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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107886
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/41 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
H01R13/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012059
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 陽
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF05
5E087GG06
5E087MM02
5E087MM05
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】互いに異なる収容姿勢をとる端子金具に対して、ハウジングの製造コストを高くすることなく対応可能なコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、端子金具40と、端子金具40が貫通して装着されるハウジング30と、を備え、貫通孔27は、端子金具40の貫通方向からみた断面視において、貫通方向と交差する第1方向に延びる第1貫通孔27aと、貫通方向および第1方向の両方向と交差する第2方向に延びる第2貫通孔27bと、を有し、第1貫通孔27aと第2貫通孔27bとは、互いに交差し、それぞれ端子金具40を貫通して係止可能な形状になっており、第1貫通孔27aは、第1方向の両端に互いに対向し、端子金具40に対する係止面である第1係止端面41aを有し、第2貫通孔27bは、第2方向の両端に互いに対向し、端子金具40に対する係止面である第2係止端面41bを有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具と、前記端子金具が装着されるハウジングと、を備えたコネクタであって、
前記ハウジングは、前記端子金具が貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記端子金具の貫通方向からみた断面視において、前記貫通方向と交差する第1方向に延びる第1貫通孔と、前記貫通方向および前記第1方向の両方向と交差する第2方向に延びる第2貫通孔と、を有し、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とは、互いに交差し、それぞれ前記端子金具を貫通して係止可能な形状になっており、
前記第1貫通孔は、前記第1方向の両端に互いに対向し、前記端子金具に対する係止面である第1係止端面を有し、
前記第2貫通孔は、前記第2方向の両端に互いに対向し、前記端子金具に対する係止面である第2係止端面を有するコネクタ。
【請求項2】
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とは、互いに同形状である請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが交差する部分の角部は、曲面状の断面形状を呈している請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記ハウジングに複数設けられ、
前記端子金具は、複数の前記貫通孔に対応して複数設けられており、
複数の前記端子金具には、前記第1貫通孔に係止されるものと、前記第2貫通孔に係止されるものと、が混在している、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のコネクタは、基板用コネクタであって、コネクタハウジングと、コネクタハウジングに取り付けられる複数の端子金具と、を備えている。コネクタハウジングは、相手側コネクタが嵌合されるフード部を有している。フード部の背壁部には矩形の挿通孔(以下貫通孔という。)が形成されている。端子金具は、金属製の板材であって、貫通孔を貫通した状態でコネクタハウジングに係止されている。端子金具は、板面を左右方向に沿わせた水平な収容姿勢をとって、貫通孔を貫通している。この種の基板用コネクタは、特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-047323号公報
【特許文献2】特開2009-16148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
