IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 双葉電子工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-受信装置 図1
  • 特開-受信装置 図2
  • 特開-受信装置 図3
  • 特開-受信装置 図4
  • 特開-受信装置 図5
  • 特開-受信装置 図6
  • 特開-受信装置 図7
  • 特開-受信装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107889
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】受信装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/00 20060101AFI20240802BHJP
   A63H 29/22 20060101ALI20240802BHJP
   A63H 30/00 20060101ALI20240802BHJP
   A63H 30/04 20060101ALI20240802BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G08G5/00 A
A63H29/22 A
A63H30/00 A
A63H30/04 A
H04Q9/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012065
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 昌廣
【テーマコード(参考)】
2C150
5H181
5K048
【Fターム(参考)】
2C150AA01
2C150CA09
2C150DA17
2C150DK02
2C150DK08
2C150DK17
2C150EB01
2C150ED42
2C150ED56
2C150EF17
2C150EF36
2C150FA01
2C150FA03
2C150FA20
2C150FA24
5H181AA26
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB17
5H181FF33
5K048AA06
5K048BA45
5K048DB01
5K048DC01
5K048EB02
5K048GA09
5K048HA01
5K048HA02
(57)【要約】
【課題】フェールセーフ処理を行うことによる安全性向上と、フェールセーフ処理の作動に起因した被操縦体の急激な姿勢変化及びモータ破損の防止を図ることによる安全性向上との両立を図る。
【解決手段】本発明に係る受信装置は、操縦信号に基づき遠隔操縦される被操縦体に搭載される受信装置であって、送信装置より操縦信号を受信する受信部と、モータの駆動量を制御するためのモータ駆動指示値として、受信部が受信した操縦信号に応じたモータ駆動指示値を出力する処理を行う制御部とを備え、制御部は、操縦信号が受信不能となった際に、モータ駆動指示値として、受信期間中における操縦信号に応じた値をホールド出力するホールド処理と、ホールド出力の期間が一定期間に達したことに応じて、モータ駆動指示値を、ホールド処理時の値からフェールセーフ用に定められたフェールセーフ値に向けて漸変させるフェールセーフ漸変処理とを実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦信号に基づき遠隔操縦される被操縦体に搭載される受信装置であって、
送信装置より前記操縦信号を受信する受信部と、
モータの駆動量を制御するためのモータ駆動指示値として、前記受信部が受信した前記操縦信号に応じたモータ駆動指示値を出力する処理を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記操縦信号が受信不能となった際に、前記モータ駆動指示値として、受信期間中における操縦信号に応じた値をホールド出力するホールド処理と、
前記ホールド出力の期間が一定期間に達したことに応じて、前記モータ駆動指示値を、前記ホールド処理時の値からフェールセーフ用に定められたフェールセーフ値に向けて漸変させるフェールセーフ漸変処理と、を実行する
受信装置。
【請求項2】
前記モータは、前記被操縦体の推進動力源として設けられるモータである
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記被操縦体は飛行体である
請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記フェールセーフ漸変処理による漸変期間を可変的に設定可能とされた
請求項1に記載の受信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記フェールセーフ漸変処理により前記モータ駆動指示値を前記フェールセーフ値に変化させた以降、前記モータ駆動指示値を前記フェールセーフ値でホールドするフェールセーフホールド処理を行う
請求項1に記載の受信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記フェールセーフ漸変処理中に前記操縦信号の受信が再開した場合に、前記モータ駆動指示値を、受信再開後の前記操縦信号に応じた前記モータ駆動指示値である受信値に向けて漸変させる漸変時復帰処理を行う
請求項1から請求項5の何れかに記載の受信装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ホールド処理中に前記操縦信号の受信が再開した場合に、前記モータ駆動指示値を、受信再開後の前記操縦信号に応じた前記モータ駆動指示値である受信値に向けて漸変させるホールド時復帰処理を行う
請求項1から請求項5の何れかに記載の受信装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記フェールセーフホールド処理中に前記操縦信号の受信が再開した場合に、前記モータ駆動指示値を、受信再開後の前記操縦信号に応じた前記モータ駆動指示値である受信値に向けて漸変させるフェールセーフ後復帰処理を行う
