(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010786
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】リチウムイオン系蓄電デバイスの製造方法、リチウムイオン系蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01G 11/84 20130101AFI20240118BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240118BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20240118BHJP
H01G 13/02 20060101ALI20240118BHJP
H01G 9/048 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
H01G11/84
H01M10/0587
H01G11/06
H01G13/02 F
H01G13/02 301Z
H01G9/048 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112287
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】能登 健一
(72)【発明者】
【氏名】笠間 亮太
(72)【発明者】
【氏名】木村 維摩
(72)【発明者】
【氏名】中村 文哉
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA05
5E078AB06
5E078AB13
5E078BB26
5E078FA02
5E078FA13
5E078HA05
5E078LA07
5E078ZA03
5E082AB04
5E082LL05
5H029AJ05
5H029AM01
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ03
5H029CJ07
5H029HJ12
5H029HJ15
(57)【要約】
【課題】リチウムの析出を抑えることで、リチウムの失活速度を低減し、耐久性を高める。
【解決手段】リチウムイオン系蓄電デバイスは、円筒状セル3を形成する工程と、円筒状セル3をケーシング内に収容する工程と、を備える。円筒状セル3を形成する工程では積層された電極箔9、及びセパレータ10の延伸方向Deに張力を付与しつつ、電極箔9、及びセパレータ10を巻き取る。円筒状セル3を形成する工程では、電極箔9、及びセパレータ10を円筒状に巻き回してなる円筒状セル3を形成する。円筒状セル3をケーシング内に収容する工程では、円筒状セル3を、電解液とともに筒状のケーシング内に収容する。円筒状セル3を形成する工程では、セパレータ10を介して対向する電極箔9同士の間に、0.5MPa以上0.7MPa以下の圧力が付与された円筒状セル3を形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ帯状に延びる、電極箔とセパレータとを積層し、積層された前記電極箔、及び前記セパレータの延伸方向に張力を付与しつつ、前記電極箔、及び前記セパレータの延伸方向の第一側を巻き取ることで、前記電極箔、及び前記セパレータを円筒状に巻き回してなる円筒状セルを形成する工程と、
前記円筒状セルを、電解液とともに筒状のケーシング内に収容する工程と、を備え、
前記円筒状セルを形成する工程では、前記セパレータを介して対向する前記電極箔同士の間に、0.5MPa以上0.7MPa以下の圧力が付与された前記円筒状セルを形成する
リチウムイオン系蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記円筒状セルを形成する工程では、前記電極箔、及び前記セパレータの延伸方向の第二側で前記電極箔、及び前記セパレータを繰り出す部分と、前記電極箔、及び前記セパレータの延伸方向の第一側で前記電極箔、及び前記セパレータを巻き取る部分との間で、前記電極箔、及び前記セパレータを、前記電極箔、及び前記セパレータの延伸方向に交差する方向に押圧することで、前記電極箔、及び前記セパレータに張力を付与する
請求項1に記載のリチウムイオン系蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
それぞれ帯状に延びる電極箔とセパレータとが積層された状態で、円筒状に巻き回された円筒状セルと、
前記円筒状セルを収容する円筒状のケーシングと、を備え、
前記円筒状セルは、前記電極箔、及び前記セパレータに、前記電極箔、及び前記セパレータが延伸する方向の張力が付与されることで、前記セパレータを介して対向する前記電極箔同士の間に、0.5MPa以上0.7MPa以下の圧力が付与されている
