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特開2024-107808粘着シート及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107808
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】粘着シート及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240802BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20240802BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240802BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240802BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240802BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/20
C09J133/04
C09J11/08
H01L21/304 631
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011925
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 悠介
(72)【発明者】
【氏名】垣内 康彦
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AC03
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC03
4J004CD08
4J004EA06
4J004FA08
4J040DF012
4J040DF031
4J040DF062
4J040FA082
4J040GA11
4J040GA20
4J040HB46
4J040JB08
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA16
4J040KA37
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA04
4J040MB05
4J040NA20
4J040PA42
5F057AA21
5F057BA15
5F057CA14
5F057DA11
5F057EC06
5F057EC07
5F057FA16
5F063AA16
5F063EE07
5F063EE22
5F063EE43
5F063EE45
(57)【要約】
【課題】粘着剤層と基材層とを含む積層構造を有し、前記粘着剤層及び前記基材層の少なくともいずれかの層が、熱膨張性粒子を含有する熱膨張性層である粘着シートにおいて、前記粘着剤層と前記基材層との層間密着性に優れる粘着シート及び当該粘着シートを用いる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、を含む積層構造を有し、前記粘着剤層(X1)及び前記基材層(Y)の少なくともいずれかの層が、熱膨張性粒子を含有する熱膨張性層であり、前記粘着剤層(X1)が、アクリル系樹脂(A)を含有し、前記アクリル系樹脂(A)が、一般式(1)で表される基を有する、粘着シート及び当該粘着シートを用いる半導体装置の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、を含む積層構造を有し、
前記粘着剤層(X1)及び前記基材層(Y)の少なくともいずれかの層が、熱膨張性粒子を含有する熱膨張性層であり、
前記粘着剤層(X1)が、アクリル系樹脂(A)を含有し、
前記アクリル系樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される基を有する、粘着シート。
【化1】

(式中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~10の置換若しくは無置換の炭化水素基を示し、*は、結合部位を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される基が、環状アセタール構造の一部である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される基が、前記一般式(1)で表される基を有するモノマーに由来する構成単位(a)に含まれる、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される基を有するモノマーが、前記一般式(1)で表される基を有する(メタ)アクリレートである、請求項3に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記アクリル系樹脂(A)が、前記構成単位(a)、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び官能基含有モノマーに由来する構成単位を含むアクリル系共重合体である、請求項3に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記構成単位(a)の含有量が、前記粘着剤層(X1)の全量(100質量%)に対して、1~30質量%である、請求項3に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記基材層(Y)が、熱膨張性粒子を含有する熱膨張性基材層(Y1)と、非熱膨張性基材層(Y2)と、が積層された基材積層体であり、前記粘着剤層(X1)と、前記熱膨張性基材層(Y1)と、前記非熱膨張性基材層(Y2)と、がこの順で配置された積層構造を有する、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項8】
さらに粘着剤層(X2)を有し、前記粘着剤層(X1)と、前記基材層(Y)と、前記粘着剤層(X2)と、がこの順で配置された積層構造を有し、
前記熱膨張性層を膨張させることによって、前記粘着剤層(X1)の表面に凹凸が形成される、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤層(X2)が、エネルギー線を照射することにより硬化して粘着力が低下するエネルギー線硬化性粘着剤層である、請求項8に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記熱膨張性層中における前記熱膨張性粒子の含有量が、前記熱膨張性層の全質量(100質量%)に対して、1~25質量%である、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項11】
前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)が、50℃以上125℃未満である、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項12】
請求項8に記載の粘着シートを用い、下記の工程1A、工程2A、第一分離工程及び第二分離工程をこの順で含む、半導体装置の製造方法。
工程1A:前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X2)に加工対象物を貼付し、前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X1)に支持体を貼付する工程
工程2A:前記加工対象物に対して、研削処理及び個片化処理から選択される1以上の処理を施す工程
第一分離工程:前記粘着シートを、前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上に加熱して、前記粘着剤層(X1)と前記支持体とを分離する工程
第二分離工程:前記粘着剤層(X2)と前記加工対象物とを分離する工程
【請求項13】
前記第二分離工程が、前記支持体と分離後の前記粘着剤層(X1)に対して、剥離用シートをラミネートし、該剥離用シートを引っ張ることで、前記粘着剤層(X2)と前記加工対象物とを分離する工程である、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項8に記載の粘着シートを用い、下記の工程1B、工程2B、第一分離工程及び第二分離工程を含む半導体装置の製造方法。
工程1B:前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X1)に加工対象物を貼付し、前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X2)に支持体を貼付する工程
工程2B:前記加工対象物に対して、研削処理及び個片化処理から選択される1以上の処理を施す工程
第一分離工程:前記粘着シートを、前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上に加熱して、前記粘着剤層(X1)と前記加工対象物とを分離する工程
第二分離工程:前記粘着剤層(X2)と前記支持体とを分離する工程
【請求項15】
前記第二分離工程が、前記加工対象物と分離後の前記粘着剤層(X1)に対して、剥離用シートをラミネートし、該剥離用シートを引っ張ることで、前記粘着剤層(X2)と前記支持体とを分離する工程である、請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート及び該粘着シートを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、部材を半永久的に固定する用途だけでなく、建材、内装材、及び電子部品等を加工したり検査したりする際に、加工、検査等の対象となる部材(以下、「被着体」ともいう)を仮固定するための仮固定用シートとして使用される場合がある。例えば、半導体装置の製造過程では、半導体ウエハを加工する際に仮固定用シートが用いられている。
【0003】
半導体装置の製造過程において、半導体ウエハは、研削によって厚さを薄くする研削工程、切断分離して個片化する個片化工程等を経て、半導体チップに加工される。このとき、半導体ウエハは、仮固定用シートに仮固定された状態で所定の加工が施される。所定の加工を施して得られた半導体チップは、仮固定用シートから分離された後、必要に応じて、半導体チップ同士の間隔を広げるエキスパンド工程、間隔を広げた複数の半導体チップを配列させる再配列工程、半導体チップの表裏を反転させる反転工程等が適宜施された後、基板に実装される。上記各工程においても、それぞれの用途に適した仮固定用シートを使用することができる。このような仮固定用シートとしては、片面粘着シート又は両面粘着シートが用いられ、両面粘着シートの場合は、一方の面に加工対象物を貼付し、他方の面を支持体に貼付した状態で所定の加工を施すことがある。
【0004】
特許文献1には、基材の少なくとも片面に、熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層が設けられた、電子部品切断時の仮固定用の加熱剥離型粘着シートが開示されている。同文献には、該加熱剥離型粘着シートは、電子部品切断時には、被着体に対して所定の大きさの接触面積を確保できるため、チップ飛び等の接着不具合を防止し得る接着性を発揮できる一方で、使用後には、加熱して熱膨張性微小球を膨張させれば、被着体との接触面積を減少させることで、容易に剥離することができる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3594853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者等の検討によると、熱膨張性粒子を使用する粘着シートにおいて、粘着シート内の層間密着性が十分に得られない場合があることが判明している。層間密着性が低いと、粘着シートを被着体から剥離する際に、粘着シート内の層間で剥離が生じ、粘着シートの一部が被着体に残存する問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、粘着シート内の層間密着性及び加熱剥離時における被着体からの剥離性に優れる粘着シート及び当該粘着シートを用いる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、粘着剤層に、特定の基を有するアクリル系樹脂を含有させることによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記[1]~[15]に関する。
[1]粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、を含む積層構造を有し、
前記粘着剤層(X1)及び前記基材層(Y)の少なくともいずれかの層が、熱膨張性粒子を含有する熱膨張性層であり、
前記粘着剤層(X1)が、アクリル系樹脂(A)を含有し、
前記アクリル系樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される基を有する、粘着シート。
【化1】

(式中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~10の置換若しくは無置換の炭化水素基を示し、*は、結合部位を示す。)
[2]前記一般式(1)で表される基が、環状アセタール構造の一部である、上記[1]に記載の粘着シート。
[3]前記一般式(1)で表される基が、前記一般式(1)で表される基を有するモノマーに由来する構成単位(a)に含まれる、上記[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[4]前記一般式(1)で表される基を有するモノマーが、前記一般式(1)で表される基を有する(メタ)アクリレートである、上記[3]に記載の粘着シート。
[5]前記アクリル系樹脂(A)が、前記構成単位(a)、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び官能基含有モノマーに由来する構成単位を含むアクリル系共重合体である、上記[3]又は[4]に記載の粘着シート。
[6]前記構成単位(a)の含有量が、前記粘着剤層(X1)の全量(100質量%)に対して、1~30質量%である、上記[3]~[5]のいずれかに記載の粘着シート。
[7]前記基材層(Y)が、熱膨張性粒子を含有する熱膨張性基材層(Y1)と、非熱膨張性基材層(Y2)と、が積層された基材積層体であり、前記粘着剤層(X1)と、前記熱膨張性基材層(Y1)と、前記非熱膨張性基材層(Y2)と、がこの順で配置された積層構造を有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の粘着シート。
[8]さらに粘着剤層(X2)を有し、前記粘着剤層(X1)と、前記基材層(Y)と、前記粘着剤層(X2)と、がこの順で配置された積層構造を有し、
前記熱膨張性層を膨張させることによって、前記粘着剤層(X1)の表面に凹凸が形成される、上記[1]~[7]のいずれかに記載の粘着シート。
[9]前記粘着剤層(X2)が、エネルギー線を照射することにより硬化して粘着力が低下するエネルギー線硬化性粘着剤層である、上記[8]に記載の粘着シート。
[10]前記熱膨張性層中における前記熱膨張性粒子の含有量が、前記熱膨張性層の全質量(100質量%)に対して、1~25質量%である、上記[1]~[9]のいずれかに記載の粘着シート。
[11]前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)が、50℃以上125℃未満である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の粘着シート。
[12]上記[8]又は[9]に記載の粘着シートを用い、下記の工程1A、工程2A、第一分離工程及び第二分離工程をこの順で含む、半導体装置の製造方法。
工程1A:前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X2)に加工対象物を貼付し、前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X1)に支持体を貼付する工程
工程2A:前記加工対象物に対して、研削処理及び個片化処理から選択される1以上の処理を施す工程
第一分離工程:前記粘着シートを、前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上に加熱して、前記粘着剤層(X1)と前記支持体とを分離する工程
第二分離工程:前記粘着剤層(X2)と前記加工対象物とを分離する工程
[13]前記第二分離工程が、前記支持体と分離後の前記粘着剤層(X1)に対して、剥離用シートをラミネートし、該剥離用シートを引っ張ることで、前記粘着剤層(X2)と前記加工対象物とを分離する工程である、上記[12]に記載の半導体装置の製造方法。
[14]上記[8]又は[9]に記載の粘着シートを用い、下記の工程1B、工程2B、第一分離工程及び第二分離工程を含む半導体装置の製造方法。
工程1B:前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X1)に加工対象物を貼付し、前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X2)に支持体を貼付する工程
工程2B:前記加工対象物に対して、研削処理及び個片化処理から選択される1以上の処理を施す工程
第一分離工程:前記粘着シートを、前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上に加熱して、前記粘着剤層(X1)と前記加工対象物とを分離する工程
