(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107864
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】行動予測情報提供装置、行動予測情報提供システム、行動予測情報提供方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240802BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240802BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012024
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大弥
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】捜索対象者を探し出す時間の短縮に寄与する行動予測情報提供装置、行動予測情報提供システム、行動予測情報提供方法およびコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】行動予測情報提供装置において、対象者情報取得部は、生体情報を用いて特定された捜索対象者に関する対象者情報を取得する。環境情報取得部は、環境情報を取得する。環境情報とは、捜索対象者が所在していた元の所在場所とその周辺とのうちの少なくとも一方における捜索対象者が所在していた所在時間帯の状況を表す情報である。出力部は、行動予測情報を出力する。行動予測情報とは、対象者情報および環境情報を用いて予測された捜索対象者の行動であって元の所在場所における所在時間帯よりも後の捜索対象者の行動を表す情報である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報を用いて特定された捜索対象者に関する対象者情報を取得する対象者情報取得部と、
前記捜索対象者が所在していた元の所在場所とその周辺とのうちの少なくとも一方における前記捜索対象者が所在していた所在時間帯の状況を表す環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記対象者情報および前記環境情報を用いて予測された前記捜索対象者の行動であって前記元の所在場所における所在時間帯よりも後の前記捜索対象者の行動を表す行動予測情報を出力する出力部と
を備える行動予測情報提供装置。
【請求項2】
前記対象者情報および前記環境情報を入力とし前記捜索対象者の行動を表す情報を出力する機械学習による行動予測モデルを用いて、前記元の所在場所における所在時間帯よりも後の前記捜索対象者の行動を予測する予測部をさらに備え、
前記出力部は、前記予測部により予測された前記捜索対象者の行動を表す情報を前記行動予測情報として出力する
請求項1に記載の行動予測情報提供装置。
【請求項3】
前記環境情報は、人工衛星による衛星画像から抽出された情報を含む
請求項1に記載の行動予測情報提供装置。
【請求項4】
前記対象者情報取得部と前記環境情報取得部は、環境情報と、当該環境情報に関係する捜索対象者に関する対象者情報との関係を表す情報が登録されている記憶装置の情報を用いて、対象者情報と環境情報をそれぞれ取得する
請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の行動予測情報提供装置。
【請求項5】
生体情報を用いて捜索対象者を特定する生体情報照合装置と、
前記生体情報照合装置により特定された捜索対象者に関する対象者情報を用いる請求項1に記載の行動予測情報提供装置と
を備える行動予測情報提供システム。
【請求項6】
コンピュータによって、
生体情報を用いて特定された捜索対象者に関する対象者情報を取得し、
前記捜索対象者が所在していた元の所在場所とその周辺とのうちの少なくとも一方における前記捜索対象者が所在していた所在時間帯の状況を表す環境情報を取得し、
前記対象者情報および前記環境情報を用いて予測された前記捜索対象者の行動であって前記元の所在場所における所在時間帯よりも後の前記捜索対象者の行動を表す行動予測情報を出力する
行動予測情報提供方法。
【請求項7】
生体情報を用いて特定された捜索対象者に関する対象者情報を取得する処理と、
前記捜索対象者が所在していた元の所在場所とその周辺とのうちの少なくとも一方における前記捜索対象者が所在していた所在時間帯の状況を表す環境情報を取得する処理と、
前記対象者情報および前記環境情報を用いて予測された前記捜索対象者の行動であって前記元の所在場所における所在時間帯よりも後の前記捜索対象者の行動を表す行動予測情報を出力する処理と
