(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107877
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】リング型照明装置及び検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20240802BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G01N21/84 E
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012045
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩之
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB01
2G051AB02
2G051BB02
2G051BB07
2G051BB09
(57)【要約】
【課題】暗視野観察用のリング型照明装置に関して、被検査対象の対象領域に対する光の照射密度向上と明るさバラツキ抑制とを両立する。
【解決手段】リング型照明装置2は、被検査対象Wにおける対象領域Aに対して暗視野観察をする。リング型照明装置2は、リング状のリング部材10を備える。リング部材10は、中心穴12が対象領域Aに臨むように且つ円周部11が対象領域Aよりも外周側にあるように配置される。円周部11には、円周部11の全周に亘って配置され且つ対象領域Aに対して光Lが斜めに出射される出射口13が設けられる。出射口13と対象領域Aとの間には、光Lをリング部材10の周方向に拡散する光学素子20,21が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象における対象領域に対して暗視野観察をするリング型照明装置であって、
リング状のリング部材を備え、
前記リング部材は、中心穴が前記対象領域に臨むように且つ円周部が前記対象領域よりも外周側にあるように配置され、
前記円周部には、前記円周部の全周に亘って配置され且つ前記対象領域に対して光が斜めに出射される出射口が設けられており、
前記出射口と前記対象領域との間には、前記光を前記リング部材の周方向に拡散する光学素子が設けられている、リング型照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリング型照明装置であって、
前記光学素子は、前記出射口と前記対象領域との間に全周に亘って配置されたリング状の拡散板である、リング型照明装置。
【請求項3】
請求項1に記載のリング型照明装置であって、
前記出射口は、前記円周部の全周に亘って複数点在しており、
複数の前記出射口と前記対象領域との間には、前記光学素子としての複数のシリンドリカルレンズが設けられている、リング型照明装置。
【請求項4】
請求項1に記載のリング型照明装置と、
前記中心穴を通じて前記対象領域に臨むカメラと、を備え、
前記カメラで撮像された前記対象領域の撮像画像に基づいて前記被検査対象を検査する、検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リング型照明装置及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、被検査対象における対象領域に対して暗視野観察をするリング型照明装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなリング型照明装置は、リング部材を備える。リング部材は、円周部が被検査対象の対象領域よりも外周側にあるように且つ中心穴が被検査対象の対象領域に臨むように、配置される。リング部材の円周部には、全周に亘って出射口が配置されている。出射口からは、被検査対象の対象領域に対して光が斜めに出射される。
【0005】
リング部材の中心穴を通じて被検査対象の対象領域に対して、カメラが臨んでいる。カメラと被検査対象との間には、対物レンズが配置されている。カメラの視野は、被検査対象の対象領域に対応している。
【0006】
リング部材の円周部の出射口から出射された光は、被検査対象の対象領域に対して斜めに照射される。被検査対象の対象領域における欠陥の存在しない非欠陥部に照射された光は、そのまま斜めに鏡面反射(正反射)されて、カメラの視野外に抜けていく。
