電装置100に送る。これにより、ワイヤレス給電システム1000は、送電電圧を所定量(図5のステップSt9、St11参照)減少する制御により、力率を上限値LMT1未満の状態でできるだけ高い値として保持することができ、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率を向上することができる。
【0112】
また、ワイヤレス給電システム1000は、サーバ(充電制御サーバ300)を更に備える。サーバは、等価抵抗値が所定値(例えば整合値Rm1)未満であって力率が第1の範囲(図6のステップSt15参照)内である場合、送電電圧を現在の送電電圧より所定値減少する第4の送電電圧指令(図6のステップSt16参照)を送電電圧指令として送電装置100に送る。これにより、ワイヤレス給電システム1000は、送電電圧を所定量(図5のステップSt16参照)減少する制御により、力率を上限値LMT1未満の状態でできるだけ高い値として保持することができ、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率を向上することができる。
【0113】
また、サーバ(充電制御サーバ300)は、等価抵抗値が所定値(例えば整合値Rm1)未満であって力率が第1の範囲より小さい第2の範囲内(図6のステップSt17参照)である場合、送電電圧を現在の送電電圧に維持する第5の送電電圧指令(図6のステップSt18参照)を送電電圧指令として送電装置100に送る。これにより、ワイヤレス給電システム1000は、現在の送電電圧を変更することなく、力率を上限値LMT1未満の状態でできるだけ高い値として保持することができ、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が高い状態を維持することができる。
【0114】
また、サーバ(充電制御サーバ300)は、等価抵抗値が所定値(例えば整合値Rm1)未満であって力率が第2の範囲より小さい第3の範囲内(図6のステップSt19、St21参照)である場合、送電電圧を現在の送電電圧より所定値増加する第6の送電電圧指令(図6のステップSt20、St22参照)を送電電圧指令として送電装置100に送る。これにより、ワイヤレス給電システム1000は、送電電圧を所定量(図6のステップSt20、St22参照)増加する制御により、力率を上限値LMT1未満の状態でできるだけ高い値として保持することができ、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率を向上することができる。
【0115】
また、実施の形態1に係る送電装置100は、水中(例えば海中)を移動可能であって蓄電池230を有する受電装置200とサーバ(充電制御サーバ300)との間で通信可能に接続される。送電装置100は、受電装置200への送電電力を生成する送電回路150と、送電回路の送電電流および送電回路の送電電圧に基づいて、送電電力の力率を算出する解析回路(パワーアナライザ180)と、受電装置200およびサーバとの間で通信可能な第1の通信回路(情報通信部141)と、を備える。送電回路150は、サーバから送られる、力率と受電装置200により算出される蓄電池230に係る等価抵抗値とに基づく送電電圧指令に応じて、送電電力を送電回路150において可変可能に制御する。これにより、送電装置100は、充電制御サーバ300からの送電電圧指令に応じて適応的に送電電圧を制御することができ、二次側(受電装置200)でのDC/DC電源223の動作停止を抑制しながら送電効率の向上を図ることができる。
【0116】
(実施の形態2に至る経緯)
磁気共鳴方式を用いたワイヤレス電力伝送では、受電装置内の蓄電池への充電用電源としてDC/DC電源を採用することがある。この場合、送電装置と受電装置との間の電力伝送における整合条件(上述参照)に合致させると、受電装置に搭載されているDC/DC電源の変換効率の限界(上限)を超える電力供給が必要になる場合があり、この時、送電装置からの送電電力(送電電圧)が一定である場合には、この状態から受電装置内の蓄電池へ供給する充電電流を増加してよいか否かの判断が困難であった。例えば送電電圧が低く供給余力がない状態で充電電流を過剰に設定すれば、DC/DC電源が突然停止してしまう。この結果、受電装置の充電回路内におけるインピーダンスが急増して高電圧が発生してしまい、受電装置内の充電回路内における各電子機器等の破損を招きかねないという課題があった。
【0117】
(実施の形態2)
