(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107856
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】太陽電池装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/055 20140101AFI20240802BHJP
H01L 31/056 20140101ALI20240802BHJP
【FI】
H01L31/04 622
H01L31/04 624
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012007
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金城 拓海
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151HA17
5F151JA23
5F251HA17
5F251JA23
(57)【要約】
【課題】美観を向上させることが可能な太陽電池装置を提供する。
【解決手段】一実施形態によれば、太陽電池装置は、第1主面と、第1主面に対向する第2主面と、第1側面と、を有する基板と、前記第1主面に配置され、第1色の透過光を形成するとともに第1波長の光を特定波長の光に変換する第1波長変換層と、前記第1主面に配置され、前記第1色とは異なる第2色の透過光を形成するとともに前記第1波長とは異なる第2波長の光を前記特定波長の光に変換する第2波長変換層と、前記第2主面に対向し、コレステリック液晶を有し、前記基板を介した入射光のうち、前記特定波長の光を前記基板に向けて反射する反射面を有する液晶層と、前記第1側面に対向し、前記特定波長の光で発電するように構成された太陽電池と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、第1主面に対向する第2主面と、第1側面と、を有する基板と、
前記第1主面に配置され、第1色の透過光を形成するとともに第1波長の光を特定波長の光に変換する第1波長変換層と、
前記第1主面に配置され、前記第1色とは異なる第2色の透過光を形成するとともに前記第1波長とは異なる第2波長の光を前記特定波長の光に変換する第2波長変換層と、
前記第2主面に対向し、コレステリック液晶を有し、前記基板を介した入射光のうち、前記特定波長の光を前記基板に向けて反射する反射面を有する液晶層と、
前記第1側面に対向し、前記特定波長の光で発電するように構成された太陽電池と、
を備える、太陽電池装置。
【請求項2】
さらに、前記第1波長変換層及び前記第2波長変換層の各々の輪郭を形成する遮光層を備える、請求項1に記載の太陽電池装置。
【請求項3】
前記遮光層は、前記特定波長を透過する、請求項2に記載の太陽電池装置。
【請求項4】
さらに、透明な保護基板を備え、
前記第1波長変換層及び前記第2波長変換層は、前記基板と前記保護基板との間に挟持されている、請求項1に記載の太陽電池装置。
【請求項5】
前記保護基板は、前記第1側面の直上に位置する第2側面を有し、
前記太陽電池は、前記第1側面及び前記第2側面に対向する、請求項4に記載の太陽電池装置。
【請求項6】
前記特定波長は、赤外線の波長帯である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の太陽電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、太陽電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透明な太陽電池が種々提案されている。例えば、透明な色素増感型太陽電池を表示装置の表面に配置した太陽電池付き表示装置が提案されている。
また、紫外線を赤外線に変換する蛍光体層が光導波部と太陽電池との間に配置された太陽電池装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-229472号公報
【特許文献2】特開2022-16955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、美観を向上させることが可能な太陽電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る太陽電池装置は、