第二分離工程:前記粘着剤層(X2)と前記支持体とを分離する工程
[15]前記第二分離工程が、前記加工対象物と分離後の前記粘着剤層(X1)に対して、剥離用シートをラミネートし、該剥離用シートを引っ張ることで、前記粘着剤層(X2)と前記支持体とを分離する工程である、上記[14]に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、粘着シート内の層間密着性及び加熱剥離時における被着体からの剥離性に優れる粘着シート及び当該粘着シートを用いる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の粘着シートの構成の一例を示す断面図である。
図2】本発明の粘着シートの構成の別の例を示す断面図である。
図3】本発明の半導体装置の製造方法の工程の一例を説明する、断面図である。
図4】本発明の半導体装置の製造方法の工程の一例を説明する、断面図である。
図5】本発明の半導体装置の製造方法の工程の一例を説明する、断面図である。
図6】本発明の半導体装置の製造方法の工程の一例を説明する、断面図である。
図7】本発明の半導体装置の製造方法の工程の一例を説明する、断面図である。
図8】本発明の半導体装置の製造方法の工程の一例を説明する、断面図である。
図9】本発明の半導体装置の製造方法の工程の一例を説明する、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「有効成分」とは、対象となる組成物に含有される成分のうち、希釈溶剤を除いた成分を指す。
また、本明細書において、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0013】
本明細書において、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
また、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0014】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として無電極ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV-LED等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線重合性」とは、エネルギー線を照射することにより重合する性質を意味する。また、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味する。
【0015】
本明細書において、「層」が「非熱膨張性層」であるか「熱膨張性層」であるかは、以下のように判断する。
判断の対象となる層が熱膨張性粒子を含有する場合、当該層を熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)で、3分間加熱処理する。下記式から算出される体積変化率が5%未満である場合、当該層は「非熱膨張性層」であると判断し、5%以上である場合、当該層は「熱膨張性層」であると判断する。
・体積変化率(%)={(加熱処理後の前記層の体積-加熱処理前の前記層の体積)/加熱処理前の前記層の体積}×100
なお、熱膨張性粒子を含有しない層は「非熱膨張性層」であるとする。
本明細書において、「層」が非熱膨張性層である場合、上記式から算出される当該非熱膨張性層の体積変化率(%)は、5%未満であり、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満、更に好ましくは0.1%未満、より更に好ましくは0.01%未満である。
また、本明細書において、「層」が非熱膨張性層である場合、当該非熱膨張性層は、熱膨張性粒子を含有しないことが好ましいが、本発明の目的に反しない範囲で熱膨張性粒子を含有していてもよい。当該非熱膨張性層が熱膨張性粒子を含有する場合、その含有量は少ないほど好ましく、非熱膨張性層の全質量(100質量%)に対して、好ましくは3質量%未満、より好ましくは1質量%未満、更に好ましくは0.1質量%未満、より更に好ましくは0.01質量%未満、より更に好ましくは0.001質量%未満である。
【0016】
本明細書において、半導体ウエハ及び半導体チップの「表面」とは回路が形成された面(以下、「回路面」ともいう)を指し、半導体ウエハ及び半導体チップの「裏面」とは回路が形成されていない面を指す。
【0017】
本明細書において、各層の厚さは、23℃における厚さであり、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0018】
本明細書において、各層の粘着力は、シリコンミラーウエハのミラー面に対する粘着力を意味し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/minにて測定される粘着力を意味する。
【0019】
[粘着シート]
本発明の一態様の粘着シートは、
粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、を含む積層構造を有し、
前記粘着剤層(X1)及び前記基材層(Y)の少なくともいずれかの層が、熱膨張性粒子を含有する熱膨張性層であり、
前記粘着剤層(X1)が、アクリル系樹脂(A)を含有し、
前記アクリル系樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される基を有する、粘着シートである。
【0020】
【化2】

(式中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~10の置換若しくは無置換の炭化水素基を示し、*は、結合部位を示す。)
【0021】
本発明の一態様の粘着シートは、粘着剤層(X1)及び基材層(Y)の少なくともいずれかである熱膨張性層に含まれる熱膨張性粒子を、膨張開始温度(t)以上の温度に加熱して膨張させることにより、粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸を形成させ、粘着剤層(X1)の粘着表面に貼付されている被着体と当該粘着表面との接触面積を大きく低下させるものである。これにより、粘着剤層(X1)の粘着表面と被着体との密着性を著しく低下させることができ、粘着シートと被着体とを容易に分離することができる。
【0022】
また、本発明の一態様の粘着シートは、粘着剤層(X1)と基材層(Y)との層間密着性に優れる。この原因は定かではないが、次のように推測される。
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層(X1)は、上記一般式(1)で表される基を有するアクリル系樹脂(A)を含有する。
上記一般式(1)で表される基は、2つの酸素原子が1つの炭素原子を介して結合しており、偏極が生じ易い構造であると考えられる。そのため、上記一般式(1)で表される基を有するアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤層(X1)は、隣接する層との相互作用が強くなり、粘着剤層(X1)と隣接する層との層間密着性が向上したものと推測される。
【0023】
<粘着シートの構成>
本発明の一態様の粘着シートにおいては、粘着剤層(X1)及び基材層(Y)の少なくともいずれかが、熱膨張性粒子を含有する熱膨張性層であればよい。
基材層(Y)が熱膨張性粒子を含有する熱膨張性層である場合の粘着シートとしては、基材層(Y)が、熱膨張性粒子を含有する熱膨張性基材層(Y1)と非熱膨張性基材層(Y2)とが積層された基材積層体であり、粘着剤層(X1)と、熱膨張性基材層(Y1)と、非熱膨張性基材層(Y2)と、がこの順で配置された積層構造を有する粘着シートが挙げられる。以下、当該構成を有する粘着シートを「第1の態様の粘着シート」と称する場合がある。
また、本発明の一態様の粘着シートにおいて、粘着剤層(X1)が熱膨張性粒子を含有する熱膨張性層である場合の粘着シートとしては、熱膨張性層である粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、を含む積層構造を有する粘着シートが挙げられる。以下、当該構成を有する粘着シートを「第2の態様の粘着シート」と称する場合がある。
【0024】
本発明の一態様の粘着シートの構成は、粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、を含む積層構造を有するものであればよいが、用途に応じて、粘着剤層(X1)と基材層(Y)以外の層を有するものであってもよい。
例えば、本発明の一態様の粘着シートを加工対象物の加工に用いる場合、加工対象物の加工性を向上させる観点から、本発明の一態様の粘着シートは、さらに粘着剤層(X2)を有し、粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、粘着剤層(X2)と、がこの順で配置された積層構造を有する構成(すなわち、両面粘着シートの構成)を有することが好ましい。当該構成を有することで、粘着剤層(X1)又は粘着剤層(X2)のいずれか一方の粘着剤層に加工対象物を貼付し、いずれか他方の粘着剤層に支持体を貼付することができる。加工対象物が粘着シートを介して支持体に固定されることによって、加工対象物に対して加工処理を行う際に、加工対象物の振動、位置ズレ、脆弱な加工対象物の破損等を抑制し、加工精度及び加工速度を向上させることができる。
なお、以下の説明において、特に断らない限り、「両面粘着シート」とは、粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、粘着剤層(X2)と、がこの順で配置された積層構造を有する粘着シートを意味するものとする。
【0025】
本発明の一態様の粘着シートは、粘着剤層(X1)の粘着表面上に剥離材を有していてもよい。また、本発明の一態様の粘着シートが両面粘着シートの構成を有する場合、粘着剤層(X1)と粘着剤層(X2)の少なくともいずれか一方の粘着表面上に剥離材を有していてもよい。
【0026】
次に、図面を参照しながら、本発明の一態様の粘着シートの構成について、より具体的に説明する。
【0027】
本発明の一態様の粘着シートとしては、図1(a)に示すような、基材層(Y)上に、粘着剤層(X1)を有する粘着シート1aが挙げられる。
なお、本発明の一態様の粘着シートは、図1(b)に示す粘着シート1bのように、粘着剤層(X1)の粘着表面上に、さらに剥離材10を有する構成としてもよい。
【0028】
本発明の別の一態様の粘着シートとしては、上記両面粘着シートの構成を有するものが挙げられる。
このような構成を有する粘着シートとしては、例えば、図2(a)に示すような、基材層(Y)を粘着剤層(X1)及び粘着剤層(X2)で挟持した構成を有する、両面粘着シート2aが挙げられる。
また、図2(b)に示す両面粘着シート2bのように、粘着剤層(X1)の粘着表面上にさらに剥離材10aを有し、粘着剤層(X2)の粘着表面上にさらに剥離材10bを有する構成としてもよい。
【0029】
なお、図2(b)に示す両面粘着シート2bにおいて、剥離材10aを粘着剤層(X1)から剥がす際の剥離力と、剥離材10bを粘着剤層(X2)から剥がす際の剥離力とが同程度である場合、双方の剥離材を外側へ引っ張って剥がそうとすると、粘着剤層が、2つの剥離材に伴って分断されて引き剥がされるという現象が生じることがある。このような現象を抑制する観点から、2つの剥離材10a、10bは、互いに貼付される粘着剤層からの剥離力が異なるように設計された2種の剥離材を用いることが好ましい。
【0030】
その他の態様の粘着シートとしては、図2(a)に示す両面粘着シート2aにおいて、粘着剤層(X1)及び粘着剤層(X2)の一方の粘着表面に、両面に剥離処理が施された剥離材が積層したものを、ロール状に巻いた構成を有する両面粘着シートであってもよい。
【0031】
本発明の一態様の粘着シートは、基材層(Y)と粘着剤層(X1)との間に、他の層を有していてもよく、他の層を有していなくてもよい。また、本発明の一態様の粘着シートが上記両面粘着シートである場合、上記に加えて、基材層(Y)と粘着剤層(X2)との間に、他の層を有していてもよく、他の層を有していなくてもよい。
ただし、第1の態様の粘着シートは、熱膨張性基材層(Y1)の粘着剤層(X1)とは反対側の面には、該面における膨張を抑制する観点から、非熱膨張性基材層(Y2)が直接積層されていることが好ましい。また、第2の態様の粘着シートは、粘着剤層(X1)の粘着表面とは反対側の面には、該面における膨張を抑制し得る層が直接積層されていることが好ましく、基材層(Y)が直接積層されていることがより好ましい。
【0032】
<熱膨張性粒子>
本発明の一態様の粘着シートに用いられる熱膨張性粒子は、加熱により膨張する粒子であればよく、膨張開始温度(t)は、粘着シートの用途に応じて適宜選択される。
【0033】
ところで、近年、半導体チップを基板に実装する際に、半導体チップをダイアタッチフィルム(以下、「DAF」ともいう)と称される、熱硬化性を有するフィルム状接着剤を介して基板に貼付する工程が採用されている。
DAFは、半導体ウエハ又は個片化した複数の半導体チップの一方の面に貼付され、半導体ウエハの個片化と同時に又は半導体チップに貼付された後に半導体チップと同形状に分割される。個片化して得られたDAF付き半導体チップは、DAF側から基板に貼付(ダイアタッチ)され、その後、DAFを熱硬化させることで半導体チップと基板とが固着される。このとき、DAFは基板に貼付されるまでは、感圧又は加熱により接着する性質が保持される必要がある。しかしながら、DAF付き半導体チップを加熱剥離型の粘着シートの被着体とする場合、熱膨張性粒子を膨張させる際の加熱によって、ダイアタッチ前にDAFの硬化が進行してしまい、基板に対するDAFの接着力が低下することがある。DAFの接着力の低下は、半導体チップと基板との接合信頼性の低下を招くため、抑制されることが望ましい。つまり、加熱剥離する際に被着体の熱変化が抑制されることが望ましい。
かかる観点から、本発明の一態様の粘着シートにおいて、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、好ましくは125℃未満、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは115℃以下、より更に好ましくは110℃以下、更になお好ましくは105℃以下である。
【0034】
また、加熱剥離型の粘着シートの熱膨張性粒子として膨張開始温度が低いものを用いると、被着体に対して研削を行う場合等の温度上昇によって、熱膨張性粒子が膨張してしまうことがある。熱膨張性粒子のこのような意図しない膨張は、被着体の意図しない分離、位置ズレ等に繋がるため、抑制されることが望ましい。
かかる観点から、本発明の一態様の粘着シートにおいて、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは70℃以上である。
なお、本明細書において、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、以下の方法に基づき測定された値を意味する。
【0035】
(熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)の測定法)
直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに、測定対象となる熱膨張性粒子0.5mgを加え、その上からアルミ蓋(直径5.6mm、厚さ0.1mm)をのせた試料を作製する。
動的粘弾性測定装置を用いて、その試料にアルミ蓋上部から、加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、試料の高さを測定する。そして、加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定し、正方向への変位開始温度を膨張開始温度(t)とする。
【0036】
熱膨張性粒子としては、熱可塑性樹脂から構成された外殻と、当該外殻に内包され、且つ所定の温度まで加熱されると気化する内包成分とから構成される、マイクロカプセル化発泡剤であることが好ましい。
マイクロカプセル化発泡剤の外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン、もしくはこれらの熱可塑性樹脂に含まれる構成単位を形成する単量体の2種以上を重合して得られる共重合体等が挙げられる。
【0037】
マイクロカプセル化発泡剤の外殻に内包される成分である内包成分としては、例えば、プロパン、プロピレン、ブテン、n-ブタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロプロパン、シクロブタン、石油エーテル等の低沸点液体が挙げられる。
これらの中でも、加熱剥離する際に被着体の熱変化を抑制すると共に、被着体に対して研削を行う場合等の温度上昇による熱膨張性粒子の意図しない膨張を抑制する観点から、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)を50℃以上125℃未満とする場合、内包成分は、プロパン、イソブタン、n-ペンタン、及びシクロプロパンが好ましい。
これらの内包成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、内包成分の種類を適宜選択することで調整可能である。
【0038】
本発明の一態様で用いる、熱膨張性粒子の23℃における膨張前の平均粒子径は、好ましくは3~100μm、より好ましくは4~70μm、更に好ましくは6~60μm、より更に好ましくは10~50μmである。
