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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010781
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】妻型枠固定装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
E21D11/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112276
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】西浦 秀明
(72)【発明者】
【氏名】西村 友宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】和田 壮平
(72)【発明者】
【氏名】安田 尚之
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155BB02
2D155CA03
2D155DA03
2D155KA07
2D155KB08
(57)【要約】
【課題】妻型枠へ通し材及び妻型枠固定ばりの設置作業の負担をより軽減できる妻型枠固定装置を提供する。
【解決手段】トンネルの内周面とセントルの型枠との間の打設空間における妻面に並設された複数の妻型枠に通し材40を当接させてコンクリートの打設圧を支持する妻型枠固定装置10であって、通し材40を妻面の側に位置する先端に支持していると共に、先端が型枠の周長の法線方向に移動可能に、型枠の周長に沿った形状で妻面と間隔を空けてかけ渡されているばり受け鋼材16に回動可能に設置された妻型枠固定ばり20と、先端がトンネルの内周面に近づく上方向に妻型枠固定ばり20を付勢する付勢機構として機能するガススプリング70と、を備え、妻型枠固定ばり20は、ばり受け鋼材16から妻面に向けて延出する延出長を調整する伸縮機構を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内周面とセントルの型枠との間の打設空間における妻面に並設された複数の妻型枠に通し材を当接させてコンクリートの打設圧を支持する妻型枠固定装置であって、
前記通し材を前記妻面の側に位置する先端に支持していると共に、前記先端が前記型枠の周長の法線方向に移動可能に、前記型枠の周長に沿った形状で前記妻面と間隔を空けてかけ渡されているばり受け鋼材に回動可能に設置された妻型枠固定ばりと、
前記先端が前記トンネルの内周面に近づく上方向に前記妻型枠固定ばりを付勢する付勢機構と、を備え、
前記妻型枠固定ばりは、前記ばり受け鋼材から前記妻面に向けて延出する延出長を調整する伸縮機構を備えていることを特徴とする妻型枠固定装置。
【請求項2】
前記妻型枠固定ばりは、後端が前記ばり受け鋼材から前記妻面とは反対方向に張り出すように前記ばり受け鋼材に回動可能に設置されていることを特徴とする請求項1記載の妻型枠固定装置。
【請求項3】
前記付勢機構は、前記妻型枠固定ばりの後端側を、前記トンネルの内周面から遠ざかる下方向に引っ張ることを特徴とする請求項2記載の妻型枠固定装置。
【請求項4】
前記妻型枠固定ばりは、前記妻型枠固定ばりの回動軸を支持する支持具を介して前記ばり受け鋼材に設置され、
前記支持具は、前記ばり受け鋼材から前記下方向に延出する柱材を備え、
前記付勢機構は、前記妻型枠固定ばりの後端側と前記柱材との間に介装されていることを特徴とする請求項3記載の妻型枠固定装置。
【請求項5】
前記通し材は、2本以上の前記妻型枠固定ばりにかけ渡されて支持され、
前記妻型枠固定ばりは、前記妻型枠固定ばりの回動軸を支持する支持具を介して前記ばり受け鋼材に設置され、
前記支持具は、前記回動軸の傾きを調整する傾き調整機構を備えることを特徴とする請求項1記載の妻型枠固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覆工コンクリートセントルにおける妻型枠固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルの覆工コンクリートの施工では、「セントル」と呼ばれる半円筒形の移動式型枠を使用し、トンネルの内周面にコンクリートを打設している。コンクリートの打設に際し、施工継目となる「セントル」の端部には、「妻型枠」と呼ばれる輻20cm程度の木製の板を打ち止め型枠として用い、地山と「セントル」の間の開口部を塞ぐように設置している。「妻型枠」は、木矢板・通し材・端太角やパイプサポート等を使用して打設毎に設置・解体を行っているため、多くの手間と時間を要している。
