(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107832
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】センタリング装置、センタリング方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/68 20060101AFI20240802BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240802BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01L21/68 F
H01L21/306 R
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011958
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】梶野 一樹
(72)【発明者】
【氏名】根本 脩平
【テーマコード(参考)】
5F043
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE09
5F043EE35
5F043EE36
5F043EE40
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131CA37
5F131DA02
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB62
5F131DB72
5F131DB76
5F131EA06
5F131EA14
5F131EA15
5F131EA22
5F131EA24
5F131EB01
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5F131FA17
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5F131FA35
5F131GA14
5F131GA19
5F131KA13
5F131KA14
5F131KA15
5F131KA72
5F131KB12
5F131KB32
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5F157AA14
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB47
5F157AB64
5F157AB90
5F157CF32
(57)【要約】
【課題】優れたスループットおよび精度で基板のセンタリング処理を行うセンタリング技術および基板処理装置を提供する。
【解決手段】この発明は、基板支持部の上面で基板を、水平面内で、第1基準位置に位置する第1当接部材、第2基準位置に位置する第2当接部材および第3基準位置に位置する第3当接部材により取り囲む。そして、これら3つの当接部材の微小移動の繰り返しにより、基板支持部の中心からの距離を同一に保ちながら基板に徐々に近接する。この近接移動中に当接部材が順次基板に当接し、基板を基板支持部の中心に向けて水平移動させる。ここで、第2当接部材および第3当接部材が微小移動する方向は基板支持部の中心に向う方向と異なることを考慮した上で、第2当接部材および第3当接部材を上記のように配置している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板支持部の上面に水平姿勢で載置された円板状の基板の中心が前記基板支持部の中心に一致するように前記基板支持部上での前記基板の位置決めを行うセンタリング装置であって、
水平面内において、前記基板支持部の中心から前記基板の半径よりも長い基準距離だけ離れた第1基準位置から、前記基板支持部の中心に向う第1水平方向に移動自在な第1当接部材と、
前記水平面内において、前記基板支持部の中心に対して前記第1当接部材の反対側で前記基板支持部の中心から前記第1水平方向に延びる仮想線に対して第1角度だけ傾くとともに前記基板支持部の中心から前記基準距離だけ離れた第2基準位置から、前記基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ前記基板に近づく第2水平方向に移動自在な第2当接部材と、
前記水平面内において、前記基板支持部の中心に対して前記第1当接部材の反対側かつ前記仮想線に対して前記第2当接部材の反対側で第2角度だけ傾くとともに前記基板支持部の中心から前記基準距離だけ離れた第3基準位置から、前記基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ前記基板に近づく第3水平方向に移動自在な第3当接部材と、
前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材を、それぞれ前記第1水平方向、前記第2水平方向および前記第3水平方向に移動させる移動機構と、
前記移動機構を制御することで前記位置決めを実行する制御部と、を備え、
前記第1角度は40゜以上60゜以下の範囲であり、
前記第2角度は40゜以上60゜以下の範囲であり、
前記制御部は、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の前記基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材をそれぞれ第1移動量、第2移動量および第3移動量だけ移動させる微小移動が、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の前記基板への当接が全て完了するまで繰り返されるように、前記移動機構を制御することを特徴とするセンタリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンタリング装置であって、
前記第2水平方向および前記第3水平方向は前記仮想線と平行な方向であるセンタリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のセンタリング装置であって、
前記第3基準位置は前記仮想線に対して前記第2基準位置と線対称であり、
前記第2移動量および前記第3移動量が同一の値であるセンタリング装置。
【請求項4】
基板支持部の上面に水平姿勢で載置された円板状の基板の中心が前記基板支持部の中心に一致するように前記基板支持部上での前記基板の位置決めを行うセンタリング方法であって、
水平面内において、前記基板支持部の中心から前記基板の半径よりも長い基準距離だけ離れた第1基準位置に第1当接部材を位置させ、前記基板支持部の中心に対して前記第1当接部材の反対側で前記第1基準位置から前記基板支持部の中心を通過して延びる仮想線に対して第1角度だけ傾くとともに前記基板支持部の中心から前記基準距離だけ離れた第2基準位置に第2当接部材を位置させ、前記基板支持部の中心に対して前記第1当接部材の反対側かつ前記仮想線に対して前記第2当接部材の反対側で第2角度だけ傾くとともに前記基板支持部の中心から前記基準距離だけ離れた、第3基準位置に第3当接部材を位置させた状態で、前記基板を前記基板支持部の上面に載置する工程と、
