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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107863
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】バイアスT回路
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20240802BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20240802BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01L27/04 L
H05K1/18 J
H05K1/02 N
H05K1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012021
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】鍋倉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】三輪 俊介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 樹明
【テーマコード(参考)】
5E336
5E338
5F038
【Fターム(参考)】
5E336AA04
5E336BB03
5E336CC31
5E336CC60
5E336EE03
5E336GG11
5E338AA03
5E338BB75
5E338CC04
5E338CD02
5E338CD12
5E338EE11
5F038AZ04
5F038CD02
5F038CD04
5F038EZ20
(57)【要約】
【課題】DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分が周辺回路や高周波信号経路に結合することによる性能劣化を抑制することができるバイアスT回路を実現する。
【解決手段】バイアスT回路1は、一方の電極に電源供給線路4が接続され、他方の電極に高周波信号線路3が接続される第1チップインダクタL1と、第1チップインダクタL1に並列接続された第2チップインダクタL2と、基板と、を含む。第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2は、第1チップインダクタL1の電源供給線路4側の電極と高周波信号線路3側の電極とを結ぶ仮想直線上に第2チップインダクタL2の一部が重なり、第1チップインダクタL1に流れる電流の向きI1と第2チップインダクタL2に流れる電流の向きI2とが互いに逆向きとなるように、基板2に実装されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の電極に電源供給線路が接続され、他方の電極に高周波信号線路が接続される第1チップインダクタと、
前記第1チップインダクタに並列接続された第2チップインダクタと、
基板と、
を含み、
前記第1チップインダクタ及び前記第2チップインダクタは、
前記第1チップインダクタの前記電源供給線路側の電極と前記高周波信号線路側の電極とを結ぶ仮想直線上に前記第2チップインダクタの一部が重なり、
前記第1チップインダクタに流れる電流の向きと前記第2チップインダクタに流れる電流の向きとが互いに逆向きとなるように、前記基板に実装されている、
バイアスT回路。
【請求項2】
請求項1に記載のバイアスT回路であって、
前記基板は、
前記電源供給線路及び前記第1チップインダクタを含む第1電源供給経路と、
前記電源供給線路及び前記第2チップインダクタを含む第2電源供給経路と、
を有し、
前記第1電源供給経路は、前記第2電源供給経路に含まれない第1線路を含み、
前記第2電源供給経路は、前記第1電源供給経路に含まれない第2線路を含む、
バイアスT回路。
【請求項3】
請求項2に記載のバイアスT回路であって、
前記第1線路及び前記第2線路の少なくとも一方がミアンダ配線を含む、
バイアスT回路。
【請求項4】
請求項3に記載のバイアスT回路であって、
前記第1線路の線路長と前記第2線路の線路長とは略同一長である、
バイアスT回路。
【請求項5】
請求項2に記載のバイアスT回路であって、
前記第1線路及び前記第2線路の少なくとも一方が渦巻配線を含む、
バイアスT回路。
【請求項6】
請求項5に記載のバイアスT回路であって、
前記第1線路の線路長と前記第2線路の線路長とは略同一長である、
バイアスT回路。
【請求項7】
請求項3から6の何れか一項に記載のバイアスT回路であって、
前記基板は、表層又は内層にGND層を含む多層構造を有し、
前記GND層は、前記第1線路及び前記第2線路の少なくとも一方に重なる領域の一部に開口が設けられている、
バイアスT回路。
【請求項8】
請求項3から6の何れか一項に記載のバイアスT回路であって、
前記基板は、前記第1線路及び前記第2線路の少なくとも一方に重なる領域の一部の表面に誘電体が設けられている、
バイアスT回路。
【請求項9】
請求項3から6の何れか一項に記載のバイアスT回路であって、