端子金具は、板面を上下方向に沿わせた垂直な収容姿勢をとって、貫通孔を貫通する態様をとることもある。これに対し、特許文献1,2の技術は、水平姿勢の端子金具をコネクタハウジングに取り付ける場合にのみ対応できる技術である。通常、収容姿勢を異にする複数の端子金具は、それぞれに対応する、複数のコネクタハウジングに取り付けられることになる。このため、それぞれのコネクタハウジング毎に金型(コネクタハウジングを成形するための金型)を製作する必要があり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
本開示は、互いに異なる収容姿勢をとる端子金具に対して製造コストを高くすることなく対応可能な基板用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
端子金具と、前記端子金具が装着されるハウジングと、を備えたコネクタであって、前記ハウジングは、前記端子金具が貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔は、前記端子金具の貫通方向からみた断面視において、前記貫通方向と交差する第1方向に延びる第1貫通孔と、前記貫通方向および前記第1方向の両方向と交差する第2方向に延びる第2貫通孔と、を有し、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とは、互いに交差し、それぞれ前記端子金具を貫通して係止可能な形状になっており、前記第1貫通孔は、前記第1方向の両端に互いに対向し、前記端子金具に対する係止面である第1係止端面を有し、前記第2貫通孔は、前記第2方向の両端に互いに対向し、前記端子金具に対する係止面である第2係止端面を有するコネクタ。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、互いに異なる収容姿勢をとる端子金具に対して、ハウジングの製造コストを高くすることなく対応可能なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態1において、相手側コネクタと嵌合状態にあるコネクタの側断面図である。
図2図2は、コネクタの背面図である。
図3図3は、コネクタの正面図である。
図4図4は、上段の貫通孔と対応する位置で切断したコネクタの平断面図である。
図5図5は、下段の貫通孔と対応する位置で切断したコネクタの平断面図である。
図6図6は、図3の部分拡大図である。
図7図7は、図2の部分拡大図である。
図8図8は、端子金具の斜視図である。
図9図9は、端子金具がハウジングを係止する位置で切断したコネクタの部分拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のコネクタは、端子金具と、端子金具が装着されるハウジングと、を備えたコネクタであって、前記ハウジングは、前記端子金具が貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔は、端子金具の貫通方向からみた断面視において、貫通方向と交差する第1方向に延びる第1貫通孔と、貫通方向および第1方向の両方向と交差する第二方向に延びる第2貫通孔と、を有し、第1貫通孔と第2貫通孔とは、互いに交差し、それぞれ端子金具を貫通して係止可能な形状になっており、第1貫通孔は、第1方向の両端に互いに対向し、端子金具に対する係止面である第1係止端面を有し、第2貫通孔は、第二方向の両端に互いに対向し、端子金具に対する係止面である第2係止端面を有する。
【0010】
端子金具は、例えば、板面を第1方向に沿わせた収容姿勢(以下、第1姿勢という)をとって、第1貫通孔を貫通し、第1係止端面に係止可能となる。また、端子金具は、例えば、板面を第2方向に沿わせた収容姿勢(以下、第2姿勢という)をとって、第2貫通孔を貫通し、第2係止端面に係止可能となる。よって、端子金具が第1姿勢と第2姿勢のいずれの収容姿勢をとっていても、一つのハウジングで係止可能である。これにより、第1姿勢と第2姿勢をとるそれぞれの端子金具に対応して、複数のハウジングを用意する必要がなくなる。
【0011】
(2)上記(1)に記載のコネクタにおいて、前記第1貫通孔と、前記第2貫通孔とは、互いに同形状であると良い。このコネクタは、収容姿勢を異にする端子金具に対し、1種類の端子金具を用意するだけでよい。
【0012】
(3)上記(1)または(2)に記載のコネクタにおいて、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが交差する部分の角部は、R曲面状の断面形状を呈していると良い。貫通孔のR曲面状の断面部分は、端子金具と接触する部分が少ない。よって、端子金具の挿入抵抗を減らすことができる。
【0013】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載のコネクタにおいて、前記貫通孔は、前記ハウジングに複数設けられ、前記端子金具は、複数の前記貫通孔に対応して複数設けられており、複数の前記端子金具には、前記第1貫通孔に係止されるものと、前記第2貫通孔に係止されるものと、が混在している。
【0014】
