(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107795
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240802BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011900
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【弁理士】
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 滋人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良太
(72)【発明者】
【氏名】中本 慎吾
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043BA01
5E070AA01
5E070AB10
5E070BA03
5E070CA13
(57)【要約】
【課題】第1ワイヤおよび第2ワイヤ間で生じる浮遊容量の影響を低減しつつ、巻芯部のまわりに複数層を形成する状態で巻回されるワイヤの位置ずれを生じにくくした、コイル部品を提供する。
【解決手段】第2層に位置するワイヤ4のターンがこれと同一番目の第1層に位置するワイヤ3のターンより第2端部8側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、ワイヤ3とワイヤ4との間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在していて、ワイヤ4のターンは、第1端部7側において、いずれのワイヤもが接していない非接触ターンT1,T18,T24を含み、非接触ターンが嵌り込む凹部を形成する第1層に位置するワイヤ3の隣り合う2つのターン間の隙間S1,S2,S3は、軸線方向6に測定して、1/5×D≦L≦(√3-1)×Dで規定される大きさLを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含む、コアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって前記第1端部から前記第2端部に向かって螺旋状に巻回された、直径Dの円形の断面を有する第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの一方は、前記巻芯部の周面に最も近い層である第1層を構成する状態で巻回される部分を含み、
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの他方は、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層である第2層を構成する状態で巻回される部分を含み、
第1層に位置するワイヤのターンと第2層に位置するワイヤのターンとの位置関係に関して、前記第1端部側から数えて、第2層に位置するワイヤのターンがこれと同一番目の第1層に位置するワイヤのターンより前記第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在していて、
第2層に位置するワイヤのターンは、少なくとも前記第1端部側において、第2層に位置するいずれのワイヤもが接していない非接触ターンを含み、前記非接触ターンの少なくとも1つについて、当該非接触ターンが嵌り込む前記凹部を形成する第1層に位置するワイヤの隣り合う2つのターン間の隙間は、前記軸線方向に測定して、
1/5×D≦L≦(√3-1)×D
で規定される大きさLを有する、
コイル部品。
【請求項2】
第1層に位置するワイヤの複数のターン間の隙間のうち、前記大きさLの隙間が最も大きい、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
第1層に位置するワイヤの複数のターンは、前記大きさLの隙間を形成する隣り合う2つのターンの間を除いて、隣り合うものの間で互いに接触している、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記大きさLの隙間を有する2つのターン間に嵌り込む前記非接触ターンは、第2層に位置するワイヤの最も前記第1端部側にあるターンである、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤは、前記巻芯部の前記軸線方向に沿って配置された、巻回態様が互いに異なる複数の巻回域においてそれぞれ巻回されていて、前記大きさLの隙間を有する2つのターン間に嵌り込む前記非接触ターンは、各前記巻回域における第2層に位置するワイヤの最も前記第1端部側にあるターンである、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記非接触ターンが嵌り込む前記凹部を形成する第1層に位置するワイヤの隣り合う2つのターンは、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤのいずれか一方が形成するターンである、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記非接触ターンが嵌り込む前記凹部を形成する第1層に位置するワイヤの隣り合う2つのターンのいずれか一方は、前記第1ワイヤが形成するターンであり、いずれか他方は、前記第2ワイヤが形成するターンである、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項8】
第2層における前記非接触ターンと当該非接触ターンの前記第1端部側および前記第2端部側にそれぞれ隣り合って位置するターンとの間には、第2の隙間が形成される、請求項1ないし7のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤのいずれかは、第2層に位置するワイヤの巻回範囲の一部において、第2層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される第2の凹部に嵌り込みながら第2層の外周側に巻回される層である第3層を構成する状態で巻回される部分を含み、
第3層に位置するワイヤの少なくとも1つのターンは、前記第2の隙間に嵌り込む、
請求項8に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル部品に関するもので、特に、巻芯部のまわりに複数層を形成する状態で2本のワイヤを巻回した構造を有する巻線型のコイル部品におけるワイヤの巻回態様についての改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件において、巻芯部のまわりに巻回される第1ワイヤおよび第2ワイヤの各々について、第n番目のターンを「ターンTn」と表現する(nは自然数)。
【0003】
第1ワイヤと第2ワイヤとの間のずれ量に関して、たとえば、一方のワイヤのターンTnとターンTn+1との間の凹部に、他方のワイヤのターンTnが嵌り込む場合には、ずれ量を「0.5ターン」とする。一方のワイヤのターンTnと第n+1ターンとの間の凹部に、他方のワイヤのターンTn+2ターンが嵌り込む場合、ずれ量を「1.5ターン」とする。一方のワイヤのターンTnと第n+1ターンとの間の凹部に、他方のワイヤのターンTn+3ターンが嵌り込む場合、ずれ量を「2.5ターン」とする。
【0004】
第1ワイヤと第2ワイヤとの間のずれ方向に関して、第2ワイヤのターンがこれと同一番目の第1ワイヤのターンより巻回方向の終端側にある場合には、正方向のずれとし、ずれ量を表わす数字の前に「+」を付し、逆の場合には、負方向のずれとし、ずれ量を表わす数字の前に「-」を付す。
