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特開2024-107792デジタルアナログ変換器、データドライバ及び表示装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107792
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】デジタルアナログ変換器、データドライバ及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/10 20060101AFI20240802BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240802BHJP
   H03M 1/80 20060101ALI20240802BHJP
   H03M 1/76 20060101ALI20240802BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20240802BHJP
   G09G 3/3283 20160101ALI20240802BHJP
【FI】
H03M1/10 B
G09G3/20 623F
H03M1/80
H03M1/76
G09G3/36
G09G3/3283
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011897
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土 弘
【テーマコード(参考)】
5C006
5C080
5C380
5J022
【Fターム(参考)】
5C006AF83
5C006BB15
5C006BC12
5C006BF25
5C006BF50
5C006FA26
5C006FA43
5C080AA06
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD05
5C080FF12
5C080GG11
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ05
5C380AA01
5C380AB06
5C380BA13
5C380CA04
5C380CA13
5C380CA16
5C380CA32
5C380CA57
5C380CB01
5C380CF07
5C380CF09
5C380CF24
5C380CF26
5C380CF28
5C380CF48
5C380CF51
5C380CF64
5C380FA03
5C380HA06
5J022AB06
5J022BA04
5J022BA06
5J022CA08
5J022CB01
5J022CD03
5J022CE09
5J022CF02
5J022CF04
5J022CF07
5J022CF09
5J022CG01
5J022CG04
(57)【要約】
【目的】出力誤差の低下を招くことなく省面積化を図ることが可能なデジタルアナログ変換器、データドライバ、及び表示装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明は、差動増幅器と、(K+1)ビットのデジタルデータに基づき、の複数の入力端の各々に第1又は第2の電圧を振り分けて供給する第1のデコーダと、を含む。差動増幅器は、夫々が個別に受けたテイル電流で駆動される2のK乗個の差動対と、第1~第2のテイル電流を2のK乗個の差動対に供給すると共に、デジタルデータに基づき第1~第2のテイル電流に対する第1~第2の電流比を制御するテイル電流制御回路と、を有する。テイル電流制御回路は、第1~第2の電流比各々を所定の3値のうちの最大値、最小値又は中間値に設定する構成を基本構成とし、所定の2個の差動対に供給するテイル電流の電流比に対して、上記最大値及び最小値の一方を増加、他方を低下させる補正を施す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(K+1)ビット(Kは1以上の正数)のデジタルデータに応じて、第1の電圧及び第2の電圧を2の(K+1)乗個に分割した2の(K+1)乗個の電圧レベルのうちの1の電圧レベルを有する出力電圧を出力するデジタルアナログ変換器であって、
複数の入力端を有し、前記複数の入力端で夫々受けた電圧に基づく演算結果を前記出力電圧として自身の出力端子から出力する差動増幅器と、
前記第1の電圧及び前記第2の電圧を受け、前記(K+1)ビットのデジタルデータに基づき、前記差動増幅器の前記複数の入力端の各々に、前記第1の電圧又は前記第2の電圧を振り分けて供給する第1のデコーダと、を含み、
前記差動増幅器は、
前記出力電圧が共通に入力される反転入力端、前記複数の入力端で受けた電圧のうちの1つが入力電圧として供給される非反転入力端、及び出力対を夫々が含み、夫々の前記出力対同士が共通接続されており、夫々が個別に受けたテイル電流で駆動される2のK乗個の差動対と、
前記2のK乗個の差動対各々の前記出力対の一方又は両方の出力に基づく増幅作用により前記出力電圧を生成する増幅段と、
前記2のK乗個の差動対に第1~第2の前記テイル電流を個別に供給すると共に、前記デジタルデータに基づき前記第1~第2の前記テイル電流各々の基準電流値に対する第1~第2の電流比を前記差動対毎に制御するテイル電流制御回路と、を有し、
前記テイル電流制御回路は、前記第1~第2の電流比の各々を所定の3値のうちの最大値、最小値又は中間値に設定し、前記2のK乗個の差動対のうちの少なくとも所定の2個の差動対に供給する前記テイル電流の前記電流比については、前記最大値及び前記最小値のうちの一方を増加、他方を低下させる補正を施すことを特徴とするデジタルアナログ変換器。
【請求項2】
前記テイル電流制御回路は、前記2のK乗個の差動対の前記非反転入力端で夫々受けた第1~第2の前記入力電圧を前記第1~第2の電流比の重み付けで加重平均化した値が、前記デジタルデータに対応した前記出力電圧の期待値と等しくなるように、前記第1~第2の電流比の各々を前記最大値、前記最小値又は前記中間値のうちの1つに設定することを特徴とする請求項1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項3】
前記テイル電流制御回路は、前記2のK乗個の差動対のうちで前記所定の2個の差動対を除く差動対の各々に供給する前記テイル電流の前記電流比を、前記デジタルデータに依らず前記中間値を所定値だけ増加又は低下した値に固定設定することを特徴とする請求項2に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項4】
前記2のK乗個の差動対の各々は、同一導電型で同等な特性を有するトランジスタ対で構成され、差動対同士も互いに同一導電型で同等な特性を有するトランジスタ対とされていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項5】
前記テイル電流制御回路は、前記2のK乗個の差動対の各々に供給する前記テイル電流の前記電流比の合計又は平均が約一定となるように前記電流比の各々を制御することを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項6】
前記第1の電圧又は前記第2の電圧と同一の電圧値を除く電圧値を有する前記出力電圧を出力する場合には、前記第1のデコーダは、少なくとも前記第1の電圧及び前記第2の電圧のうちの一方を前記所定の2個の差動対のうちの一方に選択出力し、前記第1の電圧及び前記第2の電圧のうちの他方を前記所定の2個の差動対のうちの他方に選択出力することを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項7】
前記テイル電流制御回路は、前記所定の2個の差動対に対する前記テイル電流の前記電流比の制御対象を、前記デジタルデータに応じて前記入力電圧の値が同一となる別の差動対と入れ替えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項8】
前記テイル電流制御回路は、
前記出力電圧における前記2の(K+1)乗個の電圧レベルのうちの最大及び最小の電圧レベルを除く第1~第w(wは2以上の正数)の電圧レベルのうちで、前記第1の電圧又は前記第2の電圧から奇数番目の大きさの電圧レベルを有する前記出力電圧を出力する場合には、前記所定の2個の差動対の各々に供給する前記テイル電流の前記電流比としての前記最大値に所定値を加算すると共に前記最小値に当該所定値を減算する補正を行い、
前記第1~第wの電圧レベルのうちで、前記第1の電圧又は前記第2の電圧から偶数番目の大きさの電圧レベルを有する前記出力電圧を出力する場合には、前記所定の2個の差動対の各々に供給する前記テイル電流の前記電流比を前記中間値に制御することを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項9】
前記テイル電流制御回路は、
前記電流比が固定の複数の定電流源と、
前記(K+1)ビットのデジタルデータのうちの前記所定ビットに基づき、前記複数の定電流源から合成する電流の組み合わせを選択するスイッチ回路と、を含み、
前記2のK乗個の差動対の各々に供給する前記テイル電流のうちで前記電流比が可変となる差動対には前記スイッチ回路を経由した電流を供給することを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項10】
異なる電圧値を有する複数の参照電圧を生成する参照電圧生成部と、
前記(K+1)ビットのデジタルデータを含むM(MはK+1より大きい整数)ビットのデジタルデータ及び前記複数の参照電圧を受け、前記Mビットの前記デジタルデータの(M-K-1)ビットに基づき、前記複数の参照電圧のうちから隣接する2つの参照電圧を選択し夫々を前記第1の電圧及び前記第2の電圧として前記第1のデコーダに供給する第2のデコーダと、を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のデジタルアナログ変換器。
【請求項11】
請求項1~3及び10のいずれか1に記載の前記デジタルアナログ変換器を複数含み、
各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧に変換し、前記複数の出力電圧を夫々が有する複数の駆動信号を表示パネルの複数のデータ線に夫々供給することを特徴とするデータドライバ。
【請求項12】
複数の表示セルが夫々に接続されている複数のデータ線を有する表示パネルと、
請求項1~3及び10のいずれか1に記載の前記デジタルアナログ変換器を複数含み、
各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧に変換し、前記複数の出力電圧を夫々が有する複数の駆動信号を前記表示パネルの前記複数のデータ線に夫々供給するデータドライバと、を有することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルアナログ変換器、及び当該デジタルアナログ変換器を含むデータドライバ、及びこのデータドライバを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アクティブマトリクス型の表示装置として、液晶表示装置、或いは有機EL表示装置等が主流となっている。このような表示装置には、複数のデータ線と複数の走査線が交差状に配線され、複数のデータ線に画素スイッチを介して接続されている表示セルがマトリクス状に配列された表示パネルと共に、表示パネルの複数のデータ線へ階調レベルに対応したアナログ電圧信号を供給するデータドライバと、表示パネルの複数の走査線へ各画素スイッチのオン、オフを制御する走査信号を供給する走査ドライバが搭載されている。データドライバには、映像デジタル信号を輝度レベルに対応したアナログの電圧に変換し、これを増幅した電圧信号を表示パネルの各データ線に供給するデジタルアナログ変換部が含まれている。
【0003】
以下に、データドライバの概略構成について説明する。
【0004】
データドライバは、例えばシフトレジスタ、データレジスタラッチ、レベルシフタ、デジタルアナログ変換部を含む。
【0005】
シフトレジスタは、表示コントローラから供給されたスタートパルスに応じて、クロック信号に同期してラッチの選択を行う為の複数のラッチタイミング信号を生成し、データレジスタラッチに供給する。データレジスタラッチは、シフトレジスタから供給されたラッチタイミング信号の各々に基づき、表示コントローラから供給された映像デジタルデータを所定のS個(Sは2以上の整数)毎に取り込み、S個の映像デジタルデータ信号をレベルシフタに供給する。レベルシフタは、データレジスタラッチから供給されたS個の映像デジタルデータ信号の各々に対して、その信号振幅を増加するレベルシフト処理を施して得たS個のレベルシフト後の映像デジタルデータ信号をデジタルアナログ変換部に供給する。
【0006】
デジタルアナログ変換部は、参照電圧群生成部、デコーダ部及び増幅部を含む。
【0007】
参照電圧群生成部は、互いに電圧値が異なる複数の参照電圧を生成してデコーダ部に供給する。例えば、参照電圧群生成部は、少なくとも2つの基準電源電圧との間をラダー抵抗で分圧した複数の分圧電圧を参照電圧群としてデコーダ部に供給する。
【0008】