【0003】
本出願人は、妻型枠設置・解体作業の省力化を目的とし、角パイプによる通し材と妻型枠固定ばりが一体となった妻型枠固定装置を、セントルから張り出したばり受け鋼材に設置しておく構造を提案している(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-45030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、妻型枠固定ばりと通し材を設置したままで良いため、妻型枠の設置・撤去、セントルのダウン・移動・セットを簡単に行うことができる。しかしながら、特許文献1は、通し材及び妻型枠固定ばりを支えながら通し材の上下位置を設定する力を要する作業と、妻型枠固定ばりの長さ調整する繊細な作業とを同時に行う必要があった。特許文献1でも一人作業が可能であったが、より負担を軽減することが求められた。
【0006】
本発明は、妻型枠へ通し材及び妻型枠固定ばりの設置作業の負担をより軽減できる妻型枠固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の妻型枠固定装置は、トンネルの内周面とセントルの型枠との間の打設空間における妻面に並設された複数の妻型枠に通し材を当接させてコンクリートの打設圧を支持する妻型枠固定装置であって、前記通し材を前記妻面の側に位置する先端に支持していると共に、前記先端が前記型枠の周長の法線方向に移動可能に、前記型枠の周長に沿った形状で前記妻面と間隔を空けてかけ渡されているばり受け鋼材に回動可能に設置された妻型枠固定ばりと、前記先端が前記トンネルの内周面に近づく上方向に前記妻型枠固定ばりを付勢する付勢機構と、を備え、前記妻型枠固定ばりは、前記ばり受け鋼材から前記妻面に向けて延出する延出長を調整する伸縮機構を備えていることを特徴とする。
さらに、本発明の妻型枠固定装置において、前記妻型枠固定ばりは、後端が前記ばり受け鋼材から前記妻面とは反対方向に張り出すように前記ばり受け鋼材に回動可能に設置されても良い。
さらに、本発明の妻型枠固定装置において、前記付勢機構は、前記妻型枠固定ばりの後端側を、前記トンネルの内周面から遠ざかる下方向に引っ張っても良い。
さらに、本発明の妻型枠固定装置において、前記妻型枠固定ばりは、前記妻型枠固定ばりの回動軸を支持する支持具を介して前記ばり受け鋼材に設置され、前記支持具は、前記ばり受け鋼材から前記下方向に延出する柱材を備え、前記付勢機構は、前記妻型枠固定ばりの後端側と前記柱材との間に介装されても良い。
さらに、本発明の妻型枠固定装置において、前記通し材は、2本以上の前記妻型枠固定ばりにかけ渡されて支持され、前記妻型枠固定ばりは、前記妻型枠固定ばりの回動軸を支持する支持具を介して前記ばり受け鋼材に設置され、前記支持具は、前記回動軸の傾きを調整する傾き調整機構を備えても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、妻型枠の設置後は、妻型枠固定ばりの延出長を調整するだけで、通し材を妻型枠に対して簡単に設置できるため、妻型枠へ通し材及び妻型枠固定ばりの設置作業の負担をより軽減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る妻型枠固定装置が設置されたセントルの構成を示す図である。
図2図1に示すセントルを切羽側から見た図である。
図3】本発明に係る妻型枠固定装置の構成を示す斜視図である。
図4図3に示す妻型枠固定ばりのセット状態の構成を示す側面図である。
図5図3に示す把持部の構成を示す斜視図である。
図6図3に示す腰管の構成を示す側面図である。
図7図3に示す支持具の構成を示す斜視図である。
図8図3に示す支持具のばり受け鋼材への設置例示す図である。
図9図3に示す妻型枠固定ばりの退避状態の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
本実施形態の妻型枠固定装置10は、図1を参照すると、コンクリートの吹き付け等によっては一次支保されたトンネルの内周面に沿ったアーチ型の型枠11を有するセントル1に設置され、トンネルの内周面とセントル1(型枠11)との間に形成される覆工コンクリートの打設空間(以下、単に打設空間Cと称す)の妻面を塞ぐ妻型枠を支持する。
【0012】
セントル1は、トンネル軸方向(覆工コンクリートの施工方向)に沿ってそれぞれ敷設されたレール2上をそれぞれ走行可能である。覆工コンクリートが坑口側から切羽側に向かって施工される場合、妻型枠固定装置10は、セントル1の切羽側に、型枠11の周長に沿って複数個が設置される。
【0013】
