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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107842
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】積層体及び積層体の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/427 20060101AFI20240802BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01L23/46 B
H05K7/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011978
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩垣 洋平
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AA11
5E322AB08
5E322DB06
5E322DB10
5E322DB12
5E322FA01
5F136BB04
5F136BC05
5F136CC14
5F136CC17
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA75
(57)【要約】
【課題】中空の熱伝導部材を備える積層体において、熱伝導部材が内部に有する固体部材が当該積層体の回路の直下となるように配置された、積層体を得ることを目的とする。
【解決手段】積層体は、中空の板状に形成され、前記中空は密閉空間であり、前記密閉空間に作動液、及びウィックを含む固体部材を備える熱伝導部材と、前記熱伝導部材の少なくとも一部に積層された絶縁層と、前記絶縁層の前記熱伝導部材側とは反対側に、前記絶縁層の少なくとも一部に積層された導電部材と、を備える。更に、前記熱伝導部材が、前記密閉空間内に、積層方向に前記導電部材の直下となる直下領域と、前記導電部材が積層されていない非直下領域を含み、前記直下領域における前記固体部材の体積占有率が、前記非直下領域における前記固体部材の体積占有率よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の板状に形成され、前記中空は密閉空間であり、前記密閉空間に作動液、及びウィックを含む固体部材を備える熱伝導部材と、
前記熱伝導部材の少なくとも一部に積層された絶縁層と、
前記絶縁層の前記熱伝導部材側とは反対側に、前記絶縁層の少なくとも一部に積層された導電部材と、を備え、
前記熱伝導部材が、前記密閉空間内に、積層方向に前記導電部材の直下となる直下領域と、前記導電部材が積層されていない非直下領域を含み、
前記直下領域における前記固体部材の体積占有率が、前記非直下領域における前記固体部材の体積占有率よりも大きい、
積層体。
【請求項2】
前記導電部材の前記絶縁層側とは反対側に積層された電子部品を更に備え、
前記導電部材が、前記電子部品への通電を可能とする、
請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記直下領域における前記固体部材が、積層方向に形成された柱を構成する、
請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記柱が、蒸気流路となる空洞を有する、
請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記柱が、中実の補強材を更に含む、
請求項3に記載の積層体。
【請求項6】
前記直下領域における前記固体部材が、前記密閉空間の前記絶縁層側にリブを備える、
請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記ウィックが、毛細管現象を発生する、焼結多孔質体である又はエッチングによる流路を有する、
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記熱伝導部材が、ベイパーチャンバーである、
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法であって、
前記積層体の積層時に積層方向に荷重を印加する工程を備える、
積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層時の荷重に耐え得る中空の熱伝導部材を備えた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁層の片面に銅等の回路が形成され、この回路上に半導体チップ等が半田付けされる積層体が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この積層体には、半導体チップ等から発せられる熱を放熱するため、絶縁層の回路が形成される側とは反対側に、放熱板やヒートシンク等が設けられる。放熱板やヒートシンクには、一般的に銅などの金属によるヒートスプレッダが用いられる。
