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特開2024-107884殺菌剤吹き付けノズル及び殺菌剤吹き付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107884
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】殺菌剤吹き付けノズル及び殺菌剤吹き付け方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/04 20060101AFI20240802BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20240802BHJP
   B65B 55/10 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B65B55/04 C
A61L2/20 106
B65B55/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012057
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】秋山 勇人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉則
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA25
4C058BB07
4C058CC02
4C058EE26
4C058JJ12
4C058JJ24
(57)【要約】
【課題】無菌充填機において、高速で搬送されるボトルに固定されたノズルにより殺菌剤を吹き付け、殺菌に必要な量の殺菌剤を効果的にボトルの内面に付着させる。
【解決手段】殺菌剤をガス化し、ガス化された殺菌剤を搬送されるボトルの口部からボトルの内部に吹き付ける、固定された殺菌剤吹き付けノズルであって、殺菌剤吹き付けノズルの吹き付け孔を囲繞する、吹き付け孔の先端面から延びる水平面を設け、吹き付け孔から殺菌剤を前記ボトルの口部に吹き付けを開始するときから終了するまで、水平面がボトルの口部を遮蔽する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌剤をガス化し、ガス化された殺菌剤を搬送されるボトルの口部から前記ボトルの内部に吹き付ける、固定された殺菌剤吹き付けノズルであって、
前記殺菌剤吹き付けノズルの吹き付け孔を囲繞する、前記吹き付け孔の先端面から延びる水平面を設け、
前記吹き付け孔から前記殺菌剤を前記ボトルの前記口部に吹き付けを開始するときから終了するまで、前記水平面が前記ボトルの前記口部を遮蔽する殺菌剤吹き付けノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の殺菌剤吹き付けノズルにおいて、
前記ボトルが搬送される方向に対する直角方向の、前記吹き付け孔を含む前記水平面の長さを、前記ボトルの前記口部の内径以上とし、前記ボトルが搬送される方向の前記吹き付け孔を挟む両側の前記水平面の長さをそれぞれ前記口部の内径以上の長さとする殺菌剤の吹き付けノズル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の殺菌剤吹き付けノズルにおいて、
前記殺菌剤吹き付けノズルの直下を搬送される前記ボトルの口部天面と前記水平面が平行であって、前記ボトルの前記口部天面と前記水平面との間隔が、0.5mm以上、5mm以下である殺菌剤吹き付けノズル。
【請求項4】
殺菌剤をガス化し、ガス化された前記殺菌剤を搬送されるボトルの口部から前記ボトルの内部に吹き付ける、固定された殺菌剤吹き付けノズルであって、
前記殺菌剤吹き付けノズルの吹き付け孔を囲繞する、前記吹き付け孔の先端面から延びる水平面を設け、
前記吹き付け孔から前記殺菌剤を前記ボトルの口部に吹き付けを開始するときから終了するまで、前記水平面により前記ボトルの口部を遮蔽する殺菌剤吹き付け方法。
【請求項5】