なお、熱膨張性粒子の膨張前の平均粒子径とは、体積中位粒子径(D50)であり、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した、膨張前の熱膨張性粒子の粒子分布において、膨張前の熱膨張性粒子の粒子径の小さい方から計算した累積体積頻度が50%に相当する粒子径を意味する。
【0039】
本発明の一態様で用いる、熱膨張性粒子の23℃における膨張前の90%粒子径(D90)としては、好ましくは10~150μm、より好ましくは15~100μm、更に好ましくは20~90μm、より更に好ましくは25~80μmである。
なお、熱膨張性粒子の膨張前の90%粒子径(D90)とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した、膨張前の熱膨張性粒子の粒子分布において、膨張前の熱膨張性粒子の粒子径の小さい方から計算した累積体積頻度が90%に相当する粒子径を意味する。
【0040】
本発明の一態様で用いる熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上の温度まで加熱した際の体積最大膨張率は、好ましくは1.5~200倍、より好ましくは2~150倍、更に好ましくは2.5~120倍、より更に好ましくは3~100倍である。
【0041】
熱膨張性層中の熱膨張性粒子の含有量は、熱膨張性層の全質量(100質量%)に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上である。また、熱膨張性層中の熱膨張性粒子の含有量は、熱膨張性層の全質量(100質量%)に対して、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは16質量%以下、より更に好ましくは14質量%以下である。
熱膨張性粒子の含有量が1質量%以上であれば、加熱剥離時の剥離性が向上する傾向にある。また、熱膨張性粒子の含有量が25質量%以下であれば、熱膨張前の熱膨張性粒子に起因する凹凸の発生が抑制され、貼付性が向上する傾向にある。
【0042】
<熱膨張性層の厚さ>
本発明の一態様において、熱膨張性層の熱膨張前の厚さは、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μm、更に好ましくは25~120μmである。
熱膨張性層の熱膨張前の厚さが10μm以上であると、熱膨張前の熱膨張性粒子に起因する凹凸の発生が抑制され、貼付性が向上する傾向にある。また、熱膨張性層の熱膨張前の厚さが200μm以下であると、粘着シートの取り扱いが容易になる傾向にある。
【0043】
<粘着剤層(X1)>
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層(X1)は、熱膨張性層であってもよく、非熱膨張性層であってもよいが、非熱膨張性層であることが好ましい。
【0044】
粘着剤層(X1)は、アクリル系樹脂(A)を含有し、アクリル系樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される基を有する。
【0045】
【化3】

(式中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1~10の置換若しくは無置換の炭化水素基を示し、*は、結合部位を示す。)
【0046】
上記一般式(1)中のR及びRが示す炭素数1~10の置換若しくは無置換の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基等が挙げられる。これらの脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。また、これらの脂肪族炭化水素基の炭素数は1~10であり、好ましくは1~5、より好ましくは1~3である。なお、脂肪族炭化水素基が置換基を有する場合、当該炭素数には、置換基の炭素数を含めないものとする。
脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。置換基としての芳香族炭化水素基は、後述するR又はRが示す芳香族炭化水素基と同じものが挙げられる。
【0047】
置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基等が挙げられる。
置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基の炭素数は6~10であり、好ましくは6~8である。なお、芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、当該炭素数には、置換基の炭素数を含めないものとする。
芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、脂肪族炭化水素基等が挙げられる。置換基としての脂肪族炭化水素基は、上述したR又はRが示す脂肪族炭化水素基と同じものが挙げられる。
【0048】
以上の選択肢の中でも、R及びRは水素原子であることが好ましい。
【0049】
上記一般式(1)で表される基は、アセタール構造の一部であることが好ましく、環状アセタール構造の一部であることがより好ましい。
上記一般式(1)で表される基を有する環状アセタール構造としては、下記一般式(2)で表される構造が好ましい。
【0050】
【化4】

(式中、R及びRは、上記一般式(1)の説明の通りであり、Rは、水素原子又は炭素数1~10の置換若しくは無置換の炭化水素基を示し、*は、結合部位を示す。)
【0051】
上記一般式(2)中のRが示す炭素数1~10の置換若しくは無置換の炭化水素基としては、上記一般式(1)中のR及びRと同じものが挙げられ、これらの中でも、炭素数1~10の置換若しくは無置換のアルキル基が好ましく、炭素数1~3の無置換のアルキル基がより好ましく、エチル基がさらに好ましい。
【0052】
上記一般式(1)で表される基は、上記一般式(1)で表される基を有するモノマー(以下、「モノマー(a’)」ともいう)に由来する構成単位(a)に含まれることが好ましい。
上記一般式(1)で表される基を有するモノマー(a’)としては、アクリル系樹脂(A)の構成単位を形成し得るモノマーであれば特に限定されないが、上記一般式(1)で表される基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましく、上記一般式(2)で表される基を有する(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0053】
上記一般式(1)で表される基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルメタクリレート、(5-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート、(5-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルメタクリレート等が挙げられる。
【0054】
アクリル系樹脂(A)は、上記一般式(1)で表される基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体であってもよく、上記一般式(1)で表される基を有するモノマー(a’)とモノマー(a’)以外のモノマーとの共重合体であってもよい。
以下、上記一般式(1)で表される基を有するモノマー(a’)とモノマー(a’)以外のモノマーとの共重合体であるアクリル系樹脂(A)を「アクリル系共重合体(A1)」と称する場合がある。
アクリル系共重合体(A1)中の構成単位(a)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.5~25質量%、更に好ましくは1~20質量%、より更に好ましくは3~17質量%である。
【0055】
アクリル系共重合体(A1)は、上記一般式(1)で表される基を有するモノマー(a’)に由来する構成単位(a)と共に、アルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)及び官能基含有モノマー(a2’)(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を含むものであることが好ましい。
【0056】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、粘着剤層(X1)に優れた粘着力を発現させるという観点から、好ましくは1~24、より好ましくは1~12、更に好ましくは2~10、より更に好ましくは4~8である。
なお、モノマー(a1’)が有するアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0057】
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1’)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー(a1’)としては、n-ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0058】
構成単位(a1)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50~99.9質量%、より好ましくは60~99質量%、更に好ましくは70~97質量%、より更に好ましくは75~95質量%である。
【0059】
モノマー(a2’)が有する官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
つまり、モノマー(a2’)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、モノマー(a2’)としては、水酸基含有モノマー及びカルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0060】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等の水酸基含有化合物が挙げられる。
【0061】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸及びその無水物、2-(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
構成単位(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.5~25質量%、更に好ましくは1~20質量%、より更に好ましくは5~15質量%である。
【0063】
アクリル系共重合体(A1)は、さらに、モノマー(a’)、モノマー(a1’)及びモノマー(a2’)以外の他のモノマー(a3’)に由来する構成単位(a3)を有していてもよい。
なお、アクリル系共重合体(A1)において、モノマー(a’)、構成単位(a1)及び(a2)の合計含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、より更に好ましくは95~100質量%である。
【0064】
モノマー(a3’)としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0065】
アクリル系樹脂(A)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは10万~150万、より好ましくは20万~130万、更に好ましくは35万~120万、より更に好ましくは50万~110万である。
【0066】
次に、粘着剤層(X1)が含有し得る各成分について説明する。
粘着剤層(X1)は、粘着性樹脂を含む粘着剤組成物(x-1)から形成されるものが好ましい。
【0067】
(粘着性樹脂)
粘着性樹脂としては、当該樹脂単独で粘着性を有し、質量平均分子量(Mw)が1万以上の重合体が挙げられる。
粘着性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、粘着剤層(X1)の粘着力向上の観点から、好ましくは1万~200万、より好ましくは2万~150万、更に好ましくは3万~100万である。
【0068】
粘着性樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂等のゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。
これらの粘着性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの粘着性樹脂が、2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0069】
粘着性樹脂は、粘着剤層(X1)に優れた粘着力を発現させる観点から、アクリル系樹脂を含むことが好ましく、上記アクリル系樹脂(A)を含むことがより好ましく、上記アクリル系共重合体(A1)を含むことがさらに好ましい。
【0070】
粘着剤組成物(x-1)中における粘着性樹脂の含有量は、粘着剤組成物(x-1)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは35~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは60~100質量%、より更に好ましくは70~99.5質量%である。
【0071】
粘着性樹脂中のアクリル系樹脂又はアクリル系樹脂(A)の含有量は、粘着剤組成物(x-1)又は粘着剤層(X1)に含まれる粘着性樹脂の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは85~100質量%である。
【0072】
(架橋剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(x-1)は、官能基を有する粘着性樹脂を含有する場合、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
当該架橋剤は、官能基を有する粘着性樹脂と反応して、当該官能基を架橋起点として、粘着性樹脂同士を架橋するものである。
【0073】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
これらの架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの架橋剤の中でも、凝集力を高めて粘着力を向上させる観点、入手し易さ等の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の非環式脂肪族ポリイソシアネート;等の多価イソシアネート化合物等が挙げられる。
また、イソシアネート系架橋剤としては、当該多価イソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含むイソシアヌレート型変性体等も挙げられる。
これらの中でも、加熱時における粘着剤層(X1)の弾性率の低下を抑制して、粘着剤層(X1)由来の残渣が被着体に付着するのを抑制する観点から、多価イソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト型変性体を用いることが好ましく、芳香族ポリイソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト型変性体を用いることがより好ましく、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト型変性体を用いることが更に好ましい。
【0074】
架橋剤の含有量は、粘着性樹脂が有する官能基の数により適宜調整されるものであるが、官能基を有する粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~7質量部、更に好ましくは0.05~5質量部である。
【0075】
(粘着付与剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(x-1)は、粘着力をより向上させる観点から、さらに粘着付与剤を含有していてもよい。
本明細書において、「粘着付与剤」とは、粘着性樹脂の粘着力を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が1万未満のものを指し、上記した粘着性樹脂とは区別されるものである。
粘着付与剤の質量平均分子量(Mw)は1万未満であり、好ましくは400~9,000、より好ましくは500~8,000、更に好ましくは800~5,000である。
【0076】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂、及びこれらを水素化した水素化樹脂等が挙げられる。
【0077】
粘着付与剤の軟化点は、好ましくは60~170℃、より好ましくは65~160℃、更に好ましくは70~150℃である。
なお、本明細書において、粘着付与剤の「軟化点」は、JIS K 2531に準拠して測定した値を意味する。
粘着付与剤は、1種を単独で用いてもよく、軟化点、構造等が異なる2種以上を併用してもよい。2種以上の粘着付与剤を用いる場合、それら複数の粘着付与剤の軟化点の加重平均が、上記範囲に属することが好ましい。
【0078】
粘着付与剤の含有量は、粘着剤組成物(x-1)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01~65質量%、より好ましくは0.1~50質量%、更に好ましくは1~40質量%、より更に好ましくは2~30質量%である。
【0079】
(重合性モノマー)
粘着剤組成物(x-1)は、さらに、重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーは、粘着剤組成物(x-1)から粘着剤層(X1)を形成する過程で、重合性モノマー同士又は他の成分と反応してポリマーを形成するものである。