【0003】
例えば、本願の図5は、従来の積層体の構成の一例を説明する図である。積層体100は、ヒートシンク111と、絶縁層112と、回路113と、半導体チップ114とを備える。積層体100は、ヒートシンク111、絶縁層112、回路113、半導体チップ114の順に積層され、半導体チップ114において生じた熱が、回路113、絶縁層112を経由して、ヒートシンク111に伝わる。ヒートシンク111は、伝わった熱を、絶縁層112側とは反対側の端部から外部に放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-098520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような積層体には、動作を安定化させたり、積層体の破損を防止したりするために、半導体チップ114において生じた熱の放熱性を向上させることが望まれている。放熱性を向上させる手段として、放熱板やヒートシンクに代えて金属よりも熱伝導のよいヒートパイプやベイパーチャンバー等の中空の熱伝導部材(放熱デバイス)を用いることが考えられる。しかし、中空の熱伝導部材では、積層体の積層時に掛かる荷重に耐え得る強度が不足する。強度が不足していると積層方法が限定されるため、積層体の放熱基板(回路基板)としての機能が制限されるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、積層体において、中空の熱伝導部材の内部を構成する固体部材が、後に積層される回路の直下となるように、予め所定の位置に配置された熱伝導部材を備える積層体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の積層体は、中空の板状に形成され、前記中空は密閉空間であり、前記密閉空間に作動液、及びウィックを含む固体部材を備える熱伝導部材と、前記熱伝導部材の少なくとも一部に積層された絶縁層と、前記絶縁層の前記熱伝導部材側とは反対側に、前記絶縁層の少なくとも一部に積層された導電部材と、を備え、前記熱伝導部材が、前記密閉空間内に、積層方向に前記導電部材の直下となる直下領域と、前記導電部材が積層されていない非直下領域を含み、前記直下領域における前記固体部材の体積占有率が、前記非直下領域における前記固体部材の体積占有率よりも大きい。
第1の態様の積層体によれば、中空の熱伝導部材は、導電部材の直下となる直下領域に固体部材を有するため、積層時の荷重に耐えることができる。また、直下領域に固体部材を配置し、非直下領域はできる限り空洞とすることで、軽量化と放熱性能(蒸気流路の増大による)を同時に向上させることができる。なお、本明細書において、「固体部材」とは、密閉空間内の空洞、作動液を除く、板材、ウィック(毛細管構造)、リブ等の固体の部材をいう。
【0008】
第2の態様の積層体は、第1の態様において、前記導電部材の前記絶縁層側とは反対側に積層された電子部品を更に備え、前記導電部材が、前記電子部品への通電を可能とする。
第2の態様の積層体によれば、導電部材及び導電部材上に積層された電子部品の直下に固体部材としてのウィックが配置されるため、電子部品の発熱時にはその直下のウィックに含まれる作動液により、効率よく熱を吸収することができる。
【0009】
第3の態様の積層体は、第1の態様又は第2の態様において、前記直下領域における前記固体部材が、積層方向に形成された柱を構成する。
第3の態様の積層体によれば、積層時に荷重が掛かる場合に、固体部材が柱として機能し、積層方向に掛かる荷重に耐え得る強度を提供することができる。
【0010】
第4の態様の積層体は、第3の態様において、前記柱が、蒸気流路となる空洞を有する。
第4の態様の積層体によれば、熱を吸収し気化した作動液が、蒸気流路を通って効率よく密閉空間内を移動することができる。
【0011】
第5の態様の積層体は、第3の態様において、前記柱が、中実の補強材を更に含む。
第5の態様の積層体によれば、中実の補強材を更に有するため、固体部材がウィックのみの場合と比べ、熱伝導部材の強度を向上させることができる。
【0012】
第6の態様の積層体は、第1の態様~第5の態様のいずれか1の態様において、前記直下領域における前記固体部材が、前記密閉空間の前記絶縁層側にリブを備える。
第6の態様の積層体によれば、密閉空間の絶縁層側に形成されたリブにより、熱伝導部材の曲げ剛性だけでなく、積層体全体の曲げ剛性を向上させることができる。
【0013】
第7の態様の積層体は、第1の態様~第6の態様のいずれか1の態様において、前記ウィックが、毛細管現象を発生する、焼結多孔質体である又はエッチングによる流路を有する。
