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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107791
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/40 20060101AFI20240802BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20240802BHJP
   F16C 33/37 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F16C19/40
F16C19/36
F16C33/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011896
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】小松 史子
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA26
3J701AA33
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA13
3J701BA20
3J701CA08
3J701CA14
3J701EA02
3J701EA31
3J701EA53
3J701FA32
(57)【要約】
【課題】セパレータの摩耗を抑制することができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】転がり軸受は、内周面に配置された外側転走面を含む外輪と、外側転走面に向かい合う内側転走面を含む内輪と、外側転走面および内側転走面上を転動可能に配置された複数の転動体と、隣り合って配置された転動体同士の各間に配置された複数のセパレータと、を備え、複数のセパレータは、第1セパレータを含み、第1セパレータは、複数の転動体のピッチ円に沿う方向である周方向における第1の向きに向く第1面と周方向において第1の向きとは反対の第2の向きに向く第2面とを含み、外側転走面および内側転走面のうち少なくともいずれか一方と接触可能に配置されており、潤滑剤を含む潤滑部と、第1面から第1の向きに突出しており、潤滑部よりも高い硬度を有する第1突出部と、第2面から第2の向きに突出しており、潤滑部よりも高い硬度を有する第2突出部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に配置された外側転走面を含む外輪と、
外周面に配置され、前記外側転走面に向かい合う内側転走面を含み、前記外輪の中心軸と中心軸が一致するように前記外輪の内周側に配置された内輪と、
前記外側転走面および前記内側転走面上を転動可能に配置された複数の転動体と、
前記複数の転動体のうち隣り合って配置された転動体同士の各間に配置された複数のセパレータと、を備え、
前記複数のセパレータは、第1セパレータを含み、
前記第1セパレータは、
前記複数の転動体のピッチ円に沿う方向である周方向における第1の向きに向く第1面と前記周方向において前記第1の向きとは反対の第2の向きに向く第2面とを含み、前記外側転走面および前記内側転走面のうち少なくともいずれか一方と接触可能に配置されており、潤滑剤を含む潤滑部と、
前記第1面から前記第1の向きに突出しており、前記潤滑部よりも高い硬度を有する第1突出部と、
前記第2面から前記第2の向きに突出しており、前記潤滑部よりも高い硬度を有する第2突出部と、を有する、転がり軸受。
【請求項2】
前記複数のセパレータは、すべて、前記第1セパレータである、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記潤滑部は、多孔質材をさらに含み、
前記潤滑剤は、前記多孔質材に含侵されている、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記多孔質材は、フッ素樹脂である、請求項3に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記第1突出部および前記第2突出部は、金属製である、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記第1突出部と前記第2突出部とは、前記潤滑部を前記周方向に貫通する一体の部材で構成されている、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項7】
