(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010784
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】消毒液及びこれが塗布された物品
(51)【国際特許分類】
A01N 59/08 20060101AFI20240118BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240118BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240118BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20240118BHJP
A01N 37/18 20060101ALI20240118BHJP
A01N 47/16 20060101ALI20240118BHJP
A01N 47/44 20060101ALI20240118BHJP
A01N 47/18 20060101ALI20240118BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20240118BHJP
A01N 37/24 20060101ALI20240118BHJP
A01N 43/78 20060101ALI20240118BHJP
A01N 37/46 20060101ALI20240118BHJP
A01N 47/04 20060101ALI20240118BHJP
A01N 37/32 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A01N59/08 A
A01P3/00
A01P1/00
A01N43/40 101L
A01N37/18 Z
A01N47/16 A
A01N47/44
A01N47/18 101C
A01N33/12 101
A01N37/24 101
A01N43/78 A
A01N37/46
A01N47/04 101
A01N37/32 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112282
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】522282047
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブ・プロダクツ・タシロ
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】田代 連田
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA04
4H011BA06
4H011BA07
4H011BB04
4H011BB06
4H011BB09
4H011BB10
4H011BB11
4H011BB13
4H011BB18
4H011DA13
4H011DG16
(57)【要約】
【課題】特殊環境ではなく日常生活において通常目にする、様々な塗布対象に好適な消毒液を提供すること。
【解決手段】本発明の消毒液は、病原体に対して即効性を有する安定化二酸化塩素と、病原体に対して遅効性を有する忌避物質又は抗菌物質と、前記安定化二酸化塩素と前記忌避物質又は前記抗菌物質とをなじませる界面活性剤と、を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体に対して即効性を有する安定化二酸化塩素と、
病原体に対して遅効性を有する忌避物質又は抗菌物質と、
前記安定化二酸化塩素と前記忌避物質又は前記抗菌物質とをなじませる界面活性剤と、
を備える消毒液。
【請求項2】
前記安定化二酸化塩素は、
亜塩素酸又はその化合物、過塩素酸又はその化合物である、
請求項1記載の消毒液。
【請求項3】
前記安定化二酸化塩素は、
亜塩素酸、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸アンモニウム塩、亜塩素酸バリウム、亜塩素バリウム、
過塩素酸、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸アンモニウム塩、過塩素酸バリウム、
の幾つかである、請求項1記載の消毒液。
【請求項4】
前記安定化二酸化塩素の濃度は、50ppm~500ppmであり、
前記忌避物質又は前記抗菌物質の濃度は、10ppm~500ppmである、
を備える、請求項1記載の消毒液。
【請求項5】
前記忌避物質は、
2-メルカプトピリジンN-オキシドナトリウム(CAS RN=3811-73-2)、
N,N-ジエチル-3-メチルベンザミド(CAS RN 134-62-3)、
1-ペピリジネカルボキシリック酸-2-(2-ハイドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステル(CAS RN 119515-38-7)、
のうち少なくとも一以上である、請求項1記載の消毒液。
【請求項6】
前記抗菌物質は、
ポリヘキサメチレン ビグラナイド(CAS RN=3228-58-0)、
N-アセチル-N-ブチル-β-アラニンエチル(CAS RN=52304-36-6)、
2-(メトキシカルボニルアミノ)-1H-ベンゾイミダゾール(CAS RN=10605-21-7)、
テトラデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジメチルアミニウム・クロリド(CAS RN=41591-87-1)、
N-(トリクロロメチルチオ)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシルイミド (CAS RN 133-06-2)、
N-(2,3-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルシクロヘキサンカルボキサミド(CAS RN 126833-17-8)、