請求項4に記載の殺菌剤の吹き付け方法において、
前記ボトルが搬送される方向に対する直角方向の、前記吹き付け孔を含む前記水平面の長さを、前記ボトルの前記口部の内径以上とし、前記ボトルが搬送される方向の前記吹き付け孔を挟む両側の前記水平面の長さをそれぞれ前記口部の内径以上の長さとする殺菌剤の吹き付け方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の殺菌剤の吹き付け方法において、
前記殺菌剤吹き付けノズルの直下を搬送される前記ボトルの口部天面と前記水平面が平行であって、前記ボトルの前記口部天面と前記水平面の間隔が、0.5mm以上、5mm以下である殺菌剤吹き付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌充填機において包装材料の殺菌に使用される、殺菌剤のガスを被殺菌物に吹き付ける殺菌剤吹き付けノズル、及び殺菌剤吹き付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポーションミルク、ブリック型液体紙容器入り飲料、パウチ入りスープ、カップ入り飲料、PETボトル入り飲料等、無菌充填機により様々な容器に、食品や飲料が充填されて流通している。無菌充填機とは、殺菌した容器に殺菌した内容物を無菌雰囲気で充填して密封する装置である。無菌充填機により生産された製品は、流通や保管を常温で行うことができるため、冷蔵、冷凍製品よりもエネルギー消費が少なく、味覚も良いことから増加傾向にある。
【0003】
無菌充填機において、容器となる包装材料は前述の通り様々であり、包装材料によりその殺菌方法も異なる。紫外線や電子線を照射する方法もあるが、殺菌剤により、包装材料の表面を殺菌する方法が主流である。さらに殺菌剤を使用して包装材料を殺菌する場合、ポーションミルクやブリック型紙容器は殺菌剤に包装材料を浸漬して殺菌するが、殺菌剤を噴霧する方法もある。フラットで、比較的高温の乾燥温度に支障がない包装材料は、殺菌剤に浸漬して殺菌される。カップやボトルのような成形品や高温乾燥で伸びてしまうフィルムのような、耐熱性が劣る包装材料は殺菌剤の噴霧により殺菌される。
【0004】
噴霧する殺菌剤の液滴が大きいとカップやボトルの側面で垂れたりする。噴霧する殺菌剤の液滴は小さいほど包装材料の表面に均一に塗布され、殺菌効果も高い。そこで。殺菌剤の液滴を細粒化する方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
包装材料の表面に付着する殺菌剤の液滴が小さく、包装材料の表面が殺菌剤の液滴により密に被覆されているほど、殺菌効果は高い。そのため、殺菌剤の液滴を噴霧するのではなく、殺菌剤をガス化させ、ガス化した殺菌剤を包装材料の表面に吹き付けて、殺菌剤を包装材料の表面で凝縮させる方法が提案されている(特許文献2)。ここで、殺菌剤のガス化は、殺菌剤を加熱された発熱体に滴下することで行われている。
【0006】
さらに、加熱された管内に殺菌剤を噴霧することにより、殺菌剤のガス化を多量に効率的に行う方法も提案されている(特許文献3)。また、加熱された管内に蓄熱体を設ける方法も提案されている(特許文献4)。
【0007】
ガス化された殺菌剤は、ノズルにより被殺菌物である包装材料に吹き付けられる。搬送されるボトルのような被殺菌物と同期してノズルが移動し、ボトル内にノズルを挿入してボトル内に殺菌剤を吹き付ける無菌充填機がある(特許文献5)。ノズルはボトルと同期して移動しながらボトル内に殺菌剤を吹き付けるが、ノズルはボトル内に挿入されない無菌充填機がある(特許文献6)。また、ノズルが固定され、固定されたノズルの直下を搬送されるボトルの内部に殺菌剤を吹き込む無菌充填機もある(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60-220067号公報
【特許文献2】特開昭63-11163号公報
【特許文献3】特開平3-224469号公報
【特許文献4】特開平10-218134号公報
【特許文献5】特開2022-96392号公報
【特許文献6】特許第6819709号公報
