(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107813
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20240802BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20240802BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240802BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D7/41
C09D7/20
C09D5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011930
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】青木 航
(72)【発明者】
【氏名】川那部 恒
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DG131
4J038DG261
4J038JA05
4J038JA06
4J038JA53
4J038KA06
4J038KA08
4J038NA23
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】低コストで消色可能なプライマー組成物を提供すること。
【解決手段】プライマー組成物は、バインダー樹脂(A)と、色素(B)とを含有する。バインダー樹脂(A)が、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を含有する。色素(B)が、アミノアントラキノン系染料(b)を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A)と、色素(B)とを含有し、
バインダー樹脂(A)が、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を含有し、
前記色素(B)が、アミノアントラキノン系染料(b)を含有する、プライマー組成物。
【請求項2】
さらに、溶剤(C)を含有する、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記溶剤(C)が、酢酸ブチルおよび/またはトルエンを含有する、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記色素(B)が、アミノアントラキノン系染料(b)からなり、
前記色素(B)の質量割合が、プライマー組成物の総質量に対して、1ppm以上10000ppm以下である、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記アミノアントラキノン系染料(b)が、
1,4-ビス(メチルアミノ)アントラキノンおよび/または1-ヒドロキシ-4-トルイジノアントラキノンを含有する、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
前記イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)は、ポリイソシアネート成分(a1)とポリオール成分(a2)との反応生成物を含有し、
前記ポリイソシアネート成分(a1)は、脂環族ポリイソシアネートおよび/または芳香族ポリイソシアネートを含有し、
前記ポリオール成分(a2)は、ポリエーテルポリオールを含有する、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項7】
多層弾性舗装材の層間プライマー組成物である、請求項1に記載のプライマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プライマー組成物は、バインダー樹脂を含む塗布材である。プライマー組成物は、各種産業分野において、広範に使用されている。プライマー組成物としては、例えば、接着剤用プライマー組成物、コーティング剤用プライマー組成物、および、舗装材の層間用プライマー組成物が知られている。
【0003】
各種産業分野では、被塗物に対するプライマー組成物の塗布の有無を判断することが、要求される。そこで、プライマー組成物に、着色剤を添加することが提案されている。
【0004】
一方、プライマー組成物が着色剤を含有する場合、プライマー組成物の塗膜が目立つため、美観が損なわれる場合がある。そのため、プライマー組成物の塗布後に、プライマー組成物の色を消すことが、要求される。
【0005】
そこで、光または熱により消色可能なプライマー組成物が、提案されている。より具体的には、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、特定の色素と、酢酸エチルとを含有するプライマー組成物が、提案されている。より具体的には、色素として、紫外線照射、赤外線照射または屋外曝露によって消色する化合物(商品名エリスロシン、キリヤ化学社製)を使用することが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、プライマー組成物に光(紫外線または赤外線)および/または熱を照射する場合、色素の消色において、エネルギーコストがかかる。また、プライマー組成物を屋外曝露する場合、色素の消色におけるエネルギーコストを低減できるが、日陰では色素が消色しない。
【0008】
本発明は、低コストで消色可能なプライマー組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、バインダー樹脂(A)と、色素(B)とを含有し、バインダー樹脂(A)が、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を含有し、前記色素(B)が、アミノアントラキノン系染料(b)を含有する、プライマー組成物を、含んでいる。
【0010】
本発明[2]は、さらに、溶剤(C)を含有する、上記[1]に記載のプライマー組成物を、含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記溶剤(C)が、酢酸ブチルおよび/またはトルエンを含有する、上記[1]または[2]に記載のプライマー組成物を、含んでいる。
【0012】
本発明[4]は、前記色素(B)が、アミノアントラキノン系染料(b)からなり、前記色素(B)の質量割合が、プライマー組成物の総質量に対して、1ppm以上10000ppm以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のプライマー組成物を、含んでいる。
