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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107836
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】電池製造システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240802BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240802BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240802BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20240802BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/46
H01M10/052
H01M10/0585
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011967
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】下田 茉優
(72)【発明者】
【氏名】江守 悠祐
(72)【発明者】
【氏名】猫橋 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】島田 昌典
【テーマコード(参考)】
5H021
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H021BB11
5H021BB19
5H028AA05
5H028BB05
5H028BB15
5H028BB19
5H028CC08
5H029AJ14
5H029BJ12
5H029CJ00
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029CJ30
5H029DJ04
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】各処理工程間において、搬送治具にワークを載せ替える必要がなく、また、ワークを離脱させた搬送治具を上工程へと回収できる電池製造システムを提供する。
【解決手段】電池製造システム100であって、2つの搬送治具10A,10B上に、電池用電極Wをそれぞれ配置する電極配置手段20A,20Bと、電池用電極WAにセパレータSを貼付けるセパレータ貼付手段30と、一の搬送治具10Aを反転させる反転手段40と、他の搬送治具10Bに保持された電池用電極WBの上に、一の搬送治具10Aに保持された電池用電極WAを貼合する貼合手段50と、電池用電極WPから、一の搬送治具10Aを離脱させ、一の搬送治具10Aを搬送ライン等により電極配置手段20Aに搬送する第1の回収手段60と、を備える。これにより、搬送治具にワークを載せ替える必要がなく、使用後の搬送治具を上工程へと回収できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの搬送治具上に、電解液を含む電池用電極をそれぞれ配置する電極配置手段と、
一の前記搬送治具に保持された電池用電極にセパレータを貼付けるセパレータ貼付手段と、
一の前記搬送治具を反転させる反転手段と、
他の前記搬送治具に保持された前記電池用電極の上に、一の前記搬送治具に保持された前記電池用電極を貼合する貼合手段と、
他の前記搬送治具上に貼合された前記電池用電極から、一の前記搬送治具を離脱させ、一の前記搬送治具を前記電極配置手段に搬送する第1の回収手段と、を備え、
前記第1の回収手段は、回収した一の前記搬送治具を前記電極配置手段に搬送するために、前記電極配置手段に接続される搬送ライン、又は、自動搬送手段を有することを特徴とする電池製造システム。
【請求項2】
前記搬送治具は、治具枠部と、前記治具枠部に架設された可撓性の搬送フィルムと、を有し、
前記搬送フィルムは、前記電池用電極が配置される領域に、粘着固定のための粘着層、又は、帯電固定のための絶縁体を有することを特徴とする請求項1に記載の電池製造システム。
【請求項3】
前記搬送フィルムの前記粘着層は、感温性を有することを特徴とする請求項2に記載の電池製造システム。
【請求項4】