第7の態様の積層体によれば、ウィックにより、作動液が密閉空間内を効率よく移動することができる。
【0014】
第8の態様の積層体は、第1の態様~第7の態様のいずれか1の態様において、前記熱伝導部材が、ベイパーチャンバーである。
第8の態様の積層体によれば、ベイパーチャンバーにより、金属ベースを備える積層体に比べ、熱伝導性を向上させることができる。
【0015】
第9の態様の積層体の製造方法は、第1の態様~第8の態様のいずれか1の態様の積層体の製造方法であって、前記積層体の積層時に積層方向に荷重を印加する工程を備える。
第9の態様の積層体の製造方法によれば、積層時の荷重に耐え得る積層体を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、積層体において、回路のパターン形状を考慮して回路の直下に熱伝導部材中の固体部材が配置されているため、熱伝導部材に掛かる荷重を効率的に支えることができる。加えて、回路及び回路上に積層された電子部品の直下にウィックが配置されるため、電子部品の発熱時にはウィックに含有された作動液が効率よく熱を吸収し熱を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)~(d)は、本発明の実施の形態に係る積層体の構成を例示する図である。
図2】絶縁層12がベイパーチャンバー11上の限定された領域に積層される構成を例示する図である。
図3】絶縁層12がベイパーチャンバー11上の限定された領域に積層される構成を例示する図である。
図4】絶縁層12がベイパーチャンバー11上の限定された領域に積層される構成を例示する図である。
図5】従来の積層体の構成の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る積層体の構成を例示する図である。例えば、図1(a)に示す積層体10は、熱伝導部材としてのベイパーチャンバー11と、絶縁層12と、導電部材としての回路13と、電子部品14とを備える。積層体10は、ベイパーチャンバー11、絶縁層12、回路13、電子部品14の順に積層されてなる。電子部品14は、例えば半導体チップ等の電子回路の部品であり、積層体の使用時に熱源となる。なお、ベイパーチャンバー11における絶縁層12とは反対側の面には、放熱フィンやラジエータ等の図示しない放熱手段が取り付けられてもよい。
【0020】
本発明の実施の形態に係る積層体が備える中空の熱伝導部材としては、ベイパーチャンバーを挙げることができ、図1(a)に示すベイパーチャンバー11は、中空の板状をなし、内部に作動液が収容される。作動液は、例えば、水や、低沸点の液体である。ベイパーチャンバー11には内壁に沿ってウィック15aが形成される。また、ベイパーチャンバー11の内部には、柱状をなすウィック15bが設けられる。ベイパーチャンバー11では、熱源からの熱によって内部の液体が気化し、気体となって内部を移動する。気体は、熱源から離れて冷やされると、液体に戻る。液体は、ウィックの毛細管を通り熱源側に戻る。ベイパーチャンバー11では、上述したような液体の気化、液化を繰り返すことによって、熱源が発した熱を他の部材に伝える。なお、ベイパーチャンバー11の厚さや、柱状のウィック15bの位置や数を調整することによって、ベイパーチャンバー11の熱特性及び強度を調整できる。
【0021】
具体的には、ベイパーチャンバー11は、その密閉された内部空間に、内壁に形成されるウィック15aに加え柱状に形成されるウィック15bを有する。柱状に形成されるウィック15bは、積層方向にベイパーチャンバー11の壁面同士を結合するように形成される。ウィック15bの形状は特に限定されず、円柱状であっても直方体状であってもよい。更に、柱状に形成されるウィック15bは、後に積層される回路13の直下に位置するように予め配置される。このように、ベイパーチャンバー11では、回路13が積層される位置に基づいて、回路13の直下となるように柱状のウィック15bが形成される。
【0022】
積層体10において、ベイパーチャンバー11の密閉空間内には、積層方向に回路13の直下となる直下領域と、回路13が積層されていない非直下領域が存在する。直下領域の体積の固体部材(積層体10ではウィック)が占める体積占有率は、非直下領域の体積の固体部材が占める体積占有率よりも大きいことが好ましい。また、柱状の固体部材(積層体10ではウィック)は、直下領域における体積占有率が好ましくは少なくとも20%である。体積占有率は、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上であってもよい。
【0023】
絶縁層12は、絶縁性を有する材料を用いて形成され、ベイパーチャンバー11の一端側の表面の少なくとも一部を覆う。なお、絶縁層12に求められる絶縁性が確保できれば、ベイパーチャンバー11の一端側の表面の一部のみを覆う構成としてもよい。絶縁層12は、例えば電気絶縁性を有する合成樹脂に、絶縁性及び熱伝導性を有するフィラーが混入されたものであってもよい。