実施の形態2では、一次側から二次側へのワイヤレスでの電力伝送において、力率を最大値未満の一定値付近に保つようにモニタリングしながら、二次側の充電回路に搭載されるDC/DC電源の動作停止を抑制できるように二次側の充電回路における充電電流を制御する例を説明する。
【0118】
[ワイヤレス給電システム、送電装置、受電装置の構成]
実施の形態2に係るワイヤレス給電システム、送電装置、受電装置、充電制御サーバの各構成は、実施の形態1に係るワイヤレス給電システム1000、送電装置100、受電装置200、充電制御サーバ300の各構成と同一である。実施の形態2に係るワイヤレス給電システム1000、送電装置100、受電装置200、充電制御サーバ300の各構成の説明において、実施の形態1に係るワイヤレス給電システム1000、送電装置100、受電装置200、充電制御サーバ300の各対応する構成と同一の構成のものには同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容(特に実施の形態2において特有の作用)について説明する。
【0119】
まず、図7を参照して、実施の形態2に係る充電電流指令と力率、伝送効率、等価抵抗値との関係について説明する。図7は、送電電力が一定である際の受電装置の等価抵抗値に対する充電電流、伝送効率、力率の各特性例を示すグラフである。実施の形態2では、水中航走体70(つまり受電装置200)では、送信電圧を一定にすることを想定している。図7の横軸は等価抵抗値(Ω:オーム)を示し、図7の第1縦軸は充電電流[A:アンペア]を示し、図7の第2縦軸は力率・伝送効率[%:パーセント]を示す。図7では、送電電力(送電電圧)が一定時の、送電電力、伝送効率、力率と等価抵抗値との関係が示されている。
【0120】
ここで、等価抵抗値Rx(図7参照)とは、受電装置200の負荷が充電回路220および蓄電池230である場合に、充電回路220内のDC/DC電源223に流れる電流とDC/DC電源223に印加(供給)される電圧とにより定まる抵抗値である。図7に示すように、充電電流、伝送効率および力率は、それぞれ特性Pr4、Pr5、Pr6のように変動することがシミュレーションにより判明した。図7の中央部分に示す整合値Rm2は、電力伝送に適する共振周波数に応じてインピーダンスマッチングされた抵抗値(インピーダンス値)であって、例えば14.5オームとなっている。
【0121】
例えば等価抵抗値Rxが整合値Rm2以上(例えば20オーム以上)である場合、等価抵抗値Rxが高ければ高いほど力率および伝送効率は低下する傾向が見られる。つまり、力率を実運用上望ましい上限値LMT2に近づけるために充電電流を上げるように制御することが好ましいことが分かる。この場合、DC/DC電源電圧決定部276は、現在の力率に応じて充電電流を現在値よりも所定量上げるように設定するための充電電流指令を充電制御サーバ300から受け取り、DC/DC電源223に充電電流指令に応じた充電電流の制御を実行させる。
【0122】
なお、上限値LMT2は、等価抵抗値Rxが整合値Rm2に限りなく近い場合に生じ易くなるDC/DC電源223の破損を抑圧するために、DC/DC電源223の動作を保証するための力率の許容上限値である。つまり、力率が上限値LMT2を超える場合には、DC/DC電源223に定格電圧を超える電圧が印加されて破損する事態が生じる。そこで、実施の形態2では、力率が上限値LMT2を超えないことを前提条件として、DC/DC電源電圧決定部276は、現在の力率に応じた充電電流指令を充電制御サーバ300から受け取り、DC/DC電源223に充電電流指令に応じた充電電流の制御を実行させる。
【0123】
一方、例えば等価抵抗値Rxが整合値Rm2未満(例えば10オーム未満)である場合、等価抵抗値Rxが低ければ低いほど力率および伝送効率は低下する傾向が見られる。つまり、力率を実運用上望ましい上限値LMT2に近づけるために充電電流を上げるように制御することが好ましいことが分かる。この場合、DC/DC電源電圧決定部276は、現在の力率に応じて充電電流を現在値よりも所定量上げるように設定するための充電電流指令を充電制御サーバ300から受け取り、DC/DC電源223に充電電流指令に応じた充電電流の制御を実行させる。
【0124】
また、等価抵抗値Rxが10オームから20オームの範囲の場合、送信力率が上限値LMT2を超える。この場合、DC/DC電源223に定格電圧を超える電圧が印加されて破損が生じる可能性が高い。このため、DC/DC電源電圧決定部276は、現在の力率に応じて、送信力率が上限値LMT2を超えないように充電電流を現在値よりも所定量下げるように設定するための充電電流指令を充電制御サーバ300から受け取り、DC/DC電源223に充電電流指令に応じた充電電流の制御を実行させる。