デコーダ部は、データドライバの各出力に夫々対応して設けられているS個のデコーダを有する。デコーダの各々は、参照電圧群生成部で生成された参照電圧群が供給されるとともに、レベルシフタから供給された映像デジタルデータ信号を受け、この映像デジタルデータ信号に対応した参照電圧を、複数の参照電圧のうちから選択し、選択した参照電圧を増幅部に供給する。
【0009】
増幅部は、デコーダ部の各デコーダで選択された参照電圧を個別に増幅して出力するS個の差動増幅器を有する。
【0010】
ところで、上記したデジタルアナログ変換部では、参照電圧群生成部で生成する参照電圧の数を多くするほど、表現できる輝度レベルの階調数(色数)を増やすことができる。しかしながら、参照電圧群生成部で生成する参照電圧の数を増やすと、その分の配線領域や参照電圧を選択するデコーダに含まれるスイッチ素子の数も増加し、データドライバのチップサイズ(製造コスト)が増加する。
【0011】
そこで、上記した差動増幅器として、輝度レベルに基づいて選択された2つの参照電圧を、所定の重み付けにて分割(内挿)することで、3つ以上の複数の電圧値を出力することが可能な差動増幅器を採用したデジタルアナログ変換器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
特許文献1には、2つの参照電圧を4個に分割する4個の電圧値のうちの1の電圧値を有する出力電圧を出力する負帰還型の差動増幅器と、それを用いたデジタルアナログ変換器が提案されている。
【0013】
かかる差動増幅器は、各々が同一のテイル電流で駆動され、自身の出力電圧が複数の反転入力端に共通に帰還入力されると共に、自身の非反転入力端に接続されており1対1対2の重み付けをもって、夫々が2つの参照電圧のうち1つを受ける4つの差動対を含む。当該差動増幅器では、デジタルデータ信号中の下位2ビットのデータに従って2つの参照電圧のうち1つを各差動対の非反転入力端へ入力し、該2つの参照電圧を4分割する4個の電圧レベルのいずれか1の電圧値を有する出力電圧を出力する。また、該差動増幅器を含むデジタルアナログ変換器では、デジタルデータ信号の上位ビット群のデータに従って、4階調おきの参照電圧群から、隣接する2つの参照電圧を選択することで、参照電圧群の電圧数Fに対して、(F-1)の4倍の電圧レベルを該差動増幅器から出力することが可能である。このように、特許文献1に記載のデジタルアナログ変換器では、差動増幅器の差動対数と、2つの入力電圧(参照電圧)を分割する電圧レベル数とが等しい。
【0014】
ここで、多ビットのデジタルアナログ変換器の省面積化を図るべく、特許文献1に記載のデジタルアナログ変換器の原理を利用して、2つの入力電圧(参照電圧)の分割数を増やして電圧レベル数を増加させることで、当該2つの入力電圧(参照電圧)を選択するデコーダの素子数を減らすことが考えられる。しかしながら、その一方、差動増幅器の差動対数が2のべき乗個単位で増加するため差動増幅器の素子数は大幅に増加するため、デジタルアナログ変換器の省面積化が期待通り実現できないという問題が生じる。
【0015】
そこで、差動対の各々に流すテイル電流の電流比を制御することで、少ない差動対の数で出力電圧の電圧レベル数を増加させるようにした差動増幅器が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002-43944号公報
【特許文献2】特開2006-174180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献2に記載されている差動増幅器では、各差動対に流れるテイル電流同士の大きさの差が大きいと、出力電圧信号に大きな出力誤差が生じるという問題が生じた。
【0018】
そこで、本発明は、出力誤差の低下を招くことなく省面積化を実現することが可能なデジタルアナログ変換器、当該デジタルアナログ変換器を含むデータドライバ、及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係るデジタルアナログ変換器は、(K+1)ビット(Kは1以上の正数)のデジタルデータに応じて、第1の電圧及び第2の電圧を2の(K+1)乗個に分割した2の(K+1)乗個の電圧レベルのうちの1の電圧レベルを有する出力電圧を出力するデジタルアナログ変換器であって、複数の入力端を有し、前記複数の入力端で夫々受けた電圧に基づく演算結果を前記出力電圧として自身の出力端子から出力する差動増幅器と、前記第1の電圧及び前記第2の電圧を受け、前記(K+1)ビットのデジタルデータに基づき、前記差動増幅器の前記複数の入力端の各々に、前記第1の電圧又は前記第2の電圧を振り分けて供給する第1のデコーダと、を含み、前記差動増幅器は、前記出力電圧が共通に入力される反転入力端、前記複数の入力端で受けた電圧のうちの1つが入力電圧として供給される非反転入力端、及び出力対を夫々が含み、夫々の前記出力対同士が共通接続されており、夫々が個別に受けたテイル電流で駆動される2のK乗個の差動対と、前記2のK乗個の差動対各々の前記出力対の一方又は両方の出力に基づく増幅作用により前記出力電圧を生成する増幅段と、前記2のK乗個の差動対に第1~第2の前記テイル電流を個別に供給すると共に、前記デジタルデータに基づき前記第1~第2の前記テイル電流各々の基準電流値に対する第1~第2の電流比を前記差動対毎に制御するテイル電流制御回路と、を有し、前記テイル電流制御回路は、前記第1~第2の電流比の各々を所定の3値のうちの最大値、最小値又は中間値に設定し、前記2のK乗個の差動対のうちの少なくとも所定の2個の差動対に供給する前記テイル電流の前記電流比については、前記最大値及び前記最小値のうちの一方を増加、他方を低下させる補正を施す。
【0020】
本発明に係るデータドライバは、上記したデジタルアナログ変換器を複数含み、各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧に変換し、前記複数の出力電圧を夫々が有する複数の駆動信号を表示パネルの複数のデータ線に夫々供給する。
【0021】
本発明に係る表示装置は、複数の表示セルが夫々に接続されている複数のデータ線を有する表示パネルと、上記したデジタルアナログ変換器を複数含み、各画素毎の輝度レベルをデジタル値で表す映像デジタルデータ片の各々を、複数の前記デジタルアナログ変換器により、夫々がアナログの電圧値を有する複数の前記出力電圧に変換し、前記複数の出力電圧を夫々が有する複数の駆動信号を前記表示パネルの前記複数のデータ線に夫々供給するデータドライバと、を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るデジタルアナログ変換器は、複数の入力端で受けた入力電圧及び帰還された出力電圧を夫々の反転入力端及び非反転入力端で受ける複数の差動対を有する差動増幅器と、上記デジタルデータに基づき差動増幅器の複数の入力端の各々に、第1及び第2の電圧のうちの一方を振り分けて供給するデコーダと、を含む。差動増幅器は、上記した複数の差動対の各々にテイル電流を供給するとともに、上記デジタルデータのうちの所定ビットに基づき複数の差動対のテイル電流比を可変制御するテイル電流制御回路を含む。これにより、少ない差動対で出力電圧の電圧レベル数を増加させることが可能となり、省面積化が実現できる。
【0023】
更に、本発明に係るデジタルアナログ変換器のテイル電流制御回路では、複数の差動対の各々に供給するテイル電流の電流比の各々を所定の3値のうちの最大値、最小値又は中間値に設定する構成を基本構成とし、少なくとも所定の2個の差動対に供給するテイル電流の電流比については、上記した最大値及び最小値のうちの一方を増加、他方を低下させる補正を施す。これにより、テイル電流の電流比を可変制御するが故に生じる出力電圧の誤差を抑制することが可能となる。
【0024】
よって、本発明によれば、出力誤差の低下を招くことなくデジタルアナログ変換器の省面積化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る第1の実施例としてのデジタルアナログ変換器100_1の構成を示す回路図である。
図2A】デジタルアナログ変換器100_1の入力電圧設定仕様を表す図である。
図2B】デジタルアナログ変換器100_1のテイル電流比の基本仕様を表す図である。
図3】本発明に係る第2の実施例としてのデジタルアナログ変換器100_2の構成を示す回路図である。
図4A】デジタルアナログ変換器100_2の基本仕様(K=1)の一例を表す図である。
図4B】デジタルアナログ変換器100_2の補正後の仕様(K=1)の一例を表す図である。
図5A】デジタルアナログ変換器100_2における基本仕様での出力誤差特性の一例を表す図である。
図5B】デジタルアナログ変換器100_2における基本仕様に対する誤差補正特性の一例を表す図である。
図5C】デジタルアナログ変換器100_2における基本仕様に対する誤差補正後の出力誤差特性の一例を表す図である。
図6A】テイル電流制御回路13Aの一例を示す回路図である。
図6B】テイル電流制御回路13Aの他の一例を示す回路図である。
図7】本発明に係る第3の実施例としてのデジタルアナログ変換器100_3の構成を示す回路図である。
図8A】デジタルアナログ変換器100_3の基本仕様(K=2)の一例を表す図である。
図8B】デジタルアナログ変換器100_3の補正後の仕様(K=2)の一例を表す図である。
図9A】デジタルアナログ変換器100_3における基本仕様での出力誤差特性の一例を表す図である。
図9B】デジタルアナログ変換器100_3における基本仕様に対する誤差補正特性の一例を表す図である。
図9C】デジタルアナログ変換器100_3における基本仕様に対する誤差補正後の出力誤差特性の一例を表す図である。
図10】テイル電流制御回路13Bの一例を示す回路図である。
図11A図8Aに示す基本仕様(K=2)の変形例を表す図である。
図11B図11Aに示す基本仕様に対する補正後の仕様を表す図である。
図12】テイル電流制御回路13Bの一例を示す回路図である。
図13】本発明に係る第4の実施例としてのデジタルアナログ変換器100_4の構成を示す回路図である。
図14A】デジタルアナログ変換器100_4の基本仕様(K=3)の一部を表す図である。
図14B】デジタルアナログ変換器100_4の基本仕様(K=3)の他部を表す図である。
図14C】デジタルアナログ変換器100_4の補正後の仕様(K=3)の一部を表す図である。
図14D】デジタルアナログ変換器100_4の補正後の仕様(K=3)の他部を表す図である。
図15A】デジタルアナログ変換器100_4における基本仕様での出力誤差特性の一例を表す図である。
図15B】デジタルアナログ変換器100_4における基本仕様に対する誤差補正特性の一例を表す図である。
図15C】デジタルアナログ変換器100_4における基本仕様に対する誤差補正後の出力誤差特性の一例を表す図である。
図16】テイル電流制御回路13Cの一例を示す回路図である。
図17A図14Aに示す基本仕様(K=3)の変形例の一部を表す図である。
図17B図14Bに示す基本仕様(K=3)の変形例の他部を表す図である。
図17C図17Aに示す基本仕様に対する補正後の仕様を表す図である。
図17D図17Bに示す基本仕様に対する補正後の仕様を表す図である。
図18】テイル電流制御回路13Cの他の一例を示す回路図である。
図19】ビット数をM(M>K+1)ビットに拡張したデジタルデータ信号に対応したデジタルアナログ変換器100_5の構成を示す回路図である。
図20】デジタルアナログ変換器100_5の仕様例を示す図である。
図21】本発明に係るデータドライバを含む表示装置200の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0026】
図1は、本発明に係る第1の実施例としてのデジタルアナログ変換器100_1の構成を示す回路図である。
【0027】
図1に示すように、デジタルアナログ変換器100_1は、デコーダ50_1と、2のK(Kは1以上の整数)乗個の差動対を含む差動増幅器10_1と、を有し、(K+1)ビットのデジタルデータ信号DTを、アナログの電圧レベルを有する出力電圧信号Voutに変換する。
【0028】
デコーダ50_1は、デジタルデータ信号DT、及び互いに異なる電圧値からなる2つの電圧VA及びVBを受ける。デコーダ50_1は、デジタルデータ信号DTに基づき、2つの電圧VA及びVBを、差動増幅器10_1の入力端子t<1>~t<2>に夫々割り当てる組合せを選択する。デコーダ50_1は、この選択した組み合わせによる、夫々が電圧VA及びVBのうちの一方を示す入力電圧V<1>~V<2>を、差動増幅器10_1の非反転入力端子である入力端子t<1>~t<2>に供給する。
【0029】
差動増幅器10_1は、電圧VA及びVB間を直線近似によって2の(K+1)乗個に分割した2の(K+1)乗個の電圧レベルのうちで、(K+1)ビットのデジタルデータ信号DTに対応する1の電圧レベルを増幅し、その増幅結果を出力電圧信号Voutとして出力する。差動増幅器10_1は、各々にテイル電流が供給され、各出力対が共通に接続されている2のK乗個の同一導電型(図1はNチャネル型)の差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)と、テイル電流制御回路13と、カレントミラー回路20と、増幅段30と、を含む。
【0030】