上記構成によれば、異なる収容姿勢をとる端子金具を一つのハウジングにまとめることができる。特に、このコネクタは、端子金具の収容姿勢を、組み合わせることによって、、各端子金具同士が互いの絶縁距離を保つように調整できる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
[第1実施形態]
本開示の実施形態1に係るコネクタ10は、基板用コネクタを例示している。コネクタ10は、回路基板60に設置されるハウジング30と、ハウジング30に装着される複数の端子金具40と、を備えている。ハウジング30は、相手側コネクタ50と嵌合可能である。なお、以下の説明において、前後方向については、ハウジング30が相手側コネクタ50と嵌合する面側を前側とする。図1の左側が前側になる。上下方向は、図1-4の上下方向を基準とする。左右方向は、図2,3の左右方向を基準とする。左右方向は、図2,3の左右方向を基準とする。各図において、前側を矢印Fで表し、上側を矢印Uで表し、右側を矢印Rで表す。
【0017】
(相手側コネクタ50、ハウジング30、端子金具40)
相手側コネクタ50は、ブロック状のハウジング部分に、相手側端子51を収容して構成されている。相手側端子51は、雌型の端子金具である。ハウジング30は、合成樹脂製であり、筒状のフード部20を有している。相手側コネクタ50のハウジング部分は、フード部20の内側に前方から嵌合される。フード部20は、上下で対向する一対の対向壁部21、左右で対向する一対の側壁部23及び後端部に位置する背壁部25を有している。背壁部25は、各対向壁部21および各側壁部23の後端に連結されている。背壁部25の前端面25aは、後述する貫通孔27および貫通孔27の開口縁部を除いて、上下方向および左右方向に沿って配置されている。背壁部25の後端面25bは、同じく、貫通孔27および貫通孔27の開口縁部を除いて、上下方向および左右方向に沿って配置されている。図1に示すように、背壁部25は、下部に、前後方向に厚肉となる厚肉部分を有している。ハウジング30は、背壁部25の厚肉部分を後端面25bから前端面25aにかけて貫通する、複数の貫通孔27を有している。貫通孔27は、上下方向に2段で且つ左右方向に複数列、整列して形成されている。端子金具40は、貫通孔27に後方から挿入される。
【0018】
貫通孔27は、左右方向(第1方向)に延びる横長矩形の第1貫通孔27aと、上下方向(第2方向)に延びる縦長矩形の第2貫通孔27bと、を有している。第1貫通孔27aと第2貫通孔27bとは、第1貫通孔27aの左右方向の中央部と第2貫通孔27bの上下方向の中央部とにおいて、互いに交差している。貫通孔27は、第1貫通孔27aと第2貫通孔27bとによって、全体として十字(cross)の断面形状をなす。貫通孔27は、端子金具40の挿入方向(貫通方向)である後方からみて十字形をなす。本実施形態1の場合、第1貫通孔27aの左右方向の寸法と、第2貫通孔27bの上下方向の寸法とは、同一に設定されている。
【0019】
貫通孔27は、図5に示すように、背壁部25の前端部に形成された前側凹部35と、背壁部25の後端部に形成された後側凹部28と、前側凹部35および後側凹部28の間に位置して前後方向に長く延びる貫通孔本体26と、を有している。図3図6に示すように、前側凹部35は、背壁部25の前端面25aに正面視矩形に開口している。貫通孔本体26の前端は、前側凹部35の内奥面(前方を向く垂直面)の中央部に開口している。図2図7に示すように、後側凹部28は、背壁部25の後端面25bに背面視十字形に開口している。貫通孔本体26は、左右方向および上下方向に後側凹部28よりも一回り小さい断面十字形に形成されている。貫通孔本体26は、後側凹部28の後述する第1ストッパ受け部29aの左右方向の中央部で且つ後述する第2ストッパ受け部29bの上下方向の中央部に開口している。
【0020】
後側凹部28の内奥面(後方を向く垂直面)は、第1ストッパ受け部29aと第2ストッパ受け部29bとを有している。第1ストッパ受け部29aは、第1貫通孔27aに設けられている。第1ストッパ受け部29aは、貫通孔本体26の後端開口を挟んだ上下両側に、上下方向および左右方向に沿って形成されている。第2ストッパ受け部29bは、第2貫通孔27bに設けられている。第2ストッパ受け部29bは、貫通孔本体26の後端開口を挟んだ左右両側に、上下方向および左右方向に沿って形成されている。
【0021】
後側凹部28は、後端の縁部に、背壁部25の後端面25bに向けて拡開するテーパ状の第1誘導面31aおよび第2誘導面31bを有している。第1誘導面31aは、後側凹部28の第1貫通孔27aに対応して形成されている。第2誘導面31bは、後側凹部28の第2貫通孔27bに対応して形成されている。第1誘導面31aは、端子金具40を第1貫通孔27aに誘い込む機能を有している。第2誘導面31bは、端子金具40を第2貫通孔27bに誘い込む機能を有している。
