(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107796
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240802BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011901
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【弁理士】
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 滋人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良太
(72)【発明者】
【氏名】中本 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】宮本 昌史
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043BA01
5E070AA01
5E070AB10
5E070BA03
5E070CA13
(57)【要約】
【課題】巻芯部のまわりに複数層を形成する状態で巻回されるワイヤの位置ずれを生じにくくした、コイル部品を提供する。
【解決手段】巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1および第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1では、第1ワイヤ3が第1層を構成する状態で巻回される。第2ワイヤ4は、第1ワイヤ3の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層を構成する状態で巻回され、次いで、第2端部側の端部から第1端部側に戻されて第2層の外周側まで導かれ、次いで、第3層を構成する状態で巻回され、次いで、第1層の外周側の第2層の位置まで導かれ、次いで、第1層の第1ワイヤ3の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層を構成する状態で巻回される。第2巻回域Z2では、第1巻回域Z1における第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記巻芯部のまわりに巻回される前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが形成する複数層のうち、前記巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層を第2層、第2層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層の外周側に巻回される層を第3層とそれぞれ表現したとき、
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの巻回状態が互いに異なる、少なくとも第1巻回域および第2巻回域を含む複数の巻回域が前記軸線方向に沿って配置されており、
前記第1巻回域は、
(1-1)前記第1ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第1巻回部分と、
(1-2)前記第2ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第1巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分と、
(1-3)前記第2ワイヤが前記第2巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分と、
(1-4)前記第2ワイヤが前記第1転位部分に連なり第3層においてNターン(Nは自然数)巻回されている第3巻回部分と、
(1-5)前記第2ワイヤが前記第3巻回部分から第2層の位置まで導かれる第2転位部分と、
(1-6)前記第2ワイヤが前記第2転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第4巻回部分と、
を有し、
前記第1巻回域と前記第2巻回域との間で、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは各々が位置する層を入れ替え、
前記第2巻回域は、
(2-1)前記第2ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第5巻回部分と、
(2-2)前記第1ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第5巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分と、
(2-3)前記第1ワイヤが前記第6巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分と、
(2-4)前記第1ワイヤが前記第3転位部分に連なり第3層においてMターン(Mは自然数)巻回されている第7巻回部分と、
(2-5)前記第1ワイヤが前記第7巻回部分から第2層の位置まで導かれる第4転位部分と、
(2-6)前記第1ワイヤが前記第4転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第8巻回部分と、
を有し、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間のずれ方向に関して、前記第2ワイヤのターンがこれと同一番目の前記第1ワイヤのターンより前記第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、
前記第1巻回域および前記第2巻回域の各々には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在している、
コイル部品。
【請求項2】
前記第2巻回部分と前記第4巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記正方向ずれ域が存在し、
前記第2巻回部分と前記第4巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記負方向ずれ域が存在し、
前記第6巻回部分と前記第8巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記負方向ずれ域が存在し、
前記第6巻回部分と前記第8巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記正方向ずれ域が存在している、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第2巻回部分と前記第4巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域が存在し、
前記第2巻回部分と前記第4巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域が存在し、
前記第6巻回部分と前記第8巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域が存在し、
前記第6巻回部分と前記第8巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に(M-0.5)ターンずれる、+(M-0.5)ターンずれ域が存在している、
請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第3巻回部分において前記第2ワイヤが前記巻芯部のまわりで巻回されるターン数と前記第8巻回部分において前記第1ワイヤが前記巻芯部のまわりで巻回されるターン数とは互いに異なる、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記巻芯部のまわりに巻回される前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが形成する複数層のうち、前記巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層を第2層、第2層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層の外周側に巻回される層を第3層とそれぞれ表現したとき、
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの巻回状態が互いに異なる、少なくとも第1巻回域および第2巻回域を含む複数の巻回域が前記軸線方向に沿って配置されており、
前記第1巻回域は、
(1-1)前記第1ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第1巻回部分と、
(1-2)前記第2ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第1巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分と、
(1-3)前記第2ワイヤが前記第2巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分と、
(1-4)前記第2ワイヤが前記第1転位部分に連なり第3層においてNターン(Nは自然数)巻回されている第3巻回部分と、
(1-5)前記第2ワイヤが前記第3巻回部分から第1層の位置まで導かれる第2転位部分と、
(1-6)前記第2ワイヤが前記第2転位部分に連なり第1層において前記第2端部に向かって巻回されている第4巻回部分と、
(1-7)前記第1ワイヤが前記第1巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第3転位部分と、
(1-8)前記第1ワイヤが前記第3転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第5巻回部分と、
を有し、
前記第1巻回域と前記第2巻回域との間で、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは各々が位置する層を入れ替え、
前記第2巻回域は、
(2-1)前記第2ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第6巻回部分と、
(2-2)前記第1ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第6巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第7巻回部分と、
(2-3)前記第1ワイヤが前記第7巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第4転位部分と、
(2-4)前記第1ワイヤが前記第4転位部分に連なり第3層においてMターン(Mは自然数)巻回されている第8巻回部分と、
(2-5)前記第1ワイヤが前記第8巻回部分から第1層の位置まで導かれる第5転位部分と、
(2-6)前記第1ワイヤが前記第5転位部分に連なり第1層において前記第2端部に向かって巻回されている第9巻回部分と、
(2-7)前記第2ワイヤが前記第6巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第6転位部分と、
(2-8)前記第2ワイヤが前記第6転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第10巻回部分と、
を有し、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間のずれ方向に関して、前記第2ワイヤのターンがこれと同一番目の前記第1ワイヤのターンより前記第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、
前記第1巻回域および前記第2巻回域の各々には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在している、
コイル部品。
【請求項6】
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記巻芯部のまわりに巻回される前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが形成する複数層のうち、前記巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層を第2層、第2層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層の外周側に巻回される層を第3層とそれぞれ表現したとき、
少なくとも第1巻回域および第2巻回域を含む複数の巻回域が前記軸線方向に沿って配置されており、
前記第1巻回域は、
(1-1)前記第1ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第1巻回部分と、
(1-2)前記第2ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第1巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分と、
(1-3)前記第2ワイヤが前記第2巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分と、
(1-4)前記第2ワイヤが前記第1転位部分に連なり第3層においてNターン(Nは自然数)巻回されている第3巻回部分と、
(1-5)前記第2ワイヤが前記第3巻回部分から第1層の位置まで導かれる第2転位部分と、
(1-6)前記第2ワイヤが前記第2転位部分に連なり第1層において前記第2端部に向かって巻回されている第4巻回部分と、
(1-7)前記第1ワイヤが前記第1巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第3転位部分と、
(1-8)前記第1ワイヤが前記第3転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第5巻回部分と、
を有し、
前記第1ワイヤが位置する層は、前記第1巻回部分と前記第5巻回部分との間で入れ替わり、前記第2ワイヤが位置する層は、前記第2巻回部分と前記第4巻回部分との間で入れ替わり、
前記第2巻回域は、
(2-1)前記第1ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第6巻回部分と、
(2-2)前記第2ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第6巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第7巻回部分と、
(2-3)前記第2ワイヤが前記第7巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第4転位部分と、
(2-4)前記第2ワイヤが前記第4転位部分に連なり第3層においてMターン(Mは自然数)巻回されている第8巻回部分と、
(2-5)前記第2ワイヤが前記第8巻回部分から第1層の位置まで導かれる第5転位部分と、
(2-6)前記第2ワイヤが前記第5転位部分に連なり第1層において前記第2端部に向かって巻回されている第9巻回部分と、
(2-7)前記第1ワイヤが前記第6巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第6転位部分と、
(2-8)前記第1ワイヤが前記第6転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第10巻回部分と、
を有し、
前記第1ワイヤが位置する層は、前記第6巻回部分と前記第10巻回部分との間で入れ替わり、前記第2ワイヤが位置する層は、前記第7巻回部分と前記第9巻回部分との間で入れ替わり、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間のずれ方向に関して、前記第2ワイヤのターンがこれと同一番目の前記第1ワイヤのターンより前記第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、
前記第1巻回域および前記第2巻回域の各々には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在している、
コイル部品。
【請求項7】
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記負方向ずれ域が存在し、
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記正方向ずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記正方向ずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記負正方向ずれ域が存在している、
請求項5または6に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域が存在し、
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に(N-0.5)ターンずれる、+(N-0.5)ターンずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域が存在している、
請求項7に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域が存在し、
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に(N+0.5)ターンずれる、+(N+0.5)ターンずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に(M+0.5)ターンずれる、-(M+0.5)ターンずれ域が存在している、
請求項7に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第3巻回部分において前記第2ワイヤが前記巻芯部のまわりで巻回されるターン数と前記第8巻回部分において前記第1ワイヤが前記巻芯部のまわりで巻回されるターン数とは互いに異なる、請求項5または6に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1巻回部分の前記第1端部側の端部において、前記第2ワイヤは、前記第1ワイヤが位置する第1層に並んで前記巻芯部の周面に接する意図的な段落ち部分を有する、請求項1、5または6に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル部品に関するもので、特に、巻芯部のまわりに複数層を形成する状態で2本のワイヤを巻回した構造を有する巻線型のコイル部品におけるワイヤの巻回態様についての改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件において、巻芯部のまわりに巻回される第1ワイヤおよび第2ワイヤの各々について、第n番目のターンを「ターンTn」と表現する(nは自然数)。
【0003】
第1ワイヤと第2ワイヤとの間のずれ量に関して、たとえば、一方のワイヤのターンTnとターンTn+1との間の凹部に、他方のワイヤのターンTnが嵌り込む場合には、ずれ量を「0.5ターン」とする。一方のワイヤのターンTnと第n+1ターンとの間の凹部に、他方のワイヤのターンTn+2ターンが嵌り込む場合、ずれ量を「1.5ターン」とする。一方のワイヤのターンTnと第n+1ターンとの間の凹部に、他方のワイヤのターンTn+3ターンが嵌り込む場合、ずれ量を「2.5ターン」とする。
【0004】
第1ワイヤと第2ワイヤとの間のずれ方向に関して、第2ワイヤのターンがこれと同一番目の第1ワイヤのターンより巻回方向の終端側にある場合には、正方向のずれとし、ずれ量を表わす数字の前に「+」を付し、逆の場合には、負方向のずれとし、ずれ量を表わす数字の前に「-」を付す。
【0005】
