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特開2024-107790成形流入量の評価方法、プレス部品の製造方法、成形流入量の評価装置、及びプレス部品の製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107790
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】成形流入量の評価方法、プレス部品の製造方法、成形流入量の評価装置、及びプレス部品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/00 20060101AFI20240802BHJP
   B21D 24/04 20060101ALI20240802BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B21D22/00
B21D24/04 Z
B30B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011895
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】三宅 弘人
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA06
4E137AA08
4E137AA11
4E137BA01
4E137BB01
4E137CA09
4E137EA02
4E137FA16
4E137GA02
4E137GA16
4E137GB01
(57)【要約】
【課題】薄鋼板等のワークのプレス成形において、プレス時の振動に影響を受けずに、かつ汎用性がある手段によって、材料の流入を評価可能な技術を提供する。
【解決手段】ワークをプレス成形してプレス部品を製造した際における、プレス成形による材料の流入量である成形流入量を評価する成形流入量の評価方法であって、プレス成形後のワーク1Aを、カメラ11で撮像し、上記撮像した画像データから、上記プレス成形後のワークの外周輪郭1Aaを検出し、上記撮像した画像データと上記検出した上記外周輪郭1Aaとに基づき、上記成形流入量を評価するための評価判定量を算出し、算出した評価判定量に基づき、上記成形流入量を評価する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークをプレス成形してプレス部品を製造した際における、プレス成形による材料の流入量である成形流入量を評価する成形流入量の評価方法であって、
プレス成形後のワークを、ワークの板厚方向から撮像し、
上記撮像した画像データから、上記プレス成形後のワークの外周輪郭を検出し、
上記撮像した画像データと上記検出した上記外周輪郭とに基づき、上記成形流入量を評価するための評価判定量を算出し、
算出した評価判定量に基づき、上記成形流入量を評価する、
ことを特徴とする成形流入量の評価方法。
【請求項2】
上記評価判定量が、上記外周輪郭内の面積である、
ことを特徴とする請求項1に記載した成形流入量の評価方法。
【請求項3】
上記評価判定量が、上記外周輪郭の外周長である、
ことを特徴とする請求項1に記載した成形流入量の評価方法。
【請求項4】
上記評価は、設定した基準の評価量である基準評価量と、上記算出した評価判定量との差を求め、その差で成形流入量を評価する、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載した成形流入量の評価方法。
【請求項5】
同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形する際に、
プレス成形後の各ワークについて、請求項2又は請求項3に記載した方法で評価判定量を求め、求めた複数の評価判定量に基づき、成形流入量の変化を評価する、
ことを特徴とする成形流入量の評価方法。
【請求項6】
同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形することで、プレス部品を順次、製造するプレス部品の製造方法であって、
成形後の各ワークについて、請求項4に記載の成形流入量の評価方法で評価し、上記基準評価量と上記評価判定量との差が、予め設定した範囲内か否かによって成形流入量の妥当性を検査する検査工程を備える、
ことを特徴とするプレス部品の製造方法。
【請求項7】
上記評価判定量は、上記外周輪郭の輪郭形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載した成形流入量の評価方法。
【請求項8】
上記評価は、設定した基準の輪郭形状と、上記評価判定量である輪郭形状との類似度を算出し、算出した類似度で成形流入量を評価する、
ことを特徴とする請求項7に記載した成形流入量の評価方法。
【請求項9】
同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形することで、プレス部品を順次、製造するプレス部品の製造方法であって、
成形後の各ワークについて、請求項8に記載の成形流入量の評価方法で評価し、
上記類似度が、予め設定した範囲内か否かによって成形流入量の妥当性を検査する検査工程を備える、
ことを特徴とするプレス部品の製造方法。
【請求項10】
上記画像データにおいて、上記検出した外周輪郭で囲まれた領域内に、基準点を設定し、
上記基準点から設定した1方向又は2方向以上の方向における、上記基準点から上記外周輪郭までの1又は2以上の距離を、上記評価判定量とする、
ことを特徴とする請求項1に記載した成形流入量の評価方法。
【請求項11】
上記評価判定量を求める上記方向を2以上の方向として、各方向毎に上記距離を求め、
上記評価は、上記方向毎に設定した基準の距離と、上記評価判定量である距離とをそれぞれ比較することで、複数位置での成形流入量をそれぞれ評価する、
ことを特徴とする請求項10に記載した成形流入量の評価方法。
【請求項12】
同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形する際に、
プレス成形後の各ワークについて、請求項10又は請求項11に記載した方法で評価判定量を求め、求めた複数の評価判定量に基づき、成形流入量の変化を評価する、
ことを特徴とする成形流入量の評価方法。
【請求項13】
同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形することで、プレス部品を順次、製造するプレス部品の製造方法であって、
成形後の各ワークについて、請求項10又は請求項11に記載の成形流入量の評価方法で評価し、
上記方向毎に、基準の距離と上記評価判定量である距離との差が、予め設定した範囲内か否かによって、成形流入量の妥当性を検査する検査工程を備える、
ことを特徴とするプレス部品の製造方法。
【請求項14】
ワークをプレス成形してプレス部品を製造した際における、プレス成形による材料の流入量である成形流入量を評価する成形流入量の評価装置であって、
プレス成形後のワークを、ワークの板厚方向から撮像する撮像装置と、
上記撮像した画像データから、上記プレス成形後のワークの外周輪郭を検出する輪郭検出部と、
を有し、
上記撮像した画像データと上記検出した上記外周輪郭とに基づき、上記成形流入量を評価するための評価判定量を算出する評価判定量算出部と、
算出した評価判定量に基づき、上記成形流入量を評価する評価部と、
を備えることを特徴とする成形流入量の評価装置。
【請求項15】
上記評価判定量算出部は、上記外周輪郭で囲まれた面積を評価判定量として算出する、
ことを特徴とする請求項14に記載した成形流入量の評価装置。
【請求項16】
上記評価判定量算出部は、上記外周輪郭に沿った全長長さである上記外周輪郭の外周長を、評価判定量として算出する、
ことを特徴とする請求項14に記載した成形流入量の評価装置。
【請求項17】
上記評価部は、設定した基準の評価量である基準評価量と、上記評価判定量算出部が算出した評価判定量との差を求め、その差で成形流入量を評価する、