【0022】
図5図9に示すように、貫通孔本体26の第1貫通孔27aは、左右方向の両側の端面に、互いに対向する一対の第1係止端面41aを有している。一対の第1係止端面41aは、第1貫通孔27aに挿入され得る端子金具40に対する係止面であって、上下方向に沿って配置されている。
【0023】
図1図9に示すように、貫通孔本体26の第2貫通孔27bは、上下方向の両側の端面に、互いに対向する一対の第2係止端面41bを有している。一対の第2係止端面41bは、第2貫通孔27bに挿入され得る端子金具40に対する係止面であって、左右方向に沿って配置されている。
【0024】
図7に示すように、貫通孔27は、貫通方向からみた断面視において、第1貫通孔27aの外縁と第2貫通孔27bの外縁とが、交わる角部33を有する。角部33は、図6に示すように、貫通孔本体26において、第1貫通孔27aの外縁と第2貫通孔27bの外縁とが交わる前角部33aと、図7に示すように、後側凹部28において、第1貫通孔27aの外縁と第2貫通孔27bの外縁とが交わる後角部33bと、を有している。
【0025】
前角部33aは、十字形状の貫通孔本体26の中心部分に4か所形成されている。前角部33aは、十字形状の貫通孔本体26の中心部を拡げるように湾曲するR(曲面状)の断面形状をなしている。前角部33aの後端は、第1ストッパ受け部29aおよび第2ストッパ受け部29bに連なっている。
【0026】
後角部33bは、同様に、十字形状の後側凹部28の中心部分に4か所形成されている。後角部33bは、十字形状の後側凹部28の中心部を拡げるように湾曲するR(曲面状)の断面形状をなしている。後角部33bの後端は、背壁部25の後端面25bに連なっている。
【0027】
端子金具40は、導電金属製の板材であって、メッキ処理を施した金属板を打ち抜いて形成される。本実施形態1の場合、端子金具40の板面には、金メッキ等のメッキが施されている。端子金具40の板厚面は、メッキが施されない破断面になっている。端子金具40の板面は、相手側端子51と接触して接点をとる接続面になる。
【0028】
図8に示すように、端子金具40は、断面矩形をなし、全体として、前後方向に細長い棒状をなしている。端子金具40は、前後方向の中間部に、板幅方向の外側に突出する一対ずつの係止部41を有している。端子金具40の前後方向の中間部は、係止部41を除いた板幅方向の寸法を、第1貫通孔27aの左右方向の寸法および第2貫通孔27bの上下方向の寸法と同一または小さくしてある。板幅方向両側の係止部41の先端間の離間寸法は、第1貫通孔27aの左右方向の寸法および第2貫通孔27bの上下方向の寸法より大きくしてある。係止部41は、前方に幅狭となる傾斜面を有している。端子金具40は、係止部41より後方に、板幅方向に矩形に張り出す一対のストッパ42を有している。ストッパ42の前端面42Sは、貫通孔27に対する端子金具40の挿入方向に対して直交する方向に沿って配置されている。
【0029】
端子金具40の後端部は、板面を上下方向の沿わせた回路基板60を貫通し、回路基板60の図示しない導電部に半田付けして接続される。
【0030】
(コネクタ10の構造および作用)
図1に示すように、端子金具40は、板面を左右方向に向け、板厚面を上下方向に向けた、垂直な収容姿勢(以下、第2姿勢という)をとって、上段の各貫通孔27に後方から挿入される。第2姿勢の端子金具40は、ストッパ42の前端面42Sを、上段の各貫通孔27の第2ストッパ受け部29bに後方から突き当てて、挿入動作を停止させる。第2姿勢の端子金具40は、図1に示すように、各係止部41を第2貫通孔27bの第2係止端面41bに食い込み状態(圧入状態)で係止させ、背壁部25に固定される。図9に示すように、第2姿勢の端子金具40は、上段の貫通孔27に挿入された状態で、左右方向を向く板面を、第1貫通孔27aの内側に向けている。
【0031】
また、図5に示すように、端子金具40は、板面を上下方向に向け、板厚面を左右方向に向けた、水平な収容姿勢(以下、第1姿勢という)をとって、下段の各貫通孔27に後方から挿入される。第1姿勢の端子金具40は、ストッパ42の前端面42Sを、上段の各貫通孔27の第1ストッパ受け部29aに後方から突き当てて、挿入動作を停止させる。第1姿勢の端子金具40は、図5に示すように、各係止部41を第1貫通孔27aの第1係止端面41aに食い込み状態(圧入状態)で係止させ、背壁部25に固定される。図9に示すように、第1姿勢の端子金具40は、下段の貫通孔27に挿入された状態で、上下方向を向く板面を、第2貫通孔27bの内側に向けている。
【0032】
上記によれば、端子金具40が第1姿勢と第2姿勢のいずれの姿勢をとっていても、端子金具40の板面に背壁部25の樹脂が付着しにくい構造になる。このため、端子金具40の板面が相手側端子51と接触する際に、接続信頼性を向上させることができる。また、ハウジング30に対する端子金具40の挿入抵抗が減少するため、挿入作業性の改善を図ることができる。