2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール(CAS RN 148-519-8)、
のうち少なくとも一以上である、請求項1記載の消毒液。
【請求項7】
請求項1記載の消毒液が塗布された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒液及びこれが塗布された物品に関し、特に、ドアノブ、家電機器操作ボタン、銀行のATM、切符等の販売機といったタッチパネルディスプレイなど消毒液及びこれが塗布された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、UVまたは塩化物イオンに晒されても変色したり抗菌性を損なったりしにくく、抗菌性を有する液状組成物が開示されている。この液状組成物は、少なくとも、溶媒と、分子内にアミン構造を有さず前記溶媒に可溶な、有機酸銀塩、及び無機酸銀塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物である銀塩と、分子内にアミン構造を複数有し前記溶媒に可溶な、ポリカチオン、塩基性ペプチド、及びこれらの塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物であるカチオン性重合体と、が混合されて成ることにより、前記カチオン性重合体を銀イオンの配位子として形成される銀錯体が前記溶媒に可溶である、抗菌性を有する液状組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている液状組成物を用いて、UVまたは塩化物イオンに晒されても変色したり抗菌性を損なったりすることに主眼が置かれており、忌避性能、抗菌性能については、それほど問題とされていない。
【0005】
特に、ある塗布対象に病原体が接触した場合には、短期間に病原体数を減少させることが求められる塗布対象もあるし、長期間に亘って病原体数を減少させることが求められる塗布対象もある。このように、消毒液に求められるスペックは異なっている。
【0006】
そこで、本発明は、特殊環境ではなく日常生活において通常目にする、様々な塗布対象に好適な消毒液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の消毒液は、
病原体に対して即効性を有する安定化二酸化塩素と、
病原体に対して遅効性を有する忌避物質又は抗菌物質と、
前記安定化二酸化塩素と前記忌避物質又は前記抗菌物質とをなじませる界面活性剤と、
を備える。
【0008】
前記安定化二酸化塩素は、亜塩素酸又はその化合物、過塩素酸又はその化合物であるとすることができる。具体的には、前記安定化二酸化塩素は、例えば、亜塩素酸、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸アンモニウム塩、亜塩素酸バリウム、亜塩素バリウム、過塩素酸、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸アンモニウム塩、過塩素酸バリウムの幾つかを採用することができる。
【0009】
前記安定化二酸化塩素の濃度は、例えば、50ppm~500ppmとすることができ、前記忌避物質又は前記抗菌物質の濃度は、10ppm~500ppmとすることができる。
【0010】
忌避物質は、2-メルカプトピリジンN-オキシドナトリウム(CAS RN=3811-73-2)、N,N-ジエチル-3-メチルベンザミド(CAS RN 134-62-3)、1-ペピリジネカルボキシリック酸-2-(2-ハイドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステル(CAS RN 119515-38-7)のうち少なくとも一以上とすることもできる。
【0011】
さらに、ポリヘキサメチレン ビグラナイド(CAS RN=3228-58-0)、N-アセチル-N-ブチル-β-アラニンエチル(CAS RN=52304-36-6)、2-(メトキシカルボニルアミノ)-1H-ベンゾイミダゾール(CAS RN=10605-21-7)、テトラデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジメチルアミニウム・クロリド(CAS RN=41591-87-1)、N-(トリクロロメチルチオ)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシルイミド(CAS RN 133-06-2)、N-(2,3-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルシクロヘキサンカルボキサミド(CAS RN 126833-17-8)、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール(CAS RN 148-519-8)のうち少なくとも一以上での抗菌物質を含むことができる。
【0012】
本発明の物品は、上記消毒液が塗布されている。ここでいう物品とは、当該消毒液の塗布対象であり、ドアノブ、各種ボタン、電化製品、台所用品、窓ガラスの開閉時に人が触れる部分、又は、自動車のドアの開閉時に人が触れる部分のように日常生活において通常目にするものである。
【発明の実施の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書における用語「抗菌」には、抗カビ、抗ウイルスが含まれるものとする。本実施形態の消毒液は、抗菌作用を有するものである。
【0014】
(消毒液の組成)
本実施形態の消毒液は、以下説明する、安定化二酸化塩素と、忌避物質及び/又は抗菌物質と、界面活性剤と、添加剤とを含む。
【0015】
安定化二酸化塩素は、細菌、カビ又はウイルスなどの病原体に対して即効性を有するものであり、消毒液を構成する水に対して最も多く含有されるものである。安定化二酸化塩素は、亜塩素酸又はその化合物、過塩素酸又はその化合物とすることができる。