ことを特徴とする請求項15又は請求項16に記載した成形流入量の評価装置。
【請求項18】
同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形する設備に設けられた、成形流入量の評価装置であって、
上記評価判定量算出部が算出した評価判定量を、順次、記憶する記憶部を有し、
上記評価部は、記憶部に記憶した複数の評価判定量に基づき、成形流入量の変化を評価する、
ことを特徴とする請求項15又は請求項16に記載した成形流入量の評価装置。
【請求項19】
同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形することで、プレス部品を順次、製造するプレス部品の製造装置であって、
請求項17に記載した成形流入量の評価装置を備え、
成形流入量の評価装置は、成形後の各ワークについて、上記基準評価量と上記評価判定量との差が、予め設定した範囲内か否かによって成形流入量の妥当性を評価する、
ことを特徴とするプレス部品の製造装置。
【請求項20】
上記評価判定量算出部は、上記外周輪郭の輪郭形状を評価判定量として算出する、
ことを特徴とする請求項14に記載した成形流入量の評価装置。
【請求項21】
上記評価部は、設定した基準の輪郭形状と、上記評価判定量である輪郭形状との類似度を算出し、算出した類似度で成形流入量を評価する、
ことを特徴とする請求項20に記載した成形流入量の評価装置。
【請求項22】
同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形する設備に設けられた、成形流入量の評価装置であって、
上記評価判定量算出部が算出した評価判定量を、順次、記憶する記憶部を有し、
上記評価部は、記憶部に記憶した複数の評価判定量に基づき、上記類似度が、予め設定した範囲内か否かによって成形流入量の妥当性を評価する、
ことを特徴とする請求項21に記載した成形流入量の評価装置。
【請求項23】
上記評価判定量算出部は、上記画像データにおいて、上記検出した外周輪郭で囲まれた領域内に、基準点を設定し、上記基準点から設定した1方向又は2方向以上の方向における、上記基準点から上記外周輪郭までの1又は2以上の距離を、上記評価判定量として算出する、
ことを特徴とする請求項14に記載した成形流入量の評価装置。
【請求項24】
上記評価判定量算出部は、上記評価判定量を求める上記方向を2以上の方向として、各方向毎に上記距離を求め、
上記評価部は、上記方向毎に設定した基準の距離と、上記評価判定量である距離とをそれぞれ比較することで、複数位置での成形流入量をそれぞれ評価する、
ことを特徴とする請求項23に記載した成形流入量の評価装置。
【請求項25】
同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形する設備に設けられた、成形流入量の評価装置であって、
上記評価判定量算出部が算出した評価判定量を、順次、記憶する記憶部を有し、
上記評価部は、記憶部に記憶した複数の評価判定量に基づき、成形流入量の変化を評価する、
ことを特徴とする請求項23に記載した成形流入量の評価装置。
【請求項26】
同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形することで、プレス部品を順次、製造するプレス部品の製造装置であって、
請求項23又は請求項24に記載した成形流入量の評価装置を備え、
成形流入量の評価装置は、成形後の各ワークについて、上記方向毎に、基準の距離と上記評価判定量である距離との差が、予め設定した範囲内か否かによって、成形流入量の妥当性を評価する、
ことを特徴とするプレス部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄鋼板等のワークをプレス成形した際における、材料の流入量を評価する技術である。本発明は、例えば、プレス部品の量産時に、材料の流入量の変化から不具合発生を事前に検知する事にも適用可能な技術である。
【背景技術】
【0002】
自動車部品などの量産品を製造する量産プレスでは、薄鋼板等の材料特性の変動や、金型損傷を始めとしたプレス成形条件の変化が発生する。このようなことは、割れやしわなどの成形不良が発生する原因となり、そのことは、生産性低下の要因となる。
ダイとブランクホルダーで材料を挟み込んだ状態でパンチに押し付けて成形するドロー成形は、自動車部品のプレス成形で多用される成形方法である。しかし、ドロー成形は、プレス成形条件が変化しやすい成形方法でもある。
【0003】
例えば、金型の成形面の粗度が変化することにより、材料と金型間の摺動条件が変化すると、材料の流入量が変化する。また、ドロービードは材料の流入量を制御する役割を持つが、ドロービードの管理状態が悪いと流入量が変化する。また、ディスタンスブロック高さはダイとブランクホルダー間の隙間量を調整する役割を持つが、ディスタンスブロック高さの設定によっても流入量は変化する。
【0004】
さらに、量産プレスにおいて、継続的にプレス成形を実施することで金型に摩擦熱が蓄積される。その蓄積された摩擦熱によって、金型が体積膨張することでダイとブランクホルダーの隙間量が変化することでも、流入量が変化する。また、ワークにプラスチックなどの異物が付着していた場合にも、流入量が変化する。
【0005】
上記のように、ドロー成形において、材料の流入量は成形条件の変化に影響を受けやすい。材料の流入量が適切な量よりも少ない場合、他の箇所にひずみが集中してしまい割れが生じやすくなる。逆に適切な量よりも多い場合、材料が余り、しわが生じやすくなる。
したがって、量産プレスにおいては成形部品の流入量が適正か否かを常時監視することで、その変化の傾向を把握することで不具合の発生を事前に予測することが求められる。
【0006】
この課題に対する技術として、例えば特許文献1~5に記載の技術がある。
特許文献1では、プレスするワークの端部にワイヤロープを繋ぎ、ワイヤロープ上に取り付けたマーカが材料の流入に伴って引き込まれる量をカメラで撮像する。これによって、特許文献1では、流入量を計測する方法を提案している。
【0007】
特許文献2では、プレスするワークの端部にリニアセンサ付きエアシリンダを繋ぐ。そして、特許文献2では、ワーク端部の流入に伴って引き込まれる量を演算することで、流入量を計測する方法を提案している。
特許文献3では、プレスするワークの流入によって引き込まれる量を、非接触のレーザ変位計で計測することで、流入量を計測する方法を提案している。
【0008】
また、特許文献4では、金型に埋め込んだカメラによって、プレスするワークの移動前後の鋼板表面平坦化部の画像を解析する。これによって、特許文献4には、流入量や押付力、ひずみ量を計測する方法が提案されている。
特許文献5では、プレス成形後のサーモグラフィなどの放射温度計を用いて成形部品の温度を計測する。そして、特許文献5には、成形部品温度と外気温の差を境界として認識し、変化した境界のピクセル数から流入量の変化を算出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4766251号公報
【特許文献2】特許第4816922号公報
【特許文献3】特開2009-34716号公報
【特許文献4】特開2012-11453号公報
【特許文献5】特開2012-50998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~3で提案されている方法では、成形部品の特定位置の流入量の測定しかできない。このため、割れやしわ等の成形不良の発生に影響を与える計測位置を、部品毎に特定しておく必要がある。
また、流入量を測定する位置は部品毎に異なる。このため、金型毎にマーカやカメラ、リニアセンサ付きエアシリンダ、レーザ変位計の位置を設計に盛り込む必要がある。したがって、特許文献1~3で提案されている方法は、汎用性に乏しい。また、特許文献1~3で提案されている方法は、成形部品の端部が曲がっている場合には、各種計測装置の計測が流入に追従できない。さらに、特許文献1~3で提案されている方法は、プレス時の衝撃による振動がある場合、その振動によって、正確な値が測定できない可能性がある。