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捜索対象者の捜索の際に参考となる情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
犯罪事件の犯人が逃走している場合、例えば、事件の現場から採取した指紋を利用して被疑者が特定され、特定された被疑者の情報を利用して当該被疑者の捜索が行われる。このように、生体情報を用いて捜索対象者を探す場合がある。
【0003】
なお、特許文献1(国際公開第2007/122726号)はユーザの本人認証の技術に関し、当該特許文献1には、端末装置から送信されたユーザの生体情報を用いて認証サーバ装置がユーザの本人認証を行う技術が示されている。また、特許文献2(特開2010-198243号公報)には、スーパーマーケットのレジ端末などの端末装置から取得した利用者の行動履歴データを用いて当該利用者の行動を予測する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/122726号
【特許文献2】特開2010-198243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
指紋などの生体情報は、その指紋に対応する人を特定する際に有効な情報と成り得る。このことから、捜索対象者について指紋などの生体情報を持っている程度であって捜索対象者が特定できていない場合に、捜索対象者を探している人や機関など(以下、捜索担当者と称する)は、その生体情報を用いることにより、捜索対象者の特定および特定に要する時間の短縮を図ることができる。しかしながら、捜索対象者が特定できたとしても、捜索対象者を探している捜索期間が長くなるにつれ、捜索担当者は、捜索対象者の足取り(移動軌跡)を追うことが難しくなってくる。このことから、捜索対象者を早急に探し出すことが望ましい。
【0006】
また、捜索対象者が、迷子や、認知症などに因る徘徊によって行方不明になってしまった高齢者などである場合には、事故や事件に遭ってしまう危険性をも考慮して、早急に探し出すことが望ましい。
【0007】
本発明は上記課題を解決するために考え出された。すなわち、本発明の主な目的は、捜索対象者を特定する情報を持っているに過ぎない場合よりも捜索対象者を探し出す時間の短縮化を図ることができる情報を提供する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る行動予測情報提供装置は、その一態様として、
生体情報を用いて特定された捜索対象者に関する対象者情報を取得する対象者情報取得部と、
前記捜索対象者が所在していた元の所在場所とその周辺とのうちの少なくとも一方における前記捜索対象者が所在していた所在時間帯の状況を表す環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記対象者情報および前記環境情報を用いて予測された前記捜索対象者の行動であって前記元の所在場所における所在時間帯よりも後の前記捜索対象者の行動を表す行動予測情報を出力する出力部とを備える。
【0009】
また、本発明に係る行動予測情報提供システムは、その一態様として、
生体情報を用いて捜索対象者を特定する生体情報照合装置と、
当該生体情報照合装置により特定された捜索対象者に関する対象者情報を用いる上述した行動予測情報提供装置とを備える。
【0010】
さらに、本発明に係る行動予測情報提供方法は、その一態様として、
コンピュータによって、
生体情報を用いて特定された捜索対象者に関する対象者情報を取得し、
前記捜索対象者が所在していた元の所在場所とその周辺とのうちの少なくとも一方における前記捜索対象者が所在していた所在時間帯の状況を表す環境情報を取得し、
前記対象者情報および前記環境情報を用いて予測された前記捜索対象者の行動であって前記元の所在場所における所在時間帯よりも後の前記捜索対象者の行動を表す行動予測情報を出力する。
【0011】
さらに、本発明に係るコンピュータプログラムは、その一態様として、
生体情報を用いて特定された捜索対象者に関する対象者情報を取得する処理と、
前記捜索対象者が所在していた元の所在場所とその周辺とのうちの少なくとも一方における前記捜索対象者が所在していた所在時間帯の状況を表す環境情報を取得する処理と、
