IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本無線株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-平面アレーアンテナ 図1
  • 特開-平面アレーアンテナ 図2
  • 特開-平面アレーアンテナ 図3
  • 特開-平面アレーアンテナ 図4
  • 特開-平面アレーアンテナ 図5
  • 特開-平面アレーアンテナ 図6
  • 特開-平面アレーアンテナ 図7
  • 特開-平面アレーアンテナ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107876
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】平面アレーアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/10 20060101AFI20240802BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240802BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
H01Q15/10
H01Q21/06
H01Q13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012044
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】須賀 智文
(72)【発明者】
【氏名】夏原 啓一
(72)【発明者】
【氏名】野呂 崇徳
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J020AA02
5J020BA01
5J020BB03
5J020BC04
5J020BC13
5J020BD01
5J020DA02
5J020DA03
5J020DA04
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB06
5J021BA01
5J021BA03
5J021GA05
5J021GA08
5J021JA07
5J045AA03
5J045AA26
5J045AB01
5J045AB05
5J045DA10
5J045EA08
5J045FA02
5J045FA09
5J045HA02
5J045JA04
5J045MA07
(57)【要約】
【課題】平面アレーアンテナにおいて、厚みや重量を大幅に増加させずに、広角サイドローブやグレーティングローブを軽減する。
【解決手段】信号を送信するための複数の送信パッチ23bがマトリクス状に配列された給電素子基板23と、給電素子基板23の上方に積層され、信号を多重反射させてビーム幅を絞る複数の多重反射素子42aが周期的に配列された多重反射シート42と、を備え、多重反射シート42が複数積層されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送信または受信するための複数の給電素子がマトリクス状に配列された給電素子基板と、
前記給電素子基板の上方に積層され、前記信号を多重反射させてビーム幅を絞る複数の多重反射素子が周期的に配列された多重反射基板と、
を備える、
ことを特徴とする平面アレーアンテナ。
【請求項2】
前記多重反射基板が複数積層されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の平面アレーアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電素子が複数配設された平面アレーアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の送信用平面アレーアンテナは、図8に示すように、下層から順に、グランド板101、誘電体102、送信基板103、誘電体104およびスロット板105が積層されている。また、送信基板103は、絶縁性を有する給電基板103a上に、導電箔からなる略矩形の送信パッチ(給電素子)103bが、マトリクス状に複数配列されている。
【0003】
このような平面アレーアンテナでは、広角サイドローブが発生する問題があるとともに、給電素子の励振方向における配列間隔が波長よりも大きい場合に、グレーティングローブが発生して正面利得が低下する、という問題があった。
【0004】
一方、各送受共用平面アンテナ素子に対して金属製のフレア(ホーン)を設けることにより、グレーティングローブのレベルを軽減させる、という技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-175680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、送受共用平面アレーアンテナの厚みや重量が大幅に増加してしまう、という問題がある。
【0007】
そこで本発明は、平面アレーアンテナにおいて、厚みや重量を大幅に増加させずに、広角サイドローブやグレーティングローブを軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、信号を送信または受信するための複数の給電素子がマトリクス状に配列された給電素子基板と、前記給電素子基板の上方に積層され、前記信号を多重反射させてビーム幅を絞る複数の多重反射素子が周期的に配列された多重反射基板と、を備える、ことを特徴とする平面アレーアンテナである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の平面アレーアンテナにおいて、前記多重反射基板が複数積層されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、周期的に配列されている多重反射素子によって、信号が多重反射されてビーム幅が絞られるため、平面アレーアンテナにおいて広角サイドローブやグレーティングローブを軽減・抑制し、正面利得を向上させることが可能となる。また、多重反射素子が配列された多重反射基板が積層されているだけであるため、厚みや重量を大幅に増加させることがない。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、多重反射基板が複数積層され、重なった複数の多重反射素子によって、信号がより多重反射されてビーム幅がより絞られるため、平面アレーアンテナにおいて広角サイドローブやグレーティングローブをより軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施の形態に係る平面アレーアンテナの積層構造を示す分解斜視図である。
図2図1の平面アレーアンテナの多重反射素子を示す平面図である。
図3図1の平面アレーアンテナの単素子の指向性のカット面を示す図(a)と、このカット面における、従来の平面アレーアンテナの単素子の指向性と、図1の平面アレーアンテナの単素子の指向性を示す図(b)である。