請求項5に記載の受信装置。
【請求項9】
前記制御部は、ユーザ操作に基づき外部装置が行う指示に基づいて、前記フェールセーフ漸変処理の有効化/無効化の設定、前記フェールセーフ漸変処理による前記モータ駆動指示値の漸変期間であるフェールセーフ漸変時漸変期間、及び前記フェールセーフ値の設定を行う
請求項1に記載の受信装置。
【請求項10】
前記外部装置は前記送信装置である
請求項9に記載の受信装置。
【請求項11】
前記外部装置は前記送信装置とは別の外部装置である
請求項9に記載の受信装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記ホールド処理の開始以降、前記操縦信号の受信が再開した場合に、前記モータ駆動指示値を受信再開後の前記操縦信号に応じた前記モータ駆動指示値である受信値に向けて漸変させる受信再開時漸変処理を行うと共に、
前記受信再開時漸変処理による前記モータ駆動指示値の漸変期間である受信再開時漸変期間と前記フェールセーフ漸変時漸変期間とを、前記外部装置からの指示に基づき個別に設定する
請求項9から請求項11の何れかに記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置より送信された操縦信号に基づき遠隔操縦される被操縦体に搭載される受信装置に関するものであり、特には、操縦信号が受信不能となった際における対応処理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、模型飛行機やドローン、模型車両等の被操縦体を遠隔操縦するラジオコントロールシステムにおいては、被操縦体に搭載される受信機が送信機からの操縦信号を受信不能となった場合に、被操縦体に搭載されたモータの駆動量を制御するためのモータ駆動指示値を受信期間中の値にホールドし、その後も受信不能状態が継続する場合は、モータ駆動指示値として予め定められたフェールセーフ値(例えば、0等の低出力値)が出力されるようにするフェールセーフ処理を行うものがある。
【0003】
このようなフェールセーフ処理により、被操縦体が例えば推進力最大状態等の高推進力状態で動作を継続するような危険状況に陥ることの防止を図ることができる。
【0004】
なお、関連する従来技術に関しては下記特許文献1、2を挙げることができる。
下記特許文献1には、無人機が電波による動作指令データを受信して動作するラジオコントロールシステムにおいて、電波の受信中断や異常電波の受信時に直前の動作指令データを出力する技術が開示されている。
また、下記特許文献2には、模型ヘリコプターのラジオコントロールシステムであって、同じスティック操作量に対し飛行モード時とホバリングモード時とで異なるモータ駆動指示値を出力するようにしたシステムにおいて、飛行モードとホバリングモードの切り替えに応じてモータ駆動指示値を切り替え後のモードに対応した値に変化させるにあたり、値を急激に変化させるのではなく漸変させる(ディレーさせる)技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09-186615号公報
【特許文献2】特開2000-024333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したようなフェールセーフ処理は、安全性の向上を図る上で有用であるが、フェールセーフ処理が作動した際にモータ駆動指示値が急激に変化することに伴い、被操縦体の姿勢が急激に変化してしまう可能性がある。
また、モータ駆動指示値が急激に変化することに伴い、逆起電力の影響でモータ破損を招く可能性もある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み為されたものであり、フェールセーフ処理を行うことによる安全性向上と、フェールセーフ処理の作動に起因した被操縦体の急激な姿勢変化及びモータ破損の防止を図ることによる安全性向上との両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る受信装置は、操縦信号に基づき遠隔操縦される被操縦体に搭載される受信装置であって、送信装置より前記操縦信号を受信する受信部と、モータの駆動量を制御するためのモータ駆動指示値として、前記受信部が受信した前記操縦信号に応じたモータ駆動指示値を出力する処理を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記操縦信号が受信不能となった際に、前記モータ駆動指示値として、受信期間中における操縦信号に応じた値をホールド出力するホールド処理と、前記ホールド出力の期間が一定期間に達したことに応じて、前記モータ駆動指示値を、前記ホールド処理時の値からフェールセーフ用に定められたフェールセーフ値に向けて漸変させるフェールセーフ漸変処理と、を実行するものである。
上記のフェールセーフ漸変処理により、ホールド処理後のフェールセーフ処理作動に伴いモータ駆動指示値が急激に変化してしまうことの防止が図られ、フェールセーフ処理の作動に起因して被操縦体の姿勢が急激に変化してしまうことやモータが破損してしまうことの防止を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フェールセーフ処理を行うことによる安全性向上と、フェールセーフ処理の作動に起因した被操縦体の急激な姿勢変化及びモータ破損の防止を図ることによる安全性向上との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施形態としてのラジオコントロールシステムの構成例を示したブロック図である。
図2】従来のフェールセーフ処理の説明図である。
図3】実施形態としてのフェールセーフ処理の説明図である。
図4】受信装置が有する実施形態としての機能を説明するための機能ブロック図である。
図5】実施形態における漸変時復帰処理の説明図である。
図6】実施形態におけるホールド時復帰処理の説明図である。
図7】実施形態におけるフェールセーフ後復帰処理の説明図である。
図8】実施形態としてのモータ駆動指示値制御手法を実現するための具体的な処理手順例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を次の順序で説明する。