前記対象者情報および前記環境情報を用いて予測された前記捜索対象者の行動であって前記元の所在場所における所在時間帯よりも後の前記捜索対象者の行動を表す行動予測情報を出力する処理とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、捜索対象者を特定する情報を持っているに過ぎない場合よりも捜索対象者を探し出す時間の短縮化を図ることができる情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の行動予測情報提供装置および行動予測情報提供システムの構成を説明する図である。
【
図2】行動予測情報の報知態様の一例を表す図である。
【
図3】第1実施形態の行動予測情報提供装置(情報提供装置)の動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図4】本発明に係るその他の実施形態の行動予測情報提供装置の構成を説明するブロック図である。
【
図5】本発明に係るその他の実施形態の行動予測情報提供システムの構成を説明するブロック図である。
【
図6】行動予測情報提供装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態の行動予測情報提供システムの構成を説明する図である。第1実施形態の行動予測情報提供システム(以下、情報提供システムとも称する)1は、捜索対象者の行動を予測し、予測した捜索対象者の行動を表す行動予測情報を出力する機能を備える。捜索対象者とは、捜索する対象者であり、ここでは、或る出来事(以下、事件とも称する)に因り逃走中である者(逃走者)とする。
【0016】
第1実施形態の情報提供システム1は、行動予測情報提供装置(以下、情報提供装置とも称する)2と、生体情報照合装置3とを備える。生体情報照合装置3は、コンピュータ装置であり、生体情報から当該生体情報に対応する個人を特定する情報を出力する機能を備える。生体情報とは、ここでは、個人の身体的特徴を表す情報であり、具体例を挙げると、指紋、顔(顔画像)、DNA(デオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic Acid))などがある。
【0017】
生体情報照合装置3はデータベース6に接続されている。データベース6は記憶装置であり、データベース6には、生体関連情報を含む情報(データ)が格納(登録)されている。生体関連情報とは、生体情報と、当該生体情報に対応する個人に関する情報である個人特定情報とが関連付けられている情報である。個人特定情報は、個人の特定につながる氏名、住所、顔写真などの個人情報を含むだけでなく、年齢や職業や嗜好などの個人属性情報や、捜索対象者が関わった相談履歴などの個人についての様々な種類の情報を含み得る情報である。データベース6に格納されている情報は、情報提供システム1を運用している運用者により管理されている。
【0018】
生体情報照合装置3は、演算装置30と記憶装置50を備える。記憶装置50は、データや、コンピュータプログラム(以下、プログラムとも記す)51を記憶する記憶媒体を備えている。記憶装置には複数の種類があり、生体情報照合装置3が備える記憶装置50の種類は1つに限定されるものではない。コンピュータ装置には複数種の記憶装置が備えられることが多い。ここでは、生体情報照合装置3に備えられる記憶装置50の種類や数は限定されず、その説明は省略される。また、生体情報照合装置3に複数種の記憶装置50が備えられる場合には、それらをまとめて記憶装置50と記すこととする。
【0019】
演算装置30は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサにより構成される。当該演算装置30は、記憶装置50に記憶されているプログラム51を読み出して実行することにより、当該プログラム51に基づいた様々な機能を持つことができる。ここでは、演算装置30は、生体情報から当該生体情報に対応する個人を特定する機能部として、受付部31と、照合部32とを有している。
【0020】
受付部31は、捜索対象者の生体情報が生体情報照合装置3に入力された場合に、当該生体情報を受け付ける。ここでは、捜索対象者の生体情報は、例えば、捜索対象者が所在していた所在場所である事件の現場で採取された生体情報である指紋や、採取された捜索対象者の髪の毛などから取得されたDNAの情報などの生体情報である。このような生体情報における生体情報照合装置3への入力は、生体情報照合装置3の操作者などによって手入力される場合や、情報通信網を介して生体情報照合装置3に入力される場合などがある。受付部31は、受け付けた生体情報に、当該生体情報を識別する生体情報識別情報と、事件を識別する事件識別情報とを関連付ける。このような生体情報は、例えば、記憶装置50に格納される。
【0021】