前記一体の部材は、円筒状の形状を有する、請求項6に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受として、転走面に潤滑剤を供給可能なセパレータを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-32838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セパレータが転走面に潤滑剤をより長い間供給するためには、セパレータの摩耗を抑制することが望まれる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、セパレータの摩耗を抑制することができる転がり軸受を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従う転がり軸受は、内周面に配置された外側転走面を含む外輪と、外周面に配置され、外側転走面に向かい合う内側転走面を含み、外輪の中心軸と中心軸が一致するように外輪の内周側に配置された内輪と、外側転走面および内側転走面上を転動可能に配置された複数の転動体と、複数の転動体のうち隣り合って配置された転動体同士の各間に配置された複数のセパレータと、を備える。複数のセパレータは、第1セパレータを含む。第1セパレータは、複数の転動体のピッチ円に沿う方向である周方向における第1の向きに向く第1面と周方向において第1の向きとは反対の第2の向きに向く第2面とを含み、外側転走面および内側転走面のうち少なくともいずれか一方と接触可能に配置されており、潤滑剤を含む潤滑部と、第1面から第1の向きに突出しており、潤滑部よりも高い硬度を有する第1突出部と、第2面から第2の向きに突出しており、潤滑部よりも高い硬度を有する第2突出部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、セパレータの摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態における転がり軸受を、外輪の一部を省いて示す概略斜視図である。
図2図2は、図1の転がり軸受を、中心軸を含む平面で切断した断面図である。
図3図3は、図1の転がり軸受を径方向に見た概略側面図である。
図4図4は、軌道内に配置されたころおよびセパレータを示す概略図である。
図5図5は、実施の形態におけるセパレータを示す概略斜視図である。
図6図6は、図5のセパレータを中心軸に平行な方向に見た概略平面図である。
図7図7は、変形例1において軌道内に配置されたころおよびセパレータを示す概略図である。
図8図8は、変形例2におけるセパレータを示す概略側面図である。
図9図9は、変形例3におけるセパレータを示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。本開示に従う転がり軸受は、内周面に配置された外側転走面を含む外輪と、外周面に配置され、外側転走面に向かい合う内側転走面を含み、外輪の中心軸と中心軸が一致するように外輪の内周側に配置された内輪と、外側転走面および内側転走面上を転動可能に配置された複数の転動体と、複数の転動体のうち隣り合って配置された転動体同士の各間に配置された複数のセパレータと、を備える。複数のセパレータは、第1セパレータを含む。第1セパレータは、複数の転動体のピッチ円に沿う方向である周方向における第1の向きに向く第1面と周方向において第1の向きとは反対の第2の向きに向く第2面とを含み、外側転走面および内側転走面のうち少なくともいずれか一方と接触可能に配置されており、潤滑剤を含む潤滑部と、第1面から第1の向きに突出しており、潤滑部よりも高い硬度を有する第1突出部と、第2面から第2の向きに突出しており、潤滑部よりも高い硬度を有する第2突出部と、を有する。
【0010】
第1突出部および第2突出部が潤滑部から突出しているため、潤滑部と転動体とが接触することが抑制される。第1突出部および第2突出部がともに潤滑部よりも高い硬度を有することにより、第1突出部および第2突出部が転動体と接触することによる第1突出部および第2突出部の摩耗は、潤滑部が転動体と接触することによる潤滑部の摩耗よりも少なくなる。その結果、第1セパレータの摩耗が抑制される。これにより、セパレータの摩耗を抑制することができる。
【0011】
上記転がり軸受において、複数のセパレータは、すべて、第1セパレータであってもよい。これにより、セパレータの摩耗をより効果的に抑制することができる。
【0012】
上記転がり軸受において、潤滑部は、多孔質材をさらに含み、潤滑剤は、多孔質材に含侵されていてもよい。これにより、潤滑部を容易に製造することができる。
【0013】
上記転がり軸受において、多孔質材は、フッ素樹脂であってもよい。これにより、潤滑部の耐熱温度を高めることができる。
【0014】
上記転がり軸受において、第1突出部および第2突出部は、金属製であってもよい。これにより、第1突出部および第2突出部の摩耗をより効果的に抑制することができる。