【0013】
本発明[5]は、前記アミノアントラキノン系染料(b)が、1,4-ビス(メチルアミノ)アントラキノンおよび/または1-ヒドロキシ-4-トルイジノアントラキノンを含有する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のプライマー組成物を、含んでいる。
【0014】
本発明[6]は、前記イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)は、ポリイソシアネート成分(a1)とポリオール成分(a2)との反応生成物を含有し、前記ポリイソシアネート成分(a1)は、脂環族ポリイソシアネートおよび/または芳香族ポリイソシアネートを含有し、前記ポリオール成分(a2)は、ポリエーテルポリオールを含有する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のプライマー組成物を、含んでいる。
【0015】
本発明[7]は、多層弾性舗装材の層間プライマー組成物である、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のプライマー組成物を、含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプライマー組成物では、バインダー樹脂(A)が、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を含有し、色素(B)が、アミノアントラキノン系染料(b)を含有する。そのため、アミノアントラキノン系染料(b)は、光および熱が照射されなくとも、時間経過に伴って消色する。そのため、上記のプライマー組成物は、低コストで消色可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施例1~7、比較例1および比較例4のプライマー付き弾性材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.プライマー組成物
本発明のプライマー組成物は、必須成分として、バインダー樹脂(A)と、色素(B)とを含有する。
【0019】
(1)バインダー樹脂(A)
バインダー樹脂(A)は、未硬化の樹脂成分である。バインダー樹脂(A)は、必須成分として、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を含有する。イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)としては、例えば、湿気硬化型ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0020】
湿気硬化型ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネート成分(a1)とポリオール成分(a2)との反応生成物を含有する。湿気硬化型ポリウレタン樹脂は、好ましくは、ポリイソシアネート成分(a1)とポリオール成分(a2)との反応生成物からなる。より具体的には、湿気硬化型ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分(a1)とポリオール成分(a2)とを所定の割合(後述)でウレタン化反応させることによって、得られる。
【0021】
ポリイソシアネート成分(a1)としては、例えば、工業的に汎用されるポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびこれらの誘導体(後述)が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)およびこれらの誘導体(後述)が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびこれらの誘導体(後述)が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)およびこれらの誘導体(後述)が挙げられる。誘導体としては、例えば、多量体、イソシアヌレート変成体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体およびカルボジイミド変性体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0022】
ポリイソシアネート成分(a1)として、作業性および反応性の観点から、好ましくは、脂環族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。つまり、ポリイソシアネート成分(a1)は、作業性および反応性の観点から、好ましくは、脂環族ポリイソシアネートおよび/または芳香族ポリイソシアネートを含有する。ポリイソシアネート成分(a1)は、作業性および反応性の観点から、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネートおよび/または芳香族ポリイソシアネートからなる。
【0023】
脂環族ポリイソシアネートとして、より好ましくは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとして、より好ましくは、トリレンジイソシアネート(TDI)が挙げられる。ポリイソシアネート成分(a1)として、さらに好ましくは、芳香族ポリイソシアネートが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリレンジイソシアネート(TDI)が挙げられる。
【0024】
トリレンジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネートおよび2,6-トリレンジイソシアネートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。トリレンジイソシアネートとして、好ましくは、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとが併用される。
【0025】