リチウムイオン系蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン系蓄電デバイスの製造方法、リチウムイオン系蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正極および負極間にセパレータを介して捲回してなる電極群と、電極群を収容するケースと、ケース内の電極群に浸透または浸漬させた有機電解液と、を備えるリチウムイオン系の電気化学デバイスの構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたような構成を、例えばリチウムイオンキャパシタに適用した場合、製品の耐久試験等を行うと、負極にリチウムが析出し、リチウムの失活速度が増大してしまう場合があることを、本発明者らは見いだした。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、リチウムの析出を抑えることで、リチウムの失活速度を低減し、耐久性を高めることができるリチウムイオン系蓄電デバイスの製造方法、リチウムイオン系蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るリチウムイオン系蓄電デバイスの製造方法は、それぞれ帯状に延びる、電極箔とセパレータとを積層し、積層された前記電極箔、及び前記セパレータの延伸方向に張力を付与しつつ、前記電極箔、及び前記セパレータの延伸方向の第一側を巻き取ることで、前記電極箔、及び前記セパレータを円筒状に巻き回してなる円筒状セルを形成する工程と、前記円筒状セルを、電解液とともに筒状のケーシング内に収容する工程と、を備え、前記円筒状セルを形成する工程では、前記セパレータを介して対向する前記電極箔同士の間に、0.5MPa以上0.7MPa以下の圧力が付与された前記円筒状セルを形成する。
【0006】
本発明の一態様に係るリチウムイオン系蓄電デバイスは、それぞれ帯状に延びる電極箔とセパレータとが積層された状態で、円筒状に巻き回された円筒状セルと、前記円筒状セルを収容する円筒状のケーシングと、を備え、前記円筒状セルは、前記電極箔、及び前記セパレータに、前記電極箔、及び前記セパレータが延伸する方向の張力が付与されることで、前記セパレータを介して対向する前記電極箔同士の間に、0.5MPa以上0.7MPa以下の圧力が付与されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リチウムの析出を抑えることで、リチウムの失活速度を低減し、耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る蓄電デバイスの概略構成を示す断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る円筒状セルを展開した状態の平面図である。
【
図3】
図2の円筒状セルを展開した状態の断面図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係るリチウムイオン系蓄電デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈実施形態〉
《リチウムイオン系蓄電デバイスの構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン系蓄電デバイス1としては、リチウムイオンキャパシタ(LIC)を一例に説明する。つまり、本実施形態のリチウムイオン系蓄電デバイス1は、正極に電気二重層キャパシタ、負極にリチウムイオンバッテリーの構造を有している。
リチウムイオン系蓄電デバイス1は、ケーシング2と、円筒状セル3と、集電板4と、端子板5と、電解液6と、を備えている。
【0010】
ケーシング2は、アルミニウム合金等の金属により形成され、有底筒状をなしている。ケーシング2は、円筒状セル3、集電板4、電解液6を収容する収容空間7を形成している。本実施形態のケーシング2の開口部8には、絞り加工等により端子板5が取り付けられている。端子板5は、開口部8を閉塞する。
【0011】
円筒状セル3は、ケーシング2の収容空間7に収容可能な円筒状に形成されている。この円筒状に形成された円筒状セル3は、電解液6と共に収容空間7に収容される。円筒状セル3の中心軸aは、ケーシング2の収容空間7に収容された状態で、ケーシング2の収容空間7の中心軸に沿って延びている。なお、以下の説明においては、円筒状セル3の中心軸aの延びる方向を中心軸方向Daと称し、中心軸方向Daにおいてケーシング2の開口部8が配置される側を中心軸方向第一側Da1、その反対側を中心軸方向第二側Da2と称する。
【0012】
図1~
図4に示すように、円筒状セル3は、複数の電極箔9と、複数のセパレータ10と、複数の突出部11と、を備えている。円筒状セル3は、電極箔9と、セパレータ10とが交互に積層された状態で、円筒状に巻き回されることで形成されている。
図2に示すように、円筒状セル3は、電極箔9として正電極箔9Pと負電極箔9Nとを備えている。本実施形態の円筒状セル3は、突出部11として正極突出部11Pと負極突出部11Nとを備えている。
【0013】
図3に示すように、本実施形態の正電極箔9Pは、アルミニウム合金からなるアルミニウム層12と、このアルミニウム層12の表裏面にそれぞれ炭素材料を塗布してなる正極炭素材層13と、を備えている。本実施形態の負電極箔9Nは、1000℃以上の融点を有する金属である銅からなる銅層14と、この銅層14の表裏面にそれぞれ炭素材料を塗布してなる負極炭素材層15と、を備えている。これらアルミニウム層12および銅層14は、例えば6~20μmの厚さを有している。
【0014】
セパレータ10は、少なくともリチウムイオン系蓄電デバイス1の電極間の電気絶縁性を保つ電気絶縁材料からなる。セパレータ10は、円筒状セル3を展開した状態で、シート状をなしている。セパレータ10は、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間に配置されている。セパレータ10は、負電極箔9Nを挟み込むように配置されている。これにより、正電極箔9P(電極箔9)と、セパレータ10と、負電極箔9N(電極箔9)と、セパレータ10とが、交互に積層されている。セパレータ10は、例えば、18~22μmの厚さを有している。
【0015】
図2に示すように、突出部11は、電極箔9と一体に形成されている。