【0015】
上記転がり軸受において、第1突出部と第2突出部とは、潤滑部を周方向に貫通する一体の部材で構成されていてもよい。これにより、第1突出部および第2突出部を含む第1セパレータを容易に製造することができる。
【0016】
上記転がり軸受において、一体の部材は、円筒状の形状を有してもよい。これにより、第1突出部および第2突出部を含む第1セパレータをさらに容易に製造することができる。
【0017】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の転がり軸受の具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0018】
(実施の形態)
図1は、実施の形態における転がり軸受Aを、外輪1の一部を省いて示す概略斜視図である。図1を参照して、転がり軸受Aは、外輪1と、内輪2と、複数の転動体である複数のころ3と、複数のセパレータ4と、を備える。外輪1は、本体1aと、蓋90と、ピン95と、を含む。内輪2は、一体の部材で構成されている。
【0019】
内輪2は、外輪1の中心軸と中心軸が一致するように外輪1の内周側に配置されている。外輪1と内輪2とは、共通する中心軸δを有する。中心軸δは、転がり軸受Aの回転軸である。外輪1と内輪2との間には、ころ3が配置されている。内輪2が中心軸δ周りに外輪1に対して相対的に回転すると、ころ3が外輪1と内輪2とに接触しつつ転動する。外輪1と内輪2とは、相対的に回転自在である。
【0020】
図2は、図1の転がり軸受Aを、中心軸δを含む平面で切断した断面図である。図3は、図1の転がり軸受Aを径方向に見た概略側面図である。
【0021】
図2を参照して、外輪1は、外周面10と、内周面11と、内周面11に配置された外側転走面12と、逃げ溝13と、を含む。外側転走面12は、第1外側転走面14と、第2外側転走面15と、を含む。第1外側転走面14と第2外側転走面15とは、中心軸δに直交する対称面に対して面対称である。第1外側転走面14と第2外側転走面15とは、中心軸δを含む平面で切断した断面において直交する。第1外側転走面14および第2外側転走面15によって、第1軌道溝16が形成されている。第1軌道溝16は、中心軸δを含む平面で切断した断面において外輪1の径方向の内向きに開くV字状の形状を有する。逃げ溝13は、第1外側転走面14と第2外側転走面15との間に配置されている。
【0022】
内輪2は、外周面20と、内周面21と、外周面20に配置された内側転走面22と、逃げ溝23と、を含む。内側転走面22は、外輪1の外側転走面12に向かい合う。内側転走面22は、第1内側転走面24と、第2内側転走面25と、を含む。第1内側転走面24と第2内側転走面25とは、中心軸δに直交する対称面に対して面対称である。第1内側転走面24と第2内側転走面25とは、中心軸δを含む平面で切断した断面において直交する。第1内側転走面24および第2内側転走面25によって、第2軌道溝26が形成されている。第2軌道溝26は、中心軸δを含む平面で切断した断面において内輪2の径方向の外向きに開くV字状の形状を有する。第1軌道溝16と第2軌道溝26とによって、外輪1と内輪2との間の空間である軌道αが形成されている。軌道αは、円環状である。逃げ溝23は、第1内側転走面24と第2内側転走面25との間に配置されている。
【0023】
第1外側転走面14と第2内側転走面25とは、中心軸δを含む平面で切断した断面において平行である。第2外側転走面15と第1内側転走面24とは、中心軸δを含む平面で切断した断面において平行である。
【0024】
図2を参照して、外輪1は、さらに、内周面11に配置された円環状の溝11aを含む。溝11aは、中心軸δに平行な方向において外側転走面12の両側にそれぞれ配置されている。溝11aには、軌道αを密封するシール部材(図示せず)が取り付けられる。
【0025】
図1から図3を参照して、外輪1の本体1aには、第1貫通孔17、第2貫通孔18および第3貫通孔19が形成されている。
【0026】
図2および図3を参照して、第1貫通孔17は、外輪1の本体1aを外輪1の径方向に貫通する円形孔である。ころ3およびセパレータ4は、第1貫通孔17を通じて軌道α内に入れられる。第1貫通孔17は、蓋90によって閉じられる。図1および図2を参照して、第2貫通孔18は、外輪1の本体1aを中心軸δに平行な方向に貫通する円形孔である。第2貫通孔18は、第1貫通孔17とつながっている。図3を参照して、第3貫通孔19は、外輪1の本体1aを外輪1の径方向に貫通する円形孔である。第3貫通孔19の内径は、第1貫通孔17の内径よりも小さい。第3貫通孔19を通じて、軌道α内にオイルなどの潤滑剤が供給される。
【0027】