2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとが併用される場合、2,4-トリレンジイソシアネートの含有割合が、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートの総量に対して、例えば、40質量%以上、好ましくは、60質量%以上である。2,4-トリレンジイソシアネートの含有割合が、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートの総量に対して、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。2,6-トリレンジイソシアネートの含有割合が、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートの総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上である。2,6-トリレンジイソシアネートの含有割合が、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートの総量に対して、例えば、60質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0026】
ポリオール成分(a2)としては、マクロポリオールが挙げられる。マクロポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物である。マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、300以上、例えば、20000以下である。数平均分子量は、水酸基当量および平均水酸基数から、公知の方法で算出できる。また、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算分子量として測定できる(以下同様)。
【0027】
マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオールおよびビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。これらマクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。マクロポリオールとして、低粘性および低コスト性の観点から、好ましくは、ポリエーテルポリオールおよび植物油ポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられる。換言すると、ポリオール成分(a2)は、好ましくは、ポリエーテルポリオールおよび/または植物油ポリオールを含有し、より好ましくは、ポリエーテルポリオールを含有する。
【0028】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシトリエチレンポリオール、および、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、結晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオールおよび非晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0029】
植物油ポリオールとしては、例えば、ヒドロキシル基含有植物油が挙げられる。ヒドロキシル基含有植物油としては、例えば、ひまし油、および、やし油が挙げられる。また、植物油ポリオールとしては、例えば、エステル変性植物油ポリオールが挙げられる。エステル変性植物油ポリオールは、例えば、公知の植物油脂肪酸とポリエーテルポリオールとのエステル化反応により合成される。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0030】
マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、300以上である。また、マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、20000以下、好ましくは、10000以下、より好ましくは、5000以下、さらに好ましくは、2000以下、とりわけ好ましくは、1000以下である。
【0031】
マクロポリオールの平均水酸基数は、例えば、2以上である。マクロポリオールの平均水酸基数は、例えば、4以下、好ましくは、3以下である。
【0032】
ポリオール成分(a2)は、必要に応じて、低分子量ポリオールを含有できる。低分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的低分子量の有機化合物である。低分子量ポリオールの分子量は、例えば、40以上、例えば、300未満、好ましくは、200以下である。
【0033】
低分子量ポリオールとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール、および、4価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンが挙げられる。また、低分子量ポリオールとしては、数平均分子量が300未満になるように、2~3価アルコールに対してアルキレン(C2~3)オキサイドを付加重合した重合物も、挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0034】
低分子量ポリオールは、ポリオール成分(a2)に含まれることが、好ましい。また、低分子量ポリオールは、ポリオール成分(a2)に含まれないことも、好ましい。より好ましくは、低分子量ポリオールは、ポリオール成分(a2)に含まれない。つまり、より好ましくは、ポリオール成分(a2)は、マクロポリオールからなる。
【0035】
湿気硬化型ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネート成分(a1)とポリオール成分(a2)とを、所定の割合でウレタン化反応させることによって、得られる。より具体的には、ポリオール成分(a2)中の水酸基に対するポリイソシアネート成分(a1)中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、1.0を超過し、好ましくは、1.1以上、さらに好ましくは、1.5以上である。ポリオール成分(a2)中の水酸基に対するポリイソシアネート成分(a1)中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、15.0以下、好ましくは、10.0以下、さらに好ましくは、5.0以下である。反応温度は、例えば、20℃以上、好ましくは、40℃以上である。反応温度は、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。反応時間は、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0036】