なお、ワイヤのターンを数えるとき、巻芯部の第1端部側から数えるか、逆に第2端部側から数えるか、は問わない。ターン数を数える方向を逆にしたとしても、本質的には同じ構成であると言える。
【0006】
また、本件において、巻芯部のまわりに巻回されるワイヤが形成する複数層のうち、巻芯部の周面に最も近い層、すなわち巻芯部の周面に少なくとも一部が接する層を第1層、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層を第2層、第2層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層の外周側に巻回される層を第3層とそれぞれ表現する。なお、巻芯部の周面に最も近い層である第1層が巻芯部の周面に少なくとも一部が接するとしたのは、ワイヤが全長にわたって巻芯部の周面に接することなく、たとえば断面角形の巻芯部の稜線部分にのみワイヤが接し、他の部分は巻芯部の周面から若干浮いていることが通常であるためである。
【0007】
この発明が向けられるコイル部品の代表例として、コモンモードチョークコイルがある。
【0008】
この発明にとって興味あるコモンモードチョークコイルが、たとえば、特許第6327397号公報(特許文献1)に記載されている。
図15(A)は、特許文献1に記載されたコモンモードチョークコイルとなるコイル部品80に備える2本のワイヤ81および82の巻回状態の特徴的構成を模式的に示す断面図である。
図15(A)は、特許文献1における
図2、
図7または
図8に相当する。
図15(B)は、後述する課題を説明するためのものである。
【0009】
図15(A)および(B)において、第1ワイヤ81を示す断面には網掛けが施され、第1ワイヤ81と第2ワイヤ82との区別が明確になるようにしている。第1ワイヤ81および第2ワイヤ82は、巻芯部83の第1端部84から逆の第2端部85に向かって、巻芯部83のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回される。第1ワイヤ81は、巻芯部83の周面に接する第1層を構成する状態で巻回され、第2ワイヤ82は、その大部分が第1ワイヤ81の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込ませながら第1層の外側の第2層を構成する状態で巻回される。
【0010】
前述したように、第1層の外側の第2層を構成する状態で巻回されるのが、第2ワイヤ82の大部分としたのは、第2ワイヤ82の一部のターン、たとえばターンTmおよびターンTm+1(mは自然数)については、巻芯部83の周面に接するように巻回しているからである。
【0011】
また、
図15(A)および(B)において、第1ワイヤ81の複数のターンの各々と第2ワイヤ82の複数のターンの各々とが線分で結ばれている。このように、線分で結ばれたターン同士は、第1端部84から数えて同じ番目のターンであることを示している。
【0012】
特許文献1に記載のコイル部品80は、コモンモードチョークコイルにおけるモード変換特性を低減することを目的として開発されたもので、
図15(A)に示した実施形態は、以下のような特徴を有している。
【0013】
すなわち、第1ワイヤ81および第2ワイヤ82の各々の第1端部84側から数えたターン数nで表現したとき、コイル部品80は、
(1)第1ワイヤ81のターンTnとターンTn+1との間の凹部に、第2ワイヤ82のターンTnが嵌り込むことによって、第1ワイヤと第2ワイヤとの間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域87と、
(2)第1ワイヤ81のターンTnとターンTn+1との間の凹部に、第2ワイヤ82のターンTn+2が嵌り込むことによって、第1ワイヤ81と第2ワイヤ82との間で負方向に1.5ターンずれる、-1.5ターンずれ域88と、
(3)上記+0.5ターンずれ域87から上記-1.5ターンずれ域88へと移行する遷移域89と、
を有している。
【0014】
そして、上記0.5ターンずれ域87に位置する第2ワイヤ82のターン数の和は、上記1.5ターンずれ域88に位置する第2ワイヤ82のターン数の和の2倍以上かつ5倍以下である。
【0015】
このような構成によって、第1ワイヤ81および第2ワイヤ82間で発生する容量を、第1ワイヤ81および第2ワイヤ82全体でバランスさせることができ、第1ワイヤ81および第2ワイヤ82間で生じる浮遊容量の影響を低減できる。したがって、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図15(A)に示す巻回状態において、第2ワイヤ82に注目すると、-1.5ターンずれ域88の始端にあるターンTm+2については、その第1端部84側にいずれのワイヤもが接していないので、ターンTm+2は、
図15(A)において矢印90で示す方向にずれやすい。また、遷移域89の終端にあるターンTm+1についても、その第1端部84側にワイヤが接していない。その結果、
図15(B)に示すように、ターンTm+2が、ターンTm+1を乗り越えて、ターンTmとターンTm+1との間に落ち込むことがある。
図15(B)では図示していないが、ターンTmとターンTm+1との間隔がより広い場合には、ターンTm+2が巻芯部83の周面に接する状態となることもある。
【0018】
上述したようなターンTm+2の不用意な段落ち、すなわち、第2層に位置させるべきターンTm+2が第2層から第1層方向に不用意に位置ずれしてしまうことは、コイル部品80の完成品においても生じ得るが、第2ワイヤ82を第1端部84から第2端部85に向かって巻回する工程において生じると、後続するターンTm+3、…が順次位置ずれを起こす。そのため、ずれ域88は、-1.5ターンずれ域ではなくなり、たとえば-2.5ターンずれ域となってしまう。その結果、第1ワイヤ81と第2ワイヤ82との間で発生する容量のバランスが崩れ、モード変換特性が悪化することがある。
【0019】
同種の位置ずれの問題は、コモンモードチョークコイルに限らず、たとえば、同じく第1ワイヤおよび第2ワイヤを備える巻線型チップトランスなどにおいても遭遇し得る。
【0020】
そこで、この発明の目的は、巻芯部のまわりに複数層を形成する状態で巻回されるワイヤの位置ずれを生じにくくした、コイル部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この発明は、軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、を備える、コイル部品に向けられる。
【0022】
以下において、巻芯部のまわりに巻回されるワイヤが形成する複数層のうち、巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層を第2層、第2層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層の外周側に巻回される層を第3層とそれぞれ表現する。
【0023】
この発明には、第1ワイヤおよび第2ワイヤの巻回状態の微妙な差により、第1の局面、第2の局面および第3の局面がある。後述する第1、第2、第4ないし第10の実施形態は第1の局面の特徴を有し、第3および第11の実施形態は第2の局面の特徴を有し、第12の実施形態は第3の局面の特徴を有している。
【0024】
第1の局面は、以下のような構成を備えることを特徴としている。
【0025】
第1ワイヤおよび第2ワイヤの巻回状態が互いに異なる、少なくとも第1巻回域および第2巻回域を含む複数の巻回域が軸線方向に沿って配置されている。
【0026】
第1巻回域は、
(1-1)第1ワイヤが第1層において第1端部から第2端部に向かって巻回されている第1巻回部分と、
(1-2)第2ワイヤが第2層において第1端部から第2端部に向かって第1巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分と、
(1-3)第2ワイヤが第2巻回部分の第2端部側の端部から第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分と、
(1-4)第2ワイヤが第1転位部分に連なり第3層においてNターン(Nは自然数)巻回されている第3巻回部分と、
(1-5)第2ワイヤが第3巻回部分から第2層の位置まで導かれる第2転位部分と、
(1-6)第2ワイヤが第2転位部分に連なり第2層において第2端部に向かって巻回されている第4巻回部分と、
を有する。
【0027】
第1巻回域と第2巻回域との間で、第1ワイヤと第2ワイヤとは各々が位置する層を入れ替える。
【0028】
第2巻回域は、
(2-1)第2ワイヤが第1層において第1端部から第2端部に向かって巻回されている第5巻回部分と、
(2-2)第1ワイヤが第2層において第1端部から第2端部に向かって第5巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分と、
(2-3)第1ワイヤが第6巻回部分の第2端部側の端部から第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分と、
(2-4)第1ワイヤが第3転位部分に連なり第3層においてMターン(Mは自然数)巻回されている第7巻回部分と、
(2-5)第1ワイヤが第7巻回部分から第2層の位置まで導かれる第4転位部分と、
(2-6)第1ワイヤが第4転位部分に連なり第2層において第2端部に向かって巻回されている第8巻回部分と、
を有する。
【0029】
第1ワイヤと第2ワイヤとの間のずれ方向に関して、第2ワイヤのターンがこれと同一番目の第1ワイヤのターンより第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、第1巻回域および第2巻回域の各々には、第1ワイヤと第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在している。
【0030】
第2の局面では、以下のような構成を備えることを特徴としている。
【0031】
第1ワイヤおよび第2ワイヤの巻回状態が互いに異なる、少なくとも第1巻回域および第2巻回域を含む複数の巻回域が軸線方向に沿って配置されている。
【0032】
第1巻回域は、
(1-1)第1ワイヤが第1層において第1端部から第2端部に向かって巻回されている第1巻回部分と、
(1-2)第2ワイヤが第2層において第1端部から第2端部に向かって第1巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分と、
(1-3)第2ワイヤが第2巻回部分の第2端部側の端部から第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分と、
(1-4)第2ワイヤが第1転位部分に連なり第3層においてNターン(Nは自然数)巻回されている第3巻回部分と、
(1-5)第2ワイヤが第3巻回部分から第1層の位置まで導かれる第2転位部分と、
(1-6)第2ワイヤが第2転位部分に連なり第1層において第2端部に向かって巻回されている第4巻回部分と、
(1-7)第1ワイヤが第1巻回部分の第2端部側の端部から第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第3転位部分と、
(1-8)第1ワイヤが第3転位部分に連なり第2層において第2端部に向かって巻回されている第5巻回部分と、
を有する。
【0033】
第1巻回域と第2巻回域との間で、第1ワイヤと第2ワイヤとは各々が位置する層を入れ替える。
【0034】
第2巻回域は、
(2-1)第2ワイヤが第1層において第1端部から第2端部に向かって巻回されている第6巻回部分と、
(2-2)第1ワイヤが第2層において第1端部から第2端部に向かって第6巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第7巻回部分と、
(2-3)第1ワイヤが第7巻回部分の第2端部側の端部から第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第4転位部分と、
(2-4)第1ワイヤが第4転位部分に連なり第3層においてMターン(Mは自然数)巻回されている第8巻回部分と、
(2-5)第1ワイヤが第8巻回部分から第1層の位置まで導かれる第5転位部分と、
(2-6)第1ワイヤが第5転位部分に連なり第1層において第2端部に向かって巻回されている第9巻回部分と、
(2-7)第2ワイヤが第6巻回部分の第2端部側の端部から第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第6転位部分と、
(2-8)第2ワイヤが第6転位部分に連なり第2層において第2端部に向かって巻回されている第10巻回部分と、
を有する。
【0035】
第1ワイヤと第2ワイヤとの間のずれ方向に関して、第2ワイヤのターンがこれと同一番目の第1ワイヤのターンより第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、第1巻回域および第2巻回域の各々には、第1ワイヤと第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在している。
【0036】
なお、第2ワイヤが、第2転位部分において、第3巻回部分から第2層ではなく第1層の位置まで導かれる点、および、第1ワイヤが、第4転位部分において、第7巻回部分から第2層ではなく第1層の位置まで導かれる点で、第2局面は第1局面とは異なっている。
【0037】
第3の局面では、以下のような構成を備えることを特徴としている。
【0038】
少なくとも第1巻回域および第2巻回域を含む複数の巻回域が軸線方向に沿って配置されている。
【0039】
第1巻回域は、
(1-1)第1ワイヤが第1層において第1端部から第2端部に向かって巻回されている第1巻回部分と、
(1-2)第2ワイヤが第2層において第1端部から第2端部に向かって第1巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分と、
(1-3)第2ワイヤが第2巻回部分の第2端部側の端部から第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分と、
(1-4)第2ワイヤが第1転位部分に連なり第3層においてNターン(Nは自然数)巻回されている第3巻回部分と、
(1-5)第2ワイヤが第3巻回部分から第1層の位置まで導かれる第2転位部分と、
(1-6)第2ワイヤが第2転位部分に連なり第1層において第2端部に向かって巻回されている第4巻回部分と、
(1-7)第1ワイヤが第1巻回部分の第2端部側の端部から第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第3転位部分と、
(1-8)第1ワイヤが第3転位部分に連なり第2層において第2端部に向かって巻回されている第5巻回部分と、
を有する。
【0040】
第1巻回域において、第1ワイヤが位置する層は、第1巻回部分と第5巻回部分との間で入れ替わり、第2ワイヤが位置する層は、第2巻回部分と第4巻回部分との間で入れ替わる。
【0041】
第2巻回域は、
(2-1)第1ワイヤが第1層において第1端部から第2端部に向かって巻回されている第6巻回部分と、
(2-2)第2ワイヤが第2層において第1端部から第2端部に向かって第6巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第7巻回部分と、
(2-3)第2ワイヤが第7巻回部分の第2端部側の端部から第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第4転位部分と、
(2-4)第2ワイヤが第4転位部分に連なり第3層においてMターン(Mは自然数)巻回されている第8巻回部分と、
(2-5)第2ワイヤが第8巻回部分から第1層の位置まで導かれる第5転位部分と、
(2-6)第2ワイヤが第5転位部分に連なり第1層において第2端部に向かって巻回されている第9巻回部分と、
(2-7)第1ワイヤが第6巻回部分の第2端部側の端部から第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第6転位部分と、
(2-8)第1ワイヤが第6転位部分に連なり第2層において第2端部に向かって巻回されている第10巻回部分と、
を有する。
【0042】
第2巻回域において、第1ワイヤが位置する層は、第6巻回部分と第10巻回部分との間で入れ替わり、第2ワイヤが位置する層は、第7巻回部分と第9巻回部分との間で入れ替わる。
【0043】
第1ワイヤと第2ワイヤとの間のずれ方向に関して、第2ワイヤのターンがこれと同一番目の第1ワイヤのターンより第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、
第1巻回域および第2巻回域の各々には、第1ワイヤと第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在している。
【0044】
なお、第1局面および第2局面では、第1巻回域と第2巻回域との間で、第1ワイヤと第2ワイヤとは各々が位置する層を入れ替えるのに対し、第3局面では、第1巻回域および第2巻回域の各々内で、第1ワイヤと第2ワイヤとは各々が位置する層を入れ替える点で異なっている。
コイル部品。
【発明の効果】
【0045】
この発明によれば、不用意な段落ちが懸念される第2層に位置するワイヤが、第2端部側の端部から第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれ、第3層においてNターンまたはMターン巻回されるので、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0046】
また、第1巻回域および第2巻回域の各々には、第1ワイヤと第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在しているので、第1ワイヤと第2ワイヤとの間で生じる浮遊容量の影響を低減できる。
【0047】
また、この発明によれば、第1層に位置するワイヤと第2層に位置するワイヤとが、第1ワイヤと第2ワイヤとの間で入れ替わるので、第1ワイヤの長さと第2ワイヤの長さとの差を小さくすることができる。
【0048】
これらのことから、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】この発明の第1の実施形態によるコイル部品1の外観図であって、実装基板側に向けられる面を示している。
【
図2】
図1に示したコイル部品1における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の巻回状態を模式的に示すもので、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5を備えるコア2の一部を示す、
図3の線A-Aに沿う断面図である。
【
図3】
図1に示したコイル部品1における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の周面を模式的に示す展開図である。
【
図4】この発明の第2の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図5】この発明の第3の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図6】この発明の第4の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図7】この発明の第5の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図8】この発明の第6の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図9】この発明の第7の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図10】この発明の第8の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図11】この発明の第9の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図12】この発明の第10の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図13】この発明の第11の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図14】この発明の第12の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