<1.システム構成について>
<2.実施形態としてのモータ駆動指示値制御手法>
<3.処理手順>
<4.変形例>
<5.実施形態のまとめ>
【0012】
<1.システム構成について>
図1は、本発明に係る受信装置の一実施形態としての受信機1を備えて構成されたラジオコントロールシステムの構成例を示したブロック図である。
図示のようにラジオコントロールシステムは、送信機20と被操縦体10とを備えている。送信機20は、操縦者としてのユーザによる操縦のための操作を受け付けると共に、受け付けた操作に応じた操縦信号を送信する機能を有する。
被操縦体10は、送信機20が送信した操縦信号に基づいて操縦される物体であり、例えば、模型飛行機や模型ヘリコプター、ドローン(drone)等の飛行体としての物体、又は模型車両、各種ロボット等の物体を例示できる。
本例では、被操縦体10は飛行体、具体的には模型飛行機であるものとする。
【0013】
送信機20は、操縦側制御部21、操作部22、表示部23、及び操縦側通信部24を備える。
操作部22は、被操縦体10の操縦操作、具体的には被操縦体の推進力の指示や制動の指示、旋回の方向や量の指示等を行うための例えばスティック状操作子等の各種操作子や、操縦操作以外の、被操縦体の操縦に係る各種の操作入力を行うための例えばボタン、タッチパネル等の操作子等、ユーザが送信機20に対する各種操作入力を行うための操作子を有する。
【0014】
表示部23は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示デバイスを有して構成され、ユーザに各種情報を表示する。
なお、操作部22がタッチパネルを有する場合、該タッチパネルを表示部23の表示画面上に形成し、表示画面に表示された各種ボタンやチェックボックス等に対するタッチ操作を検出可能に構成することが考えられる。
【0015】
操縦側制御部21は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータを有して構成され、CPUがROM等のメモリに格納されたプログラムに従った処理を実行することで、送信機20の全体制御を行う。
例えば、操縦側制御部21は、操作部22における上述した操縦操作用の操作子に対する操作に基づき、操縦信号を生成する処理を行う。
また操縦側制御部21は、操作部22における各種設定用の操作子に対する操作に基づき、対応する設定処理を行う。
【0016】
また操縦側制御部21は、操作部22における所定の操作子に対する操作に基づき、各種の情報を表示部23に表示させる処理を行う。例えば、操縦に係る設定メニュー画面の表示や、設定メニュー画面から選択された項目についての設定画面の表示等を表示部23に実行させる処理を行う。また、設定画面において、操作部22に対する操作によりユーザから指示された値等の情報を表示させる処理や、設定の指示操作に基づき、該操作に対応する設定処理を行う。
【0017】
ここで言う設定とは、送信機20に対する設定以外にも、受信機1に対する設定も含まれる。操縦側制御部21は、受信機1に対する設定情報については、操縦側通信部24によりアンテナ20aを介して受信機1側に送信させる処理を行う。
【0018】
また、操縦側制御部21は、上述した操縦操作に基づき生成した操縦信号を操縦側通信部24によりアンテナ20aを介して受信機1側に送信させる処理を行う。
【0019】
操縦側通信部24は、アンテナ20aを介して、外部機器との間で例えば2.4GHz帯等の所定の周波数帯域を使用した無線通信を行うことが可能に構成された通信デバイスとされる。本例において、操縦側通信部24は外部機器との間で情報(データ)の送受信を行うことが可能に構成されているが、本発明において、操縦側通信部24としては、少なくとも外部機器に対する情報の送信機能を有していればよい。
【0020】
被操縦体10には、実施形態としての受信機1が搭載されると共に、ESC(Electronic Speed Controller:スピードコントローラとも呼ばれる)4、モータ5、及びバッテリ6が搭載される。
【0021】
受信機1は、被操縦側通信部2と被操縦側制御部3とを有している。
被操縦側通信部2は、アンテナ1aを介して、外部機器との間で例えば2.4GHz帯等の所定の周波数帯域(ただし、上述した操縦側通信部24が対応可能な周波数帯域)を使用した無線通信を行うことが可能に構成された通信デバイスとされる。
本例において、被操縦側通信部2は、上述した操縦側通信部24と同様に外部機器との間で情報(データ)の送受信を行うことが可能に構成されているが、本発明において、被操縦側通信部2としては、少なくとも外部機器からの送信情報を受信する機能を有していればよい。これにより被操縦側通信部2(受信機1)は、送信機20より送信される操縦信号や設定情報を受信することが可能とされる。
【0022】
被操縦側制御部3は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータを有して構成され、CPUがROM等のメモリに格納されたプログラムに従った処理を実行することで、受信機1の全体制御を行う。
被操縦側制御部3は、モータ5の駆動量を制御するためのモータ駆動指示値として、被操縦側通信部2が受信した操縦信号に応じたモータ駆動指示値を出力する処理を行う。
【0023】
ここで、本例では、モータ5は、被操縦体10の推進動力源として設けられたモータとされる。
推進動力源としてエンジンが設けられる場合には、被操縦体10には、エンジンのスロットル制御を行うためのサーボモータが搭載されるものとなるが、本例では、モータ5そのものが被操縦体の推進動力源として搭載されているものである。
この場合、受信機1のモータ駆動指示値は、モータ5に直接的に出力するのではなく、スピードコントローラとも呼ばれるESC4に対して出力する。ESC4は、入力されたモータ駆動指示値と、バッテリ6からの供給電力に基づきモータ5の駆動信号を生成し、該駆動信号によりモータ5を駆動制御する。
【0024】
なお、詳細な図示は省略したが、バッテリ6からは、例えばESC4を経由する等して受信機1に対する動作電力が供給される。
【0025】