【0005】
なお、ワイヤのターンを数えるとき、巻芯部の第1端部側から数えるか、逆に第2端部側から数えるか、は問わない。ターン数を数える方向を逆にしたとしても、本質的には同じ構成であると言える。
【0006】
また、本件において、巻芯部のまわりに巻回されるワイヤが形成する複数層のうち、巻芯部の周面に最も近い層、すなわち巻芯部の周面に少なくとも一部が接する層を第1層、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層を第2層、第2層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層の外周側に巻回される層を第3層とそれぞれ表現する。なお、巻芯部の周面に最も近い層である第1層が巻芯部の周面に少なくとも一部が接するとしたのは、ワイヤが全長にわたって巻芯部の周面に接することなく、たとえば断面角形の巻芯部の稜線部分にのみワイヤが接し、他の部分は巻芯部の周面から若干浮いていることが通常であるためである。また、第2層および第3層は、それぞれ、第1層および第2層との相対的な位置関係に基づいて付された名称であり、第2層は第1層より外周側に位置していればよく、第3層は第2層より外周側に位置していればよい。
【0007】
この発明が向けられるコイル部品の代表例として、コモンモードチョークコイルがある。
【0008】
この発明にとって興味あるコモンモードチョークコイルが、たとえば、特許第6327397号公報(特許文献1)に記載されている。
図8(A)は、特許文献1に記載されたコモンモードチョークコイルとなるコイル部品50に備える2本のワイヤ51および52の巻回状態の特徴的構成を模式的に示す断面図である。
図8(A)は、特許文献1における
図2、
図7または
図8に相当する。
図8(B)および
図8(C)は、後述する課題を説明するためのものである。
【0009】
図8(A)、
図8(B)および
図8(C)において、第1ワイヤ51を示す断面には網掛けが施され、第1ワイヤ51と第2ワイヤ52との区別が明確になるようにしている。第1ワイヤ51および第2ワイヤ52は、巻芯部53の第1端部54から逆の第2端部55に向かって、巻芯部53のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回される。第1ワイヤ51は、巻芯部53の周面に接する第1層を構成する状態で巻回され、第2ワイヤ52は、その大部分が第1ワイヤ51の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込ませながら第1層の外側の第2層を構成する状態で巻回される。
【0010】
前述したように、第1層の外側の第2層を構成する状態で巻回されるのが、第2ワイヤ52の大部分としたのは、第2ワイヤ52の一部のターン、たとえばターンTmおよびターンTm+1については、巻芯部53の周面に接するように巻回しているからである。
【0011】
また、
図8(A)、
図8(B)および
図8(C)において、第1ワイヤ51の複数のターンの各々と第2ワイヤ52の複数のターンの各々とが線分で結ばれている。このように、線分で結ばれたターン同士は、第1端部54から数えて同じ番目のターンであることを示している。
【0012】
特許文献1に記載のコイル部品50は、コモンモードチョークコイルにおけるモード変換特性を低減することを目的として開発されたもので、
図8(A)に示した実施形態は、以下のような特徴を有している。
【0013】
すなわち、第1ワイヤ51および第2ワイヤ52の各々の第1端部54側から数えたターン数nで表現したとき、コイル部品50は、
(1)第1ワイヤ51のターンTnとターンTn+1との間の凹部に、第2ワイヤ52のターンTnが嵌り込むことによって、第1ワイヤと第2ワイヤとの間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域57と、
(2)第1ワイヤ51のターンTnとターンTn+1との間の凹部に、第2ワイヤ52のターンTn+2が嵌り込むことによって、第1ワイヤ51と第2ワイヤ52との間で負方向に1.5ターンずれる、-1.5ターンずれ域58と、
(3)上記+0.5ターンずれ域57から上記-1.5ターンずれ域58へと移行する遷移域59と、
を有している。
【0014】
そして、上記0.5ターンずれ域57に位置する第2ワイヤ52のターン数の和は、上記1.5ターンずれ域58に位置する第2ワイヤ52のターン数の和の2倍以上かつ5倍以下である。
【0015】
このような構成によって、第1ワイヤ51および第2ワイヤ52間で発生する容量を、第1ワイヤ51および第2ワイヤ52全体でバランスさせることができ、第1ワイヤ51および第2ワイヤ52間で生じる浮遊容量の影響を低減できる。したがって、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図8(A)に示す巻回状態において、第2ワイヤ52に注目すると、+0.5ターンずれ域57の始端にあるターンT1については、その第1端部54側にいずれのワイヤもが接しておらず、遷移域59の終端近傍にあるターンTm+2についても、その第1端部54側にワイヤが接していない。
【0018】
したがって、たとえばターンT1は、第1端部54方向にずれやすく、
図8(B)に示すように、ターンT1が、巻芯部53の周面上に不用意に段落ちすること、すなわち、第2層に位置させるべきターンT1が、第1層に位置したり、第1層側に位置ずれしたりしてしまうことがある。このような不用意な段落ちは、コイル部品50の完成品においても生じ得るが、第2ワイヤ52を第1端部54から第2端部55に向かって巻回する工程において生じると、後続するターンT2、T3、…が順次位置ずれを起こす。その結果、ずれ域57は、+0.5ターンずれ域ではなくなり、たとえば-0.5ターンずれ域60が形成されてしまう。
【0019】
また、ターンTm+2についても、第1端部54方向にずれやすく、
図8(C)に示すように、ターンTm+2が、ターンTm+1を乗り越えて、ターンTmとターンTm+1との間に落ち込むことがある。
図8(C)では図示していないが、ターンTmとターンTm+1との間隔がより広い場合には、ターンTm+2が巻芯部53の周面上に不用意に段落ちすることもある。上述したようなターンTm+2のずれが、第2ワイヤ52を第1端部54から第2端部55に向かって巻回する工程において生じると、後続するターンTm+3、Tm+4、…が順次位置ずれを起こす。その結果、ずれ域58は、-1.5ターンずれ域ではなくなり、-2.5ターンずれ域61が形成されてしまう。
【0020】
図8(B)および
図8(C)に示すようなワイヤの位置ずれが生じると、第1ワイヤ51と第2ワイヤ52との間で発生する容量が設計値からずれ、そのため、容量のバランスが崩れ、モード変換特性が悪化することがある。
【0021】
同種の位置ずれの問題は、コモンモードチョークコイルに限らず、たとえば、同じく第1ワイヤおよび第2ワイヤを備える巻線型チップトランスなどにおいても遭遇し得る。
【0022】
そこで、この発明の目的は、第1ワイヤおよび第2ワイヤ間で生じる浮遊容量の影響を低減しつつ、巻芯部のまわりに複数層を形成する状態で巻回されるワイヤの位置ずれを生じにくくした、コイル部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この発明は、軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含む、コアと、巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって第1端部から第2端部に向かって螺旋状に巻回された、直径Dの円形の断面を有する第1ワイヤおよび第2ワイヤと、を備える、コイル部品に向けられる。