ウレタン化反応では、必要により、有機溶剤を配合できる。有機溶剤としては、例えば、ケトン類、ニトリル類、アルキルエステル類、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、グリコールエーテルエステル類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、および、極性非プロトン類が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。有機溶剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0037】
ウレタン化反応では、必要により、ウレタン化触媒を配合できる。ウレタン化触媒としては、例えば、有機金属化合物、アミン類およびカリウム塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。ウレタン化触媒の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0038】
上記のウレタン化反応によって、イソシアネート基を分子末端に有するイソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)が、ポリイソシアネート成分(a1)とポリオール成分(a2)との反応生成物として得られる。
【0039】
イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)のイソシアネート基含有率は、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、7質量%以上である。イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)のイソシアネート基含有率は、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、15質量%以下である。イソシアネート基含有率は、ジ-n-ブチルアミンによる滴定法(アミン滴定法)や、FT-IR分析法(IR法)などの公知の方法によって求めることができる。
【0040】
上記のイソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)は、イソシアネート基を分子末端に有するため、湿気硬化可能である。すなわち、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)の分子末端のイソシアネート基が、大気中の湿気および/またはアミン蒸気と反応し、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)が硬化する。
【0041】
バインダー樹脂(A)が、上記のイソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を含んでいれば、プライマー組成物は、優れた密着性およびポットライフを有する。
【0042】
バインダー樹脂(A)は、任意成分として、その他の樹脂を含有できる。その他の樹脂は、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)以外の樹脂である。その他の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂および(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0043】
その他の樹脂の含有割合は、バインダー樹脂(A)の総量に対して、例えば、50質量%未満、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0044】
すなわち、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)の含有割合は、バインダー樹脂(A)の総量に対して、例えば、50質量%を超過し、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、90質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。換言すると、バインダー樹脂(A)は、とりわけ好ましくは、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)からなる。
【0045】
バインダー樹脂(A)の含有割合は、プライマー組成物の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、8質量%以上である。バインダー樹脂(A)の含有割合は、プライマー組成物の総量に対して、例えば、70質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0046】
(2)色素(B)
色素(B)は、必須成分として、アミノアントラキノン系染料(b)を含有する。アミノアントラキノン系染料(b)は、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)とアミノアントラキノン系染料(b)との共存下、光および熱が照射されなくとも、時間経過に伴い消色する。そのため、色素(B)がアミノアントラキノン系染料(b)を含有していれば、プライマー組成物は、低コストで消色可能である。
【0047】
アミノアントラキノン系染料(b)としては、例えば、1,4-ジアミノアントラキノン、1,4-ビス(メチルアミノ)アントラキノン、1-ヒドロキシ-4-トルイジノアントラキノン、1-アミノ-4-ヒドロキシ-2-メトキシアントラキノン、1-アミノ-4-メチルアミノアントラキノン、1,4-ジアミノ-2-メトキシアントラキノン、1-アミノ-2-メチルアントラキノン、1,4,5,8-テトラアミノアントラキノン、1,4-ジアミノ-5-ニトロアントラキノン、1-アミノアントラキノン、2-アミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、1-(メチルアミノ)アントラキノン、1,4-ビス(トルイジノ)アントラキノン、1,5-ビス(トルイジノ)アントラキノン、1,8-ビス(トルイジノ)アントラキノン、1-アミノ-4-ヒドロキシアントラキノン、1,5-ジアミノ-4,8-ジヒドロキシアントラキノン、1,4-ビス(ペンチルアミノ)アントラキノン、1-(メチルアミノ)-4-[3-(メチルフェニル)アミノ]アントラキノン、1-ヒドロキシ-4-[4-(メチルフェニル)アミノ]アントラキノン、2-アミノ-3-ヒドロキシアントラキノン、1,4-ジアミノ-2,3-ジクロロアントラキノン、1-アミノ-4-ブロモアントラキノン-2-スルホン酸ナトリウム、アリザリンアストロール、ヌクレアファストレッド、および、1,4-ジヒドロキシ-5,8-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)アントラキノンが挙げられる。また、アミノアントラキノン系染料(b)としては、例えば、アシッドグリーン27、アシッドバイオレット43、ソルベントレッド52、ソルベントレッド114、バットブルー21、バットブルー30、バットバイオレット15、バットバイオレット17、バットレッド28、アシッドブルー23、アシッドブルー80、アシッドバイオレット48、アシッドレッド81、アシッドレッド83、リアクティブブルー4およびリアクティブブルー19(いずれも染料番号)も挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0048】