【特許文献7】特開2020-109023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
無菌充填機において包装材料を殺菌するため、ガス化された過酸化水素水が多用されている。過酸化水素水をガス化させる方法は、過酸化水素水を発熱体に接触させることによる。特許文献3に記載される過酸化水素水のガス化装置は、殺菌剤供給部に二流体スプレと類似のものが使用され、スプレから噴霧される殺菌剤を加熱された気化管の表面に接触させることでガス化している。気化管はその外面に設けられるヒータにより加熱されている。気化管はアルミニウム、ステンレスのような金属が使用され、ヒータによる加熱が迅速に伝わるよう考慮されている。
【0010】
ボトルに飲料を充填する無菌充填機の場合、高速化されることにより殺菌剤の使用量が増加し、殺菌剤の噴霧量を増やすと気化管内面の熱量消費が増え、ヒータにより加えられる熱量が不足し、気化管表面の温度が低下することとなる。そこで、気化管の本数が増やされている。気化管を増やすことは、初期投資の過大化を招いている。
【0011】
気化管の先端は、ガス化した殺菌剤をボトルの内部に吹き付けるため、ノズル形状としている。ノズルは、搬送されるボトルと同期して移動する場合と固定される場合がある。ノズルがボトル内に挿入されることによりボトルの内部への殺菌剤の吹き付けが確実に行われる。しかし、ノズルをボトルと同期させて移動させ、ボトル内に挿入することは、無菌充填機の高速化に伴い、装置を過大にし、複雑化し無菌充填機を高価なものとしている。挿入しない場合でも、搬送されるボトルと同期させてノズルを移動させるのは、装置を高価なものとしている。
【0012】
無菌充填機の高速化に伴い、固定されたノズルの直下を搬送されるボトルに殺菌剤を吹き付けることが一般化している。殺菌剤の吹き付けを固定されたノズルにより行うことで、無菌充填機の装置費用を抑制することができる。しかし、固定されたノズルにより高速で搬送されるボトルの内部に殺菌剤を確実に吹き付けることは容易ではない。そのため、ノズルを複数設ける必要がある。また、特許文献7のように、トンネル状の覆いの天井部分にノズルを設け、ノズルからトンネル状の覆い内を搬送されるボトルの口部に向かって殺菌剤を吹き付けることが提案されている。
【0013】
ボトルの内面への殺菌剤の付着量を増やすためには、高速化に合わせて殺菌剤の吹き付け量を増やす必要がある。吹き付け量を増やすために、吹き付け風量を増やすと、吹き付け圧力を上げなければならない。圧力を上げることでボトルの内部への殺菌剤の吹き付け量を増やすことはできるが、ボトルの内部に吹き付けられた殺菌剤は圧力が高いために、ボトルの口部から溢れ出て、ボトルの内面の殺菌剤の付着量は想定よりも少ない結果となってしまう。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、高速で搬送されるボトルに固定されたノズルにより殺菌剤を吹き付け、殺菌に必要な量の殺菌剤を効果的にボトルの内面に付着させる殺菌剤吹き付けノズル及び殺菌剤吹き付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示に係る殺菌剤吹き付けノズルは、殺菌剤をガス化し、ガス化された殺菌剤を搬送されるボトルの口部から前記ボトルの内部に吹き付ける、固定された殺菌剤吹き付けノズルであって、前記殺菌剤吹き付けノズルの吹き付け孔を囲繞する、前記吹き付け孔の先端面から延びる水平面を設け、前記吹き付け孔から前記殺菌剤を前記ボトルの前記口部に吹き付けを開始するときから終了するまで、前記水平面が前記ボトルの前記口部を遮蔽する。
【0016】
本開示に係る殺菌剤吹き付けノズルにおいて、前記ボトルが搬送される方向に対する直角方向の、前記吹き付け孔を含む前記水平面の長さを、前記ボトルの前記口部の内径以上とし、前記ボトルが搬送される方向の前記吹き付け孔を挟む両側の前記水平面の長さをそれぞれ前記口部の内径以上の長さとすると好適である。
【0017】
本開示に係る殺菌剤吹き付けノズルにおいて、前記殺菌剤吹き付けノズルの直下を搬送される前記ボトルの口部天面と前記水平面が平行であって、前記ボトルの前記口部天面と前記水平面との間隔が、0.5mm以上、5mm以下であると好適である。