また、被操縦体10において、実際には、旋回等の移動方向の変更や姿勢変化等を実現するために、モータ5とは別のアクチュエータ(例えば、模型飛行機におけるラダー、エルロン等の機構を駆動するサーボモータや、模型車両における操舵機構を駆動するためのサーボモータ等)も搭載されるが、それらのアクチュエータを搭載する点や操縦信号に応じた駆動制御系の処理内容については公知であり、説明を省略するものとした。
【0026】
<2.実施形態としてのモータ駆動指示値制御手法>
図2は、従来のフェールセーフ処理の説明図である。
前述のように、ラジオコントロールシステムにおいては、被操縦体に搭載される受信機が送信機からの操縦信号を受信不能となった場合に、モータ駆動指示値を受信期間中の値にホールドし、その後も受信不能状態が継続する場合は、モータ駆動指示値として予め定められたフェールセーフ値(例えば、0等の低出力値)が出力されるようにするフェールセーフ処理を行うものがある。
【0027】
図2に示すように従来のフェールセーフ処理では、一定期間のホールド処理が完了したことに応じて、モータ駆動指示値をホールド中の値からフェールセーフ値に切り替えるようにされている。具体的には、ホールド処理が完了した処理タイミングの次の処理タイミングにおいて、モータ駆動指示値としてフェールセーフ値を出力するようにされている。
このため従来では、フェールセーフ処理が作動した際にモータ駆動指示値が急激に変化することとなり、被操縦体の急激な姿勢変化(姿勢の乱れ)を招来する可能性があり、また、逆起電力の影響で、モータ5の破損を招く可能性もあった。
特に、本例の被操縦体10のようにモータ5が被操縦体10の推進動力源として用いられる構成の場合には、モータ5が比較的大出力のモータとされるため、モータ駆動指示値がフェールセーフ値に急激に変化することに伴い、被操縦体10の姿勢がより不安定になり易く、また、逆起電力の量も増大傾向となるためモータの破損可能性も高まることになる。
また、モータ5が被操縦体10の推進動力源として用いられるモータである場合には、モータ駆動指示値の低下が減速(制動)指示として作用するようにシステムが構成される場合があり、その場合には、モータ駆動指示値がフェールセーフ値に急激に変化することに伴う被操縦体10の姿勢乱れがより生じ易いものとなってしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、図3に示すように、一定期間のホールド処理の完了に応じて、モータ駆動指示値を、フェールセーフ値に向けて漸変(gradual change)させるという手法を採る。
【0029】
図4は、受信機1における被操縦側制御部3が有する実施形態としての機能を説明するための機能ブロック図である。
図示のように被操縦側制御部3は、ホールド処理部F1とフェールセーフ漸変処理部F2としての機能を有している。
【0030】
ホールド処理部F1は、操縦信号が受信不能となった際に、モータ駆動指示値として、受信期間中における操縦信号に応じた値をホールド出力するホールド処理を行う。
本例では、操縦信号を受信不能な状態となったか否かの判定は、送信機20からの1送信単位(例えば1パケット)分のデータの受信可能期間内に、1送信単位分のデータを受信完了できなかったか否かの判定として行う。
【0031】
なお、受信不能となったか否かの判定は、1送信単位分のデータを受信完了できなかった連続回数が所定回数以上となったか否か(すなわちデータを受信できない期間が所定期間以上となったか否か)の判定として行うことも考えられる。
【0032】
ホールド処理部F1は、操縦信号を受信不能となったと判定したことに応じて、モータ駆動指示値として、直前の受信タイミング、すなわち受信不能との判定が行われた1送信単位分のデータの受信可能期間の直前の受信可能期間に受信された操縦信号(換言すれば、最後に受信された操縦信号)に応じたモータ駆動指示値が一定期間ホールド出力されるように処理する。
ホールド処理において、モータ駆動指示値をホールドする「一定期間」は、任意に定めることができるが、安全面を考慮した場合、該「一定期間」はできるだけ短く定めることが望ましい。
【0033】
また、ホールド処理においてホールドするモータ駆動指示値は、最後に受信された操縦信号に応じたモータ駆動指示値に限定されるものではない。例えば、最後の操縦信号の受信タイミングの直前の受信タイミングで受信された操縦信号に応じたモータ駆動指示値とすることや、或いは、最後に受信された操縦信号に応じたモータ駆動指示値と、それよりも過去の受信タイミングで受信された操縦信号に応じたモータ駆動指示値とを含む複数のモータ駆動指示値の平均値とすること等も考えられる。
ホールド処理においてホールドするモータ駆動指示値は、少なくとも、受信期間中における操縦信号に応じたモータ駆動指示値とすればよい。
【0034】
フェールセーフ漸変処理部F2は、ホールド処理部F1によるモータ駆動指示値のホールド出力の期間が一定期間に達したことに応じて、モータ駆動指示値を、ホールド処理時の値からフェールセーフ用に定められたフェールセーフ値に向けて漸変させるフェールセーフ漸変処理を行う(図3中「漸変」の部分を参照)。
【0035】
上記のフェールセーフ漸変処理について、モータ駆動指示値を漸変させる処理は、モータ駆動指示値を目標値に到達させるタイミングを遅らせるという意味で「ディレー処理」と換言することもできる。
さらには、モータ駆動指示値を漸変させる処理は、モータ駆動指示値を目標値に急激に変化させた際のモータ5の追従速度を基準追従速度としたときに、該基準追従速度よりもモータ5の追従速度を遅らせるという意味においても「ディレー処理」と換言することができる。
【0036】
ここで、本例のラジオコントロールシステムでは、フェールセーフ処理を有効化するか或いは無効化するか(つまりフェールセーフ処理のON/OFF)、及び、フェールセーフ漸変処理を有効化するか或いは無効化するか(つまりフェールセーフ漸変処理のON/OFF)、及び、フェールセーフ漸変処理におけるモータ駆動指示値の漸変期間、及びフェールセーフ値の計4項目を可変的に設定可能とされている。