前記基板は、前記第1線路及び前記第2線路の少なくとも一方に重なる領域の一部の表面に磁性体が設けられている、
バイアスT回路。
【請求項10】
請求項2に記載のバイアスT回路であって、
前記第1電源供給経路と前記第2電源供給経路とは、所定の周波数帯域において略同一のインピーダンスである、
バイアスT回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアスT回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波回路への電力供給経路には、高周波信号に影響を与えず直流電流や直流電圧といった直流成分を重畳して供給するバイアスT(Bias Tee)回路が用いられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4620643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波回路に電力を供給する電源回路としては、一般にDC-DCコンバータが用いられる。DC-DCコンバータのスイッチング周波数は、数100kHzから100MHzに及び、スイッチング周波数の高次高調波成分は、数GHzから数10GHzに到達する場合がある。このようなDC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分は、バイアスT回路のインダクタと高周波回路との電磁結合によって高周波回路に重畳し、高周波回路の出力特性が劣化する場合がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分が周辺回路や高周波信号経路に結合することによる性能劣化を抑制することができるバイアスT回路を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面のバイアスT回路は、一方の電極に電源供給線路が接続され、他方の電極に高周波信号線路が接続される第1チップインダクタと、前記第1チップインダクタに並列接続された第2チップインダクタと、基板と、を含み、前記第1チップインダクタ及び前記第2チップインダクタは、前記第1チップインダクタの前記電源供給線路側の電極と前記高周波信号線路側の電極とを結ぶ仮想直線上に前記第2チップインダクタの一部が重なり、前記第1チップインダクタに流れる電流の向きと前記第2チップインダクタに流れる電流の向きとが互いに逆向きとなるように、前記基板に実装されている。
【0007】
この構成では、第1チップインダクタが発生する磁界と第2チップインダクタが発生する磁界とが互いに打ち消しあう。これにより、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分が周辺回路や高周波信号経路に結合することによる性能劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分が周辺回路や高周波信号経路に結合することによる性能劣化を抑制することができる高周波回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係るバイアスT回路の一例を示す概略図である。
図2図2は、実施形態1に係るバイアスT回路の第1チップインダクタ及び第2チップインダクタの基板配置例を示す図である。
図3A図3Aは、第1比較例に係るバイアスT回路の第1チップインダクタ及び第2チップインダクタの基板配置例を示す図である。
図3B図3Bは、第2比較例に係るバイアスT回路の第1チップインダクタ及び第2チップインダクタの基板配置例を示す図である。
図4A図4Aは、実施形態2に係るバイアスT回路の第1線路の第1例を示す概略図である。
図4B図4Bは、実施形態2に係るバイアスT回路の第2線路の第1例を示す概略図である。
図5A図5Aは、実施形態2に係るバイアスT回路の第1線路の第2例を示す概略図である。
図5B図5Bは、実施形態2に係るバイアスT回路の第2線路の第2例を示す概略図である。
図6図6は、実施形態3に係るバイアスT回路の基板上面視図である。
図7図7は、図6に示すC-C’断面図の第1例を示す図である。
図8図8は、図6に示すC-C’断面図の第2例を示す図である。
図9図9は、図6に示すC-C’断面図の第3例を示す図である。
図10図10は、図6に示すC-C’断面図の第4例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態に係るバイアスT(Bias Tee)回路を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るバイアスT回路の一例を示す概略図である。本開示において、実施形態1に係るバイアスT回路1は、高周波入力信号RFinを電力増幅する増幅回路100への電源供給経路に設けられる。電源回路200は、電源供給線路4及びバイアスT回路1を介して、増幅回路100に電力を供給する。
【0012】
図1に示すように、実施形態1に係るバイアスT回路1は、第1チップインダクタL1、第2チップインダクタL2、及びキャパシタCを含む。増幅回路100から出力される高周波出力信号RFoutは、高周波信号線路3及びキャパシタCを介して出力される。