カレントミラー回路20は、ゲート同士が接続されており、且つ同一のサイズを有するPチャネル型のトランジスタ21及び22を含む。トランジスタ21及び22各々のソースには高位電源電圧VDDAが印加されている。また、トランジスタ21のドレインがノードn11に接続されており、トランジスタ22のゲート及びドレインがノードn12に接続されている。ノードn11、n12は、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々の出力対にそれぞれ接続されている。かかる構成により、カレントミラー回路20は、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)の共通負荷として動作する。
【0031】
差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々の反転入力端、つまりNチャネル型のトランジスタ(差動対トランジスタとも称する)12_1~12_2各々のゲートには、出力電圧信号Voutが帰還入力されている。差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々の非反転入力端、つまりNチャネル型のトランジスタ(差動対トランジスタとも称する)11_1~11_2各々のゲートは、入力端子t<1>~t<2>に接続されている。すなわち、差動対トランジスタ11_1~11_2各々のゲートには、夫々が電圧VA又はVBを有する入力電圧V<1>~V<2>が供給される。
【0032】
トランジスタ11_1~11_2は同一のトランジスタ特性を有し、夫々のドレインはノードn11によって共通に接続されている。トランジスタ12_1~12_2は同一のトランジスタ特性を有し、夫々のドレインはノードn12によって共通に接続されている。すなわち2のK乗個の差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)は出力対同士が共通接続された並列形態の接続構成とされている。差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々のトランジスタのソース同士が互いに接続されており、夫々が個別にテイル電流制御回路13に接続されている。
【0033】
なお、以降、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々を構成する差動対トランジスタが等価な特性を有するものとして動作を説明する。つまり、実際の構成では、例えば入力が共通な複数の差動対を差動対トランジスタのサイズを変更した一つの差動対に置き換えるケースもあるが、説明の便宜上、各差動対の差動対トランジスタの特性は同一とし、それと等価な構成も本発明に含むものとする。最もシンプルな具体例として、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)の各差動対トランジスタは全て同一サイズとする。
【0034】
テイル電流制御回路13は、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々のソースと低位電源電圧VSSAとの間に個別に接続されている電流源13_1~13_2を含む。電流源13_1~13_2は、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々のソースに供給するテイル電流を生成する。
【0035】
尚、電流源13_1~13_2のうちの所定の2つの電流源13_1及び13_2は可変電流源であり、その他の電流源の各々は固定電流源である。
【0036】
つまり、可変電流源である電流源13_1及び13_2は、デジタルデータ信号DTのうちの下位のLビット(Lは2以上の整数)に基づき、差動対(11_1、12_1)及び(11_2、12_2)に夫々流すテイル電流のテイル電流比が制御される。一方、上記した2つの電流源13_1及び13_2を除く他の電流源は、夫々に接続されている差動対に流すテイル電流のテイル電流比が同一であり且つ固定となるように制御される。
【0037】
尚、テイル電流制御回路13では、電流源13_1~13_2を全て可変電流源に変更することも可能であるが、制御が容易な具体例として、少なくとも所定の2個の電流源のみを可変電流源としている。また、差動増幅器10_1の出力電圧信号Voutの電圧変化時のスルーレート(単位時間あたりの電圧変化量)を電圧レベルに依らず一定に維持するため、電流源13_1~13_2によって生成されるテイル電流比の合計又は平均が電圧レベルに依らず一定又は約一定となるように各々のテイル電流比が制御されている。
【0038】
増幅段30は、共通接続された2のK乗個の差動対の出力対(ノードn11、n12)の一方又は両方に生じた電圧に基づく増幅作用により得られた信号を、出力電圧信号Voutとしてこれを出力端子Skを介して出力する。
【0039】
以下に、図1に示す差動増幅器10_1の増幅動作について説明する。
【0040】
尚、説明の便宜上、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)の夫々にテイル電流を供給する電流源13_1~13_2の設定電流を夫々、m<1>Io~m<2>Ioとする。ここで、Ioは基準となる基準電流値であり、m<1>~m<2>の各々は、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々に流すテイル電流の電流比(テイル電流比)である。つまり、テイル電流比m<1>~m<2>は、基準電流値Ioに対する係数であり、電流比合計を約一定に保つため、以下の数式(1)が成り立つような値に設定される。
【0041】
m<1>+m<2>+…+m<2>=2(1)
尚、計算の便宜上、2=nとすると、
m<1>+m<2>+…+m<n>=n (1a)
となる。
【0042】
また、n(=2)個のi番目の差動対について、非反転入力端側の差動対トランジスタの電流をIai、反転入力端側の差動対トランジスタの電流をIbiとすると、以下の数式(2)及び(3)が成り立つ。
【0043】
Iai=Is+gmi・(V<i>-Vs) (2)
Ibi=Is+gmi・(Vout-Vs) (3)
尚、Is、Vsは差動対トランジスタのIV特性曲線上の直線近似可能な電圧範囲内の所定動作点を表し、V<i>、VoutはVs近傍(直線近似範囲内)の電圧を表す。また、非反転入力端側及び反転入力端側の差動対トランジスタの動作点の相互コンダクタンスgmをgmiと表す。
【0044】
ここで、i番目の差動対に供給する電流の電流重み付け比をm<i>とすると、
上記した数式(2)及び(3)は以下の数式(4)及び(5)で表される。
【0045】
m<i>Iai=m<i>Is+gmim<i>(V<i>-Vs) (4)
m<i>Ibi=m<i>Is+gmim<i>(Vout-Vs) (5)
そして、数式(4)及び(5)の差分をとると以下の数式(6)が得られる。
【0046】
m<i>(Iai-Ibi)=gmim<i>(V<i>-Vout)(6)
更に、各差動対(任意のi値)に供給する電流における、電流重み付け比の変動に対する動作点の変動も直線近似範囲内とすると、gmを一定(gmi=gm)に近似することができる。
【0047】
上記した数式(6)をi=1~nについて、左辺同士を加算すると共に、右辺同士を加算すると、以下の数式(7)及び(8)が得られる。
【0048】
左辺=(m<1>Ia+…+m<n>Ia
-(m<1>Ib+…+m<n>Ib) (7)
右辺=g((m<1>V<1>+…+m<n>V<n>)
-(m<1>+…+m<n>)Vout)) (8)
ここで、上記した左辺は、非反転入力端側の差動対トランジスタと反転入力端側の差動対トランジスタのそれぞれの合計電流の差分であり、カレントミラー回路20における入力電流と出力電流との関係に対応している。この際、非反転入力端側の差動対トランジスタの各々に流れる電流の合計と、反転入力端側の差動対トランジスタの各々に流れる電流の合計と、は互いに等しいことから、その合計電流同士の差分はゼロ、つまり上記した左辺はゼロとなる。
【0049】
一方、上記した右辺の出力電圧信号Voutの係数(m<1>+…+m<n>)は、数式(1a)により一定値n(=2)となり、数式(7)及び8)により、以下の数式(9)及び(10)ように表される。
【0050】
Vout=(m<1>V<1>+…+m<n>V<n>)/n (9)
ここで、nを2に戻すと、出力電圧信号Voutは以下の式で表される。
【0051】
Vout=(m<1>V<1>+…+m<2>V<2>)
/(m<1>+…+m<2>) (10)
以上により、図1に示す差動増幅器10_1の出力電圧信号Voutは、数式(10)に示されるように、各差動対の非反転入力端子の入力電圧に対して、入力電圧の重み付けとテイル電流比の重み付けの積算値の加重平均値となる。
【0052】
なお、数式(10)において、テイル電流比m<1>~m<2>の平均は所定の基準値であり、テイル電流比合計(又は平均)が約一定とされる。なお、所定の基準値は任意に設定可能であり、下記実施例の説明では基準値を2として説明する。
【0053】
よって、数式(10)で表される出力電圧信号Voutは、各差動対の非反転入力端子に供給される2つの電圧(VA、VB)の組合せ及び各差動対のテイル電流比の組合せにより、電圧VA及びVB間を均等分割する多値電圧を取りうる。その中で、最適な2つの電圧(VA、VB)の組合せ及びテイル電流比の組合せにより、電圧VA及びVB間を2の(K+1)乗個にほぼ均等分割する電圧レベルを生成することができる。
【0054】
以下に、図1に示すデジタルアナログ変換器100_1の仕様例について図2A及び図2Bを参照して説明する。
【0055】
図2Aは、デコーダ50_1がデジタルデータ信号DTに基づき、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々の非反転入力端子に供給する入力電圧V<1>~V<2>の内容を表す入力電圧設定仕様、及び、デジタルデータ信号DTの各デジタルコードに対応して設定される、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々のテイル電流比m<1>~m<2>の基本仕様の一例を示す図である。
【0056】
図2Aの仕様において、出力電圧Voutは、電圧VA及びVB間を2の(K+1)乗個に分割する電圧レベルを有し、電圧VAを除く2の(K+1)乗個の電圧レベルがデジタルデータ信号DTの(K+1)ビットのD0~DKの各コードに対応している。
【0057】
例えば、デジタルデータ信号DTにおける(K+1)ビットのD0~DKが最大値を表す場合(全ビットが論理レベル1)、入力電圧V<1>~V<2>の各々として電圧VBのみが割り当てられる。
【0058】
また、図2Aに示す仕様では、上記したような最大値を表す場合(全ビットが論理レベル1)を除き、ビットD0~DKの内容に拘わらず、入力電圧V<1>として電圧VBが割り当てられ、入力電圧V<2>として電圧VAが割り当てられる。また、図2Aに示す仕様では、上記したような最大値を表す場合(全ビットが論理レベル1)を除き、ビットD0~D(K+1)の内容に拘わらず、入力電圧V<1>として電圧VBが割り当てられ、入力電圧V<2>として電圧VAが割り当てられる。更に図2Aに示す仕様では、入力電圧V<2>~V<2-1>の各々には、ビットD0~DKにて表されるデジタルコード毎に電圧VA又はVBが割り当てられる。
また、図2Aに示す基本仕様では、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)のうちから、2つの差動対(11_1、12_1)及び(11_2、12_2)を除く各差動対のテイル電流比m<1>~m<2>は、デジタルデータ信号DTの各デジタルコードに拘わらず、基準値「2」に固定するように制御される。
【0059】
一方、差動対(11_1、12_1)及び(11_2、12_2)のテイル電流比は、デジタルデータ信号DTの下位2ビットに基づき、「1」、「2」及び「3」のうちのいずれか1つの値に可変制御される。なお、かかる可変制御の対象となる2つの差動対(11_1、12_1)及び(11_2、12_2)の非反転入力端子には、図2Aに示すように、電圧VAを有する入力電圧V<1>、及び電圧VBを有する入力電圧V<2>が夫々供給される。なお、テイル電流比の可変制御の対象となる2つの差動対は、デジタルデータ信号DTのデジタルコードに応じて他の差動対と入替えることも可能である。
【0060】
ここで、図2Aの基本仕様にて示される差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々の非反転入力端子に供給する入力電圧V<1>~V<2>及びテイル電流比m<1>~m<2>各々の値は、デジタルデータ信号DTにて示されるデジタルコードに対応した2の(K+1)乗個の出力電圧信号Voutの電圧レベルが上記した数式(10)を満たすもの、つまり電圧VA及びVB間を直線補間した特性に沿ったものになるように求めたものである。
【0061】
しかしながら、図2Aの基本仕様に沿ったテイル電流比m<1>~m<2>を用いて実際にデジタルアナログ変換器100_1を動作させると、差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)各々に流すテイル電流の差が大きくなる場合、つまり、テイル電流比の差が大きくなる場合に出力電圧信号Voutの電圧レベルに出力誤差が生じる。この理由は、差動対トランジスタの実際のIV特性曲線が2次曲線であるところを直線近似しているからであり、テイル電流比の差が大きくなると、実際の動作点が直線近似からずれてくるためである。