【0011】
特許文献4で提案されている方法も、上記と同様に、特定の位置の流入量しか計測できず、かつ、金型毎にカメラ設置位置を設計に盛り込む必要がある。このため、汎用性に乏しい。
特許文献5で提案されている方法は、金型毎にカメラ設置位置を設計する必要がなく、比較的広い範囲の流入量の変化を計測することができる。しかし、特許文献5の方法では、外気温変化によって成形部品と外気の境界線が曖昧になり、計測誤差が出る懸念がある。また、サーモグラフィ等によって計測された温度分布画像の画素が比較的大きい。このため、特許文献5の方法では、流入量の計測分解能が低下しやすい。
【0012】
本発明は、上記のような点に着目してなされたものであり、薄鋼板等のワークのプレス成形に対する評価に関する。本発明は、プレス時の振動に影響を受けずに、かつ汎用性がある手段によって、材料の流入を評価可能な技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
課題解決のために、本発明の一態様は、ワークをプレス成形してプレス部品を製造した際における、プレス成形による材料の流入量である成形流入量を評価する成形流入量の評価方法であって、プレス成形後のワークを、ワークの板厚方向から撮像し、上記撮像した画像データから、上記プレス成形後のワークの外周輪郭を検出し、上記撮像した画像データと上記検出した上記外周輪郭とに基づき、上記成形流入量を評価するための評価判定量を算出し、算出した評価判定量に基づき、上記成形流入量を評価する、成形流入量の評価方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、撮像装置が撮像したプレス成形後の成形部品画像から検出した成形部品の輪郭で規定される特徴量(評価判定量)に基づき、プレス成形による材料の流入量を評価する。このため、プレス成形時の振動に影響を受けること無く、成形部品全体における材料の流入量を評価することが可能である。
また、この評価のための情報の取得は、プレス成形後のアイドル工程や運搬装置上など、任意の工程での計測が可能である。このため、金型毎にカメラ設置位置を設計する必要がなく、汎用的に流入量の評価を可能とする。
【0015】
さらに、画像解析により撮像画像から直接成形部品の境界を認識するため、外気温などの外乱影響を受けにくい。また、高画素での撮像が可能なため、比較的高い分解能で流入量の計測が可能である。
また、本発明の態様の評価方法を用いることで、量産時における、流入量の変化から、不具合発生を事前に検知することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】プレス部品の製造装置の例を示す図である。
図2】プレス部品の製造装置の例を示す図である。
図3】本発明に基づく実施形態に係る評価装置の構成を示す図である。
図4】載置台の例を示す図である。
図5】演算処理部の構成を示す図である。
図6】本発明に基づく実施形態で例示したプレス部品を説明する斜視図である。
図7】成形前のワーク(a)と、成形後のワーク(b)を示す平面図である。
図8】評価方法の例を示すフロー図である。
図9】第1実施形態での評価を示す図である。
図10】プレス成形を説明する図である。
図11】実施例におけるワークを示す平面図である、
図12】成形後のワークの向きを説明する平面図である。
図13】BHFと輪郭内面積の関係を示す図である。
図14】BHFと輪郭外周長の関係を示す図である。
図15】潤滑条件と輪郭内面積の関係を示す図である。
図16】潤滑条件と輪郭外周長の関係を示す図である。
図17】第2実施形態での評価を示す図である。
図18】BHFと類似度の関係を示す図である。
図19】潤滑条件と類似度の関係を示す図である。
図20】第3実施形態における、基準点H、方向K、距離Lの関係を示す図である。
図21】第3実施形態における、基準点H、方向K、距離Lの関係を示す図である。
図22】角度360°分の方向と距離(L:length)の関係を示す図である。
図23】潤滑条件の違いによる、角度360°分の方向と距離(L:length)の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に基づく実施形態について図面を参照して説明する。
(プレス部品の製造装置)
本実施形態では、プレス部品の製造装置の例として、図1に示すような、複数のプレス工程3A~3Dが直列に配置されたトランスファープレスラインに適用できる。また、図2に示すような、タンデムプレスラインに適用することができる。もちろん、本開示は、プレス工程が1工程のみのプレスラインであっても適用可能である。
図1で例示したトランスファープレスラインでは、薄鋼板等のワーク1(ブランク)を、ロボットアーム等の移載装置2によって移載し、トランスファープレス3内に搬送する。そして、本実施形態では、第一の工程3Aでのプレス成形でドロー成形が行われる場合を例示している。
【0018】
また、本実施形態では、このようなプレスラインに対し、本実施形態の成形流入量の評価装置が設けられている。
図1に示すトランスファープレスラインの場合、例えば第2の工程3Bを、加工を行わないアイドル工程として設ける。その第2の工程3B(アイドル工程)に、評価装置用のカメラ11や照明装置等の装置を設置し、ドロー成形後(プレス成形後)の成形部品1A(プレス成形後のワーク1)の画像データを上方から取得する。
【0019】
図2に示すようなタンデムプレスラインの場合、図1のトランスファープレスラインと同様に、薄鋼板等のワーク1をロボットアーム2等によってプレス機4A内に搬送する。そして、ワーク1は、第一の工程4Aでプレス成形としてのドロー成形が実行される。その後、第2の工程4Bを行うプレス機へ成形部品1Aがコンベア等によって搬送される途中に、評価装置用のカメラ11や照明装置等の装置を設置する。そして、ドロー成形後の成形部品1Aの画像撮像を行う。
なお、材料の流入量(成形流入量)を評価するプレス成形は、ドロー成形に限定されない。なお、2以上のプレス成形の工程後に、材料の流入量(成形流入量)を評価するようにしても良い。
【0020】
(成形流入量の評価装置)
「第1実施形態」
次に、本実施形態の成形流入量の評価装置について説明する。
ここで、以下の説明では、評価するプレス成形がドロー成形である場合を例に挙げて説明する。また、本実施形態では、プレス成形後のワーク1を、成形部品1Aと記載する。
図3は、本実施形態の成形流入量の評価装置の構成を説明する模式図である。
本実施形態の成形流入量の評価装置は、図3に示すように、載置台14、カメラ11、制御コンピュータ15、及びモニタ16Aや警報器16Bなどの外部装置16を備える。図3中、符号10はプレス機を、符号10Aは、プレス機10の制御装置を示す。
【0021】
<載置台14>
載置台14は、撮像用の台であって、プレス成形されて作製された成形部品1Aが載置される台である。
載置台14の例を、図4に示す。すなわち、載置台14は、図4(a)に示すように、平坦な台でもよい。また、載置台14は、図4(b)に示すように、コンベアのような上面(載置面14a)が移動可能な構成となっていても良い。また、載置台14は、図4(c)に示すように、成形部品1Aの撮像の向きが常に同じ向きとなるよう、成形部品1Aの成形部の形状に沿った形の表面を有する治具のようなものから構成されていても良い。
また、載置台14の上面(載置面14a)は、黒色、白色、緑色等の色に塗装等で着色し、成形部品1Aと同系色では無い背景色となっていることが好ましい。これによって、載置台14の上面が、成形部品1Aとの境界を明確に認識できる。また、載置台14の上面(載置面14a)には、成形部品1Aの位置や向きを規定する目的で、マス目状などの線や、マーキングが付与されていてもよい。
【0022】
<カメラ11>