アミノアントラキノン系染料(b)として、消色性の観点から、好ましくは、1,4-ビス(メチルアミノ)アントラキノンおよび1-ヒドロキシ-4-トルイジノアントラキノンが挙げられる。換言すると、アミノアントラキノン系染料(b)は、消色性の観点から、好ましくは、1,4-ビス(メチルアミノ)アントラキノンおよび/または1-ヒドロキシ-4-トルイジノアントラキノンを含有する。アミノアントラキノン系染料(b)は、バインダー樹脂(A)および溶剤(C)に対する溶解性の観点から、とりわけ好ましくは、1,4-ビス(メチルアミノ)アントラキノンを含有する。
【0049】
色素(B)は、任意成分として、その他の色素を含有できる。その他の色素は、アミノアントラキノン系染料(b)以外の色素である。その他の色素としては、例えば、アントラキノン系染料(b)以外の有機染料および有機顔料が挙げられ、より具体的には、例えば、フタロシアニン系染料および顔料、アゾ系染料および顔料、レーキ系染料および顔料、および、キノフタロン系染料および顔料が挙げられる。また、その他の色素としては、無機染料および無機顔料も挙げられる。無機染料としては、例えば、バナジウム系染料、クロム系染料、モリブデン系染料、マンガン系染料、および、鉄系染料が挙げられる。無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、ベンガラ、酸化鉄およびマイカが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0050】
その他の色素の含有割合は、色素(B)の総量に対して、例えば、50質量%未満、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。すなわち、アミノアントラキノン系染料(b)の含有割合は、色素(B)の総量に対して、例えば、50質量%を超過し、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、90質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。換言すると、色素(B)は、とりわけ好ましくは、アミノアントラキノン系染料(b)からなる。
【0051】
色素(B)の質量割合は、塗布時の顕色性の観点から、プライマー組成物の総質量に対して、例えば、0.1ppm以上、好ましくは、1ppm以上、より好ましくは、10ppm以上、さらに好ましくは、100ppm以上、とりわけ好ましくは、500ppm以上である。色素(B)の質量割合は、塗布後の消色性の観点から、プライマー組成物の総質量に対して、例えば、50000ppm(5質量%)以下、好ましくは、10000ppm(1質量%)以下、より好ましくは、5000ppm以下、さらに好ましくは、3000ppm以下、とりわけ好ましくは、1000ppm以下である。
【0052】
色素(B)の質量割合は、バインダー樹脂(A)100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上である。色素(B)の質量割合は、バインダー樹脂(A)100質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0053】
(3)溶剤(C)
プライマー組成物は、任意成分として、溶剤(C)を含有できる。溶剤(C)としては、例えば、上記した有機溶剤が挙げられ、より具体的には、例えば、ケトン類、ニトリル類、アルキルエステル類、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、グリコールエーテルエステル類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、および、極性非プロトン類が挙げられる。
【0054】
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノンが挙げられる。ニトリル類としては、例えば、アセトニトリルが挙げられる。アルキルエステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、および、酢酸イソブチルが挙げられる。脂肪族炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、および、オクタンが挙げられる。脂環族炭化水素類としては、例えば、シクロヘキサン、および、メチルシクロヘキサンが挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン、および、エチルベンゼンが挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、および、ジオキサンが挙げられる。グリコールエーテルエステル類としては、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、および、エチル-3-エトキシプロピオネートが挙げられる。ハロゲン化脂肪族炭化水素類としては、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、および、ジクロロエタンが挙げられる。極性非プロトン類としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、および、ヘキサメチルホスホニルアミドが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0055】
有機溶剤として、取り扱い性の観点から、好ましくは、アルキルエステル類および芳香族炭化水素類が挙げられる。アルキルエステル類として、好ましくは、酢酸エチルが挙げられる。芳香族炭化水素類として、好ましくは、トルエンが挙げられる。プライマー組成物は、取り扱い性の観点から、好ましくは、酢酸ブチルおよび/またはトルエンを含有する。