【0062】
例えば、図2Aのデジタルデータ信号DTのビットD0~DKにて示されるデジタルコード[0、・・・、0、0]に対応したテイル電流比m<1>及びm<2>は、夫々「1」及び「3」である。また、デジタルコード[0、・・・、0、1]に対応したテイル電流比m<1>及びm<2>は共に基準値「2」である。また、デジタルコード[0、・・・、1、0]に対応したテイル電流比m<1>及びm<2>は、夫々基準値の1.5倍の「3」及び0.5倍の「1」である。
【0063】
この際、テイル電流比m<1>及びm<2>が夫々「3」及び「1」、或いは「1」及び「3」の場合、両者が共に基準値「2」となる場合に比べてテイル電流比の差が大となり、その結果、各差動対トランジスタの相互コンダクタンスgmの変動分が大きくなる。これにより、出力電圧信号Voutには、上記したように電圧VA及びVB間を直線近似した特性に沿った期待値に対して、それよりも大又は小となる出力誤差が生じる。
【0064】
例えば、図2Aに示すテイル電流比m<1>が「3」であり且つテイル電流比m<2>が「1」である場合、出力電圧信号Voutには、上記した直線近似特性に沿った期待値に対して、それよりも電圧レベルが大となる出力誤差が生じる。また、図2Aに示すテイル電流比m<1>が「1」であり且つテイル電流比m<2>が「3」である場合、出力電圧信号Voutには、上記した直線近似特性に沿った期待値に対して、それよりも電圧レベルが小となる出力誤差が生じる
そこで、このような出力誤差を抑えるために、図2Aの基本仕様に示されるテイル電流比m<1>~m<2>に対して以下のような補正を施す。
【0065】
図2Bは、図2Aの基本仕様にて示されるテイル電流比に補正を施したテイル電流比m<1>~m<2>の補正後の仕様の一例を表す図である。
【0066】
図2Bに示す一例では、テイル電流比m<2>~m<2-1>については、デジタルコードに拘わらず、基本となるテイル電流比「2」に対して一律に所定の補正値β(βはゼロを除外した有理数)を減算したものを新たなテイル電流比として設定する。
【0067】
一方、残りのテイル電流比m<1>及びm<2>については、基本となるテイル電流比として「1」が割り当てられている場合には、図2Bに示すように、この「1」に所定の補正値α(αはゼロを除外した有理数)を減算したものを新たなテイル電流比として設定する。また、基本となるテイル電流比として「3」が割り当てられている場合には、図2Bに示すように、この「3」に所定の補正値αを加算したものを新たなテイル電流比とする。なお、補正値α、βは正又は負の値を取りうるものとする。
【0068】
すなわち、図2Bに示す一例では、図2Aの基本仕様にて示されるテイル電流比「1」、「2」、「3」のうちで、中間となるテイル電流比「2」より小さいテイル電流比「1」、及び当該テイル電流比「2」より大きいテイル電流比「3」に対して、その一方を減少させ、他方を増加させる補正を施す。つまり、出力電圧信号Voutの電圧レベルが期待値より小となる方向に生じる出力誤差、及び大となる方向に生じる出力誤差に対して、その出力誤差の方向とは逆方向に出力誤差を生じさせるようにテイル電流比を補正することで、出力電圧信号Voutに生じる出力誤差分を相殺する。なお、補正値α、βは、差動対トランジスタのIV特性や電圧VA及びVB間の電圧差範囲に依存して最適値は異なる。
【0069】
よって、テイル電流比m<1>~m<2>として、図2Aの基本仕様にて示すものに対して図2Bに示す補正を施したものを採用することで、差動対トランジスタの相互コンダクタンスの変動に伴う出力電圧信号Voutの出力誤差が低減される。
【0070】

したがって、図1に示すデジタルアナログ変換器100_1に含まれる各差動対に流すテイル電流比として、図2Aに示す基本仕様に対して図2Bに示すように補正を施したものを採用することで、出力誤差の低下を招くことなくデジタルアナログ変換器の省面積化を実現することが可能となる。
【0071】
なお、差動増幅器10_1に含まれるカレントミラー回路20としては、図1に示す構成に限らず、例えばカスコード型等の任意のカレントミラー回路を採用しても良い。
【0072】
また、差動増幅器10_1に含まれる差動対(11_1,12_1)~(11_2,12_2)としては、図1に示すNチャネル型の差動対に代えて、Pチャネル型の差動対や、Nチャネル型のトランジスタ及びPチャネル型のトランジスタで対を為す両導電型の差動対を採用しても良い。
【0073】
また、図2A及び図2Bでは、(K+1)ビットの各デジタルコードを、電圧VA及びVB間を2の(K+1)乗個に分割した電圧レベルのうち、電圧VAを除いた電圧VBまでの2の(K+1)乗個の電圧レベルに割り当てた仕様例で説明したが、(K+1)ビットの各デジタルコードを、電圧VAを含み電圧VBを除く2の(K+1)乗個の電圧レベルに割り当てた仕様に置き換えることも可能である。
【0074】
以下の各実施例においても説明の便宜上、図1と同様な2のK乗個のNチャネル型の差動対を備えた差動増幅器の構成例、及び、図2A図2Bと同様な(K+1)ビットの各デジタルコードを、電圧VAを除いた2の(K+1)乗個の電圧レベルに割り当てた仕様例で説明するが、上記したような差動増幅器の部分的置換やデジタルコードの割り当ての置換が同様に可能であることは勿論である。
【実施例0075】
図3は、本発明に係る第2の実施例によるデジタルアナログ変換器100_2の構成を示す回路図である。
【0076】
デジタルアナログ変換器100_2は、2ビットのデジタルデータ信号DTを受け、これを出力電圧信号Voutに変換して出力する。デジタルアナログ変換器100_2は、デコーダ50_2及び差動増幅器10_2を含む。
【0077】
デコーダ50_2は、2ビット(D0、D1)のデジタルデータ信号DTと共に互いに異なる電圧値からなる2つの電圧VA及びVBを受ける。デコーダ50_2は、デジタルデータ信号DTに基づき、2つの電圧VA及びVBを、差動増幅器10_2の入力端子t<1>及びt<2>に夫々割り当てる組合せを選択する。デコーダ50_2は、この選択した組み合わせによる、夫々が電圧VA及びVBのうちの一方を示す入力電圧V<1>及びV<2>を、差動増幅器10_2の非反転入力端子である入力端子t<1>及びt<2>に供給する。
【0078】
差動増幅器10_2は、電圧VA及びVB間を直線近似によって分割した4個の電圧レベルのうちで、2ビットのデジタルデータ信号DTに対応する1の電圧レベルを増幅し、その増幅結果を出力電圧信号Voutとして出力する。差動増幅器10_2は、各々にテイル電流が供給され、各出力対が共通に接続されている2つの同一導電型(図3はNチャネル型)の差動対(11_1、12_1)及び(11_2、12_2)と、テイル電流制御回路13Aと、カレントミラー回路20と、増幅段30と、を含む。
【0079】
カレントミラー回路20は、ゲート同士が接続されており、且つ同一のサイズを有するPチャネル型のトランジスタ21及び22を含む。トランジスタ21及び22各々のソースには高位電源電圧VDDAが印加されている。また、トランジスタ21のドレインがノードn11に接続されており、トランジスタ22のゲート及びドレインがノードn12に接続されている。ノードn11、n12は、差動対(11_1、12_1)及び(11_2、12_2)各々の出力対にそれぞれ接続されている。かかる構成により、カレントミラー回路20は、差動対(11_1、12_1)及び(11_2、12_2)の共通負荷として動作する。
【0080】
差動対(11_1、12_1)及び(11_2、12_2)各々の反転入力端、つまりNチャネル型のトランジスタ(差動対トランジスタとも称する)12_1及び12_2各々のゲートには、出力電圧信号Voutが帰還入力されている。差動対(11_1、12_1)及び(11_2、12_2)各々の非反転入力端、つまりNチャネル型のトランジスタ(差動対トランジスタとも称する)11_1及び11_2各々のゲートは、入力端子t<1>及びt<2>に接続されている。すなわち、差動対トランジスタ11_1及び11_2各々のゲートには、夫々が電圧VA又はVBを有する入力電圧V<1>及びV<2>が供給される。
【0081】
トランジスタ11_1及び11_2は同一のトランジスタ特性を有し、夫々のドレインはノードn11によって共通に接続されている。トランジスタ12_1及び12_2は同一のトランジスタ特性を有し、夫々のドレインはノードn12によって共通に接続されている。すなわち、差動対(11_1、12_1)及び(11_2、12_2)は出力対同士が共通接続された並列形態の接続構成とされている。差動対(11_1、12_1)及び(11_2、12_2)各々のトランジスタのソース同士が互いに接続されており、夫々が個別にテイル電流制御回路13Aに接続されている。
【0082】
テイル電流制御回路13Aは、差動対(11_1、12_1)に流すテイル電流を生成する電流源13_1、及び差動対(11_2、12_2)に流す電流を生成する電流源13_2を含む。電流源13_1は、差動対(11_1、12_1)のテイル、つまり差動対トランジスタのドレイン、及び低位電源電圧VSSA(例えば0V)の供給ライン間に接続されている。電流源13_2は、差動対(11_2、12_2)のテイル、つまり差動対トランジスタのドレイン、及び低位電源電圧VSSA(例えば0V)の供給ライン間に接続されている。
【0083】
電流源13_1及び13_2は、可変電流源であり、デジタルデータ信号DTに基づき、夫々が流すテイル電流の電流比が可変である。かかる構成により、電流源13_1は、デジタルデータ信号DTによって設定されたテイル電流比m<1>に基準電流値Ioを乗算した電流m<1>Ioをテイル電流として差動対(11_1、12_1)に流す。電流源13_2は、デジタルデータ信号DTによって設定されたテイル電流比m<2>に基準電流値Ioを乗算した電流m<2>Ioをテイル電流として、差動対(11_2、12_2)に流す。
【0084】
尚、デジタルアナログ変換器100_2は、図1に示すデジタルアナログ変換器100_1の差動増幅器10_1に含まれる差動対の数を2つ、つまりK=1としたものであり、その基本動作は上述したデジタルアナログ変換器100_1と同様である。
【0085】
以下に、デジタルアナログ変換器100_2におけるテイル電流比の補正の具体的な形態について図4A図4B図5A図5Cを参照しつつ説明する。
【0086】
図4Aは、デジタルアナログ変換器100_2の基本仕様を示す図である。
【0087】
図4Aに示す基本仕様では、2ビット(D1、D0)のデジタルデータ信号DTに基づきデコーダ50_2が差動増幅器10_2の2系統の非反転入力端に供給する入力電圧V<1>及びV<2>に夫々割り当てる2つの電圧(VA、VB)の組合せと、テイル電流比m<1>及びm<2>と、出力電圧信号Voutとの関係を表す。なお、2ビット(D1、D0)の各デジタルコードを、電圧VA及び電圧VBを4分割した電圧レベルのうちの電圧VAを除く4個の電圧レベルに割り当てた仕様例を示す。
【0088】
図4Aにおけるテイル電流比m<1>及びm<2>は、図2Aにおける可変制御の対象となるテイル電流比m<1>及びm<2>に対応する。
【0089】
また、図4Aに示す基本仕様では、2つの電圧(VA、VB)を電圧レベル(4.08ボルト、4.00ボルト)としている。
【0090】
ここで、差動増幅器10_2から出力される出力電圧信号Voutの期待値は、以下の如き直線近似の式で表される。
【0091】
Vout=(m<1>V1+m<2>V2)/(m<1>+m<2>)
よって、電圧レベル4.00及び4.08の間を直線近似にて4分割した際における、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの期待値は、図4Aに示すように、
4.00ボルト、
4.02ボルト、
4.04ボルト、
4.06ボルト、
4.08ボルト、
となる。
【0092】
ところで、図4Aに示す入力電圧V<1>、V<2>、テイル電流比m<1>及びm<2>を用いて実際に差動増幅器10_2を動作させて得られる、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)は、
4.000664ボルト、
4.024739ボルト、
4.040831ボルト、
4.056696ボルト、
4.080660ボルト、
となる。また、図4Aにおいて、出力電圧信号Voutの期待値の各々に対し、出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)から出力電圧信号Voutの期待値を差し引いた出力誤差Voffsを図5Aに示す。なお図5Aでは、差動増幅器の固有出力誤差として、各期待値に対して一律にプラス約0.7ミリボルトの出力誤差を含む。
【0093】
すなわち、図4A及び図5Aに示すように、出力電圧信号Voutには、期待値の各々に対して、それよりも大又は小となるプラスマイナス約4ミリボルトの出力誤差Voffsが生じる。
【0094】
そこで、期待値毎に、その期待値よりも出力電圧信号Voutの電圧レベルが小さく(大きく)なる出力誤差が生じる場合にはその期待値よりも電圧レベルを大きく(小さく)する、図5Bに示すような出力誤差を強制的に生じさせる補正を、図4Aに示すテイル電流比m<1>及びm<2>に施す。
【0095】