第1主面と、第1主面に対向する第2主面と、第1側面と、を有する基板と、前記第1主面に配置され、第1色の透過光を形成するとともに第1波長の光を特定波長の光に変換する第1波長変換層と、前記第1主面に配置され、前記第1色とは異なる第2色の透過光を形成するとともに前記第1波長とは異なる第2波長の光を前記特定波長の光に変換する第2波長変換層と、前記第2主面に対向し、コレステリック液晶を有し、前記基板を介した入射光のうち、前記特定波長の光を前記基板に向けて反射する反射面を有する液晶層と、前記第1側面に対向し、前記特定波長の光で発電するように構成された太陽電池と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、太陽電池装置100の一構成例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、液晶層3に含まれるコレステリック液晶CLの一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、太陽電池装置100を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、太陽電池装置100の外観の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、太陽電池装置100の他の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、太陽電池装置100の他の構成例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。Z軸に沿った方向をZ方向または第1方向A1と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向A2と称し、X軸に沿った方向をX方向または第3方向A3と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸及びZ軸によって規定される面をX-Z平面と称し、Y軸及びZ軸によって規定される面をY-Z平面と称する。
【0009】
図1は、太陽電池装置100の一構成例を模式的に示す断面図である。
【0010】
太陽電池装置100は、基板1と、液晶層3と、波長変換層41及び42と、遮光層5と、太陽電池PVと、を備えている。なお、基板1と液晶層3との間には、配向層や接着層が介在していてもよい。
【0011】
基板1は、例えば、ガラス板または合成樹脂板によって構成されている。また、基板1は、可撓性を有していてもよい。基板1は、任意の形状を取り得る。基板1は、湾曲していてもよい。
基板1は、入射光の少なくとも一部を透過する光透過性を有している。基板1は、例えば、透明なガラス板であるが、すりガラスのような不透明(半透明)なガラス板であってもよい。本明細書において、『透明』は、無色透明であることが好ましいが、有色透明であってもよい。
【0012】
本明細書において、『光』は、可視光及び不可視光を含むものである。例えば、可視光域の下限の波長は360nm以上400nm以下であり、可視光域の上限の波長は760nm以上830nm以下である。可視光は、第1波長帯(例えば400nm~500nm)の第1成分(青成分)、第2波長帯(例えば500nm~600nm)の第2成分(緑成分)、及び、第3波長帯(例えば600nm~700nm)の第3成分(赤成分)を含んでいる。不可視光は、第1波長帯より短波長である紫外線の波長帯、及び、第3波長帯より長波長である赤外線の波長帯を含んでいる。
【0013】
基板1は、X-Y平面に沿った平板状に形成され、主面(外面)F1と、主面(内面)F2と、側面S1と、側面S2と、を有している。主面F1及び主面F2は、X-Y平面に略平行な面であり、第1方向A1において、互いに対向している。一例では、主面F1及び主面F2は、いずれも平坦面である。なお、主面F1及び主面F2の少なくとも一方は、微小な凹凸を有していてもよいし、型模様を有していてもよい。
側面S1及び側面S2は、X-Z平面と略平行な面であり、第2方向A2において、互いに対向している。
【0014】
液晶層3は、第1方向A1において、基板1の主面F2に対向している。図示した例では、液晶層3は、主面F2に接している。液晶層3は、拡大して模式的に示すように、コレステリック液晶CLを有している。コレステリック液晶CLは、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AXを有し、また、第1方向A1に沿った螺旋ピッチPを有している。螺旋ピッチPは、螺旋の1周期(液晶分子が360度回転するのに要する螺旋軸AXに沿った層厚)を示す。
【0015】
このような液晶層3は、太陽電池装置100に入射した光LTiのうち、螺旋ピッチP及び液晶層3の屈折率異方性Δnに応じて決定する選択反射帯域の円偏光を反射するように構成されている。なお、本明細書において、液晶層3における「反射」とは、液晶層3の内部における回折を伴うものである。