カメラ11は、載置台14に載っている成形部品1Aを上方から撮像する撮像装置である。カメラ11は、載置台14における撮像位置の上方に、撮像軸を撮像位置(下方)に向けて配置されている。符号13は、カメラ11を支持する支持部材である。
【0023】
カメラ11は、成形部品1A全体が撮像可能な位置に設置されている。また、カメラ11は、成形部品1Aに対して焦点が合う位置が好ましい。例えば、成形部品1A全体が収まる撮像領域を規定し、その撮像領域の中心にカメラ11の撮像軸が向くように設定する。カメラ11の撮像軸は、載置台14の上面(の中央)に対し垂直方向(鉛直方向)が好ましいが、撮像軸が傾いた位置から撮像しても良い。カメラ11の撮像軸が、他の部品との干渉などを考慮して傾いている場合には、画像処理によって、上方から画像データでなるように画像変換を施すことが好ましい。
また、プレスラインの環境に合わせて、図3に示すように、必要であれば照明装置12を用いてもよい。照明装置12は、撮像する領域を明るくする。
カメラ11が撮像した画像データ(撮像画像)は、制御コンピュータ15に供給される。
【0024】
<制御コンピュータ15>
制御コンピュータ15は、図3のように、入出力部15Aと、演算処理部15Bと、ハードディスク等からなる記憶部15Cとを備える。
入出力部15Aは、カメラ11からの画像データを入力して、記憶部15Cに記憶する。
演算処理部15Bは、図5に示すように、輪郭検出部15Baと、評価判定量算出部15Bbと、評価部15Bcとを備える。輪郭検出部15Baと評価判定量算出部15Bbとは、コンピュータ処理によって、画像データに対し画像処理を実行する処理部である。
【0025】
ここで、制御コンピュータ15によって処理された評価結果(計測結果)や画像データは、モニタ等の外部装置16へ出力される。これによって、オペレータ等が目視で成形部品1Aの状態を確認することができる。また、計測結果に異常等が認められる場合には、表示灯等によって周囲に異常を警告することができる。
さらに、制御コンピュータ15は、プレス機10の制御装置10Aへ接続されている。そして、制御コンピュータ15は、求めた評価結果から成形部品1Aの異常が推定される場合には、プレス成形を停止する等の制御信号を、プレス機10の制御装置10Aに発信することができる。また、制御コンピュータ15は、プレス機の制御装置10Aから、プレス終了の信号を受信してもよい。
【0026】
[輪郭検出部15Ba]
輪郭検出部15Baは、撮像した画像データから、画像処理によって成形部品1Aの外周輪郭を検出する処理を実行する。
輪郭検出部15Baは、外周輪郭を検出する前に、外周輪郭の検出精度等を向上させる目的で、画像データに対し公知の画像変換処理を施しても良い。
画像変換処理の例としては、グレースケール変換、リサイズ処理、平滑化処理などが例示できる。グレースケール変換は、成形部品1Aと背景の境界をより明確化するために実行する。リサイズ処理(画像のサイズを変更する処理)は、画像の大きさを、画像処理しやすい大きさにするために実行する。平滑化処理は、画像のノイズ除去のために実行される。
【0027】
[評価判定量算出部15Bb]
評価判定量算出部15Bbは、撮像した画像データと、輪郭検出部15Baが検出した外周輪郭とに基づき、成形流入量を評価するための評価判定量を算出する。評価判定量は、検出した外周輪郭で規定される特徴量である。
ここで、発明者は、種々の検討によって、次のような知見を得た。ドロー成形により流入した後の材料の輪郭形状を上記の画像解析により検出し、上記輪郭で閉じられた輪郭内部の面積及や上記輪郭の周囲の長さ等を評価判定量として求めた。そして、この評価判定量が、プレス成形時の材料の流入量と正の相関があるとの知見を得た。すなわち、成形後のワーク1の輪郭で規定される特徴量が、プレス成形時の材料の流入量と正の相関があるとの知見を得た。そして、その知見に基づき、評価判定量を求めることで、量産プレス時の流入量の変化を検知し、不具合発生を事前に予測することができる知見を得た。
【0028】
本実施形態では、画像データでの、外周輪郭で囲まれた面積、及び外周輪郭で規定される成形部品1Aの外周長の少なくとも一方を、評価判定量として算出する。
外周輪郭で囲まれた面積は、例えば、外周輪郭に囲まれた画素の数で求める。外周長も、例えば、外周輪郭が位置する、つまり重なる画素の数から求める。出力値が画素(ピクセル)単位である場合は、成形部品1Aを撮像した時と同じ撮像条件で長さが予め分かっているものを撮像して1画素(ピクセル)あたりの長さを求めた上でキャリブレーションを行うことが望ましい。
【0029】
[評価部15Bc]
評価部15Bcは、評価判定量算出部15Bbが算出した特徴量である評価判定量に基づき、成形流入量を評価する。
評価部15Bcは、例えば、予め設定した基準の評価量である基準評価量と、評価判定量算出部15Bbが算出した評価判定量との差を求め、その差で成形流入量を評価する。評価部15Bcは、例えば、求めた差が、予め設定した閾値以上の場合、成形流入量が異常と判定する。
外周輪郭で囲まれた面積や外周長と、プレス成形による材料の流入量とは正の相関がある。すなわち、評価判定量は、材料の流入量に比例した、材料の流入量を規定する指標値となっている。このため、基準評価量と算出した評価判定量との差は、基準値に対する材料の流入量の変化を表す指標値となっている。
上記の基準評価量は、予め実験などを行って取得してもよい。
【0030】
また、同一形状のワーク1を、順次、同一のプレス部品にプレス成形する設備の場合、基準評価量を次のように設定しても良い。なお、この設備は、同一のプレス部品を製造する量産設備の場合である。この場合には、評価するプレス成形よりも前に取得した評価判定量(最初の数回分の評価判定量でも良い)の平均値や、直前に取得した評価判定量などを、今回の評価の基準評価量としてもよい。この場合、過去のプレス成形との変化を評価でき、量産品を順次製造している過程での成形不良を、プレス成形による材料の流入量の変化から検出することができるようになる。
【0031】
<演算処理部15Bでの処理について>
次に、演算処理部15Bでの処理、つまり、プレス成形部品1Aの成形流入量の評価方法について詳細に説明する。
ここでは、プレス成形部品1Aが、図6に示すような、薄鋼板の角筒ドロー成形部品を例に成形流入量の評価方法について説明する。
図7(a)は、成形前の薄鋼板(ワーク1)の平面視図を示す。図7(b)は、角筒ドロー成形部品1A(プレス成形後のワーク1)の平面視図を示す。
この成形部品1Aは、ドロー成形による角筒部の成形に伴い、図7(a)→(b)に示すように、特に薄鋼板等のワーク1の四辺部の材料が多く流入する。
【0032】
ここでは、撮像した画像データを、図8に示す画像処理フローによって処理して、成形部品1Aと背景の境界を輪郭1Aaとして認識する。そして、図8では、流入量の指標値(評価判定量)を計測する場合を例示する。
画像処理を行う方法に特に限定はなく、公知の画像の処理方法を適用すればよい。ここでは、オープンソースのコンピュータビジョン向けライブラリであるOpenCVをPythonプログラムに実装して画像処理を行った。
【0033】
<画像リサイズ(ステップS10)>
撮像した画像は、カメラ11の性能にもよるが、例えば4000×6000画素サイズで構成されている。画素数が多すぎる場合は、輪郭1Aaの検出に不具合が生じる可能性がある。このため、例えば800×1200画素程度に画像サイズを変更する。これによって、画像データから、成形部品1Aの輪郭1Aaをより正確に検出することが可能となる。
【0034】
<グレースケール変換(ステップS20)>
画像処理の下準備として、画像データがRGB形式で保存されているカラー画像の場合、画像データを白から黒の、0から255の段階で表現するグレースケール形式に変換する。
【0035】
<平滑化(ステップS30)>