【0033】
第2姿勢の端子金具40は、後側凹部28にストッパ42を嵌合状態で挿入させる。後側凹部28の第2貫通孔27bは、第2誘導面31bを有している。このため、第2姿勢の端子金具40は、位置決め状態で、第2貫通孔27bに容易に挿入される。
【0034】
同様に、第1姿勢の端子金具40は、後側凹部28にストッパ42を嵌合状態で挿入させる。後側凹部28の第1貫通孔27aは、第1誘導面31aを有している。このため、第1姿勢の端子金具40は、位置決め状態で、第1貫通孔27aに容易に挿入される。
【0035】
後側凹部28は、中心部に、R(曲面状)の断面形状をなす後角部33bを有している。同様に、貫通孔本体26は、中心部に、R(曲面状)の断面形状をなす前角部33aを有している。このため、端子金具40は、背壁部25との過度な干渉を、前角部33aおよび後角部33bによって回避可能となる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態1によれば、端子金具40が第1姿勢と第2姿勢のいずれの収容姿勢をとっていても、一つのハウジング30で賄うことができる。これにより、第1姿勢と第2姿勢をとるそれぞれの端子金具40に対応して、複数のハウジングを用意する必要がなくなる。その結果、複数のハウジングに対応した、複数の金型製作が必要でなくなり、製造コストを低減することができる。
【0037】
また、第1姿勢および第2姿勢をとる端子金具40は、同じ端子金具である。このため、コネクタ10は、1種類の端子金具40を備えるだけで済む。
さらに、本実施形態1の場合、第1姿勢と第2姿勢のそれぞれの収容姿勢をとる端子金具40が一つのハウジング30にまとめて収容される。このため、第1姿勢と第2姿勢のそれぞれの収容姿勢をとる端子金具40が別々のハウジング30に収容される場合と比較し、車両等への搭載箇所におけるコネクタ10の占有面積を小さく抑えることができる。
仮に、第2姿勢の端子金具40が上段の第2貫通孔27bに挿入されるとともに、下段の第2貫通孔27bにも挿入されるとすると、上下の端子金具40のストッパ42が互いに近接して、上下の端子金具40間に必要な絶縁距離を確保することが困難になる。その点、本実施形態1の構成によれば、上下の端子金具40間に十分な絶縁距離を確保することができる。
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
【0038】
(1)実施形態1の場合、貫通方向からみた断面視において、左右方向に延びる第1貫通孔と、上下方向に延びる第2貫通孔とが、直角に交差して十字形状をなしていた。これに対し、他の実施形態として、第1貫通孔と第2貫通孔とは鈍角、鋭角に交差していても良い。また、第1貫通孔は、左右方向に対して傾斜する方向に延びる形状であっても良く、第2貫通孔は、上下方向に対して傾斜する方向に延びる形状であっても良い。
(2)端子金具は、ハウジングに装着された状態において、背壁部の後端面から後側に突出した部分を、上下左右方向のいずれかに折り曲げても良い。
(3)貫通孔は、端子金具の貫通方向から見た断面視において、第1貫通孔および第2貫通孔と交差する第3貫通孔を有していても良い。これによれば、端子金具は、貫通孔に対して3つの収容姿勢をとって収容され得る。
(4)角部は、前角部と後角部のいずれかを有していれば良い。
(5)実施形態1の場合、第1姿勢の端子金具が下段の第1貫通孔に挿入され、第2姿勢の端子金具が上段の第2貫通孔に挿入されていた。これに対し、他の実施形態によれば、第1姿勢の端子金具が上段の第1貫通孔に挿入され、第2姿勢の端子金具が下段の第2貫通孔に挿入されても良い。また、コネクタは、第1姿勢と第2姿勢のいずれかの収容姿勢をとる端子金具のみが対応する貫通孔に挿入される構造であっても良い。さらに、コネクタは、実施形態1の最後に記載した、第2姿勢の端子金具が上段の第2貫通孔に挿入されるとともに、下段の第2貫通孔にも挿入される構造であっても良く、この構造を本開示が否定するわけではない。本開示の場合、第1姿勢および第2姿勢をとる端子金具が、使用態様に応じて、対応する貫通孔に適宜選択的に挿入される構造であれば良い。
【符号の説明】
【0039】
10…コネクタ
20…フード部
21…対向壁部
23…側壁部
25…背壁部
25a…背壁部の前端面
25b…背壁部の後端面
26…貫通孔本体
27…貫通孔
27a…第1貫通孔
27b…第2貫通孔
28…後側凹部
29a…第1ストッパ受け部
29b…第2ストッパ受け部
30…ハウジング
31a…第1誘導面
31b…第2誘導面
33…角部
33a…前角部
33b…後角部
35…前側凹部
40…端子金具
41…係止部
41a…第1係止端面
41b…第2係止端面
42…ストッパ
42S…ストッパの前端面
50…相手側コネクタ
51…相手側端子
60…回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9