照合部32は、受け付けた捜索対象者の生体情報を用いて、捜索対象者を特定する情報を取得する。すなわち、照合部32は、受け付けた捜索対象者の生体情報と、データベース6の生体関連情報に含まれる生体情報とを照合し、捜索対象者の生体情報と類似している生体情報がデータベース6に格納されているか否かを判定する。そして、照合部32は、捜索対象者の生体情報に類似している生体情報がデータベース6に格納されている場合には、捜索対象者の生体情報に類似している生体情報を含む生体関連情報の個人特定情報をもって捜索対象者を特定する。なお、照合部32による生体情報の照合処理手法には様々な手法があり、ここでは、その手法は限定されないことから、その説明は省略される。
【0022】
さらに、照合部32は、上述したような特定された捜索対象者についての個人特定情報のリンク情報(つまり、データベース6における格納場所を表すアドレス情報)を事件識別情報に関連付けられた状態でデータベース5に格納する。
【0023】
情報提供装置2は、コンピュータ装置であり、捜索対象者についての情報と、事件の現場に関する環境情報とを用いて、事件後の捜索対象者の行動を予測する機能を備える。すなわち、情報提供装置2は、演算装置20と記憶装置40を備える。記憶装置40は、データや、コンピュータプログラム(以下、プログラムとも記す)41を記憶する記憶媒体を備えている。記憶装置には複数の種類があり、情報提供装置2が備える記憶装置40の種類は1つに限定されるものではない。コンピュータ装置には複数種の記憶装置が備えられることが多い。ここでは、情報提供装置2に備えられる記憶装置40の種類や数は限定されず、その説明は省略される。また、情報提供装置2に複数種の記憶装置40が備えられる場合には、それらをまとめて記憶装置40と記すこととする。
【0024】
演算装置20は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサにより構成される。当該演算装置20は、記憶装置40に記憶されているプログラム41を読み出して実行することにより、当該プログラム41に基づいた様々な機能を持つことができる。ここでは、演算装置20は、捜索対象者の行動を予測し当該予測した情報を出力する機能部として、環境情報取得部21と、予測部22と、対象者情報取得部23と、出力部24とを有している。
【0025】
環境情報取得部21は、環境情報を取得する。環境情報とは、捜索対象者が所在していた所在場所(元の所在場所)とその周辺とのうちの少なくとも一方の状況を表す情報であって捜索対象者が所在していた所在時間帯の情報である。捜索対象者が所在していた所在場所(元の所在場所)としては、例えば、捜索対象者が関わった出来事(事件)の現場である。また、第1実施形態では、環境情報は、人工衛星に搭載されている撮影装置により撮影された撮影画像(以下、衛星画像とも称する)から抽出された情報である。すなわち、情報提供装置2は、衛星画像から抽出された情報(以下、抽出情報とも称する)を出力可能な人工衛星の運用機関などである情報源4に接続されている。例えば、情報源4は、衛星画像を画像解析することにより衛星画像から目的の情報を抽出するコンピュータ装置(図示せず)と、その抽出した情報を格納するデータベース(図示せず)とを備える。なお、抽出情報には、場所を特定する情報(住所や、緯度経度など)や、情報を抽出した衛星画像の撮影時間などが含まれている。
【0026】
環境情報取得部21は、情報取得対象の場所(元の所在場所(例えば事件現場))における捜索対象者が所在していた所在時間帯を検索条件とし、そのような情報源4のデータベースに格納されている抽出情報のなかから、情報取得対象の場所(元の所在場所(例えば事件現場))における捜索対象者が所在していた所在時間帯の状況を表す抽出情報(衛星画像から抽出された情報)を検索する。そして、環境情報取得部21は、検索された抽出情報を環境情報とし当該環境情報のリンク情報(つまり、情報源4における格納場所を表すアドレス情報)を事件識別情報に関連付けられた状態でデータベース5に格納する。つまり、データベース5は記憶装置であり、同じ事件に関係する環境情報のリンク情報と対象者情報のリンク情報とが事件識別情報によって関連付けられて格納されている。換言すれば、データベース5は、同じ事件に関係する環境情報と、当該環境情報に関係する捜索対象者に関する対象者情報との関係を表す情報が登録されている記憶装置である。
【0027】
環境情報取得部21は、事件識別情報と、データベース5に格納されているリンク情報とを用いて、取得したい環境情報を情報源4から読み出して取得することができる。対象者情報取得部23は、事件識別情報と、データベース5に格納されているリンク情報とを用いて、取得したい対象者情報をデータベース6から読み出して取得する。環境情報取得部21や対象者情報取得部23が用いる事件識別情報は、例えば、情報提供装置2の操作者によって情報提供装置2に入力される。