前記基板支持部の上面上で前記基板を水平移動自在に載置したまま、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材の前記基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、前記第1基準位置から前記基板支持部の中心に向う第1水平方向に前記第1当接部材を移動させ、第2基準位置から前記基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ前記基板に近づく第2水平方向に前記第2当接部材を第2移動量だけ移動させ、第3基準位置から前記基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ前記基板に近づく第3水平方向に前記第3当接部材を第3移動量だけ移動させる、微小移動を繰り返す工程と、
前記微小移動の繰り返し中に、前記第1当接部材、前記第2当接部材および前記第3当接部材で前記基板を挟み込んだことを確認すると、前記微小移動を停止する工程と、を備え、
前記第1角度は40゜以上60゜以下の範囲であり、
前記第2角度は40゜以上60゜以下の範囲である、
ことを特徴とするセンタリング方法。
【請求項5】
水平姿勢の基板を支持する上面を有する基板支持部と、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセンタリング装置と、
前記センタリング装置により位置決めされた前記基板と前記基板支持部との間を排気して前記基板を前記基板支持部に吸着保持させる吸引部と、
前記基板を吸着保持する前記基板支持部を、前記基板支持部の中心周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板支持部と一体的に前記基板支持部の中心周りに回転される前記基板の周縁部に処理液を供給する処理液供給機構と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板支持部の上面に載置された円板状の基板の中心を基板支持部の中心に一致させるセンタリング技術および当該技術を利用して基板を処理する基板処理装置に関するものである。当該処理には、ベベルエッチング処理が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板を回転させつつ当該基板の周縁部に処理液を供給して薬液処理や洗浄処理などを施す基板処理装置が知られている。例えば特許文献1に記載の装置では、基板がスピンチャック(本発明の「基板支持部」の一例に相当)により下方から支持されながら吸着保持される。このとき、スピンチャックの中心と、基板の中心とがずれていると、処理品質の低下を招いてしまう。そこで、上記装置では、基板に対して処理を施す前に、スピンチャックに対する基板の偏心量を減少させる、いわゆるセンタリング処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来装置では、センタリング処理が2段階で行われる。まず、スピンチャックに対する基板の偏心量が測定される。次に、スピンチャック上の基板をプッシャーで水平に押すことで、基板の中心がスピンチャックの中心(回転軸線)の方に移動される。したがって、スループットの面で改良の余地が残されている。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、優れたスループットで、基板支持部の上面に載置された円板状の基板の中心を基板支持部の中心に一致させることができるセンタリング技術、ならびに当該センタリング技術を用いた基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1態様は、基板支持部の上面に水平姿勢で載置された円板状の基板の中心が基板支持部の中心に一致するように基板支持部上での基板の位置決めを行うセンタリング装置であって、水平面内において、基板支持部の中心から基板の半径よりも長い基準距離だけ離れた第1基準位置から、基板支持部の中心に向う第1水平方向に移動自在な第1当接部材と、水平面内において、基板支持部の中心に対して第1当接部材の反対側で基板支持部の中心から第1水平方向に延びる仮想線に対して第1角度だけ傾くとともに基板支持部の中心から基準距離だけ離れた第2基準位置から、基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ基板に近づく第2水平方向に移動自在な第2当接部材と、水平面内において、基板支持部の中心に対して第1当接部材の反対側かつ仮想線に対して第2当接部材の反対側で第2角度だけ傾くとともに基板支持部の中心から基準距離だけ離れた第3基準位置から、基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ基板に近づく第3水平方向に移動自在な第3当接部材と、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材を、それぞれ第1水平方向、第2水平方向および第3水平方向に移動させる移動機構と、移動機構を制御することで位置決めを実行する制御部と、を備え、第1角度は40゜以上60゜以下の範囲であり、第2角度は40゜以上60゜以下の範囲であり、制御部は、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材の基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材をそれぞれ第1移動量、第2移動量および第3移動量だけ移動させる微小移動が、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材の基板への当接が全て完了するまで繰り返されるように、移動機構を制御することを特徴としている。
【0007】