具体的には、図4Bに示すように、図4Aの基本仕様にて示されるテイル電流比「1」には補正値αとして「0.2」を減算し、テイル電流比「3」には補正値αとして「0.2」を加算する。また、図5Bに、補正後のテイル電流比を用いた出力電圧信号Voutの近似式の演算結果に対する出力誤差Voffsを示す。図5Bより、上述したテイル電流比の補正が、図5Aに示す出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)の出力誤差と逆方向の出力誤差を生じることがわかる。
【0096】
これにより、図4Bに示す入力電圧V<1>、V<2>、及び補正後のテイル電流比m<1>、m<2>を用いて実際に差動増幅器10_2を動作させた際に得られる、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)は、
4.000664ボルト、
4.020956ボルト、
4.040823ボルト、
4.060506ボルト、
4.080660ボルト、
となる。また、図4Bにおいて、出力電圧信号Voutの期待値の各々に対し、出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)から出力電圧信号Voutの期待値を差し引いた出力誤差Voffsを図5Cに示す。
【0097】
すなわち、図4B及び図5Cに示すように、出力電圧信号Voutにおける期待値の各々に対する出力誤差Voffsは、テイル電流比の補正前の図4A及び図5Aに比べて十分小さくなる。つまり、期待値に対する誤差幅が補正前の約4ミリボルトから約0.2ミリボルトに低下する。
【0098】
図6Aは、図4Aに示す基本仕様に図4Bに示すテイル電流比の補正を施した仕様でテイル電流制御回路13Aを実現する場合に採用される回路図である。
【0099】
図6Aに示す構成では、テイル電流制御回路13Aは、電流源トランジスタQ11~Q13、及びトランジスタスイッチSW1~SW6を含む。
【0100】
電流源トランジスタQ11は、バイアス電圧信号BS1を自身のゲートで受けることで、図4Aに示す基本仕様でのテイル電流比「1」から補正値αを減算したテイル電流比「1-α」に対応した定電流Iaを生成する。電流源トランジスタQ12は、バイアス電圧信号BS2を自身のゲートで受けることで、図4Aに示す基本仕様でのテイル電流比「1」に補正値αを加算したテイル電流比「1+α」に対応した定電流Ibを生成する。電流源トランジスタQ13は、バイアス電圧信号BS3を自身のゲートで受けることで、図4Aに示す基本仕様でのテイル電流比「2」に対応した定電流Icを生成する。
【0101】
トランジスタスイッチSW1及びSW2は、デジタルデータ信号DTのビットD1に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW3及びSW4は当該ビットD1の反転ビットXD1に応じてオンオフ制御される。トランジスタスイッチSW5は、デジタルデータ信号DTのビットD0に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW6は当該ビットD0の反転ビットXD0に応じてオンオフ制御される。
【0102】
すなわち、図6Aに示す構成では、デジタルデータ信号DTに基づき、電流源トランジスタQ11~Q13の各々に流す電流の経路をトランジスタスイッチSW1~SW6にて選択することで、テイル電流m<1>Io及びm<2>Ioを生成する。そして、図4Bに示すように、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎にテイル電流比m<1>、m<2>は、「1-α」、「2」、「3+α」の3レベルに変更制御される。
【0103】
図6Bは、図6Aとは別の回路構成の一例を示す回路図である。
【0104】
尚、図6Bに示す構成では、図6Aに示す電流源トランジスタQ13に代えて、バイアス電圧信号BS1をゲートで受ける電流源トランジスタQ13a、及びバイアス電圧信号BS2をゲートで受ける電流源トランジスタQ13bを採用した点を除く他の構成は図6Aに示すものと同一である。図6Bは、図6Aより電流源トランジスタの数が増えるが、バイアス電圧信号の種類を削減した構成である。
【実施例0105】
図7は、本発明に係る第3の実施例によるデジタルアナログ変換器100_3の構成を示す回路図である。
【0106】
デジタルアナログ変換器100_3は、3ビットのデジタルデータ信号DTを受け、これを出力電圧信号Voutに変換して出力する。デジタルアナログ変換器100_3は、デコーダ50_3及び差動増幅器10_3を含む。
【0107】
デコーダ50_3は、3ビット(D0~D2)のデジタルデータ信号DTと共に互いに異なる電圧値からなる2つの電圧VA及びVBを受ける。デコーダ50_3は、デジタルデータ信号DTに基づき、2つの電圧VA及びVBを、差動増幅器10_3の入力端子t<1>~t<4>に夫々割り当てる組合せを選択する。デコーダ50_3は、この選択した組み合わせによる、夫々が電圧VA及びVBのうちの一方を示す入力電圧V<1>~V<4>を、差動増幅器10_3の非反転入力端子である入力端子t<1>~t<4>に供給する。
【0108】
差動増幅器10_3は、電圧VA及びVB間を直線近似によって分割した8個の電圧レベルのうちで、3ビットのデジタルデータ信号DTに対応する1の電圧レベルを増幅し、その増幅結果を出力電圧信号Voutとして出力する。差動増幅器10_3は、各々にテイル電流が供給され、各出力対が共通に接続されている4つの同一導電型(図7ではNチャネル型)の差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)と、テイル電流制御回路13Bと、カレントミラー回路20と、増幅段30と、を含む。
【0109】
カレントミラー回路20は、ゲート同士が接続されており、且つ同一のサイズを有するPチャネル型のトランジスタ21及び22を含む。トランジスタ21及び22各々のソースには高位電源電圧VDDAが印加されている。また、トランジスタ21のドレインがノードn11に接続されており、トランジスタ22のゲート及びドレインがノードn12に接続されている。ノードn11、n12は、差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)各々の出力対にそれぞれ接続されている。かかる構成により、カレントミラー回路20は、差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)の共通負荷として動作する。
【0110】
差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)各々の反転入力端、つまりNチャネル型のトランジスタ(差動対トランジスタとも称する)12_1~12_4各々のゲートには、出力電圧信号Voutが帰還入力されている。差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)各々の非反転入力端、つまりNチャネル型のトランジスタ(差動対トランジスタとも称する)11_1~11_4各々のゲートは、入力端子t<1>~t<4>に夫々接続されている。すなわち、差動対トランジスタ11_1~11_4各々のゲートには、夫々が電圧VA又はVBを有する入力電圧V<1>~V<4>が供給される。
【0111】
トランジスタ11_1~11_4は同一のトランジスタ特性を有し、夫々のドレインはノードn11によって共通に接続されている。トランジスタ12_1~12_4は同一のトランジスタ特性を有し、夫々のドレインはノードn12によって共通に接続されている。すなわち、差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)は出力対同士が共通接続された並列形態の接続構成とされている。差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)各々のトランジスタのソース同士が互いに接続されており、夫々が個別にテイル電流制御回路13Bに接続されている。
【0112】
テイル電流制御回路13Bは、差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)各々のソースと低位電源電圧VSSAとの間に個別に接続されている電流源13_1~13_4を含む。電流源13_1~13_4は、差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)各々のソースに供給するテイル電流を生成する。
【0113】
尚、電流源13_1~13_4のうちの所定の2つの電流源13_1及び13_4は可変電流源であり、電流源13_2及び13_3は固定電流源である。
【0114】
つまり、可変電流源である電流源13_1及び13_4は、デジタルデータ信号DTのうちの下位の2又は3ビットに基づき、差動対(11_1、12_1)~(11_4、12_4)に夫々流すテイル電流のテイル電流比を制御する。なお、2つの可変電流源13_1及び13_4の少なくとも一方は、デジタルデータ信号DTのデジタルコードに応じて他の電流源と入替えることも可能である。
【0115】
増幅段30は、共通接続された4つの差動対の出力対(ノードn11、n12)の一方又は両方に生じた電圧に基づく増幅作用により得られた信号を、出力電圧信号Voutとしてこれを出力端子Skを介して出力する。
【0116】
尚、デジタルアナログ変換器100_3は、図1に示すデジタルアナログ変換器100_1の差動増幅器10_1に含まれる差動対の数を4つ、つまりK=2としたものであり、その基本動作は上述したデジタルアナログ変換器100_1と同様である。
【0117】
以下に、デジタルアナログ変換器100_3におけるテイル電流比の補正の具体的な形態について図8A図8B図9A図9Cを参照しつつ説明する。
【0118】
図8Aは、デジタルアナログ変換器100_3の基本仕様を示す図である。
【0119】
図8Aに示す基本仕様では、3ビット(D0~D2)のデジタルデータ信号DTに基づきデコーダ50_3が差動増幅器10_3の4系統の非反転入力端に供給する入力電圧V<1>~V<4>に夫々割り当てる2つの電圧(VA、VB)の組合せと、テイル電流比m<1>~m<4>と、出力電圧信号Voutとの関係を表す。なお、3ビット(D0~D2)の各デジタルコードを、電圧VA及び電圧VBを8分割した電圧レベルのうちの電圧VAを除く8個の電圧レベルに割り当てた仕様例を示す。
【0120】
図8Aにおけるテイル電流比m<1>及びm<4>は、図2Aにおける可変制御の対象となるテイル電流比m<1>及びm<2>に対応する。また、図8Aにおけるテイル電流比m<2>及びm<3>は、図2Aに示すテイル電流比m<2>~m<2-1>に対応する。
【0121】
図8Aの仕様では、テイル電流比を可変に制御する2個の差動対は、電圧VBが各デジタルコードで連続供給される入力電圧V<1>を受ける差動対と、電圧VAが各デジタルコードで連続供給される入力電圧V<4>を受ける差動対となり、対応するテイル電流比m<1>、m<4>が3レベルに可変制御される。
【0122】
また、図8Aに示す基本仕様では、2つの電圧(VA、VB)を電圧レベル(4.0368ボルト、4.00ボルト)としている。
【0123】
ここで、差動増幅器10_3から出力される出力電圧信号Voutの期待値は、以下の如き直線近似の式で表される。
【0124】
Vout=(m<1>V1+m<2>V2+m<3>V3+m<4>V4
/(m<1>+m<2>+m<3>+m<4>)
よって、電圧レベル4.00及び4.0368の間を直線補間にて8分割した際における、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの期待値は、図8Aに示すように、
4.0000ボルト、
4.0046ボルト、
4.0092ボルト、
4.0138ボルト、
4.0184ボルト、
4.0230ボルト、
4.0276ボルト、
4.0322ボルト、
4.0368ボルト、
となる。
【0125】
ところで、図8Aに示す入力電圧V<1>~V<4>、テイル電流比m<1>~m<4>を用いて実際に差動増幅器10_3を動作させた際に得られる、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)は、
4.000585ボルト、
4.005775ボルト、
4.009740ボルト、
4.013374ボルト、
4.018967ボルト、
4.024623ボルト、
4.028290ボルト、
4.032219ボルト、
4.037385ボルト、
となる。また、図8Aにおいて、出力電圧信号Voutの期待値の各々に対し、出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)から出力電圧信号Voutの期待値を差し引いた出力誤差Voffsを図9Aに示す。なお図9Aでは、差動増幅器の固有出力誤差として、各期待値に対して一律にプラス約0.5ミリボルトの出力誤差を含む。
【0126】
すなわち、図8A及び図9Aに示すように、出力電圧信号Voutには、各期待値に対して、それよりも大又は小となるプラスマイナス約1ミリボルトの出力誤差Voffsが生じる。
【0127】
そこで、期待値毎に、その期待値よりも出力電圧信号Voutの電圧レベルが小さく(大きく)なる出力誤差が生じる場合にはその期待値よりも電圧レベルを大きく(小さく)する、図9Bに示すような出力誤差を強制的に生じさせる補正を、図8Aに示すテイル電流比m<1>及びm<4>に施す。
