(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010780
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】電動機の制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/20 20160101AFI20240118BHJP
【FI】
H02P29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112273
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藍原 隆司
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA22
5H501CC04
5H501CC05
5H501DD03
5H501DD04
5H501GG01
5H501GG03
5H501GG05
5H501GG08
5H501GG20
5H501HA09
5H501HB07
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ16
5H501JJ23
5H501JJ24
5H501LL07
5H501LL22
5H501LL35
5H501LL49
(57)【要約】
【課題】高タクトな機械の動作を実現する技術を提供する。
【解決手段】電動機の制御装置は、荷重指令値と荷重検出値との荷重偏差に基づき荷重調節用トルク指令値を生成する荷重調節器と、速度指令値と速度検出値との速度偏差に基づき速度調節用トルク指令値を生成する速度調節器と、前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算してトルク指令値を出力するトルク加算器と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重指令値と荷重検出値との荷重偏差に基づき荷重調節用トルク指令値を生成する荷重調節器と、
速度指令値と速度検出値との速度偏差に基づき速度調節用トルク指令値を生成する速度調節器と、
前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算してトルク指令値を出力するトルク加算器と、
を備える、電動機の制御装置。
【請求項2】
前記荷重偏差に係数を乗算して前記速度指令値を出力する乗算器をさらに備える、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記荷重調節器が前記荷重偏差に基づき比例積分制御を行い、前記速度調節器が前記速度偏差に基づき比例制御を行う、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記荷重調節用トルク指令値を荷重側制限値に制限して出力する荷重調節用トルクリミッタと、
前記速度調節用トルク指令値を速度側制限値に制限して出力する速度調節用トルクリミッタと、
をさらに備え、
前記荷重調節用トルクリミッタは、前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算した前記トルク指令値が減速トルク指令値になるように前記荷重側制限値を設定し、
前記速度調節用トルクリミッタは、前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算した前記トルク指令値が減速トルク指令値になるように前記速度側制限値を設定する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記荷重調節用トルク指令値を荷重側制限値に制限して出力する荷重調節用トルクリミッタと、
前記速度調節用トルク指令値を速度側制限値に制限して出力する速度調節用トルクリミッタと、
をさらに備え、
前記荷重調節用トルクリミッタは、前記荷重側制限値の絶対値が前記速度側制限値の絶対値より小さくなるように前記荷重側制限値を設定し、
前記速度調節用トルクリミッタは、前記速度側制限値の絶対値が前記荷重側制限値の絶対値より大きくなるように前記速度側制限値を設定する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記荷重検出値が所定の閾値を超えるまで前記荷重調節器における比例積分制御の積分をリセット又はホールドする積分リセット器をさらに備える、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項7】
前記荷重検出値が所定の閾値を超えるまで前記荷重指令値又は前記速度指令値にバイアス値を加算するバイアス加算器をさらに備える、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項8】
電動機の制御装置による制御方法であって、前記制御装置が、
荷重指令値と荷重検出値との荷重偏差に基づき荷重調節用トルク指令値を生成するステップと、
速度指令値と速度検出値との速度偏差に基づき速度調節用トルク指令値を生成するステップと、
前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算してトルク指令値を生成するステップと、
を実行する、制御方法。
【請求項9】
荷重指令値と荷重検出値との荷重偏差に基づき荷重調節用トルク指令値を生成するステップと、
速度指令値と速度検出値との速度偏差に基づき速度調節用トルク指令値を生成するステップと、
前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算してトルク指令値を生成するステップと、
を電動機を制御するコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機の制御装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機の制御モードを位置指令に基づく位置制御から荷重指令に基づく荷重制御に切替える制御装置が知られている。
【0003】
また、電動機の制御装置には、荷重制御を行う荷重制御部から速度制御を行う速度制御部に対して速度指令を出力するものがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、荷重制御の出力を速度指令とするため、荷重制御の応答を速度制御の応答より速くすることは原理的にできない。荷重制御の出力をトルク指令とする場合、高応答な制御を期待できるが、荷重制御が安定しない虜がある。
【0006】
本開示は、高タクトな機械の動作を実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、荷重指令値と荷重検出値との荷重偏差に基づき荷重調節用トルク指令値を生成する荷重調節器と、速度指令値と速度検出値との速度偏差に基づき速度調節用トルク指令値を生成する速度調節器と、前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算してトルク指令値を出力するトルク加算器と、を備える、電動機の制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、高タクトな機械の動作を実現する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の制御システムのシステム構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態の制御システムの機能構成例を示す図である。
【
図3】第1実施形態の荷重制御部の機能構成例を示す図である。
【
図4】第1実施形態の制御システムを適用した実施例1を示す図である。
【
図5】比較例1と実施例1の制御装置の差異を示すタイミングチャートである。
【
図6】比較例2と実施例1の制御装置の差異を示すタイミングチャートである。
【
図7】比較例3と実施例1の制御装置の差異を示すタイミングチャートである。
【
図8】第2実施形態の荷重制御部の機能構成例を示す図である。
【
図9】比較例4と実施例2の制御装置の差異を示すタイミングチャートである。
【
図10】第3実施形態の荷重制御部の機能構成例を示す図である。
【
図11】比較例5と実施例3の制御装置の差異を示すタイミングチャートである。
【
図12】第4実施形態の荷重制御部の機能構成例を示す図である。
【
図13】比較例6と実施例4の制御装置の差異を示すタイミングチャートである。
【
図14】比較例6と実施例5の制御装置の差異を示すタイミングチャートである。
【
図15】第5実施形態の制御システムの機能構成例を示す図である。
【
図16】第6実施形態の制御システムの機能構成例を示す図である。
【
図17】第6実施形態の荷重制御部の機能構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本開示の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。
【0011】
<第1実施形態>
以下、第1実施形態の制御システム1について説明する。
【0012】
<<システム構成>>