前記貼合手段は、他の前記搬送治具上に前記貼合された前記電池用電極において、前記搬送フィルムが架設される方向に延在する一対の縁部に沿って、離間的にヒートシールすることを特徴とする請求項2に記載の電池製造システム。
【請求項5】
他の前記搬送治具が真空チャンバの一部を画定し、他の前記搬送治具上に前記貼合された前記電池用電極の全周囲を、真空下においてヒートシールして、電池セルを形成する真空シール手段を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電池製造システム。
【請求項6】
他の前記搬送治具上に形成された前記電池セルから、他の前記搬送治具を離脱させ、他の前記搬送治具を前記電極配置手段に搬送する第2の回収手段を、さらに備えることを特徴とする請求項5に記載の電池製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、搬送治具を搬送する回収手段を備える電池製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池には、高容量化及び高エネルギ密度化が要望されているため、積層される電池用電極自体の薄化が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、薄化された正極帯状シート及び負極帯状シートを、巻き重ねられた正極ロール及び負極ロールから繰り出し、搬送手段として送りローラを用い、連続的な処理工程により、正極シート及び負極シートへと裁断した後、負極シートの上にセパレータ層を介して正極シートを貼付け、電池セルを形成するものが記載されている。
【0004】
しかしながら、引用文献1では、正極シート及び負極シートの貼付け位置を補正する際に、不良品の位置ずれ情報に基づいて、送りローラの回転速度を調整しているため、貼付け位置の補正が容易でなく、さらに、歩留まりが必然的に低くなっていた。
【0005】
これに対し、例えば、特許文献2には、連続的な処理工程ではなく、電極配置工程、セパレータ貼付工程、貼合工程、及び、真空シール工程に分け、各処理工程において、正極シートや負極シートの位置合わせを行うことにより、電池セルを形成するものが記載されている。
【0006】
よって、特許文献2では、各処理工程において、正極シート及び負極シートの位置合わせは比較的容易に行うことができる一方、薄化された正極シート及び負極シートの剛性は、極めて低くなっているため、各処理工程間において、異なる搬送治具に載せ替える際に、ワークである正極シート及び負極シートの破損や、載せ替え時間に起因した生産効率の低下を引き起こすおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-133344号公報
【特許文献2】特許第6861127号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、電池製造システムの各処理工程間において、搬送治具にワークを載せ替える必要がなく、また、ワークから離脱させた搬送治具を上工程へと回収できる電池製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の電池製造システムであって、2つの搬送治具上に、電解液を含む電池用電極をそれぞれ配置する電極配置手段と、一の前記搬送治具に保持された電池用電極にセパレータを貼付けるセパレータ貼付手段と、一の前記搬送治具を反転させる反転手段と、他の前記搬送治具に保持された前記電池用電極の上に、一の前記搬送治具に保持された前記電池用電極を貼合する貼合手段と、他の前記搬送治具上に貼合された前記電池用電極から、一の前記搬送治具を離脱させ、一の前記搬送治具を前記電極配置手段に搬送する第1の回収手段と、を備え、前記第1の回収手段は、回収した一の前記搬送治具を前記電極配置手段に搬送するために、前記電極配置手段に接続される搬送ライン、又は、自動搬送手段を有するものである。
【0010】
また、上記電池製造システムであって、前記搬送治具は、治具枠部と、前記治具枠部に架設された可撓性の搬送フィルムと、を有し、前記搬送フィルムは、前記電池用電極が配置される領域に、粘着固定のための粘着層、又は、帯電固定のための絶縁体を有するものとしてもよい。
【0011】
また、上記電池製造システムであって、前記搬送フィルムの前記粘着層は、感温性を有するものとしてもよい。
【0012】