【0016】
液晶層3は、選択反射帯域のうち、コレステリック液晶CLの旋回方向に対応した円偏光を反射する反射面3Rを有している。反射面3Rは、X-Y平面に対して傾斜している。なお、本明細書において、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
【0017】
図1に示す例では、液晶層3は、主面F1の側から入射した光LTiの一部を基板1に向けて反射するように構成されている。
【0018】
なお、太陽電池装置100において、
図1に示した液晶層3は、他のコレステリック液晶を有するように多層化されていてもよい。他のコレステリック液晶とは、例えば、図示した螺旋ピッチPとは異なる螺旋ピッチを有するコレステリック液晶や、図示したコレステリック液晶CLの旋回方向とは逆回りに旋回したコレステリック液晶などである。
【0019】
波長変換層41及び42は、それぞれ主面F1に配置されている。図示した例では、波長変換層41及び42は、主面F1に接している。
波長変換層41は、入射光のうち第1波長λ1の光を特定波長の光に変換する機能を有している。
波長変換層42は、入射光のうち第2波長λ2の光を特定波長の光に変換する機能を有している。
【0020】
第2波長λ2は、第1波長λ1とは異なる波長である。第1波長λ1及び第2波長λ2は、可視光のいずれかの波長帯に含まれるが、紫外線の波長帯に含まれてもよい。特定波長は、液晶層3の選択反射帯域に含まれる波長であり、一例では、赤外線の波長帯に含まれる。波長変換層41で変換された特定波長と、波長変換層42で変換された特定波長とは、互いに異なる波長であってもよい。
【0021】
このような波長変換層41及び42は、蛍光体や量子ドットなどの波長変換材料を含んでいる。図示した例では、波長変換層41及び42は、互いに離間しているが、隣接していてもよい。また、波長変換層41の一部が波長変換層42の一部と重なっていてもよい。
【0022】
遮光層5は、波長変換層41及び42の各々の輪郭を形成している。図示したように、波長変換層41及び42が互いに離間している場合には、遮光層5は、波長変換層41及び42をそれぞれ縁取るように形成される。また、波長変換層41及び42が互いに隣接している場合には、遮光層5は、波長変換層41と波長変換層42との境界に形成される。
このような遮光層5は、少なくとも可視光を遮光する材料で形成されている。あるいは、遮光層5は、可視光を遮光し、特定波長を透過する材料で形成されている。
【0023】
太陽電池PVは、第2方向A2において、側面S1に対向している。図示した例では、太陽電池PVは、側面S1に接している。太陽電池PVは、特定波長の光を受光して、発電するように構成されている。
太陽電池PVの一例としては、シリコン系太陽電池、有機薄膜太陽電池などが挙げられる。シリコン系太陽電池は、非晶質シリコン、微結晶シリコン、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどを用いて形成されている。有機薄膜太陽電池は、有機半導体太陽電池、ペロブスカイト型太陽電池などを含み、使用する材料によって光透過性を有する場合がある。
【0024】
次に、
図1に示す太陽電池装置100の光学作用について説明する。
【0025】
太陽電池装置100に入射する光LTiは、例えば、可視光、紫外線、及び、赤外線を含んでいる。
図1に示す例では、理解を容易にするために、光LTiは、基板1に対して略垂直に入射するものとする。なお、基板1に対する光LTiの入射角度は、特に限定されない。
【0026】
光LTiは、波長変換層41及び42に入射する。
波長変換層41においては、光LTiのうち、第1波長λ1の光が特定波長の光に変換される。波長変換層41を透過した光は、特定波長に変換された光LTcと、その他の光LTt1とに分離される。
波長変換層42においては、光LTiのうち、第2波長λ2の光が特定波長の光に変換される。波長変換層42を透過した光は、特定波長に変換された光LTcと、その他の光LTt2とに分離される。
【0027】
光LTt1及び光LTt2は、いずれも基板1及び液晶層3を透過する。光LTt1及び光LTt2の各々の透過スペクトルは、互いに異なる。つまり、光LTt1は第1色の透過光であるのに対して、光LTt2は第1色とは異なる第2色の透過光である。
例えば、光LTiが白色光である場合、波長変換層41において第1波長λ1として青成分の光が特定波長の光に変換されると、光LTt1は緑成分及び赤成分を含む黄系の色を呈する。
波長変換層42において第2波長λ2として緑成分の光が特定波長の光に変換されると、光LTt2は青成分及び赤成分を含むマゼンタ系の色を呈する。