【0028】
予測部22は、対象者情報と環境情報を用いて捜索対象者の行動を予測する。予測部22が用いる対象者情報および環境情報は、環境情報取得部21や対象者情報取得部23により取得された情報である。予測部22が予測する捜索対象者の行動は、捜索対象者が事件現場(元の所在場所)に所在していた所在時間帯よりも後の捜索対象者の行動である。例えば、予測部22は、その所在時間帯よりも後の時間であって捜索対象者の居場所を知りたい時間の情報を受け付ける。捜索対象者の居場所を知りたい時間の情報は、例えば、時刻や、時間帯や、何時間後(元の所在場所における所在時間帯からの経過時間)というような時間の情報であり、操作者(捜索担当者など)により情報提供装置2に入力される。予測部22は、元の所在場所における所在時間帯を始点とし捜索対象者の居場所を知りたい時間を終点とする予測期間における捜索対象者の行動を予測する。なお、予測期間の終点を表す情報(捜索対象者の居場所を知りたい時間の情報)は、当該情報を操作者が入力している時点よりも過去である場合もあるし、未来である場合もある。
【0029】
予測部22が捜索対象者の行動を予測する手法として、ここでは、AI(Artificial Intelligence)技術を用いる。すなわち、予測部22は、AI技術により生成された行動予測モデルを用いて、捜索対象者の行動を予測する。ここでの行動予測モデルとは、対象者情報と環境情報と予測期間を表す予測期間情報とを入力とし、予測される捜索対象者の行動を表す行動予測情報を出力するモデルである。この行動予測モデルは次のようなデータを機械学習することにより生成される。すなわち、行動予測モデルの生成の際に機械学習されるデータは、例えば、人の属性情報(年齢、職業、趣味などの情報)と、その人の行動と、その行動した行動時間帯の周囲情報とが関連付けられているデータである。周囲情報としては、例えば、行動時間帯の周囲の交通状況や天候や場所の情報(住宅地、駅の構内、店舗内、公園の中など)を含む情報である。また、行動予測モデルから出力される行動予測情報は、予測期間における終点の時間(あるいは時間帯)に捜索対象者が所在していると予測される場所の情報(以下、予測居場所情報とも称する)を含む予め定められた情報を有する。例えば、行動予測情報は、予測居場所情報と、元の所在場所から予測居場所までの予測される移動経路(行動履歴)の情報とを含む。
【0030】
行動予測モデルを生成するAI技術の手法はここでは限定されないが、その一例として、説明可能なAI技術がある。説明可能なAI技術により生成された行動予測モデルは、行動予測情報に加えて、行動予測情報を予測した根拠を説明する情報をも出力できる。
【0031】
出力部24は、予測部22により予測された捜索対象者の行動を表す情報を行動予測情報として出力する。出力部24が行動予測情報を出力する出力先としては、例えば、情報提供装置2に接続されている表示装置12や、情報提供装置2に情報通信網を介して接続されているコンピュータ装置などが挙げられる。出力先であるコンピュータ装置の具体例としては、例えば、捜索担当者が操作可能な端末装置13である。端末装置13は、通信機能および報知機能を備えていればその態様は限定されないが、例えば、スマートフォン、タブレット、パソコン(パーソナルコンピュータ)、ウェアラブルデバイスなどが例として挙げられる。
【0032】
出力部24が行動予測情報を出力するタイミングは予め定められている。例えば、出力部24は、行動予測モデルが行動予測情報を出力することを契機として行動予測情報を出力してもよいし、操作者や捜索担当者からの行動予測情報の要求に応じて出力してもよい。
【0033】
表示装置12や、行動予測情報を受信した端末装置13は、行動予測情報を予め定められた報知態様でもって報知する。例えば、
図2には、表示装置12や端末装置13の表示装置の表示画面に表示される行動予測情報の報知態様の一例が表されている。
図2の例では、予測居場所情報に含まれている予測される捜索対象者の所在場所(以下、予測居場所とも称する)と、事件現場(元の所在場所)から予測居場所までの推定される移動経路(行動履歴)の情報とが画面表示されている。この例では、予測居場所は、△△月□□日午前中に所在していると予測される◎◎地点を表す情報である。また、
図2の例では、移動経路(行動履歴)を表す情報は、文字により報知されるだけでなく、地図をも用いて報知されている。なお、予測部22が用いる行動予測モデルから行動予測情報だけでなく、根拠の説明も出力される場合には、出力部24は、行動予測情報にその根拠の説明の情報を関連付けて出力先に出力する。この場合には、根拠を説明する文字も出力先である表示装置12や端末装置13の表示装置に表示可能である。