また、上記電池製造システムであって、前記貼合手段は、他の前記搬送治具上に前記貼合された前記電池用電極において、前記搬送フィルムが架設される方向に延在する一対の縁部に沿って、離間的にヒートシールするものとしてもよい。
【0013】
また、上記電池製造システムであって、他の前記搬送治具が真空チャンバの一部を画定し、他の前記搬送治具上に前記貼合された前記電池用電極の全周囲を、真空下においてヒートシールして、電池セルを形成する真空シール手段を、さらに備えるものとしてもよい。
【0014】
また、上記電池製造システムであって、他の前記搬送治具上に形成された前記電池セルから、他の前記搬送治具を離脱させ、他の前記搬送治具を前記電極配置手段に搬送する第2の回収手段を、さらに備えるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池製造システムの各処理工程間において、搬送治具にワークを載せ替える必要がなく、また、ワークから離脱させた搬送治具を上工程へと回収できる電池製造システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る電池製造システムを示す平面模式図である。
図2図1に示される電池製造システムに用いる搬送治具の斜視図である。
図3図1に示される電極配置工程から反転工程までを説明する断面模式図であり、(a)電極配置工程、(b)セパレータ貼付工程、(c)反転工程、をそれぞれ表す。
図4図1に示される貼合工程から第1の回収工程までを説明する断面模式図であり、(a)貼合準備工程、(b)貼合工程、(c)第1の回収工程、をそれぞれ表す。
図5図1に示される真空シール工程を説明する断面模式図であり、(a)真空シール準備工程、(b)真空引き工程、(c)加熱シール工程、(d)真空シール後工程、をそれぞれ表す。
図6図1に示される第2の回収工程を説明する断面模式図であり、(a)及び(b)吸着移動工程、(c)第2の回収工程、をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明を具体的に実現した形態を例示するものである。よって、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって、以下に説明される実施形態の構成は適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、各用語を以下のように定義する。「フィルム」とは、所定未満の厚さを有するものを示すのではなく、様々な厚さを有するものを示す。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る電池製造システム100を示す平面模式図であり、図2は、図1に示される電池製造システムに用いる搬送治具10(10A,10B)の斜視図である。ここで、X軸方向は、搬送治具10(10A,10B)の一対の長辺部13が延在する方向を示すものであり、Y軸方向は、搬送治具10(10A,10B)の一対の短辺部12が延在する方向を示すものである。また、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と直交し、かつ、ワークW(WA,WB)に対して各処理工程が実施される際に、ワークW(WA,WB)が面する方向を示すものである。
【0020】
<電池製造システムについて>
電池製造システム100は、ワークW(WA,WB)である電池用電極を積層し、電池セルWCを形成するものである。この電池製造システム100は、搬送治具10(10A,10B)と、電極配置ユニット(電極配置手段)20A,20Bと、セパレータ貼付ユニット(セパレータ貼付手段)30と、反転ユニット(反転手段)40と、貼合ユニット(貼合手段)50、第1の回収ユニット(第1の回収手段)60と、真空シールユニット(真空シール手段)70と、第2の回収ユニット(第2の回収手段)80と、を備える。以下、それらを順に説明する。なお、電池製造システム100は、各ユニットの駆動などを制御する制御手段(不図示)をさらに備える。また、図1中の点Aから点Gは、各処理ユニットの位置を模式的に示すものであり、それぞれ、電極配置位置、セパレータ貼付位置、反転位置、電極配置位置、貼合・第1の回収位置、真空シール位置、第2の回収位置に対応する。
【0021】
<搬送治具について>
図2に示すように、搬送治具10(10A,10B)は、枠状の治具枠部11と、治具枠部11に架設された可撓性の搬送フィルム14と、を有する。詳細は後述するが、搬送治具10は、第1の搬送治具(一の搬送治具)10A、及び、第2の搬送治具(他の搬送治具)10Bからなり、同一構成とし、共通化することにより、コストを削減させることができる。