また、この発明の第2態様は、基板支持部の上面に水平姿勢で載置された円板状の基板の中心が基板支持部の中心に一致するように基板支持部上での基板の位置決めを行うセンタリング方法であって、水平面内において、基板支持部の中心から基板の半径よりも長い基準距離だけ離れた第1基準位置に第1当接部材を位置させ、基板支持部の中心に対して第1当接部材の反対側で第1基準位置から基板支持部の中心を通過して延びる仮想線に対して第1角度だけ傾くとともに基板支持部の中心から基準距離だけ離れた第2基準位置に第2当接部材を位置させ、基板支持部の中心に対して第1当接部材の反対側かつ仮想線に対して第2当接部材の反対側で第2角度だけ傾くとともに基板支持部の中心から基準距離だけ離れた、第3基準位置に第3当接部材を位置させた状態で、基板を基板支持部の上面に載置する工程と、基板支持部の上面上で基板を水平移動自在に載置したまま、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材の基板支持部の中心からの距離が同一に保たれるように、第1基準位置から基板支持部の中心に向う第1水平方向に第1当接部材を移動させ、第2基準位置から基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ基板に近づく第2水平方向に第2当接部材を第2移動量だけ移動させ、第3基準位置から基板支持部の中心に向う方向と異なりかつ基板に近づく第3水平方向に第3当接部材を第3移動量だけ移動させる、微小移動を繰り返す工程と、微小移動の繰り返し中に、第1当接部材、第2当接部材および第3当接部材で基板を挟み込んだことを確認すると、微小移動を停止する工程と、を備え、第1角度は40゜以上60゜以下の範囲であり、第2角度は40゜以上60゜以下の範囲である、ことを特徴としている。
【0008】
さらに、この発明の第3態様は、基板処理装置であって、水平姿勢の基板を支持する上面を有する基板支持部と、上記センタリング装置と、センタリング装置により位置決めされた基板と基板支持部との間を排気して基板を基板支持部に吸着保持させる吸引部と、基板を吸着保持する基板支持部を、基板支持部の中心周りに回転させる回転駆動部と、基板支持部と一体的に基板支持部の中心周りに回転される基板の周縁部に処理液を供給する処理液供給機構と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、水平面内で、基板が第1基準位置に位置する第1当接部材、第2基準位置に位置する第2当接部材および第3基準位置に位置する第3当接部材により取り囲まれる。これら3つの当接部材は、微小移動の繰り返しにより、基板支持部の中心からの距離を同一に保ちながら基板に徐々に近接する。この近接移動中に当接部材が順次基板に当接し、基板を基板支持部の中心に向けて水平移動させる。その結果、これら3つの当接部材で挟み込まれた基板の中心は基板支持部の中心に一致する。
【0010】
しかも、後で詳述するように、第2当接部材および第3当接部材が微小移動する方向は基板支持部の中心に向う方向と異なることを考慮した上で、第2当接部材および第3当接部材を上記のように配置している。このため、優れたセンタリング精度が得られる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明によれば、3つの当接部材の微小移動の繰り返し動作のみにより、精度良く、基板支持部の上面に載置された円板状の基板の中心を基板支持部の中心に一致させることができ、優れたスループットおよび精度で基板のセンタリング処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
【
図2】基板処理装置の第1実施形態の構成を概略的に示す図である。
【
図3】基板処理装置の基板保持部およびセンタリング機構の構成を示す斜視図である。
【
図4】センタリング機構で採用可能な当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。
【
図5】センタリング機構の動作を模式的に示す図である。
【
図6A】微小移動前後の当接部材とスピンベースの中心との位置関係を模式的に示す図である。
【
図6B】当接部材から基板に与えられる押動力を模式的に示す図である。
【
図7】第1実施形態におけるベース中心から当接面までの距離の変化に対する負荷トルクの変動を示すグラフである。
【
図8】角度に応じた押動力のY方向成分および最大偏心量の変化を示すグラフである。
【
図9A】第1角度および第2角度をそれぞれ30゜に設定したときのセンタリング特性を示す図である。
【
図9B】第1角度および第2角度をそれぞれ45゜に設定したときのセンタリング特性を示す図である。
【
図9C】第1角度および第2角度をそれぞれ60゜に設定したときのセンタリング特性を示す図である。
【
図10】本発明にかかるセンタリング装置の第3実施形態で採用された当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。
【
図11】本発明にかかるセンタリング装置の第4実施形態の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。これは基板処理システム100の外観を示すものではなく、基板処理システム100の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理システム100は、例えばクリーンルーム内に設置され、一方主面のみに回路パターン等(以下「パターン」と称する)が形成された基板Sを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。そして、基板処理システム100に装備される処理ユニットにおいて、処理液による基板処理が実行される。本明細書では、基板の両主面のうちパターンが形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターンが形成されている面を意味する。
【0014】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0015】
図1に示すように、基板処理システム100は、基板Sに対して処理を施す基板処理エリア110を有している。この基板処理エリア110に対し、インデクサ部120が隣接して設けられている。インデクサ部120は、基板Sを収容するための容器C(複数の基板Sを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121を有している。また、インデクサ部120は、容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Sを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Sを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Sがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0016】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Sを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0017】
基板処理エリア110では、載置台112がインデクサロボット122からの基板Sを載置可能に設けられている。また、平面視において、基板処理エリア110のほぼ中央に基板搬送ロボット111が配置される。さらに、この基板搬送ロボット111を取り囲むように、複数の処理ユニット1が配置されている。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット111はランダムにアクセスして基板Sを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Sに対して所定の処理を実行する。本実施形態では、これらの処理ユニット1の一つが本発明に係る基板処理装置10に相当している。