また、波長変換層において、赤成分の光が特定波長の光に変換されると、透過光は青成分及び緑成分を含むシアン系の色を呈する。
【0028】
波長変換層41及び42で特定波長に変換された光LTcは、基板1を透過し、液晶層3に入射する。そして、液晶層3は、反射面3Rにおいて光LTcの一部を反射する。反射された光LTrは、特定波長の円偏光である。例えば、光LTrが右回りの円偏光である場合、左回りの円偏光は、液晶層3を透過する。上記したように液晶層3が図示したコレステリック液晶CLとは逆回りに旋回したコレステリック液晶を有する場合には、液晶層3は、右回りの円偏光及び左回りの円偏光をそれぞれ反射することができる。つまり、液晶層3は、特定波長の光について、右回りの円偏光及び左回りの円偏光のいずれも反射することができる。
【0029】
波長変換層41と波長変換層42との間において、基板1に入射した光LTiは、特定波長の光を除いて基板1を透過する。特定波長の光は、光LTcと同様に液晶層3で反射される。
【0030】
遮光層5に入射した光LTiは、概ね吸収される。但し、遮光層5が特定波長の光を透過する材料で形成されている場合には、遮光層5を透過した特定波長の光は、光LTcと同様に液晶層3で反射される。
【0031】
液晶層3で反射された光LTrの進入角θは、光導波条件を満足するように設定されている。ここでの進入角θとは、液晶層3と空気との界面で全反射を起こす臨界角以上の角度に相当する。進入角θは、基板1の法線Nに対する角度を示す。
【0032】
基板1及び液晶層3が同等の屈折率を有している場合、これらの積層体が単体の導光素子となり得る。この場合、光LTrは、基板1と空気との界面、及び、液晶層3と空気との界面において、反射を繰り返しながら、側面S1に向けて導光される。
【0033】
太陽電池PVは、側面S1から出射された光LTrを受光して、発電する。
【0034】
なお、ここでは、特定波長が赤外線の波長帯に含まれる場合について説明したが、特定波長は、太陽電池PVにおいて発電効率の高い波長に設定されることが望ましい。
【0035】
また、太陽電池装置100が備える波長変換層は、3種類以上であってもよい。
【0036】
図2は、液晶層3に含まれるコレステリック液晶CLの一例を説明するための図である。
【0037】
なお、
図2では、液晶層3を第1方向A1に拡大して図示している。また、簡略化のため、コレステリック液晶CLを構成する液晶分子として、X-Y平面に平行な同一平面に位置する複数の液晶分子のうちの1つの液晶分子LMを図示している。図示した液晶分子LMの配向方向は、同一平面に位置する複数の液晶分子の平均的な配向方向に相当する。
【0038】
点線で囲んだ1つのコレステリック液晶CLに着目すると、コレステリック液晶CLは、旋回しながら第1方向A1に沿って螺旋状に積み重ねられた複数の液晶分子LMによって構成されている。複数の液晶分子LMは、基板1と液晶層3との界面の近傍に位置する液晶分子LM11を有している。
【0039】
図2に示す例の液晶層3において、第2方向A2に沿って隣接する複数のコレステリック液晶CLの配向方向は、互いに異なっている。また、第2方向A2に沿って隣接するコレステリック液晶CLの各々の空間位相は、互いに異なっている。
第2方向A2に沿って隣接する液晶分子LM11の配向方向は、互いに異なっている。複数の液晶分子LM11の配向方向は、第2方向A2に沿って連続的に変化している。
【0040】
図中に一点鎖線で示す液晶層3の反射面3Rは、X-Y平面に対して傾斜している。反射面3RとX-Y平面とのなす角度θαは、鋭角である。反射面3Rは、液晶分子LMの配向方向が揃った面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。
【0041】
このような液晶層3は、液晶分子LMの配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LMの配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、太陽電池装置100は、液晶層3に電界を形成するための電極を備えていない。
【0042】
一般的に、コレステリック液晶CLを有する液晶層3において、垂直入射した光に対する選択反射帯域Δλは、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチP、液晶層3の屈折率異方性Δn(異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)に基づいて、次の式(1)で示される。
Δλ=Δn*P …(1)
選択反射帯域Δλの具体的な波長範囲は、(no*P)以上、(ne*P)以下の範囲である。