重合性モノマーとしては、例えば、上記したモノマー(a’)、モノマー(a1’)、モノマー(a2’)、モノマー(a3’)等が挙げられる。
例えば、粘着剤組成物(x-1)が、モノマー(a’)として、上記一般式(1)で表される基を有する(メタ)アクリレートを含有する場合、粘着剤組成物(x-1)から粘着剤層(X1)を形成する過程で、上記一般式(1)で表される基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有するアクリル系樹脂(A)を形成することができる。その際、必要に応じて、重合を促進させるために、後述する光重合開始剤を使用してもよく、エネルギー線照射等の処理を施してもよい。
【0080】
重合性モノマーの含有量は、粘着剤組成物(x-1)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01~40質量%、より好ましくは1~30質量%、更に好ましくは3~25質量%、より更に好ましくは5~20質量%である。
【0081】
(光重合開始剤)
粘着剤組成物(x-1)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。
光重合開始剤を含有することで、上記重合性モノマーの反応を促進させることができる。
光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロロアンスラキノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の配合量は、粘着性樹脂及び重合性モノマーの全量(100質量部)に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.01~4質量部、更に好ましくは0.02~3質量部である。
【0082】
(粘着剤用添加剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(x-1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の添加剤以外にも、一般的な粘着剤に使用される粘着剤用添加剤を含有していてもよい。
このような粘着剤用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤(触媒)、紫外線吸収剤、後述するエネルギー線硬化性化合物及び光重合開始剤等が挙げられる。
なお、これらの粘着剤用添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
これらの粘着剤用添加剤を含有する場合、それぞれの粘着剤用添加剤の含有量は、それぞれ独立して、粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.001~10質量部である。
【0084】
次に、第1の態様の粘着シート及び第2の態様の粘着シートそれぞれについて好適な態様を説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0085】
[第1の態様の粘着シート]
第1の態様の粘着シートは、粘着剤層(X1)と、熱膨張性基材層(Y1)と、非熱膨張性基材層(Y2)と、がこの順で配置された積層構造を有する粘着シートである。
【0086】
<粘着剤層(X1)>
第1の態様の粘着シートが有する粘着剤層(X1)の好適な態様は上記の通りである。
【0087】
(熱膨張性基材層(Y1)を熱膨張させる前の粘着剤層(X1)の粘着力)
第1の態様の粘着シートにおいて、熱膨張性基材層(Y1)を熱膨張させる前の粘着剤層(X1)の粘着力は、好ましくは0.1~12.0N/25mm、より好ましくは0.5~9.0N/25mm、更に好ましくは1.0~8.0N/25mm、より更に好ましくは1.2~7.5N/25mmである。
熱膨張性基材層(Y1)を熱膨張させる前の粘着剤層(X1)の粘着力が0.1N/25mm以上であれば、仮固定時における被着体からの意図しない剥離、被着体の位置ズレ等をより効果的に抑制することができる。一方、当該粘着力が12.0N/25mm以下であれば、加熱剥離時の剥離性をより向上させることができる。
なお、粘着剤層(X1)の熱膨張前の23℃における粘着力は、上記した方法により測定することができる。
【0088】
(熱膨張性基材層(Y1)を熱膨張させた後の23℃における粘着剤層(X1)の粘着力)
第1の態様の粘着シートにおいて、熱膨張性基材層(Y1)を熱膨張させた後の23℃における粘着剤層(X1)の粘着力は、好ましくは1.5N/25mm以下、より好ましくは0.05N/25mm以下、更に好ましくは0.01N/25mm以下、より更に好ましくは0N/25mmである。なお、粘着力が0N/25mmであるとは、後述する熱膨張後の粘着力の測定方法において、測定限界以下の粘着力を意味し、測定のために粘着シートを固定する際に粘着力が小さすぎて意図せず剥離する場合も含まれる。
なお、熱膨張性基材層(Y1)を熱膨張させた後の23℃における粘着剤層(X1)の粘着力は、熱膨張性基材層(Y1)に含有される熱膨張性粒子の膨張開始温度+22℃で1分間加熱した粘着シートを対象として、上記した方法により測定することができる。
【0089】
(粘着剤層(X1)の厚さ)
第1の態様の粘着シートが有する粘着剤層(X1)の厚さは、良好な粘着力を発現させると共に、熱膨張性粒子を加熱により膨張させた際に、粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸を良好に形成させる観点から、好ましくは2~10μm、より好ましくは3~8μm、更に好ましくは4~7μmである。
粘着剤層(X1)の厚さを上記範囲に調整することで、粘着剤層(X1)を形成しやすくすることができ、且つ、粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸を良好に形成させやすくできる。
【0090】
<熱膨張性基材層(Y1)>
第1の態様の粘着シートが有する熱膨張性基材層(Y1)は、樹脂材料中に熱膨張性粒子を含有する熱膨張性層であり、粘着剤層(X1)と非熱膨張性基材層(Y2)との間に設けられる層である。
【0091】
熱膨張性基材層(Y1)は、非粘着性の基材であることが好ましい。
熱膨張性基材層(Y1)の表面におけるプローブタック値は、通常50mN/5mmφ未満であるが、好ましくは30mN/5mmφ未満、より好ましくは10mN/5mmφ未満、更に好ましくは5mN/5mmφ未満である。
なお、本明細書において、基材の表面におけるプローブタック値は、以下の方法により測定された値を意味する。
<プローブタック値>
測定対象となる基材を一辺10mmの正方形に切断した後、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で24時間静置したものを試験サンプルとして、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、タッキング試験機(日本特殊測器株式会社製、製品名「NTS-4800」)を用いて、試験サンプルの表面におけるプローブタック値を、JIS Z0237:1991に準拠して測定することができる。具体的には、直径5mmのステンレス鋼製のプローブを、1秒間、接触荷重0.98N/cmで試験サンプルの表面に接触させた後、当該プローブを10mm/秒の速度で、試験サンプルの表面から離すのに必要な力を測定し、得られた値を、その試験サンプルのプローブタック値とすることができる。
【0092】
熱膨張性基材層(Y1)と積層する他の層との層間密着性を向上させる観点から、熱膨張性基材層(Y1)の表面に対して、酸化法、凹凸化法等による表面処理、易接着処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0093】
熱膨張性基材層(Y1)は、樹脂及び熱膨張性粒子を含む樹脂組成物(y-1)から形成することが好ましい。
以下、樹脂組成物(y-1)の好ましい態様について説明する。なお、熱膨張性粒子の好適な態様については上記した通りである。
【0094】
(樹脂)
樹脂組成物(y-1)に含まれる樹脂は、非粘着性樹脂であってもよく、粘着性樹脂であってもよい。
つまり、樹脂組成物(y-1)に含まれる樹脂が粘着性樹脂であっても、樹脂組成物(y-1)から熱膨張性基材層(Y1)を形成する過程において、当該粘着性樹脂が重合性化合物と重合反応し、得られる樹脂が非粘着性樹脂となり、当該樹脂を含む熱膨張性基材層(Y1)が非粘着性となればよい。
【0095】
樹脂組成物(y-1)に含まれる前記樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは1,000~100万、より好ましくは1,000~70万、更に好ましくは1,000~50万である。
また、当該樹脂が2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0096】
樹脂の含有量は、樹脂組成物(y-1)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~95質量%、更に好ましくは65~90質量%、より更に好ましくは70~85質量%である。
【0097】
樹脂組成物(y-1)に含まれる前記樹脂としては、粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸を形成しやすくする観点、及び熱膨張後のシート形状維持性を良好にする観点から、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。すなわち、熱膨張性基材層(Y1)は、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
また、上記アクリルウレタン系樹脂としては、以下の樹脂(U1)が好ましい。
・ウレタンプレポリマー(UP)と、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル化合物とを重合してなるアクリルウレタン系樹脂(U1)。
なお、本明細書において、プレポリマーとは、モノマーが重合してなる化合物であって、さらなる重合を行うことでポリマーを構成することが可能な化合物を意味する。
【0098】
〔アクリルウレタン系樹脂(U1)〕
アクリルウレタン系樹脂(U1)の主鎖となるウレタンプレポリマー(UP)としては、ポリオールと多価イソシアネートとの反応物が挙げられる。
なお、ウレタンプレポリマー(UP)は、更に鎖延長剤を用いた鎖延長反応を施して得られたものであることが好ましい。
【0099】
ウレタンプレポリマー(UP)の原料となるポリオールとしては、例えば、アルキレン型ポリオール、エーテル型ポリオール、エステル型ポリオール、エステルアミド型ポリオール、エステル・エーテル型ポリオール、カーボネート型ポリオール等が挙げられる。
これらのポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いるポリオールとしては、ジオールが好ましく、エステル型ジオール、アルキレン型ジオール及びカーボネート型ジオールがより好ましく、エステル型ジオール、カーボネート型ジオールが更に好ましい。
【0100】
エステル型ジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール;等のジオール類から選択される1種又は2種以上と、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4-ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸及びこれらの無水物から選択される1種又は2種以上と、の縮重合体が挙げられる。
具体的には、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3-メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
【0101】
アルキレン型ジオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;等が挙げられる。
【0102】
カーボネート型ジオールとしては、例えば、1,4-テトラメチレンカーボネートジオール、1,5-ペンタメチレンカーボネートジオール、1,6-ヘキサメチレンカーボネートジオール、1,2-プロピレンカーボネートジオール、1,3-プロピレンカーボネートジオール、2,2-ジメチルプロピレンカーボネートジオール、1,7-ヘプタメチレンカーボネートジオール、1,8-オクタメチレンカーボネートジオール、1,4-シクロヘキサンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0103】
ウレタンプレポリマー(UP)の原料となる多価イソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
これらの多価イソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの多価イソシアネートは、トリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を含有させたイソシアヌレート型変性体であってもよい。
【0104】
これらの中でも、本発明の一態様で用いる多価イソシアネートとしては、ジイソシアネートが好ましく、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及び脂環式ジイソシアネートから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0105】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられるが、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。
【0106】
本発明の一態様において、アクリルウレタン系樹脂(U1)の主鎖となるウレタンプレポリマー(UP)としては、ジオールとジイソシアネートとの反応物であり、両末端にエチレン性不飽和基を有する直鎖ウレタンプレポリマーが好ましい。
当該直鎖ウレタンプレポリマーの両末端にエチレン性不飽和基を導入する方法としては、ジオールとジイソシアネート化合物とを反応してなる直鎖ウレタンプレポリマーの末端のNCO基と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させる方法が挙げられる。
【0107】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0108】
アクリルウレタン系樹脂(U1)の側鎖となる、ビニル化合物としては、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを併用することがより好ましい。
【0109】
アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを併用する場合、アルキル(メタ)アクリレート100質量部に対する、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの配合割合としては、好ましくは0.1~100質量部、より好ましくは0.5~30質量部、更に好ましくは1.0~20質量部、より更に好ましくは1.5~10質量部である。
【0110】
当該アルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~24、より好ましくは1~12、更に好ましくは1~8、より更に好ましくは1~3である。
【0111】
また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、上述の直鎖ウレタンプレポリマーの両末端にエチレン性不飽和基を導入するために用いられるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと同じものが挙げられる。
【0112】
(メタ)アクリル酸エステル以外のビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニル化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メタ(アクリルアミド)等の極性基含有モノマー;等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
ビニル化合物中の(メタ)アクリル酸エステルの含有量としては、当該ビニル化合物の全量(100質量%)に対して、好ましくは40~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
【0114】
ビニル化合物中のアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの合計含有量としては、当該ビニル化合物の全量(100質量%)に対して、好ましくは40~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
【0115】
本発明の一態様で用いるアクリルウレタン系樹脂(U1)は、ウレタンプレポリマー(UP)と、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル化合物とを混合し、両者を重合することで得られる。
当該重合においては、さらにラジカル開始剤を加えて行うことが好ましい。
【0116】