【0018】
図2は基板処理装置の第1実施形態の構成を概略的に示す図である。
図3は基板処理装置の基板保持部およびセンタリング機構の構成を示す斜視図である。
図4はセンタリング機構で採用可能な当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。
図5はセンタリング機構の動作を模式的に示す図である。
図6Aは微小移動前後の当接部材とスピンベースの中心との位置関係を模式的に示す図である。
図6Bは当接部材から基板に与えられる押動力を模式的に示す図である。基板処理装置10は、ベベルエッチング処理を本発明の「処理」の一例として実行する装置であり、処理チャンバ内で基板Sの上面の周縁部に処理液を供給する。この目的のために、基板処理装置10は、基板保持部2、本発明に係るセンタリング装置の主要構成であるセンタリング機構3、処理液供給機構4を備えている。これらの動作は装置全体を制御する制御部9により制御される。
【0019】
基板保持部2は、基板Sより小さい円板状の部材であるスピンベース21を備えている。スピンベース21は、その下面中央部から下向きに延びる回転支軸22により、上面211が水平となるように支持されている。回転支軸22は回転駆動部23により回転自在に支持されている。回転駆動部23は回転モータ231を内蔵しており、制御部9からの制御指令に応じて回転モータ231が回転する。この回転駆動力を受けて、スピンベース21がスピンベース21の中心21Cを通過して鉛直方向に延びる鉛直軸AX(1点鎖線)回りに回転する。
図2においては上下方向が鉛直方向である。また、
図2の紙面に対して垂直な面が水平面である。なお、
図2以降の図面における方向関係を明確にするため、Z軸を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。
【0020】
スピンベース21の上面211は基板Sを支持可能な広さを有しており、スピンベース21の上面211への基板Sの載置が可能となっている。この上面211には、図示を省略するが、複数の吸着孔や吸着溝などが設けられている。これら吸着孔などは、吸引配管241を介して吸引ポンプ24と接続されている。この吸引ポンプ24は、本発明の「吸引部」の一例として機能するものである。この吸引ポンプ24が制御部9からの制御指令に応じて作動すると、吸引ポンプ24からスピンベース21に吸引力が与えられる。その結果、スピンベース21の上面211と基板Sの下面との間から空気が排気され、基板Sがスピンベース21に吸着保持される。このように吸着保持された基板Sは、スピンベース21の回転と一緒に鉛直軸AXまわりに回転される。したがって、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cと一致していない、つまり基板Sが偏心している場合、ベベルエッチング処理の品質低下を招く。
【0021】
そこで、本実施形態では、センタリング機構3が設けられている。センタリング機構3は、吸引ポンプ24による吸引を停止している間(つまりスピンベース21の上面211上で基板Sが水平移動可能となっている間)に、センタリング処理を実行する。このセンタリング処理により上記偏心が解消され、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cと一致する。なお、センタリング機構3の詳しい構成および動作については、後で説明する。
【0022】
センタリング処理を受けた基板Sに対してベベルエッチング処理を施すために、処理液供給機構4が設けられている。処理液供給機構4は、処理液ノズル41と、処理液ノズル41を移動させるノズル移動部42と、処理液ノズル41に処理液を供給する処理液供給部43とを有している。ノズル移動部42は、処理液ノズル41を
図2中の実線で示すように基板Sの上方から側方へ退避した退避位置と、同図の点線で示すように基板Sの周縁部上方の処理位置との間を移動させる。
【0023】
処理液ノズル41は処理液供給部43に接続されている。そして、処理位置に位置決めされた処理液ノズル41に対して処理液供給部43から適宜の処理液が送給されると、処理液ノズル41から回転している基板Sの周縁部に処理液が吐出される。これにより、基板Sの周縁部全体に対し、処理液によるベベルエッチング処理が実行される。
【0024】
なお、
図2への図示を省略しているが、スプラッシュガード部が基板保持部2を側方から取り囲むように設けられている。スプラッシュガード部は、ベベルエッチング処理中に、基板Sから振り切られた処理液の液滴を捕集し、同液滴が装置周辺に飛散するのを効果的に防止する。
【0025】
次に、
図2ないし
図5、
図6Aおよび
図6Bを参照しつつセンタリング機構3の構成について説明する。センタリング機構3は、スピンベース21の上面211に載置された基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致するように基板Sをスピンベース21の上面211上で水平移動させて位置決めする機能を有している。センタリング機構3は、
図3に示すように、X方向において、スピンベース21の中心21Cに対してX2方向(同図の右手方向)側に配置された当接部材31と、X1方向(同図の左手方向)側に配置された当接部材32、33とを有している。また、センタリング機構3は、当接部材31~33を水平方向に移動させるための移動機構34を有している。
【0026】
移動機構34は、当接部材31を移動させるためのシングル移動部35と、当接部材32、33を一括して移動させるためのマルチ移動部36と、を有している。スピンベース21の中心21Cに対し、シングル移動部35がX2方向側に配置される一方、マルチ移動部36がX1方向側に配置されている。
【0027】
シングル移動部35は、固定ベース351と、回転モータ352と、動力伝達部353と、スライダー354とを有している。固定ベース351に対して回転モータ352が取り付けられるとともに、固定ベース351上に動力伝達部353およびスライダー354がこの順序で積層されている。回転モータ352は、当接部材31をX方向に移動させるための駆動源である。制御部9からの制御指令に応じて回転モータ352が作動すると、回転軸(図示省略)が回転する。この回転軸は固定ベース351の上部から動力伝達部353に延びており、回転モータ352で発生した回転駆動力が動力伝達部353に伝達される。動力伝達部353は、例えばラックアンドピニオン構造などにより、回転駆動力に応じた回転運動をX方向の直線運動に変換し、スライダー354に伝達する。これにより、スライダー354は回転量に応じた距離だけX方向に往復移動する。その結果、スライダー354の上部に取り付けられた当接部材31がスライダー354の移動に伴ってX方向に移動される。