図1は、本実施形態の制御システム1のシステム構成例を示す図である。制御システム1は、1つの電動機100を駆動制御する1軸のサーボシステムであるが、複数の電動機100を駆動制御する多軸のサーボシステムでもよい。
【0013】
制御システム1は、電動機100と、駆動制御装置200と、を備えている。電動機100は、検出センサ101を備えるサーボモータであり、駆動制御装置200は、電動機100を駆動制御するサーボアンプである。
【0014】
制御システム1は、上位制御装置400をさらに備えていてもよい。上位制御装置400は、1つ又は複数の駆動制御装置200を制御する上位コントローラである。上位制御装置400は、駆動制御装置200に通信可能に接続する。
【0015】
電動機100は、交流電動機であるが、直流電動機でもよい。電動機100は、同期電動機であるが、誘導電動機でもよい。電動機100は、回転式モータであるが、リニアモータでもよい。例えば、電動機100は、U相、V相、及びW相の三相の巻線を設けたステータと、永久磁石を設けたロータと、を備えている。三相の巻線は、スター結線されるが、デルタ結線されてもよい。
【0016】
検出センサ101は、ロータの回転角度又は回転角速度等の電動機100の位置又は速度を検知するエンコーダであるが、ホール素子、又はレゾルバ等でもよい。検出センサ101は、電動機100の位置又は速度に応じた電気信号をパルス信号等により出力する。
【0017】
電動機100は、ボールねじ及びテーブル等を備えた機械300を駆動する。機械300は、制御対象部位311にかかる荷重を検知するロードセル等の荷重センサ301を備えている。荷重センサ301は、制御対象部位311の荷重に応じた電気信号を制御装置220に出力する。
【0018】
駆動制御装置200は、商用電源等の交流の電源PSから、R相、S相、及びT相の三相交流又は単相交流の交流電力を入力して電動機100の駆動電力に変換する。駆動制御装置200は、二次電池等の直流の電源PSから直流電力を入力して電動機100の駆動電力に変換してもよい。
【0019】
駆動制御装置200は、インバータ装置等の電力変換装置210(駆動装置)と、MCU(Micro Control Unit:マイクロコントローラ)等の制御装置220と、を備えている。電力変換装置210は、電源PSの電力を電動機100の駆動電力に変換する。制御装置220は、上位制御装置400に通信可能に接続する。制御装置220は、上位制御装置400の制御指令に応じて電動機100を制御する。
【0020】
電力変換装置210は、コンバータ回路211と、平滑コンデンサ212と、インバータ回路213と、駆動信号生成部214と、電流センサ215と、を備えている。電源PSが直流電源である場合、電力変換装置210は、コンバータ回路211及び平滑コンデンサ212を備えていなくてよい。
【0021】
コンバータ回路211は、交流を直流に変換する。平滑コンデンサ212は、直流電圧を平滑化する。インバータ回路213は、例えば電圧形インバータである。インバータ回路213は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の6個のスイッチング素子を備え、PWM(Pulse Width Modulation)信号等の駆動信号に応じて直流を交流に変換する。
【0022】
駆動信号生成部214は、U相、V相、及びW相の三相交流のそれぞれの電圧指令に応じてPWM信号等の駆動信号をそれぞれ生成する。駆動信号生成部214は、PWM信号等の駆動信号をインバータ回路213の6個のスイッチング素子に出力する。
【0023】
インバータ回路213のスイッチング素子のそれぞれのゲート端子は、駆動信号生成部214に接続されている。6個のスイッチング素子は、駆動信号に応じてオンオフ間隔を変化させ、正弦波のU相、V相、及びW相の三相交流の駆動電力を生成する。駆動信号生成部214は、制御装置220の中にあってもよい。
【0024】
電流センサ215は、U相、V相、及びW相の三相の巻線に流れる電流をそれぞれ検知する。電流センサ215は、巻線に流れる電流に応じた電気信号を制御装置220に出力する。
【0025】
制御装置220は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を備えている。制御装置220は、NVRAM(Non Volatile Random Access Memory)、及び入出力回路等をさらに備えている。
【0026】
制御装置220は、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備えていてもよい。
【0027】
CPUは、制御装置220の全体を制御すると共に、各種演算処理を実行する。ROMは、IPL(Initial Program Loader)等のCPUの駆動に用いるプログラムを記憶する。RAMは、プログラムをロードする記憶領域として又はロードしたプログラムのワークエリアとして使用する。
【0028】
NVRAMは、CPUにより実行される各種プログラムを記憶する。入出力回路は、センサ等の入力信号をA/D(Analog to Digital)変換するA/D変換器と、出力信号をD/A(Digital to Analog)変換するD/A変換器等を備えている。
【0029】
制御装置220は、電動機100の位置制御、速度制御、及び電流制御を行う。また、制御装置220は、制御対象部位311の荷重に基づいて電動機100の荷重制御を行う。制御方式としては、P(Proportional:比例)制御、PI(Proportional-Integral:比例積分)制御、又はPID(Proportional-Integral-Differential:比例積分微分)制御が用いられる。
【0030】
制御装置220は、上位制御装置400から電動機100の制御指令をパルス信号等により入力してA/D変換する。制御指令は、位置指令、速度指令、トルク指令、又は荷重指令等を含む。
【0031】
上位制御装置400は、モーションコントローラ等の上位コントローラである。上位制御装置400は、PLC(Programmable Logic Controller)等を備えている。上位制御装置400は、PTP(Point To Point)制御又はCP(Continuous Path)制御等により、1つ又は複数の電動機100の制御装置220を制御する。
【0032】
本実施形態の制御装置220は、電動機の制御モードを位置制御と荷重制御との間で切替える。
【0033】
制御装置220は、検出センサ101、電流センサ215、及び荷重センサ301の出力信号をそれぞれ入力してA/D変換する。制御装置220は、A/D変換された位置検出値、電流検出値、及び荷重検出値に基づいてフィードバック制御を行う。
【0034】
制御装置220は、U相、V相、及びW相の三相交流のそれぞれの電圧指令を駆動信号生成部214に出力する。駆動信号生成部214は、電圧指令に応じてPWM信号等の駆動信号を生成し、インバータ回路213の6個のスイッチング素子のオンオフ間隔を変化させる。
【0035】
電動機100のステータは、U相、V相、及びW相の三相交流に応じて回転磁界を生成し、電動機100のロータが回転する。電動機100のロータは、ボールねじ及びテーブル等の機械300に動力を伝達する。荷重センサ301は、機械300の動作に応じた制御対象部位311の荷重を検知する。
【0036】
<<機能構成>>
以下、本実施形態の制御システム1の機能構成について説明する。
図2は、本実施形態の制御システム1の機能構成例を示す図である。
図2に示す各種機能は、1以上のプログラムがCPU等のプロセッサに実行させる処理により実現する。
【0037】
制御装置220は、位置制御部221と、速度制御部222と、電流制御部223と、位置検出部224と、速度検出部225と、電流検出部226と、を備えている。
【0038】
本実施形態の制御装置220は、荷重制御部227と、荷重検出部228と、切替器229と、をさらに備えている。
【0039】
上位制御装置400は、指令部401を備えている。制御装置220の少なくとも一部の機能は、後述の実施形態で説明するように上位制御装置400が担当してもよい。
【0040】
指令部401は、PTP制御又はCP制御等を行う移動制御器を備えている。指令部401は、PTP制御又はCP制御等に基づき、電動機100の目標位置を含む位置指令値p*を生成する。指令部401は、位置指令値p*をパルス信号等により制御装置220に出力して、制御装置220の位置制御を活性化する。
【0041】
位置制御部221は、位置指令値p*と位置検出値pdetとの位置偏差に基づき、P制御、PI制御、又はPID制御を行う位置調節器を備えている。位置制御部221は、位置偏差をゼロに近づけるための第1速度指令値ω1*を出力する。
【0042】
速度制御部222は、第1速度指令値ω1*と速度検出値ωdetとの速度偏差に基づき、P制御、PI制御、又はPID制御を行う速度調節器を備えている。速度制御部222は、速度偏差をゼロに近づけるための第1トルク指令値τ1*を出力する。
【0043】
電流制御部223は、トルク指令値τ*を入力する。電流制御部223は、トルク指令値τ*に係数を乗算した電流指令値I*と電流検出値Idetとの電流偏差に基づき、P制御、PI制御、又はPID制御を行う電流調節器を備えている。電流制御部223は、電流偏差をゼロに近づけるための電圧指令値V*を駆動信号生成部214に出力する。