【0128】
具体的には、図8Bに示すように、図8Aの基本仕様にて示されるm<1>及びm<4>のテイル電流比「1」には補正値αとして「0.15」を減算し、テイル電流比「3」には補正値αとして「0.15」を加算する。更に、固定値のm<2>及びm<3>のテイル電流比「2」には補正値βとして「0.08」を減算する。また、図9Bに、補正後のテイル電流比を用いた出力電圧信号Voutの近似式の演算結果に対する出力誤差Voffsを示す。図9Bより、上述したテイル電流比の補正が、図9Aに示す出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)の出力誤差と逆方向の出力誤差を生じることがわかる。
【0129】
これにより、図8Bに示す入力電圧V<1>~V<4>、及び補正後のテイル電流比m<1>~m<4>を用いて実際に差動増幅器10_3を動作させた際に得られる、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎に得られる出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)は、
4.000593ボルト、
4.005224ボルト、
4.009960ボルト、
4.014235ボルト、
4.018956ボルト、
4.023784ボルト、
4.028123ボルト、
4.032790ボルト、
となる。また、図8Bにおいて、出力電圧信号Voutの期待値の各々に対し、出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)から出力電圧信号Voutの期待値を差し引いた出力誤差Voffsを図9Cに示す。
【0130】
すなわち、図8B及び図9Cに示すように、各期待値に対して出力電圧信号Voutに生じる出力誤差Voffsは、テイル電流比の補正前の図8A及び図9Aに比べて十分小さくなり、プラスマイナス約0.2ミリボルトまで下がる。
【0131】
図10は、図8Aに示す基本仕様に図8Bに示すテイル電流比の補正を施した仕様でテイル電流制御回路13Bを実現する場合に採用される回路図である。
【0132】
図10に示す構成では、テイル電流制御回路13Bは、電流源トランジスタQ11~Q15、及びトランジスタスイッチSW1~SW6を含む。
【0133】
電流源トランジスタQ11は、バイアス電圧信号BS1を自身のゲートで受けることで、図8Aに示す基本仕様のテイル電流比「1」から補正値αを減算したテイル電流比「1-α」に対応した定電流Iaを生成する。電流源トランジスタQ12は、バイアス電圧信号BS2を自身のゲートで受けることで、図8Aに示す基本仕様のテイル電流比「1」に補正値αを加算したテイル電流比「1+α」に対応した定電流Ibを生成する。電流源トランジスタQ13は、バイアス電圧信号BS3を自身のゲートで受けることで、図8Aに示す基本仕様のテイル電流比「2」に対応した定電流Icを生成する。
【0134】
電流源トランジスタQ14及びQ15は、バイアス電圧信号BS4を自身のゲートで受けることで、図8Aに示す基本仕様のテイル電流比「2」に補正値βを減算したテイル電流比「2-β」に対応した定電流Idを夫々生成する。
【0135】
トランジスタスイッチSW1及びSW2は、デジタルデータ信号DTのビットD1に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW3及びSW4は当該ビットD1の反転ビットXD1に応じてオンオフ制御される。トランジスタスイッチSW5は、デジタルデータ信号DTのビットD0に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW6は当該ビットD0の反転ビットXD0に応じてオンオフ制御される。
【0136】
すなわち、図10に示す構成では、デジタルデータ信号DTに基づき、電流源トランジスタQ11~Q13の各々に流す電流の経路をトランジスタスイッチSW1~SW6にて選択することで、テイル電流m<1>Io及びm<4>Ioを生成する。そして、図8Bに示すように、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎にテイル電流比m<1>、m<4>は、「1-α」、「2」、「3+α」の3レベルに変更制御される。
【0137】
尚、テイル電流m<2>Io及びm<3>Ioにおけるテイル電流比m<2>及びm<3>は、デジタルデータ信号DTに拘わらず固定、つまり「2-β」であるので、テイル電流m<2>Io及びm<3>Ioは、電流源トランジスタQ14及びQ15によって直接生成される。
【0138】
図11Aは、図8Aに示す基本仕様の変形例を示す図であり、図11Bは、図11Aに示す基本仕様に対する補正後のテイル電流比を示す仕様を表す図である。
【0139】
図11Aに示す基本仕様は、図8Aに示す基本仕様に対して入力電圧V<2>及びV<3>を共通化した仕様である。図11Aに示す基本仕様を採用する場合、テイル電流比を可変に制御する2つの差動対の一方は、電圧VBが各デジタルコードで連続供給される入力電圧V<1>を受ける差動対である。ただし電圧VAを各デジタルコードで連続供給される2つの差動対の他方は存在しない。
【0140】
図11Aに示す基本仕様では、デジタルデータ信号DTのビットD2が論理レベル0を示す場合に電圧VAを有する入力電圧V<3>を受ける差動対と、ビットD2が論理レベル1を示す場合に電圧VAを有する入力電圧V<4>を受ける差動対と、をテイル電流比の可変制御対象とする。つまり、デジタルデータ信号DTのビットD2が論理レベル0を示す場合にはテイル電流比m<1>及びm<3>を可変制御対象とし、ビットD2が論理レベル1を示す場合にはテイル電流比m<1>及びm<4>を可変制御対象とする。なお、デジタルデータ信号DTのビットD2が論理レベル0を示す場合におけるテイル電流比の制御対象をテイル電流比m<3>からテイル電流比m<2>に置換することも可能である。なお、図11Aの基本仕様における出力誤差Voffsの特性は図9Aと同様となる。
【0141】
図11Bに示すテイル電流比の補正後の仕様では、図9Aに示す出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)の出力誤差と逆方向の出力誤差を生じるように、図11Aのテイル電流比のうちで出力誤差の増加を招く電流比「1」及び「3」に対して以下のような補正を施す。つまり、図11Aに示すテイル電流比m<1>及びm<3>(D2=0)、並びにテイル電流比m<4>(D2=1)の電流比「1」及び「3」に対して、当該テイル電流比「1」には補正値αとして「0.15」を減算し、テイル電流比「3」には補正値αとして「0.15」を加算する。更に、図11Bに示すテイル電流比の補正後の仕様では、テイル電流比固定のテイル電流比m<2>及びm<4>(D2=0)、テイル電流比m<3>(D2=1)及びテイル電流比m<3>の電流比「2」には補正値βとして「0.08」を減算する。なお、図11Bに示すテイル電流比補正後の仕様における出力誤差Voffsの特性は図9Cと同様となる。
【0142】
図12は、図11Aに示す基本仕様に図11Bに示すテイル電流比の補正を施した仕様でテイル電流制御回路13Bを実現する場合に採用される構成の一例を示す回路図である。
【0143】
図12に示す構成では、テイル電流制御回路13Bは、電流源トランジスタQ11~Q15、及びトランジスタスイッチSW1~SW10を含む。
【0144】
電流源トランジスタQ11は、バイアス電圧信号BS1を自身のゲートで受けることで、図11Aに示す基本仕様のテイル電流比「1」から補正値αを減算したテイル電流比「1-α」に対応した定電流Iaを生成する。電流源トランジスタQ12は、バイアス電圧信号BS2を自身のゲートで受けることで、図11Aに示す基本仕様のテイル電流比「1」に補正値αを加算したテイル電流比「1+α」に対応した定電流Ibを生成する。電流源トランジスタQ13は、バイアス電圧信号BS3を自身のゲートで受けることで、図11Aに示す基本仕様のテイル電流比「2」に対応した定電流Icを生成する。
【0145】
電流源トランジスタQ14及びQ15の各々は、バイアス電圧信号BS4を自身のゲートで受けることで、図11Aに示す基本仕様のテイル電流比「2」に補正値βを減算したテイル電流比「2-β」に対応した定電流Idを夫々生成する。
【0146】
トランジスタスイッチSW1及びSW2は、デジタルデータ信号DTのビットD1に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW3及びSW4は当該ビットD1の反転ビットXD1に応じてオンオフ制御される。トランジスタスイッチSW5は、デジタルデータ信号DTのビットD0に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW6は当該ビットD0の反転ビットXD0に応じてオンオフ制御される。
トランジスタスイッチSW7及びSW8は、デジタルデータ信号DTのビットD2に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW9及びSW10は当該ビットD2の反転ビットXD2に応じてオンオフ制御される。
【0147】
すなわち、図12に示す構成では、デジタルデータ信号DTに基づき、電流源トランジスタQ11~Q14の各々に流す電流の経路をトランジスタスイッチSW1~SW10にて選択することで、テイル電流m<1>Io、m<3>Io及びm<4>Ioを生成する。そして、図11Bに示すように、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎にテイル電流比m<1>及びm<3>(D2=0)と、テイル電流比m<1>及びm<4>(D2=1)は、「1-α」、「2」、「3+α」の3レベルに変更制御される。なお、テイル電流比m<4>(D2=0)及びm<3>(D2=1)は、固定値「2-β」に制御される。
【0148】
また、テイル電流m<2>Ioにおけるテイル電流比m<2>は、デジタルデータ信号DTに拘わらず固定、つまり「2-β」であるので、テイル電流m<2>Ioは、電流源トランジスタQ15によって生成される。
【実施例0149】
図13は、本発明に係る第4の実施例によるデジタルアナログ変換器100_4の構成を示す回路図である。
【0150】
デジタルアナログ変換器100_4は、4ビットのデジタルデータ信号DTを受け、これを出力電圧信号Voutに変換して出力する。デジタルアナログ変換器100_4は、デコーダ50_4及び差動増幅器10_4を含む。デコーダ50_4は、4ビット(D0~D3)のデジタルデータ信号DTと共に互いに異なる電圧値からなる2つの電圧VA及びVBを受ける。デコーダ50_4は、デジタルデータ信号DTに基づき、2つの電圧VA及びVBを、差動増幅器10_4の入力端子t<1>~t<8>に夫々割り当てる組合せを選択する。デコーダ50_4は、この選択した組み合わせによる、夫々が電圧VA及びVBのうちの一方を示す入力電圧V<1>~V<8>を、差動増幅器10_4の非反転入力端子である入力端子t<1>~t<8>に供給する。
【0151】
差動増幅器10_4は、電圧VA及びVB間を直線近似によって分割した16個の電圧レベルのうちで、4ビットのデジタルデータ信号DTに対応する1の電圧レベルを増幅し、その増幅結果を出力電圧信号Voutとして出力する。差動増幅器10_4は、各々にテイル電流が供給され、各出力対が共通に接続されている8つの同一導電型(図13ではNチャネル型)の差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)と、テイル電流制御回路13Cと、カレントミラー回路20と、増幅段30と、を含む。
【0152】
カレントミラー回路20は、ゲート同士が接続されており、且つ同一のサイズを有するPチャネル型のトランジスタ21及び22を含む。トランジスタ21及び22各々のソースには高位電源電圧VDDAが印加されている。また、トランジスタ21のドレインがノードn11に接続されており、トランジスタ22のゲート及びドレインがノードn12に接続されている。ノードn11、n12は、差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)各々の出力対にそれぞれ接続されている。かかる構成により、カレントミラー回路20は、差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)の共通負荷として動作する。
【0153】
差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)各々の反転入力端、つまりNチャネル型のトランジスタ(差動対トランジスタとも称する)12_1~12_8各々のゲートには、出力電圧信号Voutが帰還入力されている。差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)各々の非反転入力端、つまりNチャネル型のトランジスタ(差動対トランジスタとも称する)11_1~11_8各々のゲートは、入力端子t<1>~t<8>に夫々接続されている。すなわち、差動対トランジスタ11_1~11_8各々のゲートには、夫々が電圧VA又はVBを有する入力電圧V<1>~V<8>が供給される。
【0154】