【0016】
安定化二酸化塩素について具体例を挙げると、本実施形態の消毒液には、亜塩素酸、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸アンモニウム塩、亜塩素酸バリウム、亜塩素バリウム、過塩素酸、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸アンモニウム塩、過塩素酸バリウムなどを用いることができる。安定化二酸化塩素の濃度は、50ppm~500ppmとすればよい。
【0017】
ここで、安定化二酸化塩素を用いて消毒液を製造する利点としては、次亜塩素酸ナトリウムを用いた消毒液のように、消毒作用が得られるもののダイオキサイドが生成されてしまうことがないということである。
【0018】
すなわち、上記いずれの消毒液であっても、病原体と接すると酸化反応によって、病原体の細胞膜を破壊するという消毒作用が得られる。そして、次亜塩素酸ナトリウムを用いた消毒液の場合には、この際、酸素と塩との分離が生じることによって、ダイオキサイドが生成されてしまうが、安定化二酸化塩素を用いた消毒液の場合には、塩素系でありながら、酸素と塩との分離が生じないため、ダイオキサイドが生成されないという利点がある。
【0019】
忌避物質は、塗布対象の表面はもとより、塗布対象が布のように消毒液が浸透していくものであった場合でも、その塗布対象の周辺に対して抗菌作用を有するものである。このような抗菌物質を用いると、塗布対象の表面を人手が触れる場合であっても、忌避物質による抗菌作用が得られる。
【0020】
このような忌避物質について具体例を挙げると、2-メルカプトピリジンN-オキシドナトリウム(CAS RN=3811-73-2)、N,N-ジエチル-3-メチルベンザミド(CAS RN 134-62-3)、1-ペピリジネカルボキシリック酸-2-(2-ハイドロキシエチル)-1-メチルプロピルエステル(CAS RN 119515-38-7)を挙げることができる。これらはいずれか一種類を用いてもよいし、複数種類を混合したものを用いてもよい。
【0021】
抗菌物質は、塗布対象の表面の抗菌作用を有するものである。このような抗菌物質を用いると、塗布対象に形成された塗布対象の表面に位置している限り、その表面を人手が触れても抗菌作用が得られる。
【0022】
このような抗菌物質について具体例を挙げると、本実施形態の消毒液には、塗布対象によっても異なるが、例えば、ポリヘキサメチレン ビグラナイド(CAS RN=3228-58-0)、N-アセチル-N-ブチル-β-アラニンエチル(CAS RN=52304-36-6)、2-(メトキシカルボニルアミノ)-1H-ベンゾイミダゾール(CAS RN=10605-21-7)、テトラデシル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ジメチルアミニウム・クロリド(CAS RN=41591-87-1)、N-(トリクロロメチルチオ)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシルイミド (CAS RN 133-06-2)、N-(2,3-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルシクロヘキサンカルボキサミド(CAS RN 126833-17-8)、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール(CAS RN 148-519-8)などの抗菌成分のうち幾つかを含むものを用いることができる。
【0023】
最も簡易には、忌避物質も抗菌物質も、上記例示の全て又は属性が同じものをグルーピングして、各グループに属するいずれかのものを同じ量で混合したものとすることができる。そうすると、各抗菌成分によってもたらされる作用によって、様々な菌に対して抗生を得ることができるという利点がある。忌避物質又は抗菌物質の濃度は、10ppm~10000ppmとすればよい。なお、忌避物質又は抗菌物質は、安定化二酸化塩素とは異なり、病原体に対して遅効性を有する抗菌が可能である。
【0024】
界面活性剤は、安定化二酸化塩素と前記忌避物質又は前記抗菌物質とをなじませるものである。溶剤と忌避物質及び抗菌物質との質量、性質などが相違しても、消毒液が乾燥するまでの間、溶剤と忌避物質及び抗菌物質との所望の混合状態を維持できる。界面活性剤は、カチオン、ノリオンなどを用いることができる。界面活性剤は、消毒液全体に対して1wt%~10wt%の範囲で適宜選択すればよい。
【0025】
添加剤については、酸化防止剤など、消毒液の保存時における安定性を得られるものを用いることができる。
【0026】
(消毒液の製造方法)
まず、撹拌容器内に約900mLの蒸留水を投入し、それから、安定化二酸化塩素として例えば亜塩素酸を約10ppm~500ppmとなる範囲で、また、既述の忌避物質及び/又は抗菌物質の合計を約10ppm~10000ppmとなる範囲で投入し、超音波分散器などを用いて、撹拌容器内を常温下で例えば30秒~60秒間ほど撹拌して混合液1を製造する。
【0027】
つづいて、混合液1に対して、界面活性剤であるカチオンを消毒液完成品の約5wt%となる分量を投入し、超音波分散器などを用いて、撹拌容器内を常温下で例えば30秒~60秒間ほど撹拌すると、約1Lの本実施形態の消毒液が完成する。
【0028】
なお、適宜行う撹拌は、常温下で行うことが必須ではなく、敢えて冷却したり加熱したりする必要がないという意味であり、これらの環境下での撹拌を除外するものではない点に留意されたい。
【0029】
本実施形態の消毒液は、例えば、ドアノブ、各種ボタン、電化製品、台所用品などのように日常生活において通常目にする物品を塗布対象とすることができる。
【0030】
以上、実施形態において説明した消毒液は、本明細書に開示した範囲に限定されるものではなく、特許請求の範囲の精神に従って均等なものも含むものとする。