【0044】
電流制御部223は、ベクトル制御を行ってもよい。つまり、電流制御部223は、ベクトル変換器と、ベクトル逆変換器と、を備えていてもよい。
【0045】
ベクトル変換器は、U相、V相、及びW相の三相交流の電流検出値Iu、Iv、及びIwを、α軸及びβ軸の電流検出値Iα及びIβに相変換する。ベクトル変換器は、位置検出値pdet(磁極位置)に基づいてd軸(磁束軸相当)及びq軸(トルク軸相当)の電流検出値Id及びIqに座標変換する。
【0046】
α軸は、U相の巻線方向に規定され、β軸は、α軸より電気角で90°(π/2)進んだ方向に規定される。d軸は、ロータに設けられた永久磁石のN極の向き(磁極位置)に規定され、q軸は、d軸より電気角で90°(π/2)進んだ方向に規定される。
【0047】
電流制御部223内の電流調節器は、d軸の電流指令値Id*とd軸の電流検出値Idとの電流偏差、及びトルク指令値τ*に係数を乗算したq軸の電流指令値Iq*とq軸の電流検出値Iqとの電流偏差に基づき、P制御、PI制御、又はPID制御を行う。電流調節器は、電流偏差をゼロに近づけるための電圧指令値Vd*及びVq*をベクトル逆変換器に出力する。
【0048】
ベクトル逆変換器は、電動機100の電気位相角及び磁極位置等に基づき、電圧指令値Vd*及びVq*を、U相、V相、及びW相の三相交流の電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*に相変換して駆動信号生成部214に出力する。
【0049】
電流指令値I*は、d軸及びq軸の電流指令値Id*及びIq*の総称であり、電圧指令値V*は、U相、V相、及びW相の三相交流の電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*の総称である。
【0050】
位置検出部224は、検出センサ101の出力信号に基づき、ロータの回転角度等の電動機100の位置検出値pdetを検出する。
【0051】
速度検出部225は、検出センサ101の出力信号に基づき、ロータの回転角速度等の電動機100の速度検出値ωdetを検出する。
【0052】
電流検出部226は、電流センサ215の出力信号に基づき、U相、V相、及びW相の三相交流の電流検出値Iu、Iv、及びIw等の電流検出値Idetを検出する。電流検出値Idetは、三相交流の電流検出値Iu、Iv、及びIwの総称である。
【0053】
指令部401は、制御対象部位311の目標荷重を含む荷重指令値f*を生成する。指令部401は、荷重指令値f*をパルス信号等により制御装置220に出力して、制御装置220の荷重制御を活性化する。
【0054】
荷重制御部227は、後述するように、荷重指令値f*と荷重検出値fdetとの荷重偏差に基づき、PI制御を行う荷重調節器を備えている。
【0055】
荷重制御部227は、後述するように、第2速度指令値ω2*と速度検出値ωdetとの速度偏差に基づき、P制御を行う速度調節器をさらに備えている。
【0056】
また、荷重制御部227は、後述するように、荷重偏差feに係数Kを乗算して第2速度指令値ω2*を生成する乗算器を備えている。
【0057】
荷重制御部227は、荷重偏差と速度偏差をゼロに近づけるための第2トルク指令値τ2*を電流制御部223に出力する。なお、第2トルク指令値τ2*は、本開示の「トルク指令値」の一例である。
【0058】
荷重検出部228は、荷重センサ301の出力信号に基づき、制御対象部位311にかかる荷重検出値fdetを検出する。
【0059】
切替器229は、電動機100の制御モードを、位置指令値p*に基づく位置制御と、荷重指令値f*に基づく荷重制御との間で切替える。
【0060】
切替器229は、速度制御部222と電流制御部223との間に設けられる。切替器229は、位置制御に基づく第1トルク指令値τ1*と、荷重制御に基づく第2トルク指令値τ2*とを切替える。
【0061】
電動機100の制御モードが位置制御である場合は、切替器229が第1トルク指令値τ1*をトルク指令値τ*として電流制御部223に出力する。一方、電動機100の制御モードが荷重制御である場合は、切替器229が第2トルク指令値τ2*をトルク指令値τ*として電流制御部223に出力する。
【0062】
以下、本実施形態の荷重制御部227の機能構成について説明する。
図3は、本実施形態の荷重制御部227の機能構成例を示す図である。
図3に示す各種機能は、1以上のプログラムがCPU等のプロセッサに実行させる処理により実現する。
【0063】
荷重制御部227は、荷重調節用減算器230と、荷重調節器231と、乗算器232と、速度調節用減算器233と、速度調節器234と、トルク加算器235と、を備えている。
【0064】
荷重調節用減算器230は、荷重指令値f*と荷重検出値fdetとを減算して荷重偏差feを出力する。
【0065】
荷重調節器231は、荷重指令値f*と荷重検出値fdetとの荷重偏差feに基づき、PI制御を行う。荷重調節器231は、荷重偏差feをゼロに近づけるための荷重調節用トルク指令値fτ*を出力する。
【0066】
乗算器232は、荷重偏差feに係数Kを乗算して第2速度指令値ω2*を出力する。
【0067】
速度調節用減算器233は、第2速度指令値ω2*と速度検出値ωdetとを減算して速度偏差ωeを速度調節器234に出力する。
【0068】
速度調節器234は、第2速度指令値ω2*と速度検出値ωdetとの速度偏差ωeに基づき、P制御を行う。速度調節器234は、速度偏差ωeをゼロに近づけるための速度調節用トルク指令値ωτ*を出力する。
【0069】
トルク加算器235は、荷重調節用トルク指令値fτ*と、速度調節用トルク指令値ωτ*とを加算する。トルク加算器235は、荷重偏差と速度偏差をゼロに近づけるための第2トルク指令値τ2*を出力する。
【0070】
<<実施例1>>
以下、本実施形態の制御システム1を適用した実施例1について説明する。
図4は、本実施形態の制御システム1を適用した実施例1を示す図である。
【0071】
機械300は、ウエハW等の被検査体を検査する検査装置である。機械300は、ウエハWに形成されたIC(Integrated Circuit)チップ等の複数のデバイスDの電気的又は機械的な特性を検査するプローバである。
【0072】
機械300は、プローブカード302と、複数のプローブ303と、ウエハチャック304と、アライメント装置310と、をさらに備えている。
【0073】
プローブカード302は、ウエハWを載置するウエハチャック304の上方に配置される。プローブカード302は、ウエハWに形成されたデバイスDの各電極パッドに電気的に接触する複数のプローブ303を備えている。
【0074】
複数のプローブ303は、スプリングピン等のプローブピンであり、プローブカード302の下面から下方に向けて突出する。複数のプローブ303は、図示しないテストヘッドの各端子に接続されていて、テストヘッドから電力及び検査信号を供給される。テストヘッドは、ウエハW上のデバイスDからの出力信号を測定して、各デバイスが正常に動作するかを電気的に又は機械的に検査する。
【0075】
プローブカード302は、複数のプローブ303の少なくとも一部の荷重を検知するロードセル等の荷重センサ301を備えている。
【0076】
ウエハチャック304は、真空吸着等によりウエハWを吸着して固定する。ウエハチャック304の内部には、150℃等の高温状態又は-40℃等の低温状態でデバイスDの電気的又は機械的な特性検査を行うため、図示しない加熱冷却機構が設けられる。
【0077】
ウエハWが加熱されると、プローブカード302が熱膨張して、プローブ303とデバイスDの電極パッドとが目標荷重以上のコンタクト荷重で接触し、デバイスD又はプローブ303が損傷することがある。
【0078】
ウエハチャック304は、アライメント装置310に支持される。アライメント装置310は、ウエハチャック304をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動させ、Z軸回りのθ方向に回転させることにより、複数のプローブ303を各デバイスDの電極パッドに接触させる。
【0079】
アライメント装置310は、ラックギア305、ピニオンギア306、固定部材307、X軸テーブル308、及びY軸テーブル309等を備えている。
【0080】
ラックギア305は、ウエハチャック304に固定される。ピニオンギア306は、ラックギア305に螺合する。ピニオンギア306は、Z軸用の電動機100のロータシャフト102に固定される。電動機100は、固定部材307に固定される。
【0081】
電動機100のロータシャフト102は、ピニオンギア306を回転させる。ピニオンギア306は、ラックギア305をZ軸方向に移動させる。ラックギア305は、ウエハチャック304をZ軸方向に直動して、デバイスDの各電極パッドを各プローブ303に接触させる。
【0082】
アライメント装置310は、図示しないが、X軸用、Y軸用、Z軸用、及びθ軸用の複数の電動機100を備えている。
【0083】
X軸テーブル308は、X軸用の電動機100によりX軸方向に移動し、Y軸テーブル309は、Y軸用の電動機100によりY軸方向に移動する。ウエハチャック304は、θ軸用の電動機100によりZ軸回りのθ方向に回転する。