【0018】
本開示に係る殺菌剤吹き付け方法は、殺菌剤をガス化し、ガス化された前記殺菌剤を搬送されるボトルの口部から前記ボトルの内部に吹き付ける、固定された殺菌剤吹き付けノズルであって、前記殺菌剤吹き付けノズルの吹き付け孔を囲繞する、前記吹き付け孔の先端面から延びる水平面を設け、前記吹き付け孔から前記殺菌剤を前記ボトルの口部に吹き付けを開始するときから終了するまで、前記水平面により前記ボトルの口部を遮蔽する。
【0019】
本開示に係る殺菌剤吹き付け方法において、前記ボトルが搬送される方向に対する直角方向の、前記吹き付け孔を含む前記水平面の長さを、前記ボトルの前記口部の内径以上とし、前記ボトルが搬送される方向の前記吹き付け孔を挟む両側の前記水平面の長さをそれぞれ前記口部の内径以上の長さとすると好適である。
【0020】
本開示に係る殺菌剤吹き付け方法において、前記殺菌剤吹き付けノズルの直下を搬送される前記ボトルの口部天面と前記水平面が平行であって、前記ボトルの前記口部天面と前記水平面の間隔が、0.5mm以上、5mm以下であると好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の殺菌剤吹き付けノズル及び殺菌剤の吹き付け方法によれば、ボトルに飲料や乳製品等を充填する無菌充填機において、ボトルの内面の殺菌に使用される殺菌剤のガスを効率的にボトルの内面に付着させることができる。結果として殺菌剤の使用量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術に係る殺菌剤吹き付けノズルを示す側面図である。
図2】本開示に係る殺菌剤吹き付けノズルの実施の形態1を示す側面図である。
図3】本開示に係る殺菌剤吹き付けノズルの実施の形態2を示す側面図である。
図4】従来技術に係る殺菌剤吹き付けノズルによるボトルへの殺菌剤吹き付けの状態を示す側面図である。
図5】本開示に係る殺菌剤吹き付けノズルの実施の形態1によるボトルへの殺菌剤吹き付けの状態を示す側面図である。
図6】本開示に係る殺菌剤吹き付けノズルの実施の形態2によるボトルへの殺菌剤吹き付けの状態を示す側面図である。
図7】本開示に係る殺菌剤吹き付けノズルによるボトルへの殺菌剤吹き付けの状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図2は、本開示に係る殺菌剤吹き付けノズルの実施の形態1を示す側面図である。殺菌剤吹き付けノズル11は、殺菌剤ガス化装置1の先端に備えられる。殺菌剤ガス化装置1は、殺菌剤供給口3及び圧縮エア供給口4を備える殺菌剤噴霧装置2、エクステンションパイプ5、エクステンションパイプ5の先端に備えられる噴霧ノズル6、気化部7、気化部7にあって、殺菌剤をガス化する気化管8及び気化管8の先端に備えられる殺菌剤吹き付けノズル11が設けられる。
【0025】
殺菌剤噴霧装置2は、二流体スプレである。図示しない殺菌剤のタンクから殺菌剤を殺菌剤供給口3に供給し、圧縮エアを圧縮エア供給口4に供給し、エクステンションパイプ5を経て、噴霧ノズル6から殺菌剤が気化管8内に噴霧される。エクステンションパイプ5は、気化部7の熱が、気化管8の上面を経て、噴霧装置2に伝導し、噴霧装置2の本体の温度が上昇しないように設けられている。
【0026】
気化部7は、内面に気化管8及び気化管8から延びる殺菌剤吹き付けノズル11を備え、その外側に気化管8と一定の間隔を保持して、気化管8の外面を覆う気化管8と相似形の管体10を備え、気化管8及びと管体10の間に加熱装置9が設けられる。管体10は、気化管8及び加熱装置9を保護する。また、管体10は断熱機能を付与するために断熱層と保護層のように複層であっても構わない。
【0027】
加熱装置9は、例えば複数枚のバンドヒータを気化管8の外面に巻くように設ける。バンドヒータは複数枚使用しなければ、気化管8の全外面をヒータにより被覆することができない。また、気化管8の外面を絶縁して導線を巻き付けて、導線に電気を流して気化管8を誘導加熱しても構わない。