型枠11は、トンネルの内周面に沿うように、トンネル幅方向の断面形状が略半円弧状の鋼製部材である。型枠11は、図2に示すように、複数のジャッキ12を介して移動架台13によって支持されている。そして、型枠11とトンネルの内周面との間が、打設空間Cとなる。
【0014】
移動架台13は、H型鋼や溝型鋼等で構成され、前後に配置された複数の門型フレーム14と、複数の門型フレーム14を連結する図示しない複数の縦梁部材とを備えている。門型フレーム14の下端部には、レール2上を走行するための車輪が備えられている。門型フレーム14の内側の空間断面は、ズリ等を搬送する坑道として機能する。
【0015】
セントル1(型枠11)は、型枠11の周長に沿って所定の間隔で妻面側から切羽方向に張り出した複数の張り出し鋼材15と、複数の張り出し鋼材15に固着されたばり受け鋼材16とを備える。ばり受け鋼材16は、型枠11の周長に沿った形状で、打設空間Cの妻面と間隔を空けてかけ渡されている。妻型枠固定装置10は、ばり受け鋼材16に設置されている。
【0016】
妻型枠固定装置10は、図3及び図4を参照すると、打設空間Cの妻面に並設された複数の妻型枠3に当接してコンクリートの打設圧を支持する装置である。妻型枠固定装置10は、3本の妻型枠固定ばり20と、通し材40と、3個の支持具50と、ガススプリング70とを備える。
【0017】
図4に示す符号17は、型枠11の切羽側端部から内周に向けて延設された型枠妻面11aと間隔を空けて架け渡されたアングル材である。アングル材17は、妻型枠3の脱落を防止する脱落防止部材として機能すると共に、アングル材17と妻型枠3との間にキャンバー4(くさび)を打ち込むことで、妻型枠3を固定する固定部材として機能する。
【0018】
妻型枠固定ばり20は、ばり受け鋼材16から打設空間Cの妻面に向けて延出する延出長を調整する伸縮機構を備えた棒状部材であり、本実施形態では、仮設材であるパイプサポートを用いる。妻型枠固定ばり20は、打設空間Cの妻面の側に位置する先端が型枠11の周長の法線方向に移動可能に、中間部がばり受け鋼材16に回動可能に設置される。以下、トンネルの内周面に近づく方向は上方向と称し、トンネルの内周面から遠ざかる方向は下方向と称す。妻型枠固定ばり20の伸縮機構は、長さを調整した状態で、軸を圧縮する方向の力に対して所定の強度を維持できるのであれば、その構造に制限はない。妻型枠固定ばり20の伸縮機構は、油圧や電動で伸縮するシリンダー等を用いることもできる。
【0019】
妻型枠固定ばり20は、円筒状(パイプ状)の差込管21と、円筒状の腰管22とを備える。差込管21は、後端が腰管22に挿入され、先端に受板の代わり把持部30が取り付けられている。
【0020】
把持部30は、単管パイプ等の断面が円形の中空のパイプで構成された通し材40を把持する把持機構である。把持部30は、図5を参照すると、通し材40の外周と略同一の曲率を有する凹部が形成されたパイプ受部31と、一端が軸支された可動部32を備える。可動部32は、ボルト33を締めることでパイプ受部31に向けて回動され、パイプ受部31との間に通し材40を把持する。
【0021】
通し材40は、3本の妻型枠固定ばり20の先端にそれぞれ取り付けられた把持部30よって把持され、打設空間Cの妻面に並設された複数の妻型枠3に当接する当接部として機能する。妻型枠固定装置10における妻型枠固定ばり20の本数や通し材40の長さは、コンクリートの打設圧を考慮して適宜設定できる。
【0022】
腰管22は、台板が取り外され、差込管21が貫通されている。図6を参照すると、腰管22は、外周の略中間部に形成された軸台座23と、外周の後端部に形成された固定プレート24とを備える。
【0023】
妻型枠固定ばり20は、支持具50によってばり受け鋼材16に回動可能に設置される。支持具50は、回動支持部51と、延設部58とで構成される。
【0024】
回動支持部51は、図7(a)を参照すると、ばり受け鋼材16の上フランジに固定される座板52と、座板52の上面に所定の間隔を置いて立設され、互いに対面する一対の軸受板53とを備える。一対の軸受板53は、対向位置にそれぞれ形成された軸受孔を備え、この軸受孔によってボルト等で構成された回動軸54a、54bを支持する。
【0025】
回動軸54aは、妻型枠固定ばり20の軸台座23の軸受孔23aに挿通され、妻型枠固定ばり20の回動の中心軸となる。軸台座23が腰管22の略中間部に形成されているため、妻型枠固定ばり20の重量は、回動軸54aの左右に分散され、小さい力で妻型枠固定ばり20を回動させることができる。
【0026】
座板52は、矩形状であり、4隅のそれぞれに調整螺子55を備える。調整螺子55は、座板52の下部への突出長を調整することで、回動軸54a(座板52)の傾きを調整する調整機構である。座板52は、調整螺子55で傾きが調整された状態で、ばり受け鋼材16の上フランジの下部まで延出する固定アングル56の固定ボルト57を締めることで、ばり受け鋼材16の上フランジに固定される。