【0007】
一方、被検査対象の対象領域における欠陥の存在する欠陥部に照射された光は、拡散反射される(散乱する)。拡散反射された光の一部は、リング部材の中心穴を通じて、対物レンズを介してカメラの視野内に捉えられる。
【0008】
ここで、リング部材の円周部の出射口から出射された光が、被検査対象の対象領域に対して外周側から斜めに照射されるので、被検査対象の対象領域に照射される光は、リング部材の半径方向に長軸を持つ略楕円形状となってしまう(被検査対象の対象領域に照射される光は、リング部材の周方向に短軸を持つ略楕円形状となってしまう)。
【0009】
略楕円形状の光の長軸を被検査対象の対象領域(カメラの視野)に合せた場合、全周の各出射口から出射されて被検査対象の対象領域に対して照射される各光の照射範囲が、対象領域にほぼ一致するので、対象領域に対する光の照射密度を高めることができる。
【0010】
しかしながら、光の長軸を対象領域に合せた場合、全周の各出射口から出射されて被検査対象の対象領域に対して照射される各光は、対象領域の中央部のみで互いに重り合うため、対象領域において光の明るさのバラツキが生じてしまう。具体的には、対象領域の中央部において各光が密になって明るくなる一方、対象領域の外周部において各光が疎になって暗くなる。
【0011】
一方、略楕円形状の光の短軸を被検査対象の対象領域(カメラの視野)に合せた場合、全周の各出射口から出射されて被検査対象の対象領域に対して照射される各光は、対象領域のほぼ全域において互いに重なり合うため、対象領域において光の明るさのバラツキを抑制することができる。
【0012】
しかしながら、光の短軸を対象領域に合せた場合、全周の各出射口から出射されて被検査対象の対象領域に対して照射される各光の照射範囲が、対象領域よりも外側にはみ出てしまうので、対象領域に対する光の照射密度が低減してしまう。
【0013】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、暗視野観察用のリング型照明装置に関して、被検査対象の対象領域に対する光の照射密度向上と明るさバラツキ抑制とを両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示に係るリング型照明装置は、被検査対象における対象領域に対して暗視野観察をするリング型照明装置であって、リング状のリング部材を備え、前記リング部材は、中心穴が前記対象領域に臨むように且つ円周部が前記対象領域よりも外周側にあるように配置され、前記円周部には、前記円周部の全周に亘って配置され且つ前記対象領域に対して光が斜めに出射される出射口が設けられており、前記出射口と前記対象領域との間には、前記光を前記リング部材の周方向に拡散する光学素子が設けられている。
【0015】
リング部材の円周部の各出射口から出射された光が、被検査対象の対象領域に対して外周側から斜めに照射されるので、仮に光学素子が無い場合、被検査対象の対象領域に照射される光は、リング部材の半径方向に長軸を持つ略楕円形状となってしまう(リング部材の周方向に短軸を持つ略楕円形状となってしまう)。
【0016】
リング部材の円周部の各出射口と被検査対象の対象領域との間に配置された光学素子は、各出射口から出射された光を、リング部材の周方向に拡散する(周方向に延ばす)。このため、被検査対象の対象領域に照射される光は、リング部材の半径方向及び周方向に亘ってほぼ均等な略円形状となる。
【0017】
このような略円形状の光における任意の外径を被検査対象の対象領域に合せると、全周の各出射口から出射されて被検査対象の対象領域に対して照射される各光は、その照射範囲が対象領域にほぼ一致するとともに、対象領域のほぼ全域において互いに重なり合う。
【0018】
これにより、リング型照明装置を用いて被検査対象における対象領域に対して暗視野観察をするにあたって、対象領域に対する光の照射密度を高めることができるとともに、対象領域において光の明るさのバラツキを抑制することができる。
【0019】
以上、暗視野観察用のリング型照明装置に関して、被検査対象の対象領域に対する光の照射密度向上と明るさバラツキ抑制とを両立することができる。
【0020】
一実施形態では、前記光学素子は、前記出射口と前記対象領域との間に全周に亘って配置されたリング状の拡散板である。
【0021】