【0028】
マルチ移動部36は、スライダー364の構造が一部相違している点を除き、基本的にシングル移動部35と同様に構成されている。すなわち、マルチ移動部36は、固定ベース361に取り付けられた回転モータ362で発生した回転駆動力を動力伝達部363によってスライダー364に与え、スライダー364をX方向に移動させる。スライダー364の上部は、X2方向に延びる2本のアーム364a、364bがY方向に互いに離間しており、鉛直上方からの平面視で略C字形状を呈している。そして、アーム364a、364bのX2方向側の端部に対し、当接部材32、33がそれぞれ取り付けられている。したがって、制御部9からの制御指令に応じて回転モータ362が作動すると、シングル移動部35と同様に回転モータ362の回転量に応じた距離だけスライダー364がX方向に往復移動する。その結果、スライダー364に取り付けられた当接部材32、33がスライダー364の移動に伴ってX方向に移動される。
【0029】
当接部材31~33は、それぞれ基板Sの端面Seに当接可能な当接面311~331を有している。そして、これらの当接面311~331を基板Sの端面Seに向けた姿勢で、当接部材31~33は、XY平面(水平面)内において基板保持部2を囲むように配置されている。当接面311~331は平面形状を有しており、それらの面法線は鉛直軸AXを向いている。例えば
図4の(a)欄に示すように、当接面321では、基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する直線領域322が当接可能領域として機能しており、その長さLは、ノッチNTにより基板Sの円周が切り取られる弧の長さLnよりも長くなっている。したがって、センタリング時には、当接部材32が基板Sの端面Seに向かって移動されると、直線領域322において基板Sの端面Seと1点または2点で当接する。つまり、同図に示すように、ノッチNTが当接面321と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、直線領域322上の2つの当接点CP1、CP2が基板Sの端面Seと当接する。一方、それ以外においては、直線領域322上の1つの当接点が基板Sの端面Seと当接する。このことは、当接面311、331についても同様である。なお、当接部材31~33を上記のように構成した理由については、後で
図4を参照しつつ詳述する。
【0030】
シングル移動部35によって当接部材31がX1方向に移動されると、当接部材31の当接面311がスピンベース21の中心21Cに向って進み、基板Sの端面Seに当接する。このように本実施形態では、基板Sに当接するための当接部材31の移動方向D1はX1方向であり、これが本発明の「第1水平方向」に相当している。そして、当接後において当接部材31がさらにD1方向に移動することで、基板SをX1方向に押圧しながらスピンベース21の上面211でX1方向に水平移動させる。このように本実施形態では、発明内容の理解を助けるために、
図3、
図5、
図6Aおよび
図6Bにおいてスピンベース21の中心21CからX1方向に延設させた仮想線VLが追加記載されている。これが本発明の「仮想線」に相当している。以下、仮想線VLを適宜利用しながら、センタリング機構3の構成説明を続ける。
【0031】
マルチ移動部36による当接部材32、33の移動態様は、当接部材31のそれと一部相違している。というのも、水平面内において、当接部材32、33は仮想線VLに対して線対称に配置されており、その配置状態のままX方向に移動されるからである。より詳しくは、当接部材32は、
図5の(a)欄に示すように、仮想線VLからY2方向側に所定距離W(ただし、基板Sの半径rsよりも短い)だけ外れて配置されている。一方、当接部材33は、仮想線VLに対して当接部材32の反対側、つまりY1方向側に当接部材32と同じ距離Wだけ外れて配置されている。したがって、マルチ移動部36によって当接部材32、33がX2方向に移動されると、当接部材32の当接面321が仮想線VLよりもY2方向側の基板端面に当接するとともに、当接部材33の当接面331が仮想線VLよりもY1方向側の基板端面に当接する。このように、本実施形態では、基板Sに当接するための当接部材32の移動方向D2はX2方向であり、これが本発明の「第2水平方向」に相当している。また、基板Sに当接するための当接部材33の移動方向D3もX2方向であり、これが本発明の「第3水平方向」に相当している。したがって、スピンベース21の中心21Cから各当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接面311、321、331を移動させるためには、単位時間当たりの移動量を当接部材31と当接部材32、33とで相違させる必要がある。その点について
図5および
図6Aを参照しつつ詳述するとともに、上記移動態様を利用したセンタリング処理について説明する。
【0032】
スピンベース21の上面211に基板Sを載置するためには、少なくとも基板Sの外径公差の最大値を考慮して当接面311、321、331が基準位置に位置決めされるのが望ましい。例えば直径300mmの基板Sでは、外径公差が0.2mmである。したがって、当接面311、321、331がスピンベース21の中心21Cから150.1mmあるいはそれ以上の距離だけ離れている必要がある。この距離を本実施形態では「基準距離r0」と称し、
図5の(a)欄に示すように、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径が基準距離r0の円(1点鎖線)を基準円とする。
【0033】
次に、当該基準円に当接面311、321、331が位置するように当接部材31~33を位置決めした後で、当接面311、321、331を基板Sに向けて移動させる場合について検討する。この場合、基準円に当接面311を位置させるための当接部材31の位置が本発明の「第1基準位置」に相当し、基準円に当接面321を位置させるための当接部材32の位置が本発明の「第2基準位置」に相当し、基準円に当接面331を位置させるための当接部材33の位置が本発明の「第3基準位置」に相当する。
【0034】
これらのうち第2基準位置および第3基準位置は、
図5(a)に示すように、水平面内において、スピンベース21の中心21Cに対して当接部材31の反対側(同図の左手側)において仮想線VLに対して互いに線対称に設定されている。しかも、第2基準位置および第3基準位置は、それぞれ仮想線VLに対して第1角度θ1および第2角度θ2だけ傾くとともにスピンベース21の中心21Cから基準距離r0だけ離れた位置に設定されている。そして、第1角度θ1および第2角度θ2は、40゜以上60゜以下に設定されている。その理由については、後で詳述する。
【0035】