【0056】
プライマー組成物が、溶剤(C)を含有する場合、溶剤(C)の含有形態は、特に制限されない。例えば、溶剤(C)は、バインダー樹脂(A)を希釈することができる。また、溶剤(C)は、色素(B)を希釈することができる。また、溶剤(C)は、バインダー樹脂(A)および色素(B)とは別途、単独で添加されることもできる。
【0057】
溶剤(C)の含有割合(総量)は、プライマー組成物の総量に対して、例えば、30_質量%以上、好ましくは、50質量%以上である。溶剤(C)の含有割合(総量)は、プライマー組成物の総量に対して、例えば、95質量%以下、好ましくは、91質量%以下である。
【0058】
溶剤(C)の質量割合(総量)は、バインダー樹脂(A)100質量部に対して、例えば、100質量部以上、好ましくは、200質量部以上である。溶剤(C)の質量割合(総量)は、バインダー樹脂(A)100質量部に対して、例えば、1500質量部以下、好ましくは、1000質量部以下である。
【0059】
(4)プライマー組成物の調製
プライマー組成物は、バインダー樹脂(A)と色素(B)と、必要に応じて配合される溶剤(C)とを、公知の方法で混合することによって、調製される。より具体的には、プライマー組成物の調製では、例えば、バインダー樹脂(A)と、色素(B)とを、混合する。これにより、バインダー樹脂(A)と色素(B)との混合物として、プライマー組成物が得られる。プライマー組成物の調製では、好ましくは、バインダー樹脂(A)と、色素(B)と、溶剤(C)とを混合する。これにより、バインダー樹脂(A)と色素(B)と溶剤(C)との混合物として、プライマー組成物が得られる。なお、バインダー樹脂(A)は、予め溶剤(C)に希釈されていてもよい。また、色素(B)は、予め溶剤(C)に希釈されていてもよい。
【0060】
プライマー組成物の固形分濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、9質量%以上である。プライマー組成物の固形分濃度は、例えば、100質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、50質量%以下、とりわけ好ましくは、40質量%以下である。
【0061】
(5)添加剤
プライマー組成物は、添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、触媒、助触媒、耐熱安定剤、耐光安定剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、滑剤、フィラーおよび加水分解防止剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。添加剤の添加割合、および、添加タイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0062】
2.作用効果
上記プライマー組成物では、バインダー樹脂(A)が、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を含有し、色素(B)が、アミノアントラキノン系染料(b)を含有する。アミノアントラキノン系染料(b)は、イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)とアミノアントラキノン系染料(b)との共存下、光および熱が照射されなくとも、時間経過に伴って消色する。そのため、上記のプライマー組成物は、低コストで消色可能である。
【0063】
その結果、上記のプライマー組成物は、各種産業分野におけるプライマー組成物として、好適に使用される。上記のプライマー組成物は、好ましくは、弾性材用プライマー組成物、防水材用プライマー組成物、床材用プライマー組成物、目止め材用プライマー組成物、グランド材用プライマー組成物、および、多層弾性舗装材の層間プライマー組成物として、使用される。とりわけ好ましくは、上記のプライマー組成物は、多層弾性舗装材の層間プライマー組成物として、使用される。
【実施例0064】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0065】
<色素>
準備例1
色素Aとして、1,4-ビス(メチルアミノ)アントラキノン(アミノアントラキノン系染料(b))を準備した。
【0066】
準備例2
色素Bとして、1-ヒドロキシ-4-トルイジノアントラキノン(アミノアントラキノン系染料(b))を準備した。
【0067】
準備例3
色素Cとして、フタロシアニナト銅(II)(フタロシアニン系染料)を準備した。
【0068】
準備例4
色素Dとして、二酸化チタン(無機顔料)を準備した。
【0069】
<バインダー樹脂およびその溶液>
調製例1
以下の成分を混合し、90℃で5時間反応させた。反応生成物としてイソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を得た。イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を、バインダー樹脂Aとした。
【0070】
TDI-80(ポリイソシアネート成分(a1)、トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート80質量部と2,6-トリレンジイソシアネート20質量部との混合物、三井化学製) 149質量部
ひまし油(ポリオール成分(a2)、植物油ポリオール、三井化学製) 181質量部
アクトコールT-700(ポリオール成分(a2)、ポリオキシプロピレンポリオール、平均水酸基数3、数平均分子量700、三井化学製) 72質量部
【0071】
ポリオール成分(a2)中の水酸基に対するポリイソシアネート成分(a1)中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、2.05であった。イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)は、分子末端にイソシアネート基を含有していた。イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)のイソシアネート基含有率(アミン滴定法)は、9.07質量%であった。
【0072】
バインダー樹脂A 402質量部に、酢酸エチル(溶剤(C)、樹脂希釈剤)598質量部を混合し、バインダー樹脂溶液A(固形分濃度40.2質量%)を得た。
【0073】
調製例2
以下の成分を混合し、90℃で5時間反応させた。反応生成物としてイソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を得た。イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を、バインダー樹脂Bとした。