撮像した画像には対象とする成形部品1A以外にも、反射光等により複数のノイズが生じている可能性がある。そして、ノイズは、成形部品1Aの輪郭1Aaを検出する際における精度低下の要因となる。これを防ぐために、画像データに対し各種フィルタに画像を通すことにより平滑化処理を行う。使用するフィルタは、平均化フィルタ、中央値フィルタ、ラプラシアンフィルタ、ガウシアンフィルタ等、公知のフィルタを使用すればよい。
【0036】
<境界取得(ステップS40)>
境界検出部は、画像から成形部品1Aの輪郭1Aaを検出するために、成形部品1Aの部分と背景部分の境界を取得する処理を行う。その方法としては、ソーベルフィルタやCannyフィルタ等のエッジ検出関数を用いてもよいし、二値化処理により成形部品1Aを白、背景部分を黒となるように処理して取得してもよい。輪郭1Aaの検出処理は公知の処理を提供すれば良い。
【0037】
<輪郭検出(ステップS50)>
境界検出部は、成形部品1Aと背景の境界を取得した後、その境界部の内、閉じた最外周の輪郭1Aaの検出を行う。このとき、検出された輪郭1Aaのリストが複数ある場合は、輪郭1Aa内の面積や長さ等の範囲を条件として追加することで、成形部品1Aの輪郭1Aaのみが検出されるように処理を行う。
【0038】
<特徴量計算(ステップS60)>
評価判定量算出部15Bbは、検出された成形部品1Aの輪郭1Aa内部の面積や外周長からなる評価判定量を、成形流入量の指標値となる特徴量として算出する。
評価判定量(特徴量)を算出した後の計測結果のイメージを図9に示す。図9では、成形部品1Aの輪郭1Aaを強調して表示する。また、輪郭1Aa内の面積(Area)及び輪郭1Aaに沿った外周長(Length)を、特徴量として、同画面上に表示している。また、上記特徴量以外にも、図9には、輪郭1Aaを最小面積で外接する長方形の表示し、その幅(Width)や高さ(Height)も表示している。また、輪郭1Aaの画像モーメントから輪郭1Aa重心Gも算出して表示している。
【0039】
また、画像処理ツールにもよるが、算出される長さ、面積に関する各種特徴量の出力値が画素(ピクセル)単位である場合は、次のように処理することが好ましい。すなわち、成形部品1Aを撮像した時と同じ撮像条件で長さが予め分かっているものを撮像して1画素(ピクセル)あたりの長さを求めた上でキャリブレーションを行うことが望ましい。
【0040】
(動作その他)
本実施形態では、薄鋼板等のワーク1のプレス成形について評価する。すなわち、本実施形態では、カメラ11が撮像したプレス成形後の成形部品1Aの画像データから材料の流入量を評価するための評価判定量を求める。そして、求めた評価判定量から、材料の流入量を評価する。このため、プレス成形時の振動に影響を受けること無く、成形部品1A全体における材料の流入量を安定して評価することが可能である。
ここで、本実施形態の評価判定量は、検出した成形部品1Aの輪郭1Aaで規定される特徴量である。後述するように、成形部品1Aの輪郭1Aaで規定される特徴量は、材料の流入量と正の相関がある。このため、評価判定量で材料の流入量を評価することができる。
【0041】
上記説明では、評価判定量として、輪郭1Aaで規定される輪郭内面積と、外周長を例示した。面積は、外周長に比べ、材料の流入量と高い相関関係にある(実施例参照)。このため、評価判定量として、外周長よりも面積の方が好ましい。
また、本実施形態では、評価のための情報の取得は、プレス成形後のアイドル工程や運搬の際など、任意の工程で可能である。このため、金型毎にカメラ11設置位置を設計する必要がなく、汎用的に流入量の評価を行うことができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、画像解析により撮像画像から直接、成形部品1Aの境界を認識する。このため、評価のための情報の取得は、外気温などの外乱影響を受けにくい。また高画素での撮像が可能なため、比較的高い分解能で流入量の計測が可能である。
また、本開示の方法を適用することで、量産時における、流入量の変化から、不具合発生を事前に検知することも可能となる。
【0043】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態の成形流入量の評価装置、及び評価方法について、図面を参照して説明する。
第2実施形態の基本構成は、第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態と処理が同様な部分については説明を省略する。
第2実施形態は、外周輪郭1Aaの形状を評価判定量とする点で、第1実施形態と異なる。このため、以下、第2実施形態における、評価判定量算出部15Bb及び評価部15Bcの処理について説明する。
【0044】
[評価判定量算出部15Bb]
評価判定量算出部15Bbは、検出した外周輪郭1Aaで規定される成形部品1Aの輪郭形状を、評価判定量(特徴量)として算出する。
【0045】
[評価部15Bc]
評価部15Bcは、設定した基準の輪郭形状(基準評価量)と、上記評価判定量である輪郭形状との類似度を算出する。
そして、評価部15Bcは、算出した類似度で成形流入量を評価する。例えば、算出した類似度が設定した範囲内(類似している)か否かを判定し、当該範囲内である場合には、成形流入量に異常が無いと判定する。
なお、基準の輪郭形状は、予め実験などを行って取得してもよい。
【0046】
また、同一形状のワーク1を、順次、同一のプレス部品にプレス成形する設備の場合、基準の輪郭形状を次のように設定しても良い。なお、この設備は、同一のプレス部品を製造する量産設備の場合である。この場合には、評価するプレス成形よりも前に取得した評価判定量(最初の数回分の評価判定量でも良い)の平均値や、直前に取得した評価判定量などを、今回使用する基準の輪郭形状としてもよい。この場合、過去のプレス成形との変化を評価でき、量産品を順次製造している過程での成形不良を、プレス成形による材料の流入量の変化から検出することができるようになる。
【0047】
<類似度について>
本実施形態では、プレス成形により流入した後のワーク1の輪郭形状を画像解析により検出する。そして、予め設定した基準の輪郭形状と、評価対象である成形部品1Aの輪郭形状(特徴量)との間で比較し、類似度を算出する。発明者は、その算出した類似度から、量産プレス時の流入量の変化を評価でき、不具合発生を事前に予測することができるとの知見を得た。
そこで、本実施形態では、基準の輪郭形状と、評価対象である成形部品1Aの輪郭形状を比較し、類似度の計算を行う。この類似度は、基準の輪郭形状に対応する基準とする成形部品1Aでの成形流入量に対する成形流入量についての指標値となる。
特徴量(輪郭形状)を算出した後の計測結果のイメージを図17に示す。図17では、基準の輪郭形状40と、計測対象部品の輪郭形状を同画面上に表示している。また、図18では、両輪郭形状の算出した類似度を表示している。
【0048】
[類似度の算出方法の例]
類似度の算出には、公知の任意の手法を用いることができる。
類似度の算出は、例えば、オープンソースのコンピュータビジョン向けライブラリであるOpenCV内に実装されているmatchShapes関数等を用いることができる。matchShapes関数には、2つの輪郭形状の類似度算出モードが3つ実装されている。その各モードの類似度I(A,B)、I(A,B)、I(A,B)は以下式で表される。
【0049】
【数1】
【0050】
ここで、A及びBは、それぞれ基準の輪郭形状に対応する基準となる成形部品と、評価対象の成形部品1Aを示す。また、mi及びmiは、以下式で計算される。
【0051】
【数2】
【0052】
ここで、hi及びhiは、それぞれ基準成形部品の外周輪郭及び、計測対象の成形部品1AのHuモーメントを示す。
そして、例えば、類似度の一致具合が、予め設定した基準から外れる場合には、評価対象の成形部品1Aのプレス成形に異常があったと判定する。
その他は、上記の第1実施形態と同様の処理を実行すれば良い。
【0053】
「第3実施形態」
次に、第3実施形態の成形流入量の評価装置、及び評価方法について、図面を参照して説明する。
第3実施形態の基本構成は、第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態と処理が同様な部分については説明を省略する。
