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  • 特開-ブロー成形ボトル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107806
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ブロー成形ボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
B65D1/02 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011923
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】矢野 尚之
(72)【発明者】
【氏名】小澤 知之
(72)【発明者】
【氏名】木幡 博
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA13
3E033BA30
3E033BB10
3E033CA16
3E033CA20
3E033DA03
3E033DA04
3E033DB01
3E033DD05
3E033FA03
(57)【要約】
【課題】内部着色による遮光性と蒸着膜による所望のガスバリア性とを有するブロー成形ボトルを提供することである。
【解決手段】
表面1aにガスバリア性を有する蒸着膜20を備えた合成樹脂製のブロー成形ボトル1であって、染料によって着色されていることを特徴とするブロー成形ボトル1。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にガスバリア性を有する蒸着膜を備えた合成樹脂製のブロー成形ボトルであって、
染料によって着色されていることを特徴とするブロー成形ボトル。
【請求項2】
二軸延伸ブロー成形により形成されている、請求項1に記載のブロー成形ボトル。
【請求項3】
ポリエチレンテレフタレート製である、請求項2に記載のブロー成形ボトル。
【請求項4】
前記蒸着膜がDLC膜である、請求項1または2に記載のブロー成形ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製のブロー成形ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアルコール飲料、炭酸飲料等の清涼飲料、水、酒、醤油等の調味液などを収容する容器として、ポリエチレンテレフタレート製ボトル(所謂ペットボトル)に代表されるような合成樹脂製のブロー成形ボトルが多く用いられている。
【0003】
従来、このような合成樹脂製のブロー成形ボトルとして、その表面(内面)に、例えばDLC(Diamond Like Carbon)膜などの、酸素や二酸化炭素に対するガスバリア性を有する蒸着膜を設けることで、容器内に収容した内容物の品質維持期間(シェルフライフ)を向上さたり、炭酸飲料等を収容したときに炭酸ガスを消失し難くしたりしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-53116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のブロー成形ボトルにおいて、蒸着膜が所望のガスバリア性を発現するためには、当該蒸着膜が設けられるブロー成形ボトルの表面が平滑であることが求められる。
【0006】
一方で、合成樹脂製のブロー成形ボトルは、例えばアルコール飲料を収容する用途に用いる場合などにおいて、ガスバリア性に加えて遮光性が求められる。この場合、ブロー成形ボトルの原材料となる合成樹脂材料に顔料を用いたマスターバッチを混合することで、ブロー成形ボトルを着色するのが一般的である。
【0007】
しかし、顔料を用いたマスターバッチで着色されたブロー成形ボトルは、顔料に含まれる無機物(例えばカーボンブラック、酸化チタン)がブロー成形後に凝縮体となって容器表面に出現することで当該表面に凸部が生じたり、凸部が無い部分においても平滑性が低下したりするので、表面に蒸着膜を設けても、当該蒸着膜が所望のガスバリア性を発現しない、という問題点があった。
【0008】