図2及び
図4に示すように、本実施形態の円筒状セル3は、複数の突出部11として、中心軸方向第一側Da1に形成された負極突出部11Nと、中心軸方向第二側Da2に形成された正極突出部11Pと、を備えている。正極突出部11Pは、正電極箔9Pから中心軸方向第二側Da2に突出して形成されている。正極突出部11Pは、正電極箔9P、負電極箔9N、及びセパレータ10よりも中心軸方向第二側Da2に突出している。負極突出部11Nは、負電極箔9Nから中心軸方向第一側Da1に突出して形成されている。負極突出部11Nは、正電極箔9P、負電極箔9N、及びセパレータ10よりも中心軸方向第一側Da1に突出している。
【0016】
図4に示すように、円筒状セル3は、それぞれ帯状に延びる、正電極箔9P(電極箔9)と、セパレータ10と、負電極箔9N(電極箔9)と、セパレータ10とを積層した状態で、円筒状に巻き回すことで形成されている。これにより、円筒状セル3を構成する正電極箔9P、負電極箔9N、セパレータ10は、それぞれ中心軸方向Daから見て渦巻状をなしている。
【0017】
このように形成された円筒状セル3は、その外周面にセパレータ10が配置されている。本実施形態では、円筒状セル3の外周面の中心軸方向第一側Da1の縁部と中心軸方向第二側Da2の縁部とに、それぞれ粘着テープ50等が巻かれている。これらの粘着テープ50等により、セパレータ10の端部25が中心軸aを中心とした径方向外側に広がらないようになっている。
【0018】
円筒状セル3は、円筒状セル3単体の状態、つまり、円筒状セル3をケーシング2に収容していない状態で、電極箔9(正電極箔9P、負電極箔9N)、及びセパレータ10に、電極箔9、及びセパレータ10が帯状に延伸する方向De(
図2、
図3参照)の張力が付与されている。この張力により、セパレータ10を介して対向する電極箔9同士の間、すなわち正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間には、0.5MPa以上、0.7MPa以下の範囲内の圧力(以下、接圧と称する)が付与されている。
【0019】
電極箔9、及びセパレータ10に上記範囲の張力を付与することによって、円筒状セル3を構成する正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間に、円筒状セル3の巻き回し方向の全体にわたって、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間に均一な接圧が付与される。これにより、円筒状セル3の全体にわたって、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間隙の均一化が図られる。
【0020】
ここで、仮に、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間隙が不均一であると、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間の電気抵抗が局所的に大きくなる箇所が生じることがある。電気抵抗が局所的に大きい箇所においては、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間の過電圧が大きくなり、負電極箔9Nへのリチウム(Li)の析出に繋がると考えられる。
これに対し、円筒状セル3の全体にわたって、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの接圧が適正に管理されることで、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間隙の均一化が図られる。これにより、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間の電気抵抗のばらつきが抑えられ、リチウムの析出が抑えられる。
【0021】
円筒状セル3において、セパレータ10を介して対向する電極箔9同士の間に付与される接圧を、例えば0.5Mpaよりも小さくすると、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間隙の均一化を図ることによる、リチウムの析出を抑える効果が低下する。また、円筒状セル3において、セパレータ10を介して対向する電極箔9同士の間に付与される接圧を、例えば0.5Mpaよりも小さくしようとすると、円筒状セル3の製造時に電極箔9及びセパレータ10に作用させる張力が低くなり、電極箔9同士の間に付与される接圧を安定して発揮させるという効果が低下する。
【0022】
また、円筒状セル3において、セパレータ10を介して対向する電極箔9同士の間に付与される接圧を、例えば0.7MPaよりも大きくすると、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間に介在するセパレータ10が塑性変形して押し潰され、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間隙が過度に狭くなる可能性がある。また、円筒状セル3において、セパレータ10を介して対向する電極箔9同士の間に付与される接圧を、例えば0.7MPaよりも大きくするため、円筒状セル3の製造時に電極箔9及びセパレータ10に作用させる張力が過度に高くなる。すると、特にセパレータ10の機械的強度を超えてしまい、セパレータ10の破断等、悪影響が生じる可能性がある。