本発明の一態様で用いるアクリルウレタン系樹脂(U1)において、ウレタンプレポリマー(UP)に由来する構成単位(u11)と、ビニル化合物に由来する構成単位(u12)との含有量比〔(u11)/(u12)〕としては、質量比で、好ましくは10/90~80/20、より好ましくは20/80~70/30、更に好ましくは30/70~60/40、より更に好ましくは35/65~55/45である。
【0117】
〔オレフィン系樹脂〕
樹脂組成物(y-1)に含まれる樹脂として好適な、オレフィン系樹脂としては、オレフィンモノマーに由来する構成単位を少なくとも有する重合体である。
上記オレフィンモノマーとしては、炭素数2~8のα-オレフィンが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1-ヘキセン等が挙げられる。
これらの中でも、エチレン及びプロピレンが好ましい。
【0118】
具体的なオレフィン系樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE、密度:880kg/m以上910kg/m未満)、低密度ポリエチレン(LDPE、密度:910kg/m以上915kg/m未満)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度:915kg/m以上942kg/m未満)、高密度ポリエチレン(HDPE、密度:942kg/m以上)、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂;ポリプロピレン樹脂(PP);ポリブテン樹脂(PB);エチレン-プロピレン共重合体;オレフィン系エラストマー(TPO);ポリ(4-メチル-1-ペンテン)(PMP);エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH);エチレン-プロピレン-(5-エチリデン-2-ノルボルネン)等のオレフィン系三元共重合体;等が挙げられる。
【0119】
本発明の一態様において、オレフィン系樹脂は、さらに酸変性、水酸基変性、アクリル変性から選ばれる1種以上の変性を施した変性オレフィン系樹脂であってもよい。
【0120】
例えば、オレフィン系樹脂に対して酸変性を施してなる酸変性オレフィン系樹脂としては、上述の無変性のオレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸又はその無水物を、グラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記の不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
なお、不飽和カルボン酸又はその無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
オレフィン系樹脂に対してアクリル変性を施してなるアクリル変性オレフィン系樹脂としては、主鎖である上述の無変性のオレフィン系樹脂に、側鎖として、アルキル(メタ)アクリレートをグラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記のアルキル(メタ)アクリレートが有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~20、より好ましくは1~16、更に好ましくは1~12である。
上記のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、上述したモノマー(a1’)として選択可能な化合物と同じものが挙げられる。
【0122】
オレフィン系樹脂に対して水酸基変性を施してなる水酸基変性オレフィン系樹脂としては、主鎖である上述の無変性のオレフィン系樹脂に、水酸基含有化合物をグラフト重合させてなる変性重合体が挙げられる。
上記の水酸基含有化合物としては、上述した水酸基含有化合物と同様のものが挙げられる。
【0123】
〔アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂〕
本発明の一態様において、樹脂組成物(y-1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
そのような樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;アクリルウレタン系樹脂には該当しないポリウレタン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0124】
ただし、粘着剤層(X1)の粘着表面に凹凸を形成しやすくする観点、及び熱膨張後のシート形状維持性を良好にする観点から、樹脂組成物(y-1)中のアクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂の含有量は、少ない方が好ましい。
アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂以外の樹脂の含有量としては、樹脂組成物(y-1)中に含まれる樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは30質量部未満、より好ましくは20質量部未満、更に好ましくは10質量部未満、より更に好ましくは5質量部未満、更になお好ましくは1質量部未満である。
【0125】
(基材用添加剤)
樹脂組成物(y-1)には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、基材用添加剤を含有してもよい。
基材用添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が挙げられる。
なお、これらの基材用添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの基材用添加剤を含有する場合、それぞれの基材用添加剤の含有量は、それぞれ独立して、前記樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.001~10質量部である。
【0126】
(無溶剤型樹脂組成物(y-1a))
本発明の一態様で用いる樹脂組成物(y-1)の一態様として、質量平均分子量(Mw)が50,000以下のエチレン性不飽和基を有するオリゴマーと、エネルギー線重合性モノマーと、上述の熱膨張性粒子を配合してなり、溶剤を配合しない、無溶剤型樹脂組成物(y-1a)が挙げられる。
無溶剤型樹脂組成物(y-1a)では、溶剤を配合しないが、エネルギー線重合性モノマーが、前記オリゴマーの可塑性の向上に寄与するものである。
無溶剤型樹脂組成物(y-1a)に対して、エネルギー線を照射することで、エチレン性不飽和基を有するオリゴマー、エネルギー線重合性モノマー等が重合し、熱膨張性基材層(Y1)が形成される。
【0127】
無溶剤型樹脂組成物(y-1a)に含まれる前記オリゴマーの質量平均分子量(Mw)は、50,000以下であるが、好ましくは1,000~50,000、より好ましくは2,000~40,000、更に好ましくは3,000~35,000、より更に好ましくは4,000~30,000である。
【0128】
前記オリゴマーとしては、上述の樹脂組成物(y-1)に含まれる樹脂のうち、質量平均分子量が50,000以下のエチレン性不飽和基を有するものであればよいが、上述のウレタンプレポリマー(UP)が好ましく、両末端にエチレン性不飽和基を有する直鎖ウレタンプレポリマーがより好ましい。
なお、当該オリゴマーとしては、エチレン性不飽和基を有する変性オレフィン系樹脂も使用し得る。
【0129】
無溶剤型樹脂組成物(y-1a)中における、前記オリゴマー及びエネルギー線重合性モノマーの合計含有量は、無溶剤型樹脂組成物(y-1a)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~95質量%、更に好ましくは65~90質量%、より更に好ましくは70~85質量%である。
【0130】
エネルギー線重合性モノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート、トリシクロデカンアクリレート等の脂環式重合性化合物;フェニルヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノールエチレンオキシド変性アクリレート等の芳香族重合性化合物;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等の複素環式重合性化合物等が挙げられる。これらの中でも、層間接着性の観点から、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルヒドロキシプロピルアクリレートが好ましい。
これらのエネルギー線重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0131】
無溶剤型樹脂組成物(y-1a)中における、前記オリゴマーと、前記エネルギー線重合性モノマーとの含有量比[オリゴマー/エネルギー線重合性モノマー]は、質量比で、好ましくは20/80~90/10、より好ましくは30/70~85/15、更に好ましくは35/65~80/20である。
【0132】
本発明の一態様において、無溶剤型樹脂組成物(y-1a)は、さらに光重合開始剤を配合してなることが好ましい。
光重合開始剤を含有することで、比較的低エネルギーのエネルギー線の照射によっても、十分に硬化反応を進行させることができる。
光重合開始剤としては、粘着剤層(X1)の説明で挙げられたものと同じものが挙げられる。
光重合開始剤の配合量は、前記オリゴマー及びエネルギー線重合性モノマーの全量(100質量部)に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.01~4質量部、更に好ましくは0.02~3質量部である。
【0133】
(熱膨張性基材層(Y1)の厚さ)
熱膨張性基材層(Y1)の熱膨張前の厚さは、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μm、更に好ましくは25~120μmである。
熱膨張性基材層(Y1)の熱膨張前の厚さが10μm以上であると、熱膨張前の熱膨張性粒子に起因する凹凸の形成を抑制することができ、粘着剤層(X1)の粘着力を良好にすることができる。熱膨張性基材層(Y1)の熱膨張前の厚さが200μm以下であると、両面粘着シートの取り扱いが容易になる傾向にある。
【0134】
<非熱膨張性基材層(Y2)>
第1の態様の粘着シートが有する非熱膨張性基材層(Y2)は、熱膨張性基材層(Y1)の粘着剤層(X1)の積層面とは反対側の面に設けられる。
非熱膨張性基材層(Y2)は、上述の方法に基づき判断される、非熱膨張性層である。
【0135】
非熱膨張性基材層(Y2)は、非粘着性の基材であることが好ましい。非熱膨張性基材層(Y2)の表面におけるプローブタック値は、通常50mN/5mmφ未満であるが、好ましくは30mN/5mmφ未満、より好ましくは10mN/5mmφ未満、更に好ましくは5mN/5mmφ未満である。
【0136】
非熱膨張性基材層(Y2)の形成材料としては、例えば、樹脂、金属、紙材等が挙げられ、粘着シートの用途に応じて適宜選択することができる。
【0137】
樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、スズ、クロム、チタン等が挙げられる。
紙材としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂が好ましい。
【0138】
これらの形成材料は、1種から構成されていてもよく、2種以上を併用してもよい。
2種以上の形成材料を併用した非熱膨張性基材層(Y2)としては、紙材をポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしたもの、樹脂を含む樹脂フィルム又はシートの表面に金属膜を形成したもの等が挙げられる。
なお、金属層の形成方法としては、例えば、上記金属を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD法により蒸着する方法、又は、上記金属からなる金属箔を一般的な粘着剤を用いて貼付する方法等が挙げられる。
【0139】
なお、非熱膨張性基材層(Y2)と積層する他の層との層間密着性を向上させる観点から、非熱膨張性基材層(Y2)が樹脂を含む場合、非熱膨張性基材層(Y2)の表面に対しても、上述の熱膨張性基材層(Y1)と同様に、酸化法、凹凸化法等による表面処理、易接着処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
【0140】
また、非熱膨張性基材層(Y2)が樹脂を含む場合、当該樹脂と共に、樹脂組成物(y-1)にも含有し得る、上述の基材用添加剤を含有してもよい。
【0141】
(非熱膨張性基材層(Y2)の23℃における貯蔵弾性率E’(23))
非熱膨張性基材層(Y2)の23℃における貯蔵弾性率E’(23)は、好ましくは5.0×10~5.0×10Pa、より好ましくは5.0×10~4.5×10Pa、更に好ましくは1.0×10~4.0×10Paである。
非熱膨張性基材層(Y2)の貯蔵弾性率E’(23)が5.0×10Pa以上であれば、粘着シートの耐変形性を向上させやすい。一方、非熱膨張性基材層(Y2)の貯蔵弾性率E’(23)が5.0×10Pa以下であれば、粘着シートの取り扱い性を向上させやすい。
なお、本明細書において、非熱膨張性基材層(Y2)の貯蔵弾性率E’(23)は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0142】
(非熱膨張性基材層(Y2)の厚さ)
非熱膨張性基材層(Y2)の厚さは、好ましくは5~500μm、より好ましくは15~300μm、更に好ましくは20~200μmである。
非熱膨張性基材層(Y2)の厚さが5μm以上であれば、粘着シートの耐変形性を向上させやすい。一方、非熱膨張性基材層(Y2)の厚さが500μm以下であれば、粘着シートの取り扱い性を向上させ易くなる。
【0143】
<粘着剤層(X2)>
第1の態様の粘着シートは、非熱膨張性基材層(Y2)の熱膨張性基材層(Y1)の積層面とは反対側の面に粘着剤層(X2)を有していてもよい。すなわち、第1の態様の粘着シートは、粘着剤層(X1)と、熱膨張性基材層(Y1)と、非熱膨張性基材層(Y2)と、粘着剤層(X2)と、がこの順で配置された積層構造を有する粘着シートであってもよい。
粘着剤層(X2)は、非熱膨張性層であることが好ましい。
【0144】
粘着剤層(X2)は、エネルギー線を照射することにより硬化して粘着力が低下するエネルギー線硬化性粘着剤層であることが好ましい。粘着剤層(X2)をエネルギー線硬化性粘着剤層とすることで、粘着剤層(X1)の粘着表面は加熱により粘着力が低下する態様とし、粘着剤層(X2)の粘着表面はエネルギー線照射により粘着力が低下する態様とすることができ、互いの粘着剤層の粘着力を低下させる作用機構を異なるものにすることができる。これにより、いずれか一方の粘着剤層の粘着力を低下させる処理を行う際に、意図せず他方の粘着剤層の粘着力まで低下させてしまうことを回避することができる。
【0145】
粘着剤層(X2)は、粘着性樹脂を含有する粘着剤組成物(x-2)から形成することが好ましい。以下、粘着剤組成物(x-2)に含有される各成分について説明する。
【0146】
粘着剤組成物(x-2)は、粘着性樹脂を含有するものであり、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、重合性化合物、重合開始剤、上記各成分以外の一般的な粘着剤に使用される粘着剤用添加剤等を含有していてもよい。
【0147】
(粘着性樹脂)
粘着性樹脂としては、当該樹脂単独で粘着性を有し、質量平均分子量(Mw)が1万以上の重合体であればよい。
粘着性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、粘着剤層(X2)の粘着力をより向上させる観点から、好ましくは1万~200万、より好ましくは2万~150万、更に好ましくは3万~100万である。
【0148】
粘着性樹脂としては、粘着剤組成物(x-1)が含有する粘着性樹脂と同様のものが挙げられる。
これらの粘着性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの粘着性樹脂が、2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0149】
粘着剤組成物(x-2)に含有される粘着性樹脂は、得られる粘着剤層(X2)をエネルギー線照射によって硬化して粘着力が低下する粘着剤層とする観点から、側鎖にエネルギー線重合性官能基を有する粘着性樹脂であることが好ましい。
エネルギー線重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等の炭素-炭素二重結合を有するものが挙げられる。
【0150】
粘着性樹脂は、優れた粘着力を発現させる観点から、アクリル系樹脂を含有することが好ましい。
粘着剤組成物(x-2)中におけるアクリル系樹脂の含有量は、粘着剤組成物(x-2)に含有される粘着性樹脂の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは85~100質量%である。
【0151】
粘着剤組成物(x-2)中における粘着性樹脂の含有量は、粘着剤組成物(x-2)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは35~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは60~98質量%、より更に好ましくは70~95質量%である。
【0152】
(エネルギー線硬化性化合物)