かかる構成によれば、光学素子としてリング状の拡散板を用いることによって、リング部材の円周部において多数の出射口を全周に亘って隙間なく配置することができる。
【0022】
一実施形態では、前記出射口は、前記円周部の全周に亘って複数点在しており、複数の前記出射口と前記対象領域との間には、前記光学素子としての複数のシリンドリカルレンズが設けられている。
【0023】
かかる構成によれば、光学素子として複数のシリンドリカルレンズを用いることによって、リング状の拡散板を用いた場合と同等の効果を得ることができる。
【0024】
一実施形態では、前記リング型照明装置と、前記中心穴を通じて前記対象領域に臨むカメラと、を備え、前記カメラで撮像された前記対象領域の撮像画像に基づいて前記被検査対象を検査する。
【0025】
かかる構成によれば、光学素子を備えるリング型照明装置によって、対象領域に対する光の照射密度が高められ且つ対象領域における光の明るさのバラツキが抑制されているので、検査装置にてカメラで撮像された対象領域の撮像画像に基づいて被検査対象を検査した場合における検査精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、暗視野観察用のリング型照明装置に関して、被検査対象の対象領域に対する光の照射密度向上と明るさバラツキ抑制とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るリング型照明装置を備える検査装置を正面断面図で示す。
【
図4】
図4は、リング型照明装置を正面断面図で示す。
【
図6】
図6は、拡散板を備えるリング型照明装置を用いた場合に被検査対象の対象領域に照射される光を示す。
【
図7】
図7は、被検査対象の対象領域での各光の重なり合いを示す。
【
図8】
図8は、その他の実施形態に係るリング型照明装置を正面断面図で示す。
【
図9】
図9は、その他の実施形態においてシリンドリカルレンズを備えるリング型照明装置を用いた場合に被検査対象の対象領域に照射される光を示す。
【
図10】
図10は、従来技術に係るリング型照明装置を正面断面図で示す。
【
図11】
図11は、従来技術に係るリング型照明装置を用いた場合に被検査対象の対象領域に照射される光を示す。
【
図12】
図12は、従来技術において略楕円形状の光の長軸を被検査対象の対象領域に合せた場合における対象領域での各光の重なり合いを示す。
【
図13】
図13は、従来技術において略楕円形状の光の短軸を被検査対象の対象領域に合せた場合における対象領域での各光の重なり合いを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0029】
(リング型照明装置)
本開示の一実施形態に係る検査装置1を正面断面図で示す。
図2は、リング型照明装置2を平面図で示す。
図1に示すように、検査装置1は、リング型照明装置2と、カメラ3と、対物レンズ4と、を備える。
【0030】
リング型照明装置2は、被検査対象Wにおける対象領域Aに対して暗視野観察をするためにある。被検査対象Wは、例えば半導体基板の表面である。対象領域Aは、被検査対象Wに区画されている。本実施形態では、対象領域Aは、四角形状である。
【0031】
図2に示すように、リング型照明装置2は、リング状のリング部材10を備える。リング部材10は、円周部11が被検査対象Wの対象領域Aよりも外周側にあるように且つ中心穴12が被検査対象Wの対象領域Aに臨むように、配置される。リング部材10は、例えば金属や樹脂などで形成されている。
【0032】
図2に示すように、リング部材10の円周部11の内周側には、複数の出射口13が設けられている。各出射口13は、円周部11の全周に亘って配置されている。なお、
図2では簡単のため複数の出射口13が全周に亘って点在しているように見えるが、実際のところ、多数の出射口13が全周に亘って隙間なく配置されている。多数の出射口13は、全周に亘るリング状の1つの出射口を構成しているともいえる(
図5参照)。
【0033】
図1,2に示すように、各出射口13からは、被検査対象Wの対象領域Aに対して光Lが斜めに出射される。各出射口13からの光Lの出射方向は、リング部材10の軸方向及び半径方向に対して斜めである。具体的には、リング部材10の円周部11の内周部における被検査対象W側の部分11aは、リング部材10の軸方向及び半径方向に対して斜めになっている(以下「傾斜部11a」という)。出射口13は、傾斜部11aに設けられている。また、各出射口13からの光Lの出射方向は、被検査対象W(例えば基板の表面)の延びる方向に対して斜めである。