第3実施形態は、外周輪郭1Aaの形状を評価判定量とする点で、第1実施形態と異なる。このため、第3実施形態における、評価判定量算出部15Bb、及び評価部15Bcの処理について説明する。
【0054】
[評価判定量算出部15Bb]
評価判定量算出部15Bbは、画像データにおいて、検出した外周輪郭1Aaで囲まれた領域内に、図20に示すように、基準点Hを設定する。そして、基準点Hから設定した1方向又は2方向以上の方向Kにおける、基準点Hから上記外周輪郭1Aaまでの1又は2以上の距離Lを、上記評価判定量として算出する。距離Lは、画像での直線距離である。
複数方向Kの例を図21に示す。上記の方向Kは、例えば、各辺毎に1以上、つまり4方向以上とする。例えば、20方向以上とする。
【0055】
[基準点Hの設定]
基準点Hは、検出した外周輪郭1Aaで囲まれた領域内における、任意の位置に設定できる。
基準点Hは、検出した輪郭1Aaの重心でも良い。基準点Hは、成形部品1Aが常時同じ位置に設置して撮像することができる場合は、成形部品1Aの輪郭1Aa内部の任意の座標としても構わない。
【0056】
[基準点Hから1方向Kの輪郭1Aaまでの距離Lの計測]
基準点Hから1方向Kの輪郭1Aaまでの距離Lの計測方法を図20にて説明する。
図20のように、任意位置の基準点Hの座標が設定される。次に、輪郭1Aaまでの距離Lを計測する方向Kの定義を行う。計測方向Kは、基準線LHからの角度θを用いて定義するものとし、図20では基準点Hから上方向に向かう線を、θ=0°の基準線LHとして定義している。基準点Hから計測方向Kに直線を引いた時、輪郭1Aaと交差するまでの直線の長さを、上記計測方向Kにおける計測距離Lとして算出する。例えば、基準点Hの座標と、直線が輪郭1Aaと交わる位置の座標とから、直線の長さを距離Lとして求める。
【0057】
[パネル全方向の計測]
上記直線の計測を、方向Kの数だけ、ワーク1の全周に沿って繰り返し実施する。例えば、計測方向Kを定義する角度θを、0~359°の範囲で1°刻みで変更して、基準点Hから輪郭1Aaまでの距離Lを計測する。この場合、計測方向Kと計測距離Lの算出処理を360回繰り返し実行することになる。計測方向Kの定義は任意の等間隔刻みとしてもよいし、成形部品1Aによっては等間隔でなくとも、所定の計測方向Kとなるように設定してもよい(図21)。
ここで、基準点Hの位置については、同一基準で設定した基準点Hを、基準となる成形部品や、評価する量産品の全てに適用する。
【0058】
計測方向Kについても、基準となる成形部品1Aや、各プレス成形した成形部品1Aのワーク1で同じ基準の向きを基点として設定されるように調整する。例えば、撮像時のワーク1の向きが同一となるように設定して、撮像を行う。若しくは、撮像した画像データの向きが同方向Kとなるように画像処理を実行する。例えば、ドロー成形して形成した各筒の4つの角位置の向きを基準として、成形部品1Aの向きを規定する。
【0059】
[評価部15Bc]
評価部15Bcは、評価判定量算出部15Bbが算出した特徴量である評価判定量(計測方向Kと計測長さ)に基づき、成形流入量を評価する。本実施形態では、成形流入量の評価は、計測方向K毎に実行する。
なお、求めた複数の評価判定量の合計値を使用して、成形流入量を評価してもよい。この場合、成形部品1A全体としての成形流入量を評価することができる。これに対し、各計測方向K毎に評価した場合、異常な流入量の変化位置を検出可能となる。もっとも、計測方向Kは1方向でも良いが、本実施形態では、複数方向を計測するものとする。
【0060】
評価部15Bcは、例えば、予め設定した基準の評価量である基準評価量と、評価判定量算出部15Bbが算出した評価判定量との差を求め、その差で成形流入量を評価する。評価部15Bcは、例えば、求めた差が、予め設定した閾値以上の場合、成形流入量が異常と判定する。
計測方向Kに対する計測長さ(距離L)と、プレス成形による、当該計測方向Kでの材料の流入量とは正の相関がある。すなわち、評価判定量は、材料の流入量に比例した、材料の流入量を規定する指標値となっている。本実施形態では、計測方向Kを複数設定することで、ワーク1の周方向に沿った複数箇所における流入量を、個別に評価することができる。
上記の基準評価量は、予め実験などを行って取得してもよい。
【0061】
また、同一形状のワーク1を、順次、同一のプレス部品にプレス成形する設備の場合、基準評価量を次のように設定しても良い。なお、この設備は、同一のプレス部品を製造する量産設備の場合である。この場合には、評価するプレス成形よりも前に取得した評価判定量(最初の数回分の評価判定量でも良い)の平均値や、直前に取得した評価判定量などを、今回の評価の基準評価量としてもよい。この場合、過去のプレス成形との変化を評価でき、量産品を順次製造している過程での成形不良を、プレス成形による材料の流入量の変化から検出することができるようになる。
その他は、第1実施形態と同様である。
ただし、この第3実施形態では、計測方向Kを複数設定することで、ワーク1の周方向に沿った複数箇所での成形流入量を個別に評価することができる。
【0062】
(変形例)
また例えば、次のように評価の処理を実行してもよい。すなわち、まず、各方向Kの評価判定量(計測距離L)の合計値で、成形流入量の妥当性の判定を行う。そして、成形流入量が異常と判定した場合にだけ、各方向K毎に評価判定量(計測距離L)の評価を行って、成形流入量の異常の箇所を特定するように設定しても良い。
同様に、次のように評価の処理を実行してもよい。
すなわち、第1実施形態若しくは第2実施形態の評価方法で、成形部品1A全体としての成形流入量の妥当性を評価する。そして、成形流入量が異常と判定した場合にだけ、第3実施形態の評価方法で、各方向K毎に評価判定量(計測距離L)の評価を行って、成形流入量の異常の箇所を特定するように設定しても良い。
【0063】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)ワークをプレス成形してプレス部品を製造した際における、プレス成形による材料の流入量である成形流入量を評価する成形流入量の評価方法であって、
プレス成形後のワークを、ワークの板厚方向から撮像し、
上記撮像した画像データから、上記プレス成形後のワークの外周輪郭を検出し、
上記撮像した画像データと上記検出した上記外周輪郭とに基づき、上記成形流入量を評価するための評価判定量を算出し、
算出した評価判定量に基づき、上記成形流入量を評価する、
ことを特徴とする成形流入量の評価方法。
【0064】
(2)上記評価判定量が、上記外周輪郭内の面積である。
(3)上記評価判定量が、上記外周輪郭の外周長である。
(4)上記評価は、設定した基準の評価量である基準評価量と、上記算出した評価判定量との差を求め、その差で成形流入量を評価する。
(5)同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形する際に、
プレス成形後の各ワークについて、請求項2又は請求項3に記載した方法で評価判定量を求め、求めた複数の評価判定量に基づき、成形流入量の変化を評価する。
(6)同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形することで、プレス部品を順次、製造するプレス部品の製造方法であって、
成形後の各ワークについて、本開示の成形流入量の評価方法で評価し、上記基準評価量と上記評価判定量との差が、予め設定した範囲内か否かによって成形流入量の妥当性を検査する検査工程を備える、
ことを特徴とするプレス部品の製造方法。
【0065】
(7)上記評価判定量は、上記外周輪郭の輪郭形状である。
(8)上記評価は、設定した基準の輪郭形状と、上記評価判定量である輪郭形状との類似度を算出し、算出した類似度で成形流入量を評価する。
(9)同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形することで、プレス部品を順次、製造するプレス部品の製造方法であって、