【0028】
殺菌剤噴霧装置2の殺菌剤供給口3に殺菌剤が供給され、供給される殺菌剤は圧縮エア供給口4から供給される圧縮エアにより、噴霧ノズル6から加熱装置9により加熱された気化管8の内部に噴霧される。加熱された気化管8の内部に噴霧される殺菌剤は、加熱された気化管8の内面に接触することで加熱され、瞬時にガス化する。
【0029】
殺菌剤噴霧装置2は二流体スプレであり、噴霧ノズル6から殺菌剤はミストとなって気化管8の内面に噴霧される。噴霧された殺菌剤は、加熱された気化管8の内面に接触してガス化する。生成した殺菌剤のガスは、圧縮エアの圧力により殺菌剤吹き付けノズル11から噴出する。
【0030】
殺菌剤は少なくとも過酸化水素を含んでいる。その含有量は0.5質量%~65質量%の範囲が適当である。0.5質量%未満では殺菌力が不足する場合があり、65質量%を超えると安全上、扱いが困難となる。また、さらに好適なのは0.5質量%~40質量%であり、40質量%以下では扱いがより容易であり、低濃度となるために殺菌後の包装材料への過酸化水素の残留量を低減できる。
【0031】
また、殺菌剤は過酸化水素の分解を防止するために安定剤を含んでいる。殺菌剤の安定剤は、食品向けの包装材料を殺菌するために厚生労働大臣により食品用の指定添加物として認められているピロリン酸ナトリウムやオルトリン酸を使用することが好ましい。しかし、ピロリン酸水素ナトリウム等のリン含有無機化合物、アミノトリメチルホスホン酸、アルキリデンジホスホン酸塩等のホスホン酸キレート剤等を使用しても構わない。安定剤の含有量は通常40ppm以下である。
【0032】
また、殺菌剤は水を含んでなるが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、グリコールエーテル等の1種又は2種以上を含んでもかまわない。
【0033】
さらに、殺菌剤は過酢酸、酢酸、塩素化合物、オゾン等殺菌効果を有する化合物、陽イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤等の添加剤を含んでも構わない。
【0034】
気化管8は噴霧ノズル6から噴霧される殺菌剤が円形に噴霧されることから、円筒状が好ましい。しかし、多角筒状でも構わない。円筒の径は、殺菌剤の噴霧に使用される圧縮エアにより気化管8の内圧が高くならないように、十分な大きさが必要である。しかし、噴霧された殺菌剤のミストが、気化管8の内面に接触できるような径でなければならない。さらに、円筒の長さもこの条件を満たすように設計される。
【0035】
気化管8は殺菌剤が噴霧される上部は円筒形であるが、殺菌剤吹き付けノズル11の径に合わせるために、円筒の途中から当初の円筒の径から殺菌剤吹き付けノズル11の径まで、連続的に減少させる。この部分は漏斗状の形状となっている。
【0036】
殺菌剤噴霧装置2の運転条件としては、例えば圧縮空気の圧力は0.05MPa~0.6MPaの範囲で調整される。また、殺菌剤は重力落下であってもポンプを備えて圧力を加えても構わないし、殺菌剤の供給量は自由に設定することができ、例えば1g/min.~100g/min.の範囲で供給する。
【0037】
気化管8の内面に接触することでガス化された殺菌剤は、圧縮エアの圧力により殺菌剤吹き付けノズル11より噴出される。殺菌剤吹き付けノズル11は固定され、殺菌剤吹き付けノズル11の直下を搬送されるボトル12に対向させて、殺菌剤吹き付けノズル11から噴出する殺菌剤のガスをボトル12の口部13からボトル12の内部に吹き付ける。
【0038】
殺菌剤のガスの吹き出し口となる殺菌剤吹き付けノズル11の吹き付け孔15の内径は任意に設定することができ、2mmφ~20mmφとすることができる。内径を小さくすることで、生成される殺菌剤のガスの吹き出し圧力を高めることができる。吹き出し圧力を調整することにより殺菌剤のガス若しくは凝結により生成するミスト又はこれらの混合物のボトル12の内部への吹き付け圧力を調整できる。
【0039】