【0034】
図1に示すように、複数の光ファイバ14が、リング部材10の円周部11内の空洞15を通じて全周に亘って巡らされている。各光ファイバ14は、各出射口13に至っている。リング部材10の円周部11における外周部の一端部には、導入ダクト16が設けられている。各光ファイバ14は、導入ダクト16を介して円周部11内の空洞15に導入されている。円周部11内の空洞15と各出射口13との間の内周壁部には、リング部材10の軸方向及び半径方向に対して斜めに延びた孔17が貫通している。このような斜めに延びて各出射口13に連続する孔17は、ライトガイドとも呼ばれる。
【0035】
なお、
図1に示すように、リング型照明装置2は、光学素子としての拡散板20を備える。拡散板20の詳細については、後述する。
【0036】
図1に示すように、カメラ3は、リング部材10の中心穴12を通じて、被検査対象Wの対象領域Aに対して臨んでいる。対物レンズ4は、カメラ3と被検査対象Wとの間に配置されている。カメラ3の視野は、被検査対象Wの対象領域Aに対応している。
【0037】
図3は、暗視野観察の概念を示す。なお、
図3において簡単のため、リング型照明装置2の図示を省略する。上述したように、リング部材10の円周部11の各出射口13から出射された光Lは、被検査対象Wの対象領域Aに対して斜めに照射される。被検査対象Wの対象領域Aにおける欠陥Xの存在しない非欠陥部Waに照射された光Lは、そのまま斜めに鏡面反射(正反射、実線参照)されて、カメラ3の視野外に抜けていく。
【0038】
一方、被検査対象Wの対象領域Aにおける欠陥Xの存在する欠陥部Wbに照射された光Lは、拡散反射(散乱、破線参照)される。拡散反射された光Lの一部は、リング部材10の中心穴12を通じて、対物レンズ4を介してカメラ3の視野内に捉えられて、カメラ3で撮像される。
【0039】
検査装置1は、カメラ3で撮像された被検査対象Wの対象領域Aの撮像画像に基づいて、被検査対象Wを検査する。検査装置1は、例えば、被検査対象Wに形成された欠陥Xを検出する。
【0040】
なお、欠陥Xとして、例えば、異物、傷、エッジリンス不良、スルーホール異常、塗膜ムラ、剥がれ、スクラッチ、ボンディングパッド異常、色ムラ、パターン異常、染み、変色、変形、などがある。
【0041】
(従来技術の問題点)
従来技術に係るリング型照明装置2’の問題点について説明する。
図10は、従来技術に係るリング型照明装置2’を正面断面図で模式的に示す。
図11は、従来技術に係るリング型照明装置2’を用いた場合に被検査対象Wの対象領域Aに照射される光Lを示す。なお、
図11において、上は平面図、下は正面図、中央は平面図に対して対象領域Aを重ねた図である。
【0042】
図10に示すように、従来技術に係るリング型照明装置2’は、本実施形態に係るリング型照明装置2とは異なり、拡散板20(
図1参照)を備えない。
【0043】
従来技術に係るリング型照明装置2’では、
図11に示すように、リング部材10の円周部11の出射口13から出射された光Lが、被検査対象Wの対象領域Aに対して外周側から斜めに照射される。このため、被検査対象Wの対象領域Aに照射される光Lは、リング部材10の半径方向に長軸Rを持つ略楕円形状となってしまう。換言すると、被検査対象Wの対象領域Aに照射される光Lは、リング部材10の周方向に短軸Tを持つ略楕円形状となってしまう。なお、略楕円形状には、扁平の多角形状(例えば長方形状)も含まれ得る。
【0044】
図12は、従来技術において略楕円形状の光Lの長軸Rを被検査対象Wの対象領域Aに合せた場合における対象領域Aでの各光Lの重なり合いを示す。
図12において、左は1つの出射口13から出射される光Lと対象領域Lとの関係を示し、右は全周の各出射口13から出射される光Lの対象領域Lにおける重なり合いを示す。
【0045】
略楕円形状の光Lの長軸Rを被検査対象Wの対象領域A(カメラ3の視野)に合せた場合、全周の各出射口13から出射されて被検査対象Wの対象領域Aに対して照射される各光Lの照射範囲Hは、対象領域Aにほぼ一致する。このため、対象領域Aに対する光Lの照射密度を高めることができる。
【0046】