【0013】
第1チップインダクタL1は、第1電源供給経路51に設けられている。より具体的に、第1チップインダクタL1は、一方の電極に電源供給線路4が接続され、他方の電極に高周波信号線路3が接続される。
【0014】
第2チップインダクタL2は、電源回路200からの第2電源供給経路52に設けられている。より具体的に、第2チップインダクタL2は、一方の電極に電源供給線路4が接続され、他方の電極に高周波信号線路3が接続される。
【0015】
本開示において、第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2は、同一の表面実装部品(SMD:Surface Mount Device)である。第1チップインダクタL1と第2チップインダクタL2とは、電源供給線路4と高周波信号線路3との間に並列接続される。
【0016】
電源供給線路4は、電源回路200から基板上に設けられた第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2までの間の電源供給線や基板パターン等を含む。
【0017】
また、電源回路200としては、DC-DCコンバータが例示される。DC-DCコンバータのスイッチング周波数は、数100kHzから100MHzに及び、スイッチング周波数の高次高調波成分は、数GHzから数10GHzに到達する場合がある。
【0018】
バイアスT回路のインダクタに電流が流れることにより、インダクタの周囲に磁界が発生する。この磁界が周辺回路や高周波信号経路に結合すると、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分が高周波信号に重畳することとなる。
【0019】
本開示では、2つのチップインダクタを並列接続し、互いのチップインダクタによって発生する磁界が互いに打ち消しあうように配置する。これにより、周辺回路や高周波信号経路に結合する高調波成分を抑制することができる。以下、周辺回路や高周波信号経路に結合する高調波成分を抑制可能なバイアスT回路1の第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2の基板配置について、図2図3A図3Bを参照して説明する。
【0020】
図2は、実施形態1に係るバイアスT回路の第1チップインダクタ及び第2チップインダクタの基板配置例を示す図である。図3Aは、第1比較例に係るバイアスT回路の第1チップインダクタ及び第2チップインダクタの基板配置例を示す図である。図3Bは、第2比較例に係るバイアスT回路の第1チップインダクタ及び第2チップインダクタの基板配置例を示す図である。図2図3A図3Bでは、第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2の実装面を基板2に平行なXY平面に直交するZ方向に見た平面図を示している。
【0021】
第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2は、電流通過方向の両端部にそれぞれ電極が設けられている。
【0022】
図2図3A図3Bにおいて、A-A’線は、XY平面における第1チップインダクタL1の電源供給線路4側の電極の中心点7aと高周波信号線路3側の電極の中心点8aとを結ぶ仮想直線を示している。言い換えると、A-A’線は、Z方向に見て第1チップインダクタL1の電流通過方向に平行な2辺間の中心線を示している。第1チップインダクタL1の各電極の中心点7a,8aは、各電極をZ方向に見た幾何中心を示す位置であっても良い。
【0023】
また、図2図3A図3Bにおいて、B-B’線は、XY平面における第2チップインダクタL2の電源供給線路4側の電極の中心点7bと高周波信号線路3側の電極の中心点8bとを結ぶ仮想直線を示している。言い換えると、B-B’線は、Z方向に見て第2チップインダクタL2の電流通過方向に平行な2辺間の中心線を示している。第2チップインダクタL2の各電極の中心点7b,8bは、各電極をZ方向に見た幾何中心を示す位置であっても良い。
【0024】
基板2は、複数の配線層が誘電体を挟んで積層された多層構造を有している。ここでは図示しないが、基板2上で各配線層に跨る線路は、例えば非貫通ビア(IVH:Interstitial Via Hole)で接続される。電源供給線路4と高周波信号線路3とは、誘電体層を介して交差部6で交差している。
【0025】
本開示において、第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2は、第1チップインダクタL1の2つの電極の中心点7a,8a間を結ぶ仮想直線A-A’上に、第2チップインダクタL2が配置されている。図2に示す実施形態1に係る基板配置例では、より好ましい態様として、第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2は、第1チップインダクタL1の2つの電極の中心点7a,8a間を結ぶ仮想直線A-A’上に、第2チップインダクタL2の2つの電極の中心点7b,8b間を結ぶ仮想直線B-B’が重なるように配置された例を示している。
【0026】