【0022】
治具枠部11は、Z軸方向からみて、矩形の枠形状を有し、一対の短辺部12と、一対の長辺部13と、を備える。
【0023】
搬送フィルム14は、Z軸方向からみて、帯形状を有し、長手方向(X軸方向)の両端部が、一対の短辺部12に固定されることにより、一対の短辺部12の間に架設される。また、搬送フィルム14は、少なくともワークW(WA,WB)の載置領域に、ワークWを粘着固定するための粘着層15を有する。これにより、搬送フィルム14に対するワークW(WA,WB)の脱着を簡単に行うことができる。さらに、搬送フィルム14は、短手方向(Y軸方向)の両端部が、一対の長辺部13と離間しているため、可撓性を有する搬送フィルム14は、Z軸方向に比較的容易に撓むことができる。これにより、詳細は後述するが、第1の回収ユニット60、及び、第2の回収ユニット80において、搬送フィルム14の撓みを利用し、搬送フィルム14の粘着層15からワークW(WA,WB)をスムーズに離脱させることができる。
【0024】
本実施形態の搬送フィルム14は、少なくともワークW(WA,WB)の載置領域に、粘着層15を有するものであるが、これに限らず、例えば、ワークW(WA,WB)の載置領域を含めた全面に粘着層15を有してもよい。また、本実施形態の搬送フィルム14は、粘着層15からワークWをスムーズに離脱させるために、剥離が容易な材質からなる粘着層15を有してもよい。さらに、本実施形態の搬送フィルム14は、ワークWを粘着層15からスムーズに脱着させるために、感温性を有する粘着層15を有し、脱着の際に温度制御を行ってもよい。ここで、粘着層15が感温性を有する場合には、粘着層15がクールオフ又はウォームオフの機能を有してもよい。例えば、粘着層15の感温性がクールオフの場合には、電極配置ユニット20A,20B、セパレータ貼付ユニット30、反転ユニット40、貼合ユニット50、及び、真空シールユニット70において、雰囲気温度を高めに調温、熱ロールによる圧縮(例えば、60~80℃)、加熱ユニットによる加熱(例えば、110~140℃)などにより、粘着層15の粘着力を高く設定してもよい。一方、第1の回収ユニット60、及び、第2の回収ユニット80において、粘着層15の雰囲気温度を低めに調温することにより、粘着層15の粘着力を低く設定してもよい。
【0025】
本実施形態の搬送フィルム14は、繰り返し使用することができるように、耐熱性を有してもよい。加えて、本実施形態の搬送フィルム14は、少なくともワークW(WA,WB)の載置領域に、粘着固定のための粘着層15を有するものであるが、これに限らず、例えば、粘着層15に代えて、帯電固定のための絶縁体、例えば、シリコンゴム等のシリコン系材料を採用してもよい。ここで、搬送フィルム14に絶縁体を採用する場合には、電極配置ユニット20A,20Bにおいて、イオナイザにより、絶縁体に荷電粒子(例えば、陰イオンや陽イオン)を供給し、絶縁体とワークW(WA,WB)との静電吸着力を増加させるとともに、第1の回収ユニット60、及び、第2の回収ユニット80において、イオナイザにより、絶縁体に電荷中和に必要な電荷を供給し、絶縁体とワークW(WA,WB)との静電吸着力を低下させてもよい。これにより、搬送フィルム14に対するワークW(WA,WB)の脱着を簡単に行うことができる。
【0026】
<電極配置工程について>
電極配置ユニット20A,20Bは、電極配置位置(図1中の点A及び点D参照)にあり、図3(a)に示すように、搬送治具10(10A,10B)の搬送フィルム14上に、ワークWである電池用電極(正極WA,負極WB)を形成する。なお、図3(a)は、説明を簡略化するために、電池用電極(正極WA,負極WB)が形成された後の搬送治具10(10A,10B)のみを示す。
【0027】
具体的に、電極配置ユニット20A,20Bは、真空吸着やメカチャクなどにより、電極配置ステージ(不図示)上に、搬送治具10(10A,10B)を固定させる。その後、電極配置ユニット20A,20Bは、図2に示される搬送治具10(10A,10B)の搬送フィルム14上に、矩形形状の集電体c及び矩形の枠形状の枠体fを、熱ロール(不図示)により、順に貼り付ける。この際、Z軸方向からみて、集電体c及び枠体fの外縁が一致するように配置される。
【0028】