トランジスタ11_1~11_8は同一のトランジスタ特性を有し、夫々のドレインはノードn11によって共通に接続されている。トランジスタ12_1~12_8は同一のトランジスタ特性を有し、夫々のドレインはノードn12によって共通に接続されている。すなわち、差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)は出力対同士が共通接続された並列形態の接続構成とされている。差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)各々のトランジスタのソース同士が互いに接続されており、夫々が個別にテイル電流制御回路13Cに接続されている。
【0155】
テイル電流制御回路13Cは、差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)各々のソースと低位電源電圧VSSAとの間に個別に接続されている電流源13_1~13_8を含む。電流源13_1~13_8は、差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)各々のソースに供給するテイル電流を生成する。
【0156】
尚、電流源13_1~13_8のうちの所定の2つの電流源13_1及び13_8は可変電流源であり、他の電流源13_2~13_7は固定電流源である。
【0157】
つまり、可変電流源である電流源13_1及び13_8は、デジタルデータ信号DTのうちの下位の2、3又は4ビットに基づき、差動対(11_1、12_1)~(11_8、12_8)に夫々流すテイル電流のテイル電流比を制御する。なお、2つの可変電流源13_1及び13_8の少なくとも一方は、デジタルデータ信号DTのデジタルコードに応じて他の電流源と入替えることも可能である。
【0158】
増幅段30は、共通接続された8つの差動対の出力対(ノードn11、n12)の一方又は両方に生じた電圧に基づく増幅作用により得られた信号を、出力電圧信号Voutとしてこれを出力端子Skを介して出力する。
【0159】
尚、デジタルアナログ変換器100_4は、図1に示すデジタルアナログ変換器100_1の差動増幅器10_1に含まれる差動対の数を8つ、つまりK=3としたものであり、その基本動作は上述したデジタルアナログ変換器100_1と同様である。
【0160】
以下に、デジタルアナログ変換器100_4におけるテイル電流比の補正の具体的な形態について図14A図14D図15A図15Cを参照しつつ説明する。
【0161】
図14A及び図14Bは、デジタルアナログ変換器100_4の基本仕様を示す図である。
【0162】
図14A及び図14Bに示す基本仕様では、4ビット(D0~D3)のデジタルデータ信号DTに基づきデコーダ50_4が差動増幅器10_4の8系統の非反転入力端に供給する入力電圧V<1>~V<8>に夫々割り当てる2つの電圧(VA、VB)の組合せと、テイル電流比m<1>~m<8>と、出力電圧信号Voutとの関係を表す。なお、4ビット(D0~D3)の各デジタルコードを、電圧VA及び電圧VBを16分割した電圧レベルのうちの電圧VAを除く16個の電圧レベルに割り当てた仕様例を示す。
【0163】
図14A及び図14Bにおけるテイル電流比m<1>及びm<8>は、図2Aにおける可変制御の対象となるテイル電流比m<1>及びm<2>に対応する。また、図14A及び図14Bにおけるテイル電流比m<2>~m<7>は、図2Aに示すテイル電流比m<2>~m<2-1>に対応する。
【0164】
図14A及び図14Bの基本仕様では、テイル電流比を可変に制御する2個の差動対は、電圧VBが各デジタルコードで連続供給される入力電圧V<1>を受ける差動対と、電圧VAが各デジタルコードで連続供給される入力電圧V<8>を受ける差動対となり、対応するテイル電流比m<1>、m<8>が3レベルに可変制御される。
【0165】
また、図14A及び図14Bに示す基本仕様では、2つの電圧(VA、VB)を電圧レベル(4.0736ボルト、4ボルト)としている。
【0166】
ここで、差動増幅器10_4から出力される出力電圧信号Voutの期待値は、以下の如き直線近似の式で表される。
【0167】
Vout=(m<1>V1+m<2>V2+m<3>V3
+・・・+m<8>V8)
/(m<1>+m<2>+m<3>+・・・+m<8>)
ここで、電圧レベル4.00及び4.0736の間を直線補間にて16分割した際の出力電圧信号Voutの期待値、並びに、入力電圧V<1>~V<8>、テイル電流比m<1>~m<8>を用いて実際に差動増幅器10_4を動作させて得られる出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)は、図14A及び図14Bに示すようになる。また、図14A及び図14Bにおいて、出力電圧信号Voutの期待値の各々に対し、出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)から出力電圧信号Voutの期待値を差し引いた出力誤差Voffsを図15Aに示す。なお図15Aでは、差動増幅器の固有出力誤差として、各期待値に対して一律にプラス約0.5ミリボルトの出力誤差を含む。
【0168】
すなわち、図14A及び図14B、並びに図15Aに示すように、出力電圧信号Voutには、各期待値に対して、それよりも大又は小となるプラスマイナス約1.5ミリボルトの出力誤差Voffsが生じる。
【0169】
そこで、期待値毎に、その期待値よりも出力電圧信号Voutの電圧レベルが小さく(大きく)なる出力誤差が生じる場合にはその期待値よりも電圧レベルを大きく(小さく)する、図15Bに示すような出力誤差を強制的に生じさせる補正を、図14A及び図14Bに示すテイル電流比m<1>及びm<8>に施す。
【0170】
具体的には、図14C及び図14Dに示す補正後の仕様では、図14A及び図14Bの基本仕様で示されるm<1>及びm<8>のテイル電流比「1」に補正値αとして「0.05」を減算し、テイル電流比「3」には補正値αとして「0.05」を加算する。更に、固定値のm<2>~m<7>のテイル電流比「2」には補正値βとして「0.18」を減算する。また、図15Bに、補正後のテイル電流比を用いた出力電圧信号Voutの近似式の演算結果に対する出力誤差Voffsを示す。図15Bより、上述したテイル電流比の補正が、図15Aに示す出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)の出力誤差と逆方向の出力誤差を生じることがわかる。
【0171】
これにより、図14C及び図14Dに示す入力電圧V<1>~V<8>、及び補正後のテイル電流比m<1>~m<8>を用いて実際に差動増幅器10_4によって得られる、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎の出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)に生じる出力誤差Voffsは、図15Cに示すように、プラスマイナス約0.45ミリボルトまで下がる。
【0172】
図16は、図14A及び図14Bに示す基本仕様に対して、図14C及び図14Dに示すテイル電流比の補正を施した仕様でテイル電流制御回路13Cを実現する場合に採用される回路図である。
【0173】
図16に示す構成では、テイル電流制御回路13Cは、電流源トランジスタQ11~Q19、及びトランジスタスイッチSW1~SW6を含む。
【0174】
電流源トランジスタQ11は、バイアス電圧信号BS1を自身のゲートで受けることで、図14A及び図14Bに示す基本仕様のテイル電流比「1」から補正値αを減算したテイル電流比「1-α」に対応した定電流Iaを生成する。電流源トランジスタQ12は、バイアス電圧信号BS2を自身のゲートで受けることで、図14A及び図14Bに示す基本仕様のテイル電流比「1」に補正値αを加算したテイル電流比「1+α」に対応した定電流Ibを生成する。電流源トランジスタQ13は、バイアス電圧信号BS3を自身のゲートで受けることで、図14A及び図14Bに示す基本仕様のテイル電流比「2」に対応した定電流Icを生成する。
【0175】
電流源トランジスタQ14~Q19の各々は、バイアス電圧信号BS4を自身のゲートで受けることで、図14A及び図14Bに示す基本仕様のテイル電流比「2」に補正値βを減算したテイル電流比「2-β」に対応した定電流Idを夫々生成する。
【0176】
トランジスタスイッチSW1及びSW2は、デジタルデータ信号DTのビットD1に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW3及びSW4は当該ビットD1の反転ビットXD1に応じてオンオフ制御される。トランジスタスイッチSW5は、デジタルデータ信号DTのビットD0に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW6は当該ビットD0の反転ビットXD0に応じてオンオフ制御される。
【0177】
すなわち、図16に示す構成では、デジタルデータ信号DTに基づき、電流源トランジスタQ11~Q13の各々に流す電流の経路をトランジスタスイッチSW1~SW6にて選択することで、テイル電流m<1>Io及びm<8>Ioを生成する。そして、図14C及び図14Dに示すように、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎にテイル電流比m<1>、m<8>は、「1-α」、「2」、「3+α」の3レベルに変更制御される。
【0178】
尚、テイル電流m<2>Io~m<7>Io各々のテイル電流比m<2>~m<7>は、デジタルデータ信号DTに拘わらず固定、つまり「2-β」であるので、テイル電流m<2>Io~m<7>Ioの各々は、電流源トランジスタQ14~Q19によって直接生成される。
【0179】
図17A及び図17Bは、図14A及び図14Bに示す基本仕様の変形例を示す図であり、図17C及び図17Dは、図11Aに示す基本仕様に対する補正後のテイル電流比を示す仕様を表す図である。
【0180】
図17A及び図17Bに示す基本仕様は、図14A及び図14Bに示す基本仕様に対して、入力電圧V<3>及びV<4>を共通化すると共に、入力電圧V<5>及びV<6>を共通化し、更に入力電圧V<7>及びV<8>を共通化した仕様である。
【0181】
図17A及び図17Bに示す基本仕様を採用する場合、テイル電流比を可変に制御する2つの差動対の一方は、図14A及び図14Bに示す基本仕様と同様に、電圧VBが各デジタルコードで連続供給される入力電圧V<1>を受ける差動対である。ただし電圧VAを各デジタルコードで連続供給される2つの差動対の他方は存在しない。
【0182】
図17A及び図17Bに示す基本仕様では、デジタルデータ信号DTのビット(D3、D2)が(0、0)、(0、1)及び(1、0)を示す場合に電圧VAを有する入力電圧V<8>を受ける差動対と、ビット(D3、D2)が(1、1)を示す場合に電圧VAを有する入力電圧V<2>を受ける差動対と、をテイル電流比の可変制御対象とする。つまり、図17A及び図17Bに示すように、デジタルデータ信号DTのビット(D3、D2)が、(1、1)以外の場合にテイル電流比m<1>及びm<8>を可変制御対象とし、論理レベル(1、1)の場合にテイル電流比m<1>及びm<2>を可変制御対象とする。なお、テイル電流比m<8>に代えてテイル電流比m<7>を可変制御対象とすることも可能である。なお、図17A及び図17Bの基本仕様における出力誤差Voffsの特性は図15Aと同様となる。
【0183】
図17C及び図17Dに示すテイル電流比の補正後の仕様では、図15Aに示す出力電圧信号Voutの電圧レベル(SIM値)の出力誤差と逆方向の出力誤差を生じるように、各テイル電流比のうちで出力誤差Voffsの増加を招く電流比「1」及び「3」に対して、以下のような補正を施す。
【0184】
つまり、図17A及び図17Bに示すように、ビット(D3、D2)が論理レベル(1、1)以外となる場合でのテイル電流比m<1>及びm<8>、並びにビット(D3、D2)が論理レベル(1、1)となる場合でのテイル電流比m<2>各々の電流比「1」及び「3」に対して、当該テイル電流比「1」には補正値αとして「0.05」を減算し、テイル電流比「3」には補正値αとして「0.05」を加算する。
【0185】
更に、図17C及び図17Dに示すテイル電流比の補正後の仕様では、ビット(D3、D2)が論理レベル(1、1)となる場合でのテイル電流比m<2>と、ビット(D3、D2)が論理レベル(1、1)となる場合でのテイル電流比m<8>及びテイル電流比m<3>~m<7>の電流比「2」には補正値βとして「0.18」を減算する。なお、図17C及び図17Dに示すテイル電流比補正後の仕様における出力誤差Voffsの特性は図15Cと同様となる。
【0186】
図18は、図17C及び図17Dに示すようにテイル電流比の補正を施した仕様でテイル電流制御回路13Cを実現する場合に採用される回路図である。
【0187】
図18に示す構成では、テイル電流制御回路13Cは、電流源トランジスタQ11~Q19、及びトランジスタスイッチSW1~SW6、SW11~SW18を含む。
【0188】
電流源トランジスタQ11は、バイアス電圧信号BS1を自身のゲートで受けることで、図17A及び図17Bに示す基本仕様のテイル電流比「1」から補正値αを減算したテイル電流比「1-α」に対応した定電流Iaを生成する。
【0189】