気化管8及び殺菌剤吹き付けノズル11は、鉄、ステンレス、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、タングステン等の金属が使用される。気化管8及び殺菌剤吹き付けノズル11の内表面に、気化管8及び殺菌剤吹き付けノズル11に使用される金属とは異なるクロム、ニッケル等の金属をメッキしても構わない。また、気化管8及び殺菌剤吹き付けノズル11の内面にポリテトラフルオロエチレン若しくはペルフルオロアルコキシフッ素樹脂をコーティングするか、又はポリテトラフルオロエチレン若しくはペルフルオロアルコキシフッ素樹脂含侵クロムをメッキしても構わない。
【0040】
従来技術による殺菌剤吹き付けノズル11を図1に示す。殺菌剤噴霧装置2、エクステンションパイプ5、噴霧ノズル6及び気化部7という構成は、図2に示す本開示に係る実施の形態1と同様である。しかし、殺菌剤吹き付けノズル11が円筒状のノズルとなっている。殺菌剤吹き付けノズル11の内径は、ボトル12の口部13の内径よりも小さい。図4に、従来技術による殺菌剤吹き付けノズル11による、ボトル12の内部への殺菌剤の吹き付け状態を示す。殺菌剤吹き付けノズル11の直下を搬送されるボトル12の内部に、固定された殺菌剤吹き付けノズル11から、殺菌剤が吹き付けられる。ボトル12の内部に圧縮エアの圧力により吹き付けられる殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、ボトル12の底面に到達後、反転し、ボトル12の口部13の開口から溢れ出る。溢れ出た殺菌剤は、ボトル12の外部に排出される。
【0041】
圧縮エアの圧力が小さい場合、殺菌剤はボトル12の底面まで到達しない。しかし、圧縮エアの圧力を大きくすると、殺菌剤はボトル12の底面まで到達するが、底部に衝突した後反転してボトルから溢れ出る量が多くなる。結果としてボトル12の内面に付着する殺菌剤量が、殺菌に必要なまでに確保できないこととなる。特に、ボトル12の口部13の内面への付着量が少なく、ボトル12の口部13の内面の殺菌不良を引き起こすこととなる。
【0042】
従来は、ボトル12から殺菌剤が溢れ出ることを前提として、ボトル12の口部13を囲繞する環状の壁を設けて、溢れ出る殺菌剤をボトル12の外面に沿って流すようにしている。溢れ出る殺菌剤によりボトル12の外面を殺菌する。また、特許文献7では、ボトルをトンネル状の覆いの中を搬送し、トンネルの上部に設けられる固定された殺菌剤吹き付けノズルからトンネル内に殺菌剤を吹き付けることにより、ボトルの内部及び外部を同時に殺菌することが提案されている。
【0043】
図1に示す従来の殺菌剤吹き付けノズル11は、気化管8から円筒状のノズルが延びており、殺菌剤吹き付けノズル11の内径はボトル12の口部13の内径よりも小さくなくてはならない。例えば、殺菌剤吹き付けノズル11の内径を10mmφとすると、ノズルは単なる円筒状であり、ノズルの厚さを2mmとすると外径は14mmφ程度である。通常の飲料用としてのボトル12の内径は28mmφである。この殺菌剤吹き付けノズル11から、搬送されるボトル12の内部に殺菌剤を吹き付けると、前述のように、殺菌剤の多くはボトル12の口部13の開口から溢れ出てしまい、ボトル12の内部、とりわけ口部13の内面に付着する殺菌剤の量を確保できない。
【0044】
図1に示されるように、殺菌剤吹き付けノズル11は、加熱装置9から気化管8を経て伝導される熱により加熱される。しかし、円筒形状であるため、室温により冷却され、気化管8の温度よりも低下する。噴出する殺菌剤は、温度低下した殺菌剤吹き付けノズル11で冷却され、ガスがミスト化し、温度低下が甚だしい場合、殺菌剤が液化し、液状となって殺菌剤吹き付けノズル11から垂れることもある。
【0045】
本開示に係る殺菌剤吹き付けノズル11を図2に示す。殺菌剤吹き付けノズル11は、殺菌剤をガス化し、ガス化された殺菌剤を搬送されるボトル12の口部13からボトル12の内部に吹き付ける、固定された殺菌剤吹き付けノズル11であって、殺菌剤吹き付けノズル11の吹き付け孔15を囲繞する、吹き付け孔15の先端面から延びる水平面16が設けられ、吹き付け孔15から殺菌剤をボトル12の口部13に吹き付けを開始するときから終了するまで、水平面16がボトル12の口部13を遮蔽する。