【
図15】特許文献1に記載されたコイル部品80に備える2本のワイヤ81および82の巻回状態を模式的に示す断面図であり、(A)は2本のワイヤ81および82の巻回状態の特徴的構成を示し、(B)は、この発明が解決しようとする課題を説明するためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[第1の実施形態]
図1には、この発明の第1の実施形態によるコイル部品1における、実装基板(図示しない。)側に向けられる面が示されている。コイル部品1は、コモンモードチョークコイルとなるものである。
【0051】
コイル部品1は、ドラム状のコア2と、それぞれインダクタを構成する第1ワイヤ3および第2ワイヤ4と、を備えている。コア2は、非導電性材料、より具体的には、Ni-Zn系などのフェライト、またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などから構成される。
【0052】
コア2は、巻芯部5ならびに巻芯部5の軸線方向6における互いに逆の第1端部7および第2端部8からそれぞれ張り出して設けられた第1鍔部9および第2鍔部10を備える。巻芯部5の、軸線方向6に直交する断面は四角形状である。なお、断面四角形状の巻芯部5の稜線部分は面取りされてもよく、あるいは、巻芯部5の断面形状は、六角形状などの他の多角形状、円状、もしくは楕円状、またはこれらを適宜組み合わせた形状であってもよい。
【0053】
第1鍔部9および第2鍔部10は、四角柱形状である。第1鍔部9は、実装基板側に向く下面11と、下面11とは逆方向に向く天面13(
図2参照)と、巻芯部5の第1端部7を位置させる内側端面15と、内側端面15の反対側であって外側を向く外側端面17と、下面11および天面13間ならびに内側端面15および外側端面17間を結ぶ第1側面19および第2側面20と、を有する。同様に、第2鍔部10は、実装基板側に向く下面12と、下面12とは逆方向に向く天面14(
図2参照)と、巻芯部5の第2端部8を位置させる内側端面16と、内側端面16の反対側であって外側を向く外側端面18と、下面12および天面14間ならびに内側端面16および外側端面18間を結ぶ第1側面21および第2側面22と、を有する。第1鍔部9および第2鍔部10の稜線部分は面取りされてもよい。
【0054】
コイル部品は4個以上の端子電極を備える。この実施形態では、コイル部品1は4個の端子電極23~26を備える。第1鍔部9の下面11には、第1端子電極23および第3端子電極25が設けられ、第2鍔部10の下面12には、第2端子電極24および第4端子電極26が設けられる。図示しないが、第1端子電極23および第3端子電極25は、第1鍔部9の外側端面17の一部にまで延び、第2端子電極24および第4端子電極26は、第2鍔部10の外側端面18の一部にまで延びていてもよい。
【0055】
端子電極23~26は、たとえば、銀を導電成分として含む導電性ペーストを下面11および12に焼付け、外側端面17および18にまで延びる部分については銀を蒸着し、その後、これら下地の導体膜に、銅、ニッケルおよび錫の順でめっきを施すことによって形成される。なお、端子電極23~26は、導電性金属板からなる金属端子をたとえばエポキシ系接着剤を用いてコア2に貼付けることによって設けられてもよい。
【0056】
第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、巻芯部5のまわりで螺旋状に巻回される。
図1において、第1ワイヤ3には網掛けが施され、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との区別が明確になるようにしている。第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の巻回状態の詳細については後述する。第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、たとえば、銅、銀または金などの良導電性金属からなる線状の中心導体を備え、中心導体はポリウレタンまたはポリアミドイミドなどの樹脂からなる電気絶縁性被膜によって覆われる。線状の中心導体の径は特に限定されるものではない。また、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4のターン数についても特に限定されるものではない。好ましくは、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の径は、20~100μmとされる。
【0057】
第1ワイヤ3の各端部は、第1端子電極23および第2端子電極24に接続され、第2ワイヤ4の各端部は、第3端子電極25および第4端子電極26に接続される。これらの接続には、たとえば、熱圧着が適用される。
【0058】
コイル部品1は、天板27をさらに備えていてもよい。天板27は、コア2と協働して閉磁路を形成するためのもので、コア2の材料と同種のフェライト、フェライト以外の非導電性の磁性材料、またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などから構成される。天板27は、コア2の第1鍔部9および第2鍔部10間に渡された状態で、第1鍔部9の天面13および第2鍔部10の天面14に接着剤を介して接合される。接着剤としては、好ましくは、熱硬化性のあるエポキシ樹脂、または熱硬化性のエポキシ樹脂に粒径0.1~10μmの金属磁性粉またはフェライト粉を加えた複合磁性樹脂が用いられる。接着剤には、熱衝撃耐性向上のため、シリカフィラーまたは無機磁性粉などの無機フィラーが添加されてもよい。接着剤の付与方法には、コア2の鍔部9および10の天面13および14側を接着剤にディップする方法、天板27におけるコア2側の面に接着剤をディスペンスまたは印刷する方法、などがある。
【0059】
なお、天板27に代えて、樹脂によるコーティングが施されてもよい。また、天板27およびコーティングは、それらいずれもがなくてもよい。
【0060】
コイル部品1は、たとえば、以下のようにして製造される。
【0061】
コア2を製造するため、たとえばフェライトの粉末を金型でプレス成形し、得られた成形体を焼成し、焼成後にバレル研磨することによってバリを取る。
【0062】
次いで、得られたコア2に端子電極23~26を設けるため、下地の導体膜を形成し、その後、バレルめっきを施す。
【0063】
次いで、ワイヤ3および4をノズルから吐出し、コア2の巻芯部5に巻回する。ワイヤ3および4は、後で詳細に説明する巻回状態を実現するため、たとえば、第1ワイヤ3の巻回の途中で第2ワイヤ4が巻回されたり、第2ワイヤ4の巻回の途中で第1ワイヤ3が巻回されたりする。巻回後、ヒーターチップによって、第1ワイヤ3の端部を第1端子電極23および第2端子電極24に熱圧着し、第2ワイヤ4の端部を第3端子電極25および第4端子電極26に熱圧着する。端子電極23~26に接続されたワイヤ3および4の余分はカット刃により切断除去される。
【0064】
その後、天板27を接着剤によってコア2に接着する。このようにして、コイル部品1が完成される。コイル部品1の寸法は、特に限定されるものではないが、たとえば、軸線方向6の寸法が3.2mm、幅方向(
図1において上下方向)の寸法が2.5mm、高さ方向(
図1の紙面に直交する方向)の寸法が2.5mmとされる。
【0065】
図2および
図3を主として参照して、
図1に示したコイル部品1における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の巻回状態について説明する。
図2は、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を断面図で示している。
図3は、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の周面を展開して示している。
【0066】
図2において、第1ワイヤ3を示す断面には網掛けが施され、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との区別が明確になるようにしている。第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、巻芯部5のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回されている。
【0067】
図2において、第1ワイヤ3の複数のターンの各々と第2ワイヤ4の複数のターンの各々とが線分で結ばれている。このように、線分で結ばれたターン同士は、第1端部7から数えて同じ番目のターンであることを示している。第1層に位置するワイヤ3または4の各ターンの下に数字が記入されている。これらの数字は、第1層に位置するワイヤ3または4の各ターンが何番目のターンであるかを示すものである。したがって、ワイヤ3および4の一方の各ターンと線分で結ばれたワイヤ3および4の他方の各ターンについても、上述の数字と同じ番目のターンであるということになる。
図2に示す巻回状態では、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4はともに、ターンT1~T28を有している。
【0068】
以上の
図2についての作図方法の説明は、後述する
図4ないし
図14についても当てはまる。
【0069】
前述したように、第1鍔部9および第2鍔部10は、四角柱形状であり、それぞれ、下面11および12、天面13および14、第1側面19および21、ならびに第2側面20および22からなる周面を有している。他方、巻芯部5は、軸線方向6に直交する断面が四角形状であり、その周面には4つの面が形成される。したがって、巻芯部5の周面の4つの面についても、鍔部9および10の下面、天面、第1側面および第2側面の各々と同じ方向に向く面の名称を、同様に「下面」、「天面」、「第1側面」および「第2側面」とする。
【0070】
巻芯部5は、
図3に示すように、周面において、下面29、天面30、第1側面31および第2側面32を有する。なお、
図2は、
図3の線A-Aに沿う断面、すなわち、巻芯部5における天面30上でのワイヤ3および4の断面を示したものである。
【0071】
図3において、第1ワイヤ3は太い点線で示され、第2ワイヤ4は太い実線で示されている。実際には、第1層のワイヤはほとんど第2層のワイヤによって隠されるが、
図3の展開図では、太い点線は第1ワイヤ3の中心軸線の位置を示し、太い実線は第2ワイヤ4の中心軸線の位置を示している。そのため、第1層の第1ワイヤ3と第2層の第2ワイヤ4とが隣り合って図示されたり、第1層の第2ワイヤ4と第2層の第1ワイヤ3とが隣り合って図示されたりしている。
図3からわかるように、第3層のワイヤ3または4とこれに接する第2層のワイヤ3または4についても隣り合って図示されている。なお、第3層のワイヤ3または4のターンの真下にある第1層のワイヤ3または4のターンは図示が省略されている。
【0072】
図1ないし
図3に示したコイル部品1において、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の巻回状態が互いに異なる複数の巻回域、たとえば、第1巻回域Z1および第2巻回域Z2が巻芯部5の軸線方向6に沿って配置されている。
【0073】
主として
図2を参照して、第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T14)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T8)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT8→T9)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは2ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT9~T10)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT10→T11)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT11~T14)と、
を有する。
【0074】
次に、上述した第1巻回域Z1に後続して、第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。
図3に、この入れ替え部分Sが図示されている。入れ替え部分Sでは、第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第2層に導かれ、第2ワイヤ4が第4巻回部分W4の第2端部8側の端部から第1層に導かれる。この入れ替え部分Sでは、
図15に示した遷移域89のような比較的広い遷移域を設ける必要はない。したがって、巻芯部5の限られた軸線方向6の寸法を効率的に利用することができる。
【0075】
再び
図2を主として参照して、第2巻回域Z2は、
(2-1)第2ワイヤ4が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT15~T28)と、
(2-2)第1ワイヤ3が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第5巻回部分W5の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分W6(ターンT15~T22)と、
(2-3)第1ワイヤ3が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT22→T23)と、
(2-4)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第3層においてMターン(ここでは2ターン)巻回されている第7巻回部分W7(ターンT23~T24)と、
(2-5)第1ワイヤ3が第7巻回部分W7から第2層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT24→T25)と、
(2-6)第1ワイヤ3が第4転位部分R4に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第8巻回部分W8(ターンT25~T28)と、
を有する。
【0076】
以上の構成によれば、第1巻回域Z1において、不用意な段落ちが懸念される第2層に位置する第2ワイヤ4が、第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1と、第1転位部分R1に連なり第3層において巻回されている第3巻回部分W3と、を形成しているので、第2層に位置する第2ワイヤ4の位置ずれを生じにくくすることができる。
【0077】
また、第2巻回域Z2において、不用意な段落ちが懸念される第2層に位置する第1ワイヤ3が、第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分R3と、第3転位部分R3に連なり第3層において巻回されている第7巻回部分W7と、を形成しているので、第2層に位置する第1ワイヤ3の位置ずれを生じにくくすることができる。
【0078】
また、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(第2層に位置するワイヤのターンT8とターンT11との境界。以下、「ターンT8/T11」と表現する。)の第1端部7側および第2端部8側のいずれか一方、この実施形態では、第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0079】
他方、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT8/T11)の第1端部7側および第2端部8側のいずれか他方、この実施形態では、第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域、具体的には、-1.5ターンずれ域F2が存在している。
【0080】
同様に、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT22/T25)の第1端部7側および第2端部8側のいずれか一方、この実施形態では、第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0081】
他方、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT22/T25)の第1端部7側および第2端部8側のいずれか他方、この実施形態では、第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(M-0.5)ターンずれる、+(M-0.5)ターンずれ域、具体的には、+1.5ターンずれ域F4が存在している。
【0082】
上述したように、+0.5ターンずれ域F1でのターン数(8ターン)と-0.5ターンずれ域F3でのターン数(8ターン)とが同じであり、また、-1.5ターンずれ域F2でのターン数(4ターン)と+1.5ターンずれ域F4でのターン数(4ターン)とが同じあるので、第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で容量のバランスが取れている。
【0083】
また、この実施形態の場合、第1巻回域Z1において、(+0.5ターンずれ域F1を与える第2巻回部分W2でのターン数):(-1.5ターンずれ域F2を与える第4巻回部分W4でのターン数)が2~5:1の範囲内であるので、第1巻回域Z1の範囲内でも、容量のバランスが取れている。
【0084】
同様に、第2巻回域Z2において、(-0.5ターンずれ域F3を与える第6巻回部分W6でのターン数):(+1.5ターンずれ域F4を与える第8巻回部分W8でのターン数)が2~5:1の範囲内であるので、第2巻回域Z2の範囲内でも、容量のバランスが取れている。
【0085】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0086】
さらに、この実施形態では、第1巻回域Z1での第1ワイヤ3の第1巻回部分W1のターン数(14ターン)と第2巻回域Z2での第2ワイヤ4の第5巻回部分W5のターン数(14ターン)とが互いに等しい。しかも、第1層に位置するワイヤと第2層に位置するワイヤとは、第1巻回域Z1と第2巻回域Z2とで各々が位置する層を入れ替えるため、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を無くすこと、ないしは小さくすることができる。このことも、たとえばコモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減することに寄与し得る。
【0087】
また、第1巻回域Z1の第3巻回部分W3では、第2ワイヤ4が第3層を構成するように巻回され、第2巻回域Z2の第7巻回部分W7では、第1ワイヤ3が第3層を構成するように巻回されるので、巻芯部5の周面におけるワイヤ巻回のためのスペースを節約することができる。
【0088】
この実施形態では、
図3によく示されているように、転位部分R1~R4ならびに入れ替え部分Sといった第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とが交差する部分は、巻芯部5の下面29および天面30以外の面、具体的には、第1側面31に沿って位置されている。第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とが交差する部分をこのように配置することにより、以下のような利点が奏される。
【0089】
第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とが交差する部分では、少なくとも2本のワイヤ3および4が巻芯部5の周面に直交する方向に並び、巻芯部5の周面からの膨らみ具合が比較的大きい。このように膨らみ具合が大きい部分が、仮に巻芯部5の下面29に沿って位置されると、ワイヤ3および4が実装基板に接触したり、極めて接近したりし、電気的不都合を招くことがあり得る。また、膨らみ具合が大きい部分が、仮に巻芯部5の天面30に沿って位置されると、ワイヤ3および4が天板27に接触したり、天板27によって押し潰されたりすることがあり得る。