ここで、当接部材31~33がそれぞれ第1基準位置、第2基準位置および第3基準位置に位置した状態から当接部材31を基板Sに向けて第1移動量Δd1だけD1方向(X1方向)に微小移動された場合について検討する。これに対応して当接部材32、33を同じ距離だけD2方向(X2方向)に微小移動させると、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離は不揃いとなる。したがって、単位時間当たりの移動量を統一したまま当接部材31~33の微小移動を繰り返すと、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致することはない。
【0036】
これに対して、
図5の(b)欄および
図6Aに示すように、当接部材31を第1移動量Δd1だけD1方向に微小移動させるのに対応して、当接部材32を第2移動量Δd2だけD2方向に微小移動させ、当接部材33を第3移動量Δd3(=Δd2)だけD3方向に微小移動させることで、スピンベース21の中心21Cから各当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接面311、321、331を移動させることができる。
【0037】
図6Aは、微小移動前後の当接部材32とスピンベース21の中心21Cとの位置関係を模式的に示す図である。
図6Aは、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr1の円と当接部材32との位置関係、およびスピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr2の円と当接部材32との位置関係を示す。
図6Aは、当接部材32を第2移動量Δd2だけD2方向に微小移動させる前の当接部材32を実線で示し、微小移動させた後の当接部材32を二点鎖線で示す。
図6Aは、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr1の円と当接部材32との接点324と、スピンベース21の中心21Cを中心とする半径がr2の円と当接部材32との接点325を示す。
【0038】
図6Aに示すように、接点324と、接点325とは、当接部材32上での位置が異なる。一方、スピンベース21の中心21Cと接点324とを結ぶ直線と、スピンベース21の中心21Cと接点325とを結ぶ直線とは重なる。さらに、スピンベース21の中心21Cと接点324とを結ぶ直線と仮想線VLとのなす角度と、スピンベース21の中心21Cと接点325とを結ぶ直線と仮想線VLとのなす角度とは、同じである。
【0039】
このため、当接部材32を微小移動させる距離Δd2(本発明の「第2移動量」に相当)および当接部材33を微小移動させる距離Δd3(本発明の「第3移動量」に相当)を以下のように、
Δd2=Δd3=(r1-r2)/cosθ=Δd1/cosθ
r1=r0
r2=r1-Δd1
ただし、
r1:微小移動前の中心21Cから当接面321までの距離、
θ:スピンベース21の中心21Cと接点324及び接点325とを結ぶ直線と仮想線VLとのなす角度、
r2:微小移動後の中心21Cから当接面321までの距離、
W:仮想線VLから当接部材32の離間距離、
設定することができる。この場合、微小移動後においても、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離は一致している。このような微小移動を繰り返すことで、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接部材31~33が基板Sに近づいていく。すると、例えば
図5に示すような偏心が生じている場合、上記微小移動の繰り返し中に、最初に当接部材31が基板Sに当接し、基板SをD1方向に移動させる(
図5の(c)欄参照)。それに続いて、当接部材32が当接部材31で押動されている基板Sに当接して水平移動させる。そして、
図5の(d)欄に示すように、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離が基板Sの半径となると、最後の当接部材33も基板Sに当接する。こうして当接部材31~33により基板Sが挟み込まれて基板Sの移動が停止されるとともに、基板Sの中心SCがスピンベース21の中心21Cに一致する。このようにして、基板Sのセンタリング処理を実行可能となっている。
【0040】
上記したセンタリング機構3を有する本実施形態では、制御部9が基板処理装置10の装置各部を制御して上記センタリング処理およびそれに続くベベルエッチング処理を実行する。この制御部9には、CPU(=CentralProcessingUnit)やRAM(=RandomAccessMemory)等を有するコンピューターにより構成される演算処理部91と、ハードディスクドライブなどの記憶部92と、モータ制御部93とが設けられている。
【0041】
演算処理部91は、予め記憶部92に記憶されているセンタリングプログラムやベベルエッチングプログラムを適宜読み出し、RAM(図示省略)に展開し、
図5に示すセンタリング処理およびベベルエッチング処理を行う。特に、センタリング処理を行う際に、演算処理部91は第1移動量Δd1ないし第3移動量Δd3を算出するとともにこれらの移動量Δd1~Δd3に基づきモータ制御部93を介して移動機構34の回転モータ352、362を制御する。また、演算処理部91は、回転モータ352に与えられるモータ電流値からシングル移動部35での負荷トルクを算出するとともに、回転モータ362に与えられるモータ電流値からマルチ移動部36での負荷トルクを算出する。ここで、微小移動を繰り返している間にスピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離(ベース中心から当接面までの距離)が変化するのに伴って、負荷トルクは例えば
図7に示すように変動する。同図に示すように、上記距離が基板Sの半径rsと一致する、つまり当接部材31~33が基板Sを挟み込んだ時点で、シングル移動部35およびマルチ移動部36において、ほぼ同時に負荷トルクが急激に増大する。そこで、演算処理部91は、負荷トルクがしきい値を超えた時点でセンタリング処理が完了したとして判断し、当接部材31~33の移動を停止させる。なお、本実施形態では、全モータ352、362について負荷トルクの変動を監視しているが、一方のモータのみを監視することで当接部材31~33の移動停止タイミングを特定してもよい。また、負荷トルクをモータ電流値以外に基づいて算出してもよいことは言うまでもない。これらの点は、当接部材31~33をそれぞれ専用のモータで移動させる場合も同様である。さらに、単一のモータにより当接部材31~33を移動させる場合には、当該モータの負荷トルクやモータ電流値に基づいて算出してもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態では、当接部材31~33の微小移動の繰り返しにより、スピンベース21の中心21Cから当接面311、321、331までの距離を同一に保ちながら当接部材31~33を基板Sに徐々に近接させている。そして、これら3つの当接部材31~33で基板Sを挟み込むことで基板Sの中心SCをスピンベース21の中心21Cに一致させている。このように当接部材31~33の微小移動の繰り返し動作のみによりセンタリング処理を行っており、優れたスループットでセンタリング処理をおこなうことができる(作用効果A)。
