(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107853
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/46 20060101AFI20240802BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20240802BHJP
【FI】
H01R13/46 301Z
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012004
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小栗 大河
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 康陽
(72)【発明者】
【氏名】中西 雄一
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF03
5E087GG06
5E087MM02
5E087RR49
5E223AB76
5E223AC01
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB24
5E223CD01
5E223DB09
5E223DB11
5E223EA03
5E223EA13
(57)【要約】
【課題】回路基板に対する端子金具の接続信頼性を向上させることが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング10は、前方に開口する筒状をなし、回路基板90に載せられる底壁11と、前記底壁11に対向する天壁15と、前記底壁11および前記天壁15の後端部同士を上下方向につなぐ奥壁19と、を有している。端子金具5は、奥壁19を前後方向に貫通する形状であって、ハウジング10の内側に配置される端子接続部8と、ハウジング10の外側に配置される基板接続部9とを有している。天壁15の後端部の天面および底壁11の後端部の底面のうち、少なくとも一方には、成形樹脂を注入する注入口に対応したゲート跡35が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具と、前記端子金具が装着される樹脂製のハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、前方に開口する筒状をなし、回路基板に載せられる底壁と、前記底壁に対向する天壁と、前記底壁および前記天壁の後端部同士を上下方向につなぐ奥壁と、を有し、
前記端子金具は、前記奥壁を前後方向に貫通する形状であって、前記ハウジングの内側に配置される端子接続部と、前記ハウジングの外側に配置される基板接続部と、を有し、
前記天壁の前記後端部の天面および前記底壁の前記後端部の底面のうち、少なくとも一方には、成形樹脂を注入する注入口に対応したゲート跡が形成されている、コネクタ。
【請求項2】
前記ゲート跡は、前記天面および前記底面のうちの少なくとも一方における左右方向の中間部に形成されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記ゲート跡を通って前記天面から前記底面にかけて前記上下方向に連続して延びる樹脂からなる連続樹脂部を有している、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記天壁は、前記ハウジングの内側に配置された相手ハウジングを嵌合状態に保持するロック部を有し、
前記ロック部は、前記天壁の前端部において、左右方向に複数突設され、
前記天壁は、前記奥壁に連なる後端部に、複数の前記ロック部の各々と対向する位置に配置される、複数の型抜孔と、複数の前記型抜孔の間を仕切る隔壁と、を有し、