しかしながら、光Lの長軸Rを対象領域Aに合せた場合、全周の各出射口13から出射されて被検査対象Wの対象領域Aに対して照射される各光Lは、対象領域Aの中央部のみで互いに重り合う。このため、対象領域Aにおいて光Lの明るさのバラツキが生じてしまう。具体的には、対象領域Aの中央部において各光Lが密になって明るくなる一方、対象領域Aの外周部において各光Lが疎になって暗くなる。
【0047】
図13は、従来技術において略楕円形状の光Lの短軸Tを被検査対象Wの対象領域Aに合せた場合における対象領域Aでの各光Lの重なり合いを示す。
図13における左右の図の関係は、
図12と同様である。
【0048】
略楕円形状の光Lの短軸Tを被検査対象Wの対象領域A(カメラ3の視野)に合せた場合、全周の各出射口13から出射されて被検査対象Wの対象領域Aに対して照射される各光Lは、対象領域Aのほぼ全域において互いに重なり合う。このため、対象領域Aにおいて光Lの明るさのバラツキを抑制することができる。
【0049】
しかしながら、光Lの短軸Tを対象領域Aに合せた場合、全周の各出射口13から出射されて被検査対象Wの対象領域Aに対して照射される各光Lの照射範囲Hは、対象領域Aよりも外側にはみ出てしまう。このため、対象領域Aに対する光Lの照射密度が低減してしまう。
【0050】
このように、従来技術では、暗視野観察用のリング型照明装置2’に関して、被検査対象Wの対象領域Aに対する光Lの照射密度向上と明るさバラツキ抑制とを両立することが、困難であった。
【0051】
(拡散板)
本実施形態に係るリング型照明装置2は、拡散板20を備えることによって、上記問題を解決する。
図4は、リング型照明装置2を正面断面図で示す。
図5は、リング型照明装置2を底面図で示す。
【0052】
図4に示すように、拡散板20は、各出射口13と被検査対象Wの対象領域Aとの間に、設けられている。拡散板20は、リング状である。
図5に示すように、リング状の拡散板20は、各出射口13と被検査対象Wの対象領域Aとの間に、全周に亘って配置されている。
【0053】
拡散板20は、半径方向を厚み方向とする板状でもある。
図4に示すように、正面視において、拡散板20は、被検査対象W側(下側)に長辺を持ち且つ被検査対象Wとは反対側(上側、カメラ3側)に短辺を持つ、台形状でもある。リング部材10の円周部11の内周部における被検査対象W側(下側)の傾斜部11aには、拡散板20の外周部が接している。傾斜部11aに設けられた出射口13は、拡散板20に覆われている。
【0054】
図6は、拡散板20を備えるリング型照明装置2を用いた場合に被検査対象Wの対象領域Aに照射される光Lを示す。なお、
図6において、上は平面図、下は正面図、中央は平面図に対して対象領域Aを重ねた図である。拡散板20は、各出射口13から出射された光Lを、リング部材10の周方向(接線方向、
図6の矢印B参照)のみに拡散する。拡散板20は、各出射口13から出射された光Lを、リング部材10の半径方向には拡散しない。
【0055】
(作用効果)
リング部材10の円周部11の各出射口13から出射された光Lは、被検査対象Wの対象領域Aに対して外周側から斜めに照射される。このため、従来技術に係るリング型照明装置2’(
図10~13参照)では、拡散板(光学素子)20が無いので、被検査対象Wの対象領域Aに照射される光Lは、リング部材10の半径方向に長軸Rを持つ略楕円形状となってしまう(リング部材10の周方向に短軸Tを持つ略楕円形状となってしまう)。
【0056】
本実施形態に係るリング型照明装置2では、
図6に示すように、リング部材10の円周部11の各出射口13と被検査対象Wの対象領域Aとの間に配置された拡散板(光学素子)20は、各出射口13から出射された光Lを、リング部材10の周方向に拡散する(周方向に延ばす)。このため、被検査対象Wの対象領域Aに照射される光Lは、リング部材10の半径方向及び周方向に亘ってほぼ均等な略円形状となる。なお、略円形状には、縦横比がほぼ同じ正多角形状(例えば正方形状)も含まれる。
【0057】
図7は、被検査対象Wの対象領域Aでの各光Lの重なり合いを示す。
図7において、左は1つの出射口13から出射される光Lと対象領域Lとの関係を示し、右は全周の各出射口13から出射される光Lの対象領域Lにおける重なり合いを示す。
【0058】