なお、円筒状セル3の外周面において、電極箔9やセパレータ10の終端を粘着テープ50で固定する領域においては、電極箔9、及びセパレータ10に付与される張力が、円筒状セル3の内周部に比較して低下することがある。このため、上記したような、セパレータ10を介して対向する正電極箔9Pと、負電極箔9Nとの間に所定範囲の接圧が付与される領域は、円筒状セル3の外周面に臨む領域を除いた部分となる。
【0023】
円筒状セル3を形成する際に、電極箔9、及びセパレータ10に付与する張力、及びセパレータ10を介して対向する電極箔9同士の間に付与される接圧の適正な数値範囲は、例えば、実際にリチウムイオン系蓄電デバイス1を製品として製造するに先立ち、リチウムイオン系蓄電デバイス1の試作段階で設定するのが好ましい。これには、例えば、電極箔9、及びセパレータ10に張力を付与しながら円筒状セル3を形成する際、セパレータ10を介して対向する電極箔9同士の間に、感圧紙、圧力センサ等を挟み込んでおき、セパレータ10を介して対向する電極箔9同士の間に作用する圧力値を把握する。電極箔9同士の間に作用する圧力値が把握された円筒状セル3を用い、所定条件下で、長時間の保存試験、負荷を繰り返し作用させるサイクル試験等を実施し、実施後の円筒状セル3を評価し、リチウムの析出の有無を確認する。その結果、リチウムの析出が確認できない条件に基づき、電極箔9、及びセパレータ10に付与する張力、及びセパレータ10を介して対向する電極箔9同士の間に付与される接圧の適正な数値範囲を設定するようにしてもよい。
【0024】
本実施形態では、
図1、
図4に示すように、集電板4として、正極集電板4Pと負極集電板4Nとを備えている。負極集電板4Nは、負極突出部11Nに溶接等により固定されている。正極集電板4Pは、正極突出部11Pに溶接等により固定されている。これら正極集電板4Pと負極集電板4Nとは、中心軸aを中心とした円形の外縁を有した概略平板状に形成され、中心軸方向Daで突出部11側を向く内側面27と、中心軸方向Daで内側面27の反対側を向いて背合わせとなる外側面28とを有している。
【0025】
正極集電板4Pは、正極突出部11Pと同一の金属を含む金属により形成されている。すなわち、本実施形態の正極集電板4Pは、アルミニウム合金により形成されている。負極集電板4Nは、負極突出部11Nと同一の金属を含む金属により形成されている。負極集電板4Nは、1000℃以上の融点を有する材料によって形成されている。本実施形態の負極集電板4Nは、銅により形成されている。なお、
図1に示すように、本実施形態における集電板4の中央部には、中心軸方向Daの突出部11側に向かって突出する凸部29が形成されている。さらに、集電板4の凸部29には、貫通孔30が形成されている。凸部29は、円筒状セル3の中央部に形成され中心軸方向Daに延びる断面円形の空洞部31に挿入されている。
【0026】
図1に示すように、端子板5は、ケーシング2の開口部8を閉塞している。本実施形態の端子板5は、端子板本体35と、圧力調整弁36と、封口ゴム37と、を少なくとも備えている。端子板本体35は、中心軸方向Daから見て円形をなしており、その中央部に孔35hを有している。圧力調整弁36は、端子板本体35の中央部に配置され、孔35hを介して収容空間7の圧力を調整する。封口ゴム37は、端子板本体35とケーシング2の開口部8の内周面との隙間をシールしている。圧力調整弁36は、端子板本体35の孔35hから収容空間7に電解液6を注入したあとに孔35hを塞ぐように取り付けられる。
【0027】
《円筒状セルの製造装置の構成》
上記したような円筒状セル3は、
図5に示すような製造装置100によって製造される。製造装置100は、装置基部101と、複数のロール支持部102と、巻き付けローラー110と、複数の中間ガイド120と、を備えている。
【0028】
複数のロール支持部102は、装置基部101に支持されている。複数のロール支持部102は、正電極箔9P(及び正極突出部11P)、負電極箔9N(及び負極突出部11N)、2組のセパレータ10の原反ロール103、104、105、106を、それぞれ回転自在に支持する。原反ロール103は、正電極箔9P(及び正極突出部11P)を形成する、帯状に延びる正極材103mが、ロール状に巻き回されたものである。原反ロール104は、負電極箔9N(及び負極突出部11N)を形成する、帯状に延びる負極材104mが、ロール状に巻き回されたものである。原反ロール105、106は、それぞれ、セパレータ10を形成する、帯状に延びるセパレータ材105m、106mが、ロール状に巻き回されたものである。正極材103m、負極材104m、セパレータ材105m、106mは、それぞれ、その延伸方向Deの第二側De2側の原反ロール103、104、105、106から繰り出される。繰り出された正極材103m、負極材104m、セパレータ材105m、106mは、複数の中間ガイド120に案内されて、巻き付けローラー110へと供給される。
【0029】
巻き付けローラー110は、装置基部101に回転自在に支持されている。巻き付けローラー110は、モーター(図示せず)によって回転駆動される。巻き付けローラー110は、原反ロール103から繰り出された正極材103mと、原反ロール105から繰り出されたセパレータ材105mと、原反ロール104から繰り出された負極材104mと、原反ロール106から繰り出されたセパレータ材106mとを、積層した状態で巻き取る。巻き付けローラー110は、帯状にそれぞれ延びる、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mの延伸方向Deの第一側De1を円筒状に巻き回すことで、円筒状セル3を形成する。
【0030】