本発明は、このような点を解決することを課題とするものであり、その目的は、着色による遮光性と蒸着膜による所望のガスバリア性とを有するブロー成形ボトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のブロー成形ボトルは、表面にガスバリア性を有する蒸着膜を備えた合成樹脂製のブロー成形ボトルであって、染料によって着色されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のブロー成形ボトルは、上記構成において、二軸延伸ブロー成形により形成されているのが好ましい。
【0011】
本発明のブロー成形ボトルは、上記構成において、ポリエチレンテレフタレート製であるのが好ましい。
【0012】
本発明のブロー成形ボトルは、上記構成において、前記蒸着膜がDLC膜であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内部着色による遮光性と蒸着膜による所望のガスバリア性とを有するブロー成形ボトルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るブロー成形ボトルの正面図である。
図2図1に示すブロー成形ボトルの底面図である。
図3図1に示すブロー成形ボトルの範囲Aにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るブロー成形ボトル1をより具体的に例示説明する。
【0016】
なお、本明細書においては、「上」は、ブロー成形ボトル1を図1に示す正立姿勢とした状態における上を意味するものとし、「下」はその反対を意味するものとする。
【0017】
図1に示すブロー成形ボトル1は、例えばアルコール飲料などの、容器に対して酸素や二酸化炭素に対するガスバリア性と遮光性との両方を要求する内容物を収容する用途に好適に用いられるものである。
【0018】
本実施形態では、ブロー成形ボトル1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のブロー成形品となっている。
【0019】
ブロー成形ボトル1は、本実施形態ではポリエチレンテレフタレートであるが、ポリプロピレンなどの他の合成樹脂製であってもよい。また、層構造は単層構造であってよいが、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンの層に他の合成樹脂材料(例えば、ナイロン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体など)により形成された層が積層された積層構成であってもよい。
【0020】
本実施形態では、ブロー成形ボトル1は、有底筒状に形成された合成樹脂製(ポリエチレンテレフタレート製)のプリフォームを延伸効果が発現する温度にまで加熱し、この状態でプリフォームを延伸ロッドにより縦方向へ延伸するとともにプリフォーム内に供給した加圧媒体により横方向へ延伸する二軸延伸ブロー成形によって所定形状に形成されたものとなっている。
【0021】
なお、ブロー成形ボトル1は、ブロー成形により形成されたものであれば、二軸延伸ブロー成形に限らず、例えば、押出機から押し出されたチューブ状の合成樹脂製(ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)の溶融パリソンを、軸線を境として分割可能な複数の割金型で挟み込み、その内部に加圧した気体を吹き込んで金型の内面に沿った形状に成形する押出しブロー成形(ダイレクトブロー成形)などの、他のブロー成形方法により所定形状に形成されたものであってもよい。
【0022】
また、ブロー成形ボトル1は、ボトル外郭を構成する外層体の内側に、減容変形可能な内層体が剥離可能に積層された二重容器(積層剥離容器)であってもよい。この場合、ブロー成形ボトル1は、外プリフォームの内側に内プリフォームを組み込んだプリフォーム組立体を二軸延伸ブロー成形することにより形成されたものとすることができる。
【0023】
ブロー成形ボトル1は、口部11、肩部12、胴部13及び底部14を備えたボトル形状となっている。
【0024】
口部11は略円筒状であり、その外周面にはキャップ(不図示)を装着するための雄ねじ11a、円環状の凸部11b及びネックリング11cが、上から下にこの順で一体に設けられている。
【0025】
肩部12は、下方に向けて徐々に拡径する傘形状ないしドーム状となっており、口部11の下端に一体に連なっている。
【0026】
胴部13は、口部11よりも大径の略円筒状となっており、肩部12の下端に一体に連なっている。
【0027】