選択反射帯域Δλの中心波長λmは、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチP、液晶層3の平均屈折率nav(=(ne+no)/2)に基づいて、次の式(2)で示される。
λm=nav*P …(2)
【0043】
図3は、太陽電池装置100を模式的に示す平面図である。
【0044】
図3には、コレステリック液晶CLの空間位相の一例が示されている。ここに示す空間位相は、コレステリック液晶CLに含まれる液晶分子LMのうち、基板1の近傍に位置する液晶分子LM11の配向方向として示している。
【0045】
第2方向A2に沿って並んだコレステリック液晶CLの各々について、液晶分子LM11の配向方向は互いに異なる。つまり、コレステリック液晶CLの空間位相は、第2方向A2に沿って異なる。
一方、第3方向A3に沿って並んだコレステリック液晶CLの各々について、液晶分子LM11の配向方向は略一致する。つまり、コレステリック液晶CLの空間位相は、第3方向A3において略一致している。
【0046】
特に、第2方向A2に並んだコレステリック液晶CLに着目すると、各液晶分子LM11の配向方向は、一定角度ずつ異なっている。つまり、第2方向A2に沿って並んだ複数の液晶分子LM11の配向方向は、線形に変化している。したがって、第2方向A2に沿って並んだ複数のコレステリック液晶CLの空間位相は、第2方向A2に沿って線形に変化している。その結果、
図2に示した液晶層3のように、X-Y平面に対して傾斜する反射面3Rが形成される。ここでの「線形に変化」は、例えば、液晶分子LM11の配向方向の変化量が1次関数で表されることを示す。なお、ここでの液晶分子LM11の配向方向とは、X-Y平面における液晶分子LM11の長軸方向に相当する。
【0047】
ここで、一平面内において、第2方向A2に沿って液晶分子LM11の配向方向が180度だけ変化するときの2つの液晶分子LM11の間隔を周期Tと定義する。なお、
図3においてDPは、液晶分子LM11の旋回方向を示している。
図2に示した反射面3Rの傾斜角度θαは、周期T及び螺旋ピッチPによって適宜設定される。周期Tは、一例では、1000nm~3000nmである。
【0048】
図4は、太陽電池装置100の外観の一例を示す図である。
【0049】
図示した例では、波長変換層41は雲型に形成され、波長変換層42は月型に形成され、波長変換層43は山型に形成されている。遮光層5は、波長変換層41乃至43をそれぞれ囲むように形成され、各波長変換層の輪郭を形成している。波長変換層41乃至43の各々の透過光は、互いに異なる色を呈する。また、波長変換層41乃至43は、いずれも入射光の一部の波長を、太陽電池PVにて発電に利用可能な特定波長に変換する機能を有している。
【0050】
波長変換層41を透過した光LTt1は、第1色を呈している。また、波長変換層41で変換された特定波長の光LTcは、液晶層3で反射された後に太陽電池PVに向かって導光される。
波長変換層42を透過した光LTt2は、第2色を呈している。また、波長変換層42で変換された特定波長の光LTcは、液晶層3で反射された後に太陽電池PVに向かって導光される。
波長変換層43を透過した光LTt3は、第3色を呈している。また、波長変換層43で変換された特定波長の光LTcは、液晶層3で反射された後に太陽電池PVに向かって導光される。
第1色、第2色、及び、第3色は、互いに異なる色である。
【0051】
したがって、太陽電池装置100は、基板10に直接入射する光LTiの一部、及び、波長変換層41乃至43で変換された光LTcを利用して発電しながら、ステンドガラス風の外観を実現することができ、美観を向上させることができる。
また、透過光の色が互いに異なる複数種類の波長変換層を用いて自在に図柄を作製することができる。
また、波長変換層41乃至43の各々は、遮光層5によって縁取りされているため、輪郭を強調することができ、デザイン性を高めることができる。
また、遮光層5が発電に利用可能な特定波長を透過する材料で形成されている場合には、遮光層5が特定波長を遮光する場合と比較して、発電量を向上することができる。
【0052】
なお、デザイン性を優先して、波長変換層の間に非発電領域が形成されていてもよい。ここでの非発電領域とは、光LTiのほぼ全てを吸収する黒色の領域であってもよいし、波長変換層が配置される領域ではあるが、変換された光の波長が特定波長とは異なる領域であってもよいし、特定波長の光が得られない領域であってもよい。
【0053】
図5は、太陽電池装置100の他の構成例を模式的に示す断面図である。
【0054】
図5に示す構成例は、
図1に示した構成例と比較して、太陽電池装置100がさらに透明な保護基板11を備えた点で相違している。
【0055】