【0024】
第1ワイヤおよび第2ワイヤの一方は、巻芯部の周面に最も近い層である第1層を構成する状態で巻回される部分を含み、第1ワイヤおよび第2ワイヤの他方は、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層である第2層を構成する状態で巻回される部分を含む。
【0025】
第1層に位置するワイヤのターンと第2層に位置するワイヤのターンとの位置関係に関して、第1端部側から数えて、第2層に位置するワイヤのターンがこれと同一番目の第1層に位置するワイヤのターンより第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、第1ワイヤと第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在している。
【0026】
第2層に位置するワイヤのターンは、少なくとも第1端部側において、第2層に位置するいずれのワイヤもが接していない非接触ターンを含み、非接触ターンの少なくとも1つについて、当該非接触ターンが嵌り込む凹部を形成する第1層に位置するワイヤの隣り合う2つのターン間の隙間は、軸線方向に測定して、
1/5×D≦L≦(√3-1)×D
で規定される大きさLを有する。
【0027】
なお、軸線方向に測定した隙間の大きさLは、隙間が与える軸線方向の寸法における最小寸法である。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、第2層に位置するワイヤのターンのうち、少なくとも第1端部側において、いずれのワイヤもが接していない非接触ターンが嵌り込む凹部を形成する第1層に位置するワイヤの隣り合う2つのターン間の隙間が、軸線方向に測定して、1/5×D≦L≦(√3-1)×Dで規定される大きさLを有しているので、第2層に位置するワイヤの非接触ターンの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0029】
また、第1層に位置するワイヤのターンと第2層に位置するワイヤのターンとの位置関係に関して、第1ワイヤと第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在しているので、第1ワイヤと第2ワイヤとの間で生じる浮遊容量の影響を低減できる。したがって、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】この発明の第1の実施形態によるコイル部品1の外観図であって、実装基板側に向けられる面を示している。
【
図2】
図1に示したコイル部品1における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の巻回状態を模式的に示すもので、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を示す断面図である。
【
図3】
図2の一部に相当する部分を拡大して示すもので、この発明の特徴を説明するための図である。
【
図4】この発明の第2の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図5】この発明の第3の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図6】この発明の第4の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図7】この発明の第5の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図8】特許文献1に記載されたコイル部品50に備える2本のワイヤ51および52の巻回状態を模式的に示す断面図であり、(A)は2本のワイヤ51および52の巻回状態の特徴的構成を示し、(B)および(C)は、この発明が解決しようとする課題を説明するためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1の実施形態]
図1には、この発明の第1の実施形態によるコイル部品1における、実装基板(図示しない。)側に向けられる面が示されている。コイル部品1は、コモンモードチョークコイルとなるものである。
【0032】
コイル部品1は、ドラム状のコア2と、それぞれインダクタを構成する第1ワイヤ3および第2ワイヤ4と、を備えている。コア2は、非導電性材料、より具体的には、Ni-Zn系などのフェライト、またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などから構成される。
【0033】
コア2は、巻芯部5ならびに巻芯部5の軸線方向6における互いに逆の第1端部7および第2端部8からそれぞれ張り出して設けられた第1鍔部9および第2鍔部10を備える。巻芯部5の、軸線方向6に直交する断面は四角形状である。なお、断面四角形状の巻芯部5の稜線部分は面取りされてもよく、あるいは、巻芯部5の断面形状は、六角形状などの他の多角形状、円状、もしくは楕円状、またはこれらを適宜組み合わせた形状であってもよい。
【0034】
第1鍔部9および第2鍔部10は、四角柱形状である。第1鍔部9は、実装基板側に向く下面11と、下面11とは逆方向に向く天面と、巻芯部5の第1端部7を位置させる内側端面15と、内側端面15の反対側であって外側を向く外側端面17と、下面11および天面間ならびに内側端面15および外側端面17間を結ぶ第1側面19および第2側面20と、を有する。同様に、第2鍔部10は、実装基板側に向く下面12と、下面12とは逆方向に向く天面と、巻芯部5の第2端部8を位置させる内側端面16と、内側端面16の反対側であって外側を向く外側端面18と、下面12および天面間ならびに内側端面16および外側端面18間を結ぶ第1側面21および第2側面22と、を有する。第1鍔部9および第2鍔部10の稜線部分は面取りされてもよい。
【0035】
コイル部品は4個以上の端子電極を備える。この実施形態では、コイル部品1は4個の端子電極23~26を備える。第1鍔部9の下面11には、第1端子電極23および第3端子電極25が設けられ、第2鍔部10の下面12には、第2端子電極24および第4端子電極26が設けられる。図示しないが、第1端子電極23および第3端子電極25は、第1鍔部9の外側端面17の一部にまで延び、第2端子電極24および第4端子電極26は、第2鍔部10の外側端面18の一部にまで延びていてもよい。
【0036】
端子電極23~26は、たとえば、銀を導電成分として含む導電性ペーストを下面11および12に焼付け、外側端面17および18にまで延びる部分については銀を蒸着し、その後、これら下地の導体膜に、銅、ニッケルおよび錫の順でめっきを施すことによって形成される。なお、端子電極23~26は、導電性金属板からなる金属端子をたとえばエポキシ系接着剤を用いてコア2に貼付けることによって設けられてもよい。
【0037】
第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、巻芯部5のまわりで螺旋状に巻回される。
図1において、第1ワイヤ3はより暗い領域で示され、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との区別が明確になるようにしている。第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の巻回状態の詳細については後述する。第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、たとえば、銅、銀または金などの良導電性金属からなる線状の中心導体を備え、中心導体はポリウレタンまたはポリアミドイミドなどの樹脂からなる電気絶縁性被膜によって覆われる。線状の中心導体の径は特に限定されるものではない。また、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4のターン数についても特に限定されるものではない。好ましくは、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の径は、20~100μmとされる。