図2を参照して、蓋90は、外側転走面12に整合する転走面91を含む。蓋90には、外輪1の第2貫通孔18に整合する貫通孔92が形成されている。蓋90が外輪1の第1貫通孔17に差し込まれた状態で、ピン95が外輪1の第2貫通孔18および蓋90の貫通孔92に圧入されることにより、蓋90が第1貫通孔17を閉じた状態に固定される。
【0028】
ころ3は、外輪1の外側転走面12および内輪2の内側転走面22上を転動可能に配置されている。ころ3は、軌道α内に配置されている。図1を参照して、ころ3は、複数の第1ころ30と、複数の第2ころ31と、を含む。第1ころ30および第2ころ31は、同一の円筒状の形状を有する。第1ころ30および第2ころ31の円筒形状において、長さおよび直径は、略同一である。第1ころ30および第2ころ31は、例えば、鋼製である。
【0029】
第1ころ30と第2ころ31とは、軌道α内において交互に配置されている。第1ころ30と第2ころ31とは、隣り合う第1ころ30および第2ころ31の互いの中心軸が直交するように配置されている。第1ころ30の中心軸は、中心軸δを含む平面で切断した断面において第2外側転走面15および第1内側転走面24に沿う。第2ころ31の中心軸は、中心軸δを含む平面で切断した断面において第1外側転走面14および第2内側転走面25に沿う。第1ころ30の中心軸が描く軌跡と第2ころ31の中心軸が描く軌跡とは、中心軸δを含む平面で切断した断面において直交する。すなわち、本実施の形態における転がり軸受Aは、クロスローラ軸受である。
【0030】
図4は、軌道α内に配置されたころ3およびセパレータ4を示す概略図である。図5は、実施の形態におけるセパレータ4を示す概略斜視図である。図6は、図5のセパレータ4を中心軸δに平行な方向に見た概略平面図である。
【0031】
図1および図4を参照して、セパレータ4は、複数のころ3のうち隣り合って配置されたころ3同士の各間に配置されている。複数のセパレータ4は、第1セパレータ40を含む。本実施の形態において、複数のセパレータ4は、すべて、第1セパレータ40である。
【0032】
図4から図6を参照して、第1セパレータ40は、潤滑部5と、第1突出部60と、第2突出部61と、を有する。潤滑部5は、外輪1の外側転走面12および内輪2の内側転走面22のうち少なくともいずれか一方と接触可能に配置されている。本実施の形態において、潤滑部5は、外側転走面12および内側転走面22の両方と接触可能に配置されている。
【0033】
潤滑部5は、オイルなどの潤滑剤を含む。本実施の形態において、潤滑部5は、さらに、フッ素樹脂、ポリエチレンなどの多孔質材を含む。潤滑剤は、多孔質材に含侵されている。潤滑部5が外側転走面12に接触することにより、潤滑剤が外側転走面12に供給される。同様に、潤滑部5が内側転走面22に接触することにより、潤滑剤が内側転走面22に供給される。
【0034】
潤滑部5は、複数のころ3のピッチ円PCに沿う方向である周方向Cにおける第1の向きD1に向く第1面50と、周方向Cにおいて第1の向きD1とは反対の第2の向きD2に向く第2面51と、第1面50の外周縁と第2面51の外周縁とを連続する第3面52と、を含む。図4を参照して、ピッチ円PCは、複数のころ3が軌道α内に配置された状態において、各ころ3の両端面の中心同士を結ぶ線分の中点を通る円である。図5および図6を参照して、潤滑部5には、第1面50から第2面51へ貫通する貫通孔53が形成されている。
【0035】
図4から図6を参照して、第1突出部60は、潤滑部5の第1面50から第1の向きD1に突出している。第1突出部60は、潤滑部5よりも高い硬度を有する。第1突出部60は、先端部が面取り加工されることにより形成された第1テーパ部62を含む。第1テーパ部62によって、第1突出部60が近隣のころ3と接触したときに、第1突出部60が近隣のころ3に損傷を与えることが抑制される。
【0036】
第2突出部61は、潤滑部5の第2面51から第2の向きD2に突出している。第2突出部61は、潤滑部5よりも高い硬度を有する。第2突出部61は、先端部が面取り加工されることにより形成された第2テーパ部63を含む。第2テーパ部63によって、第2突出部61が近隣のころ3と接触したときに、第2突出部61が近隣のころ3に損傷を与えることが抑制される。第1突出部60および第2突出部61の硬度は、ころ3と同程度の硬度、例えば、HRC58~66である。
【0037】
図5および図6を参照して、本実施の形態において、第1突出部60と第2突出部61とは、潤滑部5を周方向Cに貫通する一体の円筒状部材6で構成されている。円筒状部材6は、潤滑部5の貫通孔53に軽圧入されている。軽圧入とは、円筒状部材6が潤滑部5から脱落しない程度に嵌め合わされた状態をいう。円筒状部材6は、例えば、金属製である。円筒状部材6として、例えば、円筒ころ軸受のころを転用してもよい。転用するころとして、例えば、JIS(Japanese Industrial Standards) B 1506において記号Aとして規定された外に膨らむ円弧状の端面形状を有するころ、または同JISにおいて記号Fとして規定された平面状の端面形状を有するころを用いてもよい。