前記隔壁は、前記連続樹脂部の一部を構成している、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記隔壁は、前記前後方向に延び、前端部が複数の前記ロック部の各々に連結されている、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記天壁は、前記底壁よりも大きい体積であって全体として前記上下方向に厚肉に形成されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記ゲート跡は、前記天面および前記底面のうちの一方に、一つ形成されている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコネクタは、樹脂製のハウジング(絶縁ハウジング)と、ハウジングに装着される端子金具(コンタクトピン)と、を備えている。ハウジングは、金型内に充填された溶融樹脂を固化させた後、離型して製造される。ハウジングの外面には、溶融樹脂の注入口に対応したゲート跡が形成される。このように成形される樹脂製のハウジングを備えたコネクタは、特許文献2-5にも開示されている。このうち、特許文献4,5に開示されたコネクタは、筒状のハウジングを備え、ハウジングの奥壁に複数の端子金具を貫通して装着させている。各端子金具は、ハウジングの外側に突出し、回路基板の表面に形成された導電部に接続される基板接続部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-271769号公報
【特許文献2】特開2001-88173号公報
【特許文献3】特開2009-181847号公報
【特許文献4】特開2020-71938号公報
【特許文献5】特開2021-114378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなコネクタは、端子金具の基板接続部が、リフロー工程を経て回路基板の導電部に半田付けして接続される。コネクタは、リフロー工程の加熱によってハウジングが熱膨張し、奥壁の上端側が回路基板から離れる方向である上方に変形することがある。そうすると、奥壁の上端側に装着された端子の基板接続部が回路基板の導電部から浮き上がり、接続不良を誘発する懸念がある。特に、ゲート跡から左右方向に溶融樹脂を流して成形され、左右方向に樹脂(繊維)を配向させたハウジングは、上方に熱膨張しやすい。このため、このハウジングに装着された端子金具の基板接続部は回路基板の導電部から浮き上がりやすいという問題があった。
【0005】
そこで、本開示は、回路基板に対する端子金具の接続信頼性を向上させることが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、端子金具と、前記端子金具が装着される樹脂製のハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前方に開口する筒状をなし、回路基板に載せられる底壁と、前記底壁に対向する天壁と、前記底壁および前記天壁の後端部同士を上下方向につなぐ奥壁と、を有し、前記端子金具は、前記奥壁を前後方向に貫通する形状であって、前記ハウジングの内側に配置される端子接続部と、前記ハウジングの外側に配置される基板接続部と、を有し、前記天壁の前記後端部の天面および前記底壁の前記後端部の底面のうち、少なくとも一方には、成形樹脂を注入する注入口に対応したゲート跡が形成されている、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コネクタの回路基板に対する端子金具の接続信頼性を向上させることが可能なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1において、コネクタの斜視図である。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)端子金具と、前記端子金具が装着される樹脂製のハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前方に開口する筒状をなし、回路基板に載せられる底壁と、前記底壁に対向する天壁と、前記底壁および前記天壁の後端部同士を上下方向につなぐ奥壁と、を有し、前記端子金具は、前記奥壁を前後方向に貫通する形状であって、前記ハウジングの内側に配置される端子接続部と、前記ハウジングの外側に配置される基板接続部と、を有し、前記天壁の前記後端部の天面および前記底壁の前記後端部の底面のうち、少なくとも一方には、成形樹脂を注入する注入口に対応したゲート跡が形成されている。
上記構成によれば、ハウジングの成形時にゲート跡から流れる溶融樹脂の流れ方向を、回路基板から奥壁が立設する方向である上下方向にすることができる。その結果、ハウジングの成形後、ハウジングを構成する樹脂の配向(繊維を含む場合は繊維配向)を上下方向に向けることができるので、ハウジングが上方に熱膨張しにくい構造になる。したがって、リフロー等の高温環境下においてもハウジングが上方に変形しにくく、端子金具の基板接続部が回路基板に接続される状態を適正に維持することができる。