粘着剤組成物(x-2)は、粘着性樹脂と共に、エネルギー線硬化性化合物として、エネルギー線照射により重合硬化可能なモノマー又はオリゴマーを含有していてもよい。
このようなエネルギー線硬化性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレートモノマー;多官能ウレタン(メタ)アクリレート、多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、多官能ポリエーテル(メタ)アクリレート、多官能エポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーが挙げられる。
これらの中でも、比較的分子量が高く、粘着剤層(X2)の弾性率を低下させにくいという観点から、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
エネルギー線硬化性化合物の分子量(オリゴマーの場合は質量平均分子量(Mw))は、好ましくは100~12,000、より好ましくは200~10,000、更に好ましくは400~8,000、より更に好ましくは600~6,000である。
【0153】
(光重合開始剤)
粘着剤組成物(x-2)は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤を含有することで、エネルギー線重合性成分の重合をより効率的に進行させることができる。
光重合開始剤としては、粘着剤層(X1)の説明で例示したものと同じものが挙げられる。これらの中でも、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
光重合開始剤の含有量は、エネルギー線重合性官能基を有する粘着性樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~5質量部、更に好ましくは0.05~2質量部である。
【0154】
(架橋剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(x-2)が官能基を有する粘着性樹脂を含有する場合、粘着剤組成物(x-2)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
当該架橋剤は、官能基を有する粘着性樹脂と反応して、当該官能基を架橋起点として、粘着性樹脂同士を架橋するものである。
【0155】
粘着剤組成物(x-2)が含有していてもよい架橋剤としては、粘着剤組成物(x-1)が含有していてもよい架橋剤と同じもの又は同等のものが挙げられるが、凝集力を高めて粘着力を向上させる観点、入手し易さ等の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0156】
架橋剤の含有量は、粘着性樹脂が有する官能基の数により適宜調整されるものであるが、官能基を有する粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~7質量部、更に好ましくは0.05~5質量部である。
【0157】
(粘着付与剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(x-2)は、粘着力をより向上させる観点から、さらに粘着付与剤を含有していてもよい。
粘着剤組成物(x-2)が含有していてもよい粘着付与剤としては、粘着剤組成物(x-1)が含有していてもよい粘着付与剤と同じもの又は同等のものを使用することができる。
【0158】
(粘着剤用添加剤)
粘着剤用添加剤としては、粘着剤組成物(x-1)が含有していてもよい粘着剤用添加剤と同じものが挙げられる。
【0159】
粘着剤組成物(x-2)は、粘着性樹脂、必要に応じて使用される架橋剤、粘着付与剤、粘着剤用添加剤等を混合することで製造することができる。
【0160】
(粘着剤層(X2)のエネルギー線照射前の粘着力)
粘着剤層(X2)のエネルギー線照射前の粘着力は、好ましくは1.1~30.0N/25mm、より好ましくは3.0~25.0N/25mm、更に好ましくは5.0~20.0N/25mmである。
粘着剤層(X2)のエネルギー線照射前の粘着力が1.1N/25mm以上であれば、被着体からの意図しない剥離、被着体の位置ズレ等をより効果的に抑制することができる。一方、当該粘着力が30.0N/25mm以下であれば、エネルギー線照射後の剥離性をより向上させることができる。
なお、粘着剤層(X2)のエネルギー線照射前の粘着力は、上記した方法により測定することができる。
【0161】
(粘着剤層(X2)のエネルギー線照射後の粘着力)
粘着剤層(X2)のエネルギー線照射後の粘着力は、好ましくは1.0N/25mm以下、より好ましくは0.9N/25mm以下、更に好ましくは0.8N/25mm以下、より更に好ましくは0.7N/25mm以下である。粘着剤層(X2)のエネルギー線照射後の下限値に特に制限はなく、0N/25mm以上であってもよい。
粘着剤層(X2)のエネルギー線照射後の粘着力が1.0N/25mm以下であれば、被着体からの剥離性により優れたものとなる。
なお、粘着剤層(X2)のエネルギー線照射後の粘着力は、粘着剤層(X2)に対して照度230mW/cm、光量90mJ/cmの紫外線を照射した粘着シートを対象として、上記した方法により測定することができる。
【0162】
(粘着剤層(X2)の厚さ)
第1の態様の粘着シートが有する粘着剤層(X2)の厚さは、好ましくは5~150μm、より好ましくは8~100μm、更に好ましくは12~80μm、より更に好ましくは15~65μmである。
粘着剤層(X2)の厚さが5μm以上であれば、十分な粘着力が得られやすくなり、仮固定時における被着体からの意図しない剥離、被着体の位置ズレ等を抑制できる傾向にある。一方、粘着剤層(X2)の厚さが150μm以下であれば、粘着シートの取り扱いが容易になる傾向にある。
【0163】
<第1の態様の粘着シートの製造方法>
第1の態様の粘着シートの製造方法は、特に制限はなく、例えば、下記工程(1a)~(3a)を有する、粘着シートの製造方法が挙げられる。
・工程(1a):剥離材の剥離処理表面上に、粘着剤組成物(x-1)を塗布して粘着剤層(X1)を形成する工程。
・工程(2a):非熱膨張性基材層(Y2)の片面に、樹脂組成物(y-1)を塗布して非熱膨張性基材層(Y2)と熱膨張性基材層(Y1)とが積層された基材積層体を形成する工程。
・工程(3a):工程(1a)で形成した粘着剤層(X1)の粘着表面と、工程(2a)で形成した基材積層体の熱膨張性基材層(Y1)側の表面とを、貼り合わせて、粘着シートを得る工程。
【0164】
また、第1の態様の粘着シートが、粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、粘着剤層(X2)と、がこの順で配置された積層構造を有する構成を有するものである場合、該粘着シートは、さらに、下記工程(4a)及び(5a)を有する方法によって、製造することができる。
・工程(4a):剥離材の剥離処理表面上に、粘着剤組成物(x-2)を塗布して粘着剤層(X2)を形成する工程。
・工程(5a):工程(3a)で形成した粘着シートの非熱膨張性基材層(Y2)側の表面に、工程(4a)で形成した粘着剤層(X2)の粘着表面を貼り合わせる工程。
【0165】
上記粘着シートの製造方法において、樹脂組成物(y-1)、粘着剤組成物(x-1)、及び粘着剤組成物(x-2)は、さらに希釈溶剤を配合し、溶液の形態としてもよい。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0166】
また、樹脂組成物(y-1)、粘着剤組成物(x-1)、及び粘着剤組成物(x-2)から形成される塗膜を乾燥する工程は、熱膨張性粒子の膨張を抑制する観点から、乾燥温度を熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)未満で行うことが好ましい。
【0167】
[第2の態様の粘着シート]
第2の態様の粘着シートは、熱膨張性層である粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、を含む積層構造を有する粘着シートである。
第2の態様の粘着シートは、基材層(Y)の粘着剤層(X1)の積層面とは反対側の面に粘着剤層(X2)を有していてもよい。すなわち、第2の態様の粘着シートは、熱膨張性層である粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、粘着剤層(X2)と、がこの順で配置された積層構造を有する粘着シートであってもよい。
【0168】
第2の態様の粘着シートが有する基材層(Y)についての説明は、第1の態様の粘着シートにおける非熱膨張性基材層(Y2)についての説明と同じである。また、第2の態様の粘着シートが有していてもよい粘着剤層(X2)についての説明は、第1の態様の粘着シートが有していてもよい粘着剤層(X2)についての説明と同じである。
【0169】
<粘着剤層(X1)>
第2の態様の粘着シートが有する粘着剤層(X1)は熱膨張性粒子を含有する熱膨張性層であり、粘着性樹脂及び熱膨張性粒子を含有することが好ましい。
第2の態様の粘着シートが有する粘着剤層(X1)に関する説明は、熱膨張性層であること及び後述の好適な厚さを除き、第1の態様の粘着シートが有する粘着剤層(X1)に関する説明と同じである。
【0170】
(粘着剤層(X1)の厚さ)
第2の態様の粘着シートが有する粘着剤層(X1)の熱膨張前の厚さは、好ましくは20~270μm、より好ましくは30~240μm、更に好ましくは40~220μm、より更に好ましくは50~200μmである。
粘着剤層(X1)の熱膨張前の厚さが20μm以上であると、熱膨張前の熱膨張性粒子に起因する凹凸の発生が抑制され、貼付性が向上する傾向にある。また、粘着剤層(X1)の熱膨張前の厚さが270μm以下であると、粘着シートの取り扱いが容易になる傾向にある。
【0171】
<剥離材>
本発明の一態様の粘着シートが有していてもよい剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シート、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離材用の基材としては、例えば、プラスチックフィルム、紙類等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム;ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のオレフィン樹脂フィルム等が挙げられ、紙類としては、例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙等が挙げられる。
【0172】
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー;長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。剥離剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0173】
剥離材の厚さは、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μm、更に好ましくは35~80μmである。
【0174】
[粘着シートの用途及び使用方法]
本発明の一態様の粘着シートは、仮固定された被着体を加熱により容易に剥離することができるため、様々な用途に適用可能である。具体的には、例えば、半導体ウエハ等の被着体をダイシングする際に用いられるダイシングシート、被着体を研削する工程に用いられるバックグラインドシート、ダイシングによって個片化された半導体チップ等の被着体同士の距離を拡大させるために用いられるエキスパンドテープ、半導体チップ等の被着体の表裏を反転させるために用いられる転写テープ、検査対象物を仮固定して検査するための仮固定用シート等に好適である。
【0175】
本発明の一態様の粘着シートの被着体としては、特に限定されないが、例えば、半導体チップ、半導体ウエハ、化合物半導体、半導体パッケージ、電子部品、サファイア基板、ディスプレイ、パネル用基板等が挙げられる。
本発明の一態様の粘着シートにおいて、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)を125℃未満とした場合、低温での加熱剥離が可能であることから、DAF付き半導体チップ等の熱変化し易い被着体を仮固定するのに好適である。
また、本発明の一態様の粘着シートにおいて、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)を50℃以上とした場合、被着体に対して研削を行う場合等の温度上昇による熱膨張性粒子の意図しない膨張を抑制できることから、被着体を研削する工程に用いられるバックグラインドシートとして用いるのに好適である。
【0176】
本発明の一態様の粘着シートを被着体から加熱剥離する際の加熱温度は、熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上であり、好ましくは「膨張開始温度(t)より高い温度」、より好ましくは「膨張開始温度(t)+2℃」以上、更に好ましくは「膨張開始温度(t)+4℃」以上、より更に好ましくは「膨張開始温度(t)+5℃」以上である。また、省エネルギー性及び加熱剥離時における被着体の熱変化を抑制する観点からは、好ましくは「膨張開始温度(t)+50℃」以下、より好ましくは「膨張開始温度(t)+40℃」以下、更に好ましくは「膨張開始温度(t)+20℃」以下である。
また、加熱剥離する際の加熱温度は、被着体の熱変化を抑制する観点からは、膨張開始温度(t)以上の範囲内において、好ましくは125℃未満、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは115℃以下、より更に好ましくは110℃以下、更になお好ましくは105℃以下である。
【0177】
加熱の方式としては、熱膨張性粒子が膨張する温度以上に加熱することができるものであれば特に限定されず、例えば、電熱ヒーター;誘電加熱;磁気加熱;近赤外線、中赤外線、及び遠赤外線等の赤外線等の電磁波による加熱等を適宜使用できる。なお、加熱方式は、加熱ローラー、加熱プレス等の接触型加熱方式;雰囲気加熱装置、赤外線照射等の非接触型加熱方式のいずれの加熱方式であってもよい。
【0178】
[半導体装置の製造方法]
本発明は、本発明の一態様の粘着シートを用いる半導体装置の製造方法も提供する。
本発明の半導体装置の製造方法の一態様としては、本発明の一態様の粘着シートを、被着体を加工及び検査の少なくともいずれか一方を行うための仮固定用シートとして使用する態様(以下、「第1態様の半導体装置の製造方法」ともいう)が挙げられる。
なお、本明細書において、「半導体装置」とは、半導体特性を利用することで機能し得る装置全般を指す。例えば、集積回路を備えるウエハ、集積回路を備える薄化されたウエハ、集積回路を備えるチップ、集積回路を備える薄化されたチップ、これらのチップを含む電子部品、及び当該電子部品を備える電子機器類等が挙げられる。
【0179】
<第1態様の半導体装置の製造方法>
第1態様の半導体装置の製造方法のより具体的な態様としては、本発明の一態様の粘着シートに加工検査対象物を貼付し、該加工検査対象物に対して、加工及び検査から選択される1以上を施した後に、前記粘着シートを前記膨張開始温度(t)以上に加熱する工程を含む、半導体装置の製造方法が挙げられる。
加工検査対象物としては、例えば、半導体チップ、半導体ウエハ、化合物半導体、半導体パッケージ、電子部品、LED素子、サファイア基板、ディスプレイ、パネル用基板等が挙げられる。
加工検査対象物に対して行われる加工は、特に限定されないが、例えば、研削処理、個片化処理等が挙げられる。
加工検査対象物に対して行われる検査は、特に限定されないが、例えば、光学顕微鏡、レーザーを利用した欠陥検査(例えば、ごみ検査、表面傷検査、配線パターン検査等)、目視による表面検査等が挙げられる。
【0180】
第1態様の半導体装置の製造方法において、加工検査対象物を貼付する粘着シートの粘着剤層は、粘着剤層(X1)であってもよく、粘着シートが両面粘着シートである場合は、粘着剤層(X2)であってもよい。
粘着シートが両面粘着シートである場合、一方の粘着剤層に加工検査対象物を貼付し、他方の粘着剤層に支持体を貼付することが好ましい。加工検査対象物が粘着シートを介して支持体に固定されることによって、加工処理を行う際に、加工検査対象物の振動、位置ズレ、脆弱な加工検査対象物の破損等を抑制し、加工精度及び加工速度を向上させることができる。さらに本発明の一態様の粘着シートは、貼付性に優れるものであるため、粘着シートと被着体との接着界面の空気溜まりの発生に起因する振動、位置ズレ、加工対象物の破損等をより効果的に抑制することができる。このとき、支持体が粘着剤層(X1)に貼付され、加工検査対象物が粘着剤層(X2)に貼付される態様であってもよいし、加工検査対象物が粘着剤層(X1)に貼付され、支持体が粘着剤層(X2)に貼付される態様であってもよい。
支持体が粘着剤層(X1)に貼付され、加工検査対象物が粘着剤層(X2)に貼付される態様である場合、支持体が加熱処理後の剥離性に優れる粘着剤層(X1)に貼付されることで、支持体が硬質な材質から構成されるものであっても、粘着シート及び支持体を屈曲させることなく加熱剥離することができる。また、粘着剤層(X2)は、加工検査対象物の種類等に応じて適宜組成を選択すればよく、例えば、粘着剤層(X2)をエネルギー線照射によって粘着力が低下する粘着剤層とすると、熱膨張性粒子に由来する残渣等によって加工検査対象物を汚染させることなく剥離することができる。