【0074】
TDI-80(ポリイソシアネート成分(a1)、トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート80質量部と2,6-トリレンジイソシアネート20質量部との混合物、三井化学製) 140質量部
アクトコールD-1000(ポリオール成分(a2)、ポリオキシプロピレンポリオール、平均水酸基数2、数平均分子量1000、三井化学製品) 72質量部
アクトコールT-300(ポリオール成分(a2)、ポリオキシプロピレンポリオール、平均水酸基数3、数平均分子量300、三井化学製品) 87質量部
【0075】
ポリオール成分(a2)中の水酸基に対するポリイソシアネート成分(a1)中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、1.59であった。イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)は、分子末端にイソシアネート基を含有していた。イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)のイソシアネート基含有率(アミン滴定法)は、8.23質量%であった。
【0076】
バインダー樹脂B 299質量部に、酢酸エチル(溶剤(C)、樹脂希釈剤)701質量部を混合し、バインダー樹脂溶液B(固形分濃度29.9質量%)を得た。
【0077】
調製例3
以下の成分を混合し、70℃で5時間反応させた。反応生成物としてイソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を得た。イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)を、バインダー樹脂Cとした。
【0078】
IPDI(ポリイソシアネート成分(a1)、イソホロンジイソシアネート) 161質量部
アクトコールD-700(ポリオール成分(a2)、ポリオキシプロピレンポリオール、平均水酸基数2、数平均分子量700、三井化学製品) 172質量部
ネオスタンU-100(ウレタン化触媒、有機錫化合物、日東化成社製) 0.1質量部
【0079】
ポリオール成分(a2)中の水酸基に対するポリイソシアネート成分(a1)中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、2.95であった。イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)は、分子末端にイソシアネート基を含有していた。イソシアネート基末端ポリウレタン樹脂(a)のイソシアネート基含有率(アミン滴定法)は、11.95質量%であった。
【0080】
バインダー樹脂C 333質量部に、酢酸エチル(溶剤(C)、樹脂希釈剤)667質量部を混合し、バインダー樹脂溶液C(固形分濃度33.3質量%)を得た。
【0081】
各調製例の配合処方を、表1に示す。
【0082】
【0083】
準備例5
1液のエポキシ樹脂系のプライマーを用意した(プライマー万能NTシーラー、川上塗料製)。これをバインダー樹脂溶液D(固形分濃度26.0質量%)とした。
【0084】
<プライマー組成物およびプライマー付き弾性材>
実施例1
100質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、色素希釈剤)と、1質量部の色素Aとを混合し、色素溶液Aを得た。次いで、30質量部のバインダー樹脂溶液Aと、10質量部の色素溶液Aと、60質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、別添希釈剤)とを混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、1000ppmであった。また、プライマー組成物の固形分濃度は12.2質量%であった。
【0085】
プライマー組成物を、赤色のポリウレタン弾性材(市販品、以下同様)に対して、塗布量が約50g/m2となるように、刷毛で塗布した。これにより、プライマー付き弾性材を得た。
【0086】
比較例1
色素溶液Aを使用せずに、プライマー組成物を得た。より具体的には、30質量部のバインダー樹脂溶液Aと、70質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、別添希釈剤)とを混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、0ppmであった。また、プライマー組成物の固形分濃度は12.1質量%であった。
【0087】
得られたプライマー組成物を使用し、実施例1と同じ方法で、プライマー付き弾性材を得た。
【0088】
実施例2
色素溶液Aの量を変更して、プライマー組成物を得た。より具体的には、30質量部のバインダー樹脂溶液Aと、5質量部の上記色素溶液Aと、65質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、別添希釈剤)とを混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、500ppmであった。また、プライマー組成物の固形分濃度は12.2質量%であった。
【0089】
得られたプライマー組成物を使用し、実施例1と同じ方法で、プライマー付き弾性材を得た。
【0090】
実施例3
色素希釈剤および別添希釈剤を使用せずに、プライマー組成物を得た。より具体的には、100質量部のバインダー樹脂溶液Aと、1質量部の色素Aとを混合し、色素溶液Bを得た。次いで、90質量部のバインダー樹脂溶液Aと、10質量部の色素溶液Bを混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、1000ppmであった。また、プライマー組成物の固形分濃度は40.3質量%であった。
【0091】
得られたプライマー組成物を使用し、実施例1と同じ方法で、プライマー付き弾性材を得た。ただし、希釈剤が使用されていないため、プライマー組成物の粘度が高かった。そのため、プライマー組成物を刷毛で薄く塗布することができなかった。そこで、塗布量が約100g/m2となるように、プライマー組成物を塗布した。
【0092】
実施例4