【0090】
これらに対して、膨らみ具合が大きくなる部分が巻芯部5の下面29および天面30以外の面、具体的には、第1側面31または第2側面32に沿って位置されると、上述した不都合を招かないようにすることができる。なお、膨らみ具合が大きくなる部分が位置される面を、巻芯部5の下面29および天面30以外の面としたのは、巻芯部の断面が四角形状以外のたとえば六角形状などの他の多角形状、円状、もしくは楕円状である場合もあり得るので、その場合には、「側面」を特定できない可能性があるためである。
【0091】
<他の実施形態>
以下、
図4ないし
図14を参照して、この発明の第2ないし第12の実施形態について説明する。
図4ないし
図14において、
図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付す。なお、第2ないし第12の実施形態においても、上述した第1の実施形態の場合と同様の効果が奏される。
【0092】
[第2の実施形態]
図4に示す第2の実施形態では、巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1、第2巻回域Z2および第3巻回域Z3といった3つの巻回域が順に配置されている。
【0093】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T8)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T4)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT4→T5)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは2ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT5~T6)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT6→T7)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT7~T8)と、
を有する。
【0094】
次に、上述した第1巻回域Z1に後続して、第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4は各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第2層に導かれ、第2ワイヤ4が第4巻回部分W4の第2端部8側の端部から第1層に導かれる。
【0095】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第2ワイヤ4が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT9~T19)と、
(2-2)第1ワイヤ3が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第5巻回部分W5の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分W6(ターンT9~T14)と、
(2-3)第1ワイヤ3が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT14→T15)と、
(2-4)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第3層においてMターン(ここでは2ターン)巻回されている第7巻回部分W7(ターンT15~T16)と、
(2-5)第1ワイヤ3が第7巻回部分W7から第2層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT16→T17)と、
(2-6)第1ワイヤ3が第4転位部分R4に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第8巻回部分W8(ターンT17~T19)と、
を有する。
【0096】
次に、上述した第2巻回域Z2に後続して、第3巻回域Z3が配置される。第2巻回域Z2と第3巻回域Z3との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第8巻回部分W8の第2端部8側の端部から第1層に導かれ、第2ワイヤ3が第5巻回部分W5の第2端部8側の端部から第2層に導かれる。
【0097】
第3巻回域Z3は、第1巻回域Z1の構成と実質的に同様であり、
(3-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第9巻回部分W9(ターンT20~T27)と、
(3-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第9巻回部分W9の延びる範囲の途中まで巻回されている第10巻回部分W10(ターンT20~T23)と、
(3-3)第2ワイヤ4が第10巻回部分W10の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第5転位部分R5(ターンT23→T24)と、
(3-4)第2ワイヤ4が第5転位部分R5に連なり第3層においてPターン(Pは自然数。ここでは2ターン)巻回されている第11巻回部分W11(ターンT24~T25)と、
(3-5)第2ワイヤ4が第11巻回部分W11の第2端部8側の端部から第2層の位置まで導かれる第6転位部分R6(ターンT25→T26)と、
(3-6)第2ワイヤ4が第6転位部分R6に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第12巻回部分W12(ターンT26~T27)と、
を有する。
【0098】
第2の実施形態によっても、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0099】
また、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT4/T7)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0100】
他方、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT4/T7)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域、具体的には、-1.5ターンずれ域F2が存在している。
【0101】
同様に、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT14/T17)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0102】
他方、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT14/T17)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(M-0.5)ターンずれる、+(M-0.5)ターンずれ域、具体的には、+1.5ターンずれ域F4が存在している。
【0103】
同様に、第3巻回域Z3において、第10巻回部分W10と第12巻回部分W12との境界(ターンT23/T26)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0104】
他方、第3巻回域Z3において、第9巻回部分W9と第12巻回部分W12との境界(ターンT23/T26)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(P-0.5)ターンずれる、-(P-0.5)ターンずれ域、具体的には、-1.5ターンずれ域F2が存在している。
【0105】
上述した第1~第3巻回域Z1~Z3では、
(W2でのターン数):(W4でのターン数)
=(W6でのターン数):(W8でのターン数)
=(W10でのターン数):(W12でのターン数)
=2:1(N:1、M:1、P:1)
であるため、第1~第3巻回域Z1~Z3の各々内で浮遊容量のバランスが取れている。
【0106】
また、+0.5ターンずれ域F1でのターン総数と-0.5ターンずれ域F3でのターン総数とが一致しておらず、-1.5ターンずれ域F2でのターン総数と+1.5ターンずれ域F4のターン総数とが一致していないが、上述したように、ターン数の比が2:1とされるので、全体で浮遊容量のバランスが取れている。
【0107】
なお、ターン数の比は、2:1である場合に限らず、2~5:1の範囲であれば、全体で浮遊容量のバランスを取ることができる。
【0108】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0109】
また、第1巻回域Z1と第3巻回域Z3とで第1ワイヤ3が第1層となり、第2巻回域Z2で第2ワイヤ4が第1層となっている。このように、第1巻回域Z1および第3巻回域Z3と、第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替えるので、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を小さくすることができる。このことも、たとえばコモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減することに寄与し得る。
【0110】
なお、第2の実施形態では、厳密に言えば、{(W1でのターン数)+(W9でのターン数)}と(W5でのターン数)とが互いに等しくない。したがって、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差は、第1の実施形態の場合に比べて若干大きくなるが、第2の実施形態であっても、コモンモードチョークコイルにおいてモード変換特性を低減する効果を十分に発揮し得る。
【0111】
巻芯部5に沿う巻回域の配列は、さらに繰り返されてもよい。
【0112】
[第3の実施形態]
図5に示す第3の実施形態では、巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1、第2巻回域Z2および第3巻回域Z3といった3つの巻回域が順に配置されている。
【0113】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T8)と、
(1-1a)第2層に位置されるべき第2ワイヤ4が第1巻回部分W1の第1端部7側の端部に隣接して意図的に第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d(ターンT1)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT2~T6)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT6→T7)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは2ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT7~T8)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3の第2端部8側の端部から第1巻回部分W1の第2端部8側の端部よりも第2端部8側の第1層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT8→T9)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第1層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT9~T10)と、
(1-7)第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第1巻回部分W1上の第2層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT8→T9)と、
(1-8)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第2層において第2端部8に向かって第4巻回部分W4上まで巻回されている第5巻回部分W5(ターンT9~T10)と、
を有する。
【0114】
次に、上述した第1巻回域Z1に後続して、第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。
【0115】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第2ワイヤ4が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第6巻回部分W6(ターンT11~T17)と、
(2-2)第1ワイヤ3が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第6巻回部分W6の延びる範囲の途中まで巻回されている第7巻回部分W7(ターンT11~T15)と、
(2-3)第1ワイヤ3が第7巻回部分W7の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT15→T16)と、
(2-4)第1ワイヤ3が第4転位部分R4に連なり第3層においてMターン(ここでは2ターン)巻回されている第8巻回部分W8(ターンT16~T17)と、
(2-5)第1ワイヤ3が第8巻回部分W8の第2端部8側の端部から第6巻回部分W6の第2端部8側の端部よりも第2端部8側の第1層の位置まで導かれる第5転位部分R5(ターンT17→T18)と、
(2-6)第1ワイヤ3が第5転位部分R5に連なり第1層において第2端部8に向かって巻回されている第9巻回部分W9(ターンT18~T19)と、
(2-7)第2ワイヤ4が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第6巻回部分W6上の第2層の位置まで導かれる第6転位部分R6(ターンT17→T18)と、
(2-8)第2ワイヤ4が第6転位部分R6に連なり第2層において第2端部8に向かって第9巻回部分W9上まで巻回されている第10巻回部分W10(ターンT18~T19)と、
を有する。
【0116】
次に、上述した第2巻回域Z2に後続して、第3巻回域Z3が配置される。第2巻回域Z2と第3巻回域Z3との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。
【0117】
第3巻回域Z3は、
(3-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第11巻回部分W11(ターンT20~T26)と、
(3-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第9巻回部分W9の延びる範囲の途中まで巻回されている第12巻回部分W12(ターンT20~T24)と、
(3-3)第2ワイヤ4が第12巻回部分W12の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第7転位部分R7(ターンT24→T25)と、
(3-4)第2ワイヤ4が第7転位部分R7に連なり第3層においてPターン(ここでは2ターン)巻回されている第13巻回部分W13(ターンT25~T26)と、
(3-5)第2ワイヤ4が第13巻回部分W13の第2端部8側の端部から第11巻回部分W11の第2端部8側の端部よりも第2端部8側の第1層の位置まで導かれる第8転位部分R8(ターンT26→T27)と、
(3-6)第2ワイヤ4が第8転位部分R8に連なり第1層において第2端部8に向かって巻回されている第14巻回部分W14(ターンT27~T28)と、
(3-7)第1ワイヤ3が第11巻回部分W11の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第11巻回部分W11上の第2層の位置まで導かれる第9転位部分R9(ターンT26→T27)と、
(3-8)第1ワイヤ3が第9転位部分R9に連なり第2層において第2端部8に向かって第14巻回部分W14上まで巻回されている第15巻回部分W15(ターンT27~T28)と、
を有する。
【0118】
第3の実施形態によっても、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0119】
特に、第3の実施形態によれば、第1巻回域Z1における第2ワイヤ4の巻回の始端において意図的な段落ち部分dを有しているので、第2ワイヤ4の巻回状態の安定化に寄与し、第2ワイヤ4の位置ずれを生じにくくすることができる。
【0120】
第2ワイヤ4の第2巻回部分W2と第1ワイヤ3の第5巻回部分W5との境界(ターンT6/T9)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0121】
他方、第2ワイヤ4の第2巻回部分W2と第1ワイヤ3の第5巻回部分W5との境界(ターンT6/T9)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(N-0.5)ターンずれる、+(N-0.5)ターンずれ域、具体的には、+1.5ターンずれ域F4が存在している。
【0122】
また、第1ワイヤ3の第7巻回部分W7と第2ワイヤ4の第10巻回部分W10との境界(ターンT15/T18)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0123】
他方、第1ワイヤ3の第7巻回部分W7と第2ワイヤ4の第10巻回部分W10との境界(ターンT15/T18)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(M-0.5)ターンずれる、-(M-0.5)ターンずれ域、具体的には、-1.5ターンずれ域F2が存在している。
【0124】
また、第2ワイヤ4の第12巻回部分W12と第1ワイヤ3の第15巻回部分W15との境界(ターンT24/T27)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0125】
他方、第2ワイヤ4の第12巻回部分W12と第1ワイヤ3の第15巻回部分W15との境界(ターンT24/T27)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(P-0.5)ターンずれる、+(P-0.5)ターンずれ域、具体的には、+1.5ターンずれ域F4が存在している。
【0126】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0127】
なお、この実施形態では、
(W2でのターン数):(W5でのターン数)
=(W7でのターン数):(W10でのターン数)
=(W12でのターン数):(W15でのターン数)
=5:2
であって、N:1(M:1,P:1)は、2~5:1の範囲内であるので、浮遊容量のバランスが取れている。
【0128】
また、-0.5ターンずれ域F3のターン総数と+0.5ターンずれ域F1のターン総数とが一致しておらず、10:5であり、+1.5ターンずれ域F4のターン総数と-1.5ターンずれ域F2のターン総数とが一致しておらず、4:2であるが、いずれも2~5:1の範囲内であるので、浮遊容量のバランスが取れている。
【0129】
したがって、この実施形態によっても、浮遊容量のバランスが取れているので、コモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減する効果を期待できる。
【0130】
また、この実施形態においても、第1巻回域Z1および第3巻回域Z3と、第2巻回域Z2とで、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替えるため、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を小さくすることができる。このことも、コモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減することに寄与し得る。