【0043】
また、負荷トルク変動に基づいてセンタリング処理の完了を確認するとともに、直ちに当接部材31~33の移動を停止させている。このため、基板Sにダメージを与えることなく、センタリング処理を適切なタイミングで終了させることができる(作用効果B)。この点については、後で説明する実施形態においても同様である。
【0044】
また、本実施形態では、第1角度θ1および第2角度θ2を、それぞれ40゜以上60゜以下の適合範囲に設定している。この理由は以下の通りである。
【0045】
また、本実施形態では、第1角度θ1および第2角度θ2をそれぞれ上記適合範囲内で設定している。この理由は以下の通りである。当接部材32および当接部材33による基板Sの微小移動の際に、基板Sの進行方向Xと、進行方向Xと直交する水平方向Yとにおいて基板Sの位置精度を高めるためには、スピンベース21上で基板Sが移動し易いように構成するのが望ましい。その一環として、例えばスピンベース21と基板Sとの間に窒素ガスを介在させてスピンベース21と基板Sとの間の摩擦力を低減させることが考えられる。また、本実施形態では、上記摩擦力の低減を図るために、スピンベース21の構成材料として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を採用している。これら以外に、基板Sの位置精度に直接的に関連する要素として、上記第1角度θ1および第2角度θ2が存在する。そこで、本願発明者は、いくつかの実験を行い、基板Sの位置精度を高めるためには、第1角度θ1および第2角度θ2を、それぞれ40゜以上60゜以下の適合範囲内に設定するのが好適であることを見出した。以下、適合範囲について、
図6B、
図8、
図9A、
図9Bおよび
図9Cを参照しつつ説明する。
【0046】
マルチ移動部36により当接部材32、33を力Fで移動させるとき、
図6Bに示すように、一方の当接部材32が基板SをX2方向に押動する押動力は(F/2)である。仮想線VLに対して角度θだけ傾いて配置された当接部材32は、上記押動力を受け、X方向成分TxおよびY方向成分Tyの押動力を基板Sに与える。このうち押動力のY方向成分Tyは、
Ty=(F/2)*tanθ
となる。つまり、
図8(a)に示すように、角度θが増大するにしたがって押動力のY方向成分Tyは増大し、スピンベース21と基板Sとの間の摩擦力に打ち勝って基板SをY方向に移動し易くなる。逆に、角度θが40゜を下回ると、所望通りに基板SをY方向に移動させることが困難となり、後で説明する実験結果で示すように、センタリング処理を行ったとしても基板Sの偏心量を所望範囲、例えば10μm(
図8(b)の1点鎖線)以下に抑えるのが難しい。したがって、当接部材32、33については、それぞれ第1角度θ1および第2角度θ2が40゜以上となるように、配置するのが望ましく、基板Sと当接部材32との接点をA、スピンベース21の中心21CをB、基板Sと当接部材33との接点をCとする、∠ABCを80゜以上に設定するのが望ましい。
【0047】
一方、第1角度θ1および第2角度θ2を大きくすることは、
図5から明らかなように、仮想線VLから当接部材32、33の離間距離Wを長く設定することを意味する。この離間距離Wの増大はマルチ移動部36の大型化を招き、ひいてはセンタリング装置の大型化を引き起こす。装置設計の観点からすると、角度θは60゜以下に抑えることが望ましく、∠ABCを120゜以下に設定するのが望ましい。
【0048】
そこで、第1実施形態において、∠ABCをそれぞれ60゜(θ1=θ2=30゜)、90゜(θ1=θ2=45゜)、120゜(θ1=θ2=60゜)に設定しながら、センタリング前後の偏心量を実測した。より具体的には、スピンベース21上に基板Sを載置してセンタリングを行う処理を繰り返す毎にセンタリング前後で偏心量を計測した。そして、∠ABC=60゜について、センタリング処理毎にセンタリング前の偏心量とセンタリング後の偏心量とを対応付けてプロットしたものが
図9Aであり、同図からセンタリング後の最大偏心量が約21μmであることがわかる。また、∠ABC=60゜の場合と同様にして、∠ABC=90゜、∠ABC=120゜について取得したものが、それぞれ
図9Bおよび
図9Cであり、これらの図からセンタリング後の最大偏心量が約5μmであることがわかる。さらに、当接部材32、33の配置角度θに対する最大偏心量をプロットしたものが
図8(b)である。同図からわかるように、センタリング処理により偏心量を所望範囲、例えば10μm以下に抑えるためには、第1角度θ1および第2角度θ2をそれぞれ40゜以上に設定するのが好適である。
【0049】
このような解析に基づき、第1実施形態は第1角度θ1および第2角度θ2を40゜以上60゜以下の適合範囲に設定している。このため、装置の大型化などを招くことなく、優れたスループットで高精度なセンタリング処理を行うことができる(作用効果C)。
【0050】
さらに、
図4の(a)欄に示すように、当接部材31~33が、XY平面と交差して形成される直線領域312、322、332を有しているため、さらに別の作用効果が得られる。基板Sの端面Seを水平方向から押して移動させる技術としては、半円盤形状に仕上げられた先端部(
図4の(b)欄参照)や先鋭形状に仕上げられた先端部を有する当接部材、あるいはローラ形状の当接部材が一般的である。したがって、これらの形状を有する当接部材を用いることで、上記した作用効果A、作用効果Bおよび作用効果Cが得られる。
【0051】
しかしながら、例えば
図4の(b)欄に示す第2実施形態では、当接部材39の先端部393が半円盤形状を有している。この当接部材39では、基板Sの端面Seと対向する当接面391は基板Sに向かって凸形状に仕上げられている。したがって、当接面391では、基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する曲線領域392は、当接部材39側に曲率中心が位置する曲線形状となる。そのため、ノッチNTが当接面391と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、先端部393の一部がノッチNTに入り込んだ状態で曲線領域392上の2つの当接点CP1、CP2で当接する。その結果、センタリング時において、当接面391が基板Sの端面Seと当接して位置決めする位置P0よりも偏心ズレ量Lbだけ基板S側に進んだ位置P1まで移動する。その結果、当接部材39の押し当て位置が正確なセンタリング処理を行うための位置からずれる。例えば