【0038】
第1ワイヤ3の各端部は、第1端子電極23および第2端子電極24に接続され、第2ワイヤ4の各端部は、第3端子電極25および第4端子電極26に接続される。これらの接続には、たとえば、熱圧着が適用される。
【0039】
コイル部品1は、図示しないが、第1鍔部9および第2鍔部10の各々の天面間に渡される天板をさらに備えていてもよい。天板は、コア2と協働して閉磁路を形成するためのもので、コア2の材料と同種のフェライト、フェライト以外の非導電性の磁性材料、またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などから構成される。天板は、第1鍔部9の天面および第2鍔部10の天面に接着剤を介して接合される。接着剤としては、好ましくは、熱硬化性のあるエポキシ樹脂、または熱硬化性のエポキシ樹脂に粒径0.1~10μmの金属磁性粉またはフェライト粉を加えた複合磁性樹脂が用いられる。接着剤には、熱衝撃耐性向上のため、シリカフィラーまたは無機磁性粉などの無機フィラーが添加されてもよい。接着剤の付与方法には、コア2の鍔部9および10の天面側を接着剤にディップする方法、天板におけるコア2側の面に接着剤をディスペンスまたは印刷する方法、などがある。
【0040】
なお、天板に代えて、樹脂によるコーティングが施されてもよい。また、天板およびコーティングは、それらいずれもがなくてもよい。
【0041】
コイル部品1は、たとえば、以下のようにして製造される。
【0042】
コア2を製造するため、たとえばフェライトの粉末を金型でプレス成形し、得られた成形体を焼成し、焼成後にバレル研磨することによってバリを取る。
【0043】
次いで、得られたコア2に端子電極23~26を設けるため、下地の導体膜を形成し、その後、バレルめっきを施す。
【0044】
次いで、ワイヤ3および4をノズルから吐出し、コア2の巻芯部5に巻回する。ワイヤ3および4は、通常、別々に巻回される。すなわち、第1ワイヤ3をまず巻回し、ヒーターチップによって、その端部を第1端子電極23および第2端子電極24に熱圧着する。次いで、第2ワイヤ4を巻回し、ヒーターチップによって、その端部を第3端子電極25および第4端子電極26に熱圧着する。端子電極23~26に接続されたワイヤ3および4の余分はカット刃により切断除去される。なお、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4を同時に巻回してもよい。
【0045】
その後、必要に応じて、天板を接着剤によってコア2に接着する。このようにして、コイル部品1が完成される。コイル部品1の寸法は、特に限定されるものではないが、たとえば、軸線方向6の寸法が3.2mm、幅方向(
図1において上下方向)の寸法が2.5mm、高さ方向(
図1の紙面に直交する方向)の寸法が2.5mmとされる。
【0046】
図2を主として参照して、
図1に示したコイル部品1における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の巻回状態について説明する。
図2は、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を断面図で示している
図2において、第1ワイヤ3を示す断面には網掛けが施され、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との区別が明確になるようにしている。第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、巻芯部5のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回されている。
【0047】
図2において、第1ワイヤ3の複数のターンの各々と第2ワイヤ4の複数のターンの各々とが線分で結ばれている。このように、線分で結ばれたターン同士は、第1端部7から数えて同じ番目のターンであることを示している。第1層に位置する第1ワイヤ3の各ターンの下に数字が記入されている。これらの数字は、ワイヤ3および4の各ターンが何番目のターンであるかを示すものである。したがって、ワイヤ3および4の一方の各ターンと、これと線分で結ばれたワイヤ3および4の他方の各ターンとは、上述の数字で示される番目のターンであって、互いに同じ番目のターンであるということになる。
図2に示す巻回状態では、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4はともに、ターンT1~T30を有している。なお、
図1では、ワイヤ3および4のターンが省略的に図示されている。したがって、ワイヤ3および4のターン数は、
図1と
図2では一致していない。
【0048】
上述した
図2についての作図方法の説明は、後述する
図4ないし
図7についても当てはまる。
【0049】
前述したように、第1鍔部9および第2鍔部10は、四角柱形状であり、それぞれ、下面11および12、天面、第1側面19および21、ならびに第2側面20および22からなる周面を有している。他方、巻芯部5は、軸線方向6に直交する断面が四角形状であり、その周面には4つの面が形成される。したがって、巻芯部5の周面の4つの面についても、鍔部9および10の下面、天面、第1側面および第2側面の各々と同じ方向に向く面の名称を、同様に「下面」、「天面」、「第1側面」および「第2側面」とする。
【0050】
図2には、巻芯部5の天面30が図示され、天面30上でのワイヤ3および4の断面が示されている。
【0051】
図2を参照して、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、巻芯部5の軸線方向6に沿って配置された、巻回態様が互いに異なる第1巻回域Z1、第2巻回域Z2および第3巻回域Z3においてそれぞれ巻回されている。
【0052】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T16)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T15)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第1巻回部分W1の第2端部8側で第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d1(ターンT16)と、
を有する。
【0053】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第3巻回部分W3(ターンT17~T23)と、
(2-2)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3の第1端部7側で第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d2(ターンT17)と、
(2-3)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT18~T23)と、
を有する。
【0054】
第3巻回域Z3は、
(3-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT24~T30)と、
(3-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第6巻回部分W6(ターンT24~T29)と、