【0084】
本例の制御システム1は、X軸用、Y軸用、Z軸用、及びθ軸用の複数の電動機100を駆動制御する多軸のサーボシステムである。
【0085】
プローブカード302の熱膨張等により、デバイスDの各電極パッドと各プローブ303との接触位置が変化することがある。
【0086】
そこで、制御システム1は、X軸用、Y軸用、Z軸用、及びθ軸用の複数の電動機100を位置制御して、デバイスDの電極パッドがプローブ303に接触する直前の目標位置までウエハチャック304を高速に移動させる。
【0087】
次いで、制御システム1は、位置制御から荷重制御に切替え、Z軸用の電動機100を荷重制御して、プローブ303のコンタクト荷重が目標荷重になるまでウエハチャック304をZ軸方向に移動させる。
【0088】
検査装置がデバイスDの電気的又は機械的な特性検査を終了した後、制御システム1は、荷重制御から位置制御に切替え、次のデバイスDの電極パッドがプローブ303に接触する直前の目標位置までウエハチャック304を高速に移動させる。
【0089】
以降、制御システム1は、ウエハW上の全てのデバイスDの検査が終了するまで同じシステム制御を繰り返す。
【0090】
斯かる制御システム1において、指令部401は、デバイスDの各電極パッドが各プローブ303に接触する0.1mm手前までウエハチャック304を移動させるPTP制御を行った。指令部401は、PTP制御に基づき、位置指令値p*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて位置制御を活かした。
【0091】
次いで、指令部401は、2Nの荷重指令値f*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて荷重制御を活かした。
【0092】
<<比較例1>>
比較例1の制御装置220は、
図2に示す第2速度指令値ω2*を荷重制御部227から速度制御部222に出力する構成とした。切替器229は、位置制御部221と速度制御部222との間に設けられ、位置制御に基づく第1速度指令値ω1*と、荷重制御に基づく第2速度指令値ω2とを切替えた。つまり比較例1では、速度指令ベースの荷重制御を行った。
【0093】
図5は、比較例1と実施例1の制御装置220の差異を示すタイミングチャートである。
図5は、Z軸用の電動機100の制御装置220における各種信号の変化と信号間の関係を示している。
【0094】
第1時刻t1において、指令部401は、デバイスDの電極パッドがプローブ303に接触する0.1mm手前までウエハチャック304を移動させるPTP制御を行った。指令部401は、位置指令値p*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて位置制御を活かした。
【0095】
第2時刻t2において、指令部401は、2Nの荷重指令値f*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて荷重制御を活かした。切替器229は、電動機100の制御モードを位置制御から荷重制御に切替えた。
【0096】
比較例1の制御装置220では、第2時刻t2において、荷重制御部227が12mm/sの第2速度指令値ω2*を出力した。しかし、速度制御の応答の制限を受けるため、荷重制御の応答が遅かった。結果として、囲み線CFで示すように、荷重指令値f*を与えた第2時刻t2から荷重検出値fdetが目標荷重の2Nに到達する第3時刻までに26msかかった。
【0097】
対照的に、実施例1の制御装置220では、荷重制御部227が速度偏差と荷重偏差をゼロに近づけるための第2トルク指令値τ2*を出力した。荷重制御部227はトルク指令を直接操作するため、囲み線EFに示すように、第2時刻から目標荷重の2Nに到達する第3時刻までに10msしかかからなかった。
【0098】
<<比較例2>>
比較例2の制御装置220は、
図3に示す速度調節器234を備えていない構成とした。つまり比較例2では、トルク指令ベースの荷重制御を行うが、速度を安定化する機能を備えていない構成とした。
【0099】
図6は、比較例2と実施例1の制御装置220の差異を示すタイミングチャートである。
図6は、Z軸用の電動機100の制御装置220における各種信号の変化と信号間の関係を示している。
【0100】
第1時刻t1において、指令部401は、デバイスDの電極パッドがプローブ303に接触する0.1mm手前までウエハチャック304を移動させるPTP制御を行った。指令部401は、位置指令値p*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて位置制御を活かした。
【0101】
第2時刻t2において、指令部401は、2Nの荷重指令値f*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて荷重制御を活かした。切替器229は、電動機100の制御モードを位置制御から荷重制御に切替えた。
【0102】
比較例2の制御装置220では、電動機100が停止した0.13秒後の第2時刻t2に荷重制御を活かした。荷重制御部227が第2トルク指令値τ2*を出力して、トルクが電動機100に加わり、電動機100が加速した。
【0103】
しかし、囲み線CFで示すように勢いにより荷重が2Nの設定値を越え、トルクが負側に振り、囲み線CWに示すように速度検出値ωdetが負になった。デバイスDの電極パッドがプローブ303に接触する手前側に位置し、荷重がゼロになった。電動機100は荷重制御により再加速したが、同じことの繰り返しで荷重制御が安定しなかった。
【0104】
つまり比較例2の制御装置220には、速度を安定化する機能がないため、荷重制御が安定化しないことが分かった。
【0105】
対照的に、実施例1の制御装置220では、荷重制御部227が速度偏差ωeと荷重偏差feをゼロに近づけるための第2トルク指令値τ2*を出力した。結果として、囲み線EWに示すように速度が安定化し、荷重制御を安定化することができた。
【0106】
<<比較例3>>
比較例3の制御装置220は、
図3に示す荷重調節器231が荷重偏差feに基づきPI制御を行い、速度調節器234が速度偏差ωeに基づきPI制御を行う構成とした。
【0107】
図7は、比較例3と実施例1の制御装置220の差異を示すタイミングチャートである。
図7は、Z軸用の電動機100の制御装置220における各種信号の変化と信号間の関係を示している。
【0108】
第2時刻t2において、ウエハチャック304がデバイスDの電極パッドをプローブ303に接触させる0.1mm手前で停止している際に、指令部401は、2Nの荷重指令値f*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて荷重制御を活かした。
【0109】
比較例3の制御装置220では、荷重調節器231と速度調節器234がいずれもPI制御を行ったため、正方向動作において、正値である荷重調節用トルク指令値fτ*と、負値である速度調節用トルク指令値ωτ*とが互いに打ち消し合った。第2トルク指令値τ2*はゼロになった。結果として、囲み線CFで示すように、荷重検出値fdetがゼロになり、荷重制御を行うことができなかった。或いは、図示しないが、荷重制御の応答が極端に遅くなった。
【0110】
対照的に、実施例1の制御装置220では、荷重調節器231がPI制御を行い、速度調節器234がP制御のみを行ったため、正方向動作において、正値である荷重調節用トルク指令値fτ*と、負値である速度調節用トルク指令値ωτ*とのバランス点ができた。第2トルク指令値τ2*はゼロにならなかった。結果として、囲み線EFで示すように、荷重制御を行うことができた。或いは、荷重検出値fdetが2Nの目標荷重に速く収束した。
【0111】
<<第1実施形態の作用効果>>
第1実施形態の制御装置220では、
図3に示すように、荷重制御部227が、荷重調節器231と、速度調節器234と、トルク加算器235と、を備えている。
【0112】
荷重調節器231は、荷重指令値f*と荷重検出値fdetとの荷重偏差feに基づき、荷重調節用トルク指令値fτ*を生成する。
【0113】
速度調節器234は、第2速度指令値ω2*と速度検出値ωdetとの速度偏差ωeに基づき、速度調節用トルク指令値ωτ*を生成する。
【0114】
トルク加算器235は、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*とを加算して第2トルク指令値τ2*を生成する。
【0115】
荷重制御部227には、速度調節器234により速度を安定化する機能があるため、荷重制御を安定化することができる。そして、荷重制御部227は、第2トルク指令値τ2*を出力するため、高応答な制御を実現することができる。
【0116】
また、第1実施形態の制御装置220では、荷重制御部227が荷重偏差feに係数Kを乗算して第2速度指令値ω2を出力する乗算器232をさらに備えている。
【0117】
荷重偏差feに比例した値を第2速度指令値ω2とすることにより、電動機100の速度を荷重偏差feに応じて調整することができる。例えば、荷重偏差feが大きい場合には、荷重を加える電動機100の速度が速くなり、荷重偏差feがゼロになった場合には、電動機100が停止することになる。