図3に示すセンタリング機構3において、当接部材31~33の全てを当接部材39に置き換え、センタリング処理を行うと、次の実験結果が得られた。ここでは、スピンベース21に載置された基板(半径150mmの半導体ウェハ)Sを鉛直軸AXまわりに適当な回転角(例えば32゜、180゜、328゜)だけ回転させ、ノッチNTを当接面391に対向させた状態でセンタリング処理を行うと、押し当て位置のズレ量、つまり偏心ズレ量は最大240μmにも達した。
【0052】
これに対し、本実施形態では、当接部材31~33の当接面311~331は平面形状を有している。このため、
図4の(a)欄に示すように、当接面311~331において基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する領域(以下「当接可能領域」と称する)はそれぞれ直線形状である。しかも、これらの直線領域312、321、332はいずれも弧の長さLnよりも長い。したがって、同図に示すように、ノッチNTが当接面321と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、直線領域322上の2つの当接点CP1、CP2がノッチNTのショルダ部位で係止され、当接部材32の一部がノッチNTに入り込むことを効果的に阻止することができる。また、当接面321は基板Sの端面Seと当接して位置決めする位置P0よりも偏心ズレ量Laだけ基板S側に進んだ位置P2まで移動するものの、偏心ズレ量Laは比較例における偏心ズレ量Lbよりも大幅に低減される。
【0053】
上記センタリング機構3および制御部9の組み合わせが本発明にかかるセンタリング装置の第1実施形態に相当するが、センタリング機構3における当接面311、321、331の構成はこれに限定されるものではなく、例えば
図10に示すように、XY平面と交差する当接可能領域が曲線となるように、当接面311、321、331を仕上げてもよい(第3実施形態)。
【0054】
図10は本発明にかかるセンタリング装置の第3実施形態で採用された当接部材の構成および基板のノッチとの関係を模式的に示す図である。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、当接面311、321、331が基板Sの端面Seに沿って湾曲形状を有していることであり、その他の構成は第1実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
図10の(a)欄に示すように、当接面321では、基板保持部2の上面に載置される基板Sを含む仮想の水平面と交差する曲線領域323が当接可能領域として機能する。すなわち、曲線領域323の曲率中心が基板S側に位置するとともに曲線領域323の曲率半径が基板Sの半径よりも大きくなるように、当接面321は仕上げられている。したがって、センタリング時には、当接部材32が基板Sの端面Seに向かって移動されると、曲線領域323において基板Sの端面Seと1点または2点で当接する。つまり、同図に示すように、ノッチNTが当接面321と対向する姿勢でスピンベース21の上面に載置されている場合、曲線領域323上の2つの当接点CP1、CP2がノッチNTのショルダ部位で係止され、当接部材32の一部がノッチNTに入り込むのを効果的に阻止することができる。また、当接面321は基板Sの端面Seと当接して位置決めする位置P0よりも偏心量Lcだけ基板S側に進んだ位置P3まで移動するものの、偏心量Lcは第1実施形態における偏心ズレ量Laよりも低減される。この点については、当接部材31の当接面311および当接部材33の当接面331についても同様である。
【0056】
ここで、上記曲率半径を多段階に変更しながら基板(半径150mmの半導体ウェハ)Sに設けられたノッチNT(角度1.119゜)による偏心量を求めると、次のような結果が得られた。つまり、曲率半径が基板Sの半径に近づくにしたがって、偏心量Lは小さくなる。そして、曲率半径が基板Sの半径と一致する場合には、理論的にはノッチNTの影響を受けない。ただし、基板Sの公差を考慮すると、曲率半径を基板Sの半径と一致させることは実際に使用できない。したがって、第3実施形態では、曲線領域323の曲率半径が基板Sの半径よりも大きくなるように、当接面311、321、331が仕上げられている。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、負荷トルク変動に基づき当接部材31~33による基板Sの挟み込み、つまりセンタリング処理の完了を検出しているが、その他の方法により上記検出を行ってもよい。例えば、シングル移動部35やマルチ移動部36にロードセルや歪ゲージなどのセンサを設け、当接部材31~33で基板Sを挟み込んだときに応力または歪みをセンサが検出して検出信号を出力するように構成してもよい。この場合、制御部9がセンサからの検出信号に基づいて当接部材31~33による基板Sの挟込を確認する。
【0058】
また、上記実施形態では、マルチ移動部36により2つの当接部材32、33をそれぞれD2方向(X2方向)およびD3方向(X2方向)に移動させているが、
図11に示すように、マルチ移動部36に代え、シングル移動部35と同様に構成された当接部材32用シングル移動部37および当接部材33用シングル移動部38を設けてもよい(第4実施形態)。
【0059】
また、このように当接部材32用シングル移動部37および当接部材33用シングル移動部38を設けた場合、D2方向およびD3方向の両方をX2方向に統一する必然性はなく、例えば
図11に示すように、D2方向およびD3方向の少なくとも一方をX2方向から変更してもよい。また、同図に示すように、第1角度θ1が40゜以上60゜以下であるという条件と、第2角度θ2が40゜以上60゜以下であるという条件とがともに満たされる限り、第1角度θ1および第2角度θ2の値は任意である。
【0060】
また、上記実施形態では、ベベルエッチング処理を行う基板処理装置10に装備されたセンタリング装置に対して本発明を適用しているが、本発明に係るセンタリング装置は、円板状の基板を回転させながら処理する基板処理装置に装備されるセンタリング技術全般に適用することができる。また、本発明に係るセンタリング装置を単独で用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明は、基板支持部の上面に載置された円板状の基板の中心を基板支持部の中心に一致させるセンタリング技術および当該技術を利用して基板を処理する基板処理装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
3…センタリング機構
4…処理液供給機構
9…制御部
10…基板処理装置
21…スピンベース(基板支持部)
21C…(スピンベース)の中心
23…回転駆動部
24…吸引ポンプ(吸引部)
31…第1当接部材
32…第2当接部材
33…第3当接部材
34…移動機構
211…(スピンベースの)上面
D1…移動方向(第1水平方向)
D2…移動方向(第2水平方向)
D3…移動方向(第3水平方向)
S…基板
SC…(基板の)中心
VL…仮想線
θ1…第1角度
θ2…第2角度