【0131】
巻芯部5に沿う巻回域の配列は、さらに繰り返されてもよい。
【0132】
[第4の実施形態]
図6に示す第4の実施形態では、巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1および第2巻回域Z2といった2つの巻回域が順に配置されていて、第1の実施形態の構成と比較して、第3層を構成するワイヤが1ターン(N=1,M=1)である点で異なっている。
【0133】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T13)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T6)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT6→T7)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは1ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT7)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT7→T8)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT8~T13)と、
を有する。
【0134】
次に、上述した第1巻回域Z1に後続して、第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第2層に導かれ、第2ワイヤ3が第4巻回部分W4の第2端部8側の端部から第1層に導かれる。
【0135】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第2ワイヤ4が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT14~T26)と、
(2-1)第1ワイヤ3が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第5巻回部分W5の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分W6(ターンT14~T19)と、
(2-3)第1ワイヤ3が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT19→T20)と、
(2-4)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第3層においてMターン(ここでは1ターン)巻回されている第7巻回部分W7(ターンT20)と、
(2-5)第1ワイヤ3が第7巻回部分W7から第2層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT20→T21)と、
(2-6)第1ワイヤ3が第4転位部分R4に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第8巻回部分W8(ターンT21~T26)と、
を有する。
【0136】
第4の実施形態によっても、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0137】
また、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT6/T8)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0138】
他方、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT6/T8)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域、具体的には、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0139】
また、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT19/T21)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0140】
他方、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT19/T21)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(M-0.5)ターンずれる、+(M-0.5)ターンずれ域、具体的には、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0141】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0142】
この実施形態では、(W2でのターン数):(W4でのターン数)=(W6でのターン数):(W8でのターン数)=1:1(N:1、M:1)であるので、第1巻回域Z1と第2巻回域Z2の各々の範囲内でも、浮遊容量のバランスが取れている。
【0143】
また、第1巻回域Z1と第2巻回域Z2とで、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替えており、しかも、(W1でのターン数):(W5でのターン数)=1:1であるので、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を無くすこと、ないしは小さくすることができる。これらのことも、たとえばコモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減することに寄与し得る。
【0144】
[第5の実施形態]
図7に示す第5の実施形態では、巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1、第2巻回域Z2および第3巻回域Z3といった3つの巻回域が順に配置されていて、第3層を構成するワイヤが1ターン(N=1,M=1,P=1)である。
【0145】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T8)と、
(1-1a)第2層に位置されるべき第2ワイヤ4が第1巻回部分W1の第1端部7側の端部に隣接して意図的に第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d(ターンT1)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT2~T5)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT5→T6)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは1ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT6)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT6→T7)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT7~T8)と、
を有する。
【0146】
次に、上述した第1巻回域Z1に後続して、第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第2層に導かれ、第2ワイヤ4が第4巻回部分W4の第2端部8側の端部から第1層に導かれる。
【0147】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第2ワイヤ4が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT9~T21)と、
(2-2)第1ワイヤ3が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第5巻回部分W5の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分W6(ターンT9~T16)と、
(2-3)第1ワイヤ3が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT16→T17)と、
(2-4)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第3層においてMターン(ここでは1ターン)巻回されている第7巻回部分W7(ターンT17)と、
(2-5)第1ワイヤ3が第7巻回部分W7から第2層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT17→T18)と、
(2-6)第1ワイヤ3が第4転位部分R4に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第8巻回部分W8(ターンT18~T21)と、
を有する。
【0148】
次に、上述した第2巻回域Z2に後続して、第3巻回域Z3が配置される。第2巻回域Z2と第3巻回域Z3との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第8巻回部分W8の第2端部8側の端部から第1層に導かれ、第2ワイヤ3が第5巻回部分W5の第2端部8側の端部から第2層に導かれる。
【0149】
第3巻回域Z3は、
(3-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第9巻回部分W9(ターンT22~T28)と、
(3-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第9巻回部分W9の延びる範囲の途中まで巻回されている第10巻回部分W10(ターンT22~T25)と、
(3-3)第2ワイヤ4が第10巻回部分W10の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第5転位部分R5(ターンT25→T26)と、
(3-4)第2ワイヤ4が第5転位部分R5に連なり第3層においてPターン(ここでは1ターン)巻回されている第11巻回部分W11(ターンT26)と、
(3-5)第2ワイヤ4が第11巻回部分W11の第2端部8側の端部から第2層の位置まで導かれる第6転位部分R6(ターンT26→T27)と、
(3-6)第2ワイヤ4が第6転位部分R6に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第12巻回部分W12(ターンT27~T28)と、
を有する。
【0150】
第5の実施形態によっても、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0151】
特に、第5の実施形態によれば、第1巻回域Z1における第2ワイヤ4の巻回の始端において意図的な段落ち部分dを有しているので、第2ワイヤ4の巻回状態の安定化に寄与し、第2ワイヤ4の位置ずれを生じにくくすることができる。
【0152】
第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT5/T7)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0153】
他方、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT5/T7)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域、具体的には、-1.5ターンずれ域F2が存在している。
【0154】
また、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT16/T18)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0155】
他方、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT16/T18)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(M-0.5)ターンずれる、+(M-0.5)ターンずれ域、具体的には、+1.5ターンずれ域F4が存在している。
【0156】
また、第3巻回域Z3において、第10巻回部分W10と第12巻回部分W12との境界(ターンT25/T27)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0157】
他方、第3巻回域Z3において、第9巻回部分W9と第12巻回部分W12との境界(ターンT25/T27)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(P-0.5)ターンずれる、-(P-0.5)ターンずれ域、具体的には、-1.5ターンずれ域F2が存在している。
【0158】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0159】
なお、この実施形態では、第1~第3巻回域Z1~Z3の各々内で浮遊容量のバランスは取れていないが、以下のように、全体では浮遊容量のバランスが取れている。
【0160】
すなわち、-0.5ターンずれ域F3でのターン総数は、W2でのターン数(4ターン)とW10でのターン数(4ターン)との合計(8ターン)である。一方、+0.5ターンずれ域F1でのターン総数は、W6でのターン数(8ターン)である。したがって、-0.5ターンずれ域F3でのターン総数と+0.5ターンずれ域F1でのターン総数とは互いに等しい。
【0161】
また、-1.5ターンずれ域F2でのターン総数は、W4でのターン数(2ターン)とW12でのターン数(2ターン)との合計(4ターン)である。他方、+1.5ターンずれ域F4でのターン総数は、W8でのターン数(4ターン)である。したがって、-1.5ターンずれ域F2でのターン総数と+1.5ターンずれ域F4でのターン総数とは互いに等しい。
【0162】
これらのことから、全体で浮遊容量のバランスが取れている。
【0163】
また、第1層に位置するワイヤ3または4のターン数に注目すると、第1ワイヤ3は、W1において8ターン、W9において7ターン、合計15ターン有し、他方、第2ワイヤ4は、W5において13ターン有しており、第1ワイヤ3のターン数と第2ワイヤ4のターン数とは互いに異なり、ワイヤ3および4の各々の長さが異なっている。したがって、厳密に言えば、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは、各々の長さの点でバランスが取れていない。しかしながら、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替えない場合に比べると、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を小さくすることができる。よって、この実施形態においても、コモンモードチョークコイルにおいてモード変換特性を低減する効果を十分に発揮し得る。
【0164】
巻芯部5に沿う巻回域の配列は、さらに繰り返されてもよい。
【0165】
[第6の実施形態]
図8に示す第6の実施形態では、第5の実施形態の構成と同様、巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1、第2巻回域Z2および第3巻回域Z3といった3つの巻回域が順に配置されていて、第3層を構成するワイヤが1ターン(N=1,M=1,P=1)である。
【0166】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T7)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T3)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT3→T4)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは1ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT4)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT4→T5)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT5~T7)と、
を有する。
【0167】
次に、上述した第1巻回域Z1に後続して、第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第2層に導かれ、第2ワイヤ3が第4巻回部分W4の第2端部8側の端部から第1層に導かれる。
【0168】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第2ワイヤ4が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT8~T20)と、
(2-2)第1ワイヤ3が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第5巻回部分W5の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分W6(ターンT8~T13)と、
(2-3)第1ワイヤ3が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT13→T14)と、
(2-4)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第3層においてMターン(ここでは1ターン)巻回されている第7巻回部分W7(ターンT14)と、
(2-5)第1ワイヤ3が第7巻回部分W7から第2層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT14→T15)と、
(2-6)第1ワイヤ3が第4転位部分R4に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第8巻回部分W8(ターンT15~T20)と、
を有する。
【0169】
次に、上述した第2巻回域Z2に後続して、第3巻回域Z3が配置される。第2巻回域Z2と第3巻回域Z3との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第8巻回部分W8の第2端部8側の端部から第1層に導かれ、第2ワイヤ3が第5巻回部分W5の第2端部8側の端部から第2層に導かれる。
【0170】
第3巻回域Z3は、
(3-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第9巻回部分W9(ターンT21~T27)と、
(3-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第9巻回部分W9の延びる範囲の途中まで巻回されている第10巻回部分W10(ターンT21~T23)と、
(3-3)第2ワイヤ4が第10巻回部分W10の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第5転位部分R5(ターンT23→T24)と、
(3-4)第2ワイヤ4が第5転位部分R5に連なり第3層においてPターン(ここでは1ターン)巻回されている第11巻回部分W11(ターンT24)と、
(3-5)第2ワイヤ4が第11巻回部分W11の第2端部8側の端部から第2層の位置まで導かれる第6転位部分R6(ターンT24→T25)と、
(3-6)第2ワイヤ4が第6転位部分R6に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第12巻回部分W12(ターンT25~T27)と、
を有する。
【0171】
第6の実施形態によっても、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0172】
また、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT3/T5)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0173】