電流源トランジスタQ12は、バイアス電圧信号BS2を自身のゲートで受けることで、図17A及び図17Bに示す基本仕様のテイル電流比「1」に補正値αを加算したテイル電流比「1+α」に対応した定電流Ibを生成する。電流源トランジスタQ13は、バイアス電圧信号BS3を自身のゲートで受けることで、図17A及び図17Bに示す基本仕様のテイル電流比「2」に対応した定電流Icを生成する。
【0190】
電流源トランジスタQ14~Q19の各々は、バイアス電圧信号BS4を自身のゲートで受けることで、図17A及び図17Bに示す基本仕様のテイル電流比「2」に補正値βを減算したテイル電流比「2-β」に対応した定電流Idを夫々生成する。
【0191】
トランジスタスイッチSW1及びSW2は、デジタルデータ信号DTのビットD1に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW3及びSW4は当該ビットD1の反転ビットXD1に応じてオンオフ制御される。トランジスタスイッチSW5は、デジタルデータ信号DTのビットD0に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW6は当該ビットD0の反転ビットXD0に応じてオンオフ制御される。トランジスタスイッチSW11及びSW12は、デジタルデータ信号DTのビットD3に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW13及びSW14は当該ビットD3の反転ビットXD3に応じてオンオフ制御される。トランジスタスイッチSW15及びSW16は、デジタルデータ信号DTのビットD2に応じてオンオフ制御され、トランジスタスイッチSW17及びSW18は当該ビットD2の反転ビットXD2に応じてオンオフ制御される。
【0192】
すなわち、図18に示す構成では、デジタルデータ信号DTに基づき、電流源トランジスタQ11~Q14の各々に流す電流の経路を、トランジスタスイッチSW1~SW6、SW11~SW18にて選択することで、テイル電流m<1>Io、m<2>Io及びm<8>Ioを生成する。そして、図17C及び図17Dに示すように、デジタルデータ信号DTのデジタルコード毎にテイル電流比m<1>及びm<8>((D3、D2)が(1、1)以外)と、テイル電流比m<1>及びm<2>((D3、D2)が(1、1))は、「1-α」、「2」、「3+α」の3レベルに変更制御される。なお、テイル電流比m<2>(D3、D2)が(1、1)以外)及びm<8>((D3、D2)が(1、1))は、固定値「2-β」に制御される。
【0193】
尚、テイル電流m<3>Io~m<7>Io各々のテイル電流比m<3>~m<7>は、デジタルデータ信号DTに拘わらず固定、つまり「2-β」であるので、テイル電流m<3>Io~m<7>Ioの各々は、電流源トランジスタQ13~Q19によって直接生成される。
【実施例0194】
図19は、本発明に係る第5の実施例によるデジタルアナログ変換器100_5の構成を示す回路図である。
【0195】
デジタルアナログ変換器100_5は、図1に示す2のK乗個の差動対(11_1、12_1)~(11_2、12_2)を含む差動増幅器10_1を用いて、変換対象となるデジタルデータ信号DTのビット数を(K+1)ビットよりも多いM(MはK+1より大きい整数)ビットに拡張したものである。
【0196】
尚、デジタルアナログ変換器100_5は、図1に示すデコーダ50_1に代えてデコーダ50_5及び参照電圧生成部90を採用したものであり、差動増幅器10_1の構成については図1に示すものと同一である。
【0197】
参照電圧生成部90は、直流の基準電源電圧VGH、及び基準電源電圧VGHより低電圧の基準電源電圧VGLを受ける。参照電圧生成部90は、基準電源電圧VGH及びVGLに基づき、夫々電圧値が異なる参照電圧Vg0~VgR(Rは2以上の整数)を生成し、かかる参照電圧Vg0~VgRをデコーダ50_5に供給する。
【0198】
デコーダ50_5は、サブデコーダ50S_1及び50S_2を含む。
【0199】
サブデコーダ50S_2は、Mビットのデジタルデータ信号DT及び参照電圧Vg0~VgRを受け、Mビットデジタルデータの上位ビット、例えば上位(M-K-1)ビットに基づき、参照電圧Vg0~VgRのうちから、互いに隣接する一対の電圧を2つの電圧(VA、VB)として選択する。サブデコーダ50S_2は、選択した2つの2つの電圧(VA、VB)をサブデコーダ50S_1に供給する。
【0200】
サブデコーダ50S_1は、Mビットデジタルデータの下位の(K+1)ビット及び2つの電圧(VA、VB)に基づき、電圧(VA,VB)のうちの一方又は他方を、差動増幅器10_1の2のK乗個の端子、つまり入力端子t<1>~t<2>に夫々振り分ける組合せを選択する。サブデコーダ50S_1は、電圧(VA,VB)を入力端子t<1>~t<2>に夫々振り分けた電圧群を、入力電圧V<1>~V<2>として、差動増幅器10_1の入力端子t<1>~t<2>に供給する。尚、差動増幅器10_1の動作は、前述した図2A及び図2Bを用いて説明したものと同一である。
【0201】
図20は、図19に示すデジタルアナログ変換器100_5において、例えばK=2としたときの、Mビットデジタルデータの上位側(M-K-1)ビットによりサブデコーダ50S_2で選択される2つの電圧(VA、VB)、及び、下位の(K+1)ビットによりサブデコーダ50S_2と差動増幅器10_1の作用により出力端子Skより出力される電圧レベル(出力レベル)の仕様の一例を示す。かかる仕様によれば、サブデコーダ50S_2が上位(M-K-1)ビットのデジタルデータ信号DTに応じて、2つの電圧(VA、VB)の電圧レベルを8つの出力レベルおき、つまり、(0,8)、(8,16)、(16,24)、・・・のように選択することで、アナログの出力電圧信号Voutとして出力レベル1~8、9~16、17~24、・・・を得ることができる。
【実施例0202】
図21は、上記したデジタルアナログ変換器(100_1~100_5)を含むデータドライバを備えた表示装置200の構成を示すブロック図である。
【0203】
表示装置200は、表示パネル15、表示コントローラ16、走査ドライバ17及びデータドライバ18を含む。
【0204】
表示パネル15は、例えば液晶又は有機ELパネル等からなり、2次元画面の水平方向に伸張するm個(mは2以上の自然数)の水平走査線GL1~GLmと、2次元画面の垂直方向に伸張するn個(nは2以上の自然数)のデータ線DL1~DLnと、を含む。水平走査線及びデータ線の各交叉部には、画素を担う表示セルが形成されている。
【0205】
表示コントローラ16は、映像信号VDに基づき、スタートパルス、クロック信号、垂直及び水平同期信号等の各種制御信号、並びに各画素の輝度レベルを表す映像デジタルデータ片の系列を含む映像デジタル信号DVSを生成する。
【0206】
表示コントローラ16は、上記した水平同期信号に同期した走査タイミング信号を生成しこれを走査ドライバ17に供給すると共に、上記した映像デジタル信号DVSをデータドライバ18に供給する。
【0207】
走査ドライバ17は、表示コントローラ16から供給された走査タイミング信号に基づいて、水平走査パルスを表示パネル15の水平走査線GL1~GLmの各々に順次印加する。
【0208】
データドライバ18は、シフトレジスタ80、データレジスタラッチ70、レベルシフタ60、参照電圧生成部90、n個のデコーダ50及びn個の差動増幅器10を含む。
【0209】
シフトレジスタ80は、映像デジタル信号DVSに含まれるスタートパルスに応じて、クロック信号に同期してラッチの選択を行う為の複数のラッチタイミング信号を生成し、データレジスタラッチ70に供給する。
【0210】
データレジスタラッチ70は、シフトレジスタ80から供給されたラッチタイミング信号の各々に基づき、映像デジタル信号DVSに含まれる映像デジタルデータ片を所定個(例えばn個)毎に取り込み、各映像デジタルデータ片を表すn個の映像デジタルデータ信号をレベルシフタ60に供給する。
【0211】
レベルシフタ60は、データレジスタラッチ70から供給されたn個の映像デジタルデータ信号の各々に対して、その信号振幅を増加するレベルシフト処理を施して得たn個のレベルシフト後の映像デジタルデータ信号を、データドライバ18のn個の出力チャネルに夫々対応して設けられたn個のデコーダ50の各々に供給する。
【0212】
参照電圧生成部90は、直流の基準電源電圧VGH、及び基準電源電圧VGHより低電圧の基準電源電圧VGLを受ける。参照電圧生成部90は、基準電源電圧VGH及びVGLに基づき、夫々電圧値が異なる参照電圧Vg0~VgRを生成し、n個のデコーダ50の各々に供給する。
【0213】
デコーダ50の各々は、上記した参照電圧群のうちから、レベルシフタ60にてレベルシフトされた映像デジタルデータ信号に対応した一対の参照電圧を選択する。そして、デコーダ50の各々は、選択した一対の参照電圧を2つの電圧(VA、VB)として、データドライバ18のn個の出力チャネルに夫々対応して設けられている差動増幅器10に供給する。
【0214】
差動増幅器10は、入力された電圧VA及びVB間を分割する例えば16レベルの電圧のうちの1つを有する出力電圧信号Voutを生成し、この出力電圧信号Voutを駆動信号として出力する。この際、n個の差動増幅器10から出力されたn個の駆動信号は、駆動信号S1~Snとして表示パネル15のデータ線DL1~DLnに夫々供給される。
【0215】
ここで、図21に示されるデータドライバ18の出力チャネル毎に設けられるデコーダ50及び差動増幅器10、並びに参照電圧生成部90として、図1図3図7又は図13に示すデジタルアナログ変換器を適用することができる。これにより、データドライバ18の省面積化を図ることが可能となる。
【0216】
以上、詳述したように、本発明では、(K+1)ビット(Kは1以上の正数)のデジタルデータに応じて、第1及び第2の電圧(VA、VB)を2の(K+1)乗個に分割した2の(K+1)乗個の電圧レベルのうちの1の電圧レベルを有する出力電圧を出力するデジタルアナログ変換器として、以下の差動増幅器及び第1のデコーダを含むものを採用している。
【0217】
第1のデコーダ(50_1~50_4)は、第1及び第2の電圧(VA、VB)を受け、(K+1)ビットのデジタルデータ(DT)に基づき、差動増幅器の複数の入力端(t<1>~t<2>)の各々に、第1の電圧(VA)又は第2の電圧(VB)を振り分けて供給する。
【0218】
差動増幅器(10_1~10_4)は、複数の入力端(t<1>~t<2>)で夫々受けた電圧(V<1>~V<2>)に基づく演算結果を出力電圧(Vout)として自身の出力端子から出力する。尚、この差動増幅器は、以下の2のK乗個の差動対、増幅段、及びテイル電流制御回路を含む。
【0219】
2のK乗個の差動対(11_1、12_1~11_2、12_2)の各々は、出力電圧(Vout)が共通に入力される反転入力端、複数の入力端で受けた電圧(V<1>~V<2>)のうちの1つが入力電圧として供給される非反転入力端、及び出力対を含む。これら2のK乗個の差動対の出力対同士が共通接続されており、夫々が個別に受けたテイル電流(m<1>Io~m<2>Io)で駆動される。
【0220】
増幅段(30)は、2のK乗個の差動対各々の出力対の一方又は両方の出力に基づく増幅作用により出力電圧(Vout)を生成する。
【0221】
テイル電流制御回路(13、13_1~13_4)は、2のK乗個の差動対に第1~第2のテイル電流(m<1>Io~m<2>Io)を個別に供給する。また、テイル電流制御回路は、デジタルデータ(DT)に基づき第1~第2のテイル電流各々の基準電流値(Io)に対する第1~第2の電流比(m<1>~m<2>)を差動対毎に制御する。更に、テイル電流制御回路は、第1~第2の電流比の各々を所定の3値(例えば「1」、「2」、又は「3」)のうちの1つの値に設定する構成を基本構成とし、2のK乗個の差動対のうちの少なくとも所定の2個の差動対(例えば[11_1、12_1]、[11_2、12_2])に供給するテイル電流の電流比(例えばm<1>、m<2>)については、デジタルデータに基づきその値を3値のうちの1つの値に可変制御する。これにより、少ない差動対で出力電圧の電圧レベル数を増加させることが可能となり、デジタルアナログ変換器の省面積化が実現できる。
【0222】
更に、本発明に係るデジタルアナログ変換器のテイル電流制御回路では、少なくとも2個の差動対に供給するテイル電流の電流比の値を、デジタルデータに基づき3値のうちの最大値、最小値又は中間値に制御するにあたり、当該最大値及び最小値のうちの一方を増加、他方を低下させる補正を施す。これにより、テイル電流の電流比を可変制御するが故に生じる出力電圧の誤差を抑制することが可能となる。
【0223】
よって、本発明によれば、出力誤差の低下を招くことなく省面積化を図ることが可能なデジタルアナログ変換器、データドライバ及び表示装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0224】
10_1~10_4 差動増幅器
13、13A~13C テイル電流制御回路
50_1、50_4 デコーダ
100、150 デジタルアナログ変換器
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
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