一方、加工検査対象物が粘着剤層(X1)に貼付され、支持体が粘着剤層(X2)に貼付される態様である場合、加工検査対象物が加熱処理後の剥離性に優れる粘着剤層(X1)に貼付されることで、加工後に加工検査対象物を容易に粘着シートから剥離することができるため、加工検査対象物へのダメージを軽減することができる。
【0181】
<第2態様の半導体装置の製造方法>
第2態様の半導体装置の製造方法は、本発明の一態様の粘着シートとして、粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、粘着剤層(X2)と、がこの順で配置された積層構造を有する粘着シートを用い、下記工程1A、工程2A、第一分離工程、及び第二分離工程を含む製造方法(以下、「製造方法A」ともいう)が挙げられる。
工程1A:前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X2)に加工対象物を貼付し、前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X1)に支持体を貼付する工程
工程2A:前記加工対象物に対して、研削処理及び個片化処理から選択される1以上の処理を施す工程
第一分離工程:前記粘着シートを、前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上に加熱して、前記粘着剤層(X1)と前記支持体とを分離する工程
第二分離工程:前記粘着剤層(X2)と前記加工対象物とを分離する工程
【0182】
以下、製造方法Aについて図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、加工対象物として半導体ウエハを用いる場合の例を主に説明するが、他の加工対象物の場合も同様である。他の加工対象物としては、加工検査対象物として挙げた上記と同様のものが挙げられる。
【0183】
(工程1A)
工程1Aは、粘着シートが有する粘着剤層(X2)に加工対象物を貼付し、粘着剤層(X1)に支持体を貼付する工程である。
図3(a)及び(b)には、粘着シート2aが有する粘着剤層(X2)に半導体ウエハWを貼付し、粘着剤層(X1)に支持体3を貼付する工程を説明する断面図が示されている。
半導体ウエハWは、回路面である表面W1が粘着剤層(X2)側になるように貼付される。
半導体ウエハWは、シリコンウエハであってもよく、ガリウム砒素、炭化ケイ素、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、窒化ガリウム、インジウム燐等のウエハ、ガラスウエハであってもよい。
半導体ウエハWの研削前の厚さは、通常は500~1000μmである。
半導体ウエハWの表面W1が有する回路は、例えば、エッチング法、リフトオフ法等の従来汎用されている方法によって形成することができる。
【0184】
支持体3の材質は、加工対象物の種類、加工内容等に応じて、機械強度、耐熱性等の要求される特性を考慮の上、適宜選択すればよい。
支持体3の材質としては、例えば、SUS等の金属材料;ガラス、シリコンウエハ等の非金属無機材料;エポキシ樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の樹脂材料;ガラスエポキシ樹脂等の複合材料等が挙げられ、これらの中でも、SUS、ガラス、シリコンウエハが好ましい。
上記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ナイロン、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
上記スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0185】
支持体3は、粘着剤層(X1)の粘着表面の全面に貼付されることが好ましい。そのため、粘着剤層(X1)の粘着表面に貼付される側の支持体3の表面の面積は、粘着剤層(X1)の粘着表面の面積以上であることが好ましい。また、粘着剤層(X1)の粘着表面に貼付される側の支持体3の面は平面状であることが好ましい。
支持体3の形状は、特に限定されないが、板状であることが好ましい。
支持体3の厚さは、要求される特性を考慮して適宜選択すればよいが、好ましくは20μm以上50mm以下、より好ましくは60μm以上20mm以下である。
【0186】
(工程2A)
工程2Aは、加工対象物に対して、研削処理及び個片化処理から選択される1以上の処理を施す工程である。
研削処理及び個片化処理から選択される1以上の処理としては、例えば、グラインダー等を用いる研削処理;ブレードダイシング法、レーザーダイシング法、ステルスダイシング(登録商標)法による個片化処理;ブレード先ダイシング法、ステルス先ダイシング法による研削処理及び個片化処理;等が挙げられる。
これらの中でも、ステルスダイシング法による個片化処理、ブレード先ダイシング法による研削処理及び個片化処理、ステルス先ダイシング法による研削処理及び個片化処理が好適であり、ブレード先ダイシング法による研削処理及び個片化処理、ステルス先ダイシング法による研削処理及び個片化処理がより好適である。
【0187】
ステルスダイシング法は、レーザー光の照射により半導体ウエハの内部に改質領域を形成し、該改質領域を分割起点として、半導体ウエハを個片化する方法である。半導体ウエハに形成された改質領域は多光子吸収によって脆質化された部分であり、半導体ウエハがエキスパンドによりウエハ面と平行かつウエハが拡張される方向に応力がかかることにより、該改質領域を起点として半導体ウエハの表面及び裏面に向けて亀裂が伸展することで、半導体チップに個片化される。すなわち、改質領域は、個片化される際の分割線に沿って形成される。
改質領域は、半導体ウエハの内部に焦点を合わせたレーザー光の照射によって半導体ウエハの内部に形成される。レーザー光の入射面は、半導体ウエハの表面であっても裏面であってもよい。また、レーザー光入射面は、粘着シートが貼付された面であってもよく、その場合、レーザー光は粘着シートを介して半導体ウエハに照射される。
【0188】
ブレード先ダイシング法は、DBG法(Dicing Before Grinding)とも呼ばれる。ブレード先ダイシング法は、分割予定のラインに沿って、予め半導体ウエハにその厚さより浅い深さで溝を形成した後、該半導体ウエハを、研削面が少なくとも溝に到達するまで裏面研削して薄化させつつ個片化する方法である。研削面が到達した溝は、半導体ウエハを貫通する切り込みとなり、半導体ウエハは該切り込みにより分割されて半導体チップに個片化される。予め形成される溝は、通常は半導体ウエハの表面(回路面)に設けられるものであり、例えば、従来公知の、ダイシングブレードを備えるウエハダイシング装置等を用いたダイシングにより形成することができる。
【0189】
ステルス先ダイシング法は、SDBG法(Stealth Dicing Before Grinding)とも呼ばれる。ステルス先ダイシング法は、ステルスダイシング法と同様、レーザー光の照射により半導体ウエハの内部に改質領域を形成し、該改質領域を分割起点として、半導体ウエハを個片化する方法の一種であるが、研削処理を行って半導体ウエハを薄化させつつ半導体ウエハを半導体チップに個片化する点がステルスダイシング法とは異なる。具体的には、改質領域を有する半導体ウエハを裏面研削して薄化させつつ、その際に半導体ウエハにかかる圧力によって該改質領域を起点として半導体ウエハの粘着剤層との貼付面に向けて亀裂を伸展させ、半導体ウエハを半導体チップに個片化する。
なお、改質領域を形成した後の研削厚さは、改質領域に至る厚さであってもよいが、厳密に改質領域にまで至らなくても、改質領域に近接する位置まで研削して研削砥石等の加工圧力で割断させてもよい。
【0190】
半導体ウエハWをブレード先ダイシング法によって個片化する場合、工程1Aで粘着剤層(X2)に貼付する半導体ウエハWの表面W1には、予め溝を形成しておくことが好ましい。
一方、半導体ウエハWをステルス先ダイシング法によって個片化する場合は、工程1Aで粘着剤層(X2)に貼付する半導体ウエハWに対してレーザー光を照射して予め改質領域を形成しておいてもよいし、粘着剤層(X2)に貼付されている半導体ウエハWに対してレーザー光を照射して改質領域を形成してもよい。
【0191】
図4には、粘着剤層(X2)に貼付した半導体ウエハWに対して、レーザー光照射装置4を用いて複数の改質領域5を形成する工程を説明する断面図が示されている。
レーザー光は半導体ウエハWの裏面W2側から照射され、半導体ウエハWの内部に複数の改質領域5が略等間隔に形成されている。
【0192】
図5(a)及び(b)には、半導体ウエハWを薄化させつつ複数の半導体チップCPに個片化する工程を説明する断面図が示されている。
図5(a)に示されるように、改質領域5を形成した半導体ウエハWの裏面W2をグラインダー6によって研削し、その際、半導体ウエハWにかかる圧力により改質領域5を起点とする割断を生じさせる。これにより、図5(b)に示されるように、半導体ウエハWが薄化及び個片化された複数の半導体チップCPが得られる。
改質領域5が形成された半導体ウエハWは、例えば、該半導体ウエハWを支持している支持体3をチャックテーブル等の固定テーブル上に固定した状態で、その裏面W2が研削される。
【0193】
研削後の半導体チップCPの厚さは、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~45μmである。また、ステルス先ダイシング法によって研削処理及び個片化処理を行う場合、研削されて得られた半導体チップCPの厚さを50μm以下、より好ましくは10~45μmとすることが容易になる。
研削後の半導体チップCPの平面視における大きさは、好ましくは600mm未満、より好ましくは400mm未満、更に好ましくは300mm未満である。なお、平面視とは厚さ方向に見ることをいう。
個片化後の半導体チップCPの平面視における形状は、方形であってもよく、矩形等の細長形状であってもよい。
【0194】
(工程3A)
製造方法Aは、さらに下記工程3Aを含むことが好ましい。
工程3A:前記処理を施した加工対象物の、粘着剤層(X2)とは反対側の面に、熱硬化性フィルムを貼付する工程
但し、製造方法Aにおいて工程3Aは任意の工程であり、工程3Aを有さない態様であってもよい。
工程3Aを行う場合、製造方法Aに用いる粘着シートに含有される熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は50℃以上125℃未満であることが好ましい。これによって、後述する第一分離工程を行う際に、上記熱硬化性フィルムが意図せずに硬化することを抑制することができる。
【0195】
図6には、前記処理を施して得られた複数の半導体チップCPの、粘着剤層(X2)とは反対側の面に、支持シート8を備える熱硬化性フィルム7を貼付する工程を説明する断面図が示されている。
【0196】
熱硬化性フィルム7は、少なくとも熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を製膜して得られる熱硬化性を有するフィルムであり、半導体チップCPを基板に実装する際の接着剤として用いられる。熱硬化性フィルム7は、必要に応じて、上記熱硬化性樹脂の硬化剤、熱可塑性樹脂、無機充填材、硬化促進剤等を含有していてもよい。
熱硬化性フィルム7としては、例えば、ダイボンディングフィルム、ダイアタッチフィルム等として一般的に使用されている熱硬化性フィルムを使用することができる。
熱硬化性フィルム7の厚さは、特に限定されないが、通常は1~200μmであり、好ましくは3~100μm、より好ましくは5~50μmである。
支持シート8は、熱硬化性フィルム7を支持できるものであればよく、例えば、本発明の一態様の粘着シートが有する非熱膨張性基材層(Y2)として挙げられた樹脂、金属、紙材等が挙げられる。
【0197】
熱硬化性フィルム7を、複数の半導体チップCPに貼付する方法としては、例えば、ラミネートによる方法が挙げられる。
ラミネートは加熱しながら行ってもよく、非加熱で行ってもよい。ラミネートを加熱しながら行う場合の加熱温度は、熱膨張性粒子の膨張を抑制する観点及び被着体の熱変化を抑制する観点から、好ましくは「膨張開始温度(t)より低い温度」、より好ましくは「膨張開始温度(t)-5℃」以下、更に好ましくは「膨張開始温度(t)-10℃」以下、より更に好ましくは「膨張開始温度(t)-15℃」以下である。
【0198】
(第一分離工程)
第一分離工程は、粘着シートを前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上に加熱して、粘着剤層(X1)と支持体とを分離する工程である。
図7には、粘着シート2aを加熱して、粘着剤層(X1)と支持体3とを分離する工程を説明する断面図が示されている。
【0199】
第一分離工程における好ましい加熱温度は、上記で説明した、本発明の一態様の粘着シートを被着体から加熱剥離する際の好適な加熱温度の通りである。
【0200】
(第二分離工程)
第二分離工程は、粘着剤層(X2)と加工対象物とを分離する工程である。
粘着剤層(X2)と複数の半導体チップCPとを分離する方法は、粘着剤層(X2)の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、粘着剤層(X2)が、エネルギー線照射によって粘着力が低下する粘着剤層である場合には、粘着剤層(X2)に対してエネルギー線照射を行い、粘着力を低下させてから分離すればよい。
【0201】
第二分離工程は、支持体から分離後の前記粘着剤層(X1)に対して、剥離用シートをラミネートし、該剥離用シートを引っ張ることで、粘着剤層(X2)と複数の半導体チップCPとを分離する工程であることが好ましい。
図8には、粘着剤層(X1)に対して、剥離用シート9をラミネートし、該剥離用シート9を引っ張ることで、粘着剤層(X2)と複数の半導体チップCPとを分離する工程を説明する断面図が示されている。剥離用シート9を、例えば、図8中の矢印の方向に引っ張ることによって、粘着剤層(X2)と複数の半導体チップCPとがその界面で分離される。このとき、本発明の一態様の粘着シートは、粘着剤層(X1)と基材層(Y)との界面強度に優れるため、粘着剤層(X1)と基材層(Y)との界面で剥離が生じず、粘着剤層(X2)及び基材層(Y)が半導体チップCP側に残存することがない。
剥離用シートとしては、特に限定されず、例えば、基材上にヒートシール層を有するものを使用することができる。剥離用シートの基材としては、例えば、非熱膨張性基材層(Y2)の形成材料として挙げられた、樹脂、金属、紙材等が挙げられる。
【0202】
上記各工程を経て、熱硬化性フィルム7上に貼付された複数の半導体チップCPが得られる。
次に、複数の半導体チップCPが貼付されている熱硬化性フィルム7を、半導体チップCPと同形状に分割して、熱硬化性フィルム7付き半導体チップCPを得ることが好ましい。熱硬化性フィルム7の分割方法としては、例えば、レーザー光によるレーザーダイシング、エキスパンド、溶断等の方法を適用することができる。
図9には、半導体チップCPと同形状に分割された熱硬化性フィルム7付き半導体チップCPが示されている。
【0203】
熱硬化性フィルム7付き半導体チップCPは、さらに、必要に応じて、半導体チップCP同士の間隔を広げるエキスパンド工程、間隔を広げた複数の半導体チップCPを配列させる再配列工程、複数の半導体チップCPの表裏を反転させる反転工程等が適宜施された後、熱硬化性フィルム7側から基板に貼付(ダイアタッチ)される。その後、熱硬化性フィルムを熱硬化させることで半導体チップと基板とを固着することができる。
【0204】
第2態様の半導体装置の製造方法は、本発明の一態様の粘着シートとして、粘着剤層(X1)と、基材層(Y)と、粘着剤層(X2)と、がこの順で配置された積層構造を有する粘着シートを用い、下記工程1B~2B、下記第一分離工程、及び第二分離工程を含む製造方法(以下、「製造方法B」ともいう)であってもよい。
工程1B:前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X1)に加工対象物を貼付し、前記粘着シートが有する前記粘着剤層(X2)に支持体を貼付する工程
工程2B:前記加工対象物に対して、研削処理及び個片化処理から選択される1以上の処理を施す工程
第一分離工程:前記粘着シートを、前記熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上に加熱して、前記粘着剤層(X1)と前記加工対象物とを分離する工程
第二分離工程:前記粘着剤層(X2)と前記支持体とを分離する工程
【0205】
製造方法Bは、さらに下記工程3Bを含むことが好ましい。
工程3B:前記処理を施した加工対象物の、前記粘着剤層(X1)とは反対側の面に、熱硬化性フィルムを貼付する工程
但し、製造方法Bにおいて工程3Bは任意の工程であり、工程3Bを有さない態様であってもよい。
工程3Bを行う場合、製造方法Bに用いられる粘着シートに含有される熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は50℃以上125℃未満であることが好ましい。これによって、後述する第一分離工程を行う際に、熱硬化性フィルムが意図せずに硬化することを抑制することができる。
【0206】
工程1B~3Bは、工程1A~3Aの説明における粘着剤層(X1)を粘着剤層(X2)に、粘着剤層(X2)を粘着剤層(X1)に読み替えて説明されるものである。
【0207】
第一分離工程は、前記粘着シートを前記膨張開始温度(t)以上に加熱して、前記粘着剤層(X1)と前記加工対象物とを分離する工程である。
第一分離工程における粘着シートの加熱温度等の加熱条件は、製造方法Aにおける説明と同じである。特に、工程3Bを行う場合、第一分離工程は、粘着シートを膨張開始温度(t)以上125℃未満に加熱して、粘着剤層(X1)と加工対象物とを分離する工程であることが好ましい。