【0027】
ばり受け鋼材16は、型枠11の周長に沿った形状である。従って、3本の妻型枠固定ばり20の回動を支持する回動支持部51(座板52)をばり受け鋼材16の上フランジにそのまま固定した場合、図8(a)に示すように、3本の妻型枠固定ばり20の回動軸54aは、それぞれ異なる傾きになってしまう。この場合、3本の妻型枠固定ばり20の先端の間隔が回動に伴って変化する。従って、先端が通し材40で連結された3本の妻型枠固定ばり20は、回動軸54aと軸台座23(軸受孔23a)とのセリや差込管21と腰管22とのセリによってスムーズに回動や伸縮させることができない。
【0028】
そこで、本実施形態は、調整螺子55によって回動軸54a(座板52)の傾きを調整可能にしている。調整螺子55で回動軸54a(座板52)の傾きを調整することで、図8(b)に示すように、3本の妻型枠固定ばり20の回動軸54aを平行に設置することができる。これにより、セリが解消され、先端が通し材40で連結された3本の妻型枠固定ばり20は、スムーズに回動や伸縮させることができる。
【0029】
延設部58は、図7(b)を参照すると、互いに対面する一対の軸受板59と、ばり受け鋼材16から下方向に延出する柱材60とを備える。一対の軸受板59は、対向位置にそれぞれ形成された軸受孔59aを備え、回動軸54bを軸受孔59aに通すことで軸受板59を含む延設部58を固定している。延設部58の一対の軸受板59は、回動支持部51の一対の軸受板53の間に配置され、妻型枠固定ばり20の軸台座23は、延設部58の一対の軸受板59の間に位置する回動軸54aによって軸支される。また、回転支持部51は固定ボルト57と併せてフック部61によりばり受鋼材16の下フランジに固定される。
【0030】
柱材60は、フック部61によってばり受け鋼材16の下フランジに固定され、下端部に固定プレート62が形成されている。
【0031】
ガススプリング70は、腰管22の固定プレート24と、延設部58の固定プレート62との間に介装される。ガススプリング70は、一端が固定プレート24の軸受孔24a、他端が固定プレート62の軸受孔62aによってそれぞれ軸支されている。
【0032】
ガススプリング70は、引込み型であり、妻型枠固定ばり20の後端を下方向に引っ張ることで、妻型枠固定ばり20の先端側を上方向に付勢する付勢機構として機能する。ガススプリング70の引込力は、妻型枠固定ばり20の先端側をゆっくりと上方向に移動させる程度の力に設定される。図3に示す例では、真ん中の妻型枠固定ばり20にのみにガススプリング70を設置しているが、ガススプリング70を設置する妻型枠固定ばり20には制限はなく、ガススプリング70を設置本数は、その引込力に応じて適宜設定できる。
【0033】
本実施形態は、付勢機構であるガススプリング70がばり受け鋼材16の切羽側に設置されている。従って、付勢機構であるガススプリング70は、打設空間Cの妻面とばり受け鋼材16との間の作業スペースを邪魔することなく、作業効率が向上する。なお、作業スペースに余裕がある場合、ガススプリング70を押出し型として打設空間Cの妻面とばり受け鋼材16との間に設置することもできる
【0034】
ガススプリング70は、付勢機構の一例であり、適切な付勢力を有する各種のバネを用いた機構に置き換えることができる。また、回動軸54aと妻型枠固定ばり20とを固定し、付勢機構は、回動軸54aを回転方向に付勢しても良い。
【0035】
延設部58の一対の軸受板59は、回動支持部51の一対の軸受板53と重ならない位置に、対向位置にそれぞれ形成されたストッパ孔59bを備える。ストッパ孔59bは、回動軸54aよりも妻型枠固定ばり20の後端側に配置されている。
【0036】
図9に示すように、妻型枠固定ばり20の延出長を縮めると共に、先端を押し下げた状態で、ストッパ孔59bにピン5を挿入することで、ガススプリング70の付勢による妻型枠固定ばり20の回動が規制される。この状態において、妻型枠固定ばり20の先端の通し材40は、打設空間Cの妻面から退避する。従って、鉄筋区間でのセントル移動においても、妻型枠固定装置10が邪魔となることはない。
【0037】