【0046】
殺菌剤吹き付けノズル11の吹き付け孔15の外面を、図1のように、円筒状とするのではなく、吹き付け孔15の先端と同一平面となる水平面16を設けることが、本開示に係る殺菌剤吹き付けノズル11の特徴である。水平面16は、殺菌剤をボトル12の口部13に吹き付けを開始するときから終了するまで、ボトル12の口部13を遮蔽する。
【0047】
本開示に係る殺菌剤吹き付けノズル11によりボトル12の内部への殺菌剤を吹き付ける状態を図5に示す。水平面16がボトル12の口部13の全面を遮蔽する。殺菌剤吹き付けノズル11によりボトル12の内部に吹き付けられた殺菌剤は、ボトル12の底面に到達した後反転し、ボトル12の口部13に流れる。口部13に流れた殺菌剤は水平面16に衝突し、口部13からボトル12の外部に排出されることなく、ボトル12の内部に向かい、ボトル12の内部に滞留し、ボトル12の内面に付着し、ボトル12の内面の殺菌に寄与する。水平面16に衝突した殺菌剤は反転することで勢いが低下し、ボトル12の口部13の内面への付着を高めることができる。結果として、ボトル12の内部だけでなく、ボトル12の口部13の内面の殺菌効果も高めることができる。
【0048】
ボトル12の口部13の天面と口部13を遮蔽する水平面16は平行である。口部13の天面と水平面16とは接していない。接すると、ボトル12の内部のエアが排出されず、殺菌剤を吹き込むことができない。図5に示すように間隔をdとすると、dは0.5mm以上、5mm以下が好ましい。0.5mm未満では、口部13の天面と水平面16が接触するおそれがある。5mmを超えると、ボトル12の内部に吹き込まれた殺菌剤がボトル12の底部に到達した後反転し、口部13に流れ、水平面16に衝突した後、口部13の天面と水平面16の間から溢れ出る殺菌剤の量が多くなる。ボトル12の内部に流れる殺菌剤の量が減少することで、ボトル12の内部に付着する殺菌剤の量が少なくなり、ボトル12の内部、特に口部13の内面の殺菌効果が低下する。ボトル12に吹き込まれた殺菌剤は、限られた量であるが、溢れ出る。
【0049】
口部13の天面と口部13を遮蔽する水平面16との間隔を、小さくすることで、口部13の天面と水平面16の間から溢れ出る殺菌剤量を少なくし、ボトル12の内面に付着する殺菌剤の量を増やし、ボトル12の内面、特に口部13の内面の殺菌効果を上げることができる。
【0050】
dを小さくすることで、口部13を遮蔽する水平面16により、ボトル12の外部への殺菌剤の排出が阻害される。ボトル12の内部への殺菌剤の吹き込みは、圧縮エアの圧力により行われる。口部13を遮蔽する水平面16により、圧縮エアのボトル12から外部への排出が阻害されることにより、ボトル12の内部は陽圧となる。
【0051】
殺菌剤が吹き付けられるボトル12の内部の圧力は、圧縮エアの圧力及びdにより決定される。両者の数値を調整することで、ボトル12の内部の圧力を決定することができる。
【0052】
固定される殺菌剤吹き付けノズル11の吹き付け孔15から、直下を搬送されるボトル12の口部13に殺菌剤の吹き付けを開始するときから終了するまで、水平面16がボトル12の口部13を遮蔽する。したがって、図7に示すように、ボトル12が移動する方向に対する水平面16の直角方向の長さaを、ボトル12の口部13の内径以上とし、ボトル12が移動する方向の吹き付け孔15を挟む両側の水平面16の長さbをそれぞれ口部13の内径以上の長さとする。すなわち、吹き付け孔15からボトル12の内部に殺菌剤が吹き込まれる瞬間から、殺菌剤の吹込みが終了する瞬間まで、水平面16がボトル12の口部13の開口を遮蔽する。
【0053】
図7では、水平面の形状を長方形としているが、ホイールの円周に多数備えられるグリッパーにより、ボトル12のサポートリング14が把持され、ホイールの回転により円弧を描くようにボトル12は搬送される。したがって、水平面16は円弧状であっても構わない。
【0054】