【0034】
さらにまた、出力部24は、行動予測情報に関連付けて、予測部22が行動予測情報の生成(予測)に用いた対象者情報や環境情報を出力先に出力してもよく、この場合には、出力先は、対象者情報や環境情報を用いた情報を報知してもよい。さらに、出力部24は、行動予測情報に関連付けて、対象者情報や環境情報以外の予め定められた情報を出力してもよい。例えば、環境情報に関連する事件現場の衛星画像のリンク情報や、移動経路の情報に含まれる通過ポイント(例えば
図2の例では◆◆地点)を説明する情報のリンク情報などが行動予測情報に関連付けられて出力部24によって出力先に出力されてもよい。
【0035】
上述したように出力部24から出力先に出力された行動予測情報や、当該行動予測情報に関連付けられた情報は、予め定められた報知態様でもって報知される。なお、表示装置12の報知制御(表示制御)は、情報提供装置2が有する表示制御の機能により行われる。また、端末装置13における行動予測情報の報知は、例えば、端末装置13と情報提供装置2との連携による報知制御により行われる。さらに、端末装置13が行動予測情報を報知する手法は、画面表示に限定されず、例えば、音声を用いてもよい。
【0036】
なお、表示装置12や端末装置13からの報知により行動予測情報を操作者や捜索担当者が受け取った場合、操作者や捜索担当者は、更になる情報を取得するために次のような処理を行ってもよい。例えば、報知された行動予測情報に含まれている予測居場所に対応する時間(時間帯)が、行動予測情報を受け取った時間よりも先である(未来である)場合には、その予測居場所に対応する時間(時間帯)における予測居場所の衛星画像を入手するための処理を実行する。つまり、操作者や捜索担当者は、人工衛星を運用している機関に向けて、予測居場所に対応する時間(時間帯)における予測居場所の衛星画像を要求する予め定められた手続き処理をコンピュータ装置により実行させる。そのコンピュータ装置は、情報提供装置2である場合もあるし、端末装置13である場合もあるし、情報提供装置2および端末装置13以外のコンピュータ装置である場合もある。
【0037】
例えば、そのような手続き処理により入手した衛星画像は、新たな参考情報として捜索対象者の捜索に用いられる。例えば、所有している車(例えば、赤いワンボックス車)で捜索対象者が逃走中である場合に、入手した衛星画像から捜索対象者の所有している車が検知されるかもしれない。また、入手した衛星画像のリンク情報は例えば事件識別情報が関連付けられてデータベース5に格納される。
【0038】
なお、予測部22による行動予測情報を参考した捜索担当者らの捜索によって、捜索対象者が所在していたと考えられる新たな所在場所が見つかったとする。この場合には、その新たな所在場所を元の所在場所として、環境情報取得部21および予測部22がそれぞれ上述したと同様の処理を実行してもよい。このような環境情報取得部21および予測部22の処理は、操作者などから情報提供装置2に入力される開始指示により開始されてもよいし、前述したような手続き処理に応じて情報源4から衛星画像が出力されたことにより開始されてもよい。つまり、情報提供システム1を用いた捜索対象者の捜索では、情報提供装置2により捜索対象者の行動を予測するフェーズと、予測された情報を用いて捜索対象者の居場所を探し出すための情報を取集するフェーズとがある。
【0039】
第1実施形態の情報提供装置2を含む情報提供システム1は上述したように構成されている。次に、情報提供装置2における捜索対象者についての行動予測情報の出力に係る動作の一例を
図3を用いて説明する。なお、
図3は、情報提供装置2における捜索対象者についての行動予測情報の出力に係る動作の一例を説明するフローチャートである。また、この説明では、“事件α”に関わったとされる逃走者が捜索対象者であるとする。
【0040】
例えば、生体情報照合装置3の照合部32によって、事件αの事件現場から採取された指紋やDNAなどの生体情報(以下、採取生体情報とも称する)と、データベース6に格納されている生体関連情報に含まれる生体情報とが照合される。これにより、採取生体情報に類似している生体情報を含む生体関連情報の個人特定情報をもって捜索対象者が特定されているとする。また、そのような捜索対象者に関する個人特定情報(つまり対象者情報)のリンク情報が事件識別情報に関連付けられた状態でデータベース5に格納されているとする。さらに、情報提供装置2の環境情報取得部21によって、事件αの事件現場に関する環境情報が情報源4から検索され、当該環境情報のリンク情報が事件識別情報に関連付けられた状態でデータベース5に格納されているとする。