(3-3)第2ワイヤ4が第5巻回部分W5の第2端部8側で第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d3(ターンT30)と、
を有する。
【0055】
第1巻回域Z1では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が形成される。
【0056】
第2巻回域Z2では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に1.5ターンずれる、-1.5ターンずれ域F2が形成される。
【0057】
第3巻回域Z3では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が形成される。
【0058】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0059】
また、第2層に位置するワイヤに注目すると、すなわち、この実施形態では、第2ワイヤ4に注目すると、第2ワイヤ4のターンは、少なくとも第1端部7側において、いずれのワイヤもが接していない非接触ターンT1、T18およびT24を含んでいる。これら非接触ターンT1、T18およびT24の少なくとも1つ、この実施形態では、すべての非接触ターンT1、T18およびT24について、当該非接触ターンT1、T18およびT24の各々が嵌り込む凹部を形成する第1層に位置するワイヤの隣り合う2つのターン間には、それぞれ、隙間S1、S2およびS3が設けられる。
【0060】
より具体的には、第2ワイヤ4の非接触ターンT1が嵌り込む凹部は、第1ワイヤ3のターンT1と第1ワイヤ3のターンT2との間に形成され、これら第1ワイヤ3のターンT1と第1ワイヤ3のターンT2との間に隙間S1が設けられる。
【0061】
第2ワイヤ4の非接触ターンT18が嵌り込む凹部は、第2ワイヤ4のターンT17と第1ワイヤ3のターンT17との間に形成され、これら第2ワイヤ4のターンT17と第1ワイヤ3のターンT17との間に隙間S2が設けられる。
【0062】
第2ワイヤ4の非接触ターンT24が嵌り込む凹部は、第1ワイヤ3のターンT24と第1ワイヤ3のターンT25との間に形成され、これら第1ワイヤ3のターンT24と第1ワイヤ3のターンT25との間に隙間S3が設けられる。
【0063】
隙間S1、S2およびS3の各々の大きさについて、
図3(A)および
図3(B)を参照して説明する。
図3(A)および
図3(B)には、巻芯部5の周面の一部としての天面30が図示されるとともに、第1層に位置するワイヤAと、第2層に位置するワイヤBとが図示されている。ワイヤAとワイヤBとの区別が明確になるようにするため、ワイヤAには網掛けが施されている。また、ここでの説明上、隙間S1、S2およびS3は、互いに区別する必要がないので、共通して、「S」の参照符号を用いる。
【0064】
図3(A)は隙間Sの大きさの下限を示し、
図3(B)は隙間Sの大きさの上限を示している。
図3(A)および
図3(B)において、ワイヤBの非接触ターンがターンb1であり、この非接触ターンb1が嵌り込む凹部を形成するワイヤAの隣り合う2つのターンがターンa1およびa2である。ワイヤAおよびBの直径をDとしている。
【0065】
図3(A)に示した隙間Sの大きさの下限に関して、隙間Sがあっても、隙間Sが小さい場合、ワイヤBの非接触ターンb1がワイヤAのターンa1およびa2の間の凹部に安定して収まらず、第1端部7側へ不用意に段落ちしてしまうことがある。そこで、隙間Sの大きさの下限を求めるため、以下のような実験を実施した。
【0066】
銅からなる直径40μmの線状の中心導体に膜厚8μmの電気絶縁性被膜が形成された、直径Dが56μmのワイヤを備える、試料としてのコイル部品を作製した。1000個の試料について、不用意な段落ちの発生率と隙間Sの大きさとの関係を調査した結果、試料全体の6%において不用意な段落ちが発生していた。より詳細には、不用意な段落ちが発生していた6%の試料のうち、
軸線方向6に測定した隙間Sの大きさが1/9×D未満のとき、3%の試料で不用意な段落ちが発生し、
軸線方向6に測定した隙間Sの大きさが1/9×D以上かつ1/7×D未満のとき、2%の試料で不用意な段落ちが発生し、
軸線方向6に測定した隙間Sの大きさが1/7×D以上かつ1/5×D未満のとき、1%の試料で不用意な段落ちが発生し、
軸線方向6に測定した隙間Sの大きさが1/5×D以上のとき、不用意に段落ちした試料を認められなかった。
【0067】
以上の実験結果から、隙間Sの軸線方向6に測定した大きさの下限を1/5×Dとした。
【0068】
次に、
図3(B)に示した隙間Sの大きさの上限は次のように規定した。ワイヤBの非接触ターンb1がワイヤAのターンa1およびa2の間で不用意に段落ちせず、かつワイヤBのターンb2がターンb1を第1端部7側へ乗り越えずに、ワイヤAのターンa1およびa2の間の凹部に安定して収まる必要がある。そこで、
図3(B)に示すように、ターンa1の中心とターンa2の中心とを結ぶ線分を底辺とし、かつ底辺と斜辺との成す角度が30度の二等辺三角形を描き、当該二等辺三角形の頂点の位置にターンb1の中心が来るようにターンa1とターンa2とを配置したときに形成される、ターンa1とターンa2との隙間Sの大きさを上限とすることが適切である、と本件発明者らが見出した。すなわち、隙間Sの大きさの上限を(√3-1)×Dとすることにより、ターンb2がターンb1側に移動しようとしても、ターンb1が存在することによって、ターンb2は、
図3(B)において点線で示すように、ターンa2の直上までしか移動することができない。このため、ターンb2はターンa2を乗り越えることができず、より安定するターンa2とターンa3との間に収まりやすくすることができる。
【0069】
以上のようにして、軸線方向6に測定した隙間Sの大きさLは、
1/5×D≦L≦(√3-1)×D
と規定される。このような条件を満たせば、第2層に位置するワイヤBの非接触ターンb1の位置ずれを生じにくくすることができる。したがって、
図2に示した隙間S1、S2およびS3の少なくとも1つについて、より好ましくは、すべてについて、1/5×D≦L≦(√3-1)×Dの条件を満たすように構成されることにより、第2層に位置するワイヤ4の位置ずれを生じにくくすることができる。
【0070】
<他の実施形態>
以下、
図4ないし
図7を参照して、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の巻回状態が異なる他の実施形態について説明する。
図4ないし
図7は、
図2に相当する図である。
図4ないし
図7において、
図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0071】
[第2の実施形態]
図4に示す第2の実施形態では、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、巻芯部5の軸線方向6に沿って配置された、巻回態様が互いに異なる第1巻回域Z1および第2巻回域Z2においてそれぞれ巻回されている。
【0072】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T7)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T6)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第1巻回部分W1の第2端部8側で第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d1(ターンT7)と、