また、第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2は、高周波信号線路3に対して対称配置されている。このような配置とすることにより、第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2は、図1に示すように、第1チップインダクタL1に流れる電流の向きI1と第2チップインダクタL2に流れる電流の向きとが互いに逆向きとなるように配置される。
【0027】
これにより、第1チップインダクタL1によって発生する磁界と第2チップインダクタL2によって発生する磁界とが互いに打ち消しあい、高周波信号線路3に結合する高調波成分が抑制される。
【0028】
図3Aに示す第1比較例に係る基板配置例において、第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2は、第1チップインダクタL1の2つの電極の中心点7a,8a間を結ぶ仮想直線A-A’に対し、第2チップインダクタL2の2つの電極の中心点7b,8b間を結ぶ仮想直線B-B’がX方向にずれて配置されている。
【0029】
図3Aに示す第1比較例に係る基板配置例では、第1チップインダクタL1に流れる電流によって発生する磁界と第2チップインダクタL2に流れる電流によって発生する磁界との相殺効果が小さくなる。
【0030】
また、図3Bに示す第2比較例に係る基板配置例において、第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2は、第1チップインダクタL1の2つの電極の中心点7a,8a間を結ぶ仮想直線A-A’に対し、第2チップインダクタL2の2つの電極の中心点7b,8b間を結ぶ仮想直線B-B’が直交するように配置されている。
【0031】
図3Bに示す第2比較例に係る基板配置例では、第1チップインダクタL1に流れる電流によって発生する磁界と第2チップインダクタL2に流れる電流によって発生する磁界とが互いに直交する。このため、第1チップインダクタL1によって発生する磁界と第2チップインダクタL2によって発生する磁界との相殺効果が生じない。
【0032】
実施形態1に係るバイアスT回路1の第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2の基板配置例では、上述したように、第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2は、第1チップインダクタL1の電源供給線路4側の電極の中心点7aと高周波信号線路3側の電極の中心点8aとを結ぶ仮想直線A-A’上に第2チップインダクタL2が重なり、第1チップインダクタL1に流れる電流の向きI1と第2チップインダクタL2に流れる電流の向きI2とが互いに逆向きとなるように配置される。
【0033】
これにより、第1チップインダクタL1によって発生する磁界と第2チップインダクタL2によって発生する磁界とが互いに打ち消しあい、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分が周辺回路や高周波信号経路に結合することによる性能劣化を抑制することができる。
【0034】
なお、上述した実施形態1では、第1チップインダクタL1の2つの電極の中心点7a,8a間を結ぶ仮想直線A-A’上に、第2チップインダクタL2が配置されている態様について例示したが、これに限定されない。具体的に、本開示は、第1チップインダクタL1の電源供給線路4側の電極と高周波信号線路3側の電極とを結ぶ仮想直線上に第2チップインダクタL2の一部が重なる態様を含む。
【0035】
(実施形態2)
実施形態1において説明した基板配置例において、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分の周辺回路や高周波信号経路への結合抑制効果をより高めるためには、電源供給線路4及び第1チップインダクタL1を含む第1電源供給経路51のインピ-ダンスと、電源供給線路4及び第2チップインダクタL2を含む第2電源供給経路52のインピ-ダンスとを、高調波成分(ノイズ成分)が含まれる所定の周波数帯域において略同一のインピーダンスとする必要がある。
【0036】
なお、具体的に、第1電源供給経路51のインピ-ダンスと第2電源供給経路52のインピ-ダンスとが略同一であるとは、電源供給線路4上の第1電源供給経路51と第2電源供給経路52との共通インピーダンス部分に含まれる任意の点を第1測定点とし、第1チップインダクタL1の高周波信号線路3側の電極を第2測定点とし、第2チップインダクタL2の高周波信号線路3側の電極を第3測定点としたとき、第1測定点-第2測定点間のインピーダンスと、第1測定点-第3測定点間のインピーダンスとが、略等しい状態を示している。
【0037】
図4Aは、実施形態2に係るバイアスT回路の第1線路の第1例を示す概略図である。図4Bは、実施形態2に係るバイアスT回路の第2線路の第1例を示す概略図である。図5Aは、実施形態に係るバイアスT回路の第1線路の第2例を示す概略図である。図5Bは、実施形態に係るバイアスT回路の第2線路の第2例を示す概略図である。
【0038】