成形後の各ワークについて、本開示の成形流入量の評価方法で評価し、
上記類似度が、予め設定した範囲内か否かによって成形流入量の妥当性を検査する検査工程を備える。
(10)上記画像データにおいて、上記検出した外周輪郭で囲まれた領域内に、基準点を設定し、
上記基準点から設定した1方向又は2方向以上の方向における、上記基準点から上記外周輪郭までの1又は2以上の距離を、上記評価判定量とする。
【0066】
(11)上記評価判定量を求める上記方向を2以上の方向として、各方向毎に上記距離を求め、
上記評価は、上記方向毎に設定した基準の距離と、上記評価判定量である距離とをそれぞれ比較することで、複数位置での成形流入量をそれぞれ評価する。
(12)同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形する際に、
プレス成形後の各ワークについて、請求項10又は請求項11に記載した方法で評価判定量を求め、求めた複数の評価判定量に基づき、成形流入量の変化を評価する。
(13)同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形することで、プレス部品を順次、製造するプレス部品の製造方法であって、
成形後の各ワークについて、本開示の成形流入量の評価方法で評価し、
上記方向毎に、基準の距離と上記評価判定量である距離との差が、予め設定した範囲内か否かによって、成形流入量の妥当性を検査する検査工程を備える、
ことを特徴とするプレス部品の製造方法。
【0067】
(14)ワークをプレス成形してプレス部品を製造した際における、プレス成形による材料の流入量である成形流入量を評価する成形流入量の評価装置であって、
プレス成形後のワークを、ワークの板厚方向から撮像する撮像装置と、
上記撮像した画像データから、上記プレス成形後のワークの外周輪郭を検出する輪郭検出部と、
を有し、
上記撮像した画像データと上記検出した上記外周輪郭とに基づき、上記成形流入量を評価するための評価判定量を算出する評価判定量算出部と、
算出した評価判定量に基づき、上記成形流入量を評価する評価部と、
を備えることを特徴とする成形流入量の評価装置。
【0068】
(15)上記評価判定量算出部は、上記外周輪郭で囲まれた面積を評価判定量として算出する。
(16)上記評価判定量算出部は、上記外周輪郭に沿った全長長さである上記外周輪郭の外周長を、評価判定量として算出する。
(17)上記評価部は、設定した基準の評価量である基準評価量と、上記評価判定量算出部が算出した評価判定量との差を求め、その差で成形流入量を評価する。
(18)同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形する設備に設けられた、成形流入量の評価装置であって、
上記評価判定量算出部が算出した評価判定量を、順次、記憶する記憶部を有し、
上記評価部は、記憶部に記憶した複数の評価判定量に基づき、成形流入量の変化を評価する。
(19)同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形することで、プレス部品を順次、製造するプレス部品の製造装置であって、
本開示の成形流入量の評価装置を備え、
成形流入量の評価装置は、成形後の各ワークについて、上記基準評価量と上記評価判定量との差が、予め設定した範囲内か否かによって成形流入量の妥当性を評価する、
ことを特徴とするプレス部品の製造装置。
【0069】
(20)上記評価判定量算出部は、上記外周輪郭の輪郭形状を評価判定量として算出する。
(21)上記評価部は、設定した基準の輪郭形状と、上記評価判定量である輪郭形状との類似度を算出し、算出した類似度で成形流入量を評価する。
(22)同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形する設備に設けられた、成形流入量の評価装置であって、
上記評価判定量算出部が算出した評価判定量を、順次、記憶する記憶部を有し、
上記評価部は、記憶部に記憶した複数の評価判定量に基づき、上記類似度が、予め設定した範囲内か否かによって成形流入量の妥当性を評価する。
【0070】
(23)上記評価判定量算出部は、上記画像データにおいて、上記検出した外周輪郭で囲まれた領域内に、基準点を設定し、上記基準点から設定した1方向又は2方向以上の方向における、上記基準点から上記外周輪郭までの1又は2以上の距離を、上記評価判定量として算出する。
(24)上記評価判定量算出部は、上記評価判定量を求める上記方向を2以上の方向として、各方向毎に上記距離を求め、
上記評価部は、上記方向毎に設定した基準の距離と、上記評価判定量である距離とをそれぞれ比較することで、複数位置での成形流入量をそれぞれ評価する。
【0071】
(25)同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形する設備に設けられた、成形流入量の評価装置であって、
上記評価判定量算出部が算出した評価判定量を、順次、記憶する記憶部を有し、
上記評価部は、記憶部に記憶した複数の評価判定量に基づき、成形流入量の変化を評価する。
(26)同一形状のワークを、順次、同一のプレス部品にプレス成形することで、プレス部品を順次、製造するプレス部品の製造装置であって、
請求項23又は請求項24に記載した成形流入量の評価装置を備え、
成形流入量の評価装置は、成形後の各ワークについて、上記方向毎に、基準の距離と上記評価判定量である距離との差が、予め設定した範囲内か否かによって、成形流入量の妥当性を評価する。
【実施例0072】
次に、本実施形態の実施例について説明する。
(第1実施形態の例)
同一の金型と同一条件のワーク1(ブランク)を採用し、それぞれ異なるプレス成形条件で成形された成形部品1Aを角筒ドロー成形により取得した。
次に、その詳細を説明する。
<ワーク1>
使用したワーク1には、引張強度270MPa級の冷延軟鋼板を用いた。その鋼板は、板厚が0.7mmであった。そして、上記冷延軟鋼板を200mm四方の正方形に加工して試験片(ワーク1)とした。また、潤滑のため、一般防錆油プレトンR352Lを試験片両面に塗油した。
【0073】
<プレス成形>
上記試験片を、図10に示す角筒ドロー成形金型を用いてドロー成形し、成形部品1Aを取得した。なお、成形部品1Aの形状は、図6に示すような形状である。
使用した金型のパンチ10は、一辺100mmの正方形形状で、四隅は半径25mmのR形状、パンチ肩部は半径12mmのR形状のものを使用した。ダイ21とのクリアランスは2.1mmとし、ダイ肩部は半径10mmのR形状とした。
プレス成形速度は約20mm/secとし、成形高さは一律35mmとした。
【0074】
<プレス成形条件>
各サンプルの成形条件を、表1に示す。
【表1】
【0075】
すなわち、No.1~5のサンプルでは、それぞれブランクホルダー20のしわ押え力(BHF)を変化させて、プレス成形の条件を変更した。
また、No.6のサンプルでは、ブランクホルダー20のしわ押え力(BHF)を、BHFを200kNに設定した。更に、No.6のサンプルでは、図11のように、試験片の一部にポリシート30を付着してプレス成形を行った。上記のポリシート30は、プレス成形時の外乱として付着したものである。ポリシート30の付着は、厚み約0.1mm、20mm四方のポリシート30を試験片の両面に実行した。また付着位置は、図11に示す位置である。
なお、各サンプル条件について、2回ずつプレス成形を実行して、成形部品1Aを取得した。
【0076】
<評価>
取得した各成形部品1Aを黒色スクリーン上に設置し、一眼レフカメラ11により撮像を行った。なお、カメラ11は、成形部品1Aの上部(部品の底部)に焦点が合う位置で設置した。
撮像は、図12(a)に示すように、成形部品1Aがドロー成形時と同じ向きだけではなく、図12(b)に示すように、成形部品1Aを任意の角度で回転させて、各向きで複数枚撮像した。