色素溶液の濃度を変更して、プライマー組成物を得た。より具体的には、100質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、色素希釈剤)と、10質量部の色素Aとを混合し、色素溶液Cを得た。次いで、30質量部のバインダー樹脂溶液Aと、10質量部の色素溶液Cと、60質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、別添希釈剤)とを混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、10000ppm(1質量%)であった。また、プライマー組成物の固形分濃度は13.1質量%であった。
【0093】
得られたプライマー組成物を使用し、実施例1と同じ方法で、プライマー付き弾性材を得た。
【0094】
実施例5
色素希釈剤および別添希釈剤として、トルエンを使用した。より具体的には、100質量部のトルエン(溶剤(C)、色素希釈剤)と、1質量部の色素Aとを混合し、色素溶液Dを得た。次いで、30質量部のバインダー樹脂溶液Aと、10質量部の色素溶液Dと、60質量部のトルエン(溶剤(C)、別添希釈剤)とを混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、1000ppmであった。また、プライマー組成物の固形分濃度は12.2質量%であった。
【0095】
得られたプライマー組成物を使用し、実施例1と同じ方法で、プライマー付き弾性材を得た。
【0096】
実施例6
色素Aに代えて、色素Bを使用した。より具体的には、100質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、色素希釈剤)と、1質量部の色素Bとを混合し、色素溶液Eを得た。次いで、30質量部のバインダー樹脂溶液Aと、10質量部の色素溶液Eと、60質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、別添希釈剤)とを混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、1000ppmであった。また、プライマー組成物の固形分濃度は12.2質量%であった。
【0097】
得られたプライマー組成物を使用し、実施例1と同じ方法で、プライマー付き弾性材を得た。
【0098】
実施例7
バインダー樹脂溶液Aに代えてバインダー樹脂溶液Bを使用し、また、色素希釈剤および別添希釈剤を使用せずに、プライマー組成物を得た。より具体的には、100質量部のバインダー樹脂溶液Bと、1質量部の色素Aとを混合し、色素溶液B’を得た。次いで、90質量部のバインダー樹脂溶液Bと、10質量部の色素溶液B’を混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、1000ppmであった。また、プライマー組成物の固形分濃度は30.0質量%であった。
【0099】
得られたプライマー組成物を使用し、実施例1と同じ方法で、プライマー付き弾性材を得た。ただし、希釈剤が使用されていないため、プライマー組成物の粘度が高かった。そのため、プライマー組成物を刷毛で薄く塗布することができなかった。そこで、塗布量が約100g/m2となるように、プライマー組成物を塗布した。
【0100】
実施例8
バインダー樹脂溶液Aに代えてバインダー樹脂溶液Cを使用し、プライマー組成物を得た。より具体的に、30質量部のバインダー樹脂溶液Cと、10質量部の上記色素溶液Aと、60質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、別添希釈剤)とを混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、1000ppmであった。また、プライマー組成物の固形分濃度は10.1質量%であった。
【0101】
得られたプライマー組成物を使用し、実施例1と同じ方法で、プライマー付き弾性材を得た。
【0102】
比較例2
色素Aに代えて色素Cを使用し、プライマー組成物を得た。より具体的には、100質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、色素希釈剤)と、1質量部の色素Cとを混合し、色素溶液Fを得た。次いで、30質量部のバインダー樹脂溶液Aと、10質量部の色素溶液Fと、60質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、別添希釈剤)とを混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、1000ppmであった。また、プライマー組成物の固形分濃度は12.2質量%であった。
【0103】
得られたプライマー組成物を使用し、実施例1と同じ方法で、プライマー付き弾性材を得た。
【0104】
比較例3
50質量部のアクトコールD-2000(ポリオキシプロピレンポリオール、平均水酸基数2、数平均分子量2000、三井化学製品)と、50質量部の色素Dとを混合し、色素溶液Gを得た。次いで、30質量部のバインダー樹脂溶液Aと、1質量部の色素溶液Gと、69質量部の酢酸ブチル(溶剤(C)、別添希釈剤)とを混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、5000ppm(0.5質量%)であった。また、プライマー組成物の固形分濃度は13.1質量%であった。
【0105】
得られたプライマー組成物を使用し、実施例1と同じ方法で、プライマー付き弾性材を得た。
【0106】
比較例4
90質量部のバインダー樹脂溶液Dと、10質量部の色素溶液Aを混合し、プライマー組成物を得た。プライマー組成物の色素濃度(プライマー組成物の総質量に対する色素の質量割合)は、1000ppmであった。また、プライマー組成物の固形分濃度は23.5質量%であった。
【0107】
得られたプライマー組成物を使用し、実施例1と同じ方法で、プライマー付き弾性材を得た。ただし、色素の分散性が低く、色素がプライマー組成物中でダマになった。また、プライマー組成物の粘度が比較的高く、さらに、色素がダマになったため、プライマー組成物を刷毛で薄く塗布することができなかった。そこで、塗布量が約100g/m2となるように、プライマー組成物を塗布した。
【0108】
<評価>
1.色変化
プライマー付き弾性材を、暗所において、室温で1週間放置した。そして、プライマー組成物の塗布直後と1週間後との間における、プライマー付き弾性材の色の変化を確認した。その結果を、表2に示す。また、実施例1~7、比較例1および比較例4のプライマー付き弾性材の写真を、
図1に示す。なお、
図1において、実施例8および比較例2~3のプライマー付き弾性材の写真を省略する。
【0109】
色の評価基準を下記する。
3; 着色(濃色)が確認された。
2; 着色(普通色)が確認された。
1; 着色(淡色)が確認された。
0; 着色が確認されなかった。
【0110】