このような略円形状の光Lにおける任意の外径Dを被検査対象Wの対象領域Aに合せると、全周の各出射口13から出射されて被検査対象Wの対象領域Aに対して照射される各光Lは、その照射範囲Hが対象領域Aにほぼ一致するとともに、対象領域Aのほぼ全域において互いに重なり合う。
【0059】
これにより、リング型照明装置2を用いて被検査対象Wにおける対象領域Aに対して暗視野観察をするにあたって、対象領域Aに対する光Lの照射密度を高めることができるとともに、対象領域Aにおいて光Lの明るさのバラツキを抑制する(均一性を高める)ことができる。
【0060】
以上、暗視野観察用のリング型照明装置2に関して、被検査対象Wの対象領域Aに対する光Lの照射密度向上と明るさバラツキ抑制とを両立することができる。
【0061】
光学素子としてリング状の拡散板20を用いることによって、リング部材10の円周部11において多数の出射口13を全周に亘って隙間なく配置することができる。
【0062】
拡散板(光学素子)20を備えるリング型照明装置2によって、対象領域Aに対する光Lの照射密度が高められ且つ対象領域Aにおける光Lの明るさのバラツキが抑制されているので、検査装置1にてカメラ3で撮像された対象領域Aの撮像画像に基づいて被検査対象Wを検査した場合における検査精度を向上させることができる。
【0063】
(その他の実施形態)
図8は、その他の実施形態に係るリング型照明装置2を正面断面図で示す。
図9は、その他の実施形態においてシリンドリカルレンズ21を備えるリング型照明装置2を用いた場合に被検査対象Wの対象領域Aに照射される光Lを示す。なお、
図9において、上は平面図、下は正面図ある。
【0064】
図8に示すように、この実施形態に係るリング型照明装置2では、出射口13は、リング部材10の円周部11の全周に亘って複数点在している。複数の出射口13は、周方向に互いに間隔を空けて配置されている。周方向に隣り合う出射口13同士の間には、隙間がある。
【0065】
図8に示すように、リング型照明装置2は、光学素子としての複数のシリンドリカルレンズ21を備える。複数のシリンドリカルレンズ21は、複数の出射口13に対応するように、周方向に互いに間隔を空けて配置されている。周方向に隣り合うシリンドリカルレンズ21同士の間には、隙間がある。複数のシリンドリカルレンズ21は、複数の出射口13と被検査対象Wの対象領域Aとの間に、設けられている(配置されている)。
【0066】
図9に示すように、シリンドリカルレンズ21の内周側部分は、平面視において外周側に凹んでいる。各シリンドリカルレンズ21は、各出射口13から出射された光Lを、リング部材10の周方向(
図9の矢印B参照)のみに拡散する。各シリンドリカルレンズ21は、各出射口13から出射された光Lを、リング部材10の半径方向には拡散しない。
【0067】
この実施形態によれば、光学素子として複数のシリンドリカルレンズ21を用いることによって、リング状の拡散板20を用いた場合と同等の効果を得ることができる。
【0068】
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0069】
光学素子(拡散板20、シリンドリカルレンズ21)は、各出射口13から出射された光Lを、リング部材10の半径方向に多少拡散しても差し支えない。すなわち、光学素子20,21による周方向への光Lの拡散量が、光学素子20,21による半径方向への光Lの拡散量よりも、大きければよい。光学素子は、拡散板20及びシリンドリカルレンズ21に限定されず、各出射口13から出射された光Lをリング部材10の周方向に拡散するのであれば、いかなる構成でもよい。
【0070】
被検査対象Wは、半導体基板に限定されず、例えば、ガラスや金属や樹脂その他でもよく、また板材でなくてもよい。対象領域Aは、四角形状ではなく、例えば円形状などもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示は、リング型照明装置及び検査装置に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0072】
W 被検査対象
A 対象領域
L 光
X 欠陥
R 長軸
T 短軸
H 照射範囲
D 外径
1 検査装置
2 リング型照明装置
3 カメラ
4 対物レンズ
10 リング部材
11 円周部
12 中心穴
13 出射口
14 光ファイバ
17 ライトガイド(孔)
20 拡散板(光学素子)
21 シリンドリカルレンズ(光学素子)