【0038】
図6を参照して、潤滑部5の第1面50に対する第1突出部60の突出量P1と、潤滑部5の第2面51に対する第2突出部61の突出量P2とは、ともに、例えば、1mm未満である。
【0039】
なお、転がり軸受Aがクロスローラ軸受である場合の実施の形態について説明したが、本開示の軸受は、上記に限られず、第1ころ30の中心軸と第2ころ31の中心軸とが同一の方向を向くころ軸受であってもよい。本開示の軸受は、第1ころ30の中心軸が描く軌跡と第2ころ31の中心軸が描く軌跡とが、中心軸δを含む平面で切断した断面において同一であるころ軸受であってもよい。また、転動体は、ころに限られず、玉(または鋼球)であってもよい。外輪1および内輪2の構造は、上記に限られず、外輪1および内輪2の少なくとも一方が中心軸δに直交する面で分離可能な2つの部材で構成されていてもよい。この場合、ころ3およびセパレータ4は、外輪1または内輪2を構成する2つの部材が分離した状態で軌道α内に入れられてもよい。この場合、外輪1は、蓋90およびピン95を含まなくてもよい。
【0040】
なお、潤滑部5は、上記に限られず、ポリウレタンやポリエチレンなどの樹脂粉末とオイルなどの潤滑剤とを含む混合物の加熱成形品で構成されていてもよい。この場合、外輪1には、軌道α内に潤滑剤を供給するための第3貫通孔19が形成されていなくてもよい。
【0041】
(変形例1)
図7は、変形例1において軌道α内に配置されたころ3およびセパレータ4を示す概略図である。
【0042】
図7に示す変形例1のように、複数のセパレータ4は、第1セパレータ40と、第2セパレータ41と、を含んでもよい。第2セパレータ41は、金属製であってもよい。第2セパレータ41は、潤滑部5単体で構成されていてもよい。複数のセパレータ4が第1セパレータ40と第2セパレータ41とを含むことにより、複数のセパレータ4がすべて第1セパレータ40である場合と比較して、第1突出部60および第2突出部61として用いられる材料を節約することができる。
【0043】
変形例1において、第2セパレータ41の厚みT2は、第1セパレータ40において第1突出部60の端縁から第2突出部61の端縁までの距離である厚みT1と同じでもよい。第1セパレータ40の厚みT1と第2セパレータ41の厚みT2とが同じである場合、第1セパレータ40と第2セパレータ41との互換が可能となる。
【0044】
(変形例2)
図8は、変形例2におけるセパレータ4を示す概略側面図である。
【0045】
図8に示す変形例2のように、第1突出部60と第2突出部61とは、別の部材で構成されていてもよい。この場合、潤滑部5は、上記の実施の形態における貫通孔53が形成される代わりに、第1面50に配置された第1凹部54と、第2面51に配置された第2凹部55と、を含んでもよい。この場合、第1突出部60は、第1凹部54に嵌め込まれる。第2突出部61は、第2凹部55に嵌め込まれる。
【0046】
(変形例3)
図9は、変形例3におけるセパレータ4を示す概略側面図である。
【0047】
図9に示す変形例3のように、第1突出部60と第2突出部61とは、潤滑部5を周方向Cに貫通する一体の玉7であってもよい。この場合、潤滑部5の貫通孔53の内径の一部は、玉7の形状に合わせて拡張されてもよい。
【0048】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 外輪、1a本体、2 内輪、4 セパレータ、5 潤滑部、6 円筒状部材、7 玉、10 外周面、11 内周面、11a 溝、12 外側転走面、13 第1外側転走面、14 第2外側転走面、15 逃げ溝、16 第1軌道溝、17 第1貫通孔、18 第2貫通孔、19 第3貫通孔、20 外周面、21 内周面、22 内側転走面、23 第1内側転走面、24 第2内側転走面、25 逃げ溝、26 第2軌道溝、40 第1セパレータ、41 第2セパレータ、50 第1面、51 第2面、52 第3面、53 貫通孔、54 第1凹部、55 第2凹部、60 第1突出部、61 第2突出部、62 第1テーパ部、63 第2テーパ部、90 蓋、91 転走面、92 貫通孔、95 ピン、A 転がり軸受、C 周方向、D 周方向、D1 第1の向き、D2 第2の向き、P1 突出量、P2 突出量、PC ピッチ円、T1 厚み、T2 厚み、α 軌道、δ 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9