【0125】
[ワイヤレス給電システムの動作手順]
次に、図8を参照して、実施の形態2に係るワイヤレス給電システム1000の動作手順について、充電制御サーバ300の動作を中心に説明する。図8は、実施の形態2に係る充電制御サーバ300の動作手順例を時系列に示すフローチャートである。図8に示す各処理は、主に充電制御サーバ300のプロセッサ302により実行され、定期的に実行される受信割込み処理である。この受信割込み処理は、例えば1[秒]ごとに周期的に実行される。
【0126】
図8において、プロセッサ302は、送電装置100により計算された力率の算出結果を送電装置100の情報通信部141(図3参照)から受信して取得する(ステップSt31)。
【0127】
プロセッサ302は、ステップSt31で取得した力率が第1の範囲(a(例えば0.95)より大きく1.0以下)内であるか否かを判定する(ステップSt32)。プロセッサ302は、ステップSt31で取得した力率が第1の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt32、YES)、現在の充電電流を所定量(例えば1u)減少するための充電電流指令(図7参照)を生成する(ステップSt33)。ここで、uは、制御対象となる充電電流の設定単位(unit)を示す。例えばu=1A[アンペア]であれば、ステップSt33で生成される充電電流指令は、現在の充電電流よりも+1A[アンペア]増加するための指令(コマンド)を含む。これにより、力率が上限値LMT2を超えずに向上するだけでなく、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が向上する。
【0128】
一方、プロセッサ302は、ステップSt31で取得した力率が第1の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.95以下である)と判定した場合(ステップSt32、NO)、ステップSt31で取得した力率が第2の範囲(b(例えば0.92)より大きくa(例えば0.95)以下)内であるか否かを判定する(ステップSt34)。プロセッサ302は、ステップSt31で取得した力率が第2の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt34、YES)、現在の充電電流を現在の充電電流に維持するための送電電圧指令(図7参照)を生成する(ステップSt35)。これにより、力率が上限値LMT2を超えずに近い状態のままとなるため、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が高い状態が維持される。
【0129】
一方、プロセッサ302は、ステップSt31で取得した力率が第2の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.92以下である)と判定した場合(ステップSt34、NO)、ステップSt31で取得した力率が第3の範囲(c(例えば0.85)より大きくb(例えば0.92)以下)内であるか否かを判定する(ステップSt36)。プロセッサ302は、ステップSt31で取得した力率が第3の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt36、YES)、現在の充電電流を所定量(例えば1u)増加するための充電電流指令(図7参照)を生成する(ステップSt37)。ここで、uは、制御対象となる送電電圧の設定単位(unit)を示す。例えばu=1V[ボルト]であれば、ステップSt37で生成される充電電流指令は、現在の充電電流よりも+1A[アンペア]増加するための指令(コマンド)を含む。これにより、力率が上限値LMT2を超えずに向上するだけでなく、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が向上する。
【0130】