第一分離工程によって、熱硬化性フィルム上に貼付された複数の半導体チップが得られる。その後、上記した製造方法Aの場合と同じように、熱硬化性フィルムを分割して、熱硬化性フィルム付き半導体チップが得られる。
【0208】
第二分離工程は、前記粘着剤層(X2)と前記支持体とを分離する工程である。
粘着剤層(X2)と支持体とを分離する方法は、粘着剤層(X2)の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、粘着剤層(X2)が、エネルギー線照射によって粘着力が低下する粘着剤層である場合には、粘着剤層(X2)に対してエネルギー線照射を行い、粘着力を低下させてから分離すればよい。
なお、製造方法Bは、第二分離工程を含まないものであってもよい。
第二分離工程は、加工対象物と分離後の粘着剤層(X1)に対して、剥離用シートをラミネートし、該剥離用シートを引っ張ることで、粘着剤層(X2)と支持体とを分離する工程であることが好ましい。
【0209】
<別の態様の半導体装置の製造方法>
本発明の半導体装置の製造方法は、上記した第1態様及び第2態様の半導体装置の製造方法に限定されるものではなく、第1態様及び第2態様とは別の態様の半導体装置の製造方法であってもよい。
【0210】
別の態様の半導体装置の製造方法の他の一例としては、別のシートに貼付されている加工対象物を、本発明の一態様の粘着シートを用いて、該別のシートから分離させる方法が挙げられる。
例えば、エキスパンドテープ上で間隔を広げられた複数の半導体チップは、エキスパンドテープの粘着表面に貼付されているが、これらのチップを1個ずつピックアップする作業は煩雑である。本発明の一態様の半導体装置の製造方法によると、エキスパンドテープ上に貼付された複数の半導体チップの表出面に、本発明の一態様の粘着シートの粘着剤層(X1)を貼付し、次いで、複数の半導体チップからエキスパンドテープを剥離することで、エキスパンドテープから複数の半導体チップを一括して分離することができる。
上記の工程を経て、本発明の一態様の粘着シート上に貼付された複数の半導体チップが得られる。該複数の半導体チップは、その後、粘着剤層(X1)を熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上に加熱することで、容易に分離することができる。
分離された複数の半導体チップは、別の粘着シートに転写されてもよく、一旦分離した後、複数の半導体チップを整列させる再配列工程に供されてもよい。
【実施例0211】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0212】
[質量平均分子量(Mw)]
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8320GPC」)を用いて、下記の条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSKgel guardcolumn SuperHzH」「TSKgel SuperHZM-M」「TSKgel SuperHZM-M」「TSKgel SuperHZ2000」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・標準物質:ポリスチレン
・注入量:20μl
・流量:0.35mL/min
・検出器:示差屈折計
【0213】
[各層の厚さ]
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて、23℃にて測定した。
【0214】
[熱膨張性粒子の平均粒子径(D50)、90%粒子径(D90)]
レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて、23℃における膨張前の熱膨張性粒子の粒子分布を測定した。
そして、粒子分布の粒子径の小さい方から計算した累積体積頻度が50%及び90%に相当する粒子径を、それぞれ「熱膨張性粒子の平均粒子径(D50)」及び「熱膨張性粒子の90%粒子径(D90)」とした。
【0215】
[アクリル系樹脂のガラス転移温度の測定方法]
アクリル系樹脂のガラス転移温度は、Foxの式より求められる計算値である。
【0216】
以下の実施例において、各層の形成に使用した材料の詳細は以下の通りである。
【0217】
<粘着性樹脂>
・アクリル系樹脂1~4:表1に記載の組成の原料モノマーに由来する構成単位を有するアクリル系樹脂。アクリル系樹脂1~4の物性を表1に示す。なお、表1に記載の原料モノマーの詳細は以下の通りである。
・BA:n-ブチルアクリレート
・MMA:メチルメタクリレート
・AA:アクリル酸
・HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
・EDOMA:(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート、なお、EDOMAは下記一般式(3)で表される構造を有し、上記一般式(1)で表される基を有するアクリレートに相当する。
【化5】
【0218】
【表1】
【0219】
・アクリル系樹脂5:n-ブチルアクリレート(BA)/メチルメタクリレート(MMA)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)=52/20/28(質量比)からなる原料モノマーに由来する構成単位を有するアクリル系樹脂に、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)をアクリル系樹脂中の全水酸基に対する付加率がモル数基準で90%となるように反応させた、Mw50万のエネルギー線硬化性のアクリル系樹脂を含む溶液、希釈溶剤:酢酸エチル
【0220】
<架橋剤>
・イソシアネート系架橋剤(i):三井化学株式会社製、製品名「タケネートD-101E」、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートを含む溶液、固形分濃度:75質量%
【0221】
<エネルギー線硬化性化合物>
・エネルギー線硬化性化合物(i):三菱ケミカル株式会社製、製品名「シコウUT-4332」、多官能ウレタンアクリレート
【0222】
<光重合開始剤>
・光重合開始剤(i):ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド
・光重合開始剤(ii):1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
【0223】
<添加剤>
・フタロシアニン系顔料
【0224】
<熱膨張性粒子>
・熱膨張性粒子:Nouryon社製、製品名「Expancel(登録商標)031-40」(DUタイプ)、膨張開始温度(t)=88℃、平均粒子径(D50)=12.6μm、90%粒子径(D90)=26.2μm
【0225】
<剥離材>
・重剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP-PET382150」、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm
・軽剥離フィルム:リンテック株式会社製、製品名「SP-PET381031」、PETフィルムの片面にシリコーン系剥離剤から形成した剥離剤層を設けたもの、厚さ:38μm
【0226】
<重合性モノマー>
・EDOMA:(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート
・THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート
・ACMO:4-アクリロイルモルフォリン
・EEEA:2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート
【0227】
実施例1~4、比較例1~5
(1)粘着剤層(X1)の形成
各成分を表2及び表3に記載の組成になるように配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して、粘着剤組成物(x-1)を調製した。
そして、重剥離フィルムの剥離面上に、調製した粘着剤組成物(x-1)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を80℃で60秒間乾燥して、厚さ5μmの粘着剤層(X1)を形成した。
なお、実施例1については、乾燥後、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、製品名「ECS-401GX」)及び高圧水銀ランプ(アイグラフィックス株式会社製、製品名「H04-L41」)を用いて、照度100mW/cm、光量250mJ/cmの条件で4回紫外線を照射して、重合性モノマーを重合させる処理を実施した。
【0228】
(2)粘着剤層(X2)の形成
アクリル系樹脂5の固形分100質量部に、エネルギー線硬化性化合物(i)12質量部(固形分比)、イソシアネート系架橋剤(i)1.1質量部(固形分比)、光重合開始剤(i)1質量部(固形分比)を配合し、トルエンで希釈し、均一に撹拌して粘着剤組成物(x-2)を調製した。
そして、軽剥離フィルムの剥離面上に、調製した粘着剤組成物(x-2)を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で60秒間乾燥して、厚さ20μmの粘着剤層(X2)を形成した。
【0229】
(3)無溶剤型樹脂組成物(y-1a)の調製
エステル型ジオールと、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を反応させて得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて、質量平均分子量(Mw)5,000のオリゴマーである、両末端にエチレン性不飽和基を有する直鎖ウレタンプレポリマーを得た。
そして、上記で合成したウレタンプレポリマー40質量部(固形分比)に、エネルギー線重合性モノマーとして、イソボルニルアクリレート(IBXA)40質量部(固形分比)、及びフェニルヒドロキシプロピルアクリレート(HPPA)20質量部(固形分比)を配合し、ウレタンプレポリマー及びエネルギー線重合性モノマーの全量(100質量部)に対して、さらに光重合開始剤(ii)2.0質量部(固形分比)、及び、添加剤として、フタロシアニン系顔料0.2質量部(固形分比)、シクロヘキシルアクリレート(CHA)20質量部を配合し、エネルギー線硬化性組成物を調製した。
そして、当該エネルギー線硬化性組成物に熱膨張性粒子を、得られる熱膨張性基材層(Y1)全質量(100質量%)に対する熱膨張性粒子の含有量が12.5質量%になるように配合し、溶剤を含有しない、無溶剤型樹脂組成物(y-1a)を調製した。
【0230】
(4)熱膨張性基材層(Y1)と非熱膨張性基材層(Y2)とを積層した基材積層体の形成
非熱膨張性基材層(Y2)として、PETフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャインA4360」、厚さ:50μm)を準備した。
次に、当該PETフィルムの片面に無溶剤型樹脂組成物(y-1a)を、形成される熱膨張性基材層(Y1)の厚さが100μmになるように塗布して塗膜を形成した。
そして、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、製品名「ECS-401GX」)及び高圧水銀ランプ(アイグラフィックス株式会社製、製品名「H04-L41」)を用いて、照度160mW/cm、光量500mJ/cmの条件で紫外線を照射し、当該塗膜を硬化させ、熱膨張性基材層(Y1)が非熱膨張性基材層(Y2)としてのPETフィルム上に形成された基材積層体を得た。なお、紫外線照射時の上記の照度及び光量は、照度・光量計(アイグラフィックス株式会社製、製品名「UVPF-A2」)を用いて測定した値である。
【0231】
(5)両面粘着シートの作製
上記(1)で形成した粘着剤層(X1)の粘着表面と、上記(4)で形成した基材積層体の熱膨張性基材層(Y1)の表面とを貼り合わせた。次に、上記(2)で形成した粘着剤層(X2)の粘着表面と、当該基材積層体のPETフィルムの表面とを貼り合わせた。
これにより、以下の構成を有する剥離材付き両面粘着シートを作製した。
<重剥離フィルム>/<粘着剤層(X1)、厚さ:5μm>/<熱膨張性基材層(Y1)、厚さ:100μm>/<非熱膨張性基材層(Y2)、厚さ:50μm>/<粘着剤層(X2)、厚さ:20μm>/<軽剥離フィルム>
【0232】
[非熱膨張性基材層(Y2)の23℃における貯蔵弾性率E’(23)]
縦30mm×横5mmに裁断した非熱膨張性基材層(Y2)を試験サンプルとして、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製、製品名「DMAQ800」)を用いて、試験開始温度0℃、試験終了温度200℃、昇温速度3℃/分、振動数1Hz、振幅20μmの条件で、23℃における貯蔵弾性率E’を測定した。その結果、非熱膨張性基材層(Y2)である上記PETフィルムの23℃における貯蔵弾性率E’(23)は、2.27×10Paであった。
【0233】
[層間強度の測定方法]
上記で得られた無溶剤型樹脂組成物(y-1a)を、易接着層付きPETフィルム(荒川化学工業株式会社製、厚さ50μm)の易接着層上に、形成される熱膨張性基材層(Y1)の厚さが100μmになるように塗布して塗膜を形成した。
そして、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、製品名「ECS-401GX」)及び高圧水銀ランプ(アイグラフィックス株式会社製、製品名「H04-L41」)を用いて、照度40mW/cm、光量80mJ/cmの条件で紫外線を照射することで上記塗膜を予備硬化させ、次いで、照度100mW/cm、光量250mJ/cmの条件の紫外線照射を8回行うことで塗膜を本硬化させて、PETフィルム上に厚さ100μmの熱膨張性基材層(Y1)を形成した。
次に、上記で得られた粘着剤組成物(x-1)を、別の易接着層付きPETフィルム(荒川化学工業株式会社製、厚さ50μm)の易接着層上に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を80℃で60秒間乾燥して、PETフィルム上に厚さ5μmの粘着剤層(X1)を形成した。
上記で形成したPETフィルム上の熱膨張性基材層(Y1)と、PETフィルム上の粘着剤層(X1)と、を貼り合わせた後、23℃、50%RHで1週間静置した。
静置後、25mm×250mmの短冊状にして、熱膨張性基材層(Y1)側のPETフィルムをガラス板に両面テープで固定した。そして、熱膨張性基材層(Y1)から粘着剤層(X1)及び粘着剤層(X1)側のPETフィルムを、万能引張試験機(株式会社島津製作所製、商品名「AG-XPlus」)を用いて剥離し、熱膨張性基材層(Y1)と粘着剤層(X1)との層間強度を測定した。なお、剥離速度は300mm/minとし、剥離角度は180°とした。
【0234】
[自己剥離性の評価方法]
30mm×30mm×1.1mmのソーダライムガラス板を2枚準備した。以下、2枚のソーダライムガラス板を、それぞれ「ガラス板G1」及び「ガラス板G2」と呼ぶ。
各例で作製した粘着シートを30mm×30mmに裁断し、裁断した粘着シートの熱膨張性基材層(Y1)側の粘着剤層(X1)から、重剥離フィルムを除去して、ガラス板G1を貼り付けた。次いで、非熱膨張性基材層(Y2)側の粘着剤層(X2)から軽剥離フィルムを除去してガラス板G2を貼り付けた後、真空ラミネーター(ニッコーマテリアルズ株式会社製、製品名「V-130」)にて、60℃で0.2MPaの条件にて30秒間プレスして試験サンプルを作製した。
そして、試験サンプルをホットプレート上に載置し、熱膨張性粒子の膨張開始温度以上である110℃で1分間加熱した。なお、試験サンプルは、ガラス板G2側がホットプレートに接触するようにホットプレートに載置した。
110℃で1分間加熱した後、ガラス板G1の粘着シートからの剥離状態を確認し、以下の基準に基づいて評価した。
(自己剥離性の評価基準)
A:ガラス板G1の全面が粘着シートから剥離している。
B:ガラス板G1が剥離した面積が30%以上、100%未満だった。
C:ガラス板G1が剥離した面積が30%未満だった。
【0235】
【表2】
【0236】
【表3】
【0237】
表2から、重合性モノマーとして、上記一般式(1)で表される基を有する(メタ)アクリレートを用い、上記一般式(1)で表される基を有するアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤層(X1)を形成した実施例1の粘着シートは、自己剥離性に優れ、上記一般式(1)で表される基を有するモノマーを使用しなかった比較例1~4の粘着シートよりも、層間接着性に優れていることが分かる。
また、表3から、粘着性樹脂として、上記一般式(1)で表される基を有するアクリル系樹脂(A)を含有する粘着剤層(X1)を有する実施例2~4の粘着シートは、自己剥離性に優れると共に、上記一般式(1)で表される基を有するアクリル系樹脂(A)を使用しなかった比較例5の粘着シートよりも、層間接着性に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0238】
1a、1b、2a、2b 粘着シート
10、10a、10b 剥離材
3 支持体
4 レーザー光照射装置
5 改質領域
6 グラインダー
7 熱硬化性フィルム
8 支持シート
9 剥離用シート
W 半導体ウエハ
W1 半導体ウエハの回路面
W2 半導体ウエハの裏面
CP 半導体チップ
(X1) 粘着剤層(X1)
(X2) 粘着剤層(X2)
(Y) 基材層(Y)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9