水平面16は、殺菌剤吹き付けノズル11の吹き付け孔15から、殺菌剤吹き付けノズル11の直下を搬送されるボトル12の口部13に殺菌剤が吹き込まれる瞬間から、殺菌剤の吹込みが終了するまでの間、少なくともボトル12の口部13の内径を遮蔽する大きさが必要である。この条件を満足することができれば、水平面の形状及び大きさがどのようなものでも構わない。
【0055】
図2に示すように、本開示に係る殺菌剤吹き付けノズル11は吹き付け孔15を囲繞する水平面16が気化管8から延びている。気化管8から延びている水平面16は、加熱装置9により直接的に加熱されていない。しかし、水平面16を有する突出部の外面を加熱しても構わない。加熱することで、吹き付け孔15が冷却されることなく、吹き付け孔15において、ガス化された殺菌剤が液化し、液滴となることを防止することができる。
【0056】
水平面16は、ボトル12が移動する方向に対する、水平面16の直角方向の長さaをボトル12の口部13の内径以上とし、ボトル12が移動する方向の吹き付け孔15を挟む両側の水平面16の長さbを、それぞれ口部13の内径以上とする。したがって、殺菌剤吹き付けノズル11は、図1に示す従来の殺菌剤吹き付けノズル11に比べ、大きな容積を有する。したがって、図2に示すように、殺菌剤吹き付けノズル11は直接的に加熱されなくても、加熱装置9からの熱伝導により高温となっており、大きな容積により熱容量が大きく、従来の殺菌剤吹き付けノズル11のように容易に冷却されることがなく、ガス化された殺菌剤が吹き付け孔15において液化する可能性が少ない。
【0057】
(実施の形態2)
本開示に係る実施の形態2の殺菌剤ガス化装置1を図3に示す。殺菌剤噴霧装置2、エクステンションパイプ5、噴霧ノズル6及び気化部7は、実施の形態1と同様である。実施の形態1では、気化管8から水平面16の形状の通り、殺菌剤吹き付けノズル11が延びているが、実施の形態2では、気化管8から殺菌剤吹き付けノズル11が延び、殺菌剤吹き付けノズル11の先端に水平面16を有する。
【0058】
水平面16の大きさは、実施の形態1と同様に、ボトル12が移動する方向に対する、水平面16の直角方向の長さaをボトル12の口部13の内径以上とし、ボトル12が移動する方向の吹き付け孔15を挟む両側の水平面16の長さbをそれぞれ口部13の内径以上の長さとする。
【0059】
図6は、実施の形態2に係る殺菌剤吹き付けノズル11によるボトル12への殺菌剤の吹き付けの状態を示す。ボトル12の口部13からボトル12の内部に殺菌剤を吹き付けるとき、水平面16が口部13の内径を遮蔽することができれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0060】
実施の形態1と相違し、実施の形態2では、水平面16と気化管8の間の外形を吹き付け孔15の外形形状としている。このようにすることで、水平面16の損傷、殺菌剤による劣化、殺菌剤に含有される添加物の蓄積により水平面16を維持できなくなる、等の水平面16に不都合が生じた場合、容易に水平面16のみを交換することができる。水平面16を吹き付け孔15の外形の先端に着脱可能としておく必要がある。殺菌剤吹き付けノズル11のメンテナンスが、実施の形態1よりも容易となる。
【0061】
気化管8と水平面16の間に加熱装置を組み込むことで、吹き付け孔15及び水平面16の温度を適正に保持することが可能となり、吹き付け孔15において殺菌剤ガスを液化させることを防止できる。
【0062】
実施の形態1では、水平面16を気化管8の断面の長さを超えて延ばすのは加工が煩雑となる。しかし、実施の形態2とすることで、水平面16が気化管8の断面の長さを超えた形状とすることが容易に可能となる。
【0063】
本発明は以上説明したように構成されるが、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨内において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…殺菌剤ガス化装置
2…殺菌剤噴霧装置
6…噴霧ノズル
8…気化管
9…加熱装置
11…殺菌剤吹き付けノズル
15…吹き付け孔
16…水平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7