【0041】
このような状況において、情報提供装置2の操作者によって、捜索対象者の行動を予測する予測要求が情報提供装置2に入力されたとする。この予測要求には、捜索対象者が関係する事件αの事件識別情報が関連付けられている。環境情報取得部21は、その事件識別情報を用いて、事件αに関連する環境情報を読み出すリンク情報をデータベース5から読み出し、さらに、当該リンク情報を利用して情報源4から事件αに関連する環境情報を取得する。また、対象者情報取得部23は、予測要求に関連付けられている事件識別情報を用いて、捜索対象者(逃走者)の対象者情報を読み出すリンク情報をデータベース5から読み出す。さらに、対象者情報取得部23は、そのリンク情報を用いて、対象者情報をデータベース6から取得する。
【0042】
このように、情報提供装置2は、環境情報取得部21および対象者情報取得部23によって、事件αに関係する環境情報と対象者情報のそれぞれを取得する(
図6におけるステップ101)。
【0043】
そして、予測部22は、取得した環境情報と対象者情報と、行動予測モデルとを用いて、捜索対象者の行動を予測する(ステップ102)。すなわち、予測要求には、事件αが発生してからの捜索対象者の行動を予測する予測期間を定める情報が関連付けられている。行動予測モデルは、取得した環境情報および対象者情報と、予測期間の情報との入力により、当該環境情報および対象者情報を用いて、予測期間における捜索対象者の行動を予測する。そして、行動予測モデルは、予測居場所情報を含む行動予測情報を出力する。
【0044】
然る後に、出力部24が行動予測情報を予め定められた出力先に出力する(ステップ103)。その出力先から報知された行動予測情報を参考情報として捜索対象者の捜索が行われる。また、行動予測情報を用いて新たな情報を情報源4から入手するための例えば手続き処理が捜索対象者によって行われる。
【0045】
第1実施形態の情報提供装置2を備える情報提供システム1は、上述したように、生体情報を用いて特定された捜索対象者の対象者情報と、衛星画像を用いた環境情報との両方を用いて、捜索対象者の行動を予測する。これにより、情報提供装置2を備える情報提供システム1は、捜索対象者が元の所在場所に所在していた所在時間帯よりも後の時間に所在していた所在場所(居場所)を表す予測居場所情報を含む行動予測情報を出力できる。その行動予測情報を参考にすることにより、捜索担当者は、捜索対象者を捜索する範囲を絞ることができ、捜索対象者を探し出すまでに要する時間の短縮が期待される。
【0046】
また、情報提供装置2は、対象者情報と環境情報の両方を用いて捜索対象者の行動を予測するから、対象者情報だけで捜索対象者の行動を予測する場合に比べて、捜索対象者の行動について予測した情報の確からしさを高めることができる。
【0047】
さらに、捜索対象者が所在していた所在場所における所在時間帯の状況を表す情報を環境情報として捜索対象者の行動予測に用いている。このため、捜索対象者が所在していた所在場所のリアルな状況が考慮された捜索対象者の行動予測が行われる。このことは、単なる場所を表す情報が与えられて捜索対象者の行動を予測する場合に比べて、捜索対象者の予測される行動の確からしさを高めることができる。
【0048】
なお、捜索対象者の生体情報が取得できていない場合や、生体情報に対応する生体関連情報がデータベース6に格納されていない場合が考えられる。このような場合においては、例えば、捜索対象者について分かっている事項の情報が対象者情報として操作者などにより情報提供装置2に入力されるとする。この入力された対象者情報は事件識別情報が関連付けられて例えば記憶装置40やデータベース6に格納される。また、そのような対象者情報についての当該対象者情報のリンク情報が事件識別情報に関連付けられてデータベース5に格納される。これにより、捜索対象者の生体情報が取得できていない状況であっても、情報提供装置2は、捜索対象者についての行動予測情報の提供が可能である。
【0049】
<その他の実施形態>
本発明は第1実施形態に限定されず様々な実施の形態を採り得る。例えば、第1実施形態では、捜索対象者が所在していた所在時間帯における所在場所とその周辺の少なくとも一方の状況を表す環境情報として衛星画像から抽出された情報を用いている。これに関し、環境情報は、衛星画像を用いた情報に限定されず、例えば、駅や街中や店舗などに設置されている監視カメラの映像や、SNS(Social Networking Service)に投稿されている画像やメッセージや、車に搭載されている車載カメラによる映像を解析することにより得られる情報を環境情報として採用してもよい。また、環境情報は、衛星画像を用いた情報と、監視カメラの映像を用いた情報と、SNSの情報を用いた情報と、車載カメラによる映像に基づいた情報というような環境情報として用いることができる複数種の情報のなかから選択された複数種の情報が環境情報として採用されてもよい。