【0118】
さらに、第1実施形態の制御装置220では、荷重調節器231が荷重偏差feに基づきPI制御を行い、速度調節器234が速度偏差ωeに基づきP制御を行う。
【0119】
荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*は互いに打ち消し合うように作用するため、速度調節器234がP制御のみを行うことにより、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*との間にバランス点ができる。
【0120】
つまり、速度調節用トルク指令値ωτ*の絶対値と荷重調節用トルク指令値fτ*の絶対値が異なるようになり、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*との加算結果である第2トルク指令値τ2*がゼロにならない。結果として、荷重制御を行うことができる。或いは、荷重制御の応答が比較的速くなる。
【0121】
以上から、第1実施形態によれば、高タクトな機械の動作を実現する技術を提供することができる。
【0122】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態の制御システム1について説明する。なお、前述の実施形態と重複する記載については説明を適宜省略する。
【0123】
<<機能構成>>
図8は、本実施形態の荷重制御部227の機能構成例を示す図である。
図8に示す各種機能は、1以上のプログラムがCPU等のプロセッサに実行させる処理により実現する。
【0124】
荷重制御部227は、オーバーフローを防止するため、荷重調節用トルクリミッタ236と、速度調節用トルクリミッタ237と、をさらに備えている。
【0125】
荷重調節用トルクリミッタ236は、荷重調節用トルク指令値fτ*を、荷重側制限値FTLIMp、FTLIMnに制限して出力する。
【0126】
第1の荷重側制限値FTLIMpは、正方向動作用の荷重調節用トルク上限値である。第2の荷重側制限値FTLIMnは、負方向動作用の荷重調節用トルク下限値である。
【0127】
速度調節用トルクリミッタ237は、速度調節用トルク指令値ωτ*を、速度側制限値WTLIMp、WTLIMnに制限して出力する。
【0128】
第1の速度側制限値WTLIMpは、正方向動作用の速度調節用トルク下限値である。第2の速度側制限値WTLIMnは、負方向動作用の速度調節用トルク上限値である。
【0129】
なお、正方向動作とは、電動機100の正回転等の電動機100の正方向動作を意味する。負方向動作とは、電動機100の負回転等の電動機100の負方向動作を意味する。
【0130】
正方向動作では、荷重調節用トルク指令値fτ*が正値になり、速度調節用トルク指令値ωτ*が負値になるため、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*とが互いに打ち消し合うように作用する。
【0131】
従って、第1の荷重側制限値FTLIMpの絶対値と第1の速度側制限値WTLIMpの絶対値とを同じ値にした場合、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*との加算結果である第2トルク指令値τ2*がゼロになる。ひいては、電動機100が減速できず、荷重のオーバーシュートが発生してしまう。
【0132】
同様に、負方向動作では、荷重調節用トルク指令値fτ*が負値になり、速度調節用トルク指令値ωτ*が正値になるため、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*とが互いに打ち消し合うように作用する。
【0133】
従って、第2の荷重側制限値FTLIMnの絶対値と第2の速度側制限値WTLIMnの絶対値とを同じ値にした場合、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*との加算結果である第2トルク指令値τ2*がゼロになる。ひいては、電動機100が減速できず、荷重のオーバーシュートが発生してしまう。
【0134】
そこで、荷重調節用トルクリミッタ236は、荷重側制限値FTLIMp、FTLIMnの絶対値が速度側制限値WTLIMp、WTLIMnの絶対値より小さくなるように荷重側制限値FTLIMp、FTLIMnを設定する。
【0135】
また、速度調節用トルクリミッタ237は、速度側制限値WTLIMp、WTLIMnの絶対値が荷重側制限値FTLIMp、FTLIMnの絶対値より大きくなるように速度側制限値WTLIMp、WTLIMnを設定する。
【0136】
以上によれば、正方向動作と負方向動作のいずれの場合においても、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*とを加算した第2トルク指令値τ2*が減速トルク指令値になる。従って、荷重のオーバーシュートを抑制することができる。
【0137】
換言すれば、荷重調節用トルクリミッタ236は、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*とを加算した第2トルク指令値τ2*が減速トルク指令値になるように、荷重側制限値FTLIMp、FTLIMnを設定する。
【0138】
また、速度調節用トルクリミッタ237は、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*とを加算した第2トルク指令値τ2*が減速トルク指令値になるように、速度側制限値WTLIMp、WTLIMnを設定する。
【0139】
<<実施例2>>
以下、本実施形態の制御システム1を適用した実施例2について説明する。なお、実施例1と重複する記載については説明を適宜省略する。
【0140】
図4に示す機械300において、指令部401は、ウエハWのデバイスDの各電極パッドが各プローブ303に接触する0.1mm手前までウエハチャック304を移動させるPTP制御を行った。指令部401は、位置指令値p*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて位置制御を行った。
【0141】
次いで、指令部401は、2Nの荷重指令値f*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて荷重制御を活かした。
【0142】
実施例2の制御装置220では、荷重調節用トルクリミッタ236が正方向動作用の荷重側制限値FTLIMpを75%に設定し、速度調節用トルクリミッタ237が正方向動作用の速度側制限値WTLIMpを-100%に設定した。
【0143】
これにより、荷重側制限値FTLIMpの絶対値(75%)を速度側制限値WTLIMpの絶対値(100%)より小さくした。つまり、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*とを加算した第2トルク指令値τ2*を-25%の減速トルク指令値とした。
【0144】
<<比較例4>>
比較例4の制御装置220では、荷重調節用トルクリミッタ236が正方向動作用の荷重側制限値FTLIMpを100%に設定し、速度調節用トルクリミッタ237が正方向動作用の速度側制限値WTLIMpを-100%に設定した。
【0145】
これにより、荷重側制限値FTLIMpの絶対値(100%)と速度側制限値WTLIMpの絶対値(100%)とを同じにした。つまり、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*とを加算した第2トルク指令値τ2*を0%のトルク指令値とした。
【0146】
図9は、比較例4と実施例2の制御装置220の差異を示すタイミングチャートである。
図9は、Z軸用の電動機100の制御装置220における各種信号の変化と信号間の関係を示している。
【0147】
第2時刻t2において、指令部401は、2Nの荷重指令値f*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて荷重制御を活かした。
【0148】
比較例4の制御装置220では、破線で示す荷重調節用トルク指令値fτ*と、一点鎖線で示す速度調節用トルク指令値ωτ*とが互いに打ち消しあって0%の第2トルク指令値τ2*を出力した。従って、電動機100が減速できなかった。結果として、囲み線CFに示すように、荷重が大きくオーバーシュートした。
【0149】
対照的に、実施例2の制御装置220では、破線で示す荷重調節用トルク指令値fτ*と、一点鎖線で示す速度調節用トルク指令値ωτ*とを加算した第2トルク指令値τ2*が-25%の減速トルク指令値として出力された。従って、電動機100が減速できた。結果として、囲み線EFで示すように、荷重のオーバーシュートが概ねなかった。
【0150】
<<第2実施形態の作用効果>>
第2実施形態の制御装置220では、荷重制御部227が、オーバーフローを防止するため、荷重調節用トルクリミッタ236と、速度調節用トルクリミッタ237と、をさらに備えている。
【0151】
荷重調節用トルクリミッタ236は、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*とを加算した第2トルク指令値τ2*が減速トルク指令値になるように、荷重側制限値FTLIMp、FTLIMnを設定する。
【0152】
速度調節用トルクリミッタ237は、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*とを加算した第2トルク指令値τ2*が減速トルク指令値になるように、速度側制限値WTLIMp、WTLIMnを設定する。
【0153】
換言すれば、荷重調節用トルクリミッタ236は、荷重側制限値FTLIMp、FTLIMnの絶対値が速度側制限値WTLIMp、WTLIMnの絶対値より小さくなるように、荷重側制限値FTLIMp、FTLIMnを設定する。
【0154】
速度調節用トルクリミッタ237は、速度側制限値WTLIMp、WTLIMnの絶対値が荷重側制限値FTLIMp、FTLIMnの絶対値より大きくなるように、速度側制限値WTLIMp、WTLIMnを設定する。
【0155】
第2実施形態によれば、正方向動作と負方向動作のいずれの場合においても、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*とを加算した第2トルク指令値τ2*が減速トルク指令値になる。従って、荷重のオーバーシュートを抑制することができる。
【0156】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態の制御システム1について説明する。なお、前述の実施形態と重複する記載については説明を適宜省略する。
【0157】
<<機能構成>>
図10は、本実施形態の荷重制御部227の機能構成例を示す図である。
図10に示す各種機能は、1以上のプログラムがCPU等のプロセッサに実行させる処理により実現する。
【0158】
本実施形態の制御装置220は、荷重検出値fdetが所定の閾値を超えるまで荷重調節器231におけるPI制御の積分をリセット又はホールドする積分リセット器238を備えている。
【0159】
荷重制御を活かした後、電動機100が空走した場合には、荷重調節器231におけるPI制御の積分に偏差が蓄積され、荷重のオーバーシュートが発生する。
【0160】
積分リセット器238は、荷重検出値fdetが所定の閾値を超えるまで荷重調節器231におけるPI制御の積分をリセット又はホールドするため、荷重のオーバーシュートを抑制できる。
【0161】
積分リセット器238は、0より大きくかつ目標荷重より小さい値を閾値として自動で設定する。或いは、ユーザがアプリケーションに応じて閾値を手動で設定してもよい。積分リセット器238は、閾値をNVRAM等の不揮発性メモリに記憶する。
【0162】
積分リセット器238は、予め定めた閾値を不揮発性メモリから読出し、荷重検出値fdetが閾値を超えるまで荷重調節器231におけるPI制御の積分をリセット又はホールドする。
【0163】
<<実施例3>>
以下、本実施形態の制御システム1を適用した実施例3について説明する。なお、前述の実施例と重複する記載については説明を適宜省略する。
【0164】
図4に示す機械300において、指令部401は、ウエハWのデバイスDの各電極パッドが各プローブ303に接触する位置の0.1mm手前でウエハチャック304を停止させるPTP制御を行った。指令部401は、位置指令値p*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて位置制御を行った。
【0165】
次いで、指令部401は、2Nの荷重指令値f*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて荷重制御を活かした。
【0166】
なお、積分リセット器238の効果を確認するため、荷重調節器231におけるPI制御の積分時間を10msと速く設定した。
【0167】
<<比較例5>>
比較例5の制御装置220では、
図10に示す積分リセット器238を備えていない構成とした。つまり比較例5では、荷重調節器231におけるPI制御の積分をリセット又はホールドしなかった。
【0168】
図11は、比較例5と実施例3の制御装置220の差異を示すタイミングチャートである。
図11は、Z軸用の電動機100の制御装置220における各種信号の変化と信号間の関係を示している。
【0169】
第2時刻t2において、指令部401は、2Nの荷重指令値f*を制御装置220に与えて荷重制御を活かした。
【0170】
第2時刻t2から第3時刻t3まで荷重制御の状態で電動機100が空走した。
【0171】
比較例5の制御装置220では、囲み線CTに示すように、第2時刻t2から第3時刻t3までの空走時間中に荷重制御部227にPI制御の積分が溜まった。結果として、囲み線CFに示すように、荷重がオーバーシュートした。
【0172】
対照的に、実施例3の制御装置220では、積分リセット器238が、囲み線ETに示すように、0.2Nの閾値を超えるまでの荷重調節器231におけるPI制御の積分をリセットした。結果として、囲み線EFに示すように、荷重のオーバーシュートは概ね発生しなかった。
【0173】
<<第3実施形態の作用効果>>
第3実施形態の制御装置220では、荷重検出値fdetが所定の閾値を超えるまで積分リセット器238が荷重調節器231におけるPI制御の積分をリセット又はホールドする。
【0174】
電動機100の空走時間中に荷重調節器231におけるPI制御の積分を蓄積しないため、第3実施形態によれば、荷重のオーバーシュートを抑制することができる。
【0175】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態の制御システム1について説明する。なお、前述の実施形態と重複する記載については説明を適宜省略する。
【0176】
<<機能構成>>
図12は、本実施形態の荷重制御部227の機能構成例を示す図である。
図12に示す各種機能は、1以上のプログラムがCPU等のプロセッサに実行させる処理により実現する。
【0177】
荷重制御部227は、比較器239と、バイアス加算器240、241と、をさらに備えている。
【0178】
説明を容易にするため、
図12には、2個のバイアス加算器240、241が例示されているが、荷重制御部227は、荷重調節側のバイアス加算器240と、速度調節側のバイアス加算器241のいずれか一方を備えていればよい。
【0179】
比較器239は、荷重検出値fdetと所定の閾値(例えば0.2N)とを比較して、荷重検出値fdetが所定の閾値を超えるまでバイアス値b*をバイアス加算器240、241に出力する。
【0180】
バイアス加算器240、241は、荷重検出値fdetが所定の閾値を超えるまで、荷重指令値f*又は第2速度指令値ω2*にバイアス値b*を加算する。
【0181】
第1のバイアス加算器240は、荷重指令値f*にバイアス値b*を加算する。第2のバイアス加算器241は、第2速度指令値ω2*にバイアス値b*を加算する。
【0182】
荷重検出値fdetが所定の閾値を超えるまで荷重指令値f*又は第2速度指令値ω2*にバイアス値b*を加算することにより、荷重制御部227が出力する第2トルク指令値τ2*が大きくなる。
【0183】
従って、位置制御から荷重制御に切替えた際に、指令部401が比較的低い荷重指令値f*を荷重制御部227に与えた場合でも、電動機100の空走時間が低減する。
【0184】
<<実施例4、5>>
以下、本実施形態の制御システム1を適用した実施例4、5について説明する。なお、前述の実施例と重複する記載については説明を適宜省略する。
【0185】
図4に示す機械300において、指令部401は、ウエハWのデバイスDの各電極パッドが各プローブ303に接触する位置の0.1mm手前でウエハチャック304を停止させるPTP制御を行った。指令部401は、位置指令値p*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて位置制御を行った。
【0186】
次いで、指令部401は、比較的低い0.5Nの荷重指令値f*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて荷重制御を活かした。
【0187】
実施例4の制御装置220は、荷重指令値f*にバイアス値b*を加算する第1のバイアス加算器240を備える構成とした。第1のバイアス加算器240は、荷重検出値fdetが0.2Nの閾値を超えるまで、荷重指令値f*にバイアス値b*を加算した。
【0188】
実施例5の制御装置220は、第2速度指令値ω2*にバイアス値b*を加算する第2のバイアス加算器241を備える構成とした。第2のバイアス加算器241は、荷重検出値fdetが0.2Nの閾値を超えるまで、第2速度指令値f*にバイアス値b*を加算した。
【0189】
<<比較例6>>
比較例6の制御装置220は、
図12に示す比較器239と、バイアス加算器240、241とを備えていない構成とした。つまり比較例6では、荷重指令値f*又は第2速度指令値ω2*にバイアス値b*を加算しなかった。
【0190】
図13は、比較例6と実施例4の制御装置220の差異を示すタイミングチャートである。
図13は、Z軸用の電動機100の制御装置220における各種信号の変化と信号間の関係を示している。
【0191】
第1時刻t1において、指令部401は、デバイスDの電極パッドがプローブ303に接触する0.1mm手前までウエハチャック304を移動させるPTP制御を行った。指令部401は、位置指令値p*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて位置制御を活かした。
【0192】
第2時刻t2において、指令部401は、比較的低い0.5Nの荷重指令値f*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて荷重制御を活かした。
【0193】
第2時刻t2から第3時刻t3まで荷重制御の状態で電動機100が空走した。
【0194】
比較例6の制御装置220では、荷重指令値f*又は第2速度指令値ω2*にバイアス値b*を加算しなかった。従って、指令部401が比較的低い0.5Nの荷重指令値f*を荷重制御部227に与えた場合に、電動機100の空走時間が28msと比較的長くなった。
【0195】
対照的に、実施例4の制御装置220では、荷重検出値fdetが0.2Nの閾値を超えるまで、荷重指令値f*にバイアス値b*を加算した。結果として、囲み線EWに示すように、速度検出値ωdetが僅かに大きくなり、電動機100の空走時間が14msまで低減した。
【0196】
図14は、比較例6と実施例5の制御装置220の差異を示すタイミングチャートである。
図14は、Z軸用の電動機100の制御装置220における各種信号の変化と信号間の関係を示している。
【0197】
第1時刻t1において、指令部401は、デバイスDの電極パッドがプローブ303に接触する0.1mm手前までウエハチャック304を移動させるPTP制御を行った。指令部401は、位置指令値p*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて位置制御を活かした。
【0198】
第2時刻t2において、指令部401は、比較的低い0.5Nの荷重指令値f*をZ軸用の電動機100の制御装置220に与えて荷重制御を活かした。
【0199】
第2時刻t2から第3時刻t3まで荷重制御の状態で電動機100が空走した。
【0200】
比較例6の制御装置220では、荷重指令値f*又は第2速度指令値ω2*にバイアス値b*を加算しなかった。従って、指令部401が比較的低い0.5Nの荷重指令値f*を荷重制御部227に与えた場合に、電動機100の空走時間が28msと比較的長くなった。
【0201】
対照的に、実施例5の制御装置220では、荷重検出値fdetが0.2Nの閾値を超えるまで、第2速度指令値ω2*にバイアス値b*を加算した。結果として、囲み線EWに示すように、速度検出値ωdetが僅かに大きくなり、電動機100の空走時間が16msまで低減した。
【0202】
<<第4実施形態の作用効果>>
第4実施形態の制御装置220では、バイアス加算器240、241が、荷重検出値fdetが所定の閾値を超えるまで、荷重指令値f*又は第2速度指令値ω2*にバイアス値b*を加算する。
【0203】
荷重指令値f*又は第2速度指令値ω2*にバイアス値b*を加算することにより、指令部401が比較的低い荷重指令値f*を制御装置220に与えた場合でも、電動機100の空走時間が長くなってしまうのを抑制することができる。
【0204】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態の制御システム1について説明する。なお、前述の実施形態と重複する記載については説明を適宜省略する。
【0205】
<<機能構成>>
図15は、本実施形態の荷重制御部227の機能構成例を示す図である。
図15に示す各種機能は、1以上のプログラムがCPU等のプロセッサに実行させる処理により実現する。
【0206】
本実施形態の制御システム1では、上位制御装置400が電動機100の位置制御と荷重制御を行う。
【0207】
制御システム1が複数の電動機100を駆動制御する多軸のサーボシステムである場合には、上位制御装置400が電動機100ごとに位置制御と荷重制御を行う。或いは、上位制御装置400は、複数の電動機100を纏めて位置制御と荷重制御を行ってもよい。
【0208】
制御装置220は、速度制御部222と、電流制御部223と、位置検出部224と、速度検出部225と、電流検出部226と、を備えている。
【0209】
上位制御装置400は、指令部401と、位置制御部221と、荷重制御部227と、荷重検出部228と、を備えている。
【0210】
指令部401は、PTP制御又はCP制御を行う。指令部401は、位置指令値p*を生成して位置制御部221を活性化させる。
【0211】
位置制御部221は、位置検出値pdetを制御装置220からパルス信号等により入力する。
【0212】
位置制御部221は、位置指令値p*と位置検出値pdetとの位置偏差に基づきP制御、PI制御、又はPID制御を行う。位置制御部221は、第1速度指令値ω1*を生成して制御装置220にパルス信号等により出力する。
【0213】
指令部401は、荷重指令値f*を生成して荷重制御部227を活性化させる。
【0214】
荷重検出部228は、荷重センサ301の出力信号を入力して荷重検出値fdetを検出する。
【0215】
荷重制御部227は、荷重検出部228から荷重検出値fdetを入力する。また、荷重制御部227は、速度検出値ωdetを制御装置220からパルス信号等により入力する。
【0216】
荷重制御部227は、荷重指令値f*と荷重検出値fdetとの荷重偏差に基づき、PI制御を行う。荷重制御部227は、荷重偏差をゼロに近づけるための荷重調節用トルク指令値を生成する。
【0217】
荷重制御部227は、第2速度指令値ω2*と速度検出値ωdetとの速度偏差に基づき、P制御を行う。荷重制御部227は、速度偏差をゼロに近づけるための速度調節用トルク指令値を生成する。
【0218】
荷重制御部227は、荷重調節用トルク指令値fτ*と速度調節用トルク指令値ωτ*を加算した第2トルク指令値τ2*を生成して制御装置220にパルス信号等により出力する。
【0219】
荷重制御部227には、速度を安定化する機能があるため、荷重制御を安定化することができる。そして、荷重制御部227は、荷重制御の出力を第2トルク指令値τ2*として出力するため、高応答な制御を実現することができる。
【0220】
よって、上位制御装置400は、高タクトな機械の動作を実現することができる。上位制御装置400は、本開示の「制御装置」の一例である。
【0221】
<<第5実施形態の作用効果>>
第5実施形態によれば、制御システム1全体の制御と、各電動機100の制御とを分散処理させることにより、コンピュータ自体の処理能力を向上することができる。
【0222】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態の制御システム1について説明する。なお、前述の実施形態と重複する記載については説明を適宜省略する。
【0223】
図16は、本実施形態の制御システム1の機能構成例を示す図である。
図16に示す各種機能は、1以上のプログラムがCPU等のプロセッサに実行させる処理により実現する。
【0224】
本実施形態の制御システム1では、荷重制御部227の中に速度調節器がない。制御システム1は、速度制御部222の中の速度調節器を用いて荷重制御中の速度を安定化させる。
【0225】
荷重制御部227は、後述するように、荷重指令値f*と荷重検出値fdetとの荷重偏差に基づき、PI制御を行う荷重調節器を備えている。荷重制御部227は、荷重偏差をゼロに近づけるための第2トルク指令値τ2*を出力する。
【0226】
荷重制御部227は、後述するように、荷重検出値fdetに係数Kを乗算して第2速度指令値ω2*を出力する乗算器を備えている。
【0227】
切替器229は、電動機100の制御モードを、位置指令値p*に基づく位置制御と、荷重指令値f*に基づく荷重制御との間で切替える。
【0228】
切替器229は、位置制御部221と速度制御部222との間に設けられる。切替器229は、位置制御に基づく第1速度指令値ω1*と、荷重制御に基づく第2速度指令値ω2*とを切替える。
【0229】
切替器229は、第1速度指令値ω1*と第2速度指令値ω2*のいずれか一方を速度指令値ω*として出力する。
【0230】
速度制御部222は、速度指令値ω*と速度検出値ωdetとの速度偏差に基づき、P制御、PI制御、又はPID制御を行う速度調節器を備えている。速度制御部222は、速度偏差をゼロに近づけるための第1トルク指令値τ1*を出力する。
【0231】
速度制御部222は、電動機100の制御モードが荷重制御の場合は、P制御のみを行う。
【0232】
トルク加算器235は、速度調節用の第1トルク指令値τ1*と、荷重調節用の第2トルク指令値τ2*とを加算する。トルク加算器235は、荷重偏差と速度偏差をゼロに近づけるためのトルク指令値τ*を出力する。荷重制御部227の中には、トルク加算器235がない。
【0233】
なお、第1トルク指令値τ1*は、本開示の「速度調節用トルク指令値」の一例である。第2トルク指令値τ2*は、本開示の「荷重調節用トルク指令値」の一例である。
【0234】
以下、本実施形態の荷重制御部227の機能構成について説明する。
図17は、本実施形態の荷重制御部227の機能構成例を示す図である。
図17に示す各種機能は、1以上のプログラムがCPU等のプロセッサに実行させる処理により実現する。
【0235】
荷重制御部227は、荷重調節用減算器230と、荷重調節器231と、乗算器232と、を備えている。
【0236】
荷重調節用減算器230は、荷重指令値f*と荷重検出値fdetとを減算して荷重偏差feを出力する。
【0237】
荷重調節器231は、荷重指令値f*と荷重検出値fdetとの荷重偏差feに基づき、PI制御を行う。荷重調節器231は、荷重偏差feをゼロに近づけるための荷重調節用の第2トルク指令値τ2*を出力する。
【0238】
乗算器232は、荷重偏差feに係数Kを乗算して第2速度指令値ω2*を出力する。
【0239】
図16に示すように、切替器229は、電動機100の制御モードが位置制御の場合には、第1速度指令値ω1*を速度指令値ω*として出力する。切替器229は、電動機100の制御モードが荷重制御の場合には、第2速度指令値ω2*を速度指令値ω*として出力する。
【0240】
速度制御部222は、速度指令値ω*と速度検出値ωdetとの速度偏差に基づき、P制御を行う。速度制御部222は、速度偏差をゼロに近づけるための速度調節用の第1トルク指令値τ1*を出力する。
【0241】
トルク加算器235は、第1トルク指令値τ1*と第2トルク指令値τ2*とを加算してトルク指令値を出力する。
【0242】
<<第6実施形態の作用効果>>
第6実施形態の制御装置220では、速度制御部222を用いて速度を安定化するため、荷重制御を安定化することができる。そして、荷重制御部227は、第2トルク指令値τ2*を出力するため、高応答な制御を実現することができる。
【0243】
また、第6実施形態の制御装置220では、荷重制御部227が荷重偏差feに係数Kを乗算して第2速度指令値ω2を出力する乗算器232をさらに備えている。
【0244】
荷重偏差feに比例した値を第2速度指令値ω2とすることにより、電動機100の速度を荷重偏差feに応じて調整することができる。例えば、荷重偏差feが大きい場合には、荷重を加える電動機100の速度が速くなり、荷重偏差feがゼロになった場合には、電動機100が停止することになる。
【0245】
さらに、第6実施形態の制御装置220では、荷重調節器231が荷重偏差feに基づきPI制御を行い、速度制御部222が速度偏差ωeに基づきP制御を行う。
【0246】
荷重調節用の第2トルク指令値τ2*と速度調節用の第1トルク指令値τ1*は互いに打ち消し合うように作用する。従って、速度制御部222がP制御のみを行うことにより、荷重調節用の第2トルク指令値τ2*と速度調節用の第1トルク指令値τ1*との間にバランス点ができる。
【0247】
つまり、速度調節用の第1トルク指令値τ1*の絶対値と荷重調節用の第2トルク指令値τ2*の絶対値が異なるようになり、荷重調節用の第2トルク指令値τ2*と速度調節用の第1トルク指令値τ1*との加算結果であるトルク指令値τ*がゼロにならない。結果として、荷重制御ができるようになる。或いは、荷重制御の応答が速くなる。
【0248】
以上から、第6実施形態によれば、高タクトな機械の動作を実現する技術を提供することができる。
【0249】
上記で説明した実施形態の各種機能は、一又は複数の処理回路により実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」は、電子回路で実装するプロセッサのようにソフトウェアで各機能を実行するようにプログラミングしたプロセッサを含む。或いは、「処理回路」は、各機能を実行するように設計したASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はDSP(Digital Signal Processor)等のデバイスを含む。また、「処理回路」は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又は従来の回路モジュール等のデバイスを含む。
【0250】
本開示の態様は、例えば以下の通りである。
【0251】
<1> 荷重指令値と荷重検出値との荷重偏差に基づき荷重調節用トルク指令値を生成する荷重調節器と、
速度指令値と速度検出値との速度偏差に基づき速度調節用トルク指令値を生成する速度調節器と、
前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算してトルク指令値を出力するトルク加算器と、
を備える、電動機の制御装置である。
【0252】
<2> 前記荷重偏差に係数を乗算して前記速度指令値を生成する乗算器をさらに備える、前記<1>に記載の制御装置である。
【0253】
<3>前記荷重調節器が前記荷重偏差に基づき比例積分制御を行い、前記速度調節器が前記速度偏差に基づき比例制御を行う、前記<1>又は前記<2>に記載の制御装置である。
【0254】
<4> 前記荷重調節用トルク指令値を荷重側制限値に制限して出力する荷重調節用トルクリミッタと、
前記速度調節用トルク指令値を速度側制限値に制限して出力する速度調節用トルクリミッタと、
をさらに備え、
前記荷重調節用トルクリミッタは、前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算した前記トルク指令値が減速トルク指令値になるように前記荷重側制限値を設定し、
前記速度調節用トルクリミッタは、前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算した前記トルク指令値が減速トルク指令値になるように前記速度側制限値を設定する、
前記<1>~前記<3>のいずれかに記載の制御装置である。
【0255】
<5> 前記荷重調節用トルク指令値を荷重側制限値に制限して出力する荷重調節用トルクリミッタと、
前記速度調節用トルク指令値を速度側制限値に制限して出力する速度調節用トルクリミッタと、
をさらに備え、
前記荷重調節用トルクリミッタは、前記荷重側制限値の絶対値が前記速度側制限値の絶対値より小さくなるように前記荷重側制限値を設定し、
前記速度調節用トルクリミッタは、前記速度側制限値の絶対値が前記荷重側制限値の絶対値より大きくなるように前記速度側制限値を設定する、
前記<1>~前記<3>のいずれかに記載の制御装置である。
【0256】
<6> 前記荷重検出値が所定の閾値を超えるまで前記荷重調節器における比例積分制御の積分をリセット又はホールドする積分リセット器をさらに備える、前記<1>~前記<5>のいずれかに記載の制御装置である。
【0257】
<7> 前記荷重検出値が所定の閾値を超えるまで前記荷重指令値又は前記速度指令値にバイアス値を加算するバイアス加算器をさらに備える、前記<1>~前記<6>のいずれかに記載の制御装置である。
【0258】
<8> 電動機の制御装置による制御方法であって、前記制御装置が、
荷重指令値と荷重検出値との荷重偏差に基づき荷重調節用トルク指令値を生成するステップと、
速度指令値と速度検出値との速度偏差に基づき速度調節用トルク指令値を生成するステップと、
前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算してトルク指令値を生成するステップと、
を実行する、制御方法である。
【0259】
<9> 荷重指令値と荷重検出値との荷重偏差に基づき荷重調節用トルク指令値を生成するステップと、
速度指令値と速度検出値との速度偏差に基づき速度調節用トルク指令値を生成するステップと、
前記荷重調節用トルク指令値と前記速度調節用トルク指令値とを加算してトルク指令値を生成するステップと、
を電動機を制御するコンピュータに実行させる、プログラムである。
【符号の説明】
【0260】
1 制御システム
100 電動機
101 検出センサ
102 ロータシャフト
200 駆動制御装置
210 電力変換装置
211 コンバータ回路
212 平滑コンデンサ
213 インバータ回路
214 駆動信号生成部
215 電流センサ
220 制御装置
221 位置制御部
222 速度制御部
223 電流制御部
224 位置検出部
225 速度検出部
226 電流検出部
227 荷重制御部
228 荷重検出部
229 切替器
230 荷重調節用減算器
231 荷重調節器
232 乗算器
233 速度調節用減算器
234 速度調節器
235 トルク加算器
236 荷重調節用トルクリミッタ
237 速度調節用トルクリミッタ
238 積分リセット器
239 比較器
240 第1のバイアス加算器
241 第2のバイアス加算器
300 機械
301 荷重センサ
302 プローブカード
303 プローブ
304 ウエハチャック
305 ラックギア
306 ピニオンギア
307 固定部材
308 X軸テーブル
309 Y軸テーブル
310 アライメント装置
311 制御対象部位
400 上位制御装置
401 指令部
p* 位置指令値
pdet 位置検出値
ω1* 第1速度指令値
ω2* 第2速度指令値
ωdet 速度検出値
ωe 速度偏差
I* 電流指令値
Idet 電流検出値
V* 電圧指令値
f* 荷重指令値
fdet 荷重検出値
fe 荷重偏差
fτ* 荷重調節用トルク指令値
ωτ* 速度調節用トルク指令値
τ1* 第1トルク指令値
τ2* 第2トルク指令値
τ* トルク指令値
D デバイス
PS 電源
W ウエハ