一方、プロセッサ302は、ステップSt31で取得した力率が第3の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.85以下である)と判定した場合(ステップSt36、NO)、ステップSt31で取得した力率が第4の範囲(0より大きくc(例えば0.85)以下)内であるか否かを判定する(ステップSt38)。プロセッサ302は、ステップSt31で取得した力率が第4の範囲(上述参照)内であると判定した場合(ステップSt38、YES)、現在の充電電流を所定量(例えば2u)増加するための充電電流指令(図7参照)を生成する(ステップSt39)。ここで、uは、制御対象となる送電電圧の設定単位(unit)を示す。例えばu=1A[アンペア]であれば、ステップSt39で生成される充電電流指令は、現在の充電電流よりも+2A[アンペア]減少するための指令(コマンド)を含む。これにより、力率が上限値LMT2を超えずに向上するだけでなく、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が向上する。
【0131】
一方、プロセッサ302は、ステップSt31で取得した力率が第4の範囲(上述参照)内ではない(言い換えると、0.85以下である)と判定した場合(ステップSt38、NO)、所定の異常処理(例えば送電装置100からの電力伝送の中断)を実行する(ステップSt40)。ステップSt40の後、充電制御サーバ300の処理は終了する。なお、所定の異常処理は上述した送電装置100からの電力伝送の中断に限定されなくてもよい。
【0132】
プロセッサ302は、ステップSt33、St35、St37、St39のうちいずれの処理の後に、生成した充電電流指令を、通信回路301、情報通信部141および情報通信部241を介して受電装置200の受電側プロセッサ226に送信する(ステップSt41)。ステップSt41の後、充電制御サーバ300の処理は終了する。
【0133】
以上により、実施の形態2に係るワイヤレス給電システム1000は、水中(例えば海中)を移動可能であって蓄電池230を有する受電装置200と、サーバ(充電制御サーバ300)と通信可能に接続される送電装置100と、を含む。送電装置100は、受電装置200への送電電力を生成する送電回路150と、送電回路150の送電電流および送電回路150の送電電圧に基づいて、送電電力の力率を算出する解析回路(パワーアナライザ180)と、受電装置200およびサーバとの間で通信可能な第1の通信回路(情報通信部141)と、を備える。受電装置200は、水中において送電装置100からワイヤレスで伝送された送電電力を受電する受電回路210と、受電回路210で受電された受電電力に基づく充電電流により蓄電池230を充電する電源回路(充電回路220)と、送電装置100との間で通信可能な第2の通信回路(情報通信部241)と、を備える。受電装置200は、力率に基づいてサーバから指示される充電電流指令に応じて、充電電流を電源回路において可変可能に制御する。これにより、ワイヤレス給電システム1000は、一次側(送電装置100)から二次側(受電装置200)への送信電圧を一定にする条件下において、電力伝送における力率を加味して、DC/DC電源223の動作が保証されるように受電装置200における充電電流を適切に制御できる。したがって、ワイヤレス給電システム1000は、二次側でのDC/DC電源223の動作停止を抑制しながら送電効率の向上を図ることができる。
【0134】
また、ワイヤレス給電システム1000は、サーバ(充電制御サーバ300)を更に備える。サーバは、力率が第1の範囲(図8のステップSt32参照)内である場合、充電電流を現在の充電電流より所定値減少する第1の充電電流指令(図8のステップSt33参照)を充電電流指令として受電装置200に送る。これにより、ワイヤレス給電システム1000は、充電電流を所定量(図8のステップSt33参照)減少する制御により、力率を上限値LMT2未満の状態でできるだけ高い値として保持することができ、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率を向上することができる。
【0135】
また、サーバ(充電制御サーバ300)は、力率が第1の範囲より小さい第2の範囲内(図8のステップSt34参照)である場合、充電電流を現在の充電電流に維持する第2の充電電流指令(図8のステップSt35参照)を充電電流指令として受電装置200に送る。これにより、ワイヤレス給電システム1000は、現在の充電電流を変更することなく、力率を上限値LMT2未満の状態でできるだけ高い値として保持することができ、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率が高い状態を維持することができる。
【0136】
また、サーバ(充電制御サーバ300)は、力率が第2の範囲より小さい第3の範囲内(図8のステップSt36、St38参照)である場合、充電電流を現在の充電電流より所定値増加する第3の充電電流指令(図8のステップSt37、St39参照)を充電電流指令として受電装置200に送る。これにより、ワイヤレス給電システム1000は、充電電流を所定量増加する制御により、力率を上限値LMT2未満の状態でできるだけ高い値として保持することができ、送電装置100から受電装置200への電力の伝送効率を向上することができる。