ストッパ孔59bに挿入されたピン5を抜くと、妻型枠固定ばり20は、ガススプリング70の付勢によって回動され、妻型枠固定ばり20の先端が上方向に移動する。従って、作業者は、伸縮機構によって妻型枠固定ばり20の延出長を調整するだけで、図4に示すように、打設空間Cの巻厚に応じた適切な位置で妻型枠3に通し材40を当接させてセットできる。すなわち、ガススプリング70の付勢力は、人力作業をアシストでき、通し材40の上下操作の稼働性を向上できる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態は、トンネルの内周面とセントル1の型枠11との間の打設空間Cにおける妻面に並設された複数の妻型枠3に通し材40を当接させてコンクリートの打設圧を支持する妻型枠固定装置10であって、通し材40を妻面の側に位置する先端に支持していると共に、先端が型枠11の周長の法線方向に移動可能に、型枠11の周長に沿った形状で妻面と間隔を空けてかけ渡されているばり受け鋼材16に回動可能に設置された妻型枠固定ばり20と、先端がトンネルの内周面に近づく上方向に妻型枠固定ばり20を付勢する付勢機構として機能するガススプリング70と、を備え、妻型枠固定ばり20は、ばり受け鋼材16から妻面に向けて延出する延出長を調整する伸縮機構を備えている。
この構成により、妻型枠3の設置後は、妻型枠固定ばり20の延出長を調整するだけで、通し材40を妻型枠3に対して簡単に設置できるため、妻型枠3へ通し材40及び妻型枠固定ばり20の設置作業の負担をより軽減できる。すなわち、ガススプリング70による付勢力によって人力作業をアシストすることで、通し材40の上下操作の稼働性が向上する。これにより、妻型枠固定ばり20の延出長を微調整する作業に集中できるため、一人でも簡単に作業が行え、誰が作業を行っても、妻型枠3が外れたり動いたりという不具合を防止できる。
【0039】
打設完了後は、伸縮機構を収縮させることで、通し材40及び妻型枠固定ばり20を妻型枠3から簡単に撤去できる。これにより、通し材40及び妻型枠固定ばり20は、コンクリートの打設ごとにセントル1への設置及び撤去を行う必要がなくなり、妻型枠3の固定作業が迅速かつ簡単に行える。
【0040】
さらに、本実施形態において、妻型枠固定ばり20は、後端がばり受け鋼材16から妻面とは反対方向に張り出すようにばり受け鋼材16に回動可能に設置されている。
この構成により、妻型枠固定ばり20の重量は、回動軸54aの左右に分散され、妻型枠固定ばり20の先端側をより軽量化できる。これにより、妻型枠固定ばり20は、小さい力で回動させることができ、さらに稼働性が向上する。
【0041】
さらに、本実施形態において、ガススプリング70は、妻型枠固定ばり20の後端側を、トンネルの内周面から遠ざかる下方向に引っ張る。
この構成により、付勢機構であるガススプリング70は、打設空間Cの妻面とばり受け鋼材16との間の作業スペースを邪魔することなく、作業効率が向上する。
【0042】
さらに、本実施形態において、妻型枠固定ばり20は、妻型枠固定ばり20の回動軸54aを支持する支持具50を介してばり受け鋼材16に設置され、支持具50は、ばり受け鋼材16から下方向に延出する柱材60を備え、ガススプリング70は、妻型枠固定ばり20の後端側(固定プレート24)と柱材60(固定プレート62)との間に介装されている。
この構成により、妻型枠固定ばり20の後端をガススプリング70によって下方向に引っ張ることが可能になる。
【0043】
さらに、本実施形態において、通し材40は、2本以上の妻型枠固定ばり20にかけ渡されて支持され、妻型枠固定ばり20は、妻型枠固定ばり20の回動軸54aを支持する支持具50(回動支持部51)を介してばり受け鋼材16に設置され、支持具50(回動支持部51)は、回動軸54aの傾きを調整する傾き調整機構を備える。
この構成により、それぞれの回動軸54aを平行に設定できるため、先端が通し材40で連結された3本の妻型枠固定ばり20は、スムーズに回動や伸縮させることができる。
【0044】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0045】
1 セントル
2 レール
3 妻型枠
4 キャンバー
5 ピン
10 妻型枠固定装置
11 型枠
11a 型枠妻面
12 ジャッキ
13 移動架台
14 門型フレーム
15 張り出し鋼材
16 ばり受け鋼材
17 アングル材
20 妻型枠固定ばり
21 差込管
22 腰管
23 軸台座
23a 軸受孔
24 固定プレート
24a 軸受孔
30 把持部
31 パイプ受部
32 可動部
33 ボルト
40 通し材
50 支持具
51 回動支持部
52 座板
53 軸受板
54a、54b 回動軸
55 調整螺子
56 固定アングル
57 固定ボルト
58 延設部
59 軸受板
59a 軸受孔
59b ストッパ孔
60 柱材
61 フック部
62 固定プレート
62a 軸受孔
70 ガススプリング
C 打設空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9