次に、この集電体c及び枠体fに画定される凹部に、電極活物質を敷き詰め、敷き詰めた電極活物質を、熱ロール(不図示)により、圧縮することにより、電極活物質層eを形成する。そして、圧縮後の電極活物質層eに、電解液を塗布することにより、搬送フィルム14上に、ワークWである電池用電極(正極WA,負極WB)を形成する。
【0029】
電池製造システム100は、第1の搬送治具(一の搬送治具)10Aの搬送フィルム14上に、正極WAを形成する電極配置ユニット20Aと、第2の搬送治具(他の搬送治具)10Bの搬送フィルム14上に、負極WBを形成する電極配置ユニット20Bと、をそれぞれ備える。正極WAが形成された第1の搬送治具10Aは、セパレータ貼付位置(図1中の点B参照)へと搬送される。また、負極WBが形成された第2の搬送治具10Bは、貼合・第1の回収位置(図1中の点E参照)へと搬送される。
【0030】
<セパレータ貼付工程について>
セパレータ貼付ユニット30は、セパレータ貼付位置(図1中の点B参照)にあり、図3(b)に示すように、第1の搬送治具10Aの搬送フィルム14に形成された正極WAの電極活物質層e上に、セパレータSを載置する。なお、図3(b)は、説明を簡略化するために、正極WAの電極活物質層e上に、セパレータSを載置された後の搬送治具10(10A,10B)のみを示す。
【0031】
具体的に、セパレータ貼付ユニット30は、真空吸着やメカチャクなどにより、セパレータ貼付ステージ(不図示)上に、第1の搬送治具10Aを固定させる。その後、セパレータ貼付ユニット30は、矩形形状のセパレータSの外縁を、正極WAの枠体f上に載置する。この際、セパレータSが、電極活物質層eを完全に覆うとともに、電解液が、毛細管現象により、セパレータSと電極活物質層eとの隙間に染み込み、結果、セパレータSが電極活物質層eにぴったりと貼り付くことができる。
【0032】
<反転工程について>
反転ユニット40は、反転位置(図1中の点C参照)にあり、図3(c)に示すように、第1の搬送治具10Aを反転させる。なお、図3(c)は、説明を簡略化するために、反転された第1の搬送治具10Aのみを示す。
【0033】
具体的に、反転ユニット40は、真空吸着やメカチャクなどにより、反転ステージ(不図示)上に、第1の搬送治具10Aを固定させる。その後、反転ユニット40は、図3(c)に示すように、第1の搬送治具10AをY軸周り(矢印I方向)に反転させる。この際、セパレータSは、電解液を介して、電極活物質層eに貼り付いており、電極活物質層eからセパレータSが落下しないため、第1の搬送治具10Aに載置されている正極WAを、他の搬送治具へと載せ替える必要はない。これにより、詳細は後述するが、第1の搬送治具10Aを、電極配置ユニット20Aから貼合ユニット50まで、繰り返し使用することができ、コストを削減させるとともに、生産効率を向上させる(図1中の点A→点B→点C→点E→点A(以降、繰り返し)参照)。
【0034】
なお、本実施形態において、第1の搬送治具10Aを反転させた際に、第1の搬送治具10Aから正極WAが落下しないように、粘着層15の粘着力が設定されている。
【0035】
<貼合工程について>
貼合ユニット50は、貼合・第1の回収位置(図1中の点E参照)にあり、図4(a)及び図4(b)に示すように、正極WAと負極WBとを対向させた状態で、ヒートシールにより仮止めし、貼合させる。
【0036】
(貼合準備工程)
具体的に、貼合ユニット50は、図4(a)に示すように、真空吸着やメカチャクなどにより、アライメントステージ51上に、第2の搬送治具10Bを固定させる。そして、第2の搬送治具10Bの負極WBと、反転させた第1の搬送治具10Aの正極WAとを対向配置させた後、第1の搬送治具10Aを、Z軸方向(矢印II方向)に移動させ、セパレータSを介して、正極WA及び負極WBを当接させる。
【0037】
本実施形態において、第1の搬送治具10A及び第2の搬送治具10B同士の配置を、X軸方向及び/又はY軸方向に調整することにより、正極WA及び負極WBのそれぞれの枠体fが、Z軸方向からみて重なるように、正極WA及び負極WBの位置合わせを簡単に行うことができる。
【0038】
(貼合工程)