【0010】
(2)上記(1)に記載のコネクタにおいて、前記ゲート跡は、前記天面および前記底面のうちの少なくとも一方における左右方向の中間部に形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、リフロー等の高温環境下において、大きく熱膨張する懸念があるハウジングの左右方向の中間部が変形するのを効果的に抑制できる。
【0011】
(3)上記(1)または(2)に記載のコネクタにおいて、前記ハウジングは、前記ゲート跡を通って前記天面から前記底面にかけて前記上下方向に連続して延びる樹脂からなる連続樹脂部を有していることが好ましい。
上記構成によれば、連続樹脂部がハウジングの天面から底面にかけて途切れることなく形成されるので、リフロー等の高温環境下において、ハウジングが変形するのをより効果的に抑制できる。
【0012】
(4)上記(3)に記載のコネクタにおいて、前記天壁は、前記ハウジングの内側に配置された相手ハウジングを嵌合状態に保持するロック部を有し、前記ロック部は、前記天壁の前端部において、左右方向に複数突設され、前記天壁は、前記奥壁に連なる後端部に、複数の前記ロック部の各々と対向する位置に配置される、複数の型抜孔と、複数の前記型抜孔の間を仕切る隔壁と、を有し、前記隔壁は、前記連続樹脂部の一部を構成していることが好ましい。
上記構成と異なり、奥壁が上下方向でゲート跡と対向する位置に型抜孔を有していると、ハウジングの成形時、型抜孔に対応する位置で溶融樹脂の流れが遮断され、樹脂の配向を上下方向に良好に形成できない懸念がある。その点、上記構成によれば、複数の型抜孔の間を仕切る隔壁が連続樹脂部の一部を構成しているため、樹脂の配向を上下方向に良好に形成でき、ハウジングが上方に変形するのを信頼性良く抑制できる。
【0013】
(5)上記(4)に記載のコネクタにおいて、前記隔壁は、前記前後方向に延び、前端部が複数の前記ロック部の各々に連結されていることが好ましい。
上記構成によれば、天壁が隔壁で補強されてより変形しにくい構造になる。
【0014】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに記載のコネクタにおいて、前記天壁は、前記底壁よりも大きい体積であって全体として前記上下方向に厚肉に形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、リフロー等の高温環境下において、天壁の左右方向の中間部が反り変形しにくい構造にできる。
【0015】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに記載のコネクタにおいて、前記ゲート跡は、前記天面および前記底面のうちの一方に、一つ形成されていることが好ましい。
上記構成によれば、ハウジングの成形時、溶融樹脂の流れを一様にできるので、ハウジングの外面にウェルドラインが発生するのを防止できる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
[実施形態1]
本開示の実施形態1のコネクタ3は、複数の端子金具5と、各端子金具5を装着するハウジング10とを備えている。コネクタ3は、回路基板90に実装される基板用コネクタである。ハウジング10は、相手側ハウジング50に嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については、ハウジング10が相手側ハウジング50と嵌合する面側を前側とする。
図3の左側が前側になる。上下方向は、
図1-5の上下方向を基準とする。左右方向は、
図2の左右方向を基準とする。
【0018】
図1,
図3-6において、「前側」を「F」で表し、
図1-5,
図7において、「上側」を「U」で表し、
図1,2,6,7において、「右側」を「R」で表している。上下方向は、コネクタ3が図示しない車両等に搭載された状態における重力方向と必ずしも一致しない。
【0019】
ハウジング10について説明する。
図1,3,4に示すように、ハウジング10は合成樹脂製である。本実施形態1の場合、ハウジング10は、液晶ポリマー(LCP)等の異方性材料で形成される。ハウジング10は、左右方向に細長い扁平な四角筒状なフード部20を有している。
図4に示すように、相手側ハウジング50は、フード部20内に嵌合可能となる。
【0020】