図4Aでは、第1電源供給経路51(図1参照)に含まれる第1線路41をミアンダ配線とした例を示している。
【0039】
図4Bでは、第2電源供給経路52(図1参照)に含まれる第2線路42をミアンダ配線とした例を示している。
【0040】
図5Aでは、第1電源供給経路51(図1参照)に含まれる第1線路41を渦巻配線とした例を示している。
【0041】
図5Bでは、第2電源供給経路52(図1参照)に含まれる第2線路42を渦巻配線とした例を示している。
【0042】
実施形態2では、図4A図4B図5A図5Bに示すように、第1電源供給経路51(図1参照)に含まれる第1線路41、及び、第2電源供給経路52(図1参照)に含まれる第2線路42の少なくとも一方をミアンダ配線又は渦巻配線とすることで、第1線路41の線路長と第2線路42の線路長とを略同一長とする。これにより、電源供給線路4及び第1チップインダクタL1を含む第1電源供給経路51のインピ-ダンスと、電源供給線路4及び第2チップインダクタL2を含む第2電源供給経路52のインピ-ダンスとを、高調波成分(ノイズ成分)が含まれる所定の周波数帯域において略同一のインピーダンスとすることができる。
【0043】
これにより、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分の周辺回路や高周波信号経路への結合抑制効果をより高めることができる。
【0044】
(実施形態3)
図6は、実施形態3に係るバイアスT回路の基板上面視図である。図6では、第1チップインダクタL1及び第2チップインダクタL2の実装面をZ方向に見た平面図を示している。また、図6では、第1電源供給経路51(図1参照)に含まれる第1線路41をミアンダ配線又は渦巻配線とした構成を例示している。第2電源供給経路52(図1参照)に含まれる第2線路42をミアンダ配線又は渦巻配線とした構成については、ここでは説明を省略する。
【0045】
図7は、図6に示すC-C’断面図の第1例を示す図である。図8は、図6に示すC-C’断面図の第2例を示す図である。図9は、図6に示すC-C’断面図の第3例を示す図である。図10は、図6に示すC-C’断面図の第4例を示す図である。
【0046】
図7では、基板2の部品実装面に第1線路41が配線され、内層に誘電体DIを挟んでGND層が設けられており、GND層の第1線路41にZ方向に重なる領域の一部に開口が設けられた構成を例示している。
【0047】
図8では、基板2の内層に第1線路41が配線され、第1線路41が設けられる配線層との間に誘電体DIを挟んでGND層が設けられており、GND層の第1線路41にZ方向に重なる領域の一部に開口が設けられた構成を例示している。なお、図8では、基板2の内層にGND層が設けられた態様を例示したが、基板2の表層(部品実装面に設けられた層、又は、部品実装面の裏面に設けられた層)にGND層が設けられた態様であっても良い。
【0048】
図9では、基板2の部品実装面に第1線路41が配線され、基板2の第1線路41に重なる領域の一部の表面に誘電体DI(例えば、絶縁テープ)が設けられた構成を例示している。
【0049】
図10では、基板2の部品実装面に第1線路41が配線され、基板2の第1線路41に重なる領域の一部の表面に磁性体MG(例えば、電波吸収シート)が設けられた構成を例示している。
【0050】
図7図8図9図10に示す態様の何れか、又は複数の態様を組み合わせることで、電源供給線路4及び第1チップインダクタL1を含む第1電源供給経路51のインピ-ダンス、及び、電源供給線路4及び第2チップインダクタL2を含む第2電源供給経路52のインピ-ダンスの少なくとも一方を微調整することができる。
【0051】
これにより、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分の周辺回路や高周波信号経路への結合抑制効果をさらに高めることができる。
【0052】
なお、上記した実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本開示にはその等価物も含まれる。
【0053】
本開示は、上述したように、あるいは、上述に代えて、以下の構成をとることができる。
【0054】
(1)本開示の一側面のバイアスT回路は、一方の電極に電源供給線路が接続され、他方の電極に高周波信号線路が接続される第1チップインダクタと、前記第1チップインダクタに並列接続された第2チップインダクタと、基板と、を含み、前記第1チップインダクタ及び前記第2チップインダクタは、前記第1チップインダクタの前記電源供給線路側の電極と前記高周波信号線路側の電極とを結ぶ仮想直線上に前記第2チップインダクタの一部が重なり、前記第1チップインダクタに流れる電流の向きと前記第2チップインダクタに流れる電流の向きとが互いに逆向きとなるように、前記基板に実装されている。
【0055】
この構成では、第1チップインダクタが発生する磁界と第2チップインダクタが発生する磁界とが互いに打ち消しあう。これにより、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分が周辺回路や高周波信号経路に結合することによる性能劣化を抑制することができる。
【0056】