複数の中間ガイド120は、原反ロール103、105、104、106から正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mを繰り出す部分と、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mを巻き取る巻き付けローラー110との間に配置されている。複数の中間ガイド120は、原反ロール103、105、104、106から繰り出される正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mの移動経路上にそれぞれ複数配置されている。各中間ガイド120は、装置基部101に支持されている。
【0031】
各中間ガイド120は、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mの表面に接している。各中間ガイド120は、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mの表面を、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mが帯状に延びる延伸方向Deに交差する方向に押圧している。正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mは、それぞれ、各中間ガイド120で押圧されることによって、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mの延伸方向Deに沿った方向の張力が付与されている。
ここで、各中間ガイド120は、スプリング等の弾性部材や、空気圧、油圧等により、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mを押圧するようにしてもよい。また、中間ガイド120は、装置基部101に回転自在に支持されていてもよい。
【0032】
《リチウムイオン系蓄電デバイスの製造方法》
上記リチウムイオン系蓄電デバイスの製造方法を説明する。
図6に示すように、リチウムイオン系蓄電デバイスの製造方法S10は、円筒状セル3を形成する工程S11と、円筒状セル3をケーシング2内に収容する工程S12と、を含んでいる。
【0033】
円筒状セル3を形成する工程S11では、電極箔9とセパレータ10とを積層し、積層された電極箔9、及びセパレータ10の延伸方向Deに張力を付与しつつ、電極箔9、及びセパレータ10の延伸方向Deの第一側De1を巻き取る。これには、例えば、上記製造装置100を用いる。原反ロール103、105、104、106から正極材103m(電極箔9)、セパレータ材105m(セパレータ10)、負極材104m(電極箔9)、セパレータ材106m(セパレータ10)を繰り出し、これらを、巻き付けローラー110、または巻き付けローラー110の手前の位置で合流させて積層する。積層された正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mは、それぞれの延伸方向Deの第一側De1で、巻き付けローラー110によって巻き取られる。正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mを所定長巻き取った段階で、製造装置100では、切断機構(図示せず)により、原反ロール103、105、104、106から繰り出される正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mを切断する。切断された正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mの終端は、粘着テープ50により、円筒状セル3の外周面に固定される。このようにして、円筒状セル3が形成される。
【0034】
正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mを巻き付けローラー110によって巻き取るとき、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mのそれぞれに張力が付与される。この張力は、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mの移動経路上に配置された複数の中間ガイド120により調整可能とされている。
【0035】
各中間ガイド120は、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mを蛇行させることで、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mの表面を、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mが帯状に延びる延伸方向Deに交差する方向に押圧している。そして、各中間ガイド120の位置は移動可能となっており、各中間ガイド120の位置を移動させることで、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mの各張力を調整可能としている。なお、各中間ガイド120は、スプリング等の弾性部材や、空気圧、油圧等により、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mに対する押圧力を調整可能とし、これにより、正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mの各張力を調整可能としてもよい。
【0036】