(1-4)第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とが軸線方向6に関して交互に配置されながら第1巻回部分W1の第2端部8側で第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第3巻回部分W3(ターンT8~T9)と、
を有する。
【0073】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT10~T16)と、
(2-2)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3の第2端部8側で第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d2(ターンT10)と、
(2-3)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT11~T16)と、
を有する。
【0074】
第1巻回域Z1では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が形成される。
【0075】
第2巻回域Z2では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が形成される。
【0076】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0077】
また、第2ワイヤ4のターンは、少なくとも第1端部7側において、いずれのワイヤもが接していない非接触ターンT1およびT11を含んでいる。第2ワイヤ4の非接触ターンT1が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT1とターンT2との間には隙間S1が設けられ、第2ワイヤ4の非接触ターンT11が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT10とターンT11との間には隙間S2が設けられる。
【0078】
この実施形態においても、隙間S1およびS2は、軸線方向6に測定して、
1/5×D≦L≦(√3-1)×D
で規定される大きさLを有している。
【0079】
[第3の実施形態]
図5に示す第3の実施形態では、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、巻芯部5の軸線方向6に沿って配置された、巻回態様が互いに異なる第1巻回域Z1および第2巻回域Z2においてそれぞれ巻回されている。
【0080】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T16)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T15)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT15→T16)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層において巻回されている第3巻回部分W3(ターンT16)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT16→T17)と、
を有する。
【0081】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT17~T31)と、
(2-2)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT17~T30)と、
(2-3)第2ワイヤ4が第4巻回部分W4の第2端部8側で第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d(ターンT31)と、
を有する。
【0082】
第1巻回域Z1では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が形成される。
【0083】
第2巻回域Z2では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が形成される。
【0084】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0085】
また、第2ワイヤ4のターンは、少なくとも第1端部7側において、いずれのワイヤもが接していない非接触ターンT1およびT15を含んでいる。第2ワイヤ4の非接触ターンT1が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT1とターンT2との間には隙間S1が設けられ、第2ワイヤ4の非接触ターンT15が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT15とターンT16との間には隙間S2が設けられる。
【0086】
この実施形態においても、隙間S1およびS2は、軸線方向6に測定して、
1/5×D≦L≦(√3-1)×D
で規定される大きさLを有している。
【0087】
また、上述した隙間S2を形成する第1ワイヤ3のターンT15およびターンT16間に第2ワイヤ4のターンT15が嵌り込むと、必然の結果として、第2ワイヤ4のターンT15の両側にも隙間S3およびS4が形成される。前述した第3層に位置する第2ワイヤ4のターンT16は、隙間S3に嵌り込み、位置ずれを生じにくくされる。これら隙間S3およびS4は、隙間S1およびS2より若干狭い。
【0088】
なお、特に説明しなかったが、隙間S3およびS4のように、第1層に位置するワイヤのターン間に形成される隙間に由来して必然的に形成される隙間は、
図2および
図4に示した実施形態においても形成されている。
【0089】
[第4の実施形態]
図6に示す第4の実施形態では、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、巻芯部5の軸線方向6に沿って配置された、巻回態様が互いに異なる第1巻回域Z1および第2巻回域Z2においてそれぞれ巻回されている。
【0090】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T17)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T15)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT15→T16)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層において巻回されている第3巻回部分W3(ターンT16~T17)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT17→T18)と、
(1-6)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT18~T23)と、
(1-7)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT18~T23)と、
を有する。
【0091】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第6巻回部分W6(ターンT24~T30)と、
(2-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第7巻回部分W7(ターンT24~T29)と、
(2-3)第2ワイヤ4が第6巻回部分W6の第2端部8側で第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d(ターンT30)と、
を有する。
【0092】