【0137】
(実施の形態2の変形例に至る経緯)
実施の形態2に記載の要領で受電装置200の受電電流を適切に制御しようとするにも拘わらずに、予想外の外乱、オペレーションミス、装置の動作異常、受電側プロセッサの実行するプログラムのバグ等によって、DC/DC電源が突然停止する可能性も考えられる。DC/DC電源の突然停止により、受電装置の充電回路内におけるインピーダンスが急増して高電圧が発生してしまい、受電装置内の充電回路内における各電子機器等の破損を招きかねないという課題があった。
【0138】
(実施の形態2の変形例)
実施の形態2の変形例では、受電装置内の充電電流の検出を定期的に行い、充電電流指令がゼロを示さない場合でも充電電流がゼロになったことを検出した場合に、実施の形態2の例外措置として送電装置の送電電力を所定値に下げてDC/DC電源の破損を抑制する例を説明する。
【0139】
[ワイヤレス給電システム、送電装置、受電装置の構成]
実施の形態2の変形例に係るワイヤレス給電システム、送電装置、受電装置、充電制御サーバの各構成は、実施の形態1、2に係るワイヤレス給電システム1000、送電装置100、受電装置200、充電制御サーバ300の各構成と同一である。実施の形態2の変形例に係るワイヤレス給電システム1000、送電装置100、受電装置200、充電制御サーバ300の各構成の説明において、実施の形態1、2に係るワイヤレス給電システム1000、送電装置100、受電装置200、充電制御サーバ300の各対応する構成と同一の構成のものには同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容(特に実施の形態2の変形例において特有の作用)について説明する。
【0140】
まず、図9を参照して、充電電流、DC/DC電源電圧、出力停止コマンドの時系列変化について説明する。図9は、充電電流、DC/DC電源電圧、出力停止コマンドのそれぞれの時系列変化例を示すタイムチャートである。図9の横軸は時間[ミリ秒]を示し、図9の縦軸は各種の信号レベルを示す。具体的には、DC/DC電源223の出力電圧の特性PR11a、PR11bと、充電電流の特性PR12a、PR12bと、DC/DC電源223からの出力停止コマンドの特性PR13a、PR13bとが示されている。
【0141】
図9に示すように、まず時刻t1よりも前の時点で充電電流(特性PR12a参照)が増加しており、時刻t1においてDC/DC電源223の出力停止が検出される。これは、例えば受電電圧検出部222において、時刻t1においてDC/DC電源223からの出力電圧が一定値から下がり始まったことで検出される。時刻t1以降、DC/DC電源223からの出力電圧は、特性PR11bに示すように時間とともになだらかに低下する。充電電流は、時刻t1でDC/DC電源223からの出力電圧が下がったことに基づき、充電制御サーバ300からの充電電流指令により、受電装置200内において時刻t2以降はゼロに推移するように制御される(特性PR12b参照)。
【0142】
また、時刻t1でDC/DC電源223からの出力電圧が下がり始まったことにより、送電装置100からの送電電力(送電電圧)の出力停止コマンドが充電制御サーバ300から送電装置100に送られる。これにより、送電装置100は、現在の送信電圧を所定値(例えば60V[ボルト])程度の低電圧に制御する(特性PR13a、PR13b参照)。
【0143】
[ワイヤレス給電システムの動作手順]
次に、図10を参照して、実施の形態2の変形例に係るワイヤレス給電システム1000の動作手順について説明する。図10は、実施の形態3に係る受電装置200および充電制御サーバ300の各動作手順例を時系列に示すフローチャートである。図10に示す各処理は、定期的に実行される受信割込み処理であって、より具体的には受電側プロセッサ226のタイマ割込みに基づいて充電制御サーバ300が定期的に行う処理である。これらの受信割込み処理は、例えば10ms[ミリ秒]ごとに周期的に実行される。
【0144】
図10において、受電側プロセッサ226は、「充電電流指令(つまり、充電電流の設定値を指定する指令コマンド)が示す設定値がゼロ以上であるが充電電流がゼロである」という条件を満たすか否かを判定する(ステップSt51)。この条件が満たされないと判定された場合(ステップSt51、NO)、受電側プロセッサ226のタイム割込み処理は終了する。