【0024】
回路13は、例えば導電性の材料を用いて形成され、電子部品14を実装する回路として機能する。回路13は、絶縁層12上に、電子部品14を実装する回路パターンに応じた形状に形成され、電子部品14と外部機器との間に流れる電流の通電を可能にする。回路13は、電子部品14と外部機器との間における電気信号を伝送する。なお、電気信号の伝送には、給電用の信号の伝送を含む。
【0025】
ベイパーチャンバー11の外壁及び回路13は、純銅、耐熱銅、アルミニウム等を用いて形成される。特に、ベイパーチャンバー11は、高い熱伝導性を有する材料が用いられることが好ましい。
【0026】
電子部品14は、例えば半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、サイリスタ、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等が挙げられる。積層体10の電子部品14を駆動すると、その駆動によって熱が発生する。発生した熱は、回路13、絶縁層12を経由してベイパーチャンバー11に伝わり、その熱によってベイパーチャンバー11内の液体が気化する。気体は低温側(図1(a)では絶縁層12とは反対側)に移動し、熱を絶縁層12とは反対側に設けられたヒートシンク等の放熱板(不図示)に伝えた後、再び液体に戻り、ウィックの毛細管現象により熱源側に移動する。ヒートシンク等の放熱板(不図示)に伝わった熱は、ヒートシンクのフィンに伝わりフィンから外部に放出される。
【0027】
続いて、積層体10の製造方法について説明する。まず、ベイパーチャンバー11の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。次に、ベイパーチャンバー11に絶縁層12を形成する。絶縁層12は、絶縁層12を構成する材料をベイパーチャンバー11に転写することによって形成される。転写は、熱圧プレス等のプレス機によるプレスが挙げられる。転写時の荷重は、10MPa~30MPaである。なお、オートクレーブによる一体成型によって絶縁層12を形成してもよい。オートクレーブ成形時の荷重は、10MPa~30MPaである。
【0028】
その後、絶縁層12に、回路13を転写する。転写時の荷重は、0.5MPa~5MPaである。回路13の形成は、絶縁層12と同様に、転写の他、オートクレーブを用いて行ってもよい。オートクレーブ成形時の荷重は、0.5MPa~5MPaである。
【0029】
回路13を絶縁層12上に形成後、回路13上に電子部品14を実装する。なお、オートクレーブを用いて回路13を形成する場合、回路13と電子部品14とを同時に形成することができる。オートクレーブ成形時の荷重は、0.5MPa~20MPaである。
【0030】
このように、積層体10が備えるベイパーチャンバー11は、少なくとも10MPaの荷重に耐え得ることが求められる。本発明の積層体が備える中空の熱伝導部材は、回路の直下となる位置を中心に固体部材を有するため、20MPaの荷重に耐えることができる。好ましくは30MPaの荷重に耐えることができる。
【0031】
電子部品14を実装後、ベイパーチャンバー11内に作動液を注入する。以上説明した工程を経て、図1(a)に示す積層体10が作製される。なお、作動液は、ベイパーチャンバー11に絶縁層12を積層する前に、ベイパーチャンバー11内に注入してもよい。
【0032】
積層体10の各層の厚さとして、例えば、ベイパーチャンバー11の厚さは1mm~5mmの範囲に設定され、絶縁層12の厚さは0.06mm~0.2mmの範囲に設定され、回路13の厚さは0.3mm~3.0mmの範囲に設定される。例えば、積層体10において、ベイパーチャンバー11の厚さを5.0mm、絶縁層12の厚さを0.12mm、回路13と電子部品14とを接合するはんだの厚さを0.2mm、電子部品14の厚さを0.1mmとしてもよい。なお、厚さは、積層方向の長さを示す。
【0033】
以上説明した本発明の実施の形態では、積層体10におけるベース基板にベイパーチャンバー11を採用し、電子部品14において生じた熱は、回路13と絶縁層12を経由して、ベイパーチャンバー11に伝達される。積層体10は、従来の積層体より放熱効果が大きく、温度変化(上昇)を抑えることができる。本実施の形態によれば、上記の構成とすることによって、積層時の荷重に耐え得る強度を向上させつつ、電子部品において生じた熱の放熱性を向上させることができる。
【0034】
(変形例1)