フェールセーフ処理のON/OFFは、操縦信号を受信不能となった際の対応処理として、ホールド処理のみを行うか、或いはホールド処理後にモータ駆動指示値をフェールセーフ値に変化させるかの切り替えに相当するものである。フェールセーフ処理をON、且つフェールセーフ漸変処理をONとの指示に対しては、ホールド処理後にフェールセーフ漸変処理及び後述するフェールセーフホールド処理(フェールセーフ値をホールドする処理)が行われる。一方、フェールセーフ処理をON、且つフェールセーフ漸変処理をOFFとの指示に対しては、ホールド処理後に従来と同様のフェールセーフ処理が行われる、すなわちフェールセーフ漸変処理を介さずにモータ駆動指示値をフェールセーフ値に変化させる処理が行われる(図2参照)。
【0037】
本例の被操縦側制御部3は、ユーザの操作入力に基づき、上記の4項目を可変的に設定可能とされている。
具体的に、本例では、上記の4項目は、ユーザが送信機20に対して操作を行うことで設定可能とされる。この場合、送信機20においては、例えば表示部23に表示された設定画面において、上記の4項目についての指示操作を行うことが可能とされており、送信機20における操縦側制御部21は、該設定画面においてユーザより指示されたフェールセーフ処理のON/OFF、フェールセーフ漸変処理のON/OFF、漸変期間、及びフェールセーフ値を示す情報(指示情報)を操縦側通信部24により受信機1側に送信させる。そして、受信機1において被操縦側制御部3は、このように送信機20側から送信され被操縦側通信部2で受信された指示情報に従って、フェールセーフ処理のON/OFF、フェールセーフ漸変処理のON/OFF、漸変期間、及びフェールセーフ値を設定する処理を行う。
【0038】
このとき、本例では、操縦側制御部21は、上記の4項目の指示情報を所定周期で繰り返し受信機1側に送信させる処理を行っており、被操縦側制御部3は、このように送信される指示情報が受信されるごとに、該指示情報に従ったフェールセーフ処理のON/OFF、フェールセーフ漸変処理のON/OFF、漸変期間、及びフェールセーフ値の設定処理を行う。
このような構成が採られることで、操縦者としてのユーザは、被操縦体10を操縦しながらフェールセーフ処理のON/OFF、フェールセーフ漸変処理のON/OFF、漸変期間、及びフェールセーフ値の変更を行うことができる。
【0039】
なお、上記では4項目の全ての指示情報が所定周期で繰り返し送信され、被操縦側制御部3が指示情報の受信ごとに設定を行う例を挙げたが、このような指示情報の繰り返し送信及び設定の対象項目は、4項目のうち一部のみとすることもできる。
【0040】
また、上記では指示情報が送信機20からの無線通信で受信機1側に送信される例を挙げたが、上記の4項目のうち少なくとも一部の項目の指示情報は、送信機20と受信機1とを所定のケーブルで接続して有線通信により送信することも考えられる。
また、上記の4項目のうち少なくとも一部の項目の指示操作は、例えばパーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置や設定用ツール等、送信機20以外の外部装置(受信機1の外部装置)において受け付けるものとし、指示情報を該外部装置から受信機1に有線通信により送信することも考えられる。
或いは、上記の4項目のうち少なくとも一部の項目の指示操作は、受信機1に対する操作入力が可能とされる場合には受信機1において受け付けるようにすることも考えられる。
【0041】
なお、上記ではユーザからの指示に基づいて4項目についての可変的な設定が行われる例を示したが、上記の4項目のうち少なくとも一部の項目については、ユーザからの指示に依らず設定を行うことも考えられる。例えば、モータ駆動指示値の大きさに応じて、漸変期間を可変的に設定することが考えられる。具体的にこの場合、被操縦側制御部3は、モータ駆動指示値が小さいほど(つまりホールド処理中の値とフェールセーフ値との差分が小さいほど)漸変期間が短くなるように、漸変期間を可変的に設定する。
或いは、モータ駆動指示値が所定値以下か否かを判定し、モータ駆動指示値が所定値以下でなければフェールセーフ処理=ON且つフェールセーフ漸変処理=ONの設定を行い、モータ駆動指示値が所定値以下であれば、フェールセーフ処理=OFF且つフェールセーフ漸変処理=OFFの設定、又はフェールセーフ処理=ON且つフェールセーフ漸変処理=OFFの設定を行うこと等も考えられる。すなわち、モータ駆動指示値が所定値以下でなく、ホールド処理終了時におけるフェールセーフ値との差分が大きいと推定される場合にはフェールセーフ漸変処理を経てフェールセーフ値に変化させる設定とし、モータ駆動指示値が所定値以下であり、ホールド処理終了時におけるフェールセーフ値との差分が小さくなることが見込まれる場合には、フェールセーフ漸変処理を含むフェールセーフ処理自体を行わない設定とするか、又はフェールセーフ漸変処理を経ずにフェールセーフ値に変化させる設定とするものである。
【0042】
ここで、被操縦側制御部3は、フェールセーフホールド処理を行う。フェールセーフホールド処理は、上述したフェールセーフ漸変処理によりモータ駆動指示値をフェールセーフ値に変化させた以降、モータ駆動指示値をフェールセーフ値でホールドする処理である(図3中「フェールセーフ値ホールド」の部分を参照)。
このようなフェールセーフホールド処理を行うことで、モータ駆動指示値をフェールセーフ値に抑えた状態で受信再開を待機することが可能となる。
従って、被操縦体の推進力が高い状態で受信再開を待機することの回避が図られ、安全 性向上を図ることができる。
【0043】
確認のため述べておくと、本実施形態における「フェールセーフ処理」との用語は、「フェールセーフ漸変処理」と「フェールセーフホールド処理」の双方を含むものである。
【0044】
上記では、モータ駆動指示値を漸変させる処理を、ホールド処理の完了に応じて「フェールセーフ漸変処理」として実行する説明を行ったが、本例の被操縦側制御部3は、モータ駆動指示値を漸変させる処理を、操縦信号の受信再開に応じても実行する。具体的に、この場合の漸変処理は、受信再開後の操縦信号に応じたモータ駆動指示値である「受信値」に向けてモータ駆動指示値を漸変させる処理となる。これは、モータ駆動指示値を受信値に復帰させる際に漸変処理を行うものであると換言できる。
【0045】