【0145】
一方、受電側プロセッサ226は、「充電電流指令(つまり、充電電流の設定値を指定する指令コマンド)が示す設定値がゼロ以上であるが充電電流がゼロである」という条件を満たすと判定した場合(ステップSt51、YES)、充電電流を停止するための指令である充電電流停止メッセージを生成して充電制御サーバ300に送信する(ステップSt52)。これにより、受電側プロセッサ226のタイム割込み処理は終了する。
【0146】
次に、充電制御サーバ300は、ステップSt52で受電側プロセッサ226から送信された充電電流停止メッセージを受信した場合(ステップSt53、YES)、送電装置100における送電電圧を所定値(例えば60V)に下げるように設定すると決定する(ステップSt54)。なお、充電制御サーバ300は、ステップSt52で受電側プロセッサ226から送信された充電電流停止メッセージを受信しない場合(ステップSt53、NO)、図10に示す処理を終了する。
【0147】
充電制御サーバ300は、ステップSt54の決定にしたがい、送電装置100における送電電圧を所定値(例えば60V)に下げるように設定するための送電電圧指令を生成して送電装置100に送信する(ステップSt55)。送電装置100は、ステップSt55において充電制御サーバ300から送信された送電電圧指令にしたがって、送電電圧を所定値(例えば60V)に下げるように制御する。これにより、図10に示す処理を終了する。
【0148】
以上により、実施の形態2の変形例によれば、ワイヤレス給電システム1000は、受電装置内の充電電流の検出を定期的に行い、充電電流指令がゼロを示さない場合でも充電電流がゼロになったことを検出した場合に、送電装置の送電電力を所定値に下げてDC/DC電源の破損を抑制することができる。
【0149】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0150】
上述した本実施の形態では、送電コイルCLAおよび複数の中継コイルCLCの配列方向が海水中で横向き(水平方向)に配置されたが、縦向き(垂直方向)に配置されてもよい。縦向きの場合、送電コイルCLAおよび中継コイルCLCの面は、水面と略平行となる。縦向きに配置される場合、AUV800に搭載される受電コイルCLBも磁界方向に合わせるように縦向きに搭載されてもよい。つまり、受電コイルCLBの面が水面と略平行となってよい。また、送電コイルCLAおよび中継コイルCLCが連結体を介して接続される送電コイル構造体の場合、送電コイル構造体が縦向きに配置されても、水中航走体70は、送電コイルに対し水平方向に進入および退出可能でよい。一方、送電コイルCLAおよび中継コイルCLCがボビンbnに巻回されて配置される送電コイルの場合に、送電コイルが縦向きに配置された場合、水中航走体70は、ボビンbnの上端および下端に位置するボビンbnの開口部から送電コイルの内側に進入してよい。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本開示は、一次側から二次側への電力伝送における力率を加味して送電電圧を適切に制御し、二次側でのDC/DC電源の動作停止を抑制しながら送電効率の向上を図るワイヤレス給電システム、送電装置、送電電圧制御方法および充電電流制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0152】
50 船舶
70 水中航走体
100 送電装置
110 AC電源
120 ADC
130 送電側プロセッサ
131 電源制御部
140、240、301 通信回路
150 送電回路
151 ドライバ
152、212 共振回路
153、213 整合回路
160 電圧プローブ
170 電流プローブ
180 パワーアナライザ
181 力率計算部
182 通信制御部
200 受電装置
210 受電回路
211 整流回路
220 充電回路
221 受電電流検出部
222 受電電圧検出部
223 DC/DC電源
224 充電制御回路
225 充電電流検出部
226 受電側プロセッサ
227 通信インターフェース
230 蓄電池
271、272、273 AD変換部
274 等価抵抗値算出部
275、303 メモリ
276 DC/DC電源電圧決定部
300 充電制御サーバ
302 プロセッサ
1000 ワイヤレス給電システム
An1、An2 水中アンテナ
CLA 送電コイル
CLB 受電コイル
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10