フード部20は、平板状の底壁11を有している。底壁11の下面は、回路基板90に載せられる底面である。フード部20は、底壁11の左右の端部から立ち上がる一対の板状の側壁13を有している。フード部20は、底壁11より上側で底壁11と平行に対向する板状の天壁15を有している。天壁15の上面は、左右方向及び前後方向に沿って平坦な天面である。
フード部20は、底壁11と天壁15との後端部同士を上下方向につなぐ奥壁19を備えている。なお、本明細書において、「後端部」は、後側の端部の意味であって、フード部20の最後端の面より前側に位置する部分を含む概念である。奥壁19は、前後方向に厚みを有する縦壁である。フード部20の後面は、奥壁19で閉塞されている。フード部20は、奥壁19の前方に開放されている。一対の側壁13の下縁は、底壁11の左右の端部と垂直につながっている。一対の側壁13の上縁は、天壁15の左右の端部と垂直につながっている。一対の側壁13の後端縁は、奥壁19の左右の端部と垂直につながっている。
【0021】
図2,4に示すように、フード部20は、天壁15に、フード部20の内側に突出する一対の爪状のロック部17を有している。各ロック部17は、天壁15の左右中央部(後述する隔壁21)を挟んだ両側に対をなして左右対称に配置されている。ロック部17は、天壁15の前端から内側へ斜め下方に延びる傾斜面18を有している。ロック部17の後面は、天壁15の内下面(天壁15内の下側を向く面)に対して垂直または鋭角に交わる係止面17Sである。
【0022】
天壁15は、係止面17Sと対向する後端部に、後方に開放された型抜き孔16を有している。型抜き孔16は、ロック部17と対応するように左右方向に対をなして配置される。型抜き孔16は、背面視四角形状をなし、係止面17Sを成形する図示しない金型の引き抜きに伴って形成される。奥壁19の上端部は、型抜き孔16に面している。
【0023】
天壁15は、後端部の左右中央部に、隔壁21によって隔てられた、左右一対の型抜き孔16を有している。隔壁21は、各型抜き孔16に挟まれた後端部から天壁15の内下面に連なりつつ前方に延びている。隔壁21の前端部は、フード部20の開口端部の一部であって、左右の端部を対応するロック部17に連結させている。
【0024】
天壁15の後面15Sは、上下方向および左右方向に沿って配置されている。各型抜き孔16は、天壁15の後面15Sに開口している。隔壁21の後面は、天壁15の後面15Sの一部である。奥壁19は、後面に、端子突出面23を有している。各端子金具5は、端子突出面23からハウジング10の外側に突出している。端子突出面23は、天壁15の後面15Sよりも前方に引っ込むように配置されている。奥壁19の端子突出面23と天壁15の後面15Sとの間には、左右方向に延びる下向きの段差面25が形成されている。
【0025】
奥壁19は、各端子金具5を挿入するため、前後方向に貫通する複数の端子収容孔31を有している。各端子収容孔31は、上下方向に複数段で且つ左右方向に複数列に配置され、端子突出面23に整列して開口している。
図4に示すように、端子収容孔31は、端子突出面23から前方に向けて開口径が狭くなるように傾斜するテーパ部33を有している。
【0026】
ハウジング10は、天壁15の後端部の上面における左右中央部に、ゲート跡35を有している。ゲート跡35は、円形凹状をなし、ハウジング10を成形するための樹脂(溶融樹脂)を注入する注入口に対応する位置に形成されている。ゲート跡35の直径は、隔壁21の左右幅よりも小さい。ハウジング10は、ゲート跡35から下方に連続して延びる連続樹脂部37を有している。連続樹脂部37は、天壁15、奥壁19および底壁11を上下方向に貫通(縦断)する樹脂部分である。連続樹脂部37は、ゲート跡35の断面形状と同じ断面形状をもって、奥壁19の内を上下方向に貫通する部分である。連続樹脂部37の上面は、天壁15の上面においてゲート跡35を構成している。連続樹脂部37は、ゲート跡35に対応する円形の断面形状を有し、ハウジング10における連続樹脂部37の周囲部分に区別なく連なっている。連続樹脂部37は、天壁15において隔壁21を形成している。連続樹脂部37は、奥壁19において各端子収容孔31間の樹脂部分を形成している。連続樹脂部37の下面は、底壁11の下面の一部を形成している。
【0027】
図7に示すように、天壁15は、左右方向に延びる基準壁48を有している。基準壁48の下面(フード部20の内側を臨む基準面)は、