次に、図1(b)を参照して、上述した実施の形態の変形例について説明する。図1(b)に示す積層体20は、ベイパーチャンバー11に代えてベイパーチャンバー21を備える以外は、上述した実施の形態に係る積層体10と同じ構成である。ベイパーチャンバー21は、その密閉された内部空間に、柱状に形成されるウィック15bに加え、同様に柱状に形成される中実の補強材16を有する。柱状に形成される補強材16は、積層方向にベイパーチャンバー21の壁面同士を結合するように形成される。更に、柱状に形成される補強材16は、後に積層体20に形成される回路13の直下に位置するように予め配置される。このように、ベイパーチャンバー21では、回路13が積層される位置に基づいて、回路13の直下となるように柱状のウィック15b及び補強材16が形成される。補強材16が形成される場合、直下領域の体積の固体部材(積層体20ではウィックと補強材)が占める体積占有率は、非直下領域の体積の固体部材が占める体積占有率よりも大きいことが好ましい。また、柱状の固体部材(積層体20ではウィックと補強材)は、直下領域における体積占有率が好ましくは少なくとも20%である。体積占有率は、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上であってもよい。なお、補強材16は、ベイパーチャンバー21の外壁を構成する材料と同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。熱伝導性の優れる材料であることが好ましい。
【0035】
(変形例2)
次に、図1(c)を参照して、更に変形例について説明する。図1(c)に示す積層体30は、ベイパーチャンバー11に代えてベイパーチャンバー31を備える以外は、上述した実施の形態に係る積層体10と同じ構成である。ベイパーチャンバー31は、その密閉された内部空間に、柱状に形成されるウィック15bを有し、ウィック15bには、積層方向に延在する複数の空洞17が形成される。空洞17はウィック15bを貫通してもよい。空洞17は、熱源からの熱によって内部の液体が気化し気体となって内部を移動する際の蒸気流路として機能する。蒸気流路は、ベイパーチャンバー31の放熱性能を向上させることができる。
【0036】
(変形例3)
次に、図1(d)を参照して、更に変形例について説明する。図1(d)に示す積層体40は、ベイパーチャンバー11に代えてベイパーチャンバー41を備える以外は、上述した実施の形態に係る積層体10と同じ構成である。ベイパーチャンバー41は、絶縁層12側の内壁に、内部に向かって延在する複数のリブ18を備える。リブ18は、後に積層体40に形成される回路13の直下に位置するように予め配置される。このように、ベイパーチャンバー41では、回路13が積層される位置に基づいて、回路13の直下となるようにリブ18が形成される。リブ18は、ウィック15bに埋め込むような態様で形成されてもよく、ウィック15bを囲むような態様で形成されてもよく、ウィック15bから離隔して形成されてもよい。リブ18は、ベイパーチャンバー41の外壁を構成する材料と同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。熱伝導性の優れる材料であることが好ましい。リブ18は、ベイパーチャンバー41だけでなく積層体40全体の曲げ剛性を向上させることができる。
【0037】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、上述した実施の形態では、ベース基板としてベイパーチャンバーを用いる例について説明したが、内部に液体を保持する密閉された空間が形成され、熱交換を促すものであれば適用可能であり、例えばベイパーチャンバーに代えてヒートパイプや、ヒートパイプを埋設した金属板を用いてもよい。
【0038】
また、図1では、絶縁層12はベイパーチャンバー11上の全面に積層されているが、絶縁層12が積層される範囲はこれに限られない。絶縁層12の積層される範囲は、例えば図2に示すように、ベイパーチャンバー11の全面よりも狭い範囲となる場合がある。又は、図3に示すように、回路13毎に回路13よりも広い範囲となるように積層される場合がある。又は、図4に示すように、回路13毎に回路13と同一の範囲となるように積層される場合がある。
【0039】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。また、本発明の権利範囲が上記実施の形態に限定されないことは勿論である。
【0040】
以上説明したように、本発明に係る積層体及び積層体の製造方法は、積層時の荷重に耐え得る強度を向上させつつ、電子部品において生じた熱の放熱性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
10、20、30、40 積層体
11、21、31、41 ベイパーチャンバー
12 絶縁層
13 回路
14 電子部品
15a 内壁のウィック
15b 柱状のウィック
16 補強材
17 空洞
18 リブ
100 積層体
111 ヒートシンク
112 絶縁層
113 回路
114 半導体チップ
図1
図2
図3
図4
図5