ここで、本例では、受信再開か否かの判定は、上述した1送信単位分のデータの受信可能期間内に、1送信単位分のデータを受信完了できたか否かの判定として行う。そして、本例では、「受信値」は、受信再開と判定されたタイミングで受信された操縦信号に応じたモータ駆動指示値であるとする。
【0046】
なお、受信再開か否かの判定は、1回の受信のみでなく複数回の連続した受信を条件とすることも考えられる。
【0047】
被操縦側制御部3は、上記のような受信値への復帰時における漸変処理として、漸変時復帰処理、ホールド時復帰処理、フェールセーフ後復帰処理をそれぞれ行う。
【0048】
図5は、漸変時復帰処理の説明図である。
漸変時復帰処理は、フェールセーフ漸変処理中に操縦信号の受信が再開した場合に、モータ駆動指示値を受信値に向けて漸変させる処理である。
図示のように操縦信号を受信不能となって一定期間のホールド処理が行われた後、フェールセーフ漸変処理中の期間において、操縦信号の受信が再開された場合に、当該漸変時復帰処理が行われる。
ここで、本例では、漸変時復帰処理におけるモータ駆動指示値の漸変期間は、フェールセーフ漸変処理について設定された漸変期間を引き継ぐものとする。
【0049】
上記のような漸変時復帰処理を行うことで、モータ駆動指示値がフェールセーフ漸変処理中の値から受信値に急激に変化してしまうことの回避が図られる。
従って、被操縦体10の姿勢が乱れることの防止や、モータ5の破損防止を図ることができる。
【0050】
図6は、ホールド時復帰処理の説明図である。
ホールド時復帰処理は、ホールド処理中に操縦信号の受信が再開した場合に、モータ駆動指示値を受信値に向けて漸変させる処理である。
ホールド処理によるモータ駆動指示値のホールド期間が一定期間に満たない状態で操縦信号の受信が再開した場合に、当該ホールド時復帰処理が行われることになる。
本例では、このホールド時復帰処理におけるモータ駆動指示値の漸変期間についても、フェールセーフ漸変処理について設定された漸変期間を引き継ぐものとする。
【0051】
上記のホールド時復帰処理により、モータ駆動指示値がホールド処理中の値から受信値に急激に変化してしまうことの回避が図られ、被操縦体10の姿勢が乱れることの防止やモータ5の破損防止を図ることができる。
【0052】
図7は、フェールセーフ後復帰処理の説明図である。
フェールセーフ後復帰処理は、フェールセーフホールド処理中に操縦信号の受信が再開した場合に、モータ駆動指示値を受信値に向けて漸変させる処理である。
このようなフェールセーフ後復帰処理により、モータ駆動指示値がフェールセーフホールド処理中の値から受信値に急激に変化してしまうことの回避が図られ、被操縦体10の姿勢が乱れることの防止やモータ5の破損防止を図ることができる。
本例では、このフェールセーフ後復帰処理におけるモータ駆動指示値の漸変期間についても、フェールセーフ漸変処理について設定された漸変期間を引き継ぐものとする。
【0053】
なお、漸変時復帰処理、ホールド時復帰処理、及びフェールセーフ後復帰処理において、フェールセーフ漸変処理について設定された漸変期間を引き継ぐことはあくまで一例であり、例えば、これらの処理ごとの漸変期間をユーザ操作により個別に設定可能とする等、フェールセーフ漸変処理について設定された漸変期間とは別の漸変期間を設定可能とすることも考えられる。
ここで、漸変時復帰処理、ホールド時復帰処理、及びフェールセーフ後復帰処理は、ホールド処理の開始以降、操縦信号の受信が再開した場合に、モータ駆動指示値を受信値に向けて漸変させる「受信再開時漸変処理」に該当するものである。また、これら漸変時復帰処理、ホールド時復帰処理、及びフェールセーフ後復帰処理によるモータ駆動指示値の漸変期間は、「受信再開時漸変期間」と表現とすることができる。この受信再開時漸変期間についても、送信機20やパーソナルコンピュータ等、受信機1の外部装置からの指示に基づき被操縦側制御部3が設定を行うことが考えられる。
【0054】
<3.処理手順>
図8は、上記により説明した実施形態としてのモータ駆動指示値制御手法を実現するために実行すべき具体的な処理手順例を示したフローチャートである。
なお、図8に示す処理は、被操縦側制御部3のCPUが被操縦側制御部3におけるROM等の記憶装置に記憶されたプログラムに基づき実行する。ここでは説明上、処理の実行主体は被操縦側制御部3であると表現する。
【0055】
被操縦側制御部3はステップS101で、受信不能状態となるまで待機する。すなわち、操縦信号を受信不能な状態となるまで待機する。前述のように本例では、受信不能な状態であるか否かの判定は、1送信単位(例えば1パケット)分のデータの受信可能期間内に、1送信単位分のデータを受信完了できなかったか否かの判定として行う。
【0056】
ステップS101において、受信不能状態となった場合、被操縦側制御部3はステップS102でタイムカウントをスタートし、続くステップS103で、ホールド処理を開始する。前述のように、本例における被操縦側制御部3は、ホールド処理において、受信不能との判定が行われた受信タイミングの直前の受信タイミングにおいて受信された操縦信号に応じたモータ駆動指示値をホールド出力する。
【0057】
ステップS103に続くステップS104で被操縦側制御部3は、所定時間経過したか否か、すなわちステップS102で開始したタイムカウントによるカウント値が所定値に達したか否かを判定する。このステップS104の判定処理は、ホールド処理における「一定期間」のホールド期間を定めるための処理となる。
【0058】
ステップS104において、所定時間経過ではないと判定した場合、被操縦側制御部3はステップS105に進み、受信再開か否かを判定する。すなわち、操縦信号の受信が再開したか否かの判定である。
受信再開でないと判定した場合、被操縦側制御部3はステップS104に戻る。これにより、ホールド処理中においては、ホールド期間としての「一定期間」の経過と受信再開との何れかを待機するようにされる。
【0059】
ステップS105で受信再開と判定した場合、被操縦側制御部3はステップS112に進んで先に説明したホールド時復帰処理を実行し、図8に示す一連の処理を終える。
なお、ホールド時復帰処理において、漸変中の各処理タイミングで出力するモータ駆動指示値は、ホールド処理中のモータ駆動指示値と受信値との差分値、処理周期、及び設定された漸変期間の情報に基づいて算出することができる。