図7の下線部を含む高さ位置で規定される面である。各ロック部17は、基準壁48の上下方向の厚み内に形成されている。基準壁48の上下方向の厚みは、底壁11の上下方向の厚みよりも大きく、且つ側壁13の左右方向の厚み(後述する固定部材47の装着部52を除く)よりも大きい。基準壁48を含む天壁15は、底壁11よりも大きな体積(樹脂量)を有し、全体として底壁11よりも上下方向に厚肉に形成されている。
隔壁21は、基準壁48の左右中央部から下側に突出する部分を有している。天壁15は、各ロック部17を挟んだ両側に、基準壁48の下面から下側に突出する左右一対の突出リブ39を有している。各突出リブ39は、隔壁21と平行して天壁15の前面から後方に延び、後端が奥壁19に連結されている。天壁15は、各突出リブ39間に、後述する相手側ハウジング50のロックアーム51が進入する第1凹部40を有している。
【0028】
天壁15は、突出リブ39と側壁13との間である左右の端部寄りの部分に、基準壁48の下面に凹設される、左右一対ずつの第2凹部43を有している。各第2凹部43は、前後方向に延び、前端が天壁15の前面に開口し、後端が天壁15の後端部で閉塞されている。各第2凹部43は、上側に向けて左右幅を広げるアリ溝状を呈している。各第2凹部43には、相手側ハウジング50の図示しないリブが嵌合される。
【0029】
図1に示すように、ハウジング10は、フード部20の前端寄りの外周部分に、天壁15、及び側壁13の外面から突出するフランジ部45を有している。フランジ部45は、側壁13からの突出寸法を、天壁15からの突出寸法よりも大きくしてある。フランジ部45は、板状であって、板面を前後に向けて配置される。フランジ部45は、左右の端部の後端面に、後述する固定部材47を固定するための溝(図示省略)を有する装着部52を一体に連設させている。フランジ部45は、図示しないケースに取り付けられる。
【0030】
ハウジング10は、各側壁13から後方に連続して突出する左右一対の保護壁60を有している。各保護壁60は、板状をなし、板面を左右に向けて配置される。各保護壁60は、各端子金具5を左右両側から保護する。保護壁60は、左右幅を厚くした肉厚部61を有している。
図5に示すように、肉厚部61には、後述する固定部材47を装着するための溝部(図示省略)が形成されている。
【0031】
フード部20には、両側壁13の外面(フード部20の左右の端面)に、金属製の一対の固定部材47が取り付けられている。固定部材の底面47Sは、半田付けにより、回路基板90に固定される。固定部材47は、前後方向に突出する一対の係止部49を有している。
図5に示すように、係止部49は、保護壁60の肉厚部61、及び装着部52に装着されて固定される。
【0032】
各端子金具5は金属製であって、
図3に示すように、前後方向に延びて端子収容孔31を圧入状態で貫通する端子接続部8を有している。端子接続部8は、フード部20内に突出して相手側端子55に接続される部分を有している。端子接続部8は、端子突出面23から後方に突出する部分を有している。各端子金具5は、端子接続部8の後端に第1屈曲部6を介して連なり、第1屈曲部6から下側に延びる基板接続部9を有している。基板接続部9は、下端部に第2屈曲部7を介して後方に延び、回路基板90に半田付けして接続される部分を有している。
【0033】
図4に示すように、ハウジング10のロック部17と相手側ハウジング50の相手側ロック部53とが互いに係止されることにより、ハウジング10と相手側ハウジング50とが嵌合状態に保持され、各端子接続部8が相手側ハウジング50に装着された相手側端子55と接続される。各端子金具5の基板接続部9の後端は、回路基板90の実装面90Aに対して半田付けによって接続される。
【0034】
続いて、本実施形態1のコネクタ3の作用を説明する。ハウジング10は、図示しない金型内に溶融樹脂を充填し、溶融樹脂の固化後、金型を開いて取り出される。成形されたハウジング10における天壁15の後端部の上面には、金型に溶融樹脂を注入する位置と対応して、ゲート跡35が形成される。ハウジング10の樹脂配向(繊維配向)は、溶融樹脂の流動方向と対応し、ゲート跡35から下向きに延びる連続樹脂部37の形成方向及び連続樹脂部37と平行な上下方向に向けられる(
図2の矢印方向を参照)。このため、ハウジング10は、上下方向に熱変形しにくい。
【0035】
なお、本実施形態1の場合、ハウジング10は、ゲート跡35から連続して延びる連続樹脂部37を有しているため、溶融樹脂の流動を妨げずに、樹脂配向を適正に上下方向に規定することができる。
【0036】