第1巻回域Z1では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1、および第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に1.5ターンずれる、-1.5ターンずれ域F2が形成される。
【0093】
第2巻回域Z2では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が形成される。
【0094】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0095】
また、第2ワイヤ4のターンは、少なくとも第1端部7側において、いずれのワイヤもが接していない非接触ターンT1およびT14を含んでいる。第2ワイヤ4の非接触ターンT1が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT1とターンT2との間には隙間S1が設けられ、第2ワイヤ4の非接触ターンT14が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT14とターンT15との間には隙間S2が設けられる。
【0096】
この実施形態においても、隙間S1およびS2は、軸線方向6に測定して、
1/5×D≦L≦(√3-1)×D
で規定される大きさLを有している。
【0097】
また、上述した隙間S2を形成する第1ワイヤ3のターンT14およびターンT15間に第2ワイヤ4のターンT14が嵌り込むと、必然的に、第2ワイヤ4のターンT14の両側に隙間S3およびS4が形成される。前述した第3層に位置する第2ワイヤ4のターンT16およびT17は、それぞれ、隙間S3およびS4に嵌り込み、位置ずれを生じにくくされる。これら隙間S3およびS4は、隙間S1およびS2より若干狭い。
【0098】
以上説明した第4の実施形態と前述した第3実施形態とは、第3層に位置する第2ワイヤ4のターン数が異なっている。このことからわかるように、第3層に位置するワイヤのターン数は、必要に応じて、任意に変更することができる。
【0099】
[第5の実施形態]
図7に示す第5の実施形態では、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、巻芯部5の軸線方向6に沿って配置された、巻回態様が互いに異なる第1巻回域Z1、第2巻回域Z2および第3巻回域Z3においてそれぞれ巻回されている。
【0100】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T9)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T5)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT5→T6)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層において巻回されている第3巻回部分W3(ターンT6)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT6→T7)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において巻回されている第4巻回部分W4(ターンT7~T9)と、
を有する。
【0101】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT10~T19)と、
(2-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第6巻回部分W6(ターンT10~T15)と、
(2-3)第2ワイヤ4が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT15→T16)と、
(2-4)第2ワイヤ4が第3転位部分R3に連なり第3層において巻回されている第7巻回部分W7(ターンT16~T17)と、
(2-5)第2ワイヤ4が第7巻回部分W7から第2層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT17→T18)と、
(2-6)第2ワイヤ4が第4転位部分R4に連なり第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第8巻回部分W8(ターンT18~T19)と、
を有する。
【0102】
第3巻回域Z3は、
(3-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第9巻回部分W9(ターンT20~T28)と、
(3-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第10巻回部分W10(ターンT20~T24)と、
(3-3)第2ワイヤ4が第10巻回部分W10の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第5転位部分R5(ターンT24→T25)と、
(3-4)第2ワイヤ4が第5転位部分R5に連なり第3層において巻回されている第11巻回部分W11(ターンT25)と、
(3-5)第2ワイヤ4が第11巻回部分W11から第2層の位置まで導かれる第6転位部分R6(ターンT25→T26)と、
(3-6)第2ワイヤ4が第6転位部分R6に連なり第2層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第12巻回部分W12(ターンT26~T28)と、
を有する。
【0103】
第1巻回域Z1では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1、および第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が形成される。
【0104】
第2巻回域Z2では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1、および第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に1.5ターンずれる、-1.5ターンずれ域F2が形成される。
【0105】
第3巻回域Z3では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1、および第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が形成される。
【0106】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0107】
また、第2ワイヤ4のターンは、少なくとも第1端部7側において、いずれのワイヤもが接していない非接触ターンT1、T5、T10、T14、T20およびT24を含んでいる。
【0108】
第2ワイヤ4の非接触ターンT1が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT1とターンT2との間には隙間S1が設けられる。
【0109】
第2ワイヤ4の非接触ターンT5が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT5とターンT6との間には隙間S2が設けられる。
【0110】
第2ワイヤ4の非接触ターンT10が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT10とターンT11との間には隙間S3が設けられる。
【0111】
第2ワイヤ4の非接触ターンT14が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT14とターンT15との間には隙間S4が設けられる。