他方、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT3/T5)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域、具体的には、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0174】
また、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT13/T15)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0175】
他方、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT13/T15)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(M-0.5)ターンずれる、+(M-0.5)ターンずれ域、具体的には、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0176】
また、第3巻回域Z3において、第10巻回部分W10と第12巻回部分W12との境界(ターンT23/T25)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0177】
他方、第3巻回域Z3において、第9巻回部分W9と第12巻回部分W12との境界(ターンT23/T25)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(P-0.5)ターンずれる、-(P-0.5)ターンずれ域、具体的には、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0178】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0179】
また、この実施形態においても、第1巻回域Z1および第3巻回域Z3と、第2巻回域Z2とで、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替えるため、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を小さくすることができる。このことも、コモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減することに寄与し得る。
【0180】
巻芯部5に沿う巻回域の配列は、さらに繰り返されてもよい。
【0181】
[第7の実施形態]
図9に示す第7の実施形態では、巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1および第2巻回域Z2といった2つの巻回域が順に配置されていて、たとえば第1または第4の実施形態の構成と比較して、第3層を構成するワイヤが3ターン(N=3,M=3)である点で異なっている。
【0182】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T13)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T8)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT8→T9)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは3ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT9~T11)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT11→T12)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT12~T13)と、
を有する。
【0183】
次に、上述した第1巻回域Z1に後続して、第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第2層に導かれ、第2ワイヤ3が第4巻回部分W4の第2端部8側の端部から第1層に導かれる。
【0184】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第2ワイヤ4が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT14~T26)と、
(2-1)第1ワイヤ3が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第5巻回部分W5の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分W6(ターンT14~T21)と、
(2-3)第1ワイヤ3が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT21→T22)と、
(2-4)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第3層においてMターン(ここでは3ターン)巻回されている第7巻回部分W7(ターンT22~T24)と、
(2-5)第1ワイヤ3が第7巻回部分W7から第2層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT24→T25)と、
(2-6)第1ワイヤ3が第4転位部分R4に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第8巻回部分W8(ターンT25~T26)と、
を有する。
【0185】
第7の実施形態によっても、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0186】
また、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT8/T11)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0187】
他方、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT8/T11)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域、具体的には、-2.5ターンずれ域F5が存在している。
【0188】
また、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT21/T24)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0189】
他方、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT21/T24)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(M-0.5)ターンずれる、+(M-0.5)ターンずれ域、具体的には、+2.5ターンずれ域F6が存在している。
【0190】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0191】
この実施形態では、+0.5ターンずれ域F1でのターン数と-0.5ターンずれ域F3でのターン数とは、ともに8ターンであり、互いに等しい。また、-2.5ターンずれ域F5でのターン数と+2.5ターンずれ域F6でのターン数とは、ともに2ターンであり、互いに等しい。したがって、全体では浮遊容量のバランスが取れている。
【0192】
一方、第1巻回域Z1および第2巻回域Z2の各々内での浮遊容量のバランスに注目すると、第1巻回域Z1内において、(+0.5ターンずれ域F1でのターン数):(-2.5ターンずれ域F5でのターン数)が4:1となっている。この比率は、2~5:1の範囲内であるので、浮遊容量のバランスが取れている。また、第2巻回域Z2内において、(-0.5ターンずれ域F3でのターン数):(+2.5ターンずれ域F6でのターン数)が4:1となっている。この比率についても、2~5:1の範囲内であるので、浮遊容量のバランスが取れている。
【0193】
また、この実施形態においても、第1巻回域Z1と第2巻回域Z2とで、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替えるため、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を小さくすることができる。このことも、コモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減することに寄与し得る。
【0194】
[第8の実施形態]
図10に示す第8の実施形態では、巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1および第2巻回域Z2といった2つの巻回域が順に配置されていて、第3層を構成するワイヤのターン数が、第1巻回域Z1と第2巻回域Z2とで異なっている。
【0195】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T13)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T6)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT6→T7)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは1ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT7)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT7→T8)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT8~T13)と、
を有する。
【0196】
次に、上述した第1巻回域Z1に後続して、第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第2層に導かれ、第2ワイヤ3が第4巻回部分W4の第2端部8側の端部から第1層に導かれる。
【0197】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第2ワイヤ4が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT14~T27)と、
(2-1)第1ワイヤ3が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第5巻回部分W5の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分W6(ターンT14~T21)と、
(2-3)第1ワイヤ3が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT21→T22)と、
(2-4)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第3層においてMターン(ここでは2ターン)巻回されている第7巻回部分W7(ターンT22~T23)と、
(2-5)第1ワイヤ3が第7巻回部分W7から第2層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT23→T24)と、
(2-6)第1ワイヤ3が第4転位部分R4に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第8巻回部分W8(ターンT24~T27)と、
を有する。
【0198】
第8の実施形態によっても、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0199】
また、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT6/T8)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0200】
他方、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT6/T8)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域、具体的には、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0201】
また、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT21/T24)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0202】
他方、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT21/T24)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(M-0.5)ターンずれる、+(M-0.5)ターンずれ域、具体的には、+1.5ターンずれ域F4が存在している。
【0203】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0204】
また、この実施形態においても、第1巻回域Z1と第2巻回域Z2とで、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替えるため、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を小さくすることができる。このことも、コモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減することに寄与し得る。
【0205】
[第9の実施形態]
図11に示す第9の実施形態では、巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1、第2巻回域Z2および第3巻回域Z3といった3つの巻回域が順に配置されていて、第3層を構成するワイヤのターン数が、第1巻回域Z1および第3巻回域Z3と、第2巻回域Z2と、で異なっている。
【0206】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T8)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T4)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT4→T5)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは2ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT5~T6)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT6→T7)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT7~T8)と、
を有する。
【0207】
次に、上述した第1巻回域Z1に後続して、第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第2層に導かれ、第2ワイヤ3が第4巻回部分W4の第2端部8側の端部から第1層に導かれる。
【0208】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第2ワイヤ4が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT9~T18)と、
(2-2)第1ワイヤ3が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第5巻回部分W5の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分W6(ターンT9~T13)と、
(2-3)第1ワイヤ3が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT13→T14)と、
(2-4)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第3層においてMターン(ここでは1ターン)巻回されている第7巻回部分W7(ターンT14)と、
(2-5)第1ワイヤ3が第7巻回部分W7から第2層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT14→T15)と、
(2-6)第1ワイヤ3が第4転位部分R4に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第8巻回部分W8(ターンT15~T18)と、
を有する。
【0209】
次に、上述した第2巻回域Z2に後続して、第3巻回域Z3が配置される。第2巻回域Z2と第3巻回域Z3との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第8巻回部分W8の第2端部8側の端部から第1層に導かれ、第2ワイヤ3が第5巻回部分W5の第2端部8側の端部から第2層に導かれる。
【0210】
第3巻回域Z3は、第1巻回域Z1の構成と実質的に同様であり、
(3-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第9巻回部分W9(ターンT19~T26)と、
(3-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第9巻回部分W9の延びる範囲の途中まで巻回されている第10巻回部分W10(ターンT19~T22)と、
(3-3)第2ワイヤ4が第10巻回部分W10の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第5転位部分R5(ターンT22→T23)と、
(3-4)第2ワイヤ4が第5転位部分R5に連なり第3層においてPターン(ここでは2ターン)巻回されている第11巻回部分W11(ターンT23~T24)と、
(3-5)第2ワイヤ4が第11巻回部分W11の第2端部8側の端部から第2層の位置まで導かれる第6転位部分R6(ターンT24→T25)と、
(3-6)第2ワイヤ4が第6転位部分R6に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第12巻回部分W12(ターンT25~T26)と、
を有する。
【0211】
第9の実施形態によっても、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0212】
また、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT4/T7)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0213】
他方、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT4/T7)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域、具体的には、-1.5ターンずれ域F2が存在している。
【0214】
また、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT13/T15)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0215】
他方、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT13/T15)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(M-0.5)ターンずれる、+(M-0.5)ターンずれ域、具体的には、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0216】