次に、図4(b)に示すように、第1の加熱ユニット52を、Z軸方向(矢印III方向)に移動させ、これにより、第1の搬送治具10Aの搬送フィルム14を上方より押圧する。この際、正極WA及び負極WBは、アライメントステージ51と第1の加熱ユニット52との間に挟持される。そして、第1の加熱ユニット52が、第1の搬送治具10Aの搬送フィルム14を介して、搬送フィルム14が架設される方向(X軸方向)に延在する一対の枠体fの外周縁(正極WA及び負極WBの一対の縁部)に沿って、離間的に加熱(例えば、120~140℃)する。このヒートシールの仮止めにより、枠体fを溶融させるとともに、正極WA及び負極WBの枠体f同士を離間的に溶着させて、貼合された電池用電極WPを一体的に形成する。その後、第1の加熱ユニット52を、Z軸方向(矢印IV方向)に移動させる。
【0039】
<第1の回収工程について>
第1の回収ユニット60は、貼合・第1の回収位置(図1中の点E参照)にあり、図4(c)に示すように、第1の搬送治具10Aを、第2の搬送治具10B上に貼合された電池用電極WPから離脱させた後、回収した第1の搬送治具10Aを電極配置ユニット20Aに搬送する(図1中の点E→点A参照)。なお、本実施形態においては、回収した第1の搬送治具10Aを電極配置ユニット20Aに搬送するものであるが、これに限らない。例えば、作業効率などを考慮し、回収した第1の搬送治具10A及び回収した第2の搬送治具10Bを、電極配置ユニット20A及び電極配置ユニット20Bのいずれかに搬送するものであればよい。
【0040】
具体的に、第1の回収ユニット60は、図4(c)に示すように、第1の搬送治具10Aを、Z軸方向(矢印V方向)に移動させることにより、搬送フィルム14は、U字形状に撓みながら、貼合された電池用電極WPとの接着領域を縮小させ、最終的には、貼合された電池用電極WPから第1の搬送治具10Aを離脱させることができる。この際、貼合ユニット50において、搬送フィルム14が架設される方向(X軸方向)に延在する正極WA及び負極WBの枠体fに沿って、離間的にヒートシールが行われているため、正極WAが第1の搬送治具10Aにくっ付いた状態で、負極WBから剥がれることを抑制することができる。その後、回収した第1の搬送治具10Aを、電極配置ユニット20Aに接続される搬送ライン(不図示)、又は、自動搬送手段(AGV)(不図示)により、上工程である電極配置ユニット20Aに搬送する。
【0041】
本実施形態において、第1の搬送治具10Aは、電極配置ユニット20Aから貼合ユニット50まで、ワークWである正極WAの載せ替えを行わず、また、繰り返し使用することができるため、コストを削減させるとともに、生産効率が向上する。また、本実施形態において、第1の搬送治具10Aの電極配置ユニット20Aへの搬送を、搬送ライン又は自動搬送手段により、自動化することにより、生産効率が向上する。さらに、本実施形態の第1の搬送治具10Aにおいて、治具枠部11の一対の短辺部12の高さを一対の長辺部13の高さより低く設定してもよい。これにより、回収した第1の搬送治具10A同士を重ねても、下側の第1の搬送治具10Aが有する搬送フィルム14と、上側の第1の搬送治具10Aが有する一対の短辺部12との当接を防ぐこと、つまり、重ねて保管することが可能となるため、第1の搬送治具10Aの一時保管スペースを削減することができる。
【0042】
<真空シール工程について>
真空シールユニット70は、真空シール位置(図1中の点F参照)にあり、図5(a)から図5(d)に示すように、第2の搬送治具10Bの上に、カバーフィルム72を覆いかぶせ、真空下において、第2の搬送治具10Bの上に、貼合された電池用電極WPの全周囲に沿って、第2の加熱ユニット73により、ヒートシールを行い、電池セルを形成する。
【0043】
(真空シール準備工程)
まず、真空シールユニット70は、図5(a)に示すように、カバーフィルム72を、Z軸方向に(矢印VI方向)に移動させ、第2の搬送治具10Bの上に、カバーフィルム72を覆いかぶせることにより、真空チャンバが画定される。
【0044】
本実施形態において、カバーフィルム72は、搬送フィルム14と同程度の可撓性のフィルムからなる。なお、カバーフィルム72は、繰り返し使用することができるように、耐熱性を有するフィルムであってもよい。さらに、カバーフィルム72は、貼合された電池用電極WPを覆うことができる形状を有していれば、如何なる形状であってもよい。
【0045】
(真空引き工程)