図4】この発明の実施の形態において、16×16素子の平面アレーアンテナの指向性のカット面を示す図である。
図5図4のカット面における、素子間隔が波長よりも小さい場合の従来の平面アレーアンテナ全体の指向性特性と、図1の平面アレーアンテナ全体の指向性特性を示す図である。
図6図4のカット面における、素子間隔が波長よりも大きい場合の従来の平面アレーアンテナ全体の指向性特性と、図1の平面アレーアンテナ全体の指向性特性を示す図である。
図7図5および図6の場合における利得を示す図である。
図8】従来の平面アレーアンテナの積層構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態に係る平面アレーアンテナ1の積層構造を示す分解斜視図である。この平面アレーアンテナ1は、信号を送信または受信するための複数の給電素子が平面状に配設されたアンテナであり、送信アンテナでも受信アンテナでもよいが、この実施の形態では、送信アンテナの場合について説明する。
【0015】
平面アレーアンテナ1は、下層から順に、第1の積層部2、第2の積層部3および第3の積層部4が積層されている。
【0016】
第1の積層部2は、下層から順に、グランド板21、発泡シート(誘電体)22および給電素子基板23が積層されている。グランド板21は、シールド用の遮蔽板で導電性を有する薄板、例えば、アルミニウム板で構成されている。発泡シート22は、発泡ポリエチレンや発泡ポリプロピレンなどのシート材で構成され、後述する他の発泡シート31、41についても同様である。
【0017】
給電素子基板23は、信号を送信するための複数の送信パッチ(給電素子)23bがマトリクス状に配列された基板である。すなわち、フレキシブル基板などの絶縁性を有する薄い給電基板23aと、給電基板23a上に所定間隔で配列された複数の略矩形の送信パッチ23bと、この送信パッチ23bに給電を行う給電線路23cとを備える。送信パッチ23bおよび給電線路23cは、銅、アルミニウム、金などの導電箔によって形成されている。また、給電線路23cは、所定の方向に沿って延び、給電基板23a上で共通の給電幹線に接続されている。
【0018】
第2の積層部3は、下層から順に、発泡シート31およびスロット板32が積層されている。スロット板32は、シールド用の遮蔽板で導電性を有する薄板、例えば、アルミニウム板で構成され、各送信パッチ23bに対面する位置に、略矩形のスロット開口32aが設けられている。
【0019】
第3の積層部4は、下層から順に、発泡シート41および多重反射シート(多重反射基板)42が積層されている。多重反射シート42は、多重反射素子42aがマトリクス状に配列された基板であり、各多重反射素子42aは、周期的に配列されている。
【0020】
この多重反射素子42aは、信号を多重反射させてビーム幅を絞る素子であり、ファブリーペロー共振(FPC, Fabry-Perot cavity)アンテナと同様な構成となっている。具体的には、図2に示すように、導電性の大小2つのリング・円環が同心に配設されて二重リング共振器が構成され、2つのリングの直径、幅、リング間隔は、信号を多重反射させて共振させ、ビーム幅を絞れるように設定されている。
【0021】
そして、このような第3の積層部4つまり多重反射シート42が複数、この実施の形態では、3層積層されている。
【0022】
このような構成の平面アレーアンテナ1によれば、周期的に配列されている多重反射素子42aによって、信号が多重反射されてビーム幅が絞られるため、平面アレーアンテナ1において広角サイドローブやグレーティングローブを軽減・抑制し、正面利得を向上させることが可能となる。しかも、第3の積層部4つまり多重反射シート42が複数積層され、重なった複数の多重反射素子42aによって、信号がより多重反射されてビーム幅がより絞られるため、平面アレーアンテナ1において広角サイドローブやグレーティングローブをより軽減することが可能となる。
【0023】
また、多重反射素子42aが配列された多重反射シート42が積層されているだけであるため、厚みや重量を大幅に増加させることがない。
【0024】
ここで、多重反射素子42aおよび多重反射シート42による効果を検証した結果について説明する。まず、1つの送信パッチ23bを単素子とし、図3(a)に示す矢印方向でのカット面における単素子の指向性を検証した。その結果、図3(b)に示すように、多重反射素子42aつまり多重反射シート42がない場合には、広角サイドローブが発生するのに対して、多重反射シート42がある(3層)場合には、広角サイドローブが抑制され指向性が向上することが確認された。
【0025】
また、図4に示すように、送信パッチ23bを縦横に16素子ずつ配列し、図4の矢印方向でのカット面における平面アレーアンテナ全体の指向性を検証した。その結果、素子間隔(励振方向における送信パッチ23b間の距離)が波長λよりも小さい場合、図5に示すように、多重反射素子42aつまり多重反射シート42がない場合に比べて、多重反射シート42がある場合の方が良好な指向性が得られることが確認された。
【0026】
さらに、素子間隔が波長λよりも大きい場合、図6に示すように、多重反射素子42aつまり多重反射シート42がない場合には、グレーティングローブGが発生することが確認された。これに対して、多重反射シート42がある場合には、グレーティングローブGが発生せずに良好な指向性が得られることが確認された。
【0027】
図7は、図5および図6の場合における利得を比較した結果である。この結果、素子間隔が波長λよりも小さい場合でも大きい場合でもともに、多重反射シート42がない場合に比べて多重反射シート42がある場合の方が、利得が上昇することが確認された。特に、素子間隔が波長λよりも大きい場合、多重反射シート42を設けることで利得が大きく上昇することが確認された。
【0028】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、平面アレーアンテナ1が送信アンテナの場合について説明したが、受信アンテナであってもよく、また、互いに直交する2つの偏波信号を送受信する送受共用平面アレーアンテナにも適用することができる。送受共用平面アレーアンテナに適用する場合、例えば、送信パッチ23bと同位置に(重なって)受信パッチがマトリクス状に配列された受信基板を、給電素子基板23つまり送信基板の下側に積層し、受信基板の上側と送信基板の上側のそれぞれに多重反射シート42を積層したり、送信基板の上側のみに多重反射シート42を積層したりする。
【符号の説明】
【0029】
1 平面アレーアンテナ
2 第1の積層部
21 グランド板
22 発泡シート
23 給電素子基板
23b 送信パッチ(給電素子)
3 第2の積層部
31 発泡シート
32 スロット板
4 第3の積層部
41 発泡シート
42 多重反射シート(多重反射基板)
42a 多重反射素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8