コネクタ3は、回路基板90に対してリフローにより実装される。具体的には、各端子金具5の基板接続部9と各固定部材47が回路基板90の表面に形成された半田ペースト上に載せられ、図示しないリフロー炉の中で半田が溶融される。その後、冷却固化されることにより、各固定部材47が回路基板90に半田付けして固定されるとともに、各端子金具5の基板接続部9が回路基板90の導電部に半田付けして接続される。
【0037】
一般的に、ハウジングは、リフロー炉の中で加熱されることにより、回路基板90から離れる上方に熱膨張し、変形する懸念がある。しかし、本実施形態1の場合、前述したように、ハウジング10の樹脂配向が上下方向に向けられているので、リフロー炉の中のような高温環境下においても、ハウジング10が上下方向に変形することを抑制できる。
【0038】
また、一般的に、ハウジング10がリフロー炉の中で加熱されると、ハウジング10の左右中央部が上方に湾曲するように変形する懸念もある。仮に、ハウジングにこのような反りが発生すると、各端子金具5が上方に変位し、特に、上段側の端子金具5の基板接続部9が回路基板90の導電部から離れて接続不良を招くおそれもある。しかし、本実施形態1の場合、前述したように、天壁15は、全体として底壁11よりも上下方向に厚肉で、且つ底壁11よりも大きい体積を有している。このため、ハウジング10の上端部が左右方向に変形しにくく、ハウジング10の反りを抑制できる。また、リフロー後、コネクタ3が車両等に搭載された状態においても、天壁15の厚肉構造により、ハウジング10の反りを抑制できる。特に、天壁15の後面と端子突出面23との間に、左右方向に延びる段差面25が形成されているため、ハウジング10の反りを効果的に抑制できる。
【0039】
フランジ部45は、天壁15、及び側壁13の外面から突出するように配置されることにより、天壁15、及び側壁13を外側から補強している。フランジ部45によって、ハウジング10の反りをより確実に抑制できる。また、隔壁21が前後方向に延び、前端部が複数のロック部17の各々に連結されているので、天壁15がより変形しにくい構造になる。
【0040】
端子突出面23は、天壁15の後面よりも前方に配置されることにより、天壁15は、前後方向に厚肉となる。これにより、前後方向におけるハウジング10の反りをも抑制できる。また、この構成によれば、各端子金具5の端子接続部8が端子突出面23から突出する位置も、段差面25の形成分、天壁15の後面よりも前方に設けられることになる。このため、各端子金具5の端子接続部8の前後寸法が不必要に大きくならずに済む。その結果、基板接続部9の回路基板90の導電部に接続される位置から、フード部20前端までの距離が、短くなる。つまり、、回路基板90における上記接続位置から、コネクタ3の前端位置までの距離が、過度に大きくなるのを防止できる。
【0041】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
(1)上記実施形態1の場合、ゲート跡は、天壁の後端部の上面(天面)に設けられていた。これに対し、他の実施形態によれば、ゲート跡は、底壁の後端部の下面(底面)に設けられていても良い。また、ゲート跡は、天壁の後端部に上面及び下面のうちの少なくとも一方における左右の端部に形成されていても良い
(2)隔壁は、ロック部に連結されている必要はない。例えば、隔壁の前端面を、ロック部の後端面より、後側に配置させる構成としても良い。
(3)ゲート跡は、天壁の後端部に上面及び下面のうちの一方に、複数形成されていても良い。
(4)連続樹脂部は、天壁15、奥壁19および底壁11を上下方向に貫通(縦断)する樹脂部分である。連続樹脂部を形成する領域は、ゲート跡を上面とした円柱形状に限られない。
【符号の説明】
【0042】
3…コネクタ
5…端子金具
6…第1屈曲部
7…第2屈曲部
8…端子接続部
9…基板接続部
10…ハウジング
11…底壁
13…側壁
15…天壁
15S…後面
16…型抜き孔
17…ロック部
17S…係止面
18…傾斜面
19…奥壁
20…フード部
21…隔壁
23…端子突出面
25…段差面
31…端子収容孔
33…テーパ部
35…ゲート跡
37…連続樹脂部
39…突出リブ
40…第1凹部
41…側方リブ
43…第2凹部
45…フランジ部
47…固定部材
47S…固定部材の底面
48…基準壁
49…係止部
50…相手側ハウジング
51…ロックアーム
52…装着部
53…相手側ロック部
55…相手側端子
60…保護壁
61…肉厚部
90…回路基板
90A…実装面