【0060】
ステップS104において、所定時間経過したと判定した場合、被操縦側制御部3はステップS106に進み、フェールセーフ漸変処理を開始する。すなわち、モータ駆動指示値をホールド処理中の値からフェールセーフ値に向けて漸変させる処理を行う。これにより、一定期間のホールド処理の完了に応じて、フェールセーフ漸変処理が開始される。
フェールセーフ漸変処理において、漸変中の各処理タイミングでのモータ駆動指示値は、ホールド処理中のモータ駆動指示値とフェールセーフ値との差分値、処理周期、及び設定された漸変期間の情報に基づき求める。
【0061】
ステップS106に続くステップS107で被操縦側制御部3は、フェールセーフ値に到達したか否かを判定する。すなわち、ステップS106で開始したフェールセーフ漸変処理の進行に伴い、モータ駆動指示値がフェールセーフ値に到達したか否かを判定する。
【0062】
ステップS107において、フェールセーフ値に到達していないと判定した場合、被操縦側制御部3はステップS108に進み、受信再開か否かを判定し、受信再開でないと判定した場合、被操縦側制御部3はステップS107に戻る。これにより、フェールセーフ漸変処理中においては、フェールセーフ値への到達と受信再開との何れかを待機するようにされている。
【0063】
被操縦側制御部3は、ステップS108で受信再開と判定した場合には、ステップS113に進んで先に説明した漸変時復帰処理を実行し、図8に示す一連の処理を終える。
なお、漸変時復帰処理において、漸変中の各処理タイミングで出力するモータ駆動指示値は、当該漸変時復帰処理の開始直前に出力していたモータ駆動指示値と受信値との差分値、処理周期、及び設定された漸変期間の情報に基づき求める。
【0064】
ステップS107において、フェールセーフ値に到達したと判定した場合、被操縦側制御部3はステップS109に進み、フェールセーフホールド処理を開始する。すなわち、モータ駆動指示値をフェールセーフ値でホールドする処理を開始する。
【0065】
ステップS109に続くステップS110で被操縦側制御部3は、受信再開か否かを判定し、受信再開でないと判定した場合は、ステップS111に進んで処理終了か否かを判定する。すなわち、フェールセーフホールド処理の処理終了条件が成立したか否かを判定する。フェールセーフホールド処理の処理終了条件としては多様に考えられる。例えば、フェールセーフホールド処理の開始から所定時間が経過することを処理終了条件とすることが考えられる。或いは、フェールセーフホールド処理の終了を指示する所定の信号(例えば、ユーザ操作に応じた信号)の入力を処理終了条件とすること等も考えられる。
【0066】
ステップS111で処理終了ではないと判定した場合、被操縦側制御部3はステップS110に戻る。これによりフェールセーフホールド処理中においては、処理終了と受信再開の何れかを待機するようにされる。
なお、このようにフェールセーフホールド処理中に処理終了と受信再開の何れかを待機することは必須ではなく、受信再開のみを待機する構成とすることも考えられる。
【0067】
ステップS110において、受信再開したと判定した場合、被操縦側制御部3はステップS114に進んで先に説明したフェールセーフ後復帰処理を実行し、図8に示す一連の処理を終える。
なお、フェールセーフ後復帰処理において、漸変中の各処理タイミングで出力するモータ駆動指示値は、フェールセーフ値と受信値との差分値、処理周期、及び設定された漸変期間の情報に基づき求める。
【0068】
またステップS111において、処理終了であると判定した場合、被操縦側制御部3は図8に示す一連の処理を終える。
【0069】
<4.変形例>
なお、実施形態としては上記により説明した具体例に限定されるものではなく、多様な変形例としての構成を採り得る。
例えば、上記では、制御対象とするモータが被操縦体10の推進動力源として設けられたモータ5とされた例を挙げたが、本発明において、制御対象とするモータは、被操縦体の推進動力源となるモータに限定されない。例えば、推進動力源としてエンジンを有する被操縦体において、エンジンのスロットル制御を行うために設けられたサーボモータとされることも考えられる。或いは、被操縦体10が模型飛行機とされる場合等における動翼用のサーボモータ(例えば、エルロン、エレベータ、ラダー、フラップ)や、被操縦体10が模型車両とされる場合等における操舵用のサーボモータとされることも考えられる。
本発明における「モータ駆動指示値」は、このように制御対象のモータがサーボモータとされる場合におけるモータの出力を制御するための指示値も包含する概念である。
【0070】
また、上記では、本発明に係る受信装置が搭載される被操縦体が飛行体である前提で説明を行ったが、本発明に係る受信装置は、被操縦体が模型車両や各種ロボット等、飛行体以外の形態による物体とされる場合にも適用できるものである。
【0071】
<5.実施形態のまとめ>
以上で説明してきたように実施形態としての受信装置(受信機1)は、操縦信号に基づき遠隔操縦される被操縦体(同10)に搭載される受信装置であって、送信装置(送信機20)より操縦信号を受信する受信部(被操縦側通信部2)と、モータ(同5)の駆動量を制御するためのモータ駆動指示値として、受信部が受信した操縦信号に応じたモータ駆動指示値を出力する処理を行う制御部(被操縦側制御部3)と、を備える。
そして、制御部は、操縦信号が受信不能となった際に、モータ駆動指示値として、受信期間中における操縦信号に応じた値をホールド出力するホールド処理と、ホールド出力の期間が一定期間に達したことに応じて、モータ駆動指示値を、ホールド処理時の値からフェールセーフ用に定められたフェールセーフ値に向けて漸変させるフェールセーフ漸変処理と、を実行するものである。
【0072】
上記のフェールセーフ漸変処理により、ホールド処理後のフェールセーフ処理作動に伴いモータ駆動指示値が急激に変化してしまうことの防止が図られ、フェールセーフ処理の作動に起因して被操縦体の姿勢が急激に変化してしまうことやモータが破損してしまうことの防止を図ることが可能となる。