そして、撮像した各成形部品1Aについて画像処理を行い、各成形部品1A(成形後のワーク1)の輪郭内面積及び輪郭外周長を算出した。
【0077】
No.1~5のサンプルにおける、検出した輪郭1Aa内の面積とBHFの関係を、図13に示す。また、No.1~5のサンプルにおける、検出した輪郭外周長とBHFの関係を、図14に示す。
この図13図14から、BHFの増加に伴い、輪郭内面積及び輪郭外周長がともに増加する傾向を示した。これは、BHFが増加することで、角筒ドロー成形時の材料流入が減少するためである。
【0078】
また、輪郭外周長はBHF>150kNで収束傾向を示していることから、成形部品1Aの輪郭内面積を計測する方が、プレス成形条件の変化、つまり材料の流入量の変化をより感度よく検出することが可能であった。
次に、BHFが等しいNo.4と6のサンプルの評価結果を比較する。
図15に、BHFが等しい条件で、潤滑条件がR352Lの場合(No.4)と、ポリシート30を混入させた場合(No.6)の輪郭内面積の関係を示す。図16に、BHFが等しい条件で、潤滑条件がR352Lの場合(No.4)と、ポリシート30を混入させた場合(No.6)の輪郭外周長の関係を示す。
【0079】
ポリシート30を混入させることで、成形部品1Aの輪郭内面積はわずかに減少している。ポリシート30は0.1mm程度の厚みであり、試験片でポリシート30を入れた箇所のみが強くダイ21とブランクホルダー20で挟まれ、それ以外の領域ではダイ21とブランクホルダー20の押えが弱くなる。このため流入量が全体的に増加するためである。
一方で、成形部品1Aの輪郭外周長はポリシート30の混入有無によらず、同程度の長さが計測された。この結果からも、20mm四方のポリシート30の混入によるわずかな成形条件の変化を検知するためには、輪郭外周長よりも、輪郭内面積で評価する方が有効に評価できることが示された。
【0080】
(第2実施形態の例)
以下に、第2実施形態に基づく実施例を説明する。
<ワーク1>、<プレス成形>、<プレス成形条件>
これらの各条件は、第1実施形態の例と同じ条件とした。
【0081】
<評価>
No.4のサンプルにおける、一回目のプレスで成形された成形部品1Aを、基準成形部品1Aとした。そして、その基準成形部品1Aの輪郭形状を、基準の輪郭形状として設定した。
そして、その他の成形部品1Aを計測対象部品として、類似度の算出を行った。
類似度は、OpenCVの輪郭形状算出関数であるmatchShapes関数を使用し、モードは、上述の式(1)で示したI1(A,B)を用いて算出した。ここで、本モードにより算出される基準成形部品1A自身の類似度はI1(A,A)=0であるため、類似度がゼロに近いほど類似した輪郭形状となる。
【0082】
No.1~5のサンプルを用いて求めた、類似度とBHFの関係を図18に示す。
本例では、上述のように表1のNo.4で示した成形条件の内、N1(1枚目)の成形部品1Aを基準成形部品1Aとしている。このため、同成形条件でのN2(2枚目)の成形部品1Aの類似度を示す値が一番低く、相対的に一番類似している。そして、BHFが200kNから乖離するほど類似度を示す値が大きくなる傾向、つまり非類似となることが確認された。したがって、基準成形部品1Aの輪郭形状と計測対象成形部品1Aの輪郭形状の類似度を算出することで、プレス成形条件の変化を検知することが可能であることが分かった。
【0083】
また、No.4とNo.6のサンプルについて比較した。
BHF=200kNで、潤滑条件がR352Lの場合(No.4)と、ポリシート30を混入させた場合(no.6)の類似度と潤滑条件の関係を図19に示す。
図19から分かるように、ポリシート30を混入させた場合、類似度を示す値が大きくなった。すなわち、類似度が悪くなった。ポリシート30は0.1mm程度の厚みであり、試験片でポリシート30を入れた箇所のみが強くダイ21とブランクホルダー20で挟まれる。そして、それ以外の領域ではダイ21とブランクホルダー20の押えが弱くなるため流入量が全体的に増加する。このため、わずかに輪郭形状が基準成形部品1Aのものと乖離したためである。
【0084】
この結果からも、20mm四方のポリシート30の混入によるわずかな成形条件の変化を検知するためには、基準成形部品1Aの輪郭形状に対する、計測対象成形部品1Aの輪郭形状の類似度を算出することが有効であることが示された。
【0085】
(第3実施形態の例)
以下に、第3実施形態に基づく実施例を説明する。
<ワーク1>、<プレス成形>、<プレス成形条件>
これらの各条件は、第1実施形態の例と同じ条件とした。
ただし、撮像は、図12に示すように位置として実行し、各成形部品1Aがドロー成形時と同じ向きとなるように設置した。
【0086】
<評価>
各成形部品1Aについて、基準点Hから輪郭1Aaまでの距離Lを成形部品1A全周に渡って計測した。
ここでは、検出した輪郭1Aaの重心を基準点Hとした。
また、基準点Hから上方向を角度θ=0°とし、θ=0~359°を1°刻みで変化させた計測方向K(本例では360方向K)について輪郭1Aaまでの距離Lを計測した。このとき、計測方向Kの指標値である角度θと、その方向Kの計測距離Lとの関係を、データフレーム化しデータベースに保存した。
【0087】
No.1~5のサンプルによる評価結果について説明する。
BHFを50~250kNで変化させて成形した成形部品1Aの画像処理により算出した基準点Hから輪郭1Aaまでの距離Lと計測方向Kの関係を図22に示す。
図22から分かるように、BHFの大きさによらず、45°、135°、224°、315°の計測方向K(ワーク1における角部の方向)では、基準点Hから輪郭1Aaまでの距離Lが長い。一方、それらの角度の間の計測方向Kである、四辺部ほど距離Lが短いことが分かる。
【0088】
また、BHFが増加するに伴い、基準点Hから輪郭1Aaまでの距離Lの分布形態に大きな変化はなく、全体的に上方へシフトしている挙動が確認された。
したがって、BHF増加によって、流入バランスは大きく変化することなく、全体的に流入量が減少していることが計測結果から分かる。
次に、No.4,6のサンプルによる評価結果について説明する。
BHF=200kNとBHF一定の条件で、上述したポリシート30有無の潤滑条件による、基準点Hから輪郭1Aaまでの長さと、計測方向Kの関係を図23に示す。
【0089】
図23から分かるように、20mm四方のポリシート30を外乱として混入した状態でプレス成形した場合、基準点Hから輪郭1Aaまでの長さの分布形態は、ポリシート30がない場合とほとんど変化していない。しかし、計測方向Kθ=270°付近でわずかに流入量に差異が確認された。θ=270°付近は、図11で示したポリシート30の混入位置と試験片中心を挟んでちょうど反対の位置である。
【0090】
ポリシート30の混入部は部分的に板厚が増加した状態となり、しわ押えが強く作用するが、逆にポリシート30以外は相対的に板厚が薄いため、しわ押えが作用しにくくなるため、流入量の増加が予測される。
今回の計測結果ではポリシート30ありの場合、ポリシート30の混入位置と反対側のθ=270°付近で基準点Hから輪郭1Aaまでの距離Lが短くなっていることから、予測通り流入量が増加していることが分かる。
【0091】
以上から、プレス成形後の成形部品1Aの画像処理により、成形後のワーク1の輪郭形状を検出し、輪郭1Aa内に設定した基準点Hから輪郭1Aaまでの距離Lをパネル全周に渡って計測する。これによって、成形部品1A全体の流入量の変化及び、流入量が変化している位置を計測することが可能なことが示された。
【符号の説明】
【0092】
1 ワーク
1A 成形部品(成形後のワーク)
1A プレス成形部品
1Aa 輪郭
11 カメラ
12 照明装置
14 載置台14
14a 載置面
15 制御コンピュータ
15A 入出力部
15B 演算処理部
15Ba 輪郭検出部
15Bb 評価判定量算出部
15Bc 評価部
15C 記憶部
H 基準点
,I,I 類似度
K 方向
L 距離
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23