【0112】
第2ワイヤ4の非接触ターンT20が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT20とターンT21との間には隙間S5が設けられる。
【0113】
第2ワイヤ4の非接触ターンT24が嵌り込む凹部を形成する第1ワイヤ3のターンT24とターンT25との間には隙間S6が設けられる。
【0114】
この実施形態においても、隙間S1~S6は、軸線方向6に測定して、
1/5×D≦L≦(√3-1)×D
で規定される大きさLを有している。
【0115】
上述した第1層における隙間S1~S6の形成により、必然的に、第2層においても、対応する位置に隙間が形成される。第3層に位置する第2ワイヤ4のターンT6、T16、T17およびT25は、それぞれ、第2層において必然的に形成された隙間S7、S8、S9およびS10に嵌り込み、位置ずれを生じにくくされる。これら隙間S7~S10は、隙間S1およびS2より若干狭い。
【0116】
上述した第5の実施形態では、複数の巻回域Z1~Z3の各々において、第3層に位置される第2ワイヤ4の巻回数が互いに同じではない。このことからわかるように、第3層に位置されるワイヤの巻回数は、巻回域ごとに異なっていてもよい。
【0117】
以上説明した第1ないし第5の実施形態のうち、第3ないし第5の実施形態では、第1層に位置するワイヤの複数のターン間の隙間のうち、1/5×D≦L≦(√3-1)×Dで規定される大きさLの隙間が最も大きい。
【0118】
また、第3ないし第5の実施形態では、第1層に位置するワイヤの複数のターンは、1/5×D≦L≦(√3-1)×Dで規定される大きさLの隙間を形成する隣り合う2つのターンの間を除いて、隣り合うものの間で互いに接触している。
【0119】
また、第3ないし第5の実施形態では、第2層における非接触ターンと当該非接触ターンの第1端部側および第2端部側にそれぞれ隣り合って位置するターンとの間には、第2の隙間が形成される。
【0120】
なお、第2層に位置するワイヤの非接触ターンのすべてが、第1層に位置するワイヤのターンであって、1/5×D≦L≦(√3-1)×Dで規定される大きさLを有する隙間を形成するターン間に嵌り込んでいなくてもよい。
【0121】
また、図示した実施形態では、第1ワイヤ3が第1層において巻回され、第2ワイヤ4の大部分が第2層において巻回されたが、巻芯部5の軸線方向6に沿って配置された複数の巻回域の間で第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とが入れ替わってもよい。
【0122】
以上、この発明を、コモンモードチョークコイルを構成するコイル部品に係る実施形態に関連して説明したが、この発明は、その他、たとえば巻線型チップトランスにも適用することができる。
【0123】
また、図示した各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【0124】
この発明には、以下のような実施態様がある。
【0125】
<1>
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含む、コアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって前記第1端部から前記第2端部に向かって螺旋状に巻回された、直径Dの円形の断面を有する第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの一方は、前記巻芯部の周面に最も近い層である第1層を構成する状態で巻回される部分を含み、
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの他方は、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層である第2層を構成する状態で巻回される部分を含み、
第1層に位置するワイヤのターンと第2層に位置するワイヤのターンとの位置関係に関して、前記第1端部側から数えて、第2層に位置するワイヤのターンがこれと同一番目の第1層に位置するワイヤのターンより前記第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在していて、
第2層に位置するワイヤのターンは、少なくとも前記第1端部側において、第2層に位置するいずれのワイヤもが接していない非接触ターンを含み、前記非接触ターンの少なくとも1つについて、当該非接触ターンが嵌り込む前記凹部を形成する第1層に位置するワイヤの隣り合う2つのターン間の隙間は、前記軸線方向に測定して、
1/5×D≦L≦(√3-1)×D
で規定される大きさLを有する、
コイル部品。
【0126】
<2>
第1層に位置するワイヤの複数のターン間の隙間のうち、前記大きさLの隙間が最も大きい、<1>に記載のコイル部品。
【0127】
<3>
第1層に位置するワイヤの複数のターンは、前記大きさLの隙間を形成する隣り合う2つのターンの間を除いて、隣り合うものの間で互いに接触している、<2>に記載のコイル部品。
【0128】
<4>
前記大きさLの隙間を有する2つのターン間に嵌り込む前記非接触ターンは、第2層に位置するワイヤの最も前記第1端部側にあるターンである、<1>ないし<3>のいずれかに記載のコイル部品。
【0129】
<5>
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤは、前記巻芯部の前記軸線方向に沿って配置された、巻回態様が互いに異なる複数の巻回域においてそれぞれ巻回されていて、前記大きさLの隙間を有する2つのターン間に嵌り込む前記非接触ターンは、各前記巻回域における第2層に位置するワイヤの最も前記第1端部側にあるターンである、<1>ないし<4>のいずれかに記載のコイル部品。
【0130】
<6>
前記非接触ターンが嵌り込む前記凹部を形成する第1層に位置するワイヤの隣り合う2つのターンは、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤのいずれか一方が形成するターンである、<1>ないし<5>のいずれかに記載のコイル部品。
【0131】
<7>
前記非接触ターンが嵌り込む前記凹部を形成する第1層に位置するワイヤの隣り合う2つのターンのいずれか一方は、前記第1ワイヤが形成するターンであり、いずれか他方は、前記第2ワイヤが形成するターンである、<1>ないし<5>のいずれかに記載のコイル部品。
【0132】
<8>
第2層における前記非接触ターンと当該非接触ターンの前記第1端部側および前記第2端部側にそれぞれ隣り合って位置するターンとの間には、第2の隙間が形成される、<1>ないし<7>のいずれかに記載のコイル部品。
【0133】
<9>
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤのいずれかは、第2層に位置するワイヤの巻回範囲の一部において、第2層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される第2の凹部に嵌り込みながら第2層の外周側に巻回される層である第3層を構成する状態で巻回される部分を含み、
第3層に位置するワイヤの少なくとも1つのターンは、前記第2の隙間に嵌り込む、
<8>に記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0134】
1 コイル部品
2 コア
3 第1ワイヤ
4 第2ワイヤ
5 巻芯部
6 軸線方向
7 第1端部
8 第2端部
34 第2部分
35 第4部分
Z1,Z2,Z3 巻回域
S1~S10 隙間
F1 +0.5ターンずれ域
F2 -1.5ターンずれ域
F3 -0.5ターンずれ域