底部14は、胴部13の下端に一体に連なって胴部13の下端を閉塞している。図2に示すように、本実施形態では、底部14は、軸線Oを中心とした中央部の周囲に複数の脚部14aと複数の谷部14bとが周方向に交互に並べて設けられたペタロイド形状となっている。すなわち、ブロー成形ボトル1は、アルコール飲料などの、炭酸を含む飲料を収容することができる構成となっている。
【0028】
なお、ブロー成形ボトル1は、ボトル形状であれば、その形状は上記に限らず種々変更可能である。
【0029】
図3に示すように、ブロー成形ボトル1は、その内面1aに酸素や二酸化炭素に対するガスバリア性を有する蒸着膜20を備えている。すなわち、ブロー成形ボトル1は、ポリエチレンテレフタレートで形成されたボトル本体10の内面1aに蒸着膜20を備えた構成となっている。
【0030】
本実施形態では、蒸着膜20は、ブロー成形ボトル1(ボトル本体10)の容器内側となる内面1aの全体に設けられている。すなわち、蒸着膜20は、ブロー成形ボトル1の、口部11の内面、肩部12の内面、胴部13の内面及び底部14の内面の全体に設けられている。
【0031】
なお、蒸着膜20は、ブロー成形ボトル1(ボトル本体10)の容器外側となる外面1bの全体に設けられてもよい。また、蒸着膜20は、ブロー成形ボトル1(ボトル本体10)の容器内側となる内面1aの全体と容器外側となる外面1bの全体との両方に設けられてもよい。
【0032】
本実施形態では、蒸着膜20はDLC(Diamond Like Carbon)膜である。この場合、蒸着膜20は、例えば原料ガスとしてアセチレンを用いたプラズマCVD(プラズマ蒸着)の手法により、ブロー成形ボトル1の内面1aに設けることができる。
【0033】
なお、蒸着膜20は、DLC膜に限らず、酸素や二酸化炭素等に対するガスバリア性を有するものであれば、例えばシリカ膜などの他の蒸着膜であってもよい。
【0034】
ブロー成形ボトル1は、その全体が内部着色により着色されている。すなわち、ブロー成形ボトル1は、ブロー成形ボトル1(ボトル本体10)を形成する合成樹脂材料として、マスターバッチが混合されて着色されたものを用いることで、口部11の内面、肩部12の内面、胴部13の内面及び底部14の全体が、内容物が要求する遮光性を満たすことができる程度の濃さに着色されている。ブロー成形ボトル1は、その全体が着色されることで、収容した内容物の日光等の光による劣化を抑制することができる。
【0035】
本実施形態では、ブロー成形ボトル1の遮光性は、波長400nm~500nmの光の透過率が50%以下となる程度のものとされている。
【0036】
ブロー成形ボトル1を着色する染料としては、本実施形態ではアゾメチンを使用したが、これに限られない。また、染料を用いたマスターバッチは、ペレット状などの個体であってもよく液状のものであってもよい。
【0037】
ここで、上記の通り、顔料を用いたマスターバッチで着色されたブロー成形ボトルは、顔料に含まれる無機物(例えばカーボンブラック、酸化チタン)がブロー成形後に凝縮体となって容器表面に出現することで当該表面に凸部が生じたり凸部が無い部分においても平滑性が低下したりするので、ブロー成形ボトルの表面に蒸着膜を設けても、当該蒸着膜が所望のガスバリア性を発現しない、という問題が生じることになる。この問題は、顔料に含まれる無機物の粒径を小さくし、あるいはマスターバッチの配合量を少なくしても生じる。
【0038】
これに対し、本実施形態のブロー成形ボトル1は、アゾメチン染料により着色されているので、ブロー成形後のブロー成形ボトル1の表面(内面1a)は、着色をしない場合と同程度の平滑性に保たれ、蒸着膜20は所望のガスバリア性を有するものとなっている。
【0039】
すなわち、本実施形態のブロー成形ボトル1は、これを着色する際に用いられるマスターバッチとして、顔料ではなく、染料を用いたマスターバッチを用いることで、所定の濃さの色に着色されている。染料は、顔料の無機物のようなブロー成形後に表面に凝固して出現する固形物を含んでいないため、染料によって着色された合成樹脂材料をブロー成形してブロー成形ボトル1を形成しても、ブロー成形後のブロー成形ボトル1の表面(内面1a)に凸部が生じることなく、着色しない場合と同程度に平滑性が保たれる。したがって、染料によって着色されたブロー成形ボトル1の表面(内面1a)に設けられた蒸着膜20は、着色がされていない場合と同程度の所望のガスバリア性を有するものとなる。
【0040】
このように、本実施形態のブロー成形ボトル1では、当該ブロー成形ボトル1(ボトル本体10)をアゾメチン染料によって着色するようにしたので、ブロー成形ボトル1を着色による遮光性を有するものとすることができるとともに、その表面(内面1a)に蒸着膜20を設けることで、当該蒸着膜20が所望のガスバリア性を発現するようにして、ブロー成形ボトル1を、着色による遮光性と蒸着膜20による所望のガスバリア性とを有するものとすることができる。