次に、真空シールユニット70は、図5(b)に示すように、第2の搬送治具10Bの搬送フィルム14とカバーフィルム72とにより画定される真空チャンバに、真空ポンプ等に繋がる排気経路(不図示)を接続し、排気経路を介して、真空チャンバ内の気体を、排気することにより、真空引きが行われる。この真空チャンバ内における真空圧PVは、例えば、-100(kpa)程度に設定されている。なお、真空チャンバ内に収容される、貼合された電池用電極WPは、貼合ユニット50において、X軸方向に延在する一対の枠体fに沿って、離間的にヒートシールが行われていることから、枠体fの非ヒートシール部分を介して、貼合された電池用電極WPの内部から気体を排気することができる。
【0046】
(加熱シール工程及び真空シール後工程)
さらに、図5(c)に示すように、第2の加熱ユニット73を、Z軸方向(矢印VII方向)に移動させ、これにより、カバーフィルム72を上方より押圧する。この第2の加熱ユニット73は、Z軸方向からみて、枠体fと略同形状を有しており、貼合された電池用電極WPは、真空ステージ71と第2の加熱ユニット73との間に挟持される。そして、第2の加熱ユニット73を加熱し(例えば、110~140℃)、カバーフィルム72を介して、貼合された電池用電極WPが有する枠体fの全周囲に沿って、連続的に加熱する。このヒートシールにより、枠体fを溶融させるとともに、貼合された電池用電極WPの枠体f同士を完全に溶着させて、真空シールされた電池セルWCを形成する。その後、排気経路を介して、真空チャンバ内を大気開放にするとともに、カバーフィルム72及び第2の加熱ユニット73を、Z軸方向に(矢印VIII方向)に移動させる。
【0047】
本実施形態において、第2の搬送治具10Bの搬送フィルム14及びカバーフィルム72により、真空チャンバを画定していることから、堅固で気密性の高い真空チャンバを別途必要としないため、電池製造システム100のコストを削減させることができる上、貼合された電池用電極WPを第2の搬送治具10Bから真空チャンバなどに載せ替える必要がない。また、本実施形態において、カバーフィルム72は、第2の加熱ユニット73により加熱されるが、カバーフィルム72は、比較的薄く、放熱性が比較的高いため、特別な冷却装置を用いずとも、十分な冷却を行うことができるため、コストの削減、及び、生産効率の向上を実現することができる。
【0048】
<第2の回収工程について>
第2の回収ユニット80は、第2の回収位置(図1中の点G参照)にあり、図6(a)から図6(c)に示すように、第2の搬送治具10Bを、電池セルWCを介して、吸着固定定盤81に吸着固定させた後、電池セルWCから離脱させた第2の搬送治具10Bを、電極配置ユニット20Bに搬送する(図1中の点G→点D参照)。この吸着固定定盤81は、下面に、電池セルWCを真空吸着させる複数の吸着ポート(不図示)を備える。なお、本実施形態においては、回収した第2の搬送治具10Bを電極配置ユニット20Bに搬送するものであるが、これに限らない。例えば、作業効率などを考慮し、回収した第1の搬送治具10A及び回収した第2の搬送治具10Bを、電極配置ユニット20A及び電極配置ユニット20Bのいずれかに搬送するものであればよい。
【0049】
(吸着移動工程)
第2の回収ユニット80は、図6(a)及び図6(b)に示すように、電池セルWCを保持する第2の搬送治具10Bを、真空シール位置(図1中の点F参照)から第2の回収位置(図1中の点G参照)に移動させる。具体的には、吸着固定定盤81を、X軸方向及びZ軸方向に(矢印IX方向)に移動させ、電池セルWCの上面に当接させる。そして、吸着固定定盤81の下面に電池セルWCを吸着固定させた後、Z軸方向及びX軸方向に(矢印X方向)に移動させる。
【0050】
(第2の回収工程)
第2の回収ユニット80は、図6(c)に示すように、第2の搬送治具10Bを、Z軸方向(矢印XI方向)に移動させることにより、搬送フィルム14は、逆U字形状に撓みながら、電池セルWCとの粘着領域を縮小させ、最終的には、電池セルWCから第2の搬送治具10Bを離脱させることができる。この際、真空シールユニット70において、貼合された電池用電極WPが有する枠体fの全周囲に沿って、連続的にヒートシールが行われているため、負極WBが第2の搬送治具10Bにくっ付いた状態で、正極WAから剥がれることを抑制することができる。その後、回収した第2の搬送治具10Bを、電極配置ユニット20Bに接続される搬送ライン(不図示)、又は、自動搬送手段(AGV)(不図示)により、上工程である電極配置ユニット20Bに搬送する。
【0051】