また、第3巻回域Z3において、第10巻回部分W10と第12巻回部分W12との境界(ターンT22/T25)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0217】
他方、第3巻回域Z3において、第9巻回部分W9と第12巻回部分W12との境界(ターンT22/T25)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(P-0.5)ターンずれる、-(P-0.5)ターンずれ域、具体的には、-1.5ターンずれ域F2が存在している。
【0218】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0219】
また、この実施形態においても、第1巻回域Z1および第3巻回域Z3と、第2巻回域Z2とで、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替えるため、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を小さくすることができる。このことも、コモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減することに寄与し得る。
【0220】
巻芯部5に沿う巻回域の配列は、さらに繰り返されてもよい。
【0221】
[第10の実施形態]
図12に示す第10の実施形態では、巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1、第2巻回域Z2および第3巻回域Z3といった3つの巻回域が順に配置されていて、第3層を構成するワイヤのターン数が、第1巻回域Z1、第2巻回域Z2および第3巻回域Z3の各々間で異なっている。
【0222】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T7)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT1~T3)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT3→T4)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは1ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT4)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3から第2層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT4→T5)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT5~T7)と、
を有する。
【0223】
次に、上述した第1巻回域Z1に後続して、第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第2層に導かれ、第2ワイヤ3が第4巻回部分W4の第2端部8側の端部から第1層に導かれる。
【0224】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第2ワイヤ4が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第5巻回部分W5(ターンT8~T18)と、
(2-2)第1ワイヤ3が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第5巻回部分W5の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分W6(ターンT8~T13)と、
(2-3)第1ワイヤ3が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT13→T14)と、
(2-4)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第3層においてMターン(ここでは3ターン)巻回されている第7巻回部分W7(ターンT14~T16)と、
(2-5)第1ワイヤ3が第7巻回部分W7から第2層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT16→T17)と、
(2-6)第1ワイヤ3が第4転位部分R4に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第8巻回部分W8(ターンT17~T18)と、
を有する。
【0225】
次に、上述した第2巻回域Z2に後続して、第3巻回域Z3が配置される。第2巻回域Z2と第3巻回域Z3との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。この入れ替え部分では、第1ワイヤ3が第8巻回部分W8の第2端部8側の端部から第1層に導かれ、第2ワイヤ3が第5巻回部分W5の第2端部8側の端部から第2層に導かれる。
【0226】
第3巻回域Z3は、
(3-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第9巻回部分W9(ターンT19~T26)と、
(3-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第9巻回部分W9の延びる範囲の途中まで巻回されている第10巻回部分W10(ターンT19~T22)と、
(3-3)第2ワイヤ4が第10巻回部分W10の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第5転位部分R5(ターンT22→T23)と、
(3-4)第2ワイヤ4が第5転位部分R5に連なり第3層においてPターン(ここでは2ターン)巻回されている第11巻回部分W11(ターンT23~T24)と、
(3-5)第2ワイヤ4が第11巻回部分W11の第2端部8側の端部から第2層の位置まで導かれる第6転位部分R6(ターンT24→T25)と、
(3-6)第2ワイヤ4が第6転位部分R6に連なり第2層において第2端部8に向かって巻回されている第12巻回部分W12(ターンT25~T26)と、
を有する。
【0227】
第10の実施形態によっても、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0228】
また、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT3/T5)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0229】
他方、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との境界(ターンT3/T5)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域、具体的には、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0230】
また、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT13/T16)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0231】
他方、第2巻回域Z2において、第6巻回部分W6と第8巻回部分W8との境界(ターンT13/T16)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(M-0.5)ターンずれる、+(M-0.5)ターンずれ域、具体的には、+2.5ターンずれ域F6が存在している。
【0232】
また、第3巻回域Z3において、第10巻回部分W10と第12巻回部分W12との境界(ターンT22/T25)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0233】
他方、第3巻回域Z3において、第9巻回部分W9と第12巻回部分W12との境界(ターンT22/T25)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(P-0.5)ターンずれる、-(P-0.5)ターンずれ域、具体的には、-1.5ターンずれ域F2が存在している。
【0234】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0235】
また、この実施形態においても、第1巻回域Z1および第3巻回域Z3と、第2巻回域Z2とで、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替えるため、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を小さくすることができる。このことも、コモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減することに寄与し得る。
【0236】
巻芯部5に沿う巻回域の配列は、さらに繰り返されてもよい。
【0237】
[第11の実施形態]
図13に示す第11の実施形態では、巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1および第2巻回域Z2といった2つの巻回域が順に配置されていて、たとえば第4の実施形態の構成と比較して、第3層を構成するワイヤの転位先が、第2層ではなく、第1層である点で異なっている。
【0238】
第1巻回域Z1は、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T10)と、
(1-1a)第2層に位置されるべき第2ワイヤ4が第1巻回部分W1の第1端部7側の端部に隣接して意図的に第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d1(ターンT1)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT2~T9)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT9→T10)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは1ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT10)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3の第2端部8側の端部から第1巻回部分W1の第2端部8側の端部よりも第2端部8側の第1層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT10→T11)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第1層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT11~T14)と、
(1-7)第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第1巻回部分W1上の第2層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT10→T11)と、
(1-8)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第2層において第2端部8に向かって第4巻回部分W4上まで巻回されている第5巻回部分W5(ターンT11~T14)と、
を有する。
【0239】
次に、上述した第1巻回域Z1に後続して、第2巻回域Z2が配置される。第1巻回域Z1と第2巻回域Z2との間で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替える。
【0240】
第2巻回域Z2は、
(2-1)第2ワイヤ4が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第6巻回部分W6(ターンT15~T24)と、
(2-1a)第2層に位置されるべき第1ワイヤ3が第6巻回部分W6の第1端部7側の端部に隣接して意図的に第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d2(ターンT15)と、
(2-2)第1ワイヤ3が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第6巻回部分W6の延びる範囲の途中まで巻回されている第7巻回部分W7(ターンT16~T23)と、
(2-3)第1ワイヤ3が第7巻回部分W7の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT23→T24)と、
(2-4)第1ワイヤ3が第4転位部分R4に連なり第3層においてMターン(ここでは1ターン)巻回されている第8巻回部分W8(ターンT24)と、
(2-5)第1ワイヤ3が第8巻回部分W8の第2端部8側の端部から第6巻回部分W6の第2端部8側の端部よりも第2端部8側の第1層の位置まで導かれる第5転位部分R5(ターンT24→T25)と、
(2-6)第1ワイヤ3が第5転位部分R5に連なり第1層において第2端部8に向かって巻回されている第9巻回部分W9(ターンT25~T28)と、
(2-7)第2ワイヤ4が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第6巻回部分W6上の第2層の位置まで導かれる第6転位部分R6(ターンT24→T25)と、
(2-8)第2ワイヤ4が第6転位部分R6に連なり第2層において第2端部8に向かって第9巻回部分W9上まで巻回されている第10巻回部分W10(ターンT25~T28)と、
を有する。
【0241】
第11の実施形態によっても、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0242】
また、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第5巻回部分W5との境界(ターンT9/T11)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0243】
他方、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第5巻回部分W5との境界(ターンT9/T11)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(N+0.5)ターンずれる、+(N+0.5)ターンずれ域、具体的には、+1.5ターンずれ域F4が存在している。
【0244】
また、第2巻回域Z2において、第7巻回部分W7と第10巻回部分W10との境界(ターンT23/T25)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域F1が存在している。
【0245】
他方、第7巻回部分W7と第10巻回部分W10との境界(ターンT23/T25)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に(M+0.5)ターンずれる、-(M+0.5)ターンずれ域、具体的には、-1.5ターンずれ域F2が存在している。
【0246】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0247】
また、この実施形態においても、第1巻回域Z1と第2巻回域Z2とで、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替えるため、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を小さくすることができる。このことも、コモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減することに寄与し得る。
【0248】
[第12の実施形態]
図14に示す第12の実施形態では、巻芯部5の軸線方向6に沿って、第1巻回域Z1および第2巻回域Z2といった2つの巻回域が順に配置されていて、第11の実施形態の構成と同様、第3層を構成するワイヤの転位先が第1層である。
【0249】
第1巻回域Z1は、第11の実施形態における第1巻回域Z1の構成と同様、
(1-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第1巻回部分W1(ターンT1~T10)と、
(1-1a)第2層に位置されるべき第2ワイヤ4が第1巻回部分W1の第1端部7側の端部に隣接して意図的に第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d1(ターンT1)と、
(1-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第1巻回部分W1の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分W2(ターンT2~T9)と、
(1-3)第2ワイヤ4が第2巻回部分W2の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分R1(ターンT9→T10)と、
(1-4)第2ワイヤ4が第1転位部分R1に連なり第3層においてNターン(ここでは1ターン)巻回されている第3巻回部分W3(ターンT10)と、
(1-5)第2ワイヤ4が第3巻回部分W3の第2端部8側の端部から第1巻回部分W1の第2端部8側の端部よりも第2端部8側の第1層の位置まで導かれる第2転位部分R2(ターンT10→T11)と、
(1-6)第2ワイヤ4が第2転位部分R2に連なり第1層において第2端部8に向かって巻回されている第4巻回部分W4(ターンT11~T14)と、
(1-7)第1ワイヤ3が第1巻回部分W1の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第1巻回部分W1上の第2層の位置まで導かれる第3転位部分R3(ターンT10→T11)と、
(1-8)第1ワイヤ3が第3転位部分R3に連なり第2層において第2端部8に向かって第4巻回部分W4上まで巻回されている第5巻回部分W5(ターンT11~T14)と、
を有する。
【0250】
上述した第1巻回域Z1において、第1ワイヤ3が位置する層は、第1巻回部分W1と第5巻回部分W5との間で入れ替わり、第2ワイヤ4が位置する層は、第2巻回部分W2と第4巻回部分W4との間で入れ替わる。
【0251】
第2巻回域Z2は、上述の第1巻回域Z1の構成と同様、
(2-1)第1ワイヤ3が第1層において第1端部7から第2端部8に向かって巻回されている第6巻回部分W6(ターンT15~T24)と、
(2-1a)第2層に位置されるべき第2ワイヤ4が第6巻回部分W6の第1端部7側の端部に隣接して意図的に第1層において巻回されている意図的な段落ち部分d2(ターンT15)と、
(2-2)第2ワイヤ4が第2層において第1端部7から第2端部8に向かって第6巻回部分W6の延びる範囲の途中まで巻回されている第7巻回部分W7(ターンT16~T23)と、
(2-3)第2ワイヤ4が第7巻回部分W7の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第4転位部分R4(ターンT23→T24)と、
(2-4)第2ワイヤ4が第4転位部分R4に連なり第3層においてMターン(ここでは1ターン)巻回されている第8巻回部分W8(ターンT24)と、
(2-5)第2ワイヤ4が第8巻回部分W8の第2端部8側の端部から第6巻回部分W6の第2端部8側の端部よりも第2端部8側の第1層の位置まで導かれる第5転位部分R5(ターンT24→T25)と、
(2-6)第2ワイヤ4が第5転位部分R5に連なり第1層において第2端部8に向かって巻回されている第9巻回部分W9(ターンT25~T28)と、
(2-7)第1ワイヤ3が第6巻回部分W6の第2端部8側の端部から第1端部7側に方向転換されて第6巻回部分W6上の第2層の位置まで導かれる第6転位部分R6(ターンT24→T25)と、
(2-8)第1ワイヤ3が第6転位部分R6に連なり第2層において第2端部8に向かって第9巻回部分W9上まで巻回されている第10巻回部分W10(ターンT25~T28)と、
を有する。
【0252】