【0050】
さらに、情報提供装置2は、行動予測の結果を用いて、例えば、行動予測によって捜索対象者が居たと推定される所在時間帯における所在場所(通過場所)の状況を表す情報である例えば監視カメラの映像を、監視カメラを管理しているシステムから取得してもよい。このように取得された情報も出力部24は行動予測情報に関連付けて出力先に出力してもよい。
【0051】
さらに、第1実施形態では、捜索対象者は逃走者である例を示しているが、捜索対象者は、逃走者に限定されず、例えば、迷子や、認知症による徘徊により行方不明になってしまっている高齢者などであってもよい。このような迷子や行方不明者の捜索にも第1実施形態の情報提供システム1を適用することができる。
【0052】
さらに、第1実施形態では、データベース5は、関連する環境情報と対象者情報のそれぞれのリンク情報が同じ事件識別情報に関連付けられている状態で格納されている。これに代えて、データベース5は、リンク情報ではなく、環境情報や対象者情報そのものが同じ事件識別情報に関連付けられて格納されていてもよい。さらに、第1実施形態では、情報提供装置2は予測部22を備えている。これに代えて、例えば、予測部22は、情報提供装置2とは別のコンピュータ装置に備えられていてもよく、この場合には、情報提供装置2は、予測部22を備えるコンピュータ装置と連携することにより、前述同様の行動予測情報を出力する。
【0053】
さらに、情報提供システム1は、捜索対象者と関係する機関に構築されることが考えられるが、本発明に係る行動予測情報提供装置を含む行動予測情報提供システムは、そのような機関での構築に限定されない。
【0054】
図4は、本発明に係る行動予測情報提供装置のその他の実施形態の構成を説明する図である。この行動予測情報提供装置60は、
図5に表されるような生体情報照合装置80と共に、行動予測情報提供システム70を構成する装置である。生体情報照合装置80は、例えばコンピュータ装置であり、生体情報を用いて捜索対象者を特定する機能を備える。
【0055】
行動予測情報提供装置60は、例えばコンピュータ装置であり、コンピュータプログラムを実行することにより実現される機能部として、対象者情報取得部61と、環境情報取得部62と、出力部63とを備える。
【0056】
対象者情報取得部61は、生体情報を用いて特定された捜索対象者に関する対象者情報を取得する。環境情報取得部62は、環境情報を取得する。環境情報とは、捜索対象者が所在していた元の所在場所とその周辺とのうちの少なくとも一方における捜索対象者が所在していた所在時間帯の状況を表す情報である。出力部63は、行動予測情報を出力する。行動予測情報とは、対象者情報および環境情報を用いて予測された捜索対象者の行動であって元の所在場所における所在時間帯よりも後の捜索対象者の行動を表す情報である。
【0057】
次に、行動予測情報提供装置60における動作の一例を、
図6を用いて説明する。
図6は行動予測情報提供装置60の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0058】
例えばユーザの要求などに応じて、対象者情報取得部61が、生体情報を用いて特定された捜索対象者に関する対象者情報を取得する(ステップ201)。また、環境情報取得部62は、環境情報を取得する(ステップ202)。その後、出力部63は、取得された対象者情報および環境情報を用いて予測された捜索対象者についての行動予測情報を出力する(ステップ203)。なお、対象者情報取得部61によって対象者情報が取得される動作(処理)と、環境情報取得部62によって環境情報が取得される動作(処理)との順番は限定されず、上述した順番とは逆の順番であってもよい。
【0059】
行動予測情報提供装置60および当該行動予測情報提供装置60を含む行動予測情報提供システム70は、上述したような構成を備えていることにより、捜索対象者についての情報を持っているに過ぎない場合に比べて、捜索対象者を探し出す時間の短縮に寄与する情報を提供できる。
【符号の説明】
【0060】
1 情報提供システム
2 情報提供装置
3,80 生体情報照合装置
21 環境情報取得部
22 予測部
23 対象者情報取得部
24,63 出力部
60 行動予測情報提供装置
61 対象者情報取得部
62 環境情報取得部
70 行動予測情報提供システム