本実施形態において、第2の搬送治具10Bは、電極配置ユニット20Bから真空シールユニット70まで、ワークWである負極WB、貼合された電池用電極WP、及び、電池セルWCの載せ替えを行わず、また、繰り返し使用することができるため、コストを削減させるとともに、生産効率が向上する。さらに、本実施形態において第2の搬送治具10Bの電極配置ユニット20Bへの搬送を、搬送ライン又は自動搬送手段により、自動化することにより、生産効率が向上する。さらに、本実施形態の第2の搬送治具10Bにおいて、治具枠部11の一対の短辺部12の高さを一対の長辺部13の高さより低く設定してもよい。これにより、回収した第2の搬送治具10B同士を重ねても、下側の第2の搬送治具10Bが有する搬送フィルム14と、上側の第2の搬送治具10Bが有する一対の短辺部12との当接を防ぐこと、つまり、重ねて保管することが可能となるため、第2の搬送治具10Bの一時保管スペースを削減することができる。
【0052】
<実施形態のまとめ>
次に、以上説明した実施形態における符号などを援用して、本件発明を構成する発明特定事項を連記する。なお、下記の各符号などは、特許請求の範囲における構成要素を実施形態の記載を援用して説明するに過ぎず、その構成要素を具体的な部材等に限定するものではないことは言うまでもない。
【0053】
「1」 2つの搬送治具上に、電解液を含む電池用電極をそれぞれ配置する電極配置手段と、
一の前記搬送治具に保持された電池用電極にセパレータを貼付けるセパレータ貼付手段と、
一の前記搬送治具を反転させる反転手段と、
他の前記搬送治具に保持された前記電池用電極の上に、一の前記搬送治具に保持された前記電池用電極を貼合する貼合手段と、
他の前記搬送治具上に貼合された前記電池用電極から、一の前記搬送治具を離脱させ、一の前記搬送治具を前記電極配置手段に搬送する第1の回収手段と、を備え、
前記第1の回収手段は、回収した一の前記搬送治具を前記電極配置手段に搬送するために、前記電極配置手段に接続される搬送ライン、又は、自動搬送手段を有することを特徴とする電池製造システム。
【0054】
「2」 前記搬送治具は、治具枠部と、前記治具枠部に架設された可撓性の搬送フィルムと、を有し、
前記搬送フィルムは、前記電池用電極が配置される領域に、粘着固定のための粘着層、又は、帯電固定のための絶縁体を有することを特徴とする「1」に記載の電池製造システム。
【0055】
「3」 前記搬送フィルムの前記粘着層は、感温性を有することを特徴とする「2」に記載の電池製造システム。
【0056】
「4」 前記貼合手段は、他の前記搬送治具上に前記貼合された前記電池用電極において、前記搬送フィルムが架設される方向に延在する一対の縁部に沿って、離間的にヒートシールすることを特徴とする「2」に記載の電池製造システム。
【0057】
「5」 他の前記搬送治具が真空チャンバの一部を画定し、他の前記搬送治具上に前記貼合された前記電池用電極の全周囲を、真空下においてヒートシールして、電池セルを形成する真空シール手段を、さらに備えることを特徴とする「1」に記載の電池製造システム。
【0058】
「6」 他の前記搬送治具上に形成された前記電池セルから、他の前記搬送治具を離脱させ、他の前記搬送治具を前記電極配置手段に搬送する第2の回収手段を、さらに備えることを特徴とする「5」に記載の電池製造システム。
【0059】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【0060】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態および変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0061】
100 電池製造システム
10 搬送治具
10A 第1の搬送治具(一の搬送治具)
10B 第2の搬送治具(他の搬送治具)
11 治具枠部
12 短辺部
13 長辺部
14 搬送フィルム
15 粘着層
20A,20B 電極配置ユニット(電極配置手段)
30 セパレータ貼付ユニット(セパレータ貼付手段)
40 反転ユニット(反転手段)
50 貼合ユニット(貼合手段)
51 アライメントステージ
52 第1の加熱ユニット
60 第1の回収ユニット(第1の回収手段)
70 真空シールユニット(真空シール手段)
71 真空ステージ
72 カバーフィルム
73 第2の加熱ユニット
80 第2の回収ユニット(第2の回収手段)
81 吸着固定定盤

S セパレータ
W ワーク(電池用電極)
WA 正極
WB 負極
WC 電池セル
WP 貼合された電池用電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6