従って、フェールセーフ処理を行うことによる安全性向上と、フェールセーフ処理の作動に起因した被操縦体の急激な姿勢変化及びモータ破損の防止を図ることによる安全性向上との両立を図ることができる。
【0073】
また、実施形態としての受信装置においては、モータは、被操縦体の推進動力源として設けられるモータとされている。
被操縦体の推進動力源として設けられるモータは比較的大出力のモータであり、フェールセーフ機能によりモータ駆動指示値が急激にフェールセーフ値に変化した場合には、被操縦体の姿勢がより不安定になり易く、また、逆起電力の量も増大傾向となるためモータの破損可能性も高まることになる。
従って、実施形態としてのフェールセーフ漸変処理を行うことが好適である。
【0074】
さらに、実施形態としての受信装置においては、被操縦体は飛行体とされている。
飛行体としての被操縦体は、一定幅の走行路上を移動することが主に想定される模型車両としての被操縦体と比較して、上空という幅規制のない又は少ない領域を移動することが想定されるものであるため、フェールセーフ漸変処理により、モータ駆動指示値をフェールセーフ値に向けて漸変させる上での時間的余裕度が比較的高いものである。
従って、フェールセーフ漸変処理を行うことが好適である。
【0075】
さらにまた、実施形態としての受信装置においては、制御部は、フェールセーフ漸変処理による漸変期間を可変的に設定可能とされている。
これにより、被操縦体の用途やモータの特性等に応じて漸変期間をカスタマイズ可能となる。
従って、フェールセーフ漸変処理機能に係るユーザの使い勝手向上を図ることができる。
【0076】
また、実施形態としての受信装置においては、制御部は、フェールセーフ漸変処理によりモータ駆動指示値をフェールセーフ値に変化させた以降、モータ駆動指示値をフェールセーフ値でホールドするフェールセーフホールド処理を行っている。
これにより、モータ駆動指示値をフェールセーフ値に抑えた状態で受信再開を待機することが可能となる。
従って、被操縦体の推進力が高い状態で受信再開を待機することの回避が図られ、安全性向上を図ることができる。
【0077】
さらに、実施形態としての受信装置においては、制御部は、フェールセーフ漸変処理中に操縦信号の受信が再開した場合に、モータ駆動指示値を、受信再開後の操縦信号に応じたモータ駆動指示値である受信値に向けて漸変させる漸変時復帰処理を行っている(図5等参照)。
これにより、フェールセーフ漸変処理中の受信再開に応じてモータ駆動指示値を受信値に復帰させる場合において、モータ駆動指示値がフェールセーフ漸変処理中の値から受信値に急激に変化してしまうことの回避が図られる。
従って、被操縦体の姿勢が乱れることの防止や、モータの破損防止を図ることができる。
【0078】
さらにまた、実施形態としての受信装置においては、制御部は、ホールド処理中に操縦信号の受信が再開した場合に、モータ駆動指示値を、受信再開後の操縦信号に応じたモータ駆動指示値である受信値に向けて漸変させるホールド時復帰処理を行っている(図6等参照)。
これにより、ホールド処理中の受信再開に応じてモータ駆動指示値を受信値に復帰させる場合において、モータ駆動指示値がホールド処理中の値から受信値に急激に変化してしまうことの回避が図られる。
従って、被操縦体の姿勢が乱れることの防止や、モータの破損防止を図ることができる。
【0079】
また、実施形態としての受信装置においては、制御部は、フェールセーフホールド処理中に操縦信号の受信が再開した場合に、モータ駆動指示値を、受信再開後の操縦信号に応じたモータ駆動指示値である受信値に向けて漸変させるフェールセーフ後復帰処理を行っている(図7等参照)。
これにより、フェールセーフホールド処理中の受信再開に応じてモータ駆動指示値を受信値に復帰させる場合において、モータ駆動指示値がフェールセーフホールド処理中の値から受信値に急激に変化してしまうことの回避が図られる。
従って、被操縦体の姿勢が乱れることの防止や、モータの破損防止を図ることができる。
【0080】
さらに、実施形態としての受信装置においては、制御部は、ユーザ操作に基づき外部装置が行う指示に基づいて、フェールセーフ漸変処理の有効化/無効化の設定、フェールセーフ漸変処理によるモータ駆動指示値の漸変期間であるフェールセーフ漸変時漸変期間、及びフェールセーフ値の設定を行っている。
これによりユーザは、フェールセーフ漸変処理の有効化/無効化、フェールセーフ漸変時漸変期間、及びフェールセーフ値を操作により受信装置に設定指示することができる。
【0081】
さらにまた、実施形態としての受信装置においては、外部装置は送信装置(送信機20)であるものとされている。
これによりユーザは、フェールセーフ漸変処理の有効化/無効化、フェールセーフ漸変時漸変期間、及びフェールセーフ値を、送信装置を介して受信装置に設定指示することができる。
【0082】
また、実施形態としての受信装置においては、外部装置は送信装置とは別の外部装置であるものとされている。
これによりユーザは、フェールセーフ漸変処理の有効化/無効化、フェールセーフ漸変時漸変期間、及びフェールセーフ値を、送信装置とは別の外部装置を介して受信装置に設定指示することができる。
【0083】
さらに、実施形態としての受信装置においては、制御部は、ホールド処理の開始以降、操縦信号の受信が再開した場合に、モータ駆動指示値を受信再開後の操縦信号に応じたモータ駆動指示値である受信値に向けて漸変させる受信再開時漸変処理を行うと共に、受信再開時漸変処理によるモータ駆動指示値の漸変期間である受信再開時漸変期間とフェールセーフ漸変時漸変期間とを、外部装置からの指示に基づき個別に設定している。
これによりユーザは、受信装置が受信再開時漸変処理を実行可能な場合において、受信装置に対しフェールセーフ漸変時漸変期間と受信再開時漸変期間の設定指示を個別に行うことができる。
【符号の説明】
【0084】
1 受信機
1a アンテナ
2 被操縦側通信部
3 被操縦側制御部
4 ESC(スピードコントローラ)
5 モータ
6 バッテリ
10 被操縦体
20 送信機
20a アンテナ
21 操縦側制御部
22 操作部
23 表示部
24 操縦側通信部
F1 ホールド処理部
F2 フェールセーフ漸変処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8