上述した第2巻回域Z2において、第1ワイヤ3が位置する層は、第6巻回部分W6と第10巻回部分W10との間で入れ替わり、第2ワイヤ4が位置する層は、第7巻回部分W7と第9巻回部分W9との間で入れ替わる。
【0253】
第12の実施形態によっても、第2層に位置するワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0254】
また、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第5巻回部分W5との境界(ターンT9/T11)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0255】
他方、第1巻回域Z1において、第2巻回部分W2と第5巻回部分W5との境界(ターンT9/T11)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(N+0.5)ターンずれる、+(N+0.5)ターンずれ域、具体的には、+1.5ターンずれ域F4が存在している。
【0256】
また、第2巻回域Z2において、第7巻回部分W7と第10巻回部分W10との境界(ターンT23/T25)の第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域F3が存在している。
【0257】
他方、第7巻回部分W7と第10巻回部分W10との境界(ターンT23/T25)の第2端部8側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で正方向に(M+0.5)ターンずれる、+(M+0.5)ターンずれ域、具体的には、+1.5ターンずれ域F4が存在している。
【0258】
これらのことから、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0259】
また、この実施形態では、第1巻回域Z1および第2巻回域Z2の各々内で、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4とは各々が位置する層を入れ替えるため、第1ワイヤ3の長さと第2ワイヤ4の長さとの差を小さくすることができる。このことも、コモンモードチョークコイルにおいて、モード変換特性を低減することに寄与し得る。
【0260】
以上説明した各実施形態に関して、上述したワイヤ3および4のターン数は一例にすぎず、必要に応じて増減することができる。
【0261】
以上、この発明を、コモンモードチョークコイルを構成するコイル部品に係る実施形態に関連して説明したが、この発明は、その他、たとえば巻線型チップトランスにも適用することができる。また、図示した各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【0262】
この発明には、以下のような実施態様がある。
【0263】
<1>
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記巻芯部のまわりに巻回される前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが形成する複数層のうち、前記巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層を第2層、第2層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層の外周側に巻回される層を第3層とそれぞれ表現したとき、
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの巻回状態が互いに異なる、少なくとも第1巻回域および第2巻回域を含む複数の巻回域が前記軸線方向に沿って配置されており、
前記第1巻回域は、
(1-1)前記第1ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第1巻回部分と、
(1-2)前記第2ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第1巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分と、
(1-3)前記第2ワイヤが前記第2巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分と、
(1-4)前記第2ワイヤが前記第1転位部分に連なり第3層においてNターン(Nは自然数)巻回されている第3巻回部分と、
(1-5)前記第2ワイヤが前記第3巻回部分から第2層の位置まで導かれる第2転位部分と、
(1-6)前記第2ワイヤが前記第2転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第4巻回部分と、
を有し、
前記第1巻回域と前記第2巻回域との間で、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは各々が位置する層を入れ替え、
前記第2巻回域は、
(2-1)前記第2ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第5巻回部分と、
(2-2)前記第1ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第5巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第6巻回部分と、
(2-3)前記第1ワイヤが前記第6巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第3転位部分と、
(2-4)前記第1ワイヤが前記第3転位部分に連なり第3層においてMターン(Mは自然数)巻回されている第7巻回部分と、
(2-5)前記第1ワイヤが前記第7巻回部分から第2層の位置まで導かれる第4転位部分と、
(2-6)前記第1ワイヤが前記第4転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第8巻回部分と、
を有し、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間のずれ方向に関して、前記第2ワイヤのターンがこれと同一番目の前記第1ワイヤのターンより前記第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、
前記第1巻回域および前記第2巻回域の各々には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在している、
コイル部品。
【0264】
<2>
前記第2巻回部分と前記第4巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記正方向ずれ域が存在し、
前記第2巻回部分と前記第4巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記負方向ずれ域が存在し、
前記第6巻回部分と前記第8巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記負方向ずれ域が存在し、
前記第6巻回部分と前記第8巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記正方向ずれ域が存在している、
<1>に記載のコイル部品。
【0265】
<3>
前記第2巻回部分と前記第4巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域が存在し、
前記第2巻回部分と前記第4巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域が存在し、
前記第6巻回部分と前記第8巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域が存在し、
前記第6巻回部分と前記第8巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に(M-0.5)ターンずれる、+(M-0.5)ターンずれ域が存在している、
<2>に記載のコイル部品。
【0266】
<4>
前記第3巻回部分において前記第2ワイヤが前記巻芯部のまわりで巻回されるターン数と前記第8巻回部分において前記第1ワイヤが前記巻芯部のまわりで巻回されるターン数とは互いに異なる、<1>ないし<3>のいずれかに記載のコイル部品。
【0267】
<5>
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記巻芯部のまわりに巻回される前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが形成する複数層のうち、前記巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層を第2層、第2層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層の外周側に巻回される層を第3層とそれぞれ表現したとき、
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの巻回状態が互いに異なる、少なくとも第1巻回域および第2巻回域を含む複数の巻回域が前記軸線方向に沿って配置されており、
前記第1巻回域は、
(1-1)前記第1ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第1巻回部分と、
(1-2)前記第2ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第1巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分と、
(1-3)前記第2ワイヤが前記第2巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分と、
(1-4)前記第2ワイヤが前記第1転位部分に連なり第3層においてNターン(Nは自然数)巻回されている第3巻回部分と、
(1-5)前記第2ワイヤが前記第3巻回部分から第1層の位置まで導かれる第2転位部分と、
(1-6)前記第2ワイヤが前記第2転位部分に連なり第1層において前記第2端部に向かって巻回されている第4巻回部分と、
(1-7)前記第1ワイヤが前記第1巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第3転位部分と、
(1-8)前記第1ワイヤが前記第3転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第5巻回部分と、
を有し、
前記第1巻回域と前記第2巻回域との間で、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは各々が位置する層を入れ替え、
前記第2巻回域は、
(2-1)前記第2ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第6巻回部分と、
(2-2)前記第1ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第6巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第7巻回部分と、
(2-3)前記第1ワイヤが前記第7巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第4転位部分と、
(2-4)前記第1ワイヤが前記第4転位部分に連なり第3層においてMターン(Mは自然数)巻回されている第8巻回部分と、
(2-5)前記第1ワイヤが前記第8巻回部分から第1層の位置まで導かれる第5転位部分と、
(2-6)前記第1ワイヤが前記第5転位部分に連なり第1層において前記第2端部に向かって巻回されている第9巻回部分と、
(2-7)前記第2ワイヤが前記第6巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第6転位部分と、
(2-8)前記第2ワイヤが前記第6転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第10巻回部分と、
を有し、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間のずれ方向に関して、前記第2ワイヤのターンがこれと同一番目の前記第1ワイヤのターンより前記第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、
前記第1巻回域および前記第2巻回域の各々には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在している、
コイル部品。
【0268】
<6>
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記巻芯部のまわりに巻回される前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが形成する複数層のうち、前記巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側に巻回される層を第2層、第2層に位置するワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層の外周側に巻回される層を第3層とそれぞれ表現したとき、
少なくとも第1巻回域および第2巻回域を含む複数の巻回域が前記軸線方向に沿って配置されており、
前記第1巻回域は、
(1-1)前記第1ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第1巻回部分と、
(1-2)前記第2ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第1巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第2巻回部分と、
(1-3)前記第2ワイヤが前記第2巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第1転位部分と、
(1-4)前記第2ワイヤが前記第1転位部分に連なり第3層においてNターン(Nは自然数)巻回されている第3巻回部分と、
(1-5)前記第2ワイヤが前記第3巻回部分から第1層の位置まで導かれる第2転位部分と、
(1-6)前記第2ワイヤが前記第2転位部分に連なり第1層において前記第2端部に向かって巻回されている第4巻回部分と、
(1-7)前記第1ワイヤが前記第1巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第3転位部分と、
(1-8)前記第1ワイヤが前記第3転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第5巻回部分と、
を有し、
前記第1ワイヤが位置する層は、前記第1巻回部分と前記第5巻回部分との間で入れ替わり、前記第2ワイヤが位置する層は、前記第2巻回部分と前記第4巻回部分との間で入れ替わり、
前記第2巻回域は、
(2-1)前記第1ワイヤが第1層において前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回されている第6巻回部分と、
(2-2)前記第2ワイヤが第2層において前記第1端部から前記第2端部に向かって前記第6巻回部分の延びる範囲の途中まで巻回されている第7巻回部分と、
(2-3)前記第2ワイヤが前記第7巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第3層の位置まで導かれる第4転位部分と、
(2-4)前記第2ワイヤが前記第4転位部分に連なり第3層においてMターン(Mは自然数)巻回されている第8巻回部分と、
(2-5)前記第2ワイヤが前記第8巻回部分から第1層の位置まで導かれる第5転位部分と、
(2-6)前記第2ワイヤが前記第5転位部分に連なり第1層において前記第2端部に向かって巻回されている第9巻回部分と、
(2-7)前記第1ワイヤが前記第6巻回部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に方向転換されて第2層の位置まで導かれる第6転位部分と、
(2-8)前記第1ワイヤが前記第6転位部分に連なり第2層において前記第2端部に向かって巻回されている第10巻回部分と、
を有し、
前記第1ワイヤが位置する層は、前記第6巻回部分と前記第10巻回部分との間で入れ替わり、前記第2ワイヤが位置する層は、前記第7巻回部分と前記第9巻回部分との間で入れ替わり、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間のずれ方向に関して、前記第2ワイヤのターンがこれと同一番目の前記第1ワイヤのターンより前記第2端部側にある場合、正方向のずれとし、逆の場合には、負方向のずれとしたとき、
前記第1巻回域および前記第2巻回域の各々には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間でターンが正方向にずれる正方向ずれ域と負方向にずれる負方向ずれ域とが存在している、
コイル部品。
【0269】
<7>
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記負方向ずれ域が存在し、
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記正方向ずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記正方向ずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記負正方向ずれ域が存在している、
<5>または<6>に記載のコイル部品。
【0270】
<8>
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域が存在し、
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に(N-0.5)ターンずれる、+(N-0.5)ターンずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ域が存在している、
<7>に記載のコイル部品。
【0271】
<9>
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に0.5ターンずれる、-0.5ターンずれ域が存在し、
前記第2巻回部分と前記第5巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に(N+0.5)ターンずれる、+(N+0.5)ターンずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で正方向に0.5ターンずれる、+0.5ターンずれ域が存在し、
前記第7巻回部分と前記第10巻回部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で負方向に(M+0.5)ターンずれる、-(M+0.5)ターンずれ域が存在している、
<7>に記載のコイル部品。
【0272】
<10>
前記第3巻回部分において前記第2ワイヤが前記巻芯部のまわりで巻回されるターン数と前記第8巻回部分において前記第1ワイヤが前記巻芯部のまわりで巻回されるターン数とは互いに異なる、<5>ないし<9>のいずれかに記載のコイル部品。
【0273】
<11>
前記第1巻回部分の前記第1端部側の端部において、前記第2ワイヤは、前記第1ワイヤが位置する第1層に並んで前記巻芯部の周面に接する意図的な段落ち部分を有する、<1>ないし<10>のいずれかに記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0274】
1 コイル部品
2 コア
3 第1ワイヤ
4 第2ワイヤ
5 巻芯部
6 軸線方向
7 第1端部
8 第2端部
Z1~Z3 巻回域
W1~W12 巻回部分
R1~R6 転位部分
d,d1,d2 意図的な段落ち部分
S 入れ替え部分
F1 +0.5ターンずれ域
F2 -1.5ターンずれ域
F3 -0.5ターンずれ域
F4 +1.5ターンずれ域
F5 -2.5ターンずれ域
F6 +2.5ターンずれ域