このように、張力を付与しながら、積層された正極材103m、セパレータ材105m、負極材104m、セパレータ材106mを巻き取ることによって、形成される円筒状セル3は、ケーシング2内に収容される前の段階で、セパレータ10を介して対向する電極箔9同士(正電極箔9Pと負電極箔9N)の間に、接圧が付与されている。
【0037】
円筒状セル3をケーシング2内に収容する工程S12では、工程S11で形成された円筒状セル3を、ケーシング2内に収容する。これに先立ち、円筒状セル3の突出部11に、集電板4を溶接により接合する。突出部11と集電板4とが接合された構造体は、端子板本体35を集電板4に溶接後、ケーシング2に収容される。その後、ケーシング2の開口部8が端子板5の封口ゴム37により閉塞され、端子板本体35の孔35hから電解液6が注入されて、圧力調整弁36が取り付けられる。これにより、リチウムイオン系蓄電デバイス1が製造される。
【0038】
<作用効果>
上記のリチウムイオン系蓄電デバイス1の製造方法S10、及びリチウムイオン系蓄電デバイス1では、円筒状セル3の電極箔9、及びセパレータ10に張力を付与することによって、円筒状セル3を構成する正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間に、円筒状セル3の巻き回し方向の全体にわたって、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間に、0.5MPa以上0.7MPa以下の均一な接圧が付与される。これにより、円筒状セル3の全体にわたって、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間隙の均一化が図られる。そのため、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの接圧が適正に管理され、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間の電気抵抗のばらつきが抑えられる。その結果、電極箔9(負電極箔9N)に、リチウムが析出することが抑えられる。
よって、リチウムの析出を抑えることで、リチウムの失活速度を低減し、リチウムイオン系蓄電デバイス1の耐久性を高めることができる。これにより、特に、リチウムイオン系蓄電デバイス1に大電流を流して使用しても、高い耐久性を維持することができる。
【0039】
さらに、円筒状セル3は、ケーシング2内に収容される前の段階で、セパレータ10を介して対向する電極箔9同士の間に、所定範囲の接圧が付与されている。電極箔9同士の間に接圧を付与する他の手法としては、例えば、円筒状セル3を、ケーシング2内に圧入することで、ケーシング2から円筒状セル3に接圧を付与する方法がある。しかし、このような他の手法では、ケーシング2から円筒状セル3に接圧が付与される部分が、円筒状セル3とケーシングとが接触する部分に限られる。このため、例えば、角筒状のケーシング2内に円筒状セル3を圧入した場合、ケーシング2から円筒状セル3に付与される接圧の分布が不均一なものとなってしまう。また、ケーシング2に円筒状セル3を圧入するには、手間も掛かる。
これに対し、上記のリチウムイオン系蓄電デバイス1の製造方法S10では、ケーシング2内に円筒状セル3が収容される前の段階で、電極箔9同士の間に接圧が付与されているので、円筒状セル3の巻き回し方向の全体にわたって、電極箔9同士の間に、均一な接圧を容易に付与することができる。また、このような円筒状セル3は、ケーシング2内に圧入する必要が無いため、その組立作業も容易に行える。
【0040】
さらに、中間ガイド120により、電極箔9、及びセパレータ10を、電極箔9、及びセパレータ10の延伸方向Deに交差する方向に押圧することにより、電極箔9、及びセパレータ10に張力を、簡易な構成で付与することができる。
【0041】
[実施例]
上記したようなリチウムイオン系蓄電デバイス1の製造方法S10により、円筒状セル3を形成し、リチウムの析出状況を確認したので、その結果を示す。
円筒状セル3は、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間に、0.5MPaの接圧が作用するように製作した。比較のため、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間に作用する接圧が、0.01MPa(比較例1)、0.04MPa(比較例2)となるセルを用意した。
これらの実施例の円筒状セル3、及び比較例1、2のセルそれぞれについて、温度80℃、試験時間160時間、試験電圧を2.8Vから3.95Vの間で変動させて充放電を繰り返すサイクル試験を実施した。その結果、正電極箔9Pと負電極箔9Nとの間に、0.5MPaの接圧が作用している円筒状セル3においては、リチウムの析出が認められなかった。これに対し、接圧を0.01MPa、0.04MPaとした比較例1、2では、負電極箔9Nにリチウムの析出が認められた。
【0042】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0043】
上記の実施形態では、中間ガイド120により、電極箔9、及びセパレータ10に張力を付与する構成としたが、これに限られない。例えば、原反ロール103~106を支持するロール支持部102において、原反ロール103~106から電極箔9、及びセパレータ10を繰り出す方向と反対方向のトルクを原反ロール103~106に付与することで、電極箔9、及びセパレータ10に張力を付与するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…リチウムイオン系蓄電デバイス 2…ケーシング 3…円筒状セル 6…電解液 9…電極箔 10…セパレータ