保護基板11は、例えば、ガラス板または合成樹脂板によって構成されている。保護基板11は、X-Y平面に沿った平板状に形成され、主面F11と、主面F12と、側面S11と、側面S12と、を有している。
主面F11及び主面F12は、X-Y平面に略平行な面であり、第1方向A1において、互いに対向している。また、主面F12は、第1方向A1において、基板1の主面F1に対向している。
側面S11及び側面S12は、X-Z平面と略平行な面であり、第2方向A2において、互いに対向している。側面S11は、第1方向A1において側面S1の直上に位置している。側面S12は、第1方向A1において側面S2の直上に位置している。
【0056】
波長変換層41及び42は、基板1と保護基板11との間に挟持されている。図示した例では、波長変換層41及び42は、主面F1及び主面F12に接している。
【0057】
太陽電池PV1は、第2方向A2において、側面S1及び側面S11に対向している。図示した例では、太陽電池PV1は、側面S1及び側面S11に接している。
太陽電池PV2は、第2方向A2において、側面S2及び側面S12に対向している。図示した例では、太陽電池PV2は、側面S2及び側面S12に接している。
【0058】
このような太陽電池装置100において、保護基板11を透過した光LTiの一部は、波長変換層41及び波長変換層42においてそれぞれ特定波長の光に変換される。
【0059】
このとき、波長変換層41で変換された特定波長の光は、光LTc10、光LTc11、光LTc12を含む。
光LTc10は、基板1を透過して液晶層3の反射面3Rで反射され、側面S1に向かって導光され、太陽電池PV1において発電に利用される。
光LTc11は、保護基板11に入射し、側面S11に向かって導光され、太陽電池PV1において発電に利用される。
光LTc12は、保護基板11に入射し、側面S12に向かって導光され、太陽電池PV2において発電に利用される。
【0060】
同様に、波長変換層42で変換された特定波長の光は、光LTc20、光LTc21、光LTc22を含む。
光LTc20は、基板1を透過して液晶層3の反射面3Rで反射され、側面S1に向かって導光され、太陽電池PV1において発電に利用される。
光LTc21は、保護基板11に入射し、側面S11に向かって導光され、太陽電池PV1において発電に利用される。
光LTc22は、保護基板11に入射し、側面S12に向かって導光され、太陽電池PV2において発電に利用される。
【0061】
このように、波長変換層41及び42で変換された光が様々な方向に散乱する場合であっても、これらの光を発電に利用することができ、発電効率を向上することができる。
また、波長変換層41及び42が保護基板11で覆われるため、波長変換層41及び42の劣化や、波長変換層41及び42の基板1からの脱落を抑制することができる。
【0062】
図5に示した例では、太陽電池装置100が2辺に沿って太陽電池PV1及びPV2を備える場合について説明したが、これに限らない。
【0063】
図6は、太陽電池装置100の他の構成例を模式的に示す平面図である。
【0064】
図6に示す構成例では、太陽電池装置100は、4辺に沿って太陽電池PV1乃至PV4を備えている。
太陽電池PV1は、基板1の側面S1及び保護基板11の側面S11に対向している。
太陽電池PV2は、基板1の側面S2及び保護基板11の側面S12に対向している。
太陽電池PV3は、基板1の側面S3及び保護基板11の側面S13に対向している。
太陽電池PV4は、基板1の側面S4及び保護基板11の側面S14に対向している。
【0065】
これにより、
図5に示した波長変換層41及び42において特定波長に変換された光が散乱した場合に、いずれの方向に導光されても発電に利用することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、発電しつつ、美観を向上させることが可能な太陽電池装置を提供することができる。
【0067】
上述した実施形態において、例えば、波長変換層41は第1波長変換層に相当し、波長変換層42は第2波長変換層に相当する。
また、基板1において、主面F1は第1主面に相当し、主面F2は第2主面に相当し、側面S1は第1側面に相当する。
また、保護基板11において、側面S11は第2側面に相当する。
【0068】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
100…太陽電池装置
1…基板 F1、F2…主面 S1、S2…側面
3…液晶層 CL…コレステリック液晶 3R…反射面
41…波長変換層 42…波長変換層
5…遮光層
11…保護基板 F11、F12…主面 S11、S12…側面
PV、PV1、PV2、PV3、PV4…太陽電池