(2)上記(1)のバイアスT回路において、前記基板は、前記電源供給線路及び前記第1チップインダクタを含む第1電源供給経路と、前記電源供給線路及び前記第2チップインダクタを含む第2電源供給経路と、を有し、前記第1電源供給経路は、前記第2電源供給経路に含まれない第1線路を含み、前記第2電源供給経路は、前記第1電源供給経路に含まれない第2線路を含む。
【0057】
(3)上記(2)のバイアスT回路において、前記第1線路及び前記第2線路の少なくとも一方がミアンダ配線を含む。
【0058】
(4)上記(3)のバイアスT回路において、前記第1線路の線路長と前記第2線路の線路長とは略同一長である。
【0059】
この構成では、電源供給線路及び第1チップインダクタを含む第1電源供給経路のインピ-ダンスと、電源供給線路及び第2チップインダクタを含む第2電源供給経路のインピ-ダンスとを、高調波成分(ノイズ成分)が含まれる所定の周波数帯域において略同一のインピーダンスとすることができる。これにより、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分の周辺回路や高周波信号経路への結合抑制効果をより高めることができる。
【0060】
(5)上記(2)のバイアスT回路において、前記第1線路及び前記第2線路の少なくとも一方が渦巻配線を含む。
【0061】
(6)上記(5)のバイアスT回路において、前記第1線路の線路長と前記第2線路の線路長とは略同一長である。
【0062】
この構成では、電源供給線路及び第1チップインダクタを含む第1電源供給経路のインピ-ダンスと、電源供給線路及び第2チップインダクタを含む第2電源供給経路のインピ-ダンスとを、高調波成分(ノイズ成分)が含まれる所定の周波数帯域において略同一のインピーダンスとすることができる。これにより、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分の周辺回路や高周波信号経路への結合抑制効果をより高めることができる。
【0063】
(7)上記(3)から(6)のバイアスT回路において、前記基板は、表層又は内層にGND層を含む多層構造を有し、前記GND層は、前記第1線路及び前記第2線路の少なくとも一方に重なる領域の一部に開口が設けられている。
【0064】
この構成では、電源供給線路及び第1チップインダクタを含む第1電源供給経路のインピ-ダンス、及び、電源供給線路及び第2チップインダクタを含む第2電源供給経路のインピ-ダンスの少なくとも一方を微調整することができる。これにより、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分の周辺回路や高周波信号経路への結合抑制効果をさらに高めることができる。
【0065】
(8)上記(3)から(6)のバイアスT回路において、前記基板は、前記第1線路及び前記第2線路の少なくとも一方に重なる領域の一部の表面に誘電体が設けられている。
【0066】
この構成では、電源供給線路及び第1チップインダクタを含む第1電源供給経路のインピ-ダンス、及び、電源供給線路及び第2チップインダクタを含む第2電源供給経路のインピ-ダンスの少なくとも一方を微調整することができる。これにより、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分の周辺回路や高周波信号経路への結合抑制効果をさらに高めることができる。
【0067】
(9)上記(3)から(6)のバイアスT回路において、前記基板は、前記第1線路及び前記第2線路の少なくとも一方に重なる領域の一部の表面に磁性体が設けられている。
【0068】
この構成では、電源供給線路及び第1チップインダクタを含む第1電源供給経路のインピ-ダンス、及び、電源供給線路及び第2チップインダクタを含む第2電源供給経路のインピ-ダンスの少なくとも一方を微調整することができる。これにより、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分の周辺回路や高周波信号経路への結合抑制効果をさらに高めることができる。
【0069】
(10)上記(2)のバイアスT回路において、前記第1電源供給経路と前記第2電源供給経路とは、所定の周波数帯域において略同一のインピーダンスである。
【0070】
この構成では、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分の周辺回路や高周波信号経路への結合抑制効果をより高めることができる。
【0071】
本開示により、DC-DCコンバータのスイッチング動作に由来する高調波成分が周辺回路や高周波信号経路に結合することによる性能劣化を抑制することができるバイアスT回路を実現することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 バイアスT回路
2 基板
3 高周波信号線路
4 電源供給線路
41 第1線路
42 第2線路
51 第1電源供給経路
52 第2電源供給経路
100 増幅回路
200 電源回路
C キャパシタ
DI 誘電体
L1 第1チップインダクタ
L2 第2チップインダクタ
MG 磁性体
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10