【0041】
また、本実施形態のブロー成形ボトル1では、当該ブロー成形ボトル1(ボトル本体10)をポリエチレンテレフタレート製としたので、染料によって容易に着色することができるとともに表面(内面1a)に容易に蒸着膜20を成膜することができる。したがって、着色による遮光性と蒸着膜20による所望のガスバリア性とを有するブロー成形ボトル1をより安価に提供することができる。
【0042】
さらに、本実施形態のブロー成形ボトル1では、当該ブロー成形ボトル1(ボトル本体10)を二軸延伸ブロー成形により形成されたものとしたので、着色による遮光性と蒸着膜20による所望のガスバリア性とを有するブロー成形ボトル1を、所定の形状に精度よく且つ安価に形成することができる。
【0043】
さらに、本実施形態のブロー成形ボトル1では、蒸着膜20をDLC膜としたので、所望のガスバリア性を有する蒸着膜20を、ブロー成形ボトル1の表面に容易且つ確実に成膜することができる。
【0044】
本発明の効果を確認するために、それぞれ容量が500ml(24g)のポリエチレンテレフタレート製の二軸延伸ボトルであって、着色されず且つ蒸着膜が設けられない比較例1のブロー成形ボトル、着色されず且つ蒸着膜としてDLC膜が設けられた比較例2のブロー成形ボトル、カーボンブラック(顔料)により着色されるとともに蒸着膜としてDLC膜が設けられた比較例3のブロー成形ボトル、アゾメチン(染料)で着色されるとともに蒸着膜としてDLC膜が設けられた実施例のブロー成形ボトルとを用意し、それぞれのブロー成形ボトルについて遮光性、酸素透過量(ガスバリア性)を測定するとともに遮光性及び酸素透過量の両方を満たすか否かについて評価を行った。
【0045】
遮光性については、波長400~500nmの光の透過率を測定した。
【0046】
酸素透過量については、測定器としてMOCON社製の「OX-TRAN2/20」を用い、条件を「酸素分圧21%、容器外側23℃-55%RH、容器内側23℃-90%RH」として測定を行った。
【0047】
評価については、遮光率が50%未満及び酸素透過量が0.004cc/day/pack以下の場合に〇(良好)の評価とし、遮光率が50%以上、または/及び、酸素透過量が0.004cc/day/packより大きい場合に×(不良)の評価とした。
【0048】
以下に測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から、表面にガスバリア性を有するDLC膜(蒸着膜)を備えるとともにアゾメチン(染料)によって着色されてた実施例のブロー成形ボトルは、着色されず且つ蒸着膜が設けられない比較例1のブロー成形ボトル、着色されず且つ蒸着膜としてDLC膜が設けられた比較例2のブロー成形ボトル及びカーボンブラック(顔料)により着色されるとともに蒸着膜としてDLC膜が設けられた比較例3のブロー成形ボトルに対して、遮光性及びガスバリア性に優れることが確認された。
【0051】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0052】
例えば、前記実施形態では、ブロー成形ボトル1(ボトル本体10)は、ポリエチレンテレフタレート製とされているが、ポリエチレンテレフタレート以外にも延伸成形用ポリプロピレンなどの他の合成樹脂製であってもよい。
【0053】
また、前記実施形態では、ブロー成形ボトル1は、例えばアルコール飲料などの、容器に対して酸素や二酸化炭素に対するガスバリア性と遮光性との両方を要求する内容物を収容する用途に用いられるものとしたが、これに限らず、例えば炭酸飲料等の清涼飲料、水、酒、醤油等の調味液などの種々の内容物を収容する用途に用いられるものであってもよい。
【0054】
さらに、前記実施形態及び表1に示す測定ないし評価においては、蒸着膜をDLC膜とし、染料としてアゾメチンを用いているが、蒸着膜をDLC膜以外のものとし、また、染料としてアゾメチン以外のものを用いても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ブロー成形ボトル
1a 内面(表面)
1b 外面(表面)
10 ボトル本体
11 口部
11a 雄ねじ
11b 凸部
11c ネックリング
12 肩部
13 胴部
14 底部
14a 脚部
14b 谷部